(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】スクリーン印刷機
(51)【国際特許分類】
B41F 15/40 20060101AFI20221216BHJP
B41F 15/08 20060101ALI20221216BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
B41F15/40 B
B41F15/08 303E
H05K3/34 505D
(21)【出願番号】P 2020199489
(22)【出願日】2020-12-01
(62)【分割の表示】P 2016051266の分割
【原出願日】2016-03-15
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】横井 良宗
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-132643(JP,A)
【文献】特開平05-024175(JP,A)
【文献】特開平05-330025(JP,A)
【文献】特開昭61-168997(JP,A)
【文献】国際公開第2014/033861(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/40
B41F 15/08
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の搬送及び印刷位置での基板の位置決めを行うべくマスクの下方の2箇所に設けられた基板装置と、
前記マスクの上方で水平に延びたネジ軸と、
下方にスキージを備え、前記ネジ軸を移動可能なスキージ装置と、
このスキージ装置とは、単独で前記ネジ軸を移動可能な第1はんだ回収装置と、
前記スキージ装置を挟むように
前記第1はんだ回収装置の反対側に配置され、前記スキージ装置および
前記第1はんだ回収装置と同時に前記ネジ軸を移動する第2はんだ回収装置と、
前記第1はんだ回収装置に昇降可能に設けられ、マスク上に残るクリームはんだを回収するとともに、前記スキージ装置のスキージを囲むことが可能な回収プレートと、
を備えたスクリーン印刷機。
【請求項2】
前記スキージ装置、前記第1はんだ回収装置および前記第2はんだ回収装置は、各々の内部ナットに前記ネジ軸が螺合し、前記ネジ軸を駆動モータによって回転させる同時移動機構部が構成され、
前記スキージ装置および前記第1はんだ回収装置は、各々の前記内部ナットを各々の移動用モータによって回転させる単独移動機構部が構成された、
請求項1に記載のスクリーン印刷機。
【請求項3】
前記第1はんだ回収装置の回収プレートは、前記スキージ装置に対してスキージを側面側と下面側とで囲むスキージカバーであって、前記スキージを側面側で囲む側面部に開口部が形成された請求項1または請求項2に記載のスクリーン印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機内での作業を行う作業者がスキージに付着したクリームはんだに触れないようにするスクリーン印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷機では、搬送装置によって搬入された基板が保持されマスク下の印刷位置へと配置された後、スキージによってマスクの上側からクリームはんだが印刷パターン(貫通孔)を通して基板に印刷される。その際、クリームはんだはスキージによってマスク上でローリングしながら印刷パターンに押し込まれることとなるが、使用後のスキージにはクリームはんだが付着して残り、そのクリームはんだがつらら状に垂れたり、更には滴り落ちてしまうことになる。そうすると、機内での段取り替えやメンテナンスの際にクリームはんだが作業者に着いてしまう。クリームはんだが作業者に付着しないようにするには、スキージに付着したクリームはんだを除去しなければならないが、除去作業は非常に煩わしく、スキージを装着したスキージホルダの取り外しなども必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、下記特許文献1には、スキージの下方をシリンダによって移動可能な受け板が設けられ、スキージから落下する塗布剤を受け止められるようにしたスクリーン印刷機が開示されている。しかしながら、特許文献1の受け板構造は、シリンダなどの駆動手段を使用して受け板を出し入れするものであるため構造が複雑になってしまい、コストアップにもなってしまう。しかも、受け板はスキージから落ちてくるクリームはんだを下方で受けるものであるため、クリームはんだが着いたスキージと作業者との接触を回避するよには構成されていない。つまり、機内での作業を行う作業者にとって、クリームはんだが付着してしまうことに関して問題解決にはならない。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、スキージに付着したクリームはんだに作業者が触れないようにするスクリーン印刷を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスクリーン印刷機は、基板の搬送及び印刷位置での基板の位置決めを行うべくマスクの下方の2箇所に設けられた基板装置と、前記マスクの上方で水平に延びたネジ軸と、下方にスキージを備え、前記ネジ軸を移動可能なスキージ装置と、このスキージ装置とは、単独で前記ネジ軸を移動可能な第1はんだ回収装置と、前記スキージ装置を挟むように前記第1はんだ回収装置の反対側に配置され、前記スキージ装置および前記第1はんだ回収装置と同時に前記ネジ軸を移動する第2はんだ回収装置と、前記第1はんだ回収装置に昇降可能に設けられ、マスク上に残るクリームはんだを回収するとともに、前記スキージ装置のスキージを囲むことが可能な回収プレートと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスクリーン印刷によれば、マスク上側でクリームはんだがスキージによってローリングされ、マスク下側の基板に印刷が行われ、繰り返し行われるその印刷処理によってスキージにクリームはんだが付着するものの、スキージカバーがスキージを側面側から下面側にかけて囲むことにより、スキージに付着したクリームはんだに作業者が触れないようにするとともに、マスク上に残るクリームはんだを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】スクリーン印刷機の第1実施形態の内部構造を簡易的に示した図である。
【
図2】スキージカバーを装着したスキージヘッドを示した斜視図である。
【
図3】スキージカバーを装着したスキージヘッドの長手方向側面図である。
【
図5】スキージ装置の変形例を簡易的に示した側面図である。
【
図6】スキージ装置の他の変形例を簡易的に示した側面図である。
【
図7】スクリーン印刷機の第2実施形態の内部構造を簡易的に示した図である。
【
図8】スクリーン印刷機の第2実施形態の内部構造を簡易的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係るスクリーン印刷機の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、本実施形態のスクリーン印刷機の内部構造を簡易的に示した図である。スクリーン印刷機1は、基板10に対して電子部品を実装する部品実装機の前工程をなすものとして構成されている。そのスクリーン印刷機1には、基板搬送装置3やスキージ装置4、基板を把持するクランプ装置5および、基板を上下方向に位置決めする不図示の昇降装置などが備えられている。そして、スクリーン印刷機全体を制御する制御装置が搭載され、各装置の駆動部に対する所定の制御が行われるようになっている。
【0010】
スクリーン印刷機1は、基板搬送装置3によって基板10の搬入および搬出が行われるが、その基板搬送装置3は、基板10の両サイドを支持する一対のコンベアベルト11によって構成され、
図1の図面を貫く方向(機体幅方向)に基板10が送られるようになっている。その基板搬送装置3は、基板10を保持するクランプ装置5に設けられ、不図示の昇降装置によって昇降可能な構成になっている。クランプ装置5は、テーブル12の前後にサイドフレーム13,14が対になって配置され、一方のサイドフレーム14には内部の固定ナットにネジ軸が螺合したボールネジ機構が構成され、不図示のクランプ用モータの回転によってサイドフレーム13との距離が調整可能になっている。
【0011】
サイドフレーム13,14の上端部にはクランプ部15が形成され、互いの距離によって基板10が把持できるようになる。そうしたサイドフレーム13,14には、クランプ部15の下側にコンベアベルト11が組み付けられ、サイドフレーム13,14の間に基板10を搬送する基板搬送装置3が構成されている。また、サイドフレーム13,14の間にはバックアップ機構が設けられている。バックアップ機構は、基板10に実装される電子部品を避けるように複数のバックアップピン18がバックアップテーブル17に取り付けられ、そのバックアップテーブル17がガイドロッド19によって支持され、バックアップ用昇降装置によって昇降可能な構成になっている。そして、バックアップ機構を含むクランプ装置5全体も不図示の昇降装置によって昇降可能な構成になっている。
【0012】
クランプ装置5の上方には、複数の微小な貫通孔からなる印刷パターンが形成されたマスク8が設置されている。マスク8は、矩形のフレーム801に対して張った状態で取り付けられ、マスクホルダを介して機内に設置されている。そして、マスク8の上方には、クリームはんだを塗り延ばすためのスキージ装置4が設けられている。スキージ装置4は、スキージ32を備えた一対のスキージヘッド21,22が各々に用意されたシリンダ23のピストンロッド下端に固定され、昇降可能な状態で吊り下げられている。
【0013】
2つのシリンダ23は1つの走行台25に搭載され、その走行台25は、図面横方向(機体前後方向)に架設されたガイドロッド26に対して摺動可能に組み付けられ、水平方向に直線移動が可能な構成になっている。また、スクリーン印刷機1には、ガイドロッド26と平行な不図示のネジ軸が回転自在な状態で架設され、駆動モータによって回転が与えられるようになっている。走行台25は、内部の固定ナットとネジ軸とによってボールネジ機構が構成され、駆動モータの制御によりガイドロッド26に沿った移動が可能にっている。
【0014】
以上のような構成のスクリーン印刷機1では、コンベアベルト11の駆動によってサイドフレーム13,14の間に基板10が搬入されると、バックアップテーブル17が上昇し、バックアップピン18に突き上げられるようにして基板10がコンベアベルト11から持ち上げられる。そして、サイドフレーム14が移動することにより、一対のサイドフレーム13,14のクランプ部15によって基板10が挟み込まれて把持され、基板10を保持した状態のクランプ装置5全体が上昇することにより、マスク8の直下に位置した基板10に対して印刷が可能な状態になる。
【0015】
その後、マスク8の上側では、供給されたクリームはんだがスキージ装置4によってマスク8上でローリングしながら印刷パターンへの押し込みが行われる。スクリーン印刷機1では、往復する走行台25の移動方向に従って該当するスキージヘッド21,22の一方がシリンダ23の駆動により下降し、そのスキージ32によってクリームはんだが塗り延ばしされる。これにより、印刷パターンを通ってマスク8の下に位置する基板10にクリームはんだが印刷される。
【0016】
こうして基板10に印刷されるクリームはんだは粘性を有する。そのため、繰り返し行われる印刷処理によってスキージ32にクリームはんだが付着し、そのスキージ32が上昇したときにはクリームはんだが垂れてしまう。作業者は、生産内容の変更にともなってバックアップピン18の段取り替えなどを行う必要があり、そうした場合には機内に手を入れて作業を行うことになる。しかし、そのままでは前記課題でも述べたように、スキージ32から垂れているクリームはんだに作業者が触れてしまうほか、気を付けていても滴下したクリームはんだが作業者に着いてしまう。そこで、本実施形態のスクリーン印刷機1は、スキージ32に付着したクリームはんだに作業者が触れたりすることなく作業が行えるように、着脱可能なスキージカバー28が設けられている。
【0017】
図1は、図面左側がスクリーン印刷機1の前方側になる。作業者は、その機体前方側に立ち、開閉カバーを開けて体を入れるようにして作業することとなる。従って、スキージカバー28は、スキージヘッド21に対して図面左側すなわち作業者の立ち位置である機体前方側に取り付けられるようになっている。ここで、
図2は、スキージヘッド21,22を示した斜視図であり、取り付けられたスキージカバー28が一点鎖線で示されている。また、
図3は、スキージヘッド21,22の長手方向側面図であり、スキージカバー28が
図2のA-A断面で示されている。そして、
図4は、スキージカバー28の一例を具体的に示した斜視図である。
【0018】
先ず、一対のスキージヘッド21,22は、同じように構成され、走行台25の移動方向である機体前後方向に対称的に配置されている。スキージヘッド21,22は、機体幅方向の寸法が長い棒状のベース31に対して、帯状の板材であるスキージ32が下方に突き出すようにして取り付けられている。その際、互いのスキージ32は、向かい合う方向すなわち各々の進行方向に前傾した姿勢で固定されている。そして、スキージヘッド21,22は、ベース31の上面にL字型のフック33が固定され、シリンダに23のピストンロッド下端に固定された連結部材24(
図1参照)に対し、フック33を介して着脱できるようになっている。また、ベース31には長手方向にレール35が固定され、クリームはんだがはみ出さないようにするペーストドクター36が両側から挿入されボルト締めされている。
【0019】
ところで、ベース31の上面両端部にはガイドブロック37が固定され、そこにはスキージ32と一体に形成された略扇形の揺動部材38が嵌め込まれている。揺動部材38は、ガイドブロック37に対して円弧部分を摺動させることにより、スキージ32についてその下端を中心に揺動させた傾斜角度の調整を可能にするものである。また、ガイドブロック37には揺動部材38を拘束するためのネジ付きの締結部材39が設けられ、ネジの締め付けによってスキージ32の傾斜角度が調整可能になっている。
【0020】
次に、スキージカバー28は、
図3に示すように、スキージヘッド21,22を上方から側方そして下方にかけて囲むように形成されている。薄板によって形成されたスキージカバー28は、
図4に示すように、スキージヘッド21の2ヵ所にあるガイドブロック37に合わせて幅方向に2つの取付け部41が形成され、更に傾斜した側面部42や下側の受け部43が形成されている。
【0021】
取付け部41は、水平な面の先端にU字形に切り欠かれた引掛け部45が形成され、垂直な面の内側にはマグネット46が固定されている。一方、スキージヘッド21の締結部材39は、ツマミ391とネジ部393との間に首部392があり、その首部392には環状の引掛け溝395が形成されている。よって、スキージカバー28は、その引掛け部45が引掛け溝395に嵌め込まれ、このときマグネット46が金属製のガイドブロック37に吸着される。スキージカバー28は、こうしたスキージヘッド21に対して引掛け部45による引っ掛かりと、マグネット46による吸着力によって
図2及び
図3に示す取り付け状態が維持されるようになっている。
【0022】
スキージカバー28は、幅方向に2箇所ある取付け部41の間が側面部42にかけて大きく切り欠かれ、取り付けの際に作業者によってスキージヘッド21が目視できるようにした開口部47が形成されている。そして、傾斜した側面部42の先には、取り付けた時にスキージ32の真下に水平な状態で配置されるように受け部43が形成されている。その受け部43は、塵取りのようにクリームはんだをすくい取り易くするため、先端部分に傾斜したテーパ部48が形成されている。また、スキージカバー28の幅方向の両縁には、薄板で形成されたカバー形状の剛性確保やクリームはんだが横にこぼれ落ちないようにするための壁部49が形成されている。
【0023】
こうしたスキージカバー28は、普段はスクリーン印刷機1から外されて保管されているが、段取り替えやメンテナンスなどのような作業を行う場合にスキージヘッド21へ取り付けられる。装着されたスキージカバー28は、作業者側からスキージヘッド21,22を囲むため、スキージ32にクリームはんだが付着していたとしても、機内に手を入れて作業を行う作業者がクリームはんだに触れないようにすることができる。また、滴り落ちたクリームはんだが作業者に着かないように受け取ることができる。よって、機内の作業環境が向上し、作業者は垂れたり滴り落ちるクリームはんだに煩わされることなく作業を進めることができる。また、これまでは段取り替え前にクリームはんだをスキージ32から取り除く作業が行われていたが、その除去作業を省くことによりスクリーン印刷機1のダウンタイムを短くすることが可能になる。
【0024】
スキージカバー28の装着は、スキージカバー28の引掛け部45をスキージヘッド21の引掛け溝395に嵌め込み、マグネット46をガイドブロック37に吸着させればよく、簡単な取り扱いによって装着することができ、取り外しに関しても同じく簡単に行うことができる。また、取り付けの際は、引掛け部45を引掛け溝395に合わせればよいため作業者にとって見やすく位置決めが非常に簡単である。そして、スキージカバー28に大きな開口部47が形成されているため、スキージ32の先端部分(テーパ部48)を確認しながら、垂れているクリームはんだをすくい取るようにして装着することもできる。なお、スクリーン印刷機1には、スキージカバー28に対するインターロックセンサを設けることが好ましい。スキージヘッド21に装着したままではスクリーン印刷機1の駆動部が作動しないようにすることができ、スキージカバー28の取り忘れを防止することができるからである。
【0025】
ところで、スキージカバー28は、前述したように作業者によるクリームはんだとの接触を防止するものとして機能するが、更に搬送用カバーとしての利用にも応用することが可能である。
図5は、そうしたスキージカバーの利用を示したスキージ装置の変形例を簡易的に示した側面図である。このスキージ装置50は、前記実施例と同様に、機体前後方向に移動可能な走行台51に対して2つのシリンダ52が搭載され、スキージ53を備えた一対のスキージヘッド55,56が各々のシリンダ52から下方に延びるピストンロッドに固定されている。
【0026】
そして、スキージ装置50には、スキージヘッド55,56に対してそれぞれ機体前後方向(図面左右方向)に突き出すように昇降プレート57が水平に固定され、そこには更に、昇降方向である垂直方向に起立したサイドシャフト58が固定されている。一方、走行台51にも機体前後方向に突き出すように支持ブロック59が水平に固定され、そこに嵌め込まれたブシュ61を通してサイドシャフト58が貫通している。2本のサイドシャフト58には、スキージカバー280の引掛け部(
図4に記載の「引掛け部45」を参照)が嵌まり込む環状の引掛け溝63,64が上下2箇所に形成されている。なお、このスキージカバー280は、
図4に示すスキージカバー28とほぼ同様の形状で形成されているが、2本のサイドシャフト58に引掛けられるように、取付け部410の水平な面とそこに切り欠かれたU字形の引掛け部の寸法を長くした変更が加えられている。
【0027】
よって、スキージ装置50は、走行台51の進行方向に従って該当するスキージヘッド55又は56が下降し、そのスキージ53によってクリームはんだが塗り延ばしされる。スキージヘッド55,56が昇降する場合は、それぞれの昇降プレート57とサイドシャフト58が一体となって昇降する。こうした印刷処理のときにはスキージカバー28がスキージ装置50から外されているが、段取り替えやメンテナンスなど機内での作業が行われる場合に装着される。装着時には図示するようにスキージヘッド55,56は上昇位置にあり、スキージカバー28は、取付け部410の引掛け部が一点鎖線で示すように下側に位置する2箇所の引掛け溝63に嵌め込まれ、マグネット46が昇降プレート57の下面に固定された金属製のブロック65に吸着される。
【0028】
更にスキージカバー280は、実線で示すように取り付けることも可能である。すなわち、取付け部410の引掛け部が上側に位置する2箇所の引掛け溝64に嵌め込まれ、マグネット46が金属製の支持ブロック59に吸着される。こうした第2の取り付け状態では、サイドシャフト58の下降が制限されることによりスキージヘッド55,56の下降も制限され、スキージ装置50の動きが止められることとなる。よって、本実施例ではスキージカバー280を2パターンで装着することができ、下方の引掛け溝63に引掛けた場合には、作業者がスキージ53に付着したクリームはんだに触れることなく機内での作業を進めることができる。また、上方の引掛け溝64に引掛けた場合には、スクリーン印刷機を搬送あるいは移動させる際にスキージカバー280がスキージ装置50の状態を安定させることができる。
【0029】
次に、スキージカバー28は、そのほかにもクリームはんだの回収プレートとして利用することが可能である。
図6は、そうしたスキージカバーの利用を示したスキージ装置の他の変形例を簡易的に示した側面図であり、(A)~(E)にはんだ回収工程が段階的に示されている。このスキージ装置70は、前記実施例と同様に、機体前後方向に移動可能な走行台51に対して2つのシリンダ52が搭載され、スキージ53を備えた一対のスキージヘッド55,56が各シリンダ52から下方に延びるピストンロッドに固定されている。そして、機体前方側に位置するスキージヘッド55にカバー用シリンダ71が水平な姿勢で固定され、そのピストンロッドが機体前方(図面左側)に向けて突き出し、先端部分にスキージカバー28が着脱可能な状態で取り付けられている。
【0030】
通常時のスキージ装置70は、スキージカバー28が外され、前述したようにスキージ53によってクリームはんだをマスク8上で塗り延ばしする印刷処理が行われる。一方、スクリーン印刷機について段取り替えやメンテナンスなどを行う場合には、スキージカバー28がカバー用シリンダ71に取り付けられる。そのため、
図6(A)に示すように、スキージカバー28によってスキージヘッド55,56が囲まれ、作業者による機内での作業が行い易くなる。
【0031】
更に本実施形態では、交換するマスク8上にクリームはんだが残っているような場合には、スキージ装置70によってクリームはんだ100の回収を行うことができる。そこでは先ず、
図6(B)に示すように、カバー用シリンダ71が伸長した状態でスキージヘッド55とスキージカバー28が一体になって下降する。スキージカバー28には上下方向に長い長孔が形成され、そこにカバー用シリンダ71のピストンロッドが連結されている。従って、
図6(B)から(C)に示すようにスキージカバー28が下降してマスク8に接した後、図示しない長孔の遊びの範囲内でスキージヘッド55が下降するため、マスク8を撓ませることなくスキージカバー28を密着させることができる。
【0032】
次に、スキージ装置70は、
図6(C)に示すように、カバー用シリンダ71が伸長した状態でスキージカバー28がマスク8に接する位置まで下降する。そして、スキージヘッド56側が下降してクリームはんだ100に対してスキージ53が配置される。その後、
図6(D)に示すように、カバー用シリンダ71が収縮してスキージ53に支えられたクリームはんだ100がスキージカバー28の上に載せられる。そして、
図6(E)に示すように、両方のシリンダ52が収縮してスキージヘッド55,56及びスキージカバー28が上昇することで、マスク8上に残るクリームはんだ100が回収できる。
【0033】
続いて、スクリーン印刷機の第2実施形態について説明する。
図7は、第2実施形態のスクリーン印刷機の内部構造を簡易的に示した図である。このスクリーン印刷機80は、マスク81の下方に基板装置82,83が2箇所に設けられ、マスク81上ではクリームはんだを回収可能にした構成を有するものである。基板装置82,83は、基板の搬入及び搬出や基板の保持並びに昇降による位置決めを行うものでる。一方、マスク81の上方には、前記実施形態と同様にスキージ装置84が設けられ、一対のスキージ841,842が昇降可能に構成されている。そして、スキージ装置84を機体前後方向(図面横方向)から挟むようにして、第1はんだ回収装置85と第2はんだ回収装置86とが設けられている。
【0034】
スキージ装置84、第1はんだ回収装置85および第2はんだ回収装置86は、共通のネジ軸87が各々の内部ナットに螺合し、駆動モータ88の回転によって機体前後方向に同時に移動するよう構成されている。また、スキージ装置84と第1はんだ回収装置85に関しては、それぞれが移動用モータ843,853を備え、回転伝達機構845,855を介して内部ナットに回転を与えることで、単独での移動が可能になっている。更に、第1はんだ回収装置85および第2はんだ回収装置86は、内蔵のシリンダによって回収プレート91,92が昇降可能に取り付けられている。
【0035】
機体後方側の回収プレート92は、テーパ付きの板材によって形成されたものであるが、機体前方側の回収プレート91は、
図4に示すスキージカバー28と同様な形状で形成されている。すなわち、スキージ841,842(詳しくはスキージヘッド)を機体前方側から囲むことができるように形成され、
図4に示す下側の受け部43やテーパ部48が回収プレート92と同様に、はんだ回収機能を果たすようになっている。
【0036】
よって、このスクリーン印刷機80では、クリームはんだを一方向にローリングさせる印刷処理の際、印刷の前後においてクリームはんだが回収プレート91,92上に載せられる。従って、印刷時のスキージ841,842は、先ず回収プレート91,92へ当てるようにしてマスク81には接触しないように下降することとなる。そのため、下から支持しなくてもマスク81の撓みを抑制することが可能になる。また、印刷終了時にはスキージ842が回収プレート91に乗り上げるため、時間を待たずに直ちに基板を下降させることが可能になる。
【0037】
回収プレート91は、こうしたはんだ回収機能のほかにも
図8に示すように、第1はんだ回収装置85をスキージ装置84に近接させ、回収プレート91を上昇させることにより、スキージ841,842を覆うことができる。よって、第1実施形態と同様に、スキージカバーとなった回収プレート91によって、作業者がスキージ841,842に付着したクリームはんだに触れることなく機内での作業を進めることができる。
【0038】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、スキージカバー28の引掛け構造としてU字形の引掛け部45を環状の引掛け溝395などに嵌め込むようにしたが、スキージカバー28の装着時の姿勢を維持できるようなものであればその他の構成であってもよい。
また、スキージカバーの形状も
図4に示すものに限定されるわけではない。
【符号の説明】
【0039】
1…スクリーン印刷機 4…スキージ装置 5…クランプ装置 8…マスク 10…基板 21,22…スキージヘッド 23…シリンダ 25…走行台 28…スキージカバー 37…ガイドブロック 39…締結部材 41…取付け部 42…側面部 43…受け部 45…引掛け部 46…マグネット 47…開口部 48…テーパ部 395…引掛け溝