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▶ エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】改良されたポリアミド用安定剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20221216BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20221216BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20221216BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20221216BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K7/02
C08K5/098
C08L65/00
C08K7/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020520639
(86)(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2018079130
(87)【国際公開番号】W WO2019081566
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】15/794,811
(32)【優先日】2017-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スニール バンディ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス パウリーク
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-205156(JP,A)
【文献】特表2016-508082(JP,A)
【文献】特開昭62-273258(JP,A)
【文献】特表2015-516477(JP,A)
【文献】特開平09-087454(JP,A)
【文献】国際公開第2007/126157(WO,A1)
【文献】特開平03-153732(JP,A)
【文献】特開平06-099553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
a)30~90重量%のポリアミド樹脂、
b)5%~65重量%の強化繊維、
c)0.01~10重量%のシュウ酸スズ(II)および
d)0.1~20重量%の機能性添加剤
を含み、
前記機能性添加剤がポリアルケニレンであり、
前記含有量が合計で100重量%となり、
前記機能性添加剤が、下記式:
【化1】
(式中、nは3~10である。)
の繰り返し単位で構成されるポリアルケニレンである
熱可塑性組成物。
【請求項2】
以下:
a)40~70重量%のポリアミド樹脂、
b)20~50重量%の強化繊維、
c)0.4~5重量%のシュウ酸スズ(II)および
d)1~15重量%の機能性添加剤
を含み、
前記含有量が合計で100重量%となる、請求項1記載の熱可塑組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂が、ナイロン6、ナイロン6.6、ナイロン6.12、ナイロン4.6、ナイロン6.10、ナイロン7、ナイロン10、ナイロン10.10、ナイロン12、ナイロン12.12、ナイロン9.T、ナイロン10.T、ナイロン6.T、ナイロン6.T/6.I、ナイロン6.T/D.T、ナイロンMXD.6およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載の熱可塑性組成物。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂が半結晶性ポリフタルアミドである、請求項1記載の熱可塑性組成物。
【請求項5】
前記強化繊維がガラス繊維である、請求項1記載の熱可塑性組成物。
【請求項6】
潤滑剤、ガラス充填剤、鉱物充填剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、顔料、染料、酸化防止剤、熱安定剤、加水分解安定剤、核剤、難燃剤、相乗剤、滴下抑制剤及び発泡剤から選ばれる1種又は2種以上をさらに含む、請求項1記載の熱可塑性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐熱老化性および耐久性を有するポリアミドに関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロンポリマーは通常、ペレットまたはフレークの形をとり、プラスチック用途で使用するために溶融され成形されたり、アパレル、カーペット、エアバッグおよびアウトドアギアなどの糸用途で使用するために繊維として押出成形されたりすることができる。ナイロンポリマーは、その優れた弾性、染色堅牢度、および高融点のために、多くの用途に適している。
【0003】
ナイロン樹脂は、他の用途に適するようにするために、樹脂に望ましい特性を付与する添加剤がしばしば配合される。望ましい特性には、耐熱老化性と耐衝撃性がある。典型的には、ポリマー組成物はしばしば、樹脂の機械的特性を変えるためのフィラーを含む。
【0004】
さまざまな目的で使用されるナイロンポリマーの熱安定性は、非常に重要な特性である。自動車および電気製品または電子機器などに使用されているプラスチック部品は、長時間高温にさらされると、ポリマーの熱劣化により機械的特性が低下する。この種の現象は、熱老化として知られている。このような機械的特性の低下を防止するために、通常、様々な熱安定剤をポリマーに添加して、それらの熱老化特性を改善する。例えば、ポリアミドは通常、フェノール系酸化防止剤、芳香族アミン、およびヨウ化カリウムまたは臭化カリウムと組み合わせた銅または銅塩を含む熱安定剤で安定化されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、非金属無機フィラーおよび元素鉄が熱老化特性を達成するために熱可塑性組成物に使用された。特許文献2は、熱老化安定性を改善するポリアミド樹脂および多価アルコールを含む熱可塑性組成物を開示している。特許公報3は、製品の色変化のみを検出するために、芳香族ポリアミドの熟成が行われたことを開示している。特許文献4は、ポリアミドとポリアルケニレンを含むポリアミドを開示しているが、該組成物の熱老化と機械的データに関しては言及していない。しかしながら、これらの組成物はいずれも、230℃で1,000時間以上でのすべての適用要件を満たすことができない。
【0006】
自動車と電子産業の急速な発展に伴い、ポリマー材料のより優れた熱安定性が必要とされている。したがって、標準的な安定化システムに関して老化安定性が向上した組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許公報第7,763,674号
【文献】米国特許公開公報第2013/0228728号
【文献】米国特許公報第5,162,483号
【文献】米国特許公開公報第2015/0306854A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、改善された熱老化安定性を有する熱可塑性組成物に関する。該熱可塑性組成物は、ポリアミド樹脂、強化繊維、シュウ酸スズ(II)、および機能性添加剤を含む。ポリアミド樹脂とシュウ酸スズ(II)および機能性添加剤との組み合わせにより、ポリアミド樹脂単独よりも優れた熱安定性を示す優れた製品が得られることがわかった。
【0009】
本発明は、改善された熱老化安定性を提供する熱可塑性組成物に関する。熱可塑性組成物は、請求項1に記載されるようなポリアミド樹脂、強化繊維、シュウ酸スズ(II)および機能性添加剤を含む。ポリアミド樹脂とシュウ酸スズ(II)および機能性添加剤との組み合わせにより、ポリアミド樹脂単独よりも優れた熱安定性を示す優れた製品が得られることがわかった。
【0010】
本発明に使用できる適切なポリアミド樹脂には、当技術分野で知られているすべてのポリアミドが含まれる。これらには、脂肪族、半結晶性、アモルファス、芳香族または半芳香族ナイロン樹脂がある。ナイロン樹脂は、必須的にラクタムまたはジアミン、および脂肪族、半芳香族または芳香族ジカルボン酸の出発物質から作製されたものである。適切なラクタムには、カプロラクタムおよびラウロラクタムがある。適切なアミンには、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、2-メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン(MXD)、およびパラキシリレンジアミンがある。そのような適切なジカルボン酸には、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸(DDDA)、テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウム-スルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、およびヘキサヒドロイソフタル酸がある。本発明では、これらの出発物質に由来するナイロンホモポリマーまたはコポリマーが、単独でまたはそれらの混合物として使用される。
【0011】
本発明に適したポリアミド樹脂の具体例は、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウラミド(ナイロン12)、ポリヘキサメチルエナジパミド(ナイロン6.6)、ポリテトラメチルエナジパミド(ナイロン4.6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6.10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6.12)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプラミドコポリマー(ナイロン6.T/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6.T/12)、ポリヘキサメチルエナジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6.6/6.T)、ポリヘキサメチルエナジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー6.6/6.I)、ポリヘキサメチルエナジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/-ポリカプラミドコポリマー(ナイロン6.6/6.I/6)、ポリヘキサメチルエナジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6.6/6.T/6.I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/-ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6.T/6.I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6.T/M5.T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンセバカミド/ポリカプラミドコポリマー(ナイロン6.T/6.10/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/ポリヘキサメチルエナジパミドコポリマー(ナイロン6.T/12/6.6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6.T/12/6.I)、ポリm-キシリレナジパミド(ナイロンMXD.6)、半結晶性ポリフタルアミド(6.T、6.I、6.6)、およびそれらの混合物とコポリマーなどである。
【0012】
本発明に適したナイロン樹脂は、ナイロン6、ナイロン6.6、ナイロン6.12、ナイロン4.6、ナイロン6.10、ナイロン7、ナイロン10、ナイロン10.10、ナイロン12、ナイロン12.12、ナイロン6.T、ナイロン9.T、ナイロン10.T、ナイロン6.T/6.I、ナイロン6.T/DT、ナイロンMXD.6、およびそれらの組み合わせまたはコポリマーである。本発明の好ましい実施形態では、ポリアミド樹脂は、ナイロン6.6を含む。本発明のより好ましい実施形態では、ポリアミド樹脂は、例えば(VESTAMID(登録商標)HTplus M1000、Evonik Industries AG社の商標)のような半結晶性ポリフタルアミド(6.T、6.I、6.6)である。
【0013】
本発明に好ましく使用される適切な強化繊維には、当技術分野で知られているすべての強化繊維が含まれる。本発明による方法において、および当該方法によって得られる組成物において使用可能な強化剤は、高温用途で使用するための繊維強化熱可塑性組成物での使用に適したすべてのタイプの非金属繊維強化剤であってよい。本明細書では、繊維強化剤については、長さ、幅、および厚みを有する材料であるとみなし、その平均長さは、幅と厚さの両方よりも著しく長い。一般に、このような材料は、長さ(L)の平均比として定義されるアスペクト比UDを有し、幅と厚さ(D)の最大値は少なくとも5である。好ましくは、繊維状強化剤のアスペクト比は、少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、さらにより好ましくは少なくとも50である。
【0014】
本発明による方法において、および当該方法によって得られる組成物において使用可能な適切な非金属繊維強化剤は、例えば、ガラス繊維、炭素またはグラファイト繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、セラミック繊維、ウォラストナイトやウィスカーなどの鉱物繊維である。好ましくは、ガラス繊維が選択される。
【0015】
本発明の熱可塑性組成物はまた、機能性添加剤を含んでいてもよい。機能性添加剤は、流動助剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、反応性成分の特性で、またはすべての特性を合わせて定義される。本明細書の一部を構成するものとして援用される米国特許第4,346,194号、第6,579,581号および第7,671,127号は、耐衝撃性改良成分を有するナイロン樹脂を教示している。
【0016】
他の適切な機能性添加剤には、無水マレイン酸官能化エラストマーエチレンコポリマー、無水マレイン酸官能化エラストマーエチレン/プロピレンコポリマー、エチレン、アクリル酸エステルおよび無水マレイン酸のターポリマー、無水マレイン酸グラフト(MAH)ポリオレフィンエラストマー、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0017】
好ましい機能性添加剤は、好ましくは以下の式:
【化1】
(式中、nは、3~10、好ましくは5~8である。)
の繰り返し単位で構成されるポリアルケニレンである。それは、メタセシス触媒の存在下でのシクロオレフィンの開環重合により主に生成される。重合度は、一般に6~2,000、好ましくは15~1,500、特に好ましくは25~1,200である。適切なポリマーの例は、ポリペンテニレン、ポリヘキセニレン、ポリヘプテニレン、ポリオクテニレン、ポリノネニレン、ポリデセニレン、ポリ(3-メチルオクテニレン)、ポリ(3-メチルデセニレン)、ポリウンデセニレンまたはポリドデセニレンである。ポリアルケニレンは、ポリアルケナマーと呼ばれることもあり、この群に属するポリマーは、ポリペンテナマー、ポリヘキセナマー、ポリヘプテナマー、ポリオクテナマーなどと呼ばれることもある。
【0018】
ポリペンテニレンの製造は、例として米国特許第3,607,853号に記載されている。ポリヘキセニレンは、ブタジエンとエテンの交互共重合によって生成される。ポリヘプテニレンは、シクロヘプテンのメタセシスによって生成され(US4,334,048)、ポリオクテニレンは、シクロクテンのメタセシスによって生成される(A.Draxler、Kautschuk + Gummi、Kunststoff 1981年、185~190頁)。高級ポリアルケニレンも同様に生成される。本発明の目的のために、混合ポリアルケニレン、すなわちコポリマー(US3,974,092;US3,974,094)、または種々のポリアルケニレンの混合物を使用することもできる。
【0019】
開示された組成物のポリアミド樹脂含有量は、好ましくは、組成物の総重量に対し、30重量%~99.9重量%、35重量%~95重量%、40重量%~90重量%、45重量%~85重量%、50重量%~80重量%、55重量%~75重量%、特に60重量%~70重量%の範囲である。
【0020】
開示された組成物の強化繊維含有量は、好ましくは、組成物の総重量に対し、0重量%~70重量%、5重量%~65重量%、10重量%~60重量%、15重量%~55重量%、20重量%~50重量%、25重量%~45重量%、特に30重量%~40重量%の範囲である。
【0021】
開示された組成物のシュウ酸スズ(II)含有量は、好ましくは、組成物の総重量に対し、0.01重量%~10重量%、0.05重量%~9重量%、0.08重量%~8重量%、0.1重量%~7重量%、0.15重量%~6重量%、0.2重量%~5重量%、0.3重量%~6重量%、0.4重量%~5重量%、0.5重量%~4重量%、特に0.6重量%~4重量%の範囲である。
【0022】
開示された組成物の機能性添加剤含有量は、好ましくは、組成物の総重量に対し、0.1重量%~20重量%、0.5重量%~18重量%、1重量%~15重量%、3重量%~13重量%、特に5重量%~10重量%の範囲である。
【0023】
本発明の熱可塑性組成物は、潤滑剤、ガラス充填剤、鉱物充填剤、可塑剤、顔料、染料、抗酸化剤、熱安定剤、加水分解安定剤、核剤、難燃剤、相乗剤、滴下抑制剤、膨張剤、発泡剤などの添加剤、およびそれらの組み合わせをさらに含んでいてもよい。適切な鉱物充填剤は、カオリン、粘土、タルク、ウォラストナイト、珪藻土、二酸化チタン、雲母、アモルファスシリカ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてよい。潤滑剤は、ステアリン酸金属、エチレンビスステアラミド、または他の任意の適切な潤滑剤であってよい。適切なガラス充填剤は、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。また、ガラス繊維は、耐加水分解性を得るために、サイジング組成物およびオルガノシランカップリング剤でコーティングされていてもよい。適切な被覆ガラス繊維は、米国特許第6,207,737号、第6,846,855号、第7,419,721号および第7,732,047号に教示されており、本明細書の一部を構成するものとして援用する。適切な熱安定剤は、ヒンダードフェノール、アミン酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、アリールアミン、リン系酸化防止剤、銅熱安定剤、多価アルコール、トリペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0024】
本発明による方法は、繊維強化熱可塑性成形組成物を生成するのに適した任意の既知の溶融混合法によって実施することができる。そのような方法は、典型的には、熱可塑性ポリマーを溶融温度より高く加熱することにより、または熱可塑性ポリマーがガラス転移温度を超えるアモルファスポリマーである場合は熱可塑性ポリマーの溶融物を形成することにより実施される。
【0025】
本発明による方法は、溶融混合装置で実施することができ、溶融混合によってポリマー組成物を調製する分野の当業者に知られているすべての溶融混合装置を使用することができる。適切な溶融混合装置は、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、一軸スクリュー押出機、および二軸スクリュー押出機である。好ましくは、すべての所望成分を、押出機(押出機のスロートまたはメルトのいずれか)に投入するための手段を備えた押出機が使用される。
【0026】
本発明による方法では、組成物を形成するための構成成分は、溶融混合装置に供給され、その装置で溶融混合される。構成成分は、粉末混合物または顆粒混合物として同時に供給されてもよく(ドライブレンドとしても知られている)、あるいは別々に供給されてもよい。
【0027】
本発明による方法は、シュウ酸スズ(II)を添加する方法に限定されない。それは、例えば、顆粒形態の熱可塑性ポリマーと粉末形態のシュウ酸スズ(II)を含む粉末、ドライブレンドまたはプレミックス、あるいは担体ポリマー中に微細に分散された基本粒子のマスターバッチとして添加されてよい。
【0028】
ポリアルケニレンとシュウ酸スズ(II)を熱可塑性ポリマーに比べて少量添加する場合に、ポリアルケニレンとシュウ酸スズ(II)の投与精度のより良い制御が可能となるので、好ましくは、シュウ酸スズ(II)およびポリアルケニレンを、マスターバッチの形で添加する。マスターバッチを使用するもう1つの利点は、ポリアルケニレンおよびシュウ酸スズ(II)と熱可塑性ポリマーとの均一なブレンドを容易に得ることができる点である。
【0029】
マスターバッチは、バインダー、潤滑剤、着色剤、充填剤、難燃剤成分、または他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0030】
好ましくは、マスターバッチは、ポリアルケニレン成分とシュウ酸スズ(II)を、9-6(ポリアルケニレン)~1-4(スズ塩)の重量比で含み、これらの2つの成分の合計は10、より好ましくは約8~2である。
【0031】
本発明の別の実施形態は、ポリアミド樹脂と上記のマスターバッチ組成物から形成される成形品を成形するための方法を含む。この方法は、粒状ポリアミド樹脂をマスターバッチ組成物と緊密に混合または組み合わせて、複合熱可塑性組成物を形成し、該マスターバッチ組成物が複合熱可塑性組成物を約0.05重量%~約20重量%含み、次いで該複合熱可塑性組成物を成形品へ成形する工程を有する。この方法によって生成された複合熱可塑性組成物は、射出成形、押出またはキャスト硬化によって成形品を作製するために使用され得る。
【0032】
本発明の熱可塑性組成物は、所望の熱老化基準を満たすことがわかった。好ましくは、複合ポリアミド組成物は、温度老化前の引張強度と比較して、500時間の熱風処理(ISO 2578)後に、その引張強度(破断点応力)の60%を超える引張強度を保持することができる。
【0033】
より好ましくは、230℃での1,000時間の熱風試験後、複合ポリアミド組成物は、その引張強度の60%を超える引張強度を保持することができる。
【0034】
実施例
以下の実施例は、本発明およびその使用性能を実証する。本発明は、他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、本発明の範囲および目的から逸脱することなしに、種々の明白な点で修正することができる。したがって、実施例は、本質的に例示的なものであり、非限定的であると見なされるべきである。
【0035】
以下の実施例は、半結晶性ポリフタルアミド(PPA)樹脂(VESTAMID(登録商標)HTplus M1000)を使用して実行された。PPG Fiber Glass社から入手可能なチョップドグラスファイバーCHOPVANTAGE HP 3610などの市販のグラスファイバーを使用した。 80重量%のポリアルケニレン(VESTENAMER(登録商標)8012、Evonikの商標)と20重量%のシュウ酸スズ(II)とのマスターバッチを使用した。シュウ酸スズ(II)は、SIGMA-ALDRICH社から市販されていた。商標名VESTENAMER(登録商標)8012のポリアルケニレンは、EVONIK INDUSTRIES AG社から市販されていた。
【0036】
異なる組成物の含有量を合計100までの重量部で表1に示す。
【0037】
配合物は、27mm二軸スクリュー押出機で、半結晶性ポリフタルアミドとポリアルケニレンおよびシュウ酸スズ(II)のマスターバッチとを溶融ブレンドして調製した。押出機は、約300rpmのスクリュー速度かつ20kg /時間のスループットで約320℃に維持された。ガラス繊維を、スクリューサイドフィーダーを通して溶融物に添加し、複合混合物をストランドの形で押し出し、ウォーターバスで冷却し、ペレットに細断し、120℃で16時間乾燥した。水分含有量レベル0.1%でペレットをテストし、次いで標準のISO引張試験片として射出成形した。
【0038】
引張強さおよび破断点伸びを、ISO 527に従って測定した。テストは、射出成形ISO引張試験片を使用して行われた。熱風老化試験は、ISO 2578試験法に従って実施された。老化状態をシミュレートするために、サンプルを再循環空気オーブンで熱老化させた。熱劣化中の特定の間隔でサンプルをオーブンから取り出し、温度と湿度が制御された部屋で冷ました。最後に、機械的特性と熱的特性をテストする前に、老化したサンプルと対応する対照群を16時間調整した。
【表1】
【0039】
*80%のVESTENAMER 8012と20%のシュウ酸スズ(II)のマスターバッチが使用された。
C=比較例、Ex=本発明による実施例。
【0040】
表1は、ポリアルケニレン(VESTENAMER(登録商標)8012)とシュウ酸スズ(II)のマスターバッチの量を変更した樹脂の結果を示す。サンプルは、230℃での0時間、500時間、および1,000時間の熱老化をテストしたものである。C1とEx1(ガラス繊維なし)を比較すると、熱老化の点で、VESTENAMER(登録商標)8012/シュウ酸スズ(II)のプラスの影響が示されている。C2とEx2~Ex4(ガラス繊維を30%含む)を比較すると、熱老化の点で、VESTENAMER(登録商標)8012/シュウ酸スズ(II)のプラスの影響が示されている。C3とEx5およびEx6(ガラス繊維50%)を比較すると、熱老化の点で、VESTENAMER(登録商標)8012/シュウ酸スズ(II)のプラスの影響が示されている。より良い比較のために、破断応力の正規化された値も示されている。
【0041】
VESTENAMER(登録商標)8012は、耐衝撃性改良剤のようにも機能する。VESTENAMER(登録商標)8012の含有量が増えると、破断応力は減少する。