IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 杉金光電(蘇州)有限公司の特許一覧

特許7195320偏光板-キャリアフィルム積層体、偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法および偏光板の製造方法
<>
  • 特許-偏光板-キャリアフィルム積層体、偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法および偏光板の製造方法 図1
  • 特許-偏光板-キャリアフィルム積層体、偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法および偏光板の製造方法 図2
  • 特許-偏光板-キャリアフィルム積層体、偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法および偏光板の製造方法 図3
  • 特許-偏光板-キャリアフィルム積層体、偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法および偏光板の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】偏光板-キャリアフィルム積層体、偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法および偏光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20221216BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221216BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20221216BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B27/00 101
B32B27/16 101
B32B27/38
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020530695
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 KR2018015940
(87)【国際公開番号】W WO2019117675
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】10-2017-0173307
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521241281
【氏名又は名称】杉金光電(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ミ・ソ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ユンキョン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ウ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ウク・キム
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-160775(JP,A)
【文献】特開2017-144713(JP,A)
【文献】特開2017-149849(JP,A)
【文献】国際公開第2007/097303(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0037811(KR,A)
【文献】特開2000-006538(JP,A)
【文献】特開2002-129108(JP,A)
【文献】特開2004-162048(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0065017(KR,A)
【文献】特開2009-211057(JP,A)
【文献】特開2015-105299(JP,A)
【文献】特開2015-160908(JP,A)
【文献】特開2017-187584(JP,A)
【文献】特開2008-152199(JP,A)
【文献】特開2010-039299(JP,A)
【文献】特表2017-523286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 27/00
B32B 27/16
B32B 27/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子と、
前記偏光子の一面に順次に備えられた接着剤層および保護フィルムと、
前記偏光子の他面に直接付着した保護層とを含み、
前記保護層は、エポキシ化合物(A)、オキセタン化合物(B)、および変性シロキサン化合物(C)を含む活性エネルギー線硬化型組成物またはその硬化物を含む樹脂層である偏光板と、
前記偏光板の保護層の偏光子と接する面の他面にキャリアフィルムとを含み、
前記変性シロキサン化合物(C)は、下記化学式C2またはC3で表されるポリエーテル変性シロキサン化合物であり、
【化1】
前記化学式C2において、R およびR のうちの少なくとも1つは、-(R 11 O)pR 12 であり、残りは、アルキル基;アルキルアリール基;アラルキル基;アルキルアリール基;アミノ基;カルボニル基;またはエポキシ基であり、R 11 は、直接結合;またはアルキレン基であり、R 12 は、アルキル基;アルキルアリール基;またはアラルキル基であり、mおよびpは、それぞれ独立して、1~10の整数であり、xおよびyは、それぞれ0~10であり、ただし、x+yは、1以上であり、Ra~Rfは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;アルキル基;またはポリエチレングリコールであり、
【化2】
前記化学式C3において、R は、-(R 11 O)pR 12 であり、R 11 は、直接結合;またはアルキレン基であり、R 12 は、アルキル基;アルキルアリール基;またはアラルキル基であり、mおよびpは、それぞれ独立して、1~10の整数であり、Rg~Rlは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル基、またはポリエチレングリコールであり、
前記化学式C2およびC3において、アルキル基は、C1~C10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基であり、アリール基は、C6~C20の単環もしくは多環のアリール基であり、ポリエチレングリコールは、-(OCH CH )nRで表され、nは、1~10の整数であり、Rは、水素、アルキル基、またはOH基であり、
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物の親水性-親油性比値は、4~10であり、重量平均分子量(Mw)は、500以上10,000以下であり、
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、エポキシ化合物(A)100重量部に対して、変性シロキサン化合物(C)を3~6.8重量部含み、
前記保護層の前記キャリアフィルムに対する剥離力(X3)が、40gf/5cm以下である、偏光板-キャリアフィルム積層体。
【請求項2】
前記保護層の偏光子に対する接着力(X1)が、D3359-87によるASTM標準クロスカットテープ(cross-cut tape)試験によって測定する時、4B以上である、請求項1に記載の偏光板-キャリアフィルム積層体。
【請求項3】
前記エポキシ化合物(A)は、脂環式エポキシ化合物およびグリシジルエーテルタイプの化合物からなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むものである、請求項1または2に記載の偏光板-キャリアフィルム積層体。
【請求項4】
前記エポキシ化合物(A)は、脂環式エポキシ化合物およびグリシジルエーテルタイプの化合物の混合物である、請求項1~のいずれか一項に記載の偏光板-キャリアフィルム積層体。
【請求項5】
前記エポキシ化合物(A)は、脂環式エポキシ化合物およびグリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物を1:1~10:1の重量比で含むものである、請求項1~のいずれか一項に記載の偏光板-キャリアフィルム積層体。
【請求項6】
前記保護層の厚さは、4μm以上11μm以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の偏光板-キャリアフィルム積層体。
【請求項7】
前記偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムである、請求項1~のいずれか一項に記載の偏光板-キャリアフィルム積層体。
【請求項8】
下記一般式1によって計算されたX2が、0.95以上1以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の偏光板-キャリアフィルム積層体。
[一般式1]
X2=(ASTM標準クロスカットテープ試験後に残留した保護層の面積)/(全剥離面の面積)
【請求項9】
前記キャリアフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項1~のいずれか一項に記載の偏光板-キャリアフィルム積層体。
【請求項10】
前記キャリアフィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムの一面または両面にそれぞれ備えられたプライマー層とを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の偏光板-キャリアフィルム積層体。
【請求項11】
偏光子の一面にキャリアフィルムを供給するステップと、
前記偏光子の他面に保護フィルムを供給するステップと、
前記偏光子とキャリアフィルムとの間に活性エネルギー線硬化型組成物を供給して保護層を形成するステップと、
前記偏光子と保護フィルムとの間に光硬化性接着剤組成物を供給して接着剤層を形成するステップと、
前記キャリアフィルムおよび保護フィルムの各表面に一対の加圧手段を配置して、前記キャリアフィルム、保護層、偏光子、接着剤層、および保護フィルムが順次に積層された積層体を加圧するステップと、
活性エネルギー線を照射して前記保護層および接着剤層を硬化させるステップとを含むものである、請求項1~10のいずれか一項に記載の偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法。
【請求項12】
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、粘度が常温で50cps以上200cps以下である、請求項11に記載の偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の偏光板-キャリアフィルム積層体の保護層から前記キャリアフィルムを剥離するステップを含む偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月15日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2017-0173307号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、偏光板、偏光板-キャリアフィルム積層体、偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法、偏光板の製造方法および活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
既存の液晶表示装置用偏光板は、一般的なポリビニルアルコール系偏光子を用い、その偏光子の少なくとも一方の面にPETなどの保護フィルムを付着させる構成になっている。
【0004】
最近の偏光板市場では、低光漏れおよび薄型化による要求が高まっていて、この物性を満足するために、既存の予め製膜した保護基材を適用する代わりに、偏光子上に直接保護膜を形成する方法が検討されている。
【0005】
ただし、既存のポリビニルアルコール系延伸タイプのポリビニルアルコール系偏光子上に直接保護膜を形成する場合、既存のような両面に保護基材を適用する場合に比べて、高温で偏光子の収縮によって発生する応力による偏光子の破れ現象が発生する問題を解決しにくかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、偏光板、偏光板-キャリアフィルム積層体、偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法、偏光板の製造方法および活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書の一実施態様は、偏光子と、前記偏光子の一面に順次に備えられた接着剤層および保護フィルムと、前記偏光子の他面に直接付着した保護層とを含み、前記保護層は、エポキシ化合物(A)、オキセタン化合物(B)、および変性シロキサン化合物(C)を含む活性エネルギー線硬化型組成物またはその硬化物を含む樹脂層である偏光板を提供する。
【0008】
また、本明細書の一実施態様は、前述した偏光板と、前記保護層の偏光子と接する面の他面にキャリアフィルムとをさらに含むものである偏光板-キャリアフィルム積層体を提供する。
【0009】
さらに、本明細書の一実施態様は、偏光子の一面にキャリアフィルムを供給するステップと、前記偏光子の他面に保護フィルムを供給するステップと、前記偏光子とキャリアフィルムとの間に活性エネルギー線硬化型組成物を供給して保護層を形成するステップと、前記偏光子と保護フィルムとの間に光硬化性接着剤組成物を供給して接着剤層を形成するステップと、前記キャリアフィルムおよび保護フィルムの各表面に一対の加圧手段を配置して、前記キャリアフィルム、保護層、偏光子、接着剤層、および保護フィルムが順次に積層された積層体を加圧するステップと、活性エネルギー線を照射して前記保護層および接着剤層を硬化させるステップとを含むものである、前述した偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法を提供する。
【0010】
また、本明細書の一実施態様は、前述した偏光板-キャリアフィルム積層体の保護層から前記キャリアフィルムを剥離するステップを含む偏光板の製造方法を提供する。
【0011】
さらに、本明細書の一実施態様は、前述した偏光板の製造方法により製造された偏光板を提供する。
【0012】
また、本明細書の一実施態様は、エポキシ化合物(A)、オキセタン化合物(B)、および変性シロキサン化合物(C)を含む偏光板保護層用活性エネルギー線硬化型組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本明細書の一実施態様に係る偏光板は、保護層の偏光子に対する接着力が向上した効果を有する。
【0014】
本明細書の一実施態様に係る偏光板-キャリアフィルム積層体は、キャリアフィルムと保護層の剥離性が向上した効果を有する。
【0015】
本明細書の一実施態様に係る偏光板の製造方法によれば、保護層からキャリアフィルムを剥離する工程でブロッキング現象が抑制された効果を有する。
【0016】
本明細書の一実施態様に係る偏光板-キャリアフィルム積層体を用いた偏光板の製造方法により製造された偏光板は、光学物性が改善された効果を有する。
【0017】
本明細書の一実施態様に係る偏光板-キャリアフィルム積層体を用いた偏光板の製造方法によれば、キャリアフィルムを剥離するためにロールツーロール工程を用いることにより、工程性が改善された効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本明細書の一実施態様に係る偏光板の断面図である。
図2】本明細書の一実施態様に係る偏光板-キャリアフィルム積層体の断面図である。
図3】本明細書の一実施態様に係る偏光板が画像表示パネルに付着した様子を示す断面図である。
図4】本明細書の一実施態様に係る偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法に関する一実施例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について説明する。
【0020】
本明細書において、2つ以上の要素が順次に備えられているというのは、例えば、用語、順次に備えられた「AおよびB」は、前記要素AとBが前記順序で配置されているものの、AとBとの間に他の要素が介在している場合、例えば、AおよびCおよびBが前記順序で配置されている場合も含む。
【0021】
また、本明細書において、2つの要素が互いに付着または直接付着しているとのこと、例えば、「AにBが直接付着しているとのこと」は、Aの少なくとも1つの主表面に他の要素が介在しておらず、Bが直接付着している場合を意味することができる。
【0022】
本明細書において、用語「組成物の硬化」は、前記組成物の成分の物理的作用または化学的反応などによって組成物が接着または粘着特性を発現できるように変化する過程を意味する。また、本明細書において、用語「活性エネルギー線」は、マイクロ波(microwaves)、赤外線(IR)、紫外線(UV)、X線およびγ線はもちろん、α粒子線(α particle beam)、プロトンビーム(proton beam)、ニュートロンビーム(neutron beam)、および電子線(electron beam)のような粒子ビームなどを意味することができ、通常は、紫外線または電子線などであってもよい。さらに、前記「活性エネルギー線硬化型」とは、前記のような硬化が活性エネルギー線の照射によって誘導され得ることを意味することができる。本発明の一つの例において、前記活性エネルギー線硬化型組成物の硬化は、活性エネルギー線の照射による自由ラジカル重合または陽イオン反応により行われ、好ましくは、自由ラジカル重合および陽イオン反応が同時または順次にともに進行して行われる。
【0023】
偏光子は、通常、ポリビニルアルコールなどのような親水性樹脂で製造されるため、一般的に水分に弱い特性を示す。また、偏光子の製造時には延伸工程を経ることが一般的であって、加湿条件下では収縮などが起こりやすく、これによって偏光板の光学特性などが悪化する問題点がある。したがって、通常は、偏光子の物性補強などのために、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどに代表される保護フィルムを偏光子の両面に付着させることが一般的であり、保護フィルムが存在しなければ、偏光子の弱い寸法安定性によって耐久性および光学物性が大きく低下し、耐水性も格段に弱くなる問題点がある。
【0024】
このために、本発明の偏光板の一つの例示的な構造では、偏光子の少なくとも1つの表面で保護フィルムを付着させず、より薄くて軽い構造を実現すると同時に、前記保護フィルムが付着しない偏光子の表面に直接保護層を付着させる構造を採用している。
【0025】
本明細書において、前記のように偏光子の少なくとも一面で保護フィルムの付着が省略された偏光板は、薄型偏光板(thin polarizer)と称されることもある。
【0026】
偏光板の製造方法において、ロールツーロール工程(roll-to-roll)は、連続工程で行われ、生産歩留まりが高く、非常に経済的であるという利点がある。
【0027】
しかし、前記保護層を積層するためにキャリアフィルムを用いる場合、フィルムを巻取る過程でキャリアフィルムと保護層との接着力が高くて、偏光板製造工程中、キャリアフィルムを保護層と剥離する過程でキャリアフィルムと保護層とがくっつく現象、すなわちブロッキング現象(Blocking)が現れる問題がある。
【0028】
また、偏光板を製造する過程で保護層を形成するために、偏光子に保護層形成用組成物が塗布された場合、保護層形成用組成物は他の構成との接着力が付与されているが、前記組成物が流失するのを防止するために、保護層形成用組成物上にキャリアフィルムが備えられる。この後、保護層形成用組成物を硬化させた後、キャリアフィルムを剥離するが、保護層形成用組成物の接着性のため、キャリアフィルムの剥離時、保護層にキャリアフィルムの一部が剥がれ、偏光板の光学特性が阻害される。
【0029】
特に、必要に応じて、偏光板-キャリアフィルム積層体を長時間保管する場合があるが、保護層とキャリアフィルムとが付着している時間が長くなるにつれ、前述したブロッキング現象がさらに激しくなりうる。
【0030】
そこで、本発明では、保護層を形成する紫外線硬化性組成物に前記変性シロキサン化合物を含むことにより、保護層と偏光子との密着性を増大させると同時に、保護層とキャリアフィルムとの間の密着性は減少させる効果、すなわち互いに相反する効果を同時に有することにより、偏光板製造工程で発生しうる前述したブロッキング現象を抑制しようとする。
【0031】
具体的には、本明細書は、偏光子1と、前記偏光子1の一面に順次に備えられた接着剤層および保護フィルム3と、前記偏光子1の他面に順次に備えられた保護層2およびキャリアフィルム5とを含み、前記保護層は、偏光子に直接付着し、前記保護層は、エポキシ化合物(A)、オキセタン化合物(B)、および変性シロキサン化合物(C)を含む活性エネルギー線硬化型組成物からなる硬化樹脂層である偏光板を提供する。
【0032】
また、本明細書は、前記偏光板の保護層の偏光子と接する面の他面にキャリアフィルムをさらに含むものである偏光板-キャリアフィルム積層体を提供する。
【0033】
前記偏光板-キャリアフィルム積層体は、偏光板の製造に用いられるものであって、キャリアフィルムを剥離する工程を経た後に偏光板として使用できる。
【0034】
前記偏光板-キャリアフィルム積層体を偏光板の製造に用いる場合、キャリアフィルムを剥離する場合にも、保護層とキャリアフィルムとの間の接着力が低いので、キャリアフィルムと保護層のブロッキング現象が抑制された効果を有する。すなわち、偏光板-キャリアフィルム積層体の、保護層の偏光子に対する剥離力は高く調節し、保護層のキャリアフィルムに対する剥離力は低く調節することにより、前述したブロッキング現象を抑制することができる。
【0035】
前記ブロッキング現象は、保護層の偏光子に対する接着力(X1)は高く維持し、保護層のキャリアフィルムに対する剥離力(X3)は低い値に調節することにより解決できる。
【0036】
本明細書の一実施態様において、前記保護層の偏光子に対する接着力(X1)は、D3359-87によるASTM標準クロスカットテープ(cross-cut tape)試験によって測定する時、4B以上でもよいし、4B以上5B以下でもよく、好ましくは5Bでもよい。前記保護層の偏光子に対する接着力は、偏光板-キャリアフィルム積層体を常温(25℃)および相対湿度30~45%で1~100時間放置した後に測定された値であってもよく、好ましくは相対湿度43%で測定された値であってもよい。
【0037】
前記保護層の偏光子に対する接着力(X1)が前記値と同一の場合、保護層の偏光子に対する接着力に優れ、キャリアフィルムを保護層から剥離する時、保護層が偏光子から浮き上がる現象を抑制することができる。また、4Bより小さい場合、偏光子が変色したり、偏光特性の低下が生じることがある。
【0038】
前記保護層の偏光子に対する接着力(X1)は、クロスカットテープ(cross-cut tape)試験によって測定できる。
【0039】
前記クロスカットテスト方法では、キャリアフィルムが剥離された保護層上に、クロスカッター(Cross cutter)を用いて、カッティングガイドや適当な定規などに当てて、サンプルに1mm間隔で囲碁の目状に縦横格子形状で引く。その後、ブラシや無塵布で保護層の表面を洗浄した後、ニチバンテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標))を貼り付け、180度の剥離角度で急激に剥がした後の剥離面に対して、保護層がどの程度剥がれているかを肉眼で観察する。下記表1のクロスカット分類基準(ASTM)により0Bから5Bに接着の程度を区分する。
【0040】
【表1】
【0041】
本明細書の一実施態様において、下記一般式1により計算されたX2が0.95以上1以下、好ましくは0.96以上1以下、さらに好ましくは0.99以上1以下であってもよい。
【0042】
[一般式1]
X2=(ASTM標準クロスカットテープ試験後に残留した保護層の面積)/(全剥離面の面積)
【0043】
前記一般式1において、ASTM標準クロスカットテープ試験は、D3359-87によるASTM標準クロスカットテープ(cross-cut tape)試験によれば良い。
【0044】
前記一般式1中、前記全剥離面の面積は、ASTM標準クロスカットテープ試験のために保護層に貼り付けられたテープと保護層の接する全面積を意味することができる。
【0045】
本明細書の一実施態様において、前記保護層のキャリアフィルムに対する剥離力(X3)が40gf/5cm以下、好ましくは30gf/5cm以下、さらに好ましくは10gf/5cm以下であってもよい。前記数値範囲を満足する場合、キャリアフィルムの剥離時、保護層とキャリアフィルムのブロッキング現象が起こることを効果的に抑制することができる。
【0046】
前記保護層のキャリアフィルムに対する剥離力(X3)は、ASTM D3330による180゜で30m/minの速度で測定されたものであってもよい。例えば、フィルム高速剥離機(CBT-4720、Chungbuk Tech)を用いて測定することができる。
【0047】
また、前記保護層のキャリアフィルムに対する剥離力(X3)は、偏光板-キャリアフィルム積層体を常温(25℃)、相対湿度30~45%で1~100時間放置した後に測定された値であってもよく、好ましくは相対湿度43%で測定された値であってもよい。
【0048】
本明細書の一実施態様において、X2に対するX3の値(X3/X2)が45gf/5cm以下、30gf/5cm以下、または10gf/5cm以下であってもよい。この場合、保護層の偏光子に対する接着力は高いのに対し、保護層のキャリアフィルムに対する剥離力は低いので、偏光板製造過程におけるキャリアフィルムの剥離工程時、保護層が偏光子との界面で浮き上がるのを防止することができ、キャリアフィルムは容易に剥離させることができる。すなわち、剥離不良を改善することができる。
【0049】
変性シロキサン化合物(C)
本明細書の一実施態様において、前記活性エネルギー線硬化型組成物は、変性シロキサン化合物(C)を含む。これによって、前記保護層の偏光子に対する剥離力(X1)と前記保護層の前記キャリアフィルムに対する剥離力(X3)との関系、保護層の偏光子に対する剥離力(X1)および前記保護層の前記キャリアフィルムに対する剥離力(X3)の数値範囲を満足することができる。
【0050】
前記変性シロキサン化合物(C)は、前記エポキシ化合物(A)100重量部に対して、0.01~6.8重量部、好ましくは0.1~6.5重量部、さらに好ましくは0.4~5重量部含まれる。前記数値範囲を満足する場合、変性シロキサン化合物に含まれたシリコン原子による潤滑性が極大化され、保護層の耐摩耗性が向上できる。また、6.8重量部を超える場合、保護層の耐熱性が低下することがある。さらに、前記数値範囲を満足する場合、前記活性エネルギー線硬化型組成物を用いて保護層を形成する時、保護層の偏光子に対する剥離力は優れたものに維持しながらも、保護層のキャリアフィルムに対する剥離力は一定水準以下に調節することができる。これによって、キャリアフィルムを剥離する過程でブロッキング現象(Blocking)が発生することを効果的に抑制することができる。
【0051】
前記変性シロキサン化合物(C)は、水分散性変性シロキサン化合物であってもよい。
【0052】
前記変性シロキサン化合物は、分子内における親水性の役割であるエチレンオキシドと疎水性の役割であるシリコーン部分が単一分子として結合した構造であって、保護層の表面にシリコーンの潤滑性を付与することができ、保護層の耐摩耗性を向上させる役割を果たす。
【0053】
本明細書において、前記変性シロキサン化合物(C)は、シロキサン(Si-O-Si)主鎖に多様な形態の有機基を有することができる。例えば、前記変性シロキサン化合物(C)は、下記化学式C1で表される繰り返し単位を含むことができる。
【0054】
【化1】
【0055】
前記化学式C1において、前記Rは、水素;アルキル基;アルキルアリール基;アラルキル基;アルキルアリール基;アミノ基;カルボニル基;ポリエーテル基;またはエポキシ基であってもよいし、好ましい例としては、ポリエーテル基であってもよい。具体的には、Rがポリエーテル基の場合、前記変性シロキサン化合物(C)は、ポリエーテル変性シロキサン化合物と名付けられる。
【0056】
本明細書の一実施態様において、前記変性シロキサン化合物(C)は、ポリエーテル変性シロキサン化合物であってもよい。
【0057】
また、前記化学式C1において、前記lは、1~5の整数であってもよい。
【0058】
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物(C)は、シロキサン結合であるSi-O-Siを有するシロキサンにポリエーテル構造が導入された化合物である。例えば、シロキサン結合であるSi-O-Siを有し、末端基がトリメチルシリル基(Si(CH)であり、前記シロキサン結合を構成するSiのうちの少なくとも1つにエーテル結合(-O-)を含むポリエーテル構造が置換された化合物が使用できる。
【0059】
本明細書の一実施態様において、前記ポリエーテル変性シロキサン化合物(C)は、下記化学式C2またはC3で表されてもよい。
【0060】
【化2】
【0061】
前記化学式C2において、
【0062】
およびRのうちの少なくとも1つは、-(R11O)pR12であり、残りは、アルキル基;アルキルアリール基;アラルキル基;アルキルアリール基;アミノ基;カルボニル基;またはエポキシ基であり、
11は、直接結合;またはアルキレン基であり、
12は、アルキル基;アルキルアリール基;またはアラルキル基であり、
mおよびpは、それぞれ独立して、1~10の整数であり、xおよびyは、それぞれ0~10であり、ただし、x+yは、1以上であり、
Ra~Rfは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;アルキル基;またはポリエチレングリコールである。
【0063】
【化3】
【0064】
前記化学式C3において、
は、-(R11O)pR12であり、
11は、直接結合;またはアルキレン基であり、
12は、アルキル基;アルキルアリール基;またはアラルキル基であり、
mおよびpは、それぞれ独立して、1~10の整数であり、
Rg~Rlは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル基、またはポリエチレングリコールである。
【0065】
前記化学式C1~C3において、アルキル基は、C1~C10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基であってもよく、アリール基は、C6~C20の単環もしくは多環のアリール基であってもよい。具体的には、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどであってもよく、アリール基は、フェニル、ナフチル、ビフェニリル、アントリルなどであってもよい。前記アルキルアリール基は、アルキル基で置換されたアリール基であって、アルキル基およびアリール基については前記例示が適用可能である。前記アラルキル基は、アリール基で置換されたアルキル基であって、アルキル基およびアリール基については前記例示が適用可能である。
【0066】
前記化学式C2およびC3において、ポリエチレングリコールは、-(OCHCH)nRで表されてもよいし、nは、1~10の整数であり、Rは、水素、アルキル基、またはOH基である。
【0067】
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物の親水性-親油性比(Hydrophile-Lipophile Balance:HLB)値は、0~12、好ましくは0~10、さらに好ましくは4~10であってもよい。前記数値範囲を満足する場合、他の成分との相溶性に優れ、12超過で親水性が高ければ、相溶性が低下する。
【0068】
この時、前記親水性-親油性比は、ポリエーテル変性シロキサン化合物の親水性部分と親油性部分との比を表す。このような親水性-親油性比は、化合物に応じて定められ、化合物別の前記比は公知である。前記親水性-親油性比は、当該技術分野で公知の方式であって、例えば、下記式1を用いて計算することができる。一般的に、HLB値は、その数値が大きいほど親水性が大きく、その数値が小さいほど親油性が大きいことを意味する。
【0069】
[式1]
HLB=20×(親水基部分の分子量/化合物の分子量)
【0070】
前記式1は、グリフィン(Griffin)によって定義されたもので、一般的な化合物の親水性-親油性比(Hydrophile-Lipophile balance、HLB)が求められる式である。
【0071】
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物の重量平均分子量(Mw)は、500以上10,000以下、好ましくは500以上5,000以下、さらに好ましくは1,000以上3,000以下であってもよい。前記数値範囲を満足する場合、優れた混和性を示すことができる。
【0072】
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物(C)は、例えば、水素化ケイ素基を有するポリオルガノシロキサン主鎖に対して、不飽和結合およびポリオキシアルキレン基を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によってグラフトさせることで得ることができる。具体的には、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン重合体などが挙げられる。
【0073】
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物を保護層を形成する組成物に配合することにより、組成物の偏光子に対する接着力を改善することができ、保護フィルムに対する接着力を減少させて、後にキャリアフィルムを剥離する工程でブロッキング現象(Blocking)を効果的に防止することができる。
【0074】
エポキシ化合物(A)およびオキセタン化合物(B)
本明細書の一実施態様において、前記活性エネルギー線硬化型組成物は、前述した変性シロキサン化合物(C)のほか、エポキシ化合物(A)およびオキセタン化合物(B)を含むことができる。
【0075】
前記保護層は、エポキシ化合物(A)またはオキセタン化合物(B)を含む活性エネルギー線硬化型組成物を硬化された状態で含むことができる。
【0076】
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、前記エポキシ化合物(A)100重量部に対して、オキセタン化合物(B)を5~100重量部、好ましくは10~90重量部、さらに好ましくは15~60重量部含むことができる。前記含有量範囲内にエポキシ化合物およびオキセタン化合物が含まれる場合、活性エネルギー線硬化型組成物のより効果的な硬化を誘導することができ、かつ、活性エネルギー線の照射を終えた状態でも、陽イオン反応のリビング特性に起因してより効率的に硬化を進行させて物性を向上させることができる。
【0077】
本明細書において、前記単位「重量部」は、各成分間の重量比率を意味する。活性エネルギー線硬化型組成物の成分の比率を前記のように調節して、組成物の硬化効率および組成物の硬化後に物性に優れた保護層を提供することができる。
【0078】
本明細書において、用語「エポキシ化合物」は、1つ以上、好ましくは、2つ以上のエポキシ基を含む単量体性、オリゴマー性、またはポリマー性化合物を意味することができる。
【0079】
エポキシ化合物は、保護層の耐水性や接着力などの物性を向上させることができる。
【0080】
前記エポキシ化合物としては、例えば、陽イオン反応によって架橋または重合可能なものを使用することができる。
【0081】
一つの例において、エポキシ化合物としては、重量平均分子量(Mw;Weight Average Molecular Weight)が1,000~5,000、好ましくは2,000~4,000のエポキシ樹脂を使用することができる。本明細書において、重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定された標準ポリスチレンに対する換算数値を意味し、特に別途に規定しない限り、用語「分子量」は、「重量平均分子量」を意味する。分子量を1,000以上にして、保護層の耐久性を適切に維持することができ、5,000以下にして、組成物のコーティング性などの作業性も効果的に維持することができる。
【0082】
前記エポキシ化合物としては、例えば、脂環式エポキシ化合物およびグリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物を含む群より選択されるいずれか1つ以上を使用することができる。
【0083】
本明細書の一実施態様において、前記エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物およびグリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物の混合物を使用することができる。
【0084】
この場合、脂環式エポキシ化合物およびグリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物を1:1~10:1の重量比、好ましくは1:1~4:1、さらに好ましくは1:1~5:1の重量比で含むことができる。
【0085】
本明細書において、用語「脂環式エポキシ化合物」とは、エポキシ化脂肪族環基を1つ以上含む化合物を意味することができ、用語「グリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物」は、グリシジルエーテル基を少なくとも1つ以上含む化合物を意味することができる。
【0086】
前記エポキシ化合物に脂環式エポキシ化合物が含まれることにより、保護層を形成する活性エネルギー線硬化型組成物のガラス転移温度が高くなって前記保護層が十分な耐久性を確保するようにして、保護フィルムの介在なしに保護層が偏光子のいずれか一面に直接形成されても、耐熱または熱衝撃の条件でも偏光子の亀裂の発生を防止することができる。
【0087】
エポキシ化脂肪族環基を含む前記脂環式エポキシ化合物において、前記エポキシ化脂肪族環基は、例えば、脂環式環に形成されたエポキシ基を有する化合物を意味することができる。前記脂環式環を構成する水素原子は、任意にアルキル基などの置換基によって置換されていてもよい。脂環式エポキシ化合物としては、例えば、以下に具体的に例示される化合物を使用することができるが、使用可能なエポキシ化合物が下記の種類に制限されるわけではない。
【0088】
前記脂環式エポキシ化合物としては、下記化学式1で表されるエポキシシクロヘキシルメチルエポキシシクロヘキサンカルボキシレート系化合物が例示される。
【0089】
【化4】
【0090】
前記化学式1において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示す。
【0091】
本明細書において、用語、アルキル基は、特に別途に規定しない限り、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8、または炭素数1~4の直鎖状、分枝鎖状もしくは環状アルキル基を意味することができ、前記アルキル基は、任意に1つ以上の置換基によって置換されているか、非置換の状態であってもよい。
【0092】
脂環式エポキシ化合物の他の例としては、下記化学式2で表されるアルカンジオールのエポキシシクロヘキサンカルボキシレート系化合物が挙げられる。
【0093】
【化5】
【0094】
前記化学式2において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示し、nは、2~20の整数を示す。
【0095】
また、脂環式エポキシ化合物のさらに他の例としては、下記化学式3で表されるジカルボン酸のエポキシシクロヘキシルメチルエステル系化合物が挙げられる。
【0096】
【化6】
【0097】
前記化学式3において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示し、pは、2~20の整数を示す。
【0098】
脂環式エポキシ化合物のさらに他の例としては、下記化学式4で表されるポリエチレングリコールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル系化合物が挙げられる。
【0099】
【化7】
【0100】
前記化学式4において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示し、qは、2~20の整数を示す。
【0101】
脂環式エポキシ化合物のさらに他の例としては、下記化学式5で表されるアルカンジオールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル系化合物が挙げられる。
【0102】
【化8】
【0103】
前記化学式5において、RおよびR10は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示し、rは、2~20の整数を示す。
【0104】
脂環式エポキシ化合物のさらに他の例としては、下記化学式6で表されるジエポキシトリスピロ系化合物が挙げられる。
【0105】
【化9】
【0106】
前記化学式6において、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示す。
【0107】
脂環式エポキシ化合物のさらに他の例としては、下記化学式7で表されるジエポキシモノスピロ系化合物が挙げられる。
【0108】
【化10】
【0109】
前記化学式7において、R13およびR14は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示す。
【0110】
脂環式エポキシ化合物のさらに他の例としては、下記化学式8で表されるビニルシクロヘキセンジエポキシド化合物が挙げられる。
【0111】
【化11】
【0112】
前記化学式8において、R15は、水素またはアルキル基を示す。
【0113】
脂環式エポキシ化合物のさらに他の例としては、下記化学式9で表されるエポキシシクロペンチルエーテル化合物が挙げられる。
【0114】
【化12】
【0115】
前記化学式9において、R16およびR17は、それぞれ独立して、水素またはアルキル基を示す。
【0116】
脂環式エポキシ化合物の他の例としては、下記化学式10で表されるジエポキシトリシクロデカン化合物が挙げられる。
【0117】
【化13】
【0118】
前記化学式10において、R18は、水素またはアルキル基を示す。
【0119】
脂環式エポキシ化合物としては、より具体的には、エポキシシクロヘキシルメチルエポキシシクロヘキサンカルボキシレート化合物、アルカンジオールのエポキシシクロヘキサンカルボキシレート化合物、ジカルボン酸のエポキシシクロヘキシルメチルエステル化合物、またはアルカンジオールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル化合物を使用することが好ましく、7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン-3-カルボン酸と(7-オキサ-ビシクロ[4,1,0]ヘプト-3-イル)メタノールとのエステル化物(前記化学式1において、RおよびRが水素である化合物);4-メチル-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン-3-カルボン酸と(4-メチル-7-オキサ-ビシクロ[4,1,0]ヘプト-3-イル)メタノールとのエステル化物(前記化学式1において、Rが4-CHであり、Rが4-CHである化合物);7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン-3-カルボン酸と1,2-エタンジオールとのエステル化物(前記化学式2において、RおよびRが水素であり、nが1である化合物);(7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプト-3-イル)メタノールとアジピン酸とのエステル化物(前記化学式3において、RおよびRが水素であり、pが2である化合物);(4-メチル-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプト-3-イル)メタノールとアジピン酸とのエステル化物(前記化学式3において、RおよびRが4-CHであり、pが2である化合物);および(7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプト-3-イル)メタノールと1,2-エタンジオールとのエーテル化物(前記化学式5において、RおよびR10が水素であり、rが1である化合物)からなる群より選択された1つ以上が好ましく使用できるが、これに制限されるわけではない。
【0120】
また、前記エポキシ化合物に前記グリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物が含まれることにより、グリシジルエーテル反応基が硬化反応後の保護層内でソフトで極性を有するチェーンを形成して、保護層の偏光子に対する接着力を向上させることができる。
【0121】
前記グリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物には、例えば、脂肪族の多価アルコールまたはそのアルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物のポリグリシジルエーテルが含まれる。
【0122】
一つの例において、前記エポキシ化合物(A)として脂環式エポキシ化合物およびグリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物の混合物が使用される場合、前記脂環式エポキシ化合物は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートジシクロペンタジエンジオキシド、リモネンジオキシド、または4-ビニルシクロヘキセンジオキシドなどが例示され、前記グリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物としては、脂環式エポキシ基以外のエポキシ基を有するエポキシ化合物が使用できる。すなわち、具体的なグリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物としては、ノボラックエポキシ、ビスフェノールA系エポキシ、ビスフェノールF系エポキシ、臭化ビスフェノールエポキシ、n-ブチルグリシジルエーテル、アリファティックグリシジルエーテル(炭素数12~14)、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o-クレシル(cresyl)グリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、またはグリセリントリグリシジルエーテルなどが例示され、さらに、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどのような環状脂肪族骨格を有するグリシジルエーテルまたは芳香族エポキシ化合物の水素添加化合物などが例示され、好ましくは、環状脂肪族骨格を有するグリシジルエーテル、好ましくは炭素数3~20、好ましくは炭素数3~16、より好ましくは炭素数3~12の環状脂肪族骨格を有するグリシジルエーテルが使用できるが、これに制限されるわけではない。
【0123】
次に、前記オキセタン化合物は、分子内に4員環エーテルを有する化合物であって、これに限定されるものではないが、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが例として挙げられる。これらのオキセタン化合物は、市販品を容易に入手することが可能であり、具体的には、アロンオキセタンOXT-101(東亜合成(株)製)、アロンオキセタンOXT-121(東亜合成(株)製)、アロンオキセタンOXT-211(東亜合成(株)製)、アロンオキセタンOXT-221(東亜合成(株)製)、アロンオキセタンOXT-212(東亜合成(株)製)などが挙げられる。
【0124】
本明細書の一実施態様において、前記活性エネルギー線硬化型組成物は、硬化性成分をさらに含むことができ、前記硬化性成分は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基などの重合性二重結合を複数個有する化合物であってもよい。例えば、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート、アロニックスM-220(東亜合成社製)、ライトアクリレート1,9ND-A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDGE-4A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDCP-A(共栄社化学社製)、SR-531(Sartomer社製)、CD-536(Sartomer社製)などが挙げられる。さらに、必要に応じて、各種エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートや、各種(メタ)アクリレート系モノマーなどが挙げられる。前記硬化性成分を含む場合、硬化速度を上昇させることができ、低い光量でも高い水準の硬化が可能であるという利点がある。
【0125】
本明細書の一実施態様において、前記硬化性成分は、前記エポキシ化合物(A)100重量部に対して、10~50重量部、または20~40重量部含まれる。
【0126】
本明細書において、前記単位「重量部」は、各成分間の重量比率を意味する。活性エネルギー線硬化型組成物の成分の比率を前記のように調節して、組成物の硬化効率および組成物の硬化後に物性に優れた保護層を提供することができる。
【0127】
本明細書の一実施態様において、前記活性エネルギー線硬化型組成物は、光開始剤をさらに含んでもよい。
【0128】
前記光開始剤の例としては、アルファ-ヒドロキシケトン系化合物(ex.IRGACURE184、IRGACURE500、IRGACURE2959、DAROCUR1173;Ciba Specialty Chemicals(製));フェニルグリオキシレート(phenylglyoxylate)系化合物(ex.IRGACURE754、DAROCUR MBF;Ciba Specialty Chemicals(製));ベンジルジメチルケタール系化合物(ex.IRGACURE651;Ciba Specialty Chemicals(製));α-アミノケトン系化合物(ex.IRGACURE369、IRGACURE907、IRGACURE1300;Ciba Specialty Chemicals(製));モノアシルホスフィン系化合物(MAPO)(ex.DAROCUR TPO;Ciba Specialty Chemicals(製));ビスアシルホスフィン系化合物(BAPO)(ex.IRGACURE819、IRGACURE 819DW;Ciba Specialty Chemicals(製));ホスフィンオキシド系化合物(ex.IRGACURE2100;Ciba Specialty Chemicals(製));メタロセン系化合物(ex.IRGACURE784;Ciba Specialty Chemicals(製));ヨードニウム塩(iodonium salt)(ex.IRGACURE250;Ciba Specialty Chemicals(製));および前記のうちの1つ以上の混合物(ex.DAROCUR4265、IRGACURE2022、IRGACURE1300、IRGACURE2005、IRGACURE2010、IRGACURE2020;Ciba Specialty Chemicals(製))などが挙げられる。本発明では、前記のうちの1種または2種以上を使用することができるが、これに制限されるわけではない。
【0129】
本明細書の一実施態様において、前記光開始剤は、活性エネルギー線硬化型組成物100重量部に対して、0.5重量部~10重量部、好ましくは0.01重量部~5重量部含まれる。光開始剤が前記数値範囲の含有量で含まれる場合、紫外線が保護層の内部まで到達し、重合率に優れ、生成される重合体の分子量が小さくなるのを防止することができる。これによって、形成される保護層の凝集力に優れ、偏光子に対する接着力に優れるという利点がある。
【0130】
本明細書の一実施態様において、前記活性エネルギー線硬化型組成物は、硬化後のガラス転移温度が90℃以上であることが好ましく、例えば、100℃~150℃または100℃~130℃であってもよい。
【0131】
本明細書の一実施態様において、前記活性エネルギー線硬化型組成物は、25℃で粘度が50cps以上200cps以下であることが好ましく、例えば、25℃で50cps~130cps以下であってもよい。組成物の粘度が前記数値範囲を満足する場合、保護層の厚さを薄く形成することができ、作業性に優れるという利点がある。
【0132】
前記粘度は、ブルックフィールド粘度計(Brook Field社製)を用いて、18番スピンドル(spindle)を用いて常温(25℃)で測定する。この時、組成物の量は、6.5~10mLが適切であり、光に長時間露出することを避けるために、5分以内で安定化された数値を測定する。
【0133】
本明細書の一実施態様において、前記活性エネルギー線硬化型組成物は、必要に応じて、染料、顔料、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤、光増感剤、および可塑剤からなる群より選択された1つ以上の添加剤を追加的に含むことができる。
【0134】
一方、前記保護層の形成方法は特に限定されず、当該技術分野でよく知られた方法により形成される。例えば、偏光子の一面に前記活性エネルギー線硬化型組成物を当該技術分野でよく知られたコーティング法、例えば、スピンコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、ブレードコーティングなどの方法で塗布して保護層を形成した後、紫外線照射により硬化させる方法で行われる。例えば、紫外線照射装置を用いて照射光の紫外線を照射する方法で行うことができる。
【0135】
前記紫外線の波長は、100nm以上400nm以下、好ましくは320nm以上400nm以下であってもよい。
【0136】
前記照射光の光量は、100mJ/cm以上1,000mJ/cm以上、好ましくは500mJ/cm以上1,000mJ/cm以下であってもよい。
【0137】
前記照射光の照射時間は、1秒以上10分以下、好ましくは2秒以上30秒以下であってもよい。前記照射時間の範囲を満足する場合、光源から過度に熱が伝達されるのを防止して、偏光子に走行シワが発生することを最小化できるという利点がある。
【0138】
本明細書の一実施態様において、前記保護層の厚さは、4μm以上11μm以下であり、好ましくは5μm以上10μm以下であり、さらに好ましくは6μm以上8μm以下である。保護層の厚さが前記範囲より小さい場合には、保護層の強度や高温耐久性が低下する恐れがあり、前記範囲を超える場合には、偏光板の薄型化の面から好適でない。
【0139】
保護フィルム
前記保護フィルムは、偏光子を支持および保護するためのもので、当該技術分野で一般的に知られている多様な材質の保護フィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET、polyethylene terephthalate)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP、cycloolefin polymer)フィルム、アクリル系フィルムなどが使用できる。なかでも、光学特性、耐久性、経済性などを考慮する時、ポリエチレンテレフタレートを使用することが特に好ましい。
【0140】
本明細書の一実施態様において、前記保護フィルムの80℃での貯蔵弾性率が1500MPa以上、好ましくは1800MPa以上、さらに好ましくは2,000MPa以上であってもよい。前記数値範囲を満足する場合、保護フィルムの偏光子保護効果が増大できる。具体的には、高温環境下で偏光子の収縮によって発生する応力による偏光子の破れ現象を防止することができる。
【0141】
一方、前記偏光子と保護フィルムの付着は、ロールコーター、グラビアコーター、バーコーター、ナイフコーター、またはキャピラリコーターなどを用いて偏光子または保護フィルムの表面に偏光板用接着剤組成物をコーティングした後、これらを貼り合わせロールで加熱貼り合わせするか、常温圧着して貼り合わせる方法または貼り合わせ後にUV照射する方法などによって行われる。前記偏光板用接着剤組成物については後述する。
【0142】
接着剤層
本明細書の一実施態様において、前記接着剤層は、偏光板接着剤組成物の硬化物である。
【0143】
本明細書の一実施態様において、前記接着剤層の80℃での熱膨張係数は、130ppm/K以下である。
【0144】
本明細書の一実施態様において、前記熱膨張係数が130ppm/Kを超えると、耐熱衝撃環境で偏光板のクラックが発生する問題がある。
【0145】
前記接着剤層は、光硬化性接着剤組成物で形成されることが好ましい。このように、接着層が光硬化性組成物で形成される硬化型樹脂層の場合、その製造方法が簡単で、さらに保護フィルムとの密着性に優れるという利点がある。また、偏光板の耐久性をより改善させることができる。
【0146】
この時、前記光硬化性接着剤組成物は、熱膨張係数が前記範囲を満足するものであれば特に制限されず、例えば、エポキシ化合物およびオキセタン化合物を含む光硬化性組成物であってもよい。
【0147】
前記エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、グリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物のうちの少なくとも1つ以上を使用することができ、好ましくは、脂環式エポキシ化合物とグリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物との混合物を使用することができる。
【0148】
本明細書の一実施態様において、前記脂環式エポキシ化合物は、前記エポキシ化合物の全重量を基準として、10重量%~50重量%含まれ、好ましくは20重量%~40重量%含まれる。前記数値範囲を満足する場合、光硬化時に効果的に組成物が硬化できるという利点がある。
【0149】
本明細書の一実施態様において、前記グリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物は、前記エポキシ化合物の全重量を基準として、10重量%~60重量%含まれ、好ましくは20重量%~40重量%含まれる。
【0150】
前記のようなオキセタン化合物は、単独または混合して使用可能であり、その含有量は、エポキシ化合物100重量部において、10~50重量部であることが好ましく、28~40重量部であることがより好ましい。前記範囲より多く含まれる場合、接着力低下の問題があり、前記範囲より少なく含まれる場合、粘度が上昇する問題がある。
【0151】
本明細書の一実施態様において、前記光硬化性接着剤組成物は、必要に応じて、染料、顔料、エポキシ樹脂、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤、光増感剤、光開始剤、および可塑剤からなる群より選択された1つ以上の添加剤を追加的に含むことができる。
【0152】
偏光子
まず、本発明の前記偏光子は、当該技術分野でよく知られた偏光子、例えば、ヨウ素または二色性染料を含むポリビニルアルコール(PVA)からなるフィルムを用いることができる。前記偏光子は、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素または二色性染料を染着させて製造できるが、その製造方法は特に限定されない。本明細書において、偏光子は、保護層(または保護フィルム)を含まない状態を意味し、偏光板は、偏光子と保護層(または保護フィルム)とを含む状態を意味する。
【0153】
一方、前記偏光子は、厚さが5μm以上40μm以下、より好ましくは5μm以上25μm以下であってもよい。偏光子の厚さが前記範囲より薄ければ、光学特性が低下することがあり、前記範囲より厚ければ、低温(-30℃程度)での偏光子の収縮量が大きくなって全体的な偏光板の熱に関連する耐久性に問題となりうる。
【0154】
一方、前記偏光子がポリビニルアルコール系フィルムの場合、ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール樹脂またはその誘導体を含むものであれば特別な制限なく使用可能である。この時、前記ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、これに限定されるものではないが、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂などが挙げられる。あるいは、前記ポリビニルアルコール系フィルムは、当該技術分野において偏光子の製造に一般的に用いられる市販のポリビニルアルコール系フィルム、例えば、クラレ社のP30、PE30、PE60、日本合成社のM2000、M3000、M6000などを使用してもよい。
【0155】
一方、前記ポリビニルアルコール系フィルムは、これに限定されるものではないが、重合度が1,000以上10,000以下、好ましくは1,500以上5,000以下であることが好ましい。重合度が前記範囲を満足する時、分子の動きが自由で、ヨウ素または二色性染料などと柔軟に混合できるからである。
【0156】
キャリアフィルム
本明細書は、前述した偏光板と、前記偏光板の保護層の偏光子と接する面の他面にキャリアフィルムとをさらに含むものである偏光板-キャリアフィルム積層体を提供する。
【0157】
本明細書の一実施態様に係る偏光板-キャリアフィルム積層体は、キャリアフィルムを含む。
【0158】
本明細書の一実施態様において、前記キャリアフィルムは、偏光板製造工程で剥離が容易なものであれば特に制限されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネートまたはトリアセチルセルロースがあり、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートがある。ポリエチレンテレフタレートは、価格が割安で工程費用を節減できるという利点がある。
【0159】
本明細書の一実施態様において、前記キャリアフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
【0160】
本明細書の一実施態様において、前記キャリアフィルムの厚さは、10μm~150μm、好ましくは15μm~100μmであってもよい。キャリアフィルムの厚さが前記数値範囲を満足する場合、紫外線照射時に発生する熱によってキャリアフィルムが膨張および/または収縮されてシワが発生するのを防止することができ、紫外線硬化時に紫外線が保護層によく到達して未硬化部分が発生する問題を解決できるという利点がある。
【0161】
本明細書の一実施態様において、前記キャリアフィルムの光透過度は、70%~100%であってもよい。前記光透過度は、分光光度計(UV-vis spectrophotometer)を用いて、200nm~800nmの波長を有する光線を照射してから吸収後に出る光線を検出器を用いて検出した後、これを比率で換算して計算される。
【0162】
前記数値範囲を満足する場合、偏光板-キャリアフィルム積層体の保護層および接着剤層を硬化するために、前記偏光板-キャリアフィルム積層体に紫外線を照射する時、紫外線が保護層および接着剤層によく到達して、硬化が効率的に行われるという利点がある。
【0163】
プライマー層
本明細書の一実施態様において、前記キャリアフィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムの一面または両面にそれぞれ備えられたプライマー層とを含む。
【0164】
本明細書の一実施態様において、前記プライマー層のうちのいずれか1つは、偏光板-キャリアフィルム積層体の保護層に接することができる。
【0165】
前記キャリアフィルムは、偏光板の製造時に偏光板の保護層に貼り合わされてから、最終ステップで剥離されて除去される構成である。したがって、前記剥離を容易にするために、キャリアフィルムは、偏光板の保護層に対する接着力は低くなければならないが、このために、ポリエチレンテレフタレートフィルムのような基材フィルム上にシリコーンのような樹脂層を形成する方法が公知である。
【0166】
また、前記シリコーンのような樹脂層を形成する場合、後に前記樹脂層に偏光板保護層を形成するための組成物が塗布される場合、組成物のコーティング性が低いので、保護層に気泡が発生する問題や、de-wettingが発生する問題がある。
【0167】
前記基材フィルム(PETフィルム)に別途の処理なしにコロナ処理のみをする場合、コロナ処理中に流入した酸素によってシュウ酸などが発生して異物として発生し、これによって製品の歩留まりが低下する。別途の洗浄工程が備えられる場合、作業性が低下し、設備投資費用が発生する。
【0168】
また、基材フィルムにシリコーン樹脂層を形成する場合、低い表面エネルギーによって保護層組成物が均一にコーティングされず、コーティングされない部位が発生して作業性が低下する問題がある。
【0169】
そこで、本発明では、基材フィルムの保護層に接する側に水分散性ポリウレタン系樹脂を含むプライマー層を導入した。前記水分散性ポリウレタン樹脂がプライマー層のいずれか一面に備えられる場合、偏光板製造工程でキャリアフィルム上に保護層組成物を塗布する時、コーティング性が改善されることにより、偏光板製造工程の工程性を改善することができる。また、キャリアフィルムの剥離時、保護層に損傷を最小化できるという利点がある。
【0170】
前記水分散性ポリウレタン系樹脂は、ポリウレタン、エステル系ポリウレタン樹脂、カーボネート系ポリウレタン樹脂、シラン変性ウレタン樹脂、ウレタン-アクリレート共重合体、ビニル-ウレタン共重合体、およびシリコン-アクリル-ウレタン共重合体からなる群より選択される1または2以上であってもよい。
【0171】
本明細書の一実施態様において、前記プライマー層は、水分散性ポリウレタン系樹脂を含む水分散性プライマー組成物またはその硬化物を含むことができる。前記水分散性プライマー組成物が硬化されることについては後述する。
【0172】
前記水分散性ポリウレタン樹脂は、プライマー水分散組成物100重量部に対して、5重量部~50重量部、好ましくは10重量部~30重量部含まれる。前記範囲を満足する場合、後に形成されたプライマー層の耐候性が向上できる。前記水分散性ポリウレタン樹脂は、水性溶媒に溶けているか、分散した状態で存在できる。
【0173】
前記水分散性ポリウレタン樹脂の固形分含有量は、15~50%、好ましくは15~45%、さらに好ましくは20~40%であってもよい。
【0174】
前記水分散性ポリウレタン樹脂は、主鎖にイソシアネートとポリオールとの反応によって形成されたウレタン繰り返し単位を含む樹脂を意味するもので、この時、前記イソシアネートとしては、2以上の-NCO基を有する化合物が制限なく使用可能であり、前記ポリオールとしては、2以上の水酸基を含む化合物、例えば、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテルポリオール、シロキサン系ポリオールなどが制限なく使用可能である。
【0175】
前記イソシアネート成分としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、p-フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン、1,4-ジイソシアネート、およびキシレンジイソシアネート(XDI)からなるグループより単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0176】
一方、前記ポリエステル系ポリオールは、多塩基酸成分とポリオール成分とを反応させることで得ることができ、この時、前記多塩基酸成分としては、例えば、オルト(ortho)-フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リノール酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、イタコン酸などの脂肪族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;またはこれらの酸無水物、アルキルエステル、酸ハライドなどの反応性誘導体などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0177】
一方、前記ポリカーボネート系ポリオールは、カーボネート基を有する化合物とポリオール成分とを反応させて得ることができ、この時、前記カーボネート基を有する化合物は、例えば、ジフェニルカーボネート、ジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネートなどであってもよい。
【0178】
また、前記ポリエーテルポリオールは、ポリオール成分にアルキレンオキシドを開環重合して付加させることで得ることができる。
【0179】
一方、前記ポリオール成分は、分子中にヒドロキシル基を2個以上有するものであれば特に限定されず、任意の適切なポリオールを採用することができる。例えば、前記ポリオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパノンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、4,4’-ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4’-ジヒドロキシメチルメタン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ジプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、グリセリン、1,1,1-トリメチロールプロパン、1,2,5-ヘキサトリオール、ペンタエリトリオール、グルコース、スクロース、およびソルビトールからなるグループより選択された少なくとも1種であることが好ましい。なかでも特に、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、およびポリエチレングリコール(PEG)からなるグループより選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0180】
さらに、前記水分散性ポリウレタン樹脂は、本発明の物性を損なわない範囲で、前記成分に追加的に他のポリオールや鎖延長剤を含むことができる。
【0181】
ここで、他のポリオールは、例えば、ソルビトール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの水酸基数が3個以上のポリオールなどであってもよい。
【0182】
また、前記他の鎖延長剤は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコールなどのグリコール類などが使用できる。
【0183】
一方、前記水分散性ポリウレタン樹脂は、必要に応じて、中和剤をさらに含んでもよい。中和剤を含む場合、水中におけるウレタン樹脂の安定性が向上できる。前記中和剤は、例えば、アンモニアN-メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアルキン、モルホリン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどを1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0184】
また、前記水分散性ポリウレタン樹脂の製造は、前記イソシアネートに対して不活性でかつ水に対して相溶性を有する有機溶剤で行われることが好ましい。当該有機溶剤としては、酢酸エチル、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;ジオキサンテトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤などを1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0185】
一方、本発明で使用可能な前記水分散性ポリウレタン樹脂は、当該技術分野で知られた任意の適切な方法を用いて製造できる。具体的には、前記各成分を一度に反応させるワンショット法、段階的に反応させる多段法が挙げられる。また、前記水分散性ポリウレタン樹脂の製造時に任意の適切なウレタン反応触媒を用いることができる。
【0186】
一方、本発明において、前記水分散性ポリウレタン樹脂は、カルボキシ基、スルホン酸塩基、ヒドロキシ基、または3級アミン基などの官能基を含むものが好ましい。水分散性ポリウレタン樹脂に前記官能基が含まれる場合、接着層に対する接着力および水分散性が向上するからである。一方、前記のような官能基を含む水分散性ポリウレタン樹脂は、ポリオールおよび/またはイソシアネートとして前記官能基を含む化合物を使用するか、ポリオールとイソシアネートとの反応時に前記官能基を含む鎖延長剤を添加する方法で製造できる。例えば、カルボキシ基または3級アミン基を含む水分散性ポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオールおよびイソシアネート反応時に遊離カルボキシ基または遊離アミン基を有する鎖延長剤を添加して反応させることで製造できる。この時、前記遊離カルボキシ基を有する鎖延長剤としては、例えば、ジヒドロキシカルボン酸、ジヒドロキシコハク酸などが挙げられる。ジヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロールペンタン酸などのジメチロールアルカン酸を含むジアルキロールアルカン酸であってもよい。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。一方、前記遊離アミン基を有する鎖延長剤としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、アミノエチルエタノールアミンなどの脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミンなどの脂環式ジアミン;キシリレンジアミン、トリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0187】
一方、これに制限されるわけではないが、分散性と透明度の観点から、前記水分散性ポリウレタン樹脂は、ポリカーボネート系ポリオールを反応物として用いるカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリオールを反応物として用いるエステル系ポリウレタン樹脂、またはシロキサン系ポリオールを反応物として用いるシロキサン系ポリウレタン樹脂であることが特に好ましい。
【0188】
一方、前記水分散性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、1万~100万であることが好ましい。ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が前記数値範囲を満足する場合、剥離フィルムに対する十分な接着力を実現することができ、水分散性に優れた効果がある。
【0189】
本明細書の一実施態様に係る偏光板-キャリアフィルム積層体に含まれるプライマー層は、水分散性プライマー組成物に由来するものであり、前記水分散性プライマー組成物は、架橋剤を含むことができる。
【0190】
前記架橋剤は、プライマー水分散組成物に含まれ、官能基を介して剥離フィルムとの接着力を向上させながらも、ウレタン系水分散バインダーの架橋構造を形成することによって、より緻密な内部構造を提供することができる。
【0191】
前記架橋剤は、イソシアネート架橋剤、オキサゾリン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、メラミン架橋剤、およびエポキシ架橋剤からなる群より選択される1または2以上の架橋剤であってもよい。
【0192】
前記イソシアネート架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート(tolylene diisocyanate、TDI)、ジアリールイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート(XDI)、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート(HDI)、1,6-ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート(3,3’-Bitolylene-4,4’-diisocyanate)、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、またはメタフェニレンジイソシアネートなどがある。
【0193】
前記オキサゾリン架橋剤としては、オキサゾリン基含有単量体または前記単量体を1種以上含み、また、1種以上の他の単量体が共重合されている高分子化合物のようなオキサゾリン基を官能基として有する化合物であれば制限なく使用可能である。例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、または2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリンなどの化合物や、前記のうちの1種または2種以上が重合されて形成される高分子化合物などを使用することができる。高分子化合物には他の共単量体が共重合されていてもよいが、このような単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アミド基含有単量体、不飽和ニトリル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、ハロゲン含有α,β-不飽和単量体、またはα,β-不飽和芳香族単量体からなる群より選択された1つ以上が挙げられる。
【0194】
前記カルボジイミド架橋剤としては、カルボジイミド化合物またはポリカルボジイミドなどを使用することができるが、これらに制限されるわけではない。通常、カルボジイミド化合物は、下記化学式A1の構造を有し、ポリカルボジイミドは、下記化学式A2のような繰り返し構造を含む。
【0195】
【化14】
【0196】
化学式A1およびA2において、Rは、カルボジイミド化合物またはポリカルボジイミドが含み得る公知の官能基であり、nは、2以上の整数である。
【0197】
前記メラミン架橋剤としては、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドとを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的または完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物などを使用することができる。
【0198】
前記エポキシ架橋剤は、分子内にエポキシ基を含む架橋剤であって、例えば、エチレングリコール-ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール-ジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジルエチレンジアミン、グリセリンジグリシジルエーテル、プロピレングリコール-ジグリシジルエーテル、およびポリプロピレングリコール-ジグリシジルエーテルからなるグループより選択された1種以上を使用することができる。
【0199】
本明細書の一実施態様において、前記架橋剤は、前記水分散性ポリウレタン系樹脂100重量部対比、110~150重量部、好ましくは110重量部~130重量部含まれる。前記範囲内でプライマー層の架橋密度を適切に調節することができ、剥離フィルムとの適切な接着力を確保し、コーティング性、延伸性、ブロッキング特性および黄変特性などのような塗膜物性も向上させることができ、ポリウレタン系樹脂の末端基がイソシアネートを有するプレポリマーの製造も容易であり得る。
【0200】
本明細書の一実施態様に係る偏光板-キャリアフィルム積層体に含まれるプライマー層は、水分散性プライマー組成物に由来するものであり、前記水分散性プライマー組成物は、水分散性微粒子を含むことができる。前記プライマー層が水分散微粒子を含む場合、プライマー層の外観が綺麗(透明)(clear)であり、ヘイズ値が低い特性を有する。また、偏光板製造工程時の硬化効率を高められる効果がある。
【0201】
本発明に使用可能な前記水分散性微粒子は、任意の適切な微粒子を用いることができ、例えば、無機系微粒子、有機系微粒子、またはこれらの組み合わせを用いることができる。無機系微粒子としては、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、アンチモン系などの無機酸化物などが挙げられる。有機系微粒子としては、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、架橋ポリビニルアルコール、メラミン系樹脂などが挙げられる。
【0202】
前記水分散性微粒子のなかでもシリカが特に好ましい。シリカは、ブロッキング抑制能がさらに優れ、また、透明性に優れ、ヘイズを発生させず、着色もないので、偏光板の光学特性に及ぼす影響がより小さいからである。さらに、コロイダルシリカはプライマー組成物に対する分散性および分散安定性が良好であるので、プライマー層形成時の作業性にもより優れている。
【0203】
一方、前記水分散性微粒子は、平均径(平均一次粒子径)が10nm~200nm程度、さらに好ましくは20nm~150nm程度であるのが良い。水分散性微粒子の平均径が10nmより小さい時は表面エネルギーが高くなるので、プライマー溶液内で水分散性粒子の凝集および沈殿が生じて溶液の安定性が阻害されることがあり、平均径が200nmより大きい場合には、水分散性粒子がプライマー溶液内で分散が均一に起こらず、粒子がかたまるにつれて可視光線(400nm~800nm)の波長より大きさが大きくなって、400nm以上の光を散乱してヘイズが上昇する。前記のような範囲の粒子径を有する微粒子を用いることにより、プライマー層の表面に適切に凹凸を形成して、特に、剥離フィルムとプライマー層における摩擦力を効果的に低減させることができる。その結果、ブロッキング抑制能がさらに優れることができる。
【0204】
本発明のプライマー組成物は水系であるので、好ましくは、前記微粒子は、水分散体に配合される。具体的には、微粒子としてシリカを採用する場合、好ましくは、コロイダルシリカとして配合される。コロイダルシリカとしては、当該技術分野における市販の製品をそのまま用いることができ、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックスシリーズ、エアプロダクツのAEROSILシリーズ、日本触媒のepostarシリーズおよびsoliostar RAシリーズ、RancoのLSHシリーズなどを使用することができる。
【0205】
本明細書の一実施態様において、前記水分散性微粒子は、前記水分散性ポリウレタン系樹脂100重量部に対して、1重量部~10重量部、好ましくは2重量部~5重量部含まれる。
【0206】
本明細書の一実施態様において、前記水分散性微粒子の平均粒径が50nm以上1,000nmであってもよい。前記水分散性微粒子の平均粒径は走査電子顕微鏡(TEM)により測定可能であり、2回以上繰り返し測定された水分散性微粒子の粒径の平均値であってよい。
【0207】
本明細書の一実施態様に係る偏光板-キャリアフィルム積層体に含まれるプライマー層は、水分散性プライマー組成物に由来するものであり、前記プライマー水分散組成物は、湿潤(ウェッティング)剤をさらに含んでもよい。
【0208】
本明細書の一実施態様において、前記プライマー層の厚さは、50nm~200nm、60nm~180nm、80nm~160nm、または100nm~130nmであってもよいし、プライマー層の厚さを前記範囲内に調節することにより、プライマー層の接着力を向上させながらも耐久性および耐候性を優れたものに維持することができる。ただし、プライマー層の厚さは前述した範囲に制限されるものではなく、必要に応じて適宜調節可能である。
【0209】
製造方法
本明細書は、前述した偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法を提供する。
【0210】
前記偏光板-キャリアフィルムの製造方法は、ロールツーロール(roll to roll)工程によれば良い。ロールツーロール工程を用いて連続工程で行われるので、生産歩留まりが高く、生産コストが節減されて経済的であるという利点がある。
【0211】
本明細書は、偏光子の一面にキャリアフィルムを供給するステップと、前記偏光子の他面に保護フィルムを供給するステップと、前記偏光子とキャリアフィルムとの間に活性エネルギー線硬化型組成物を供給して保護層を形成するステップと、前記偏光子と保護フィルムとの間に光硬化性接着剤組成物を供給して接着剤層を形成するステップと、前記キャリアフィルムおよび保護フィルムの各表面に一対の加圧手段を配置して、前記キャリアフィルム、保護層、偏光子、接着剤層、および保護フィルムが順次に積層された積層体を加圧するステップと、活性エネルギー線を照射して前記保護層および接着剤層を硬化させるステップとを含むものである偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法を提供する。
【0212】
本明細書の一実施態様に係る偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法は、キャリアフィルムを用意するステップをさらに含んでもよい。
【0213】
前記キャリアフィルムを用意するステップは、キャリアフィルムの一面または両面に水分散性プライマー組成物をキャリアフィルム上に塗布および乾燥して、キャリアフィルムの一面または両面にそれぞれプライマー層を備えるステップをさらに含んでもよい。
【0214】
すなわち、本明細書の一実施態様に係る偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法は、フィルム供給工程および加圧工程を含むことができる。
【0215】
本明細書の一実施態様に係る偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法において、前記フィルム供給工程は、偏光子100の一面にキャリアフィルム200を供給するステップと、前記偏光子の他面に保護フィルム300を供給するステップとを含む。具体的には、偏光子100の一面にキャリアフィルム200を供給すると同時に、前記偏光子100の他面に保護フィルム300を供給する方法で行われる。
【0216】
前記偏光子100、キャリアフィルム200、および保護フィルム300を供給する方法は、当該技術分野でよく知られた方法を利用して行われる。例えば、前記偏光子、キャリアフィルム、および保護フィルムは、それぞれのフィルムがロール110、210、310に巻かれた形態で供給されるが、これに限定されるものではない。
【0217】
また、前記のようにキャリアフィルムを用いる場合、保護層の形成時、キャリアフィルムが偏光子を効果的に保護して保護層形成用組成物によって他の構成が汚染するのを防止することができ、加圧手段によって加えられる圧力をキャリアフィルムが吸収して偏光子に作用する応力が緩和されて破断を効果的に抑制する効果がある。
【0218】
本明細書の一実施態様において、前記各フィルムの供給速度は、製造工程に適切な値であれば特に限定されるものではないが、例えば、1M/min以上100M/minの速度で供給される。好ましくは10M/min以上50M/minの速度で供給され、この場合、キャリアフィルムと保護フィルムの偏光子に対する安定した接着が行われるという利点がある。
【0219】
本明細書の一実施態様において、前記偏光子は、延伸されたものであってもよい。すなわち、本明細書の偏光板-キャリアフィルムまたは偏光板の製造方法によれば、偏光子の供給工程前に、偏光子の延伸工程をさらに経てもよい。前記偏光子の延伸工程は、その条件などは特に制限されない。
【0220】
本明細書の一実施態様において、前記偏光子は、厚さが5μm以上25μm以下であってもよい。前記偏光子の厚さは、延伸後の厚さを意味する。延伸後の厚さが前記数値範囲を満足する場合、厚さが薄い薄型偏光板の製造が容易である。
【0221】
前記偏光子は、ヨウ素系化合物または二色性染料を含有する分子鎖が一定の方向に配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムが使用できる。このような偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素または二色性染料を染着させた後、一定の方向に延伸および架橋させる方法により製造できる。
【0222】
本明細書の一実施態様において、前記延伸工程は、ホウ酸水溶液またはヨウ素水溶液のような溶液上で行われる湿式延伸または大気中で行われる乾式延伸などで行われる。
【0223】
本明細書の一実施態様において、前記ホウ酸水溶液またはヨウ素水溶液の濃度は特に限定されないが、例えば、1~10%であってもよい。
【0224】
本明細書の一実施態様において、前記延伸工程の延伸倍率は、4倍以上、より具体的には、4倍~15倍、または4倍~13倍であってもよい。
【0225】
本明細書の一実施態様において、前記延伸工程の延伸方向は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの長手方向(Machine Direction、MD方向)で行われる。
【0226】
本明細書の一実施態様において、前記キャリアフィルムの幅は、偏光子の幅より大きいものであってもよい。キャリアフィルムの幅を偏光子の幅より大きくする場合、活性エネルギー線硬化型組成物または接着剤組成物による加圧手段などの汚染を効果的に減少させることができる。
【0227】
本明細書の一実施態様に係る偏光板の製造方法は、前記偏光子とキャリアフィルムとの間に活性エネルギー線硬化型組成物を供給して保護層を形成するステップを含む。
【0228】
前記保護層を形成するステップは、前記フィルム供給工程中の任意のステップにおいて、偏光子の接合面およびキャリアフィルムの接合面のうちの少なくとも一方に、活性エネルギー線硬化型組成物を塗布する方法で行われる。前記活性エネルギー線硬化型組成物を塗布する面は限定されず、例えば、前記キャリアフィルムの接合面に活性エネルギー線硬化型組成物を塗布することができる。
【0229】
この時、前記活性エネルギー線硬化型組成物が塗布されるキャリアフィルムの接合面には、活性エネルギー線硬化型組成物が塗布される前に、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、または電子線照射処理のような表面活性化処理が行われる。
【0230】
本明細書の一実施態様において、前記活性エネルギー線硬化型組成物を塗布する方法は、必要な量の組成物を均一に塗布できれば特に限定されない。例えば、スピンコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、ブレードコーティングなどの方法があり、連続工程のために、好ましくは、ロールコーティングによれば良い。前記塗布は、保護層形成用組成物塗布手段70により行われる。
【0231】
本明細書の一実施態様に係る偏光板の製造方法は、前記偏光子と保護フィルムとの間に光硬化性接着剤組成物を供給して接着剤層を形成するステップを含む。
【0232】
前記接着剤層を形成するステップは、前記フィルム供給工程中の任意のステップにおいて、偏光子の接合面および保護フィルムの接合面のうちの少なくとも一方に、光硬化性接着剤組成物を塗布する方法で行われる。前記光硬化性接着剤組成物を塗布する面は限定されず、例えば、前記保護フィルムの接合面に活性エネルギー線硬化型組成物を塗布することができる。
【0233】
本明細書の一実施態様において、前記光硬化性組成物を塗布する方法は、必要な量の組成物を均一に塗布できれば特に限定されない。例えば、スピンコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、ブレードコーティングなどの方法があり、連続工程のために、好ましくは、ロールコーティングによれば良い。前記塗布は、接着剤組成物塗布手段50により行われる。
【0234】
本明細書の一実施態様に係る偏光板の製造方法は、前記キャリアフィルムおよび保護フィルムの各表面に一対の加圧手段を配置して、前記キャリアフィルム、偏光子、および保護フィルムが積層されたフィルム積層体を加圧するステップを含む。より具体的には、前記キャリアフィルム、偏光子、および保護フィルムが積層されたフィルム積層体を挟んだ一対の加圧手段を用いて加圧する方法で行われる。この時、前記加圧手段は特に限定されるものではないが、例えば、ロール形態のラミネータなどの接合機または加圧ロール10、20を用いることができる。
【0235】
本明細書の一実施態様において、前記加圧するステップは、0.5Mpa~10Mpa、または1Mpa~8Mpaの圧力で行われる。前記数値範囲を満足する場合、偏光子の損傷なく安定した走行性を確保すると同時に、フィルムの接合時に流入する気泡を効果的に除去できるという利点がある。
【0236】
本明細書の一実施態様に係る偏光板の製造方法は、活性エネルギー線を照射して前記保護層および接着剤層を硬化させるステップを含む。
【0237】
本明細書の一実施態様において、前記活性エネルギー線を照射して前記活性エネルギー線硬化型組成物および光硬化性接着剤組成物を硬化するステップは、活性エネルギー線照射装置を用いて照射光を照射する方法で行われる。すなわち、活性エネルギー線照射手段60により行われる。
【0238】
前記活性エネルギー線照射装置は特に限定されず、例えば、フュージョンランプ(Fusion lamp)、アークランプ(Arc lamp)、LED、および低圧ランプが挙げられる。
【0239】
本明細書の一実施態様に係る偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法は、保護層および接着剤層が形成された偏光子積層体に活性エネルギー線を照射するので、1回の活性エネルギー線の照射で保護層および接着剤層を同時に硬化させることができるという利点がある。
【0240】
前記活性エネルギー線の光量は、100mJ/cm~1,000mJ/cm、好ましくは500mJ/cm~1,000mJ/cmであってもよく、前記照射光の照射時間は、1秒~10分、好ましくは2秒~30秒であってもよい。
【0241】
前記活性エネルギー線の光量および照射時間の範囲を満足する場合、接着剤層および保護層の硬化速度が速く、フィルムの外観特性および光学特性を低下させることなく光源から過度に熱が伝達されるのを防止して、偏光子に走行シワが発生することを最小化して生産性に優れるという利点がある。
【0242】
また、前記活性エネルギー線の照射方向は、保護層および接着剤層が十分に硬化できれば特に限定されないが、好ましくは、偏光板-キャリアフィルム積層体のキャリアフィルムの表面で行われる。
【0243】
本明細書の一実施態様において、製造された偏光板-キャリアフィルム積層体を巻取るステップを含むことができる。この時、偏光板巻取ロール500を用いることができる。
【0244】
本明細書は、前述した偏光板-キャリアフィルム積層体の保護層から前記キャリアフィルムを剥離するステップを含む偏光板の製造方法を提供する。
【0245】
本明細書は、偏光板の製造方法を提供し、前記偏光板の製造方法は、前述した偏光板-キャリアフィルム積層体を製造するステップと、前記偏光板-キャリアフィルム積層体の保護層から前記キャリアフィルムを剥離するステップとを含む。
【0246】
本明細書の一実施態様に係る偏光板の製造方法は、偏光板-キャリアフィルム積層体の前記キャリアフィルムを剥離するステップ(以下、剥離工程)を含む。
【0247】
本明細書の一実施態様において、前記キャリアフィルムを剥離するステップは、ロールツーロール工程で行われる。
【0248】
本明細書の一実施態様によれば、前記偏光板の製造方法は、前記剥離工程前に、偏光板-キャリアフィルム積層体を保管するステップを含む。
【0249】
本明細書の一実施態様によれば、前記偏光板-キャリアフィルム積層体を保管するステップは、偏光板-キャリアフィルム積層体を常温(25℃)および相対湿度30~50%で1~100時間行われる。
【0250】
本明細書の一実施態様において、下記換算式1による保護層のキャリアフィルムに対する剥離力の変化率(B1)は、300%以下、好ましくは250%以下、さらに好ましくは200%以下であってもよい。
【0251】
【数1】
【0252】
前記換算式1中、X3’は、偏光板-キャリアフィルム積層体を保管するステップを行った後の保護層のキャリアフィルムに対する剥離力(X3’)であり、X3は、偏光板-キャリアフィルム積層体を保管するステップを行う前の保護層のキャリアフィルムに対する剥離力(X3)である。
【0253】
本明細書の一実施態様において、下記換算式2による保護層の偏光子に対する剥離力の変化率(B2)は、0.05%以下であってもよい。
【0254】
【数2】
【0255】
前記換算式2中、X1’は、偏光板-キャリアフィルム積層体を保管するステップを行った後の保護層の偏光子に対する剥離力(X1’)であり、X1は、偏光板-キャリアフィルム積層体を保管するステップを行う前の保護層の偏光子に対する剥離力(X1)である。
【0256】
本明細書の一実施態様において、前記剥離工程は、ロールツーロール工程によって行われる。前記ロールツーロール工程とは、キャリアフィルムを剥離して、剥離されたキャリアフィルムをキャリアフィルム巻取ロールに巻取ると同時に、キャリアフィルムが剥離された偏光板を巻取ロールに巻取る方法で行われることを意味する。
【0257】
前記のように、本明細書の一実施態様に係る偏光板の製造方法は、フィルム供給工程、加圧工程、および剥離工程をロールツーロール(roll-to-roll)工程を用いて同時に連続工程で行われるので、生産歩留まりが高く、非常に経済的であるという利点がある。
【0258】
本明細書の一実施態様に係る偏光板の製造方法は、保護層上に粘着剤層を形成する工程をさらに含んでもよい。前記粘着剤層は、偏光板を液晶パネルなどの液晶表示装置に粘着するために備えられる構成である。
【0259】
前記粘着剤層を形成する工程は特に限定されず、例えば、別途の粘着フィルムを保護層上に接着させるか、保護層上に粘着剤組成物を塗布する方法によれば良い。
【0260】
本明細書の一実施態様において、前記保護層上に粘着剤組成物を塗布する方法は、必要な量の組成物を均一に塗布できれば特に限定されない。例えば、スピンコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、ブレードコーティングなどの方法があり、連続工程のために、好ましくは、ロールコーティングによれば良い。
【0261】
この時、前記粘着剤組成物が塗布される保護層には、粘着剤組成物が塗布される前に、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、または電子線照射処理のような表面活性化処理が行われる。
【0262】
偏光板
本明細書は、前述した偏光板の製造方法により製造された偏光板を提供する。
【0263】
前記偏光板は、前述した偏光板-キャリアフィルム積層体からキャリアフィルムが剥離された構造を有する。
【0264】
具体的には、偏光子1と、前記偏光子1の一面に順次に備えられた接着剤層および保護フィルム3と、前記偏光子の他面に備えられた保護層2とを含む構造を有する(図1参照)。
【0265】
保護層形成用組成物
本明細書は、エポキシ化合物(A)、オキセタン化合物(B)、および変性シロキサン化合物(C)を含む偏光板保護層用活性エネルギー線硬化型組成物を提供する。
【0266】
前記エポキシ化合物(A)、オキセタン化合物(B)、および変性シロキサン化合物(C)の説明は、上述した通りである。
【0267】
粘着剤層
本明細書の一実施態様において、前記偏光板は、保護層の偏光子と接する面の反対面に粘着剤層をさらに含んでもよい。
【0268】
一方、本発明の偏光板は、表示装置パネルまたは位相差フィルムのような光学フィルムとの付着のために、必要に応じて、前記保護層の上部に粘着剤層を含むことができる。
【0269】
この時、前記粘着剤層は、当該技術分野でよく知られている多様な粘着剤を用いて形成され、その種類が特に制限されるわけではない。例えば、前記粘着剤層は、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤などを用いて形成される。なかでも、透明性および耐熱性などを考慮する時、アクリル系粘着剤を使用することが特に好ましい。
【0270】
一方、前記粘着剤層は、保護層の上部に粘着剤を塗布する方法で形成されてもよく、離型シート上に粘着剤を塗布した後、乾燥させて製造される粘着シートを保護層の上部に付着させる方法で形成されてもよい。
【0271】
画像表示装置
前記のような本発明の偏光板は、液晶表示装置などのような画像表示装置に有用に適用可能である。
【0272】
前記画像表示装置は、液晶パネルと、前記液晶パネルの上面に備えられる上部偏光板と、前記液晶パネルの下面に備えられる下部偏光板とを含む。
【0273】
図3は、偏光子と、前記偏光子1の一面に順次に備えられた接着剤層および保護フィルム3と、前記偏光子の他面に備えられた保護層2とを含む偏光板6が、粘着層4を介在して液晶パネル7に付着したことを示す。
【0274】
本明細書の一実施態様に係る画像表示装置は、液晶パネルと、前記液晶パネルの上面に備えられる上部偏光板と、前記液晶パネルの下面に備えられる下部偏光板であって本明細書に係る偏光板とを含む。
【0275】
本明細書の一実施態様に係る画像表示装置は、液晶パネルと、前記液晶パネルの上面に備えられる上部偏光板であって本明細書に係る偏光板と、前記液晶パネルの下面に備えられる下部偏光板とを含む。
【0276】
本明細書の一実施態様に係る画像表示装置は、液晶パネルと、前記液晶パネルの上面に備えられる上部偏光板と、前記液晶パネルの下面に備えられる下部偏光板とを含み、前記上部偏光板および下部偏光板は、本明細書に係る偏光板である。
【0277】
この時、前記液晶表示装置に含まれる液晶パネルの種類は特に限定されない。例えば、その種類に制限されず、TN(twisted nematic)型、STN(super twisted nematic)型、F(ferroelectic)型、またはPD(polymer dispersed)型のようなパッシブマトリクス方式のパネル;2端子型(two terminal)または3端子型(three terminal)のようなアクティブマトリクス方式のパネル;横電界型(IPS;In Plane Switching)パネルおよび垂直配向型(VA;Vertical Alignment)パネルなどの公知のパネルがすべて適用可能である。また、液晶表示装置を構成するその他の構成、例えば、上部および下部基板(ex.カラーフィルタ基板またはアレイ基板)などの種類も特に制限されず、この分野で公知の構成が制限なく採用可能である。
【実施例
【0278】
以下、実施例を通じて本明細書をさらに詳細に説明する。しかし、以下の実施例は本明細書を例示するためのものであり、これによって本明細書の範囲が限定されるものではない。
【0279】
<実験例>
<製造例>
(1)製造例1:活性エネルギー線硬化型組成物1の製造
3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名セロキサイド-2021P)と3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート100重量部に対して、3-エチル-3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル]オキセタン(東亜合成のアロンオキセタンOXT-221)23重量部、1,4-シクロヘキシルジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMDGE)30重量部、ポリエーテル変性シロキサン化合物(化学式、製造会社、OFX-0400)0.6重量部を混合して組成物を製造した。前記組成物100重量部に対して、光開始剤としてIrgacure250 3重量部、および光増感剤としてESACURE ITXを1重量部を混合して最終活性エネルギー線硬化型組成物1を製造した。
【0280】
(2)製造例2:活性エネルギー線硬化型組成物2の製造
ポリエーテル変性シロキサン化合物の重量部を、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート100重量部に対して、3重量部に変更した以外は、前記製造例1と同様の方法で製造した。
【0281】
(3)製造例3:活性エネルギー線硬化型組成物3の製造
ポリエーテル変性シロキサン化合物の重量部を、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート100重量部に対して、6.15重量部に変更した以外は、前記製造例1と同様の方法で製造した。
【0282】
(4)製造例4:活性エネルギー線硬化型組成物4の製造
ポリエーテル変性シロキサン化合物の重量部を、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’、4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート100重量部に対して、9.2重量部に変更した以外は、前記製造例1と同様の方法で製造した。
【0283】
(5)製造例5:活性エネルギー線硬化型組成物5の製造
ポリエーテル変性シロキサン化合物を添加しない以外は、前記製造例1と同様の方法で製造した。
【0284】
(6)製造例6:光硬化性接着剤組成物の製造
3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名CEL-2021P)30重量部、3-エチル-3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル]オキセタン(東亜合成のアロンオキセタンOXT-221)20重量部、1,4-シクロヘキシルジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMDGE)40重量部、およびノナンジオールジアクリレート10重量部を含む光硬化性組成物100重量部に、光開始剤としてIrgacure250 3重量部、および光増感剤としてESACURE ITXを1重量部添加して光硬化性接着剤組成物を製造した。
【0285】
【化15】
【0286】
<実施例1-偏光板-キャリアフィルム積層体1の製造>
厚さ23μmのポリビニルアルコール系フィルムを、25℃の雰囲気下、10m/minの速度で水平方向に移動させながら、その上面にポリウレタン水分散性樹脂を含むプライマー層が形成されたキャリアフィルム(製品名H34L、コーロン社)を供給し、その下面に保護フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、日本の東洋紡社製)を供給し、10m/minの速度および2MPaの圧力で一対のロールを通過させた。この時、前記ポリビニルアルコール系フィルムおよび保護フィルムの間に、製造例6で製造された紫外線硬化型接着剤組成物をメイヤーバー(Mayor Bar)を用いて約3μmの厚さに塗布した。また、前記ポリビニルアルコール系フィルムおよびキャリアフィルムの間に活性エネルギー線硬化型組成物1をメイヤーバー(Mayor Bar)を用いて約5μmの厚さに塗布した。
【0287】
その後、フュージョンランプ(Fusion lamp)、アークランプ(Arc lamp)、LED、低圧ランプなどのUV光源の1つまたは多重を用いてキャリアフィルム側に紫外線を照射して、積層体を硬化させて偏光板-キャリアフィルム積層体1を製造した。
【0288】
<実施例2-偏光板-キャリアフィルム積層体2の製造>
活性エネルギー線硬化型組成物1の代わりに活性エネルギー線硬化型組成物2を用いた以外は、前記実施例1と同様の方法で偏光板-キャリアフィルム積層体2を製造した。
【0289】
<実施例3-偏光板-キャリアフィルム積層体3の製造>
活性エネルギー線硬化型組成物1の代わりに活性エネルギー線硬化型組成物3を用いた以外は、前記実施例1と同様の方法で偏光板-キャリアフィルム積層体3を製造した。
【0290】
<参考例1-偏光板-キャリアフィルム積層体4の製造>
活性エネルギー線硬化型組成物1の代わりに活性エネルギー線硬化型組成物4を用いた以外は、前記実施例1と同様の方法で偏光板-キャリアフィルム積層体4を製造した。
【0291】
<比較例1-偏光板-キャリアフィルム積層体5の製造>
活性エネルギー線硬化型組成物1の代わりに活性エネルギー線硬化型組成物5を用いた以外は、前記実施例1と同様の方法で偏光板-キャリアフィルム積層体5を製造した。
【0292】
<比較例2-偏光板-キャリアフィルム積層体6の製造>
キャリアフィルムとしてプライマー層が備えられていないPETフィルム(製品名XE50、東レ社)以外は、前記比較例2と同様の方法で偏光板-キャリアフィルム積層体6を製造した。
【0293】
<実験例1:キャリアフィルムのブロッキング現象テスト>
実施例1~3、参考例、比較例1および2で製造した偏光板-キャリアフィルム積層体を巻取方向の垂直となる方向にサンプルの長さが5cmとなるようにしてロールに巻取ってフィルムロールを形成した。この後、高速剥離機を用いて、キャリアフィルムを180゜の角度で30m/minの速度で剥離した。この時、フィルムの外観に応じて、Lv.0からLv.3まで区分して評価した。
*Lv.0:偏光子およびキャリアフィルムとも外観に異常のない綺麗な状態
Lv.1:偏光子の外観には異常がないが、剥離されたキャリアフィルムの面が変形した状態
Lv.2:偏光子の表面に変形が発生した状態
Lv.3:キャリアフィルムが剥離されずに破れた状態
【0294】
また、キャリアフィルムの剥離テストを進行させた後、剥離したキャリアフィルムが綺麗に剥離されたかを確認するために、ヘイズメータ(Hazemeter、製造会社:Secos社)によりキャリアフィルムの内部ヘイズを測定して、初期ヘイズ値に対するヘイズ変化率を測定した。内部ヘイズ(Haze)は濁っている程度または濁度を意味するもので、透過モードのヘイズ(Haze)で測定し、その程度を初期ヘイズ値に対するヘイズ変化率(%)で表現した。
【0295】
<実験例2:高温促進評価>
前記製造された偏光板において、保護層を形成する前に、偏光子の保護フィルムが積層された面の他面に、鈍いペンシルを用いて300gの荷重で引っ掻いて偏光子にクラックを誘発した以外は、同様の方法で偏光板を製造した。
【0296】
この後、前記偏光子にクラックが誘発された偏光板を幅120mm、長さ100mmに裁断した後、80℃で100時間~300時間以上放置した後、偏光子の収縮によってクラックが開いて光が漏れるかを観察し、全クラックのうち光の漏れるクラックの数を計算して、偏光板内のクラック(crack)発生率を導出して下記表2に示した。
*クラック発生率:光の漏れるクラックの数/全クラックの数×100(%)
【0297】
<実験例3:保護層の剥離力テスト>
前記偏光板に対して、上述したクロスカットテープ(cross-cut tape)試験を用いて保護層の偏光子に対する接着力(X1)を測定し、フィルム高速剥離機(CBT-4720、Chungbuk Tech)を用いて前記保護層のキャリアフィルムに対する剥離力(X3:gf/5cm)を測定した。方法および条件は上述した通りであり、その結果を下記表2に示した。
【0298】
【表2】
【0299】
前記実験結果から、比較例の場合、保護層のキャリアフィルムに対する剥離力(X3)が大きいので、キャリアフィルムの剥離時にブロッキング現象が現れることを確認することができた。これに対し、実施例の場合、保護層のキャリアフィルムに対する剥離力が小さいので、キャリアフィルムの剥離時にブロッキング現象が最小化されたことを確認することができた。比較例1および2による偏光板-キャリアフィルム積層体は、キャリアフィルムの剥離後に外観が変形したり、ヘイズ値が増加することを確認することができた。
【0300】
これに対し、実施例1~3による偏光板-キャリアフィルム積層体の場合、キャリアフィルムを剥離しても外観の変形がないか、ほとんどなく、ヘイズ値も大きく増加しないことを確認することができた。これは、実施例1~3による偏光板-キャリアフィルム積層体の保護層が変性シロキサン化合物を含み、保護層のキャリアフィルムに対する剥離力が低いので、キャリアフィルムと保護層とがくっつく現象、すなわち、ブロッキング現象(Blocking)を効果的に抑制したからである。
【0301】
また、保護層に含まれるポリエーテル変性シロキサン化合物の含有量を調節する場合、高温耐久性がさらに向上することを確認することができる。エポキシ化合物(A)100重量部に対して、変性シロキサン化合物(C)を9.2重量部含む参考例の場合、6.8重量部以下で含む実施例1~3の場合に比べて、クラック発生率が大きいことを確認することができる。
(付記)
(付記1)
偏光子と、
前記偏光子の一面に順次に備えられた接着剤層および保護フィルムと、
前記偏光子の他面に直接付着した保護層とを含み、
前記保護層は、エポキシ化合物(A)、オキセタン化合物(B)、および変性シロキサン化合物(C)を含む活性エネルギー線硬化型組成物またはその硬化物を含む樹脂層である偏光板。
(付記2)
前記保護層の偏光子に対する接着力(X1)が、D3359-87によるASTM標準クロスカットテープ(cross-cut tape)試験によって測定する時、4B以上である、付記1に記載の偏光板。
(付記3)
前記変性シロキサン化合物(C)は、ポリエーテル変性シロキサン化合物である、付記1または2に記載の偏光板。
(付記4)
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、エポキシ化合物(A)100重量部に対して、変性シロキサン化合物(C)を0.01~6.8重量部含むものである、付記1~3のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記5)
前記エポキシ化合物(A)は、脂環式エポキシ化合物およびグリシジルエーテルタイプの化合物からなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むものである、付記1~4のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記6)
前記エポキシ化合物(A)は、脂環式エポキシ化合物およびグリシジルエーテルタイプの化合物の混合物である、付記1~5のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記7)
前記エポキシ化合物(A)は、脂環式エポキシ化合物およびグリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物を1:1~10:1の重量比で含むものである、付記1~6のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記8)
前記保護層の厚さは、4μm以上11μm以下である、付記1~7のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記9)
前記偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムである、付記1~8のいずれか一つに記載の偏光板。
(付記10)
付記1~9のいずれか一つに記載の偏光板と、
前記偏光板の保護層の偏光子と接する面の他面にキャリアフィルムとをさらに含むものである偏光板-キャリアフィルム積層体。
(付記11)
下記一般式1によって計算されたX2が、0.95以上1以下である、付記10に記載の偏光板-キャリアフィルム積層体。
[一般式1]
X2=(ASTM標準クロスカットテープ試験後に残留した保護層の面積)/(全剥離面の面積)
(付記12)
前記保護層の前記キャリアフィルムに対する剥離力(X3)が、40gf/5cm以下である、付記10または11に記載の偏光板-キャリアフィルム積層体。
(付記13)
前記キャリアフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムである、付記10~12のいずれか一つに記載の偏光板-キャリアフィルム積層体。
(付記14)
前記キャリアフィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムの一面または両面にそれぞれ備えられたプライマー層とを含む、付記10~13のいずれか一つに記載の偏光板-キャリアフィルム積層体。
(付記15)
偏光子の一面にキャリアフィルムを供給するステップと、
前記偏光子の他面に保護フィルムを供給するステップと、
前記偏光子とキャリアフィルムとの間に活性エネルギー線硬化型組成物を供給して保護層を形成するステップと、
前記偏光子と保護フィルムとの間に光硬化性接着剤組成物を供給して接着剤層を形成するステップと、
前記キャリアフィルムおよび保護フィルムの各表面に一対の加圧手段を配置して、前記キャリアフィルム、保護層、偏光子、接着剤層、および保護フィルムが順次に積層された積層体を加圧するステップと、
活性エネルギー線を照射して前記保護層および接着剤層を硬化させるステップとを含むものである、付記10~14のいずれか一つに記載の偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法。
(付記16)
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、粘度が常温で50cps以上200cps以下である、付記15に記載の偏光板-キャリアフィルム積層体の製造方法。
(付記17)
付記10~14のいずれか一つに記載の偏光板-キャリアフィルム積層体の保護層から前記キャリアフィルムを剥離するステップを含む偏光板の製造方法。
(付記18)
付記17に記載の製造方法により製造され、
偏光子と、
前記偏光子の一面に順次に備えられた接着剤層および保護フィルムと、
前記偏光子の他面に備えられ、偏光子に直接付着した保護層とを含む偏光板。
(付記19)
エポキシ化合物(A)、オキセタン化合物(B)、および変性シロキサン化合物(C)を含む偏光板保護層用活性エネルギー線硬化型組成物。
【符号の説明】
【0302】
1:偏光子
2:保護層
3:保護フィルム
4:粘着剤層
5:キャリアフィルム
6:偏光板
7:画像表示パネル
10、20:加圧ロール
30、40:走行ロール
50:接着剤組成物塗布手段
60:活性エネルギー線照射手段
70:保護層形成用組成物塗布手段
100:偏光子
110:偏光子ロール
200:キャリアフィルム
210:キャリアフィルムロール
300:保護フィルム
310:保護フィルムロール
500:偏光板巻取ロール
図1
図2
図3
図4