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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20221216BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20221216BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20221216BHJP
   H01L 21/337 20060101ALI20221216BHJP
   H01L 29/808 20060101ALI20221216BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
H01L29/80 F
H01L29/80 H
H01L29/80 V
H01L29/06 301M
H01L29/06 301V
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020510414
(86)(22)【出願日】2019-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2019005994
(87)【国際公開番号】W WO2019187789
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2018060958
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、環境省、未来のあるべき社会ライフスタイルを創造する技術イノベーション事業委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】宇治田 信二
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田村 聡之
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0125574(US,A1)
【文献】特開2014-003200(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138505(WO,A1)
【文献】特開2013-172108(JP,A)
【文献】特開2015-032744(JP,A)
【文献】特開2016-058648(JP,A)
【文献】特開2014-192174(JP,A)
【文献】国際公開第2015/175915(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに背向する第1の主面及び第2の主面を有する基板と、
前記第1の主面の上方に設けられた、第1の導電型を有する第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層の上方に設けられた、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層を貫通し、前記第1の窒化物半導体層にまで達する第1の開口部と、
前記第2の窒化物半導体層の上方に、及び、前記第1の開口部の内面に沿って、前記基板側から順に設けられた電子走行層及び電子供給層と、
前記電子供給層の上方で、かつ、前記第1の開口部を覆うように設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極から離れた位置において、前記電子供給層及び前記電子走行層を貫通し、前記第2の窒化物半導体層にまで達する第2の開口部と、
前記第2の開口部に設けられ、前記第2の窒化物半導体層と接続されたソース電極と、
前記第2の主面側に設けられたドレイン電極と、
前記基板の平面視における最外周部において、前記電子供給層及び前記電子走行層を貫通し、前記第2の窒化物半導体層にまで達する第3の開口部と、
前記第3の開口部に設けられ、前記第2の窒化物半導体層と接続され、かつ、前記電子走行層及び前記電子供給層に接触しない電位固定電極とを備え
前記電位固定電極は、前記第3の開口部の側壁部から離れて設けられている
窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記基板を平面視した場合に、前記第3の開口部は、前記最外周部の全周に亘って環状に設けられている
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記基板を平面視した場合に、前記電位固定電極は、前記最外周部の全周に亘って環状に設けられている
請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記基板の平面視形状は、矩形であり、
前記基板を平面視した場合に、前記電位固定電極は、前記基板の辺毎に、島状に設けられている
請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記電位固定電極は、導電性の配線層を介して前記ソース電極と電気的に接続されている
請求項1~4のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
さらに、
前記最外周部において、前記電位固定電極より外側に設けられた、前記第2の窒化物半導体層を貫通し、前記第1の窒化物半導体層にまで達する第4の開口部を備える
請求項1~5のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
さらに、
前記第4の開口部の底面に設けられた、前記第1の窒化物半導体層よりも抵抗が高い高抵抗領域を有する
請求項6に記載の窒化物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN(窒化ガリウム)などの窒化物半導体は、バンドギャップが大きいワイドギャップ半導体であり、絶縁破壊電界が大きく、電子の飽和ドリフト速度がGaAs(ヒ化ガリウム)半導体又はSi(シリコン)半導体などに比べて大きいという特長を有している。このため、高出力化、かつ、高耐圧化に有利な窒化物半導体を用いたパワートランジスタの研究開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、GaN系積層体に形成された半導体装置が開示されている。特許文献1に記載の半導体装置は、GaN系積層体に設けられた開口部を覆うように位置する再成長層と、再成長層に沿って再成長層上に位置するゲート電極とを備える縦型の電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)である。再成長層に発生する二次元電子ガス(2DEG:2-Dimensional Electron Gas)によってチャネルが形成され、移動度が高く、オン抵抗が低いFETが実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/138505号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
縦型の電界効果トランジスタでは、特にデバイスの外周部において、ドレイン-ゲート間に流れるリーク電流が問題となる。
【0006】
そこで、本開示は、リーク電流が抑制された窒化物半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示の一態様に係る窒化物半導体装置は、互いに背向する第1の主面及び第2の主面を有する基板と、前記第1の主面の上方に設けられた、第1の導電型を有する第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層の上方に設けられた、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第2の窒化物半導体層と、前記第2の窒化物半導体層を貫通し、前記第1の窒化物半導体層にまで達する第1の開口部と、前記第2の窒化物半導体層の上方に、及び、前記第1の開口部の内面に沿って、前記基板側から順に設けられた電子走行層及び電子供給層と、前記電子供給層の上方で、かつ、前記第1の開口部を覆うように設けられたゲート電極と、前記ゲート電極から離れた位置において、前記電子供給層及び前記電子走行層を貫通し、前記第2の窒化物半導体層にまで達する第2の開口部と、前記第2の開口部に設けられ、前記第2の窒化物半導体層と接続されたソース電極と、前記第2の主面側に設けられたドレイン電極と、前記基板の平面視における最外周部において、前記電子供給層及び前記電子走行層を貫通し、前記第2の窒化物半導体層にまで達する第3の開口部と、前記第3の開口部に設けられ、前記第2の窒化物半導体層と接続され、かつ、前記電子走行層及び前記電子供給層に接触しない電位固定電極とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、リーク電流が抑制された窒化物半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。
図2図2は、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の断面図である。
図3図3は、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の電極パッドの平面視形状を示す平面図である。
図4図4は、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の電極パッドを含む断面図である。
図5図5は、実施の形態1に係る窒化物半導体装置のオフリーク特性を示す図である。
図6図6は、実施の形態1の変形例1に係る窒化物半導体装置の電極パッドの平面視形状を示す平面図である。
図7図7は、実施の形態1の変形例2に係る窒化物半導体装置の電極パッドの平面視形状を示す平面図である。
図8図8は、実施の形態1の変形例3に係る窒化物半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。
図9図9は、実施の形態1の変形例4に係る窒化物半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。
図10図10は、実施の形態1の変形例4に係る窒化物半導体装置の断面図である。
図11図11は、実施の形態2に係る窒化物半導体装置の断面図である。
図12図12は、実施の形態2の変形例に係る窒化物半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
縦型の電界効果トランジスタでは、ドレイン電極と、ゲート電極及びソース電極とが基板を挟んで離れているので、ドレイン-ゲート間、及び、ドレイン-ソース間の各々のリーク電流は低くなりやすい。しかしながら、基板の最外周部では、電界集中が発生し、リーク電流が発生しやすい。具体的には、基板の最外周部においても、再成長層内に二次元電子ガスが存在しているので、電界効果トランジスタの最外周部の端面及び二次元電子ガスを介して、ドレイン-ゲート間のリーク電流が発生しやすい。
【0011】
また、縦型の電界効果トランジスタでは、ドリフト層との間でpn接合を形成するための下地層が設けられている。例えば、ドリフト層がn型の窒化物半導体を用いて形成されている場合に、下地層はp型の窒化物半導体を用いて形成されている。ソース電極は、下地層に接触するように設けられており、ソース-ドレイン間に印加される電圧によって、下地層とドリフト層との界面に空乏層を形成することで、電界効果トランジスタの高耐圧化を実現することができる。
【0012】
このとき、基板の最外周部では、ソース電極が形成されていないので、下地層の電位は、フローティング状態になる。下地層の電位がフローティング状態になることで、下地層によるチャネルのポテンシャルの持ち上げが不十分となり、ドレイン電極からドリフト層及び二次元電子ガスを介してゲート電極に至るリーク電流が発生する。
【0013】
以上のように、縦型の電界効果トランジスタでは、平面視における最外周部において、ドレイン-ゲート間にリーク電流が発生するという問題がある。
【0014】
そこで、上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る窒化物半導体装置は、互いに背向する第1の主面及び第2の主面を有する基板と、前記第1の主面の上方に設けられた、第1の導電型を有する第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層の上方に設けられた、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第2の窒化物半導体層と、前記第2の窒化物半導体層を貫通し、前記第1の窒化物半導体層にまで達する第1の開口部と、前記第2の窒化物半導体層の上方に、及び、前記第1の開口部の内面に沿って、前記基板側から順に設けられた電子走行層及び電子供給層と、前記電子供給層の上方で、かつ、前記第1の開口部を覆うように設けられたゲート電極と、前記ゲート電極から離れた位置において、前記電子供給層及び前記電子走行層を貫通し、前記第2の窒化物半導体層にまで達する第2の開口部と、前記第2の開口部に設けられ、前記第2の窒化物半導体層と接続されたソース電極と、前記第2の主面側に設けられたドレイン電極と、前記基板の平面視における最外周部において、前記電子供給層及び前記電子走行層を貫通し、前記第2の窒化物半導体層にまで達する第3の開口部と、前記第3の開口部に設けられ、前記第2の窒化物半導体層と接続され、かつ、前記電子走行層及び前記電子供給層に接触しない電位固定電極とを備える。
【0015】
これにより、最外周部に第3の開口部が設けられているので、最外周部の端面及び二次元電子ガスを介して流れるリーク電流を抑制することができる。さらに、ソース電極に接続された第2の窒化物半導体層のうち、基板の平面視における最外周部に位置する部分の電位が固定されるので、最外周部において基板、ドリフト層及び二次元電子ガスを介して流れるリーク電流を抑制することができる。このように、本態様によれば、リーク電流が抑制された窒化物半導体装置を実現することができる。
【0016】
また、例えば、前記基板を平面視した場合に、前記第3の開口部は、前記最外周部の全周に亘って環状に設けられていてもよい。
【0017】
これにより、第3の開口部が全周に亘って環状に設けられているので、窒化物半導体装置の最外周部において、端面及び二次元電子ガスを介して流れるリーク電流をより小さくすることができる。
【0018】
また、例えば、前記基板を平面視した場合に、前記電位固定電極は、前記最外周部の全周に亘って環状に設けられていてもよい。
【0019】
これにより、第2の窒化物半導体層の電位が全周に亘って固定されるので、窒化物半導体装置の最外周部において、基板、ドリフト層及び二次元電子ガスを介して流れるリーク電流をより小さくすることができる。
【0020】
また、例えば、前記基板の平面視形状は、矩形であり、前記基板を平面視した場合に、前記電位固定電極は、前記基板の辺毎に、島状に設けられていてもよい。
【0021】
これにより、平面視において、窒化物半導体装置の四隅に電界集中が発生するのを抑制することができる。電界集中の発生が抑制されることで、窒化物半導体装置の耐圧の向上及びリーク電流の低減を実現することができる。
【0022】
また、例えば、前記電位固定電極は、導電性の配線層を介して前記ソース電極と電気的に接続されてもよい。
【0023】
これにより、電位固定電極に所定の電位を与えるための電極パッドを別途設ける必要がなく、一般的なFETと同様の三端子デバイスとして実現される。
【0024】
また、例えば、本開示の一態様に係る窒化物半導体装置は、さらに、前記最外周部において、前記電位固定電極より外側に設けられた、前記第2の窒化物半導体層を貫通し、前記第1の窒化物半導体層にまで達する第4の開口部を備えてもよい。
【0025】
これにより、第4の開口部が設けられているので、最外周部の端面から第2の窒化物半導体層を介して二次元電子ガスに至る経路を通るリーク電流を抑制することができる。
【0026】
また、例えば、本開示の一態様に係る窒化物半導体装置は、さらに、前記第4の開口部の底面に設けられた、前記第1の窒化物半導体層よりも抵抗が高い高抵抗領域を有してもよい。
【0027】
これにより、高抵抗領域が設けられていることで、最外周部の端面から第1の窒化物半導体層の表層部を介して二次元電子ガスに至る経路を通るリーク電流を抑制することができる。
【0028】
以下では、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0029】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0030】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0031】
また、本明細書において、平行又は垂直などの要素間の関係性を示す用語、及び、長方形又は円形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0032】
また、本明細書において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構造における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。本明細書では、基板を基準としてゲート電極及びソース電極などが設けられた側を「上方」、ドレイン電極が設けられた側を「下方」としている。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0033】
また、本明細書において、AlGaNとは、三元混晶AlGa1-xN(0≦x≦1)のことを表す。以下、多元混晶は、それぞれの構成元素の配列、例えば、AlInN、GaInNなどのように略記される。例えば、窒化物半導体の1つであるAlGa1-x-yInN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y=1)は、AlGaInNと略記される。
【0034】
(実施の形態1)
[構成]
まず、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の構成について、図1及び図2を用いて説明する。
【0035】
図1は、本実施の形態に係る窒化物半導体装置10の平面レイアウトを示す平面図である。図2は、本実施の形態に係る窒化物半導体装置10の断面図である。
【0036】
ここで、図2は、図1のII-II線における本実施の形態に係る窒化物半導体装置10の断面を示している。具体的には、図2は、平面視における窒化物半導体装置10の最外周部48を含む範囲を示している。
【0037】
最外周部48は、例えば、図2に示すように、基板12の最外周の周縁12aと、周縁12aに最も近い閾値制御層28の周縁28aとの間の、平面視における領域である。図1図2とを比較して分かるように、最外周部48は、基板12の周縁12aに沿った環状の領域である。
【0038】
なお、閾値制御層28が設けられていない場合、最外周部48は、基板12の最外周の周縁12aと、周縁12aに最も近いゲート電極30の周縁との間の、平面視における領域であってもよい。
【0039】
図1に示すように、窒化物半導体装置10は、面内に並んで設けられた複数のソース電極34を備える。複数のソース電極34の平面視形状はそれぞれ、所定方向に長尺の長方形である。複数のソース電極34は、平面視において、長手方向及び短手方向の各々に並んで設けられている。図1に示す例では、長手方向に2個のソース電極34が並んでおり、かつ、短手方向に9個のソース電極34が並んでいる。なお、ソース電極34の個数及び形状は、これらに限定されない。
【0040】
図1に示すように、複数のソース電極34はそれぞれ、ゲート電極30に囲まれている。ゲート電極30は、ソース電極34に対応する位置に開口が設けられた一枚の板状の電極である。平面視において、ゲート電極30とソース電極34とは、距離を空けて設けられており、重複していない。
【0041】
なお、ゲート電極30は、櫛歯状の電極であってもよい。具体的には、ゲート電極30の櫛歯の延びる方向は、ソース電極34の長手方向に平行である。また、窒化物半導体装置10は、隣り合うソース電極34間に設けられたゲート電極30を複数備えてもよい。
【0042】
なお、ゲート電極30及びソース電極34の形状は、図1に示す例に限らない。例えば、ソース電極34の平面視形状は六角形であってもよい。平面視形状が六角形の複数のソース電極34は、平面視において充填配置された正六角形の頂点に複数のソース電極34の各々の中心が位置するように配置されていてもよい。
【0043】
本実施の形態では、窒化物半導体装置10は、GaN及びAlGaNなどの窒化物半導体を主成分とする半導体層の積層構造を有するデバイスである。具体的には、窒化物半導体装置10は、AlGaN膜とGaN膜とのヘテロ構造を有する。
【0044】
AlGaN膜とGaN膜とのヘテロ構造において、(0001)面上での自発分極又はピエゾ分極によって、ヘテロ界面には高濃度の二次元電子ガス(2DEG)46が発生する。このため、アンドープ状態であっても、当該界面には、1×1013cm-2以上のシートキャリア濃度が得られる特徴を有する。
【0045】
本実施の形態に係る窒化物半導体装置10は、AlGaN/GaNのヘテロ界面に発生する二次元電子ガス46をチャネルとして利用した電界効果トランジスタ(FET)である。具体的には、窒化物半導体装置10は、いわゆる縦型FETである。
【0046】
図2に示すように、窒化物半導体装置10は、基板12と、ドリフト層14と、第1の下地層16と、第2の下地層18と、第3の下地層20と、ゲート開口部22と、電子走行層24と、電子供給層26と、閾値制御層28と、ゲート電極30と、ソース開口部32と、ソース電極34と、ドレイン電極36と、外周開口部38と、電位固定電極40とを備える。さらに、図1に示すように、窒化物半導体装置10は、ゲート電極パッド42と、ソース電極パッド44とを備える。
【0047】
基板12は、窒化物半導体からなる基板であり、図2に示すように、互いに背向する第1の主面12b及び第2の主面12cを有する。第1の主面12bは、ドリフト層14が形成される側の主面である。具体的には、第1の主面12bは、c面に略一致する。第2の主面12cは、ドレイン電極36が形成される側の主面である。図1に示すように、基板12の平面視形状は、例えば矩形であるが、これに限らない。
【0048】
基板12は、例えば、厚さが300μmであり、キャリア濃度が1×1018cm-3であるn型のGaNからなる基板である。なお、n型及びp型は、半導体の導電型を示している。本実施の形態では、n型は、窒化物半導体の第1の導電型の一例である。p型は、第1の導電型とは極性が異なる第2の導電型の一例である。n型は、半導体にn型のドーパントが過剰に添加された状態、いわゆるヘビードープを表している。また、n型とは、半導体にn型のドーパントが過少に添加された状態、いわゆるライトドープを表している。p型及びp型についても同様である。
【0049】
ドリフト層14は、基板12の第1の主面12bの上方に設けられた、第1の導電型を有する第1の窒化物半導体層の一例である。ドリフト層14は、例えば、厚さが8μmであり、キャリア濃度が1×1016cm-3であるn型のGaNからなる膜である。ドリフト層14は、例えば、基板12の第1の主面12bに接触して設けられている。ドリフト層14は、例えば、有機金属気相エピタキシャル成長(MOVPE)法などの結晶成長により、基板12の第1の主面12b上に形成される。
【0050】
第1の下地層16は、ドリフト層14の上方に設けられた、第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第2の窒化物半導体層の一例である。第1の下地層16は、例えば、厚さが400nmであり、キャリア濃度が1×1017cm-3であるp型のGaNからなる膜である。第1の下地層16は、ドリフト層14の上面に接触して設けられている。第1の下地層16は、例えば、MOVPE法などの結晶成長により、ドリフト層14上に形成される。
【0051】
第1の下地層16は、ソース電極34とドレイン電極36との間のリーク電流を抑制する。例えば、第1の下地層16とドリフト層14とで形成されるpn接合に対して逆方向電圧が印加された場合、具体的には、ソース電極34よりもドレイン電極36が高電位となった場合に、ドリフト層14に空乏層が延びる。これにより、窒化物半導体装置10の高耐圧化が可能である。
【0052】
第2の下地層18は、第1の下地層16上に配置されている。第2の下地層18は、絶縁性又は半絶縁性の窒化物半導体により形成されている。第2の下地層18は、例えば、厚さが200nmであるアンドープGaNからなる膜である。第2の下地層18は、第1の下地層16に接触して設けられている。第2の下地層18は、例えば、MOVPE法などの結晶成長により、第1の下地層16上に形成される。
【0053】
なお、ここで“アンドープ”とは、GaNの極性をn型又はp型に変化させるシリコン(Si)又はマグネシウム(Mg)などのドーパントがドープされていないことを意味する。本実施の形態では、第2の下地層18には、炭素がドープされている。具体的には、第2の下地層18の炭素濃度は、第1の下地層16の炭素濃度より高い。
【0054】
また、第2の下地層18には、成膜時に混入する珪素(Si)又は酸素(O)が含まれる場合がある。この場合に、第2の下地層18の炭素濃度は、珪素濃度又は酸素濃度より高い。例えば、第2の下地層18の炭素濃度は、例えば3×1017cm-3以上であるが、1×1018cm-3以上でもよい。第2の下地層18の珪素濃度又は酸素濃度は、例えば、5×1016cm-3以下であるが、2×1016cm-3以下でもよい。
【0055】
ここで、仮に、窒化物半導体装置10が第2の下地層18を備えない場合、ソース電極34とドレイン電極36との間には、n型の電子供給層26、電子走行層24及び第3の下地層20/p型の第1の下地層16/n型のドリフト層14という積層構造を有する。この積層構造は、寄生npn構造からなる寄生バイポーラトランジスタとなっている。
【0056】
窒化物半導体装置10がオフ状態である場合、第1の下地層16に電流が流れると、この寄生バイポーラトランジスタがオンしてしまい、窒化物半導体装置10の耐圧を低下させる場合がある。この場合、窒化物半導体装置10の誤動作が生じやすい。
【0057】
第2の下地層18は、この寄生npn構造が形成されることを抑制する。このため、寄生npn構造が形成されることによる、窒化物半導体装置10の誤動作を低減することができる。
【0058】
第3の下地層20は、第2の下地層18上に配置されている。第3の下地層20は、例えば、厚さが20nmのAl0.2Ga0.8Nからなる膜である。第3の下地層20は、第2の下地層18に接触して設けられている。第3の下地層20は、例えば、MOVPE法などの結晶成長により、第2の下地層18上に形成される。なお、ドリフト層14から第3の下地層20までは連続して成膜される。
【0059】
第3の下地層20は、第1の下地層16からのMgなどのp型不純物の拡散を抑制する。仮にMgが電子走行層24中のチャネルにまで拡散した場合、二次元電子ガス46のキャリア濃度が低下してオン抵抗が増加する恐れがある。なお、Mgの拡散の程度は、エピタキシャル成長の成長条件などによっても異なる。このため、Mgの拡散が抑制されている場合には、窒化物半導体装置10は、第3の下地層20を備えなくてもよい。
【0060】
また、第3の下地層20は、電子走行層24と電子供給層26との界面に形成されるチャネルへの電子の供給機能を有してもよい。第3の下地層20は、例えば、電子供給層26よりもバンドギャップが大きい。
【0061】
ゲート開口部22は、第1の下地層16を貫通し、ドリフト層14にまで達する第1の開口部の一例である。具体的には、ゲート開口部22は、第3の下地層20の上面から、第3の下地層20、第2の下地層18及び第1の下地層16をこの順で貫通し、ドリフト層14まで達している。ゲート開口部22の底部22aは、ドリフト層14の上面である。本実施の形態では、図2に示すように、ゲート開口部22の底部22aは、ドリフト層14と第1の下地層16との界面よりも下側に位置している。
【0062】
本実施の形態では、ゲート開口部22は、基板12から遠ざかる程、開口面積が大きくなるように形成されている。具体的には、ゲート開口部22の側壁部22bは、斜めに傾斜している。例えば、ゲート開口部22の断面形状は、逆台形、より具体的には、逆等脚台形である。なお、図1では、ゲート開口部22の上端の輪郭を破線で示している。ゲート開口部22の底部22aの輪郭は、図1に示す輪郭よりも一回り小さくなる。
【0063】
ゲート開口部22は、基板12の第1の主面12b上に、ドリフト層14から第3の下地層20までを順に形成した後、部分的にドリフト層14を露出させるように、第3の下地層20、第2の下地層18及び第1の下地層16をエッチングすることにより形成される。このとき、ドリフト層14の表層部分も除去することで、ゲート開口部22の底部22aがドリフト層14と第1の下地層16との界面よりも下方に形成される。ゲート開口部22は、例えば、フォトリソグラフィによるパターニング、及び、ドライエッチングなどによって所定形状に形成される。
【0064】
電子走行層24は、第1の下地層16の上方に、及び、ゲート開口部22の内面に沿って設けられた第1の再成長層である。具体的には、電子走行層24は、第3の下地層20の上面と、ゲート開口部22の側壁部22b及び底部22aとに沿って略均一な厚さで形成されている。電子走行層24は、例えば、厚さが100nmであるアンドープGaNからなる膜である。
【0065】
電子走行層24は、ゲート開口部22の底部22aにおいてドリフト層14に接触している。電子走行層24は、ゲート開口部22の側壁部22bにおいて、第1の下地層16、第2の下地層18及び第3の下地層20の各々の端面に接触している。さらに、電子走行層24は、第3の下地層20の上面に接触している。電子走行層24は、ゲート開口部22を形成した後に、結晶の再成長により形成される。
【0066】
電子走行層24は、チャネルを有する。具体的には、電子走行層24と電子供給層26との界面の近傍には、二次元電子ガス46が発生する。二次元電子ガス46が電子走行層24のチャネルとして機能する。図2では、二次元電子ガス46を模式的に破線で図示している。電子走行層24は、アンドープであるが、Siドープなどにより、n型化してもよい。
【0067】
電子走行層24と電子供給層26との間に、厚さが1nm程度のAlN膜が第2の再成長層として設けられていても構わない。AlN膜は、合金散乱を抑制し、チャネルの移動度を向上させることができる。
【0068】
電子供給層26は、第1の下地層16の上方に、及び、ゲート開口部22の内面に沿って設けられた第3の再成長層である。なお、電子走行層24と電子供給層26とは、基板12側からこの順で設けられている。電子供給層26は、電子走行層24の上面に沿った形状で略均一な厚さで形成されている。電子供給層26は、例えば、厚さが50nmのアンドープAl0.2Ga0.8Nからなる膜である。電子供給層26は、電子走行層24の形成工程に続いて、結晶の再成長により形成される。
【0069】
電子供給層26は、電子走行層24との間でAlGaN/GaNのヘテロ界面を形成している。これにより、電子走行層24内に二次元電子ガス46が発生する。
【0070】
電子供給層26は、電子走行層24に形成されるチャネル(すなわち、二次元電子ガス46)への電子の供給を行う。なお、上述したように、本実施の形態では、第3の下地層20も電子の供給機能を有している。電子供給層26及び第3の下地層20はいずれも、AlGaNから形成されているが、このときのAl組成比は特に限定されない。例えば、電子供給層26のAl組成比は20%であってもよく、第3の下地層20のAl組成比は25%であってもよい。
【0071】
閾値制御層28は、ゲート電極30と電子供給層26との間に設けられた、第2の導電型の第3の窒化物半導体層の一例である。閾値制御層28は、電子供給層26上に設けられ、電子供給層26とゲート電極30とに接触している。
【0072】
本実施の形態では、基板12を平面視した場合に、閾値制御層28の端部は、ゲート電極30の端部よりもソース電極34に近い位置に位置している。閾値制御層28とソース電極34とは離間しており、接触していない。このため、図1に示すように、平面視において、閾値制御層28は、ゲート電極30の端部から、ソース電極34を囲む環状の部分のみが露出して現れる。
【0073】
閾値制御層28は、例えば、厚さが100nmであり、キャリア濃度が1×1017cm-3であるp型のAl0.2Ga0.8Nからなる窒化物半導体層である。閾値制御層28は、電子供給層26の形成工程から引き続いてMOVPE法によって成膜され、パターニングされることで形成される。
【0074】
閾値制御層28が設けられていることによって、チャネル部分の伝導帯端のポテンシャルが持ち上げられる。このため、窒化物半導体装置10の閾値電圧を大きくすることができる。したがって、窒化物半導体装置10をノーマリオフ型のFETとして実現することができる。
【0075】
ゲート電極30は、電子走行層24の上方で、かつ、ゲート開口部22を覆うように設けられている。本実施の形態では、ゲート電極30は、閾値制御層28の上面に沿った形状で、閾値制御層28の上面に接触して略均一な厚さで形成されている。
【0076】
ゲート電極30は、金属などの導電性の材料を用いて形成されている。例えば、ゲート電極30は、パラジウム(Pd)を用いて形成されている。なお、ゲート電極30の材料としては、n型の半導体に対してショットキー接続される材料を用いることができ、例えば、ニッケル(Ni)系材料、タングステンシリサイド(WSi)、金(Au)などを用いることができる。ゲート電極30は、ゲート開口部22を形成した後、例えば、スパッタ又は蒸着などによって成膜した導電膜をパターニングすることにより形成される。
【0077】
本実施の形態では、図1に示すように、平面視において、ゲート電極30の端部は、ゲート開口部22の端部よりもソース電極34に近い位置に位置している。具体的には、平面視において、ゲート電極30の内側に、ゲート開口部22が設けられている。
【0078】
ソース開口部32は、ゲート電極30から離れた位置において、電子供給層26及び電子走行層24を貫通し、第1の下地層16にまで達する第2の開口部の一例である。具体的には、ソース開口部32は、電子供給層26、電子走行層24、第3の下地層20及び第2の下地層18をこの順で貫通し、第1の下地層16まで達している。本実施の形態では、図2に示すように、ソース開口部32の底部32aは、第1の下地層16の上面である。底部32aは、第1の下地層16と第2の下地層18との界面よりも下側に位置している。ソース開口部32は、平面視において、ゲート開口部22から離れた位置に配置されている。
【0079】
図2に示すように、ソース開口部32は、基板12から遠ざかる程、開口面積が大きくなるように形成されている。具体的には、ソース開口部32の側壁部32bは、斜めに傾斜している。例えば、ソース開口部32の断面形状は、逆台形、より具体的には、逆等脚台形である。なお、ソース開口部32の断面形状は、略矩形であってもよい。
【0080】
ソース開口部32は、例えば、ゲート電極30の形成工程に続いて、ゲート開口部22とは異なる領域において第1の下地層16を露出させるように、電子供給層26、電子走行層24、第3の下地層20及び第2の下地層18をエッチングすることにより形成される。このとき、第1の下地層16の表層部分も除去することにより、ソース開口部32の底部32aが第1の下地層16と第2の下地層18との界面よりも下方に形成される。ソース開口部32は、例えば、フォトリソグラフィによるパターニング、及び、ドライエッチングなどによって所定形状に形成される。
【0081】
ソース電極34は、ソース開口部32に設けられている。具体的には、ソース電極34は、ソース開口部32の内面に沿って設けられている。
【0082】
ソース電極34は、第1の下地層16に接続されている。ソース電極34は、具体的には、電子供給層26、電子走行層24、第3の下地層20及び第2の下地層18の各々の端面に接続されている。ソース電極34は、電子走行層24及び電子供給層26に対してオーミック接続されている。図2に示すように、ソース電極34は、閾値制御層28には接触していない。
【0083】
ソース電極34は、金属などの導電性の材料を用いて形成されている。ソース電極34の材料としては、例えば、Ti/Alなど、n型の半導体層に対してオーミック接続される材料を用いることができる。ソース電極34は、例えば、スパッタ又は蒸着などによって成膜した導電膜をパターニングすることにより形成される。
【0084】
ソース電極34が第1の下地層16に接続されていることで、第1の下地層16の電位を固定することができる。これにより、窒化物半導体装置10の動作を安定させることができる。
【0085】
また、Alは、p型の窒化物半導体からなる第1の下地層16に対してショットキー接続される。このため、ソース電極34の下層部分には、p型の窒化物半導体に対して低コンタクト抵抗となるPd又はNiなどの仕事関数の大きい金属材料を設けてもよい。これにより、第1の下地層16の電位をより安定させることができる。
【0086】
ドレイン電極36は、基板12の第2の主面12c側に設けられている。具体的には、ドレイン電極36は、第2の主面12cに接触して設けられている。ドレイン電極36は、金属などの導電性の材料を用いて形成されている。ドレイン電極36の材料としては、ソース電極34の材料と同様に、例えばTi/Alなど、n型の半導体層に対してオーミック接続される材料を用いることができる。ドレイン電極36は、例えば、スパッタ又は蒸着などによって成膜した導電膜をパターニングすることにより形成される。
【0087】
外周開口部38は、基板12の平面視における最外周部48において、電子供給層26及び電子走行層24を貫通し、第1の下地層16にまで達する第3の開口部の一例である。具体的には、外周開口部38は、電子供給層26、電子走行層24、第3の下地層20及び第2の下地層18をこの順で貫通し、第1の下地層16まで達している。本実施の形態では、外周開口部38の底部38aは、第1の下地層16の上面である。底部38aは、第1の下地層16と第2の下地層18との界面よりも下側に位置している。
【0088】
外周開口部38は、例えば、ソース開口部32と同じ工程で形成される。このため、底部38aは、ソース開口部32の底部32aと同じ高さになる。なお、外周開口部38は、ソース開口部32とは異なる工程で形成されてもよい。
【0089】
本実施の形態では、基板12を平面視した場合に、外周開口部38は、最外周部48の全周に亘って環状に設けられている。つまり、外周開口部38は、略矩形の周縁12aに沿って途切れることなく一周している。
【0090】
また、図2に示すように、外周開口部38は、電子供給層26、電子走行層24、第3の下地層20及び第2の下地層18、並びに、第1の下地層16の表層部分を周縁から切り落とすように形成されている。つまり、断面視において、外周開口部38は、側壁部38bが基板12の周縁12a側には設けられておらず、基板12の中央側にのみ設けられている。あるいは、外周開口部38の側壁部38bは、周縁12a側にも設けられていてもよい。
【0091】
電位固定電極40は、外周開口部38に設けられ、第1の下地層16と接続され、かつ、電子走行層24及び電子供給層26に接触しない電極である。図2に示すように、電位固定電極40は、外周開口部38の底部38a上に設けられている。例えば、電位固定電極40は、外周開口部38の側壁部38bから離れて設けられている。なお、電位固定電極40は、第2の下地層18には接触していてもよい。
【0092】
本実施の形態では、図1に示すように、基板12を平面視した場合に、電位固定電極40は、最外周部48の全周に亘って環状に設けられている。つまり、電位固定電極40は、略矩形の周縁12aに沿って途切れることなく一周している。なお、電位固定電極40は、ガードリング電極とも称される。平面視において、電位固定電極40は、四隅の各々で滑らかに湾曲している。これにより、四隅での電界集中を抑制することができる。なお、電位固定電極40は、四隅の各々で直角に曲がっていてもよい。
【0093】
電位固定電極40は、金属などの導電性の材料を用いて形成されている。電位固定電極40は、例えば、パラジウム(Pd)を用いて形成されている。なお、電位固定電極40の材料としては、例えば、ニッケル(Ni)系材料、タングステンシリサイド(WSi)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、金(Au)などの、ゲート電極30と同じ材料を用いることができる。
【0094】
電位固定電極40は、例えば、スパッタ又は蒸着などによって成膜した導電膜をパターニングすることにより形成される。このとき、ゲート電極30を形成する前に外周開口部38を形成しておくことで、ゲート電極30と電位固定電極40とを同じ工程で同じ材料を用いて形成することができる。
【0095】
電位固定電極40は、例えば、ソース電極34と同じ材料でも構わない。電位固定電極40がソース電極34と同じ材料を用いて形成される場合、外周開口部38は、ソース開口部32と同じ工程で形成することができる。さらに、電位固定電極40は、ソース電極34と同じ工程で形成することができる。このため、プロセス工程の増加を抑制することができる。
【0096】
本実施の形態では、電位固定電極40は、導電性の配線層を介してソース電極34と電気的に接続されている。すなわち、電位固定電極40は、ソース電極34と同じ電位に固定されている。具体的には、電位固定電極40には、ソース電極パッド44が接続されている。
【0097】
図3は、本実施の形態に係る窒化物半導体装置10の電極パッドの平面視形状を示す平面図である。なお、図3では、ソース電極34及び電位固定電極40の平面視における輪郭形状を破線で示している。ゲート電極30などの他の構成については図示を省略している。これは、後述する図6及び図7についても同様である。
【0098】
図4は、本実施の形態に係る窒化物半導体装置10の電極パッドを含む断面図である。具体的には、図4は、図3のIV-IV線における断面を示しており、図2と同じ断面を示している。
【0099】
ゲート電極パッド42は、ゲート電極30と電気的に接続されている。ゲート電極パッド42は、例えば、ゲート電極30より上方に設けられている。本実施の形態では、ゲート電極30が一枚の板状に形成されているので、図3に示すように、ゲート電極パッド42は、窒化物半導体装置10の平面視における一部の領域のみに設けられている。ゲート電極パッド42には、ゲート電極30の制御用の電源が接続される。
【0100】
ソース電極パッド44は、複数のソース電極34の各々に電気的に接続された配線層の一例である。さらに、本実施の形態では、ソース電極パッド44は、電位固定電極40に電気的に接続されている。複数のソース電極34がそれぞれ、長尺の長方形の島状に形成されている。このため、ソース電極パッド44は、複数のソース電極34の各々を覆うように、窒化物半導体装置10の平面視において、ゲート電極パッド42を除いた大部分の領域に設けられている。例えば、ソース電極パッド44は、ゲート電極パッド42を囲むように形成されている。
【0101】
図4に示すように、ソース電極パッド44は、複数のソース電極34の各々の上方、及び、電位固定電極40の上方に設けられている。具体的には、ソース電極パッド44は、ゲート電極30を覆う層間絶縁層50の上方に設けられている。ソース電極パッド44は、厚膜化されている。例えば、ソース電極パッド44の厚さは、5μm以上である。
【0102】
層間絶縁層50は、ソース電極パッド44とゲート電極30及び閾値制御層28との絶縁性を保つために設けられている。なお、図4には示していないが、層間絶縁層50には、ゲート電極パッド42とゲート電極30とを接続するための貫通孔が設けられている。層間絶縁層50は、例えば、シリコン窒化膜又はシリコン酸化膜などである。
【0103】
層間絶縁層50には、ソース電極パッド44と複数のソース電極34の各々とを接続するための複数のコンタクトホール52、及び、ソース電極パッド44と電位固定電極40とを接続するためのコンタクトホール54が設けられている。図3には、複数のコンタクトホール52及びコンタクトホール54の平面視形状を実線で示している。
【0104】
複数のコンタクトホール52の平面視形状は、ソース電極34と同様に、長方形である。平面視において、複数のコンタクトホール52は、ソース電極34の内側に位置している。
【0105】
コンタクトホール54は、電位固定電極40と同様に、最外周部48の全周に亘って環状に設けられている。コンタクトホール54は、電位固定電極40に沿って途切れることなく一周している。これにより、電位固定電極40内での電圧降下を抑制することができ、全周に亘って電位固定電極40の電位を略均一にすることができる。
【0106】
なお、ゲート電極パッド42及びソース電極パッド44上に、表面パッシベーション用の絶縁膜が設けられていてもよい。当該絶縁膜は、例えば、SiN、SiO、Alなどで形成される。なお、表面パッシベーション用の絶縁膜の一部には、パッケージに実装する際にワイヤーボンディングを行うための開口(貫通孔)が設けられていてもよい。
【0107】
[リーク電流の抑制効果]
続いて、以上のように構成された窒化物半導体装置10のオフリーク特性について、図5を用いて説明する。図5は、本実施の形態に係る窒化物半導体装置10のオフリーク特性を示す図である。図5において、横軸は、ドレイン-ソース間に印加される電圧を表し、縦軸は、窒化物半導体装置10がオフ状態である場合のドレイン電極36に流れるドレイン電流を表している。
【0108】
一般的に、最外周に位置する電極では、電界集中が起こりやすい。このため、電位固定電極40の代わりに、二次元電子ガス46に接触するソース電極34を最外周部48に設けた場合、最外周部48のソース電極34に電界集中が発生し、二次元電子ガス46を介してドレイン-ソース間にリーク電流が発生しやすくなる。
【0109】
一方で、ソース電極34も電位固定電極40も形成されていない場合、最外周部48の第1の下地層16の電位がフローティング状態になる。このため、第1の下地層16によるポテンシャルの持ち上がり効果が小さくなる。ポテンシャルの持ち上げが不十分になった場合、最外周部48において、第1の下地層16とゲート電極30との間のキャリアを枯渇させることができなくなる。キャリアが残存することで、オフ時のドレイン-ゲート間にリーク電流が流れる。
【0110】
実際に、図5に示すように、電位固定電極40が設けられていない場合、ドレイン-ソース間電圧が大きくなるにつれて、リーク電流が大きくなっていることが分かる。
【0111】
これらに対して、本実施の形態では、電位固定電極40は、電子走行層24及び電子供給層26に接触していないので、二次元電子ガス46にも接触していない。したがって、二次元電子ガス46を介してドレイン電極36と電位固定電極40との間のリーク電流を実質的になくすことができる。
【0112】
また、電位固定電極40は、第1の下地層16と接続されているので、第1の下地層16の電位を所定の電位で維持することができる。これにより、最外周部48において、第1の下地層16とゲート電極30との間のキャリアを枯渇させ、オフ時のドレイン-ゲート間のリーク電流を抑制することができる。
【0113】
実際に、図5に示すように、電位固定電極40が設けられていることで、ドレイン-ソース間電圧が大きくなったとしても、リーク電流が抑制されていることが確認された。例えば、600Vのオフ電圧を印加したとき、電位固定電極40が設けられていない場合と比較して、オフリーク電流が約2桁低減している。
【0114】
以上の構成により、本実施の形態に係る窒化物半導体装置10によれば、最外周部48におけるリーク電流を抑制することができる。
【0115】
[変形例]
続いて、本実施の形態の変形例について説明する。以下の説明において、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0116】
<変形例1>
まず、変形例1について説明する。実施の形態では、電位固定電極40の電位をソース電極34と同じにする例を説明したが、本変形例では、電位固定電極40の電位をソース電極34と異ならせることができる。
【0117】
図6は、本変形例に係る窒化物半導体装置110の電極パッドの平面視形状を示す図である。図6に示すように、窒化物半導体装置110は、ソース電極パッド44の代わりにソース電極パッド144と電位固定電極パッド145とを備える点が、実施の形態1に係る窒化物半導体装置10と相違する。
【0118】
ソース電極パッド144は、ソース電極パッド44と同様に、コンタクトホール52を介して複数のソース電極34の各々に接続されている。本変形例では、ソース電極パッド144は、電位固定電極40とは接続されていない。
【0119】
電位固定電極パッド145は、コンタクトホール154を介して電位固定電極40に接続されている。本変形例では、電位固定電極パッド145は、ソース電極パッド144とは、電気的に絶縁されている。このため、電位固定電極パッド145には、ソース電極パッド144とは異なる電位を印加することができる。したがって、電位固定電極40の電位とソース電極34の電位とを異ならせることができる。
【0120】
図6に示すように、電位固定電極パッド145は、平面視において、基板12の一辺に沿って設けられている。具体的には、電位固定電極パッド145は、矩形環状の電位固定電極40の一辺の直上方向に位置している。矩形環状の電位固定電極40の残りの三辺の直上方向には、ソース電極パッド44が設けられている。なお、電位固定電極40とソース電極パッド44とは、層間絶縁層50(図3を参照)によって絶縁されている。
【0121】
本変形例に係る窒化物半導体装置110は、ドレイン、ソース及びゲートの三端子に加えて、電位固定電極用の端子を有する四端子デバイスとして実現される。本変形例によれば、電位固定電極40の電位をソース電極34の電位と異なる値を設定することができるので、ソース電極34に与えられる電位に依存することなく、最外周部48のリーク電流を個別に抑制することができる。
【0122】
<変形例2>
次に、変形例2について説明する。本変形例では、変形例1と同様に、電位固定電極40の電位をソース電極34と異ならせることができる。
【0123】
図7は、本変形例に係る窒化物半導体装置210の電極パッドの平面視形状を示す図である。図7に示すように、窒化物半導体装置210は、ソース電極パッド144及び電位固定電極パッド145の代わりに、ソース電極パッド244と電位固定電極パッド245とを備える点が、変形例1に係る窒化物半導体装置110と相違する。
【0124】
図7に示すように、ソース電極パッド244及び電位固定電極パッド245は、変形例1に係るソース電極パッド144及び電位固定電極パッド145と比較して、平面視形状が相違している。具体的には、電位固定電極パッド245は、ソース電極パッド244の周囲を囲むように設けられている。
【0125】
電位固定電極パッド245は、平面視において、最外周部48の全周に亘って環状に設けられている。電位固定電極パッド245は、矩形環状の電位固定電極40に沿って途切れることなく一周している。本変形例では、電位固定電極パッド245は、ソース電極パッド244だけでなく、ゲート電極パッド42も囲んでいる。
【0126】
電位固定電極パッド245に設けられたコンタクトホール254も同様に、最外周部48の全周に亘って環状に設けられている。平面視に置いて、コンタクトホール254は、矩形環状の電位固定電極40に沿って途切れることなく一周している。
【0127】
これにより、本変形例に係る窒化物半導体装置210によれば、電位固定電極40内での電圧降下を抑制することができ、全周に亘って電位固定電極40の電位を略均一にすることができる。また、本変形例によれば、電位固定電極40の電位をソース電極34の電位と異なる値を設定することができるので、ソース電極34に与えられる電位に依存することなく、最外周部48のリーク電流を個別に抑制することができる。
【0128】
<変形例3>
次に、変形例3について説明する。実施の形態1では、電位固定電極40が最外周部48の全周に亘って途切れることなく設けられている例を説明したが、本変形例では、電位固定電極40が複数に分割されて設けられている。
【0129】
図8は、本変形例に係る窒化物半導体装置310の平面レイアウトを示す平面図である。図8に示すように、窒化物半導体装置310は、電位固定電極40の代わりに電位固定電極340を備える点が、実施の形態1に係る窒化物半導体装置10と相違する。
【0130】
図8に示すように、電位固定電極340は、基板12の辺毎に、島状に設けられている。本変形例では、基板12の平面視形状が矩形であるので、基板12の四辺の各々に、直線状の電位固定電極340が設けられている。電位固定電極340の機能及び材料などは、電位固定電極40と同じである。
【0131】
電位固定電極340は、電位固定電極40の四隅が除去された形状を有する。これにより、電位固定電極340の直角又は鋭角に近い湾曲部分が現れなくなる。このため、四隅における電界集中が緩和されるので、リーク電流が抑制され、高耐圧化が実現される。
【0132】
なお、電位固定電極340の長さが短く、基板12の四隅に電位固定電極340が設けられていない領域が大きい場合には、第1の下地層16の電位がフローティング状態になる可能性がある。このため、4つの電位固定電極340はそれぞれ、できるだけ四隅に近い領域まで延びるように設けられていてもよい。これにより、四隅で発生する電界集中を抑制することができる。
【0133】
<変形例4>
次に、変形例4について説明する。実施の形態1では、複数のソース電極34の各々が平面視に置いてゲート開口部22に囲まれている例を説明したが、本変形例では、複数のソース電極34のうち少なくとも1つのソース電極34は、ゲート開口部22に囲まれていない。つまり、本変形例では、ゲート開口部22の形状が実施の形態1と相違している。
【0134】
図9は、本変形例に係る窒化物半導体装置410の平面レイアウトを示す平面図である。
【0135】
図9に示すように、窒化物半導体装置410は、ゲート開口部22の代わりにゲート開口部422を備える点が、実施の形態1に係る窒化物半導体装置10と相違する。
【0136】
図9に示すように、長手方向に並んだ2つのソース電極34を一組とした場合、ゲート開口部422に囲まれた組と、ゲート開口部422に囲まれていない組とが、ソース電極34の短手方向に並んで設けられている。具体的には、窒化物半導体装置410は、複数のゲート開口部422を備える。複数のゲート開口部422の各々の平面視形状は、長尺の0字形状又はレーストラック形状を有する。具体的には、複数のゲート開口部422の各々は、ソース電極34の長手方向に平行な直線状の部分と、当該直線状の部分の先端に設けられた曲線状の部分とを備える。なお、複数のゲート開口部422は、直線状の部分のみを備えてもよい。本変形例の場合においても、隣り合う2つのソース電極34間の全てに、ゲート開口部422が設けられているので、オン時のドレイン-ソース電流は、実施の形態1と同程度である。
【0137】
ゲート開口部422は、ドライエッチングで形成した場合に、底部22aの端部において電界集中が発生しやすく、リーク電流が発生する原因となりうる。本変形例によれば、平面視におけるゲート開口部422の面積は、ゲート開口部22の面積よりも小さくなるので、リーク電流の発生しうる部位が少なくなり、リーク電流を抑制することができる。
【0138】
図10は、本変形例に係る窒化物半導体装置410の断面図である。具体的には、図10は、図9のX-X線における断面を示している。X-X線は、ゲート開口部422が設けられていない部分である。
【0139】
図10に示すように、X-X線における断面では、最外周部48において、第1の下地層16は、ゲート開口部422に分断されることなく、最外周部48より内側のソース電極34に接続されている。このため、理想的には、第1の下地層16において、最外周部48に位置する部位と、ソース電極34の直下の部位とは、同電位になる。
【0140】
しかしながら、第1の下地層16は、最表層の閾値制御層28から数えて6層目の層であり、高温アニールによる活性化が行われにくい。したがって、第1の下地層16の抵抗値は大きくなる。このため、図10に示す断面においては、第1の下地層16の最外周部48に位置する部位がソース電極34から離れているので、当該部位はほぼフローティング状態になる。これは特に、ゲート幅が大きい大チップデバイスにおいて顕著に見られる。
【0141】
これに対して、本変形例では、図9及び図10に示すように、最外周部48には、第1の下地層16に接続された電位固定電極40が設けられている。これにより、第1の下地層16の電位が固定されるので、実施の形態1と同様に、リーク電流を抑制することができる。
【0142】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。以下の説明において、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0143】
図11は、本実施の形態に係る窒化物半導体装置510の断面図である。図11に示すように、窒化物半導体装置510は、新たにメサ分離開口部556を備える点が、実施の形態1に係る窒化物半導体装置10と相違する。
【0144】
図11に示すように、メサ分離開口部556は、最外周部48において、電位固定電極40より外側に設けられた、第1の下地層16を貫通し、ドリフト層14にまで達する第4の開口部の一例である。例えば、メサ分離開口部556は、外周開口部38を形成した後、さらに周縁12a近傍のみをエッチングすることにより形成される。あるいは、メサ分離開口部556は、外周開口部38を形成する前に形成されてもよい。
【0145】
メサ分離開口部556は、外周開口部38の底部38aの周縁12a側を切り落とすように形成されている。つまり、断面視において、メサ分離開口部556は、側壁部が基板12の周縁12a側には設けられておらず、基板12の中央側にのみ設けられている。
【0146】
本実施の形態によれば、メサ分離開口部556が設けられていることで、窒化物半導体装置10の外周端面から第1の下地層16及び二次元電子ガス46を通ってゲート電極30に至るリーク電流を抑制することができる。
【0147】
さらに、図12に示す窒化物半導体装置610のように、メサ分離開口部556の底面には、ドリフト層14よりも抵抗が高い高抵抗領域658が設けられていてもよい。図12は、本実施の形態の変形例に係る窒化物半導体装置610の断面図である。
【0148】
高抵抗領域658は、例えば、メサ分離開口部556を形成した後に、イオン注入法などによって形成される。具体的には、高抵抗領域658は、ドリフト層14を構成するn型のGaN層の表層部にマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)又はホウ素(B)などのイオンが注入されることにより形成される。なお、注入するイオンの種別は、これらに限らない。
【0149】
このように、図12に示す窒化物半導体装置610によれば、さらに、基板12の周縁12aからドリフト層14の表層部分及び二次元電子ガス46を通ってゲート電極30に至るリーク電流を抑制することができる。
【0150】
以上のように、本実施の形態及びその変形例に係る窒化物半導体装置510及び610によれば、リーク電流を一層抑制することができる。
【0151】
(他の実施の形態)
以上、1つ又は複数の態様に係る窒化物半導体装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、及び、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0152】
例えば、上記の各実施の形態では、第1の導電型がn型であり、第2の導電型がp型である例について示したが、これに限らない。第1の導電型がp型であり、第2の導電型がn型でもよい。
【0153】
また、例えば、外周開口部38は、基板12の全周に亘って設けられていなくてもよい。例えば、図8に示すように、電位固定電極40が島状に分離されている場合、外周開口部38も電位固定電極40が設けられた領域のみに分離して設けられていてもよい。
【0154】
また、例えば、窒化物半導体装置10は、閾値制御層28を備えていなくてもよい。
【0155】
また、上記の各実施の形態は、請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本開示は、リーク電流が抑制された窒化物半導体装置として利用でき、例えば、テレビなどの民生機器の電源回路などで用いられるパワートランジスタなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0157】
10、110、210、310、410、510、610 窒化物半導体装置
12 基板
12a、28a 周縁
12b 第1の主面
12c 第2の主面
14 ドリフト層
16 第1の下地層
18 第2の下地層
20 第3の下地層
22、422 ゲート開口部
22a、32a、38a 底部
22b、32b、38b 側壁部
24 電子走行層
26 電子供給層
28 閾値制御層
30 ゲート電極
32 ソース開口部
34 ソース電極
36 ドレイン電極
38 外周開口部
40、340 電位固定電極
42 ゲート電極パッド
44、144、244 ソース電極パッド
46 二次元電子ガス
48 最外周部
50 層間絶縁層
52、54、154、254 コンタクトホール
145、245 電位固定電極パッド
556 メサ分離開口部
658 高抵抗領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12