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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/22 20060101AFI20221216BHJP
   B23B 3/30 20060101ALI20221216BHJP
   B23B 3/22 20060101ALI20221216BHJP
   B23Q 1/48 20060101ALI20221216BHJP
   B23B 19/02 20060101ALI20221216BHJP
   B23B 9/04 20060101ALI20221216BHJP
   B23B 21/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
B23Q15/22
B23B3/30
B23B3/22
B23Q1/48 E
B23B19/02 Z
B23B9/04
B23B21/00 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020509838
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2019009793
(87)【国際公開番号】W WO2019188220
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2018069448
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 陽介
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/009502(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/066289(WO,A1)
【文献】特開平06-000703(JP,A)
【文献】特開2014-193492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/22
B23B 3/00 - 3/36
B23B 9/00 - 9/12
B23B 21/00
B23Q 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持する主軸と、
前記主軸を該主軸の軸線に平行なZ軸方向に直交するX軸方向に移動させる主軸X軸移動機構と、
前記ワークを加工する刃具が装着された刃物台と、
前記刃物台をX軸方向に移動させる刃物台X軸移動機構と、を有し、
前記刃物台に、前記刃具を旋回させる旋回機構を設けた工作機械であって、
前記旋回機構によって前記刃具を所望の旋回角度に旋回させたときの前記刃具のX軸方向の移動距離XAを算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された前記移動距離XAに応じて前記刃具に追従して前記主軸がX軸方向に移動するように前記主軸X軸移動機構の作動を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段が、前記算出手段により算出された前記移動距離XAが、前記刃物台のX軸方向への最大移動距離XMよりも大きい場合に、前記刃物台をX軸方向に距離XMだけ移動し、前記主軸をX軸方向に距離(XA-XM)だけ移動した後に、前記刃具を旋回させるように、前記主軸X軸移動機構、前記刃物台X軸移動機構及び前記旋回機構の作動を制御するように構成されていることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記移動距離XAに応じた前記主軸のX軸方向への移動の際に、前記制御手段が、前記刃物台をX軸方向に移動させるように、前記刃物台X軸移動機構の作動を制御する請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記主軸が正面主軸に対向する背面主軸であり、
前記刃物台に、前記正面主軸に把持されたワークを加工するための正面側刃具が前記刃具に対して刃先を反対方向に向けて装着されており、
前記旋回機構の旋回軸が前記正面側刃具の刃先に設定されている、請求項1または2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを刃具により加工する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを刃具により加工する工作機械として、ワークハンドリング装置により把持されたワークを刃具である回転工具によって加工するにあたり、回転工具をワークに対して旋回させることで、ワークに対して傾斜する方向から加工を行うことができるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-107078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主軸に把持されたワークを刃物台に装着された刃具を旋回させることで、ワークに対して傾斜する方向から加工を行うことができるコンパクトな工作機械を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の工作機械は、ワークを把持する主軸と、前記主軸を該主軸の軸線に平行なZ軸方向に直交するX軸方向に移動させる主軸X軸移動機構と、前記ワークを加工する刃具が装着された刃物台と、前記刃物台をX軸方向に移動させる刃物台X軸移動機構と、を有し、前記刃物台に、前記刃具を旋回させる旋回機構を設けた工作機械であって、前記旋回機構によって前記刃具を所望の旋回角度に旋回させたときの前記刃具のX軸方向の移動距離XAを算出する算出手段と、前記算出手段により算出された前記移動距離XAに応じて前記刃具に追従して前記主軸がX軸方向に移動するように前記主軸X軸移動機構の作動を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段が、前記算出手段により算出された前記移動距離XAが、前記刃物台のX軸方向への最大移動距離XMよりも大きい場合に、前記刃物台をX軸方向に距離XMだけ移動し、前記主軸をX軸方向に距離(XA-XM)だけ移動した後に、前記刃具を旋回させるように、前記主軸X軸移動機構、前記刃物台X軸移動機構及び前記旋回機構の作動を制御するように構成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の工作機械は、上記構成において、前記移動距離XAに応じた前記主軸のX軸方向への移動の際に、前記制御手段が、前記刃物台をX軸方向に移動させるように、前記刃物台X軸移動機構の作動を制御するのが好ましい。
【0007】
本発明の工作機械は、上記構成において、前記主軸が正面主軸に対向する背面主軸であり、前記刃物台に、前記正面主軸に把持されたワークを加工するための正面側刃具が前記刃具に対して刃先を反対側に向けて装着されており、前記旋回機構の旋回軸が前記正面側刃具の刃先に設定されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、算出手段により算出された刃具のX軸方向の移動距離に応じて、刃具に追従して主軸がX軸方向に移動するように主軸X軸移動機構の作動が制御されることによって、刃物台のX軸方向のストロークを抑制することができ、主軸に把持されたワークを傾斜方向から加工することが可能なコンパクトな工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態である工作機械の構成を概略で示す説明図である。
図2】(a)~(c)は、それぞれ背面主軸に把持されたワークを刃物台とともに旋回させた刃具によって加工する手順を示す説明図である。
図3】(a)~(d)は、それぞれ背面主軸に把持されたワークを刃物台とともにより大きな旋回角度で旋回させた刃具によって加工する手順を示す説明図である。
図4】刃物台の旋回角度に応じた背面主軸と刃物台のX軸方向への移動を判断するためのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態である工作機械1はCNC旋盤として構成されたものであり、基台2上に配置された正面主軸3と、正面主軸3に所定の間隔を空けて対向する主軸としての背面主軸4とを有している。
【0011】
正面主軸3は先端にチャック3aを備え、チャック3aによりワークWを把持することができる。正面主軸3は例えば電動モータ等の駆動源(不図示)により回転駆動され、ワークWとともに回転する。
【0012】
背面主軸4は先端にチャック4aを備え、正面主軸3で加工されたワークWを受け取ってチャック4aにより把持することができる。背面主軸4は例えば電動モータ等の駆動源(不図示)により回転駆動され、ワークWとともに回転する。
【0013】
正面主軸3の前方には所定の間隔を空けてガイドブッシュ5が設けられている。ガイドブッシュ5は正面主軸3と同軸に配置されて基台2に固定されており、正面主軸3に把持されているワークWの先端側の部分を回転自在に支持する。
【0014】
正面主軸3が配置される正面主軸台6は正面主軸3の軸線に平行なZ軸方向に沿って配置されたZ軸ガイドレール6aを介して基台2に搭載されている。正面主軸台6と基台2との間にはボールネジや電動モータ等を備えた駆動機構(不図示)が設けられており、正面主軸台6は駆動機構により駆動されてZ軸ガイドレール6aに沿ってZ軸方向に移動することができる。正面主軸台6がZ軸方向に移動することで正面主軸3のZ軸方向の位置が変更される。
【0015】
背面主軸4が配置される背面主軸台7は背面主軸4の軸線に平行なZ軸方向に沿って配置されたZ軸ガイドレール7aを介して基台2に搭載されている。背面主軸台7と基台2との間にはボールネジや電動モータ等を備えた駆動機構(不図示)が設けられており、背面主軸台7は駆動機構により駆動されてZ軸ガイドレール7aに沿ってZ軸方向に移動することができる。背面主軸台7がZ軸方向に移動することで背面主軸4のZ軸方向の位置が変更される。
【0016】
背面主軸4は、Z軸方向に直交するX軸方向に沿って配置されたX軸ガイドレール7bを介して背面主軸台7に搭載されている。背面主軸4と背面主軸台7との間にはボールネジや電動モータ等を備えた駆動機構(不図示)が設けられており、背面主軸4は駆動機構により駆動されてX軸ガイドレール7bに沿ってX軸方向に移動することでX軸方向の位置が変更される。すなわち、本実施の形態では、X軸ガイドレール7bと駆動機構とによって、背面主軸4をX軸方向に移動させる主軸X軸移動機構が構成されている。
【0017】
工作機械1は刃物台10を備えている。刃物台10は装着部10aを有し、装着部10aには、正面主軸3に把持されたワークWを加工するための正面側刃具11と、背面主軸4に把持されたワークWを加工するための刃具としての背面側刃具12とが装着されている。本実施の形態においては、正面側刃具11と背面側刃具12は、それぞれ図示しない電動モータ等の駆動源によって回転駆動されるドリル等の回転刃具(回転工具)となっている。正面側刃具11と背面側刃具12は、互いに刃先(軸方向の先端)を反対側に向けて装着部10aに装着されている。
【0018】
刃物台10は移動台13に搭載されている。移動台13はX軸方向に沿って配置されたX軸ガイドレール13aを介して基台2に搭載されている。移動台13と基台2との間にはボールネジや電動モータ等を備えた駆動機構(不図示)が設けられており、移動台13は駆動機構により駆動されてX軸ガイドレール13aに沿ってX軸方向に移動することができる。すなわち、本実施の形態では、X軸ガイドレール13aと駆動機構とによって、刃物台10をX軸方向に移動させる刃物台X軸移動機構が構成されている。移動台13がX方向に移動することで刃物台10ないし正面側刃具11及び背面側刃具12のX軸方向の位置が変更される。
【0019】
刃物台10は装着部10aの端部から水平方向に延びるアーム部10bを備え、アーム部10bにおいて移動台13に旋回自在に支持されている。刃物台10と移動台13との間には電動モータや減速機等を備えた駆動機構(不図示)が設けられており、刃物台10は駆動機構によって回転駆動されることで、移動台13に対してZ軸方向及びX軸方向に垂直な旋回軸14を中心として旋回することができる。すなわち、本実施の形態では、旋回軸14と駆動機構とによって、旋回軸14を中心として刃物台10とともに正面側刃具11及び背面側刃具12をB軸旋回させる旋回機構が構成されている。刃物台10が旋回軸14を中心として旋回することで、正面側刃具11及び背面側刃具12がワークWに対して成す傾斜角度が変更される。
【0020】
ここで、正面側刃具11及び背面側刃具12がワークWに対して成す傾斜角度は、ワークWの軸線の方向すなわちZ軸方向に対して正面側刃具11及び背面側刃具12の軸線方向が成す角度であり、刃物台10の旋回角度αと同一の角度とする。
【0021】
本実施の形態では、正面側刃具11は、旋回軸14の軸線上に刃先が位置するように装着されている。これにより、正面主軸3に把持されているワークWに対する正面側刃具11の傾斜角度を、正面側刃具11の刃先のX軸方向の位置を変えずに変更することを可能として、正面主軸3に把持されたワークWを加工する際の正面側刃具11の旋回ないし移動制御を容易に行い得るようにすることができる。
【0022】
工作機械1は、制御手段としての制御部20を有している。制御部20は、例えばCPU(中央演算処理装置)やメモリ等の記憶手段を備えたマイクロコンピュータで構成することができる。正面主軸3を回転駆動する駆動機構、背面主軸4を回転駆動する駆動機構、正面主軸3をZ軸方向に駆動する駆動機構、背面主軸4をZ軸方向に駆動する駆動機構、背面主軸4をX軸方向に駆動する駆動機構、刃物台10を旋回させる駆動機構及び正面側刃具11と背面側刃具12とを回転駆動する駆動源等は、それぞれ制御部20に制御される。
【0023】
制御部20には、刃物台10の旋回角度等の種々の加工条件を入力する入力部30が接続されている。制御部20は、入力部30に入力された加工条件に基づき、上記の各機構等をCNC機能を用いつつ統合制御して、正面側刃具11ないし背面側刃具12によるワークWの加工を実行する。
【0024】
制御部20は算出手段としての機能を有しており、背面主軸4に把持されたワークWに対して背面側刃具12による加工を行う場合において、入力部30に刃物台10の旋回角度αが入力されたときに、刃物台10の旋回角度αに応じた背面側刃具12の刃先のX軸方向の基準位置Pに対するX軸方向への移動距離XAを算出する。
【0025】
ここで、図1に示すように、背面側刃具12の刃先のX軸方向の基準位置Pは、背面主軸4に把持されたワークWの被加工部位に対応した所定のX軸方向位置になっており、図1においては、基準位置PはZ軸方向に平行な線分で表されている。
【0026】
なお、本実施の形態では、図1に示すように、基準位置Pは正面主軸3ないし背面主軸4の軸線に対してX軸方向にずれた位置となっているが、基準位置Pを正面主軸3ないし背面主軸4の軸線に一致する位置とするなど、ワークWの加工位置に応じて基準位置PのX軸方向の位置を適宜変更することができる。
【0027】
制御部20により算出される移動距離XAは、図1に示すように、背面側刃具12の刃先が基準位置Pよりも図1中において上方側に位置するように刃物台10を入力部30に入力された所望の旋回角度αに旋回させたと仮定(図1中に二点鎖線で示す)したときに、背面側刃具12の刃先(先端)と基準位置Pとの間に生じるX軸方向の距離のことである。図1に示すように、移動台13が、旋回角度αが0度における背面側刃具12の刃先が基準位置Pにあるときには、制御部20において、移動距離XAを、例えば、予め制御部20に入力された旋回軸14から背面側刃具12の刃先までの距離xと旋回角度αとから、XA=x・sinαとして算出することができる。
【0028】
制御部20は、上記のように算出した移動距離XAだけ、所望の旋回角度αに旋回させた背面側刃具12の刃先のX軸方向位置が基準位置P上に位置するように、主軸X軸移動機構及び前記刃物台X軸移動機構の作動すなわち刃物台10及び背面主軸4のX軸方向への移動を制御する。
【0029】
次に、工作機械1を用いたワークWの加工の実施について説明する。
【0030】
正面主軸3に把持されているワークWに対してZ軸方向に対して所望の角度で傾斜する方向から正面側刃具11によって加工を行う場合には、入力部30に所望の旋回角度が入力されると、刃物台10が旋回して正面側刃具11がZ軸方向に対して所望の旋回角度だけ傾斜した方向に向けられ、正面側刃具11が上記旋回角度を維持したまま正面主軸3に把持されているワークWに接近するように正面主軸3の移動と刃物台10の移動とが制御され、正面主軸3に把持されたワークWに正面側刃具11が押し当てられてワークWにZ軸方向に対して傾斜した方向の穴開け加工等が行なわれる。
【0031】
一方、背面主軸4に把持されたワークWに対して所望の傾斜角度で傾斜する背面側刃具12によって加工を行う場合には、制御部20は、図2図3に示す工程を行うように図4に示すフローチャートに基づいた制御を行い、背面側刃具12によるワークWの加工を実行する。
【0032】
まず、ワークWに対して背面側刃具12を所望の傾斜角度で傾斜させた状態で加工を行う場合、図4のステップS1に示すように、入力部30に対して、当該傾斜角度に対応した刃物台10の旋回角度αが設定され入力されると、ステップS2において、算出手段としての機能を有する制御部20により、刃物台10の旋回角度αに応じた背面側刃具12の刃先の基準位置Pに対するX軸方向への移動距離XAが算出される。
【0033】
次に、図4のステップS3に示すように、制御部20は、算出した移動距離XAを、刃物台10のX軸方向に移動可能な最大距離XMと比較する。
【0034】
ここで、刃物台10のX軸方向に移動可能な最大距離XMは、図1に示すように、刃物台10が、背面側刃具12の刃先の移動距離XAが算出される際の位置を起点として基準位置Pから離れる方向に向けて移動機構上で移動可能な最大距離である。図1に示す場合では、最大距離XMは、刃物台10の初期位置(旋回角度αが0度における背面側刃具12の刃先が基準位置Pにあるときの位置)からX軸ガイドレール13aの図中下方側のストローク端までのX軸方向に沿った距離である。
【0035】
ステップS3において、制御部20により算出した移動距離XAが刃物台10のX軸方向に移動可能な最大距離XM以下であると判断されると、ステップS4において、図2(a)に示すように、制御部20は、刃物台10を移動距離XAだけX軸方向へ移動させた後、図2(b)に示すように、刃物台10を旋回角度αとなるように旋回軸14を中心として旋回させる。刃物台10の旋回角度がαとなると、背面側刃具12の刃先のX軸方向位置が基準位置P上に位置する。
【0036】
上記一連の手順により背面側刃具12の刃先のX軸方向位置を基準位置P上に一致させることができるため、図2(c)に示すように、制御部20は、背面主軸4をZ軸方向に移動させ、背面側刃具12を回転させて当該旋回角度αを維持したままワークWの加工を実施することで、ワークWにZ軸方向に対して旋回角度αだけ傾斜した方向の穴開け加工を行うことができる。
【0037】
このように、入力部30に入力される刃物台10の旋回角度αが所定値以下の場合には、制御部20により算出される移動距離XAが刃物台10の最大距離XM以下となるので、背面主軸4を正面主軸3と同軸状に対向する位置に維持したまま、刃物台10のみをX軸方向に移動させて背面側刃具12によるワークWの加工を行うことができる。
【0038】
一方、入力部30に入力される刃物台10の旋回角度αが所定値より大きい場合には、ステップS3において、制御部20により算出した移動距離XAが刃物台10の初期位置からX軸方向に移動可能な最大距離XMよりも大きいと判断される。
【0039】
この場合、ステップS5において、図3(a)に示すように、制御部20は、刃物台10を最大距離XMだけX軸方向(図3中で下方向)へ移動させた後、図3(b)に示すように、背面主軸4を刃物台10のX軸移動方向とは反対方向に向けて移動距離XA-最大距離XMで算出される距離だけ移動させる。すなわち、制御部20により算出された移動距離XAが刃物台10の移動可能な最大距離XMを超えた場合には、刃物台10を最大距離XMだけX軸方向へ移動させるとともに、刃物台10の移動可能な最大距離XMを超えた不足分の距離だけ背面主軸4を刃物台10とは反対方向に向けて移動させる。
【0040】
刃物台10及び背面主軸4を上記の通りにX軸方向に移動させた後、図3(c)に示すように、制御部20は、刃物台10を旋回角度αとなるように旋回軸14を中心として旋回させる。刃物台10の旋回角度がαとなると、背面側刃具12の刃先のX軸方向位置が基準位置P上に位置する。
【0041】
上記一連の手順により背面側刃具12の刃先のX軸方向位置を基準位置P上に一致させることができるため、図3(d)に示すように、背面主軸4をZ軸方向に移動させて背面側刃具12を回転させるとともに当該旋回角度αを維持したままワークWの加工を実施することで、ワークWにZ軸方向に対して旋回角度αだけ傾斜した方向の穴開け加工等を行うことができる。
【0042】
このように、入力部30に入力される刃物台10の旋回角度αが所定値より大きい場合には、制御部20により算出される移動距離XAが刃物台10の最大距離XMより大きくなるが、刃物台10をX軸方向に最大距離XMだけ移動させ、移動距離XAのうち刃物台10の最大距離XMの移動では不足する移動分については背面主軸4を刃物台10とは反対方向へ移動させることにより補うことができる。したがって、刃物台10のX軸方向の移動のみでは加工できない大きな傾斜角度で背面側刃具12を傾斜させるようにしても、加工を行うことができる。
【0043】
以上の通り、本実施の形態の工作機械1によれば、刃物台10と背面主軸4とを協同してX軸方向へ移動させる制御を行うことで、刃物台10のX軸方向への移動ストロークを増加させることなく、刃物台10の旋回角度αが所定値より大きい場合であってもワークWの加工を行うことができる。よって、背面主軸4に把持されたワークWを刃物台10に装着された背面側刃具12により加工するにあたり、旋回軸14を中心として刃物台10を旋回させることでZ軸方向に対して傾斜する種々の方向からワークWの加工を行うことができるようにした工作機械1において、刃物台10の旋回角度αに拘わらず、刃物台10のX軸方向のストロークを抑制しつつ傾斜方向からワークWの加工を行うことができるようにして、この工作機械1を小型化することができる。
【0044】
また、入力部30に入力された旋回角度αに基づいて、刃物台10を旋回角度αとなるように旋回させたときに背面側刃具12の刃先とワークWの被加工部位との間に生じるX軸方向の移動距離XAを算出し、当該算出結果に応じて、刃物台10及び背面主軸4をX軸方向のどの位置にまで移動させるかを予め決定することができるので、刃物台10及び背面主軸4の移動制御を容易にすることができる。
【0045】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0046】
例えば、前記実施の形態においては、工作機械1には、旋回軸14を中心として旋回する刃物台10のみが設けられているが、これに限らず、刃物台10とは別の他の刃物台を備え、当該他の刃物台に装着された刃具によってもワークWの加工を行うことができる構成とすることもできる。
【0047】
前記実施の形態においては、工作機械1は、正面主軸3と背面主軸4との一対の主軸を備えたものとされているが、これに限らず、1つの主軸のみを備えた構成とすることもできる。
【0048】
前記実施の形態においては、正面側刃具11及び背面側刃具12は、それぞれ回転刃具とされているが、これに限らず、例えばエンドミル等の他の刃具であってもよい。
【0049】
前記実施の形態においては、旋回軸14は、その軸線が正面側刃具11の刃先を通る位置に設定されているが、これに限らず、刃物台10が旋回したときに背面側刃具12の刃先のX軸方向の位置が変化すれば、その位置は種々変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 工作機械
2 基台
3 正面主軸
3a チャック
4 背面主軸
4a チャック
5 ガイドブッシュ
6 正面主軸台
6a Z軸ガイドレール
7 背面主軸台
7a Z軸ガイドレール
7b X軸ガイドレール
10 刃物台
10a 装着部
10b アーム部
11 正面側刃具
12 背面側刃具(刃具)
13 移動台
13a X軸ガイドレール
14 旋回軸
20 制御部(制御手段、算出手段)
30 入力部
W ワーク
α 旋回角度
P 基準位置
XA 移動距離
XM 最大距離
図1
図2
図3
図4