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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】新規組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20221216BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
A61K8/25
A61Q11/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020518702
(86)(22)【出願日】2018-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2018076560
(87)【国際公開番号】W WO2019068596
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】1715949.2
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】315010950
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン コンシューマー ヘルスケア(ユーケー) アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス,ロバート アンソニー
【審査官】松本 要
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535262(JP,A)
【文献】特開平04-083712(JP,A)
【文献】国際公開第2015/140060(WO,A1)
【文献】Res. Reports Asahi Glass Co., Ltd., 2011, vol.61, p.37-41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融で球状で無水の非晶質シリカゲル粒子を含む歯磨き剤組成物であって、シリカゲル粒子が、
a. 0.03ml/gから0.1ml/g未満の細孔容積;
b. 1μから10μまでの平均粒径;
c. 50m2/g以下のBET表面積;
d. 20 mL/100gから50mL/100gの油吸収容量;及び
e. 0.2重量%未満の水含有量
を含む、上記歯磨き剤組成物。
【請求項2】
シリカゲル粒子が、1800MPaから2000MPaまでの範囲の圧縮強度を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
シリカゲル粒子が、歯磨き剤中の唯一の研磨剤である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
補助的な研磨剤を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
水溶性縮合リン酸塩を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
縮合リン酸塩が水溶性アルカリ金属トリポリリン酸塩である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
減感剤を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
フッ化物イオン源を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の歯磨き剤組成物であって、シリカゲル粒子が、
a. 0.05ml/gの細孔容積;
b. 4μの平均粒径;
c. 40m2/gのBET表面積;及び
d. 30mL/100gの油吸収容量;
を含む、上記歯磨き剤組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の歯磨き剤組成物であって、シリカゲル粒子が、組成物の0.1重量%から5重量%までの量で存在する、上記歯磨き剤組成物。
【請求項11】
歯又は義歯の表面の清浄化、歯又は義歯の表面の研磨、歯又は義歯の表面からのステインの除去に用いるための、請求項1から10のいずれか一項に記載の歯磨き剤組成物。
【請求項12】
非溶融で球状で無水の非晶質シリカゲル粒子を含む歯磨き剤組成物を製造する方法であって、
沈降及びそれに続いて、水を除去し、粒状シリカ材料を産生するためのか焼の工程を含み、
シリカゲル粒子が、
a. 0.03ml/gから0.1ml/g未満の細孔容積;
b. 1μから10μまでの平均粒径;
c. 50m2/g以下のBET表面積;
d. 20 mL/100gから50mL/100gの油吸収容量;及び
e. 0.2重量%未満の水含有量
を含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0.1ml/g未満の細孔容積を有する球状で無水の非晶質シリカゲル粒子及び経口的に許容される担体を含む歯磨き剤組成物に関する。こうした組成物は、高い磨耗度を伴わずに効果的に歯又は義歯の表面を清浄化し、歯又は義歯の表面を磨き、歯又は義歯の表面からステインを除去することができ、それにより歯又は義歯の表面に対する引掻き及び損傷を低減する。こうした組成物は、それによって、歯表面又は義歯の優れた清浄化、磨き仕上げ、穏やかなステイン除去及びホワイトニングを提供する。
【背景技術】
【0002】
口腔ケア組成物、特に歯磨き剤は、歯を清浄にするために日常的に使用される。歯磨き剤は、プラーク及び他の柔らかい物質の歯からの除去に加え、食物の粒子並びにタバコ、茶又はワイン等の物質に起因する歯の変色の除去を助ける。歯の表面を清浄化し磨くことは化学的プロセス、例えば、プラーク中の成分と結合する物質により、又は機械的手段、例えば研磨性物質により、作用される。
【0003】
歯磨き剤は通常、沈着物を研削することによる歯の機械的清浄化及び磨き仕上げのために研磨性材料を組み込んでいる。研磨性材料は、例えば、歯の表面に付着したペリクル膜及びプラークを除去することによって、歯の表面からの沈着物の機械的除去をもたらすことを、主として意図される。プラーク及びペリクル膜は、例えば、茶及びコーヒー等の食品によって並びにタバコによって、変色及び着色しやすく、歯の外観を見苦しくすることにつながる。こうした機械的除去は清浄化の達成にとって重要であるが、その一方で、歯表面の損傷を最小限にするためには使用される研磨剤が過度に粗いものでないことが極めて重要である。歯を清浄化し且つ磨くことに加えて、白い歯は長い間、美容上望ましいと考えられてきた。
【0004】
特開昭62-87507(JPS6287507)は、微細球状シリカゲル粒子を含む歯磨き剤を開示している。粒子は、Brunauer Emmett-Teller(BET)法により決定した比表面積50~1200m2/g、好ましくは200~1000m2/g、細孔容積4.0ml/g以下、好ましくは0.1~1.5ml/g、屈折率1.40~1.48、平均粒径30ミクロン(μ)以下及び水分含有量65%以下、好ましくは45%、及び粒径分布2~50μを示す。JPA(公開)第87,507/1987号によれば、前述の範囲において、物理的特性を制御することにより、研磨性能を高から低までの範囲にすることができる。微細球状シリカゲル粒子は、2つの方法のうちの1つにより調製することができ、第一の方法では、予調節したpHを有するシリカヒドロゾルを非親和性の油様媒体中に懸濁し、懸濁液中で凝固させ、洗浄して不純物を除去し、次いで乾燥し、第二の方法では、シリカヒドロゾルを空気中に噴霧して、ゲルを形成し、次いでこのゲルを洗浄して不純物を除去し、乾燥する。例示された歯磨き剤組成物(実施例1~5)は、15.0から40.0重量%までの微細シリカゲル材料を含む。更に、実施例において使用された微細シリカゲル材料は以下の物理的特性:443から763までの範囲の比表面積(m2/g)、0.46から0.61の範囲の細孔容積(ml/g)、1.467の屈折率、5.8から8.6までの平均粒径(μ)及び1.0から2.0までの水分含有量(%)を有するとして開示されている。
【0005】
AU-A-55125/94(Johnson & Johnson Consumer Products Inc)は、0.01~5重量%のカルボキシビニルポリマー及び15重量%未満の球状シリカを含む歯磨き剤組成物を開示している。AU-A-55125/94によれば、40~15%の球状シリカゲル微細粒子を(JPA(公開)第87,507/1987号に記載のように)50%以上の水を含有するゲル様歯磨き剤に使用することは、高磨耗のために歯を損傷するおそれがある。更に、AU-A-55125/94によれば、歯磨き剤が(JPA(公開)第87,507/1987号に記載のように)、電動歯ブラシと共に使用される場合、研磨剤が飛び散りやすく、使用者の衣類を汚しがちである。なお更に、多量の研磨剤が使用されることにより、歯磨き剤が口中でざらつくのが感じられ、消費者に心地良い口当たりを経験させることがない。これらの問題は、AU-A-55125/94に基づき、15重量%未満の特定の特性を有する特定の形態の球状シリカゲル及びカルボキシビニルポリマーを含む歯磨き剤組成物を提供することにより、解決される。言及された特性には、BET法で測定した比表面積550~750m2/g、0.5~1.2mlの細孔容積、180℃で2時間の乾燥後の水含有量5.0%以下、Coulter counterにより測定した平均粒径5.0μ以下、及び5%の濃度での水性スラリーのpH7.0~6.0が含まれる。
【0006】
US 2010/0203092 A1(Leyら)は、少なくとも1つの配合剤を含む、ワンパート配合でシリカゲルから作製された粒径が0.1μから2μの間の球状非孔質の歯科用粒子を含む、歯科用、特に再石灰化、組成物であって、歯科用粒子が、シリカゲル由来のSiO2量が1重量%未満になるような量で存在する組成物を開示している。この発明は、一方では歯表面に十分に浸透して、歯構造のエナメル質及び象牙質の再石灰化に効率よく貢献することができ、且つ/又は他方で、細管内での物質の輸送及びシグナル伝達の妨害を促進し、それに続いて、再石灰化及びエナメル質の細孔内及び象牙質細管内での結晶成長により、及び細管を封鎖することにより、歯の減感を促進する歯科用組成物及び粒子を提供するとして開示されている。
【0007】
WO2010/068433(The Procter & Gamble Company)及び関連出願は、溶融シリカ(CAS番号60676-86-0を有するものとして数種類が開示されている)を含む口腔ケア組成物を開示している。シリカゲル材料とは対照的に、溶融シリカは典型的には、約2000℃の非常に高温で又は更に高温、例えば約4000℃で、高純度珪砂を融解することにより産生される。シリカをこうした高温まで加熱するプロセスは、シリカの多孔性及び表面機能性を破壊して、低BET表面積、即ち1m2/gから50m2/gまでの範囲をもたらすと言われている。溶融シリカは、WO2010/068433によれば、及び他の種類のシリカに関して、少量の遊離水及び/又は結合水、典型的には10%未満を含む。
【0008】
US 8,734,764 B2(Sunstar Inc.)は、溶融シリカ及び歯科用研磨剤を含む口腔用組成物を開示している。US 8,734,764によれば、その中の口腔用組成物は、研磨能の割には高いステイン除去能を有し、それが、歯を必要以上に損傷することなく、ステインを効率よく除去することを可能にする。溶融シリカは、二酸化ケイ素粉末を、高温(例えば、2000から3000℃)の炎で溶融することにより、或いはケイ素粉末又は環状シロキサンを高温炎で酸化及び溶解することにより、産生することができる。US 8,734,764によれば、シリカは一度溶融され且つ凝固されているため、シリカ粒子は高密度で、硬度が増している。溶融シリカ粒子は、好ましくは高度の真球度を有する、即ち、その形状が完全球体に近いものとして、開示されている。溶融シリカのBET比表面積は、15m2/g以下、好ましくは10m2/g以下として、開示されている。油吸収は、通常、20mL/100g以下、好ましくは10mL/100gとして開示されている。
【発明の概要】
【0009】
第一の態様において本発明は、0.1ml/g未満の細孔容積を有する球状で無水の非晶質シリカゲル粒子及び経口的に許容される担体を含む歯磨き剤組成物に関する。本明細書において言及されるシリカゲルは、WO2010/068433又はUS 8,734,764 B2に記載されているような溶融シリカではない。「溶融」シリカは、その製造プロセスに「溶融する」ステップを含む。本発明において使用するシリカゲル粒子は、非溶融である。こうした粒子は、沈降及びそれに続いて、水を除去し、高密度の(低多孔度の又は非孔質の)粒状シリカ材料を産生する、か焼(即ち、高温ではあるが、融点又は溶融点より低い温度への加熱)を含む工程によって得られてよい。こうしたプロセスの例は、US 7,070,748 B2に記載されている。
【0010】
一態様において、本発明は、シリカゲル粒子が、0.1ml/g未満、例えば、0.03ml/gから0.07ml/gまでの細孔容積、1μから10μまでの平均粒径、20mml/100gから50ml/100gの油吸収容量、及び50m2/g以下のBET表面積を含む、球状で無水の非晶質シリカゲル粒子を含む歯磨き剤組成物を提供する。
【0011】
本発明は、特定のシリカゲル粒子が、本明細書に記載のように、他のシリカ(沈降シリカ及び溶融シリカの両方)と比較して、過度に摩損性であることなく、驚くほど良好な清浄特性を発揮するという発見に基づいている。ステインは、非常に効率よい方式で、例えば、本明細書に記載のような特性を有するシリカゲル粒子を含む歯磨き剤組成物を用いて歯をブラッシングすることによって、除去され得ることが見出されている。更に、組成物は、さもなければ組成物を日常的な使用を意図するコンシューマーヘルスケア製品としての使用に不適切にさせる、許容されないほど高いエナメル質又は象牙質の磨耗に悩まされることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】種々の歯磨き剤製剤の染色ペリクル除去値(Stained pellicle removal values)。
図2】種々の歯磨き剤製剤の相対的象牙質磨耗性値。
図3-1】粒径及び粒子形態を示す、低及び高倍率におけるシリカ試料のSEM画像。
図3-2】図3-1のつづきである。
図4-1】吸脱着等温線(Belsorp-miniによる)。
図4-2】図4-1のつづきである。
図5-1】細孔分布(脱着)。
図5-2】図5-1のつづきである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、以下により詳細に記載される。
【0014】
以下の定義は、以下に明記されるように本発明の説明の検討において考慮されるべきである。
【0015】
本明細書において使用される場合、単語「を含む(comprising)」は、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。
【0016】
本明細書において使用される場合、単語「含む(include)」、及びその変形は、リスト中の項目の記載が、本発明の材料、組成物及び方法に同様に有用であり得る他の項目を除外するものではないように、非限定的であるよう意図される。
【0017】
本明細書において使用されるパーセンテージは全て、別段の指定がない限り、全歯磨き剤組成物の重量による。
【0018】
全体を通じて使用される場合、範囲は、その範囲内の各々の及び全ての値を記載するための簡潔表現として使用される。範囲内のいかなる値も、範囲の末端として選択され得る。
【0019】
本明細書において、「有効量」は、明確な利益、通常は口腔保健利益を提供するのに十分な、所与の剤又は材料の量を意味する。
【0020】
本明細書において使用される場合、語「約」は、組成物のパラメーターの値に適用される場合、値の算出又は測定が、組成物の化学的又は物理的特質に実質的な影響を及ぼすことなく、わずかな不正確さを許すことを示す。
【0021】
歯磨き剤組成物は、口腔活動を目的として、全ての歯表面及び/又は口腔組織に接触するのに十分な時間の口腔への適用を意図された製品である。本明細書において使用される場合、「歯磨き剤組成物」は、別段の指定がない限り、ペースト又はゲル製剤を意味する。
【0022】
本発明において使用するシリカゲル粒子は、AGCエスアイテック株式会社(福岡県北九州市若松区北湊町13番1号、郵便番号808-0027、日本)により市販されており、Sunsphere(登録商標)のブランド名で、例えば、Sunsphere NP-30及びSunsphere NP-100が販売されている。本発明において使用する数種類のシリカゲル粒子に対するCAS番号は、7631-86-9である。Sunsphere(登録商標)シリカゲル粒子は、ケイ酸ナトリウムから由来し、結晶性シリカは含有しない。Sunsphere(登録商標)シリカゲル粒子は、ほぼ同一サイズの球状粒子からなり、凝集せず、滑らかなテクスチャを与える。Sunsphere(登録商標)シリカゲル粒子は、化粧品スキンケア産業においての使用、例えばファンデーション及びメークアップにおける使用で知られている。また、塗料産業において、表面をより滑らかにし、流動性を向上させ、塗膜のブロッキング防止効果及び水分吸着性を与えるための樹脂フィラーとしての使用で知られている。一実施形態において、本発明において使用するシリカゲル粒子は、以下に示す特性又はそれに近い特性(±10%)の組合せを含む。
【0023】
【表1】
【0024】
本発明において使用するシリカゲル粒子は、高い真球度を有し、即ち、球状又は実質的に球状であり、例えば本明細書の実施例4に示すように、例えば走査型電子顕微鏡法によって見ることができる。疑念を回避するために、実質的に球状のシリカゲル粒子は、粒子全体が、大部分が丸みを帯びているか又は楕円形の形状である、いかなる粒子をも意味する。好適には、本発明において使用するシリカゲル粒子は、滑らかな又は実質的に滑らかな表面を含む。
【0025】
好適には、球状シリカゲル粒子の少なくとも90%が実質的に球状であり、より好適には、球状シリカゲル粒子の95%が本質的に球状であり、更により好適には、球状シリカゲル粒子の99%が本質的に球状である。
【0026】
好適には、本発明において使用するシリカゲル粒子は、1μから10μまで、より好適には3μから8μまでの範囲の平均粒径(直径)を有する。好適には、粒子は一般に、均一なサイズであり、例えば1μから15μまでの狭い粒径分布を有する。粒径は、レーザー回折によって決定してよい。
【0027】
本発明において使用するシリカゲル粒子は、無水である。本明細書において使用される場合、用語「無水」は、シリカゲル粒子中に存在する非常に少量の、即ち好適には0.5重量%以下の、遊離水及び/又は結合水を含む。一実施形態において、水含有量は0.3重量%未満である。一実施形態において、水含有量は0.2重量%未満である。遊離水及び/又は結合水の量は、熱重量分析(TGA)によって決定されてよい。分析は、例えば本明細書において実施例5に実証されるように、20~30mgの試料に対して、周囲温度から120℃までの温度範囲における気流下で、昇温速度5℃/分で、TA-Instrument SDT Q600 simultaneous TGA/DSCを用いて行われてよい。
【0028】
好適には、本発明において使用するシリカゲル粒子は、少量の表面結合水酸基を含む。好適には、シリカゲル粒子中に存在する表面結合水酸基の量は、0.1%未満、より好適には0.0%である。表面結合水酸基の量は、熱重量分析(TGA)によって決定されてよい。分析は、例えば本明細書において実施例5に実証されるように、20~30mgの試料に対して、120℃から1000℃までの温度範囲における気流下で、昇温速度5℃/分で、TA-Instrument SDT Q600 simultaneous TGA/DSCを用いて行われてよい。
【0029】
本発明において使用するシリカゲル粒子は、非晶質又は本質的に非晶質であり、即ちX線回折測定によって決定する場合に検出可能な結晶性物質を含まない。
【0030】
本発明において使用するシリカゲル粒子は、他の公知のシリカゲル粒子と比較して、低い細孔容積を含む。好適には、細孔容積(ml/g)は、0.1未満であり、即ち、細孔容積(ml/g)は、ゼロ超であるが0.1未満であり、例えば、0.01から0.09まで、又は0.01から0.08まで、又は0.03から0.07までの範囲である。
【0031】
本発明の一実施形態において、本発明において使用するシリカゲル粒子は、非孔質又は実質的に非孔質であり、即ち、実質的に又は完全に閉鎖された表面(検出限界を超えた)を含む。多孔度は、Ojeda, Phys. Chem. Chem. Phys 5, 1859-1866, 2003によって記載された方法により、又は本明細書において実施例6及び7に記載の方法によって決定されてよい。
【0032】
好適には、本発明において使用するシリカゲル粒子は、他の沈降シリカと比べ比較的硬い材料であり、例えば、剪断応力に対してより耐性があり、且つ剪断下でより崩壊しにくい。好適には、本発明において使用するシリカゲル粒子の圧縮強度(MPa)は、1800から2000まで、例えば1850から1950までの範囲である。圧縮強度は、マイクロ圧縮強度試験機を用いて決定してよい。
【0033】
好適には、本発明において使用するシリカゲル粒子は、公知の歯科用研磨剤、例えばZeodent-103及びZeodent-115として市販されている沈降シリカに観察されるBET表面積値と比較して、小さなBET表面積値を有する。本発明において使用するシリカゲル粒子は、50以下のBET表面積(m2/g)を有する。一実施形態において、シリカゲル粒子は、40以下のBET表面積(m2/g)を有する。一実施形態において、シリカゲル粒子は、30以下のBET表面積(m2/g)を有する。一実施形態において、シリカゲル粒子は、20以下のBET表面積(m2/g)を有する。一実施形態において、シリカゲル粒子は、10以下のBET表面積(m2/g)を有する。一実施形態において、シリカゲル粒子は、5以下のBET表面積(m2/g)を有する。BET表面積の測定値は、表面に吸着された窒素の量を測定することによって、好適には、Brunaur et al., J. Am. Chem. Soc., 60, 309 (1938)により記載されるように、又は本明細書において実施例6及び7に実証されるように、決定される。
【0034】
好適には、本発明において使用するシリカゲル粒子は、公知の歯科用研磨剤、例えば、79.8及び110.7の油吸収値(oil absorption value)(ml/100g)をそれぞれ有すると報告され、WO2010/068433において報告されているZeodent-109及びZeodent-119に観察される油吸収容量と比較して、小さな油吸収容量を有する。本発明において使用するシリカゲル粒子は、好適には20から50まで、より好適には35以下、更により好適には25から35までの範囲の油吸収容量(ml/100g)を有する。油吸収は、2007年1月4日に公開された米国特許出願2007/0001037A1に記載されている方法に従って、測定されてよい。
【0035】
好適には、本発明において使用するシリカゲル粒子は、組成物の0.1重量%から15重量%までの量で存在してよい。一実施形態において、シリカゲル粒子は、組成物の0.2重量%から10重量%までの量で存在する。一実施形態において、シリカゲル粒子は、組成物の0.3重量%から8重量%までの範囲の量で存在する。一実施形態において、シリカゲル粒子は、組成物の1重量%以下、例えば、0.1%から1%までの範囲、例えば組成物の0.2重量%から0.7重量%まで、例えば組成物の約0.5重量%の量で存在する。一実施形態において、シリカゲル粒子は、組成物の10重量%以下、例えば、0.1%から10%までの範囲、例えば組成物の2重量%から8重量%、例えば組成物の約5重量%の量で存在する。
【0036】
本発明の歯磨き剤組成物は、任意選択で、補助的な研磨剤を、こうした剤が象牙質磨耗に対して有意に有害に影響しないことを条件として、更に含んでよい。
【0037】
本発明に用いる補助的な研磨剤の好適な例には、溶融シリカ、沈降シリカ、含水シリカ、籾殻シリカ、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、水和アルミナ、か焼アルミナ、炭酸カルシウム、無水リン酸二カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、水不溶性メタリン酸ナトリウム、ジルコニア、パーライト、ダイヤモンド、ピロリン酸塩、軽石、ポリマー粒子、リン酸カルシウムベースの鉱物(例えば、リン酸三カルシウム(TCP)、水和HA及び混合相(HA:TCP)リン酸カルシウム鉱物)及びそれらの混合物が含まれる。
【0038】
補助的な研磨剤は、一般に、組成物の0.1重量%から20重量%までの範囲、又は全歯磨き剤組成物の0.1重量%から10重量%までの範囲の量で使用されてよい。
【0039】
一実施形態において、本発明の歯磨き剤組成物は、溶融シリカを含まない。
【0040】
一実施形態において、本発明の歯磨き剤組成物は、本明細書において記載のように唯一の研磨剤として、シリカゲル粒子を含む。
【0041】
放射線象牙質磨耗(Radioactive dentine abrasion)(RDA)は、歯磨き剤の磨耗性の尺度である。歯磨き剤製剤の磨耗性の決定のための確立された方法は、相対的象牙質磨耗性(RDA)を測定することによる(Hefferen, JJ. A laboratory method for measuring dentifrice abrasivity. J. Dent. Res. 55 563-573, 1976又は本明細書において実施例3に記載されるように)。このアッセイは、試験材料、例えば練り歯磨きの25:40w/wスラリーによる長時間のブラッシングによる、ヒト象牙質の調製された試料からの象牙質の喪失を測定する。象牙質試料は放射線照射を受けて、無機質中に32Pを生成する。アッセイは、ブラッシング後の上清における放射活性を、ピロリン酸カルシウムの標準スラリーによるブラッシングによって放出された放射活性に対して、測定する。
【0042】
好適には、本発明の組成物は10から250までの範囲、例えば20から200まで、又は30から150までの範囲のRDA値を含む。
【0043】
シリカゲル粒子が組成物の0.1重量%から10重量%までの範囲の量で存在する、一実施形態において、組成物のRDAは、100から200までの範囲である。
【0044】
シリカゲル粒子が組成物の0.1重量%から7重量%までの範囲の量で存在する、一実施形態において、組成物のRDAは、100から140までの範囲である。
【0045】
シリカゲル粒子が組成物の0.1重量%から1重量%までの範囲の量で存在する、一実施形態において、組成物のRDAは、10から100までの範囲である。
【0046】
シリカゲル粒子が組成物の0.3重量%から0.7重量%までの範囲の量で存在する、一実施形態において、組成物のRDAは、20から60までの範囲である。
【0047】
歯磨き剤の清浄化能は、ペリクル清浄率(Pellicle Cleaning Ratio)(PCR)試験-例えば本明細書において実施例2に記載されるように、研磨剤含有歯磨き剤のステイン清浄化(ホワイトニング)作用の特徴付けにおいて有用であるとして公認された実験室的方法-を用いて実証されてよい。PCR値は、実験値100を与えられている標準物質(Ca2P2O7、Odontex Inc.)に対して算出される。
【0048】
好適には、本発明の歯磨き剤は、50から200までの範囲、好適には、60から150までの範囲のPCR値を含む。
【0049】
シリカゲル粒子が0.1重量%から10重量%までの範囲の量で存在する、一実施形態において、組成物のPCRは、50から200までの範囲である。
【0050】
シリカゲル粒子が組成物の0.1重量%から7%重量までの範囲の量で存在する、一実施形態において、組成物のPCRは、50から150までの範囲である。
【0051】
シリカゲル粒子が組成物の0.1%から1%までの範囲の量で存在する、一実施形態において、組成物のPCRは、50から110までの範囲である。
【0052】
シリカゲル粒子が組成物の0.3重量%から0.7重量%までの範囲の量で存在する、一実施形態において、組成物のPCRは、80から100までの範囲である。
【0053】
本発明の歯磨き剤は、最小限の象牙質磨耗を伴って、歯表面の優れた清浄化及びステイン除去を示す。本発明の歯磨き剤の高清浄性/低磨耗性はまた、歯磨き剤に対する清浄効率指数(Cleaning Efficiency Index:CEI)値にも反映されることがある。清浄効率指数は、当業者によって容易に決定されうる。Schemehorn BR, Ball TL, Henry GM, Stookey GK. "Comparing dentifrice abrasive systems with regard to abrasion and cleaning." J. Dent Res 1992; 71: 559、或いは例えば、本明細書において実施例3に記載されるものを参照のこと。
【0054】
好適には、本発明の歯磨き剤は、1から3までの範囲の、好適には、1.2から2.5まで、又は1.5から2.0までの範囲のCEI値を含む。
【0055】
放射線エナメル質磨耗値(REA)は、歯磨き剤の摩損性のもう1つの尺度である。歯磨き剤製剤の摩損性の決定のための確立された方法は、相対的エナメル質磨耗性(REA)を測定することによる(Hefferen, JJ. A laboratory method for measuring dentifrice abrasivity. J. Dent. Res. 55 563-573, 1976)。このアッセイは、試験材料、例えば練り歯磨きの25:40w/wスラリーによる長時間のブラッシングによる、ヒトエナメル質の調製された試料からのエナメル質の喪失を測定する。エナメル質試料は放射線照射を受けて、無機質中に32Pを生成する。アッセイは、ブラッシング後の上清における放射活性を、ピロリン酸カルシウムの標準スラリーによるブラッシングによって放出された放射活性に対して、測定する。
【0056】
好適には、本発明の歯磨き剤は、15以下のREA値、好ましくは10以下のREA値を含み、安全且つ許容可能な最大のREA値は40である。
【0057】
本発明の歯磨き剤組成物は、低摩損性と共に良好な清浄性を提供し、結果としてより清浄で、より白く、且つ高度に磨かれた歯表面を、より少ない着色又は無着色と、プラーク及び歯石の低減を伴ってもたらし、口腔保健の向上につながる。
【0058】
本発明の歯磨き剤組成物は、水性又は非水性であってよい。市販に適した組成物の調製において使用される水は、好ましくは、イオン含有量が低く、且つ有機不純物不含有であるべきである。水が存在する場合、水は一般に、組成物の約5重量%から約70重量%まで、例えば10重量%から50重量%までを構成することになる。一般に、水のレベルは、組成物の40重量%以下、例えば20重量%以下、例えば0.1重量%から15重量%までである。水の量は、他の材料、例えば湿潤剤又は界面活性剤によって導入される水に更に加算される、遊離水を含む。
【0059】
本発明の歯磨き剤組成物は更に、水溶性縮合リン酸塩、例えばピロリン酸アルカリ金属塩、トリポリリン酸塩、又はより高次のポリリン酸塩、特に、水溶性アルカリ金属トリポリリン酸塩を含んでよい。好適には、この塩のナトリウム形態が好ましいが、カリウム塩又は混合したナトリウム塩及びカリウム塩も同様に好ましい実施形態として使用されるかもしれない。全ての物理的形態、例えば水和又は無水形態が使用され得る。
【0060】
最も好適には、水溶性アルカリ金属トリポリリン酸塩は、トリポリリン酸ナトリウムである。
【0061】
好適には、水溶性縮合リン酸塩(例えば、アルカリ金属トリポリリン酸塩)は、組成物の1.0重量%から20.0重量%まで、例えば2.0重量%から15.0重量%まで、又は1.0重量%から10重量%まで、又は5.0重量%から10.0重量%までの量で存在する。
【0062】
本発明の歯磨き剤組成物は、更に重炭酸アルカリ金属塩を含んでよい。歯磨き剤組成物におけるこうした塩の包含は、いくつかの理由から、例えば良好なプラーク除去能を与えるため、並びに歯磨き剤のホワイトニング特性を向上させるため、有益である。重要なことには、重炭酸塩は、ブラッシング及び水でのすすぎの後で、口腔内に清浄なフレッシュ感を与える。好適には、重炭酸アルカリは、重炭酸ナトリウムである。好適には、重炭酸ナトリウムは、組成物の20重量%から90重量%までの量で、好ましくは、組成物の60重量%から80重量%までの量で、より好ましくは、組成物の65重量%から70重量%までの量、例えば、組成物の66重量%から68重量%までの量で、存在する。
【0063】
本発明の歯磨き剤組成物は、歯磨き剤組成物に従来使用される1つ以上の活性剤、例えば、フッ化物源、減感剤、抗菌剤、抗プラーク剤、抗歯石剤、口臭剤(oral malodour agent)、抗炎症剤、抗酸化剤、抗真菌剤、創傷治癒剤、又はそれらの少なくとも2つの混合物を含んでよい。こうした剤は、所望の治療効果を与えるレベルで含まれてよい。
【0064】
減感剤の例には、細管封鎖剤又は神経減感剤及びこれらの混合物、例えばWO02/15809(Block)に記載のものが含まれる。減感剤の例には、ストロンチウム塩、例えば、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム又は硝酸ストロンチウム、或いはカリウム塩、例えば、クエン酸カリウム、塩化カリウム、重炭酸カリウム、グルコン酸カリウム、特に、硝酸カリウムが含まれる。
【0065】
減感剤、例えばカリウム塩は、一般に、組成物の2重量%から8重量%までの範囲、例えば組成物の5重量%の量で存在する。
【0066】
別の実施形態において、減感剤は、アルギニン炭酸カルシウム塩を含む。好適には、アルギニン塩は、組成物の0.5重量%から30重量%まで、例えば、組成物の1重量%から10重量%まで、又は組成物の1重量%から10重量%まで、例えば組成物の2重量%から8重量%までの範囲の量で存在する。
【0067】
一実施形態において、減感剤は、生体活性ガラスを含む。好適には、生体活性ガラスは、45重量%の二酸化ケイ素、24.5重量%の酸化ナトリウム、6重量%の酸化リン、及び24.5重量%の酸化カルシウムからなる。こうした生体活性ガラスの1つは、NOVAMINの商品名で市販されており、45S5 BIOGLASSとしても知られている。
【0068】
好適には、生体活性ガラスは、組成物の1重量%から20重量%まで、例えば、組成物の1重量%から15重量%まで、又は組成物の1重量%から10重量%まで、又は組成物の2重量%から8重量%までの範囲の量で存在する。
【0069】
一実施形態において、減感剤は、スズ塩、例えば塩化スズ又はフッ化スズを含む。スズ塩は、加水分解及び酸化反応によって、不溶性金属塩を形成し、不溶性金属塩は、象牙質細管内及び象牙質表面に沈降して象牙質の過敏症の効果的な緩和を与える。スズ塩はまた、歯牙浸食、う蝕及びプラーク/歯肉炎に対する利益をも提供する。
【0070】
更なる一実施形態において、減感剤は、シリカ、コロイド状シリカ、ナノ酸化亜鉛、サブミクロンアルミナ及びサブミクロンポリマービーズを、1nmから5μまでの範囲の平均粒径を含む微細粒子状形態で含む。
【0071】
本発明の組成物に用いる好適なフッ化物イオン源は、アルカリ金属フッ化物、例えばフッ化ナトリウム、モノフッ化リン酸アルカリ金属塩、例えばモノフッ化リン酸ナトリウム、フッ化スズ、又はフッ化アミンを、25から3500ppmまでの、好ましくは100から1500ppmまでのフッ化物イオンを提供する量で含む。典型的なフッ化物源は、フッ化ナトリウムであり、例えば、組成物は0.1から0.5重量%までのフッ化ナトリウム、例えば、0.204重量%(923ppmのフッ化物イオンに相当)、0.2542重量%(1150ppmのフッ化物イオンに相当)、又は0.315重量%(1426ppmのフッ化物イオンに相当)のフッ化ナトリウムを含有してよい。
【0072】
こうしたフッ化物イオンは、歯の再石灰化の促進を助け、う蝕、歯牙浸食(即ち酸摩耗)及び/又は歯の摩耗に対処するための歯の硬い組織の酸耐性を増大することができる。
【0073】
本発明の組成物は、追加の製剤化剤、例えば、界面活性剤、湿潤剤、非研磨性(増粘)シリカ、香味剤、甘味剤、乳白剤又は着色剤、防腐剤及び水を、従来、口腔衛生組成物技術分野において、こうした目的で使用されるものから選択されて含有することになる。
【0074】
本発明に用いる好適な界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、例えばC10-18アルキル硫酸ナトリウム、例えばラウリル硫酸ナトリウムを含む。ラウリル硫酸ナトリウムは、一般にアニオン性で、強く帯電していると考えられ、歯をブラッシングする際に高レベルの発泡が所望される場合、有用である。
【0075】
アニオン性界面活性剤に加えて、双性イオン性、両性、カチオン性及び非イオン性又は低イオン性界面活性剤を、発泡特性を助けるために使用してよい。アニオン性及び両性界面活性剤を一緒に使用する場合、口当たりの改善及び良好な清浄化の両方を提供することになる最適な発泡系が達成される。両性界面活性剤の例には、長鎖アルキル(例えば、C10~C18アルキル)ベタイン、例えば、「Empigen BB」の商品名でAlbright & Wilsonにより市販されている製品及び長鎖アルキルアミドアルキルベタイン、例えばコカミドプロピルベタインが含まれる。
【0076】
本発明に用いるアニオン性/両性界面活性剤の組合せの特に好ましい例は、ラウリル硫酸ナトリウム/コカミドプロピルベタインである。
【0077】
好適には、界面活性剤は、組成物の0.1から15重量%まで、例えば、組成物の0.5重量%から10重量%まで、又は組成物の1.0から5重量%までの範囲の量で存在する。
【0078】
本発明の組成物に用いる好適な湿潤剤は、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール、又はそれらの少なくとも2つの混合物を含み、湿潤剤は、組成物の10重量%から80重量%まで、例えば、組成物の20重量%から70%まで、又は組成物の30重量%から60重量%までの範囲の量で存在してよい。
【0079】
本発明の組成物は、義歯等の清浄化のために、口腔外で使用されてもよいことが理解されよう。
【0080】
本発明の歯磨き剤組成物は、典型的には、練り歯磨き、インスタント粉末、錠剤及びゲルの形態に製剤化される。本発明の好ましい組成物は、練り歯磨き及びゲルである。
【0081】
本発明の歯磨き剤は、典型的には、当技術分野において従来用いられているようにラミネートチューブ又はポンプに含有されそこから分配されるのに適した、ペーストの形態に製剤化される。追加の例は、発泡剤、例えばペンタン又はイソペンタンを用いるバッグインキャン又はバッグオンバルブ送達システムを含んでよい。
【0082】
本発明の組成物を作製する典型的プロセスは、好適には、真空下で、均一な混合物が得られるまで成分を混和すること、及び必要に応じてpHを調節することを含む。本発明は、歯表面のステイン、プラーク及び/又は歯石を低減するのに用いるための、以上に定義したような組成物を提供する。本発明は、歯表面のステイン、プラーク及び/又は歯石を低減する方法であって、以上に定義したような有効量の組成物を、それを必要とする個人に適用することを含む、方法を提供する。本発明は、更に以下の実施例によって例証される。
【実施例
【0083】
[実施例1]
本発明の組成物
【0084】
【表2】
【0085】
[実施例2]
ウシエナメル質からの染色ペリクル除去の尺度としてのペリクル清浄率試験(PCR)
導入
以前の試験(J. Dent. Res., 61:1236, 1982)は、歯磨き剤スラリーによるin-vitro PCR試験の結果が、妥当な信頼度をもって、臨床所見を予測し得ると考えられる可能性があることを示している。
【0086】
前述の歯磨き剤製剤1及び2を、ウシエナメル質からのペリクル染色を除去するそれらの能力に関して評価し、代替シリカ研磨性材料を含有する類似の比較製剤(本発明の範囲には包含されない)と比較した。比較例の製剤の詳細を表2に示す。
【0087】
【表3】
方法
ウシの永久中中切歯を切断して約8x8mm2の唇側エナメル質標本を得た。エナメル質標本を次いで、エナメル質表面のみが曝露されるように、自己重合性メタクリレート樹脂中に、包埋した。次いでエナメル質表面を、宝石加工ホイール上で滑らかにし、軽石粉及び水で磨き、次いで超音波処理して余分な破片を除去した。次に標本を、軽くエッチング(0.12MのHCl中で60秒、飽和NaCO3中で30秒、且つ1.0%フィチン酸中で60秒)して、ステインの蓄積及び付着を促進した。次いで、タンパク源としての胃ムチン並びに染色源としてのコーヒー、茶及びFeCl36H2O(即ち、400ml中に1.35gのコーヒー、1.35gの茶、0.02gのFe及び1.0gのムチン)を含有する染色ブロスに交互に標本を曝露する回転ロッド上に、標本を、最低10日間配置して、標本が十分なステインを確実に発現するようにした。
【0088】
in vitroステインの量を、光度測定により(Minolta 2600d、分光測色計)、LABスケールのL値のみを用いてグレード付けした。測定した標本の面積は、エナメル質試料の中心部の直径1/4インチの円であった。L値の測定値が30~38の間(30がより暗く染色されている)である標本を使用した。これらの測定値に基づき、標本を、16個ずつ、各群が、同一の平均ベースライン測定値を有するよう群に分けた。
【0089】
次いで、標本を、ソフトナイロンフィラメント(Oral-B 40 Indicator)歯ブラシを備えたメカニカルV-8クロスブラッシング機にマウントした。歯ブラシは、ブラッシング機を脱イオン水中で、1000ストローク作動させることによって調整した。エナメル質表面の張力を150gに調節した。25gの歯磨き剤を40mlの脱イオン水と混合することにより調製したスラリーとして、歯磨き剤を使用した。ADA標準物質を、10gの物質と0.5%CMC溶液50mlを混合することによって調製した。標本を、800ダブルストローク、ブラッシングした。機械的変動を最小限にするために、1群につき1標本を、8つのブラッシングヘッドの各々でブラッシングした。ブラッシングする標本ごとに、新鮮なスラリーを使用した。ブラッシング後に、標本をすすぎ、吸い取って乾燥させ、前述のように、ステインを再び、測定した。ブラッシング前後間のステイン測定値の差を決定し、平均値及び標準誤差を、標準物質群に対して算出した。標準物質群の清浄率に対して100の値を割り当てた。標準群について、平均減少量を100に分け、試験内での個々の試験減少量の複数回に対する定数値を得た。次いで、各標本の個々の清浄率を算出した(減少量X定数)。次に、各群(N=16)について、平均値及び平均値の標準誤差(SEM)を、個々の清浄率を用いて算出した。清浄率の値が大きくなるほど、除去された染色ペリクルの量は多い。
【0090】
Sigma Stat (3.1) Softwareを用いて、一元配置分散分析(ANOVA)モデルにより、個別平均値の統計学的解析を行った。ANOVAは、有意差を示すため、Student Newman-Keuls(SNK)検定によって、個別平均値を分析した。
【0091】
結果
結果を図1にグラフとして示す。
【0092】
エラーバーはSEMを表す。Student Newman-Keuls分析によって決定した場合、文字a、b又はcに結合された値には、有意差がない(p>0.05)。
【0093】
本発明において使用するシリカゲル粒子は、ペリクルからのステイン除去に、最も有効であった。試験した溶融シリカのうちの1つ、比較例E(Spheron N2000J)は、同様な結果を示したが、方向的に、本発明において使用するシリカゲルを含有する製剤からの結果が、最良の結果を示した。本発明において使用するシリカゲルは、試験した沈降シリカ(Zeodent 103)より10倍低い濃度で効果的に、且つ別の沈降シリカ(Zeodent 113)及び溶融シリカ(Spheron P-1500)よりも有意に効果的に、清浄化した。
【0094】
[実施例3]
ウシエナメル質試料に対する磨耗性の尺度としての相対的象牙質磨耗性試験(RDA)
導入
前述の歯磨き剤製剤1及び2を、それらの磨耗性(RDAによって決定)に関して評価し、代替シリカ研磨性材料を含有する類似の比較製剤(本発明の範囲には包含されない)と比較した。
【0095】
方法
使用した手順は、ISO/ADA推奨の歯磨き剤摩損性の決定手順であった。象牙質標本(8)を、ISO/ADAによって概説された制御条件下で、中性子束の中に配置した。次いで標本を、V-8クロスブラッシング機に取り付けられるよう、メチルメタクリレート中にマウントした。0.5%のCMCグリセリン溶液50ml中10gのISO/ADA標準物質からなるスラリーを用いて、標本を、予調整作動において1500ストローク、ブラッシングした(歯が以前に使用されていたため)。使用したブラシは、ISO/ADAによって規定されたもので、以前の試験において使用された。ブラシ張力は150gであった。予調整作動に続き、試験を、150g及び1500ストロークを用いて、以下の表3に概説するように、各試験材料スラリー(歯磨き剤25g/水40ml)の両側に標準物質スラリー(ADA標準物質10g/0.5%CMC50ml)を配置する、サンドイッチデザインで行った。
【0096】
【表4】
各標準物質スラリーから1mlの試料を取り出し、秤量し(0.01g)、4.5mlのシンチレーションカクテルに加えた。試料を十分に混合し、直ちに、放射線検出のためのシンチレーションカウンターに配置した。カウンティングに続いて、1分間当たりの正味カウント数(CPM)値を試料の重量で割ってスラリーの正味CPM/gを算出した。次に、各試験スラリーに対するADA標準物質添加前後の正味CPM/gを算出して平均化し、試験材料に対するRDAの算出に使用した。ISO/ADA物質に100の値を割り当て、試験材料に対するその比を算出した。最近、新たなロットのADA標準物質が使用された。この物質は、旧バッチよりも摩損性が3.6%低く、したがって標準物質CPMに3.6%を加える必要がある。これによりこのデータを以前のデータと直接、比較することが可能である。
【0097】
Sigma Stat Software (13.0)を用いて、一元配置ANOVAモデルにより、統計学的解析を行った。有意差が示されるため、個別平均値は、Student Newman-Keuls(SNK)検定によって、分析した。
【0098】
結果
RDAの結果を図2にグラフとして示す。更に、各群について、平均値、標準偏差(SD)及びSEMを算出し、同様に図2に示す。
【0099】
0.5%のSunsphere NP-30シリカを含有する歯磨き剤及び5%の沈降シリカ(Zeodent 113)を含有する歯磨き剤は、類似した、低RDA値を示し、これらの値は試験した他の全てのシリカ材料よりも有意に低かった。5.0%のSunsphere NP-30シリカを含有する歯磨き剤は、5%の(異なる)沈降シリカ(Zeodent 103)を含有する別の歯磨き剤と類似のRDAを有した。試験した溶融シリカのうちの1つ(Teco-Sil 44CSS)は、試験した他の全ての歯磨き剤よりも、有意に磨耗性が高かった。試験した歯磨き剤は全て、今日市販されている製品に関する許容範囲内にあり、ISO及びADAの要件を満たしていた。
【0100】
図1及び図2に示すPCR及びRDAデータはまた、表4に表の形態でも示す。試験した各製剤の清浄効率指数(CEI)(SEMエラー値を除く)もまた、示す。CEI値は、以下の計算によって決定した。
CEI=(RDA+PCR-50)/RDA
【0101】
【表5】
【0102】
[実施例4]
シリカ試料に対し走査型電子顕微鏡法を行って、粒子のサイズ及び形態を決定した。溶融シリカ及び沈降シリカを、比較の目的で含めた。
【0103】
計測手段
アルミニウムスタブ上のカーボンパッドにマウントした、金でコーティングした試料のSEMを、10eVで作動しているJeol 6480 LV SEMで行った。
【0104】
結果
シリカ試料のSEM画像を図3に示す。
【0105】
考察
Zeodent及びTeco-Sil試料は、マイクロ次元の不規則集合体からなっていた。Zeodent試料は、ナノスケールテクスチャを有するように思われ、Teco-Sil材料は、より滑らかで、またプレート様形態のいくつかの粒子をも呈した。Sunsphere NP-30及びSpheron材料は本質的に、滑らかな球状粒子からなっていた。Spheron P-1500は、他の球状粒子とは異なり、表面のナノメートルサイズの突起により表面が荒くなっていた。
【0106】
[実施例5]
気流を1000℃まで加熱することにより、粉末試料で、TGA-DSCを行って、温度上昇及び相変化(ある場合には)に伴う重量減少を決定した。
【0107】
計測手段
分析は、20~30mgの試料に対して、TA-Instruments SDT Q600 simultaneous TGA/DSCを用いて、周囲温度から1000℃までの温度範囲における気流下で、昇温速度5℃/分で行った。
【0108】
結果
結果を、以下の表5で実証し、表5は、室温(RT)から120℃までの範囲(主として結合水)及び120℃から1000℃までの範囲(主として結合ヒドロキシル)にわたって、TGAにより測定した、シリカ試料の重量パーセント減少を示す。
【0109】
【表6】
【0110】
[実施例6]
表面積及び多孔度の分析
シリカ試料の表面積を、BET N2吸着により測定し、等温プロットもまた測定して、細孔の径及び容積を決定した。
【0111】
計測手段
ガス収着(N2、77K)からの算出Brunauer Emmett Teller(BET)比表面積を、Micromeritics 3-Flexガス収着分析器で測定した。全ての粉末試料(400~700mg)を、オーブン中で、真空(10-3mbar)下、200℃で8時間、予脱気し、次に分析を行う前に、3-Flex analyser中で、超高真空(10-6mbar)下、200℃で16時間、脱気した。
【0112】
結果
表面積
表面積の測定値を表6に示す。Zeodent 103試料及びSpheron P-1500は、中程度の表面積80~90m2/gを、Zeodent 103は45m2/gの表面積を有し、残りの試料は低い表面積を有していた。
【0113】
多孔度
77KでのN2吸脱着プロファイルの等温プロット及び細孔径分布を測定し、最新の非局所密度汎関数理論(NLDFT)によって算出した。1測定した表面積及び等温測定値から算出した多孔度を表6に示す。
【0114】
【表7】
全体として、試料の表面積は大きいものから順に、以下のように見出された:
Spheron P-1500 > Zeodent-115 > Zeodent-103 > Sunsphere NP-30 > TecoSil 44CSS > TecoSil 44C > Spheron N-2000J
【0115】
考察
Zeodent 及びSpheron P-1500の試料は、中程度に高い表面積及びメソ多孔度を有することが見出され、残りの試料は、本質的に表面積が少なく非孔質であった。
【0116】
[実施例7]
比表面積及び細孔容積
装置
BELSORP-mini(MicrotracBEL、日本)
【0117】
【表8】
原理
比表面積、細孔容積、及び粒径を、窒素吸着法を用いて、決定した。分析に先立ち、不活性ガスを連続的に流すのと連動して昇温することによって達成される脱気プロセスにおいて、シリカ試料を予調整し、物理的に結合している不純物を除去した。シリカ表面に吸着されたガスの体積を窒素の沸点(-196℃)で測定した。吸着されたガスの量をシリカ粒子の比表面積と相関させた。計算は、BET(Brunauer, Emmett and Teller)理論に基づいた。窒素吸着法はまた、細孔容積及び細孔径の決定をも可能にする。測定は、以下のプロトコールを用いて行った:
【0118】
測定条件
比表面積
予調整:N2流30mL/分で、30分間300℃で加熱。室温で冷却且つN2中で30分間。
窒素分圧の測定:多点測定
細孔容積
予調整: N2流30mL/分で、30分間300℃で加熱。室温で冷却且つN2流中で30分間。
測定時の窒素圧:0.1MPa
操作手順
1)0.2gの試料をサンプルチューブに充填し、圧を測定条件範囲まで低下させる。
2)サンプルチューブの弁を閉じ、秤量する(A)。
3)Aとサンプルチューブ単独(ブランク)との重量差を概算する。
4)多孔度の測定を開始する。
5)比表面積を、次の2つの式を用いて算出する。
[BETの式]
【0119】
【数1】
[比表面積とVm間の関係計算]
【0120】
【表9】
本発明の実施形態として例えば以下を挙げることができる。
[実施形態1]
0.1ml/g未満の細孔容積を有する球状で無水の非晶質シリカゲル粒子及び経口的に許容される担体を含む歯磨き剤組成物。
[実施形態2]
シリカゲル粒子の平均粒径が1μから10μまでである、実施形態1に記載の歯磨き剤組成物。
[実施形態3]
シリカゲル粒子の水含有量が0.5重量%未満である、実施形態1又は2に記載の組成物。
[実施形態4]
シリカゲル粒子が、0.01から0.09ml/gまでの範囲の細孔容積を含む、実施形態1から3のいずれかに記載の組成物。
[実施形態5]
シリカゲル粒子が、1800MPaから2000MPaまでの範囲の圧縮強度を含む、実施形態1から4のいずれかに記載の組成物。
[実施形態6]
シリカゲル粒子が、50m 2 /g以下のBET表面積を含む、実施形態1から5のいずれかに記載の組成物。
[実施形態7]
シリカゲル粒子が、20から50の油吸収容量(mL/100g)を含む、実施形態1から6のいずれかに記載の組成物。
[実施形態8]
シリカゲル粒子が、歯磨き剤中の唯一の研磨剤である、実施形態1から7のいずれかに記載の組成物。
[実施形態9]
補助的な研磨剤を含む、実施形態1から7のいずれかに記載の組成物。
[実施形態10]
水溶性縮合リン酸塩を含む、実施形態1から9のいずれかに記載の組成物。
[実施形態11]
縮合リン酸塩が水溶性アルカリ金属トリポリリン酸塩である、実施形態10に記載の組成物。
[実施形態12]
減感剤を含む、実施形態1から11のいずれかに記載の組成物。
[実施形態13]
フッ化物イオン源を含む、実施形態1から12のいずれかに記載の組成物。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】