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特許7195329流体案内通路および/または空間を封止するための機械的シール、ならびに機械的シールの摩耗を監視するための方法
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  • 特許-流体案内通路および/または空間を封止するための機械的シール、ならびに機械的シールの摩耗を監視するための方法 図1
  • 特許-流体案内通路および/または空間を封止するための機械的シール、ならびに機械的シールの摩耗を監視するための方法 図2
  • 特許-流体案内通路および/または空間を封止するための機械的シール、ならびに機械的シールの摩耗を監視するための方法 図3
  • 特許-流体案内通路および/または空間を封止するための機械的シール、ならびに機械的シールの摩耗を監視するための方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】流体案内通路および/または空間を封止するための機械的シール、ならびに機械的シールの摩耗を監視するための方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20221216BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20221216BHJP
   G01M 3/02 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
F16J15/34 K
G01D5/245 110X
G01D5/245 110L
G01D5/245 H
G01M3/02 J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020542501
(86)(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2018076757
(87)【国際公開番号】W WO2019076623
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】102017218711.5
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520138302
【氏名又は名称】クリスティアン・マイヤー・ゲーエムベーハー・ウント・コ・カーゲー・マシーネンファブリーク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・シェンク
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-193844(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103791095(CN,A)
【文献】実開昭52-002066(JP,U)
【文献】実開昭59-138257(JP,U)
【文献】実公昭45-025767(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34-15/38
G01D 5/245
G01M 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定構成要素(2)および/または回転する構成要素(3)内において延びる少なくとも1つの流体案内通路(1)および/または空間を、環境から封止するための機械的シールであって、
相手の環体に対して軸方向において封止する様態で支持され、それ自体の前端シール面(5)または相手の面における摩耗を補償するために、前記前端シール面(5)との軸方向において弾性的および移動可能に前記相手の環体に対して支持される滑り環体(4)を有し、
軸方向における前記滑り環体(4)の位置を検出するための位置センサ(20)を有する、機械的シールにおいて、
温度センサ(19)が、前記流体案内通路(1)および/または前記空間から離れる方を向いた前記前端シール面(5)の漏れ側(7)に設けられ、前記温度センサは、前記流体案内通路(1)および/または前記空間から前記前端シール面(5)を介して通過する漏れの流れの大きさに依存する温度を少なくとも間接的に検出することを特徴とする機械的シール。
【請求項2】
前記位置センサ(20)は、前記滑り環体(4)に固定されるか、または前記滑り環体(4)に対して軸方向で支持され且つ軸方向において前記滑り環体(4)とともに移動する、少なくとも1つの磁石(14)と、前記滑り環体(4)の径方向外側に位置決めされ、軸方向における前記磁石(14)の位置を検出する、具体的にはホールセンサである固定センサ(13)と、を備えることを特徴とする、請求項1に記載の機械的シール。
【請求項3】
前記温度センサ(19)は前記固定センサ(13)内に組み込まれることを特徴とする、請求項2に記載の機械的シール。
【請求項4】
前記固定センサ(13)は、前記漏れの流れ内に位置決めされるセンサ筐体(18)を備え、前記センサ筐体(18)の内部または表面に前記温度センサ(19)は位置決めされ、前記温度センサ(19)は、具体的には前記センサ筐体(18)内に完全に包囲されることを特徴とする、請求項3に記載の機械的シール。
【請求項5】
前記固定センサ(13)はホールセンサとして設計され、制御装置(21)は、具体的には前記ホールセンサに組み込まれて設けられ、前記制御装置は、前記ホールセンサによって生成される出力値に依存する温度を、具体的には出力電圧の形態で、前記温度センサ(19)によって検出される温度値の関数として補償することを特徴とする、請求項3または4に記載の機械的シール。
【請求項6】
前記滑り環体(4)は、軸方向において移動可能となるように筐体(9)に搭載され、且つ前記筐体に対して弾性的に支持され、前記筐体(9)は前記滑り環体(4)を周囲方向において包囲し、前記固定センサ(13)は前記筐体(9)の外側に取り付けられることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の機械的シール。
【請求項7】
前記滑り環体(4)は、前記前端シール面(5)を形成する端面を有する、中空円筒形のカーボンリングを備えるか、またはそのようなカーボンリングから形成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の機械的シール。
【請求項8】
前記滑り環体(4)は不動であり、前記相手の環体は前記滑り環体(4)に対して回転することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の機械的シール。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項により設計される機械的シールの摩耗を監視するための方法であって、軸方向における前記滑り環体(4)の位置は前記位置センサ(20)で検出され、温度が前記温度センサ(19)で検出され、前記温度は、前記流体案内通路(1)および/または前記空間から前記前端シール面(5)を介して通過する漏れの流れの程度に依存し、前記機械的シールの摩耗の状態は、前記位置および前記温度の検出の関数として決定されることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記温度センサ(19)で検出される温度値が、ホールセンサ形式の前記位置センサによって生成される出力値に依存する温度を補償し、具体的には出力電圧の形態で補償するために使用されることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項により設計される機械的シールの摩耗を監視するための請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記漏れの流れは、通常の動作において前記流体案内通路(1)および/または前記空間を通過した流体の一部だけによって形成されることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記機械的シールの摩耗は、前記機械的シールの通常の動作の間に検出され、具体的には連続的に検出されることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段による、固定構成要素および/または回転する構成要素において延びる少なくとも1つの流体案内通路および/または空間を環境から封止するための機械的シールと、このような機械的シールの摩耗を監視するための方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な機械的シールおよびこのような機械的シールの摩耗を監視するための方法が特許文献1より知られている。機械的シールは、回転の軸の周りで回転する滑り環体を有し、滑り環体は、その面側が相手の環体に対して、軸方向において、つまり、回転の軸の方向において支持される。そのため、面側はシール面を形成する。
【0003】
滑り環体は、滑り環体の相手の環体に対する相対回転と弾性支持とにより、摩耗を受ける。摩耗のため、滑り環体は軸方向において次第に移動する。滑り環体が過剰に摩耗されることで、その封止効果を失う前の都合の良いときに滑り環体が交換できることを確実にするために、摩耗は、軸方向に移動可能な滑り環体に径方向でプローブを提供することで検出され、そのプローブは、滑り環体がプローブに対して軸方向にどれだけの距離ですでに移動したかを検出する。この目的のために、磁気挿入体が、滑り環体に、または滑り環体と移動する構成要素に設けられ、プローブは、磁気挿入体からの信号を検出する電磁センサとして設計でき、信号は、摩耗面が最大摩耗に達したときに最大に達する。
【0004】
既知の機械的シールの欠点は、滑り環体を交換する必要性を知らせる、滑り環体の摩滅により永久的に進行する摩耗を検出することが、機械的シールの軸方向位置、つまり軸方向における機械的シールの位置を検出することで可能であるが、滑り環体のシール面、または相手の環体の向かい合う面における損傷が、この損傷が滑り環体の軸方向位置に影響を与えていない場合、検出されないままになることである。軸方向位置に影響を与えることなく漏れをもたらす滑り環体における亀裂も、検出されない。
【0005】
さらなる先行技術に関連している特許文献2および特許文献3が、本明細書によって参照される。どちらの文献も、流体を運ぶシール面の側における機械的シールの滑り環体の領域における温度の検出を開示している。この温度は、供給される流体の温度によって本質的に決定され、そのため、信頼できる結論を前述したような損傷について引き出すことができない。
【0006】
特許文献4は、機械的シールの漏れ位置における蒸気放出を測定するための試験装置を記載している。圧縮空気が、機械的シールによって封止された室へと送り込まれ、その室では、圧縮空気は機械的シールにわたって流れ、具体的には水-グリコールの混合物である、機械的シールの通常の動作の間にそこに提供される作動媒体を、機械的シールの上に同伴する。そのため、機械的シールの漏れ側における圧縮空気の水分から、例えば機械的シールの最終的な検査の場合に、機械的シールの現在の状態についての結論を引き出すことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第3426539明細書
【文献】独国特許出願公開第19724308明細書
【文献】独国実用新案出願公開第202007001223明細書
【文献】独国特許出願公開第102006008463明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、固定構成要素および/または回転する構成要素内において延び、液体もしくはガスなどの流体を運ぶための通路および/または空間を封止するための機械的シールと、連続的な摩耗が検出できるだけでなく、シール面における欠陥または機械的シールにおける漏れが確実に検出される、このような機械的シールの摩耗を監視するための方法と、を明示する目的に基づかれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による目的は、独立請求項による機械的シールおよび方法によって解決される。従属請求項は、本発明の特に有利な実施形態を示している。
【0010】
固定構成要素および/または回転する構成要素内において延びる少なくとも1つの流体案内通路および/または空間を環境から封止するための本発明による機械的シールは、相手の環体に対して軸方向において封止する様態で支持される滑り環体を備える。少なくとも1つの流体案内通路は、本発明の実施形態によれば、固定構成要素から回転する構成要素へと、または、回転する構成要素から固定構成要素へと延び、したがって回転経路を通過する。回転経路は、固定構成要素のそれぞれの通路区域から、回転する構成要素、つまり回転の軸の周りで回転する構成要素のそれぞれの通路区域へと、またはその逆に流体を移送するように供する。しかしながら、本発明は、機械的シールによる封止が使用される任意の構成要素において、回転経路から独立して適用されてもよい。この点において、流体案内通路は、機械的シールによって環境に対して封止される固定構成要素および/または回転する構成要素内における任意の空間である。環境は、構成要素および/もしくは別の構成要素内における任意の他の空間、または筐体部品によってもはや包囲されない環境であり得る。環境は加圧されなくても加圧されてもよい。流体は、通路および/もしくは空間において流れ得るか、または不動であり得る。液体ポンプまたは気体ポンプなどのポンプ、圧縮機、および他の作動機械における少なくとも1つの流体案内通路および/または空間の封止が、例として提供されるだけである。
【0011】
滑り環体が軸方向において、つまり回転する構成要素の回転の軸の方向において、相手の環体に対して支持されているため、滑り環体は摩耗を受ける。例えば、滑り環体はカーボンから作られるかまたはカーボンを含む。滑り環体を軸方向において縮める摩耗が、例えば回転経路において漏れを引き起こすのを防止するために、滑り環体は、軸方向において移動可能であり、摩耗を補償するために、端面におけるそのシール面で相手の環体に対して弾性的に支持される。したがって、進行する摩耗が、相手の環体の方向における滑り環体の増加する軸方向の変位によって補償される。追加または代替で、相手の環体は、滑り環体のシール面と接触している相手の面の領域における摩滅または摩耗を受ける可能性もあり、そのため、これを補償するために、滑り環体がその弾性的な予荷重によって軸方向に変位させられる。
【0012】
すでに起こった摩耗の度合いまたは滑り環体の軸方向移動を評価することができるようにするために、位置センサが、軸方向における滑り環体の位置を検出するために提供される。
【0013】
本発明によれば、温度センサも、流体案内通路および/または空間から離れる方を向くシール面の漏れ側に設けられる。温度センサは、通路および/または空間からシール面にわたって通過する漏れの流れの程度に依存する温度を、少なくとも間接的または直接的に検出する。漏れの流れがより大きくなると、検出される温度値は、少なくとも強制対流にもよっての漏れの流れと温度センサとの間の熱伝達のため、通路および/または空間において運ばれる流体の温度により近付く。漏れの流れの程度は、例えば、シール面にわたって通過する漏れの流れの体積流および/または質量流であると理解される。
【0014】
したがって、損傷がシール面または相手の環体において起こる場合、このことは、シール面にわたる流体案内通路または空間からの流体の望ましくない漏出をもたらすことになり、少なくとも目標の状態と比較して増加させられているこの漏れの流れは、いわゆる漏れ側である、流体案内通路/空間から離れる方を向くシール面の側において、温度変化をもたらす。この温度変化または対応する温度値は温度センサによって検出される。そのため、検出は、望ましくない大きな漏れの流れがいつあるかを決定するように使用され得る。
【0015】
流体案内通路/空間から離れる方を向いたシール面の漏れ側は、シール面にわたる流体案内通路/空間からの流体の流れ方向に対してシール面の下流の位置または領域である。
【0016】
温度センサは、機械的シールの通常の動作の間、シール面にわたる通路および/または空間から現れる漏れの流れの程度に依存する温度を検出できる。したがって、機械的シールの通常の動作の間、機械的シールの摩耗は、具体的には連続的に監視される。機械的シールが、通路および/または空間において運ばれる流体に追加の構成要素または媒体が加えられる試験モードで動作させられることは、必要ではない。むしろ、通常の動作の間に通路および/または空間にすでに存在する流体だけが使用されるように意図されており、そのため、機械的シールにわたる全体の流れを形成する漏れの流れも、この流体の一部だけによって形成される。この流体は作動媒体とも呼ばれ得る。
【0017】
好ましくは、位置センサは、例えば具体的には径方向の穴である少なくとも1つの穴に挿入されるといった、滑り環体に固定されるか、または滑り環体に対して軸方向で支持され、軸方向において滑り環体とともに移動する少なくとも1つの磁石と、滑り環体の径方向外側に位置決めされ、軸方向における磁石の位置を検出する固定センサと、を有する。固定センサは、例えばホールセンサとして設計される。このようなホールセンサは、具体的には電流によって横切られ、電流と、滑り環体と関連する磁石によって発生させられる磁束密度と、の積に比例する出力電圧を発生させる。
【0018】
具体的には、温度センサも、例えばホールセンサといった固定センサに組み込まれる。
【0019】
例えば、固定センサは、漏れの流れに位置決めされるセンサ筐体を有し、その漏れの流れの中、または漏れの流れに温度センサが位置決めされる。有利な実施形態によれば、温度センサはセンサ筐体によって完全に包囲される。
【0020】
本発明の実施形態によれば、固定センサはホールセンサとして設計され、制御装置も提供され、その制御装置は、具体的には例えば前記センサ筐体といったホールセンサに組み込まれ、制御装置は、ホールセンサによって生成される出力値に依存する温度を、具体的には出力電圧の形態で、温度センサによって検出される温度値の関数として補償する。ホールセンサは、それ自体を通じて流れる電流が温度依存性を補償するために規制されるアナログホールセンサとして、または温度依存性がデジタル補正計算によって補償されるデジタルホールセンサとして設計され得る。
【0021】
具体的には、滑り環体は、軸方向において移動可能となるように筐体に搭載され、筐体に対して弾性的に支持され、筐体は滑り環体を周囲方向において包囲し、固定センサは筐体の外側に取り付けられる。例えば筐体は、正面基部と、正面基部に連結され且つ滑り環体を周囲方向において包囲する周囲縁と、を有する。周囲縁は、具体的には玉縁の形態で、内向きに突出する突起を有してもよく、その突起は滑り環体のための軸方向の停止部を形成し、例えば具体的には波形バネである圧縮バネの形態でのバネ要素が、基部と、軸方向の停止部から遠くの滑り環体の端面と、の間に設けられ、停止部の方向において滑り環体に圧力を弾性的に加える。そのため、停止部は、滑り環体が筐体の外へ移動するのを防止する。
【0022】
滑り環体は、特に径方向において、例えばOリングといった封止要素を用いて、筐体に対して封止され得る。
【0023】
筐体は、例えば鋼鉄または鋼板から作られ得る。
【0024】
具体的には、位置センサは、まだ摩耗されていない滑り環体の端位置および完全に摩耗された滑り環体の端位置だけでなく、これらの位置の中間の位置も検出するような方法で設計される。具体的には、軸方向におけるシール面の連続移動が各々の位置において検出される。
【0025】
特に有利な実施形態によれば、滑り環体は、中空で円筒形のカーボンリングとして設計されるか、またはこのような中空で円筒形のカーボンリングを備え、カーボンリングは、シール面を形成する端面を有する。端面は、滑り環体の停止面に対して軸方向で突出してもよく、筐体におけるシール面の最大の軸方向の変位の場合に前記筐体の突起に当接する。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの磁石は、例えば停止面において同じく支持される搬送体といった中間構成要素を介して、滑り環体と共に軸方向で移動するような方法で滑り環体に連結される。例えば、構成要素または搬送体は停止面に弾性的に押し付けられる。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、滑り環体は不動であり、相手の環体は滑り環体に対して回転し、つまり、回転の軸の周りで回転する。
【0028】
本発明による方法によれば、位置センサは、軸方向におけるシール面の位置を検出するために使用され、温度センサは、はっきり言えば流体案内通路または空間から離れる方を向いたシール面の漏れ側において、温度を検出するために使用される。温度は、通路または空間からシール面にわたって通過する漏れの流れの程度に依存する。温度の検出に依存して、および軸方向における機械的滑り環体の位置の検出に依存して、機械的シールの摩耗条件が決定される。
【0029】
本発明の上記および下記の実施形態の例では、それ自体の摩耗を補償するための軸方向で移動する環体は滑り環体と呼ばれており、具体的には摩耗しないか、またはより摩耗しない比較的硬い環体は相手の環体と呼ばれているが、本発明は、軸方向に移動する環体が摩耗しないか、または端面において摩耗しないだけの実施形態も含み、軸方向において不動である環体が、軸方向において移動可能である環体と同等以上に柔らかくなるように設計され、そのため、軸方向に移動可能な環体に加えて、または軸方向に移動可能な環体の代わりに、その端面において摩耗するような実施形態も含む。
【0030】
本発明による解決策は、機械的シールの摩耗、つまり損傷の状態、または通常の摩滅を越える摩耗もより良好に検出することを可能にする。同時に、本発明は、特に温度センサがセンサ筐体の内部またはセンサ筐体の表面に設けられる場合、相当の追加の設置スペースを必要とせずに向上した検出を可能にする。異なる任務、すなわち温度補償および望ましくない漏れの流れの検出のための温度センサの使用は、ハードウェアのコストにおける相当の増加なしで向上を可能にする。
【0031】
例えば、比較的温かい流体が、通路または空間、具体的には回転経路の通路を通過させられる場合、検出される温度値は特定の限界値と比較させることができ、限界値が検出された温度値によって到達または超過される場合、許容できない増加した漏れの流れが断定され得る。代替で、検出された温度曲線の上昇の割合が所定の加熱曲線と比較されてもよく、所定の加熱曲線が検出された温度値によって到達または超過される場合、許容できない増加した漏れの流れが断定され得る。少なくとも1つの通路または室を通過する流体が、温度センサが位置決めされる環境より低い温度を有する場合、温度が所定の限界値または所定の冷却曲線より低下するときに評価が同様に実行され得る。
【0032】
本発明は、実施形態の例と、例による図とを用いて、以下において記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明により設計される機械的シールの三次元の上面図である。
図2図1からの機械的シールを通じての軸方向断面図である。
図3】位置センサを伴う領域の拡大図である。
図4】シール面に直接的に搭載される磁石を伴う図3と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、流体を固定構成要素から回転する構成要素へと導く通路1を有する、回転経路を封止するための本発明による機械的シールの実施形態の例を示している。固定構成要素は、図2において概略的に指示されており、符号2が付けられており、回転する構成要素も、図2において概略的に指示されており、符号3が付けられている。
【0035】
図1図4において分かるように、機械的シールは、1つの軸方向の端面においてシール面5を有する滑り環体4を有し、シール面5は、通路1を環境または漏れ側7に対して封止するために、回転する構成要素3の相手の面6において支持される。
【0036】
滑り環体4は、シール面5の領域において耐摩耗性の材料から作られており、および/または、回転する構成要素3は、相手の面6の領域において耐摩耗性の材料から作られており、摩耗は、滑り環体4またはシール面5と相手の面6との間の相対回転の間に材料の摩滅によって引き起こされる。それにも拘らずシール面5または相手の面6の領域において所望の封止を達成するためには、滑り環体4は、この場合には圧縮バネまたは波形バネ8であるバネ要素を用いることで、筐体9において、シール面5から離れたその軸方向の端で弾性的に支持される。
【0037】
通路1は、筐体9と機械的シール4とを通じて、好ましくは波形バネ8も通じて、軸方向に延びる。封止のために、Oリング10が機械的シール4と筐体9との間に設けられる。
【0038】
滑り環体4は、滑り環体4が軸方向において筐体9の外へ延びるときに筐体9の径方向内側を向いた突起12に当たることで、滑り環体4が筐体9の外へとさらに延びるのを防止する肩部または停止面11を有する。
【0039】
磁石14に対して径方向外側に位置決めされ、磁石14の軸方向位置を検出し、延いては滑り環体4の軸方向位置を検出するホールセンサとして設計されている固定センサ13が、筐体9に連結されている。磁石14は、具体的には滑り環体4に、直接的に連結される(図4参照)、または、滑り環体4と共に軸方向に移動し、磁石14を担持する中間構成要素15を介して連結される(図1図3参照)。
【0040】
好ましくは、磁石14または中間構成要素15は軸方向において停止面11に支持される。
【0041】
図1図3に示された実施形態の例では、中間構成要素15は、バネ要素16を用いて停止面11に対して弾性的に支持されている。代替で、滑り環体4への中間構成要素15のしっかりとした連結が検討されてもよい。
【0042】
図4に示された実施形態の例では、位置検出の機能を損なうことなく固定センサ13に対する滑り環体4の回転を許容するために、滑り環体4の周囲全体にわたって周囲方向に延びる磁石14が設けられるか、またはいくつかの磁石14が滑り環体4の周囲にわたって分配される。しかしながら、これは必須ではない。
【0043】
シール面5をできるだけ平坦に機械加工することができるようにするために、固定センサ13は、例えば外れ止め連結を用いて、取り外し可能な様態で筐体9に好ましくは連結される。これは例えば、固定センサ13を筐体9から、特には中間構成要素15、および中間構成要素15を変位可能な様態で保持するスライドレール17と共に取り外すことを可能にする。その後、例えばシール面5は包まれ得る。
【0044】
中間構成要素15を伴う実施形態の場合、筐体9は、具体的には中間構成要素15自体を停止面11において支持するために、または滑り環体4への中間構成要素15のしっかりとした取り付けを容易にするために、中間構成要素15が径方向外側から係合するために通る切欠きを有する。
【0045】
固定センサ13は、温度センサ19が組み込まれているセンサ筐体18を有する。温度センサ19は、通路1からシール面5を介して通過する通路1において運ばれる流体の漏れの流れの温度を検出し、ここで、漏れの流れにおける温度センサ19または固定センサ13の配置は、漏れの流れが増加するにつれて、漏れの流れと固定センサ13または温度センサ19との間の熱伝達を増加させるため、検出された温度は漏れの流れの程度に依存する。
【0046】
固定センサ13は、軸方向における滑り環体4の位置を検出するために、磁石14と共に位置センサ20を形成もしている。
【0047】
位置センサ20はホールセンサとして設計されており、温度センサ19は、ホールセンサによって検出される測定変数の温度依存を補償するためにも使用される。この目的のために、位置検出を制御し、具体的には漏れの流れの検出を制御する制御装置21が、センサ筐体18に、またはセンサ筐体18の外側に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 通路
2 固定構成要素
3 回転する構成要素
4 滑り環体
5 シール面
6 相手の面
7 漏れ側
8 波形バネ
9 筐体
10 Oリング
11 停止面
12 突起
13 固定センサ
14 磁石
15 中間構成要素
16 バネ要素
17 スライドレール
18 センサ筐体
19 温度センサ
20 位置センサ
21 制御装置
図1
図2
図3
図4