(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】セラミック構造体及びセラミック構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20221216BHJP
B28B 11/00 20060101ALI20221216BHJP
H05B 3/02 20060101ALI20221216BHJP
H05B 3/74 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
H01L21/68 N
B28B11/00
H05B3/02 B
H05B3/74
(21)【出願番号】P 2020557582
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2019045380
(87)【国際公開番号】W WO2020110850
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2018224680
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】川邊 保典
(72)【発明者】
【氏名】石峯 裕作
(72)【発明者】
【氏名】宗石 猛
(72)【発明者】
【氏名】大川 善裕
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-016536(JP,A)
【文献】特開2013-084938(JP,A)
【文献】特開2003-179127(JP,A)
【文献】特開2008-305968(JP,A)
【文献】特開2017-153254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B28B 11/00
H05B 3/02
H05B 3/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックからなり、第1面を有している基体と、
前記基体内に位置しており、接続部を有している内部導体と、
を有しており、
前記基体は、前記接続部から前記第1面に亘っている空間を有しており、
前記内部導体は、前記第1面に沿って前記空間及びその外側に跨っている導体層を有しており、
前記導体層は、前記空間に重なる部分が前記第1面側に撓んでいる
セラミック構造体。
【請求項2】
前記空間は、
前記接続部に接している第1空間と、
前記第1空間と前記第1面の外側とを連通しており、前記第1面の平面透視において前記第1空間よりも小さい第2空間と、を有しており、
前記空間は、複数の前記第2空間を有している
請求項
1に記載のセラミック構造体。
【請求項3】
前記基体と前記接続部との間に空隙が位置している
請求項
1又は2に記載のセラミック構造体。
【請求項4】
上端面が前記接続部に接合されている端子を更に有しており、
前記上端面は、
前記接続部に接合されている接合領域と、
前記接合領域から前記上端面の外縁に至り、前記接続部と隙間を介して対向している非接合領域と、を有している
請求項
1~3のいずれか1項に記載のセラミック構造体。
【請求項5】
前記空間の容積の少なくとも8割以上は真空とされ、又は前記空間の容積の少なくとも8割以上には気体が存在している
請求項1~
4のいずれか1項に記載のセラミック構造体。
【請求項6】
前記空間は、
前記接続部から前記第1面に亘っている空間本体と、
前記空間本体の、前記第1面に直交する方向の厚みのうち、前記接続部に接している一部の厚みから前記第1面に沿って広がっている、100μm以下の層状空間と、を有している
請求項
5に記載のセラミック構造体。
【請求項7】
前記空間は、前記第1面の平面透視において前記内部導体の配置領域の8割以上に亘っている
請求項
5又は6に記載のセラミック構造体。
【請求項8】
セラミックからなり、第1面を有している基体と、
前記基体内に位置しており、接続部を有している内部導体と、
を有しており、
前記基体は、前記接続部から前記第1面に亘っている空間を有しており、
前記空間の壁面は、
第1領域と、
前記第1領域に対して前記第1面側に位置しており、前記第1領域とは表面の様相が異なる第2領域とを有しており、
前記第1領域及び前記第2領域のうち前記第2領域のみが切削痕を有している
セラミック構造体。
【請求項9】
請求項1~
8のセラミック構造体の製造方法であって、
前記基体のうち前記内部導体に対して前記第1面とは反対側に接する第1部分を構成する1以上の第1セラミックグリーンシートと、前記基体のうち前記内部導体に対して前記第1面側に接する第2部分を構成する1以上の第2セラミックグリーンシートと、前記基体のうち前記第2部分の前記第1面側に接するとともに前記第1面を有している第3部分を構成する1以上の第3セラミックグリーンシートと、を準備する準備工程と、
前記内部導体となる材料を前記第1セラミックグリーンシートの前記第1面側に配置する導体配置工程と、
前記空間のうち前記内部導体側の一部となる第1開口を前記第2セラミックグリーンシートに形成する第1開口形成工程と、
前記導体配置工程及び前記第1開口形成工程の後に、前記第1~第3セラミックグリーンシートを積層して積層体を得る積層工程と、
前記積層体を焼成する焼成工程と、
焼成後の前記積層体における前記第3部分のうち前記第1開口に重なっている領域に前記空間の前記第1面側の一部となる第2開口を形成する第2開口形成工程と、
を有しているセラミック構造体の製造方法。
【請求項10】
セラミックからなり、第1面を有している基体と、
前記基体内に位置しており、接続部を有している内部導体と、
を有しており、
前記基体は、前記接続部から前記第1面に亘っている空間を有しており、
前記空間は、
前記接続部に接している第1空間と、
前記第1空間と前記第1面の外側とを連通しており、前記第1面の平面透視において前記第1空間よりも小さい第2空間と、を有している
セラミック構造体の製造方法であって、
前記基体のうち前記内部導体に対して前記第1面とは反対側に接する第1部分を構成する1以上の第1セラミックグリーンシートと、前記基体のうち前記内部導体に対して前記第1面側に接する第2部分を構成する1以上の第2セラミックグリーンシートと、前記基体のうち前記第2部分の前記第1面側に接するとともに前記第1面を有している第3部分を構成する1以上の第3セラミックグリーンシートと、を準備する準備工程と、
前記内部導体となる材料を前記第1セラミックグリーンシートの前記第1面側に配置する導体配置工程と、
前記空間のうち前記内部導体側の一部となる第1開口を前記第2セラミックグリーンシートに形成する第1開口形成工程と、
前記導体配置工程及び前記第1開口形成工程の後に、前記第1~第3セラミックグリーンシートを積層して積層体を得る積層工程と、
前記積層体を焼成する焼成工程と、
焼成後の前記積層体における前記第3部分のうち前記第1開口に重なっている領域に前記空間の前記第1面側の一部となる第2開口を形成する第2開口形成工程と、
を有している
セラミック構造体の製造方法。
【請求項11】
セラミックからなり、第1面を有している基体と、
前記基体内に位置しており、接続部を有している内部導体と、
を有しており、
前記基体は、前記接続部から前記第1面に亘っている空間を有しており、
前記空間の壁面は、
第1領域と、
前記第1領域に対して前記第1面側に位置しており、前記第1領域とは表面の様相が異なる第2領域とを有している
セラミック構造体の製造方法であって、
前記基体のうち前記内部導体に対して前記第1面とは反対側に接する第1部分を構成する1以上の第1セラミックグリーンシートと、前記基体のうち前記内部導体に対して前記第1面側に接する第2部分を構成する1以上の第2セラミックグリーンシートと、前記基体のうち前記第2部分の前記第1面側に接するとともに前記第1面を有している第3部分を構成する1以上の第3セラミックグリーンシートと、を準備する準備工程と、
前記内部導体となる材料を前記第1セラミックグリーンシートの前記第1面側に配置する導体配置工程と、
前記空間のうち前記内部導体側の一部となる第1開口を前記第2セラミックグリーンシートに形成する第1開口形成工程と、
前記導体配置工程及び前記第1開口形成工程の後に、前記第1~第3セラミックグリーンシートを積層して積層体を得る積層工程と、
前記積層体を焼成する焼成工程と、
焼成後の前記積層体における前記第3部分のうち前記第1開口に重なっている領域に前記空間の前記第1面側の一部となる第2開口を形成する第2開口形成工程と、
を有しているセラミック構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セラミック構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックを基体とするセラミック構造体が知られている。セラミック構造体としては、例えば、ウェハの加工に利用されるセラミックヒータ、静電チャック及びプラズマ発生用電極部材を挙げることができる。これらのセラミック構造体は、基体内に内部導体を有している。内部導体の一部は、端子との接続のために基体の外部へ露出している。特許文献1~3では、切削加工などによって基体に穴を形成することによって、内部導体の一部を基体の外部に露出させている。穴は、その深さ方向に直交する横断面の形状及び大きさが深さ方向において一定とされているか、基体の外部側ほど径が大きくなるテーパ状とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-49185号公報
【文献】特開2003-40686号公報
【文献】特開2002-141404号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係るセラミック構造体は、基体と、内部導体とを有している。前記基体は、セラミックからなり、第1面を有している。前記内部導体は、前記基体内に位置しており、接続部を有している。前記基体は、前記接続部から前記第1面に亘っている空間を有している。前記空間は、第1空間と、第2空間とを有している。前記第1空間は、前記接続部に接している。前記第1空間は、前記第1空間と前記第1面の外側とを連通しており、前記第1面の平面透視において前記第1空間よりも小さい。
【0005】
本開示の一態様に係るセラミック構造体は、基体と、内部導体とを有している。前記基体は、セラミックからなり、第1面を有している。前記内部導体は、前記基体内に位置しており、接続部を有している。前記基体は、前記接続部から前記第1面に亘っている空間を有している。前記内部導体は、前記第1面に沿って前記空間及びその外側に跨っている導体層を有している。前記導体層は、前記空間に重なる部分が前記第1面側に撓んでいる。
【0006】
本開示の一態様に係るセラミック構造体は、基体と、内部導体とを有している。前記基体は、セラミックからなり、第1面を有している。前記内部導体は、前記基体内に位置しており、接続部を有している。前記基体は、前記接続部から前記第1面に亘っている空間を有している。前記空間の壁面は、第1領域と、第2領域とを有している。前記第2領域は、前記第1領域に対して前記第1面側に位置しており、前記第1領域とは表面の様相が異なる。
【0007】
本開示の一態様に係る上記のいずれかのセラミック構造体の製造方法は、準備工程と、導体配置工程と、第1開口形成工程と、積層工程と、焼成工程と、第2開口形成工程とを有している。前記準備工程では、それぞれ1以上の第1~第3セラミックグリーンシートを準備する。前記第1セラミックグリーンシートは、前記基体のうち前記内部導体に対して前記第1面とは反対側に接する第1部分を構成する。前記第2セラミックグリーンシートは、前記基体のうち前記内部導体に対して前記第1面側に接する第2部分を構成する。前記第3セラミックグリーンシートは、前記基体のうち前記第2部分の前記第1面側に接するとともに前記第1面を有している第3部分を構成する。前記導体配置工程では、前記内部導体となる材料を前記第1セラミックグリーンシートの前記第1面側に配置する。前記第1開口形成工程では、前記空間のうち前記内部導体側の一部となる第1開口を前記第2セラミックグリーンシートに形成する。前記積層工程では、前記導体配置工程及び前記第1開口形成工程の後に、前記第1~第3セラミックグリーンシートを積層して積層体を得る。前記焼成工程では、前記積層体を焼成する。前記第2開口形成工程では、焼成後の前記積層体における前記第3部分のうち前記第1開口に重なっている領域に前記空間の前記第1面側の一部となる第2開口を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るヒータの構成を示す模式的な分解斜視図。
【
図4】
図1のヒータの製造方法の手順の一例を示すフローチャート。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は製造途中のヒータの一部を示す断面図。
【
図6】
図6(a)は製造途中のヒータの一部を示す断面図、
図6(b)は
図6(a)の一部拡大斜視図。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は第1及び第2変形例に係るヒータの一部を示す断面図。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は第3及び第4変形例に係るヒータの一部を示す断面図。
【
図9】
図9(a)は第5変形例に係るヒータの一部を示す断面図、
図9(b)は
図9(a)の一部拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のセラミック構造体について、セラミックヒータを例に取って説明する。以下で参照する各図は、説明の便宜上の模式的なものである。従って、細部は省略されていることがあり、また、寸法比率は必ずしも現実のものとは一致していない。また、ヒータは、各図に示されていない周知の構成要素をさらに備えていても構わない。
【0010】
(ヒータシステム)
図1は、実施形態に係るヒータ1の構成を示す模式的な分解斜視図である。
図2は、
図1のヒータ1を含むヒータシステム101の構成を示す模式図である。
図2において、ヒータ1については、
図1のII-II線断面図が示されている。
図1は、ヒータ1の構造を示すために便宜的にヒータ1を分解して示しており、実際の完成後のヒータ1は、
図1の分解斜視図のように分解可能である必要はない。
【0011】
図1及び
図2の紙面上方は、例えば、鉛直上方である。ただし、ヒータ1は、必ずしも
図1及び
図2の紙面上方を鉛直上方として利用される必要はない。以下では、便宜上、
図1及び
図2の紙面上方を鉛直上方として、上面及び下面等の用語を用いることがある。特に断りがない限り、単に平面視という場合、
図1及び
図2の紙面上方から見ることを指すものとする。
【0012】
ヒータシステム101は、ヒータ1と、ヒータ1に電力を供給する電力供給部3(
図2)と、電力供給部3を制御する制御部5(
図2)と、を有している。ヒータ1と電力供給部3とは配線部材7(
図2)によって接続されている。なお、配線部材7は、ヒータ1の一部と捉えられても構わない。また、ヒータシステム101は、上記に挙げた構成の他、例えば、ヒータ1に気体及び/又は液体を供給する流体供給部を有していてもよい。
【0013】
(ヒータ)
ヒータ1は、例えば、概略板状(図示の例では円盤状)のヒータプレート9と、ヒータプレート9から下方へ延びているパイプ11とを有している。
【0014】
ヒータプレート9は、その上面13aに加熱対象物の一例としてのウェハWf(
図2)が載置され(重ねられ)、ウェハの加熱に直接に寄与する。パイプ11は、例えば、ヒータプレート9の支持及び配線部材7の保護に寄与する。なお、ヒータプレート9のみがヒータと捉えられても構わない。
【0015】
(ヒータプレート)
ヒータプレート9の上面13a及び下面13bは、例えば、概ね平面である。ヒータプレート9の平面形状及び各種の寸法は、加熱対象物の形状及び寸法等を考慮して適宜に設定されてよい。例えば、平面形状は、円形(図示の例)又は多角形(例えば矩形)である。寸法の一例を示すと、直径は20cm以上35cm以下、厚さは4mm以上30mm以下である。なお、本実施形態の説明において、矩形等の多角形に係る用語は、特に断りが無い限り、角部が直線(平面)又は曲線(曲面)によって面取りされた形状を含んでよいものとする。
【0016】
ヒータプレート9は、例えば、絶縁性の基体13(符号は
図2)と、基体13に埋設されている内部導体14と、内部導体14と電気的に接続されている端子17(
図2)とを備えている。内部導体14は、抵抗発熱体15と、端子17に接続される接続部16とを含んでいる。抵抗発熱体15に電流が流れることによって、ジュールの法則に従って熱が発生し、ひいては、基体13の上面13aに載置されているウェハWfが加熱される。
【0017】
(基体)
基体13の外形は、ヒータプレート9の外形を構成している。従って、上述のヒータプレート9の形状及び寸法に係る説明は、そのまま基体13の外形及び寸法の説明と捉えられてよい。基体13の材料は、例えば、セラミックである。セラミックは、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3、アルミナ)、炭化珪素(SiC)、及び窒化珪素(Si3N4)等を主成分とする焼結体である。なお、主成分は、例えば、その材料の50質量%以上又は80質量%以上を占める材料である(以下、特に断りが無い限り、他の部材及び他の材料についても、同様である。)。
【0018】
図1に示すように、基体13は、例えば、第1絶縁層19A、第2絶縁層19B及び第3絶縁層19C(以下、単に「絶縁層19」といい、これらを区別しないことがある。)が積層されて構成されている。第1絶縁層19Aは、抵抗発熱体15から上面13aまでの部分を構成している。第2絶縁層19Bは、抵抗発熱体15から下面13bまでの部分のうち内部導体14側の一部を構成している。第3絶縁層19Cは、第2絶縁層19Bから下面13bまでの部分を構成している。
【0019】
複数の絶縁層19の材料は、上述した基体13の材料である。また、複数の絶縁層19の材料は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。複数の絶縁層19の境界は、材料の観点から特定できなくてもよい。各絶縁層19は、さらに薄い複数の絶縁層が積層されて構成されていてもよい。
【0020】
(抵抗発熱体)
抵抗発熱体15は、基体13の上面13a及び下面13bに沿って(例えば平行に)延びている。また、抵抗発熱体15は、平面視において、例えば、基体13の概ね全面に亘って延びている。
【0021】
平面視における抵抗発熱体15の具体的なパターン(経路)は適宜なものとされてよい。例えば、抵抗発熱体15は、ヒータプレート9において1本のみ設けられており、その一端から他端まで自己に対して交差することなく延びている。また、図示の例では、抵抗発熱体15は、ヒータプレート9を2分割した各領域において、円周方向に往復するように(ミアンダ状に)延びている。この他、例えば、抵抗発熱体15は、渦巻状に延びていたり、一の半径方向において直線状に往復するように延びていたりしてよい。
【0022】
抵抗発熱体15を局部的に見たときの形状も適宜なものとされてよい。例えば、抵抗発熱体15は、上面13a及び下面13bに平行な層状導体であってもよいし、上記の経路を軸として巻かれたコイル状(スプリング状)であってもよいし、メッシュ状に形成されているものであってもよい。各種の形状における寸法も適宜に設定されてよい。
【0023】
抵抗発熱体15の材料は、電流が流れることによって熱を生じる導体(例えば金属)である。すなわち、抵抗値が比較的大きい導体である。導体は、適宜に選択されてよく、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、プラチナ(Pt)若しくはインジウム(In)又はこれらを主成分とする合金である。また、抵抗発熱体15の材料は、前記のような金属を含む導電ペーストを焼成して得られるものであってもよい。すなわち、抵抗発熱体15の材料は、ガラス粉末及び/又はセラミック粉末等の添加剤(別の観点では無機絶縁物)を含むものであってもよい。
【0024】
(接続部)
接続部16は、抵抗発熱体15の一部によって構成されていてもよいし、抵抗発熱体15とは別個の部位として構成され、抵抗発熱体15と端子17との間に介在していてもよい。また、別の観点では、接続部16の材料、幅及び/又は厚さは、抵抗発熱体15の材料、幅及び/又は厚さと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
図1では、便宜上、抵抗発熱体15の全部又は大部分が抽象的に線で描かれているとともに、接続部16が当該線の幅よりも直径が大きい黒丸で描かれている。
図2では、抵抗発熱体15として層状導体からなるものを示し、その一部によって接続部16が構成されている例を模式的に示している。接続部16の材料が抵抗発熱体15の材料と異なる材料である場合において、接続部16の材料は、抵抗発熱体15の材料として利用可能なものであってもよいし、利用不可能なものであってもよく、また、導電ペーストを焼成して得られるものであってもよい。
【0026】
本実施形態の説明では、便宜上、接続部16が抵抗発熱体15の一部である場合を例に取るものとする。
【0027】
接続部16は、例えば、抵抗発熱体15の長さ方向両端に位置しており、1対設けられている。1対の接続部16(抵抗発熱体15の両端)は、例えば、ヒータプレート9の中央側に位置している。なお、1つの抵抗発熱体15に3以上の接続部16(端子17)が設けられてもよいし、2以上(例えば2層以上)の抵抗発熱体15に電力を供給する2組以上の接続部16(端子17)が設けられてもよい。
【0028】
(端子)
端子17は、例えば、接続部16の数と同数で設けられ、接続部16に接合されているとともに、一部が基体13の下面13bから基体13の外部へ露出している。これにより、ヒータプレート9の外部から端子17及び接続部16を介して抵抗発熱体15へ電力を供給可能になっている。端子17は、例えば、少なくとも表面に導電性を有する部材によって構成されている。例えば、端子17は、その全体が金属からなるバルク材(金属部材)によって構成されている。端子17の形状は適宜なものとされてよく、例えば、概略、柱状(軸状)である。その軸に直交する横断面の形状は、円形等の適宜な形状とされてよい。端子17の軸方向(上下方向)の長さと径とはいずれが大きくてもよい。
【0029】
(パイプ)
パイプ11は、上下(軸方向両側)が開口している中空状である。別の観点では、パイプ11は、上下に貫通する空間11sを有している。パイプ11の横断面(軸方向に直交する断面)及び縦断面(軸方向に平行な断面。
図2に示す断面)の形状は適宜に設定されてよい。図示の例では、パイプ11は、軸方向の位置に対して径が一定の円筒形状である。もちろん、パイプ11は、高さ方向の位置によって径が異なっていてもよい。また、パイプ11の寸法の具体的な値は適宜に設定されてよい。特に図示しないが、パイプ11には、気体又は液体が流れる流路が形成されていてもよい。
【0030】
パイプ11は、セラミック等の絶縁材料から構成されていてもよいし、金属(導電材料)から構成されていてもよい。セラミックの具体的な材料としては、例えば、基体13の説明で挙げたもの(AlN等)が利用されてよい。また、パイプ11の材料は、基体13の材料と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
基体13とパイプ11との固定は、適宜な方法によってなされてよい。例えば、両者は、両者の間に介在する接着剤(不図示)によって固定されてもよいし、両者の間に接着剤を介在させずに、固相接合によって固定されてもよいし、ボルト及びナット(いずれも不図示)を利用して機械的に固定されてもよい。
【0032】
(配線部材)
配線部材7は、パイプ11の空間11s内に挿通されている。平面透視において、ヒータプレート9のうち空間11s内に露出する領域では、複数の端子17が基体13から露出している。そして、配線部材7は、その一端が複数の端子17に接続されている。
【0033】
複数の配線部材7は、可撓性の電線であってもよいし、可撓性を有さないロッド状のものであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。また、複数の可撓性の電線は、纏められて1本のケーブルのようになっていてもよいし、纏められていなくてもよい。
【0034】
配線部材7と端子17との接続も適宜なものとされてよい。例えば、両者は、導電性の接合材によって接合されてよい。また、例えば、両者は、一方に雄ねじが形成され、他方に雌ねじが形成されることにより、螺合されていてもよい。端子17は、前記のねじのように、配線部材7との接続のための特定の形状を有していてもよい。ただし、以下の説明では、そのような特定の形状の図示は基本的に省略する。
【0035】
(接続部の周囲の構造)
図3は、
図2の領域IIIの拡大図である。
【0036】
基体13は、接続部16と端子17とを接続可能にするために、接続部16を基体13の外部へ露出させる空間21を有している。空間21には端子17が配置されている。端子17は、接続部16と接続されているとともに基体13の下面13bから基体13の外部へ露出している。
【0037】
図示の例では、空間21の大部分は空の状態(真空状態又は気体が存在している状態)とされている。ただし、ヒータ1の製造過程で空間21に所定の材料(例えば封止材又は接合材)が充填されてもよい。すなわち、ヒータ1の完成後においては、空間21は、その内部に基体13を構成する材料が位置していなければよく、空の状態であることを要しない。基体13において所定の材料が充填されている部位が空間21であるか否かは、その材料の種類、材料の体積、材料が充填されている部位の形状、及び製造過程等から合理的に判断されてよい。
【0038】
空間21は、第2絶縁層19Bを貫通する貫通孔からなる第1空間23(
図1も参照)と、第3絶縁層19Cを貫通する貫通孔からなる第2空間25(
図1も参照)とを有している。換言すれば、空間21は、接続部に接している第1空間23と、第1空間23と基体13の下面13bの外側とを連通している第2空間25とを有している。
【0039】
第1空間23及び第2空間25の形状及び寸法は適宜に設定されてよい。例えば、第1空間23及び/又は第2空間25の基体13の下面13bに平行な横断面の形状は、円形(図示の例)、楕円、矩形又は矩形以外の多角形等の適宜な形状とされてよい。また、例えば、第1空間23及び/又は第2空間25の基体13の下面13bに直交する縦断面の形状は、矩形(図示の例)、下面13b側ほど拡径する台形状、下面13b側ほど縮径する台形状、又は一部に曲線(曲面)を含む形状とされてよい。
【0040】
下面13bの平面透視において、第1空間23及び第2空間25は、一方が他方に収まっていてもよいし、双方が互いに一致していてもよい。図示の例では、下面13bの平面透視において、第2空間25は、第1空間23よりも小さく、第1空間23に収まっている。ひいては、空間21の内壁面には、第1空間23と第2空間25との境界に段差21aが構成されている。別の観点では、第2空間25は、第1空間23の下面13b側の面の一部に開口している。両者の大きさの相違の程度は適宜に設定されてよい。例えば、両者の大きさの差は、加工誤差よりも若干大きい程度であってもよい。
【0041】
第1空間23及び第2空間25の基体13の下面13bに直交する方向(上下方向)の大きさ(第2絶縁層19B及び第3絶縁層19Cの厚さ)は、いずれが他方よりも大きくてもよい。図示の例では、第2空間25の上下方向の大きさは、第1空間23の上下方向の大きさよりも小さい。その大きさの相違の程度は適宜に設定されてよい。例えば、第2空間25の上下方向の大きさは、第1空間23の上下方向の大きさに対して、1/2以下又は1/3以下とされてよい。
【0042】
空間21の接続部16等に対する相対的な大きさも適宜に設定されてよい。図示の例では、空間21(第1空間23及び第2空間25それぞれ)は、例えば、接続部16毎に設けられている。すなわち、第1空間23は、1つの接続部16のみに接し、2以上の接続部16に重なっていない。また、第1空間23は、基体13の下面13bの平面透視において、接続部16に収まっていてもよいし(図示の例)、接続部16と一致していてもよいし、接続部16よりも外側まで広がっていてもよい。
【0043】
空間21は、例えば、既述のように、その大部分(例えば8割以上)が空の状態とされている。この空の状態の空間21は、密閉されていてもよいし、密閉されていなくてもよい。図示の例では、空間21は、端子17と基体13との間に介在する封止材29が設けられることによって密閉されている。密閉されている空間21は、気体が封入されていてもよいし、真空とされていてもよい。封入されている気体は、例えば、窒素等の不活性ガスとされてよい。真空は、実際には、大気圧よりも減圧された状態である。これにより、接続部16等を酸化から保護できる。なお、空間21が密閉されていない場合、空間21には、例えば、基体13の周囲の気体が存在している。
【0044】
封止材29の材料は、適宜なものとされてよく、例えば、一般的なガラス封止に用いられる材料であってもよいし、CaO-Al2O3-Y2O3系等の接合剤が用いられてもよい。封止材29は、例えば、第2空間25の概ね全体に充填されている。ただし、封止材29は、第2空間25の少なくとも一部を空の状態とするように配置されていてもよい。逆に、封止材29は、第1空間23にも比較的大きな体積で位置していてもよく、さらには、第1空間23に充填されていてもよい。
【0045】
端子17は、空間21に配置され、一端が接続部16に接合されている。端子17の接続部16に接続される端部とは反対側の端部は、基体13の下面13bよりも外側に位置していてもよいし(図示の例)、第2空間25に位置していてもよいし、第1空間23に位置していてもよい。端子17のうち、少なくとも下面13bよりも接続部16側の部分は、第2空間25を通過可能な大きさとされている。特に図示しないが、端子17は、第2空間25の周囲にて下面13bに対向(係合)するフランジを有していてもよい。
【0046】
端子17と接続部16との接続は、適宜な方法によってなされてよい。図示の例では、両者は、導電性の接合材27によって接合されている。接合材27は、例えば、Ag-Cu-Ti系合金(Ag、Cu及びTiを含む合金)等のろう材とされてよい。なお、完成後のヒータ1において、接合材27と接続部16との区別は不可能であってもよい。この場合、接合材27は、例えば、接続部16の一部と捉えられても構わない。特に図示しないが、端子17は、接続部16に当接しているだけであってもよい。
【0047】
(ヒータプレートの製造方法)
図4は、ヒータプレート9の製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。また、
図5(a)、
図5(b)及び
図6(a)は、製造途中のヒータプレート9の一部を示す、
図3に相当する断面図である。各部材の材質及び形状等は、製造過程の進行に伴って変化する。ただし、説明の便宜上、材質及び形状等の変化の前後で同一の符号を用いる。
【0048】
ステップST1では、焼成前の第1絶縁層19A~第3絶縁層19C(セラミックグリーンシート)を準備する(
図5(a)参照)。
【0049】
ステップST2では、焼成前の第2絶縁層19B(セラミックグリーンシート)に第1空間23となる貫通孔(第1開口)を形成する(
図5(a)参照)。貫通孔の形成方法は、公知の種々の方法と同様とされてよい。例えば、打ち抜き加工、切削加工及び/又はレーザ加工が用いられてよい。切削加工に用いられる切削工具は適宜なものとされてよく、例えば、ドリルが用いられてよい。
【0050】
ステップST3では、焼成前の第1絶縁層19A~第3絶縁層19C(セラミックグリーンシート)に対して、内部導体14となる導電ペーストを配置する(
図5(a)参照)。具体的には、例えば、接続部16を含む抵抗発熱体15となる導電ペーストを第1絶縁層19Aの第2絶縁層19B側に配置する。なお、ステップST2及びステップST3は、順序が逆であっても構わない。
【0051】
ステップST4では、焼成前の第1絶縁層19A~第3絶縁層19Cを積層して焼成前の基体13(セラミックグリーンシートの積層体)を得る(
図5(b)参照)。まだ第3絶縁層19Cには第2空間25が形成されていないから、第1空間23は第3絶縁層19Cによって塞がれて密閉される。密閉された第1空間23は、真空とされていてもよいし、気体が封入されていてもよい。気体は、例えば、窒素等の不活性ガスとされてよい。また、第1絶縁層19A~第3絶縁層19Cを積層した後、脱脂を行なってもよい。ここで、例えば、脱脂を窒素雰囲気で行なえば、密閉された第1空間23には窒素が封入される。そして、脱脂開始から焼成までは、数日を要する場合があり、密閉された第1空間23に窒素等の不活性ガスが封入されていれば、この期間も接続部16等の酸化の蓋然性が低減される。
【0052】
ステップST5では、生の基体13(セラミックグリーンシートの積層体)を焼成する。
【0053】
ステップST6では、焼成後の基体13の第3絶縁層19Cに第2空間25となる貫通孔(第2開口)を形成する(
図6(a))。貫通孔の形成方法は、公知の種々の方法と同様とされてよい。例えば、切削加工及び/又はレーザ加工が用いられてよい。
図6(a)では、切削工具31(例えばドリル)によって切削加工がなされる態様が例示されている。
【0054】
その後、特に図示しないが、端子17が空間21に挿入されて接続部16と接合される。また、封止材29が配置される。
【0055】
第2空間25となる貫通孔の形成方法は、第1空間23となる貫通孔の形成方法と異なる種類のものであってもよいし、同一の種類のものであってもよい。例えば、前者の例としては、第1空間23を打ち抜き加工又はレーザ加工で形成し、第2空間25を切削加工によって形成する態様が挙げられる。後者の例としては、第1空間23及び第2空間25の双方を切削加工によって形成する態様が挙げられる。また、同一の種類の方法が用いられる場合においては、その具体的な加工条件は、第1空間23と第2空間25とで互いに異なっていてもよいし、同一であってもよい。具体的な加工条件としては、例えば、切削工具を用いる場合においては、切削工具の形状及び寸法、並びに切削工具の回転速度及び切削工具の送り速度を挙げることができる。
【0056】
第1空間23となる貫通孔の形成方法と、第2空間25となる貫通孔の形成方法とが、その種類又は具体的な加工条件において異なる場合、空間21の壁面は、第1空間23と第2空間25とで表面の様相の相違を観察できることがある。例えば、第1空間23が打ち抜き加工又はレーザ加工によって形成され、第2空間25が切削工具31によって形成される態様においては、第2空間25の壁面のみに切削痕(例えばドリル痕)を観察することができる。
【0057】
図6(b)は、切削工具31によって第2空間25を形成した場合における第2空間25の壁面を模式的に示す斜視図であり、切削痕33を模式的に示している。切削痕33は、例えば、切削工具の軸回り(第2空間25を上下に通過する中心線回り)に延びる複数の溝33aからなる縞模様として観察される。
【0058】
以上のとおり、本実施形態では、セラミック構造体(ヒータ1)は、基体13と、内部導体14とを有している。基体13は、セラミックからなり、第1面(下面13b)を有している。内部導体14は、基体13内に位置しており、接続部16を有している。基体13は、接続部16から下面13bに亘っている空間21を有している。空間21は、第1空間23及び第2空間25を有している。第1空間23は、接続部16に接している。第2空間25は、第1空間23と下面13bの外側とを連通しており、下面13bの平面透視において第1空間23よりも小さい。
【0059】
従って、例えば、接続部16が空間21に露出する面積を大きくすることができる。その結果、例えば、端子17と接続部16とを接合する接合材27の接続部16に対する接合面積を大きくすることができる。一方で、第2空間25の径が小さくされていることから、空間21の封止の信頼性を向上させることができる。その結果、例えば、接続部16を酸化から保護しやすい。また、例えば、空間21が真空とされ、又は空間21に気体が封入されている場合においては、空間21は、断熱部として機能する。その結果、例えば、抵抗発熱体15の熱は下面13bに伝わりにくくなり、基体13を介して上面13aへ伝わりやすくなる。そして、平面透視において第1空間23が相対的に大きくされていることにより、当該効果が向上する。
【0060】
また、別の観点では、本実施形態では、セラミック構造体(ヒータ1)は、基体13と、内部導体14とを有している。基体13は、セラミックからなり、第1面(下面13b)を有している。内部導体14は、基体13内に位置しており、接続部16を有している。基体13は、接続部16から下面13bに亘っている空間21を有している。空間21の壁面は、第1領域(第1空間23の壁面)と、第2領域(第2空間25の壁面)とを有している。第2領域は、第1領域に対して下面13b側に位置しており、第1領域とは表面の様相が異なる。
【0061】
従って、例えば、表面の様相の相違を利用することができる。例えば、第2空間25の内壁に切削痕33が形成されている場合においては、切削痕33が構成する凹凸によって封止材29の第2空間25の壁面に対する接合強度が向上する。また、切削痕33は、基体13の下面13bから接続部16への方向に対して交差する複数の溝33aによって構成されている。従って、第2空間25の壁面と封止材29との界面は、基体13の下面13bの外側から接続部16へ至る経路が、切削痕33が無い場合に比較して長くなる。その結果、空間21の密閉性が向上する。
【0062】
また、本実施形態では、空間21の壁面は、第1空間23と第2空間25との境界に段差21aを有している。
【0063】
この場合、例えば、第1空間23と第2空間25との径の差を大きくして、上述した効果を得ることが容易化される。また、例えば、封止材29が第3絶縁層19Cに対して第1空間23側から係合することによって、封止材29の基体13に対する固定の強度を向上させることもできる。
【0064】
また、本実施形態では、1つの空間21は、1つのみ第2空間25を有している。
【0065】
この場合、例えば、第1空間23の大きさ以下の範囲で第2空間25を極力大きくすることが容易である。その結果、例えば、第2空間25を介して第1空間23に端子17を配置することが容易化される。
【0066】
また、本実施形態では、セラミック構造体(ヒータ1)の製造方法は、準備工程(ステップST1)、導体配置工程(ステップST3)、第1開口形成工程(ステップST2)、積層工程(ステップST4)、焼成工程(ステップST5)及び第2開口形成工程(ステップST6)を有している。準備工程では、それぞれ1以上の第1~第3セラミックグリーンシート(焼成前の第1絶縁層19A~第3絶縁層19C)を用意する。第1セラミックグリーンシートは、基体13のうち内部導体14に対して第1面(下面13b)とは反対側に接する第1部分(第1絶縁層19A)を構成する。第2セラミックグリーンシートは、基体13のうち内部導体14に対して下面13b側に接する第2部分(第2絶縁層19B)を構成する。第3セラミックグリーンシートは、基体13のうち第2絶縁層19Bの下面13b側に接するとともに下面13bを有している第3部分(第3絶縁層19C)を構成する。導体配置工程では、内部導体14となる材料を第1セラミックグリーンシート(焼成前の第1絶縁層19A)の下面13b側に配置する。第1開口形成工程では、空間21のうち内部導体14側の一部(第1空間23)となる第1開口を第2セラミックグリーンシート(焼成前の第2絶縁層19B)に形成する。積層工程では、導体配置工程及び第1開口形成工程の後に、第1~第3セラミックグリーンシートを積層して積層体(焼成前の基体13)を得る。焼成工程では、積層体を焼成する。第2開口形成工程では、焼成後の積層体(基体13)における第3部分(第3絶縁層19C)のうち第1空間23に重なっている領域に空間21の下面13b側の一部(第2空間25)となる第2開口を形成する。
【0067】
従って、例えば、基体13の焼成後においては、空間21を形成するための加工は、第3絶縁層19Cに対してのみ行われ、第2絶縁層19Bに対する加工は不要である。その結果、例えば、焼成後の基体13に対する空間21を形成する加工によって、接続部16を損傷してしまう蓋然性が低減される。例えば、切削工具31によって接続部16を切削してしまう蓋然性が低減される。ここで、第1空間23だけでなく、第2空間25も、セラミックグリーンシートの積層前に形成することが考えられる。ただし、この場合、焼成工程等において、接続部16が基体13の外部の雰囲気に晒される。その結果、例えば、接続部16が酸化してしまい、接続部16の特性が低下する可能性が生じる。一方、本実施形態の製造方法では、焼成後に第2空間25が形成されるまでは第1空間23は第3絶縁層19Cによって塞がれているから、そのような酸化の蓋然性が低減される。また、切削工具31によって第3絶縁層19Cに第2開口(第2空間25)を形成する場合、切削工具31のうち第3絶縁層19Cを通過した先端側部分は、第1空間23に位置することになり、基体13に接しない。その結果、例えば、切削工具31から、基体13のうちの上面13a側の部分に付与される衝撃が低減される。ひいては、例えば、基体13の上面13a側に亀裂が生じる蓋然性を低減することができる。別の観点では、基体13の、内部導体14から上面13aまでの厚さを薄くすることができる。
【0068】
(変形例)
以下では、種々の変形例について述べる。変形例の説明では、基本的に、実施形態との相違点について述べる。特に言及しない点については、例えば、実施形態と同様とされたり、実施形態から類推されたりしてよい。また、変形例において、実施形態の構成と対応又は類似する構成については、相違点があっても、便宜上、同一の符号を付すことがある。また、以下の説明では、端子17、接合材27及び封止材29の図示を省略することがある。
【0069】
(第1変形例)
図7(a)は、第1変形例に係るヒータプレート209の一部を示す断面図である。この断面図は、
図3に概ね対応しているが、抵抗発熱体15が紙面右側に延びていることによって示されているように、抵抗発熱体15の長手方向に沿う断面を示している。ただし、
図3と同一の方向の断面において、この図に示す構成の特徴が現れていてもよい。
【0070】
ヒータプレート209の空間221においては、1つの第1空間23に対して複数の第2空間225が設けられている。基体13の下面13bの平面透視において、複数の第2空間225の大きさ及び配置は適宜なものとされてよい。例えば、複数の第2空間225は、1列に配列されてもよいし、2次元的に配列されていてもよいし、配列されているとは捉えることができない態様で配置されていてもよい。
【0071】
このような態様によれば、例えば、第1空間23の直下において第3絶縁層19Cの強度を確保することが容易化される。その一方で、第1空間23を広く確保して、第1空間23による効果(例えば断熱効果)を向上させることができる。また、例えば、複数の第2空間25を図示の例のように抵抗発熱体15に沿って配列し、複数の第2空間25のそれぞれに対して端子17を挿通して抵抗発熱体15を接合することができる。この場合、細長形状である抵抗発熱体15において端子17との接続面積を確保しやすい。その一方で、第1空間23及び/又は第2空間25の、抵抗発熱体15の幅方向における長さを短くして、基体13の強度を向上させたり、空間221の密閉性を向上させたりすることができる。
【0072】
(第2変形例)
図7(b)は、第2変形例に係るヒータプレート309の一部を示す、
図3に対応する断面図である。
【0073】
この変形例では、ヒータプレート309の内部導体314は、第1面(基体13の下面13b)に沿っている導体層(図示の例では抵抗発熱体15)と、当該導体層に対して下面13b側に重なっている接続用導体35とを有している。そして、この接続用導体35によって、端子17に接合される接続部316が構成されている。なお、接続用導体のみを接続部316と捉えてもよいし、抵抗発熱体15の一部と接続用導体との組み合わせが接続部316と捉えられてもよい。
【0074】
接続用導体35の位置、厚さ及び広さ等は適宜に設定されてよい。例えば、接続用導体35は、第1空間23に収まっていてもよいし(図示の例)、第1空間23からはみ出して、第1絶縁層19Aと第2絶縁層19Bとの間に位置する部分を有していてもよい。また、接続用導体35は、抵抗発熱体15のうち平面透視において第1空間23と重なる部分の全部を覆っていてもよいし(図示の例)、一部を覆っていてもよい。接続用導体35の厚さは、抵抗発熱体15の厚さよりも薄くてもよいし、同等でもよいし、厚くてもよい(図示の例)。接続用導体35の材料は、抵抗発熱体15の材料と同一であってもよいし、異なっていてもよく、また、導電ペーストを焼成して得られるものであってもよい。
【0075】
ヒータプレート309の製造方法において、接続用導体35は、焼成前の第3絶縁層19Cによって第1空間23を塞ぐ前に設けられる限り、適宜な時期において適宜な方法で設けられてよい。例えば、第1絶縁層19Aとなる第1セラミックグリーンシートに抵抗発熱体15となる導電ペーストを配置した後、かつ当該第1セラミックグリーンシートと第2絶縁層19Bとなる第2セラミックグリーンシートとを重ねる前に、接続用導体35となる導電ペーストが配置されてよい。
【0076】
このような接続用導体35を設けることによって、例えば、抵抗発熱体15の一部からなる接続部16よりも端子17との接合に適した形状及び材料からなる接続部316を実現できる。また、製造方法の観点から見ると、例えば、切削工具31によって焼成後の第3絶縁層19Cに第2開口(第2空間25)を形成するときに、切削工具31が接続部316に接触してしまっても、抵抗発熱体15(内部導体314の本体、導体層)まで切削される蓋然性が低減される。
【0077】
(第3変形例)
図8(a)は、第3変形例に係るヒータプレート409を示す、
図1のII-II線に対応する断面図(ヒータプレートの全体の断面図)である。
【0078】
この変形例において、空間421は、実施形態の空間21(空間本体)に加えて、層状空間37を有している。層状空間37の位置、厚さ及び広さは、適宜に設定されてよい。例えば、層状空間37の厚さは、第1空間23及び第2空間25の厚さよりも薄い。その具体的な厚さは、例えば、100μm以下である。層状空間37は、例えば、上記の100μm以下の厚さの部分を層状空間37の面積のうち5割以上、8割以上又は全部に亘って有している。
【0079】
層状空間37は、例えば、第1絶縁層19Aと第2絶縁層19Bとの間に形成されている。別の観点では、層状空間37は、内部導体14(図示の例では抵抗発熱体15と同じ)に対して第1面(基体13の下面13b)側から接している。さらに別の観点では、層状空間37は、空間本体(空間21)の、下面13bに直交する方向(上下方向)の厚みのうち、接続部16に接している一部の厚みから下面13bに沿って広がっている。
【0080】
図8(a)に示す縦断面(下面13bに直交する断面)では、層状空間37は、その端から端まで繋がっている。ただし、第1絶縁層19Aと第2絶縁層19Bとが層状空間37の配置領域内の一部において接触することにより、他の縦断面において、層状空間37は分断されていてもよい。さらには、分断によって、層状空間37の一部に空間21と通じていない部分(当該部分は、空間21と通じる層状空間37とは別の空間として捉えられてもよい。)が生じていてもよい。また、図示の例では、層状空間37によって、複数の空間本体(空間21)が互いに連通されているが、このような連通がなされていなくてもよい。
【0081】
層状空間37は、内部導体14の配置領域(図示の例では抵抗発熱体15の配置領域と同じ)に対して、適宜な割合で広がっていてよい。例えば、平面透視において内部導体14を収容する最小の円形又は多角形(例えば矩形)を想定する。このとき、層状空間37は、上記円形又は上記多角形の面積の1割以上、3割以上、5割以上、8割以上又は全部に亘って広がっていてよい。なお、上記において、層状空間37の配置領域内で第1絶縁層19Aと第2絶縁層19Bとが接触している面積は、層状空間37の面積から除外してもよいし、除外しなくてもよい。また、層状空間37は、上記円形又は上記多角形の外側にまで広がっていてよい。
【0082】
層状空間37の形成方法は、適宜な方法とされてよい。例えば、セラミックグリーンシートの積層体を焼成するときの条件を適宜に設定することによって、セラミックグリーンシートの焼成に伴う収縮を利用して第1絶縁層19Aと第2絶縁層19Bとの間に隙間を生じさせて層状空間37を形成してよい。また、例えば、セラミックグリーンシートの積層時に第1絶縁層19Aと第2絶縁層19Bとの間に比較的微小なスペーサを配置することによって、焼成前から層状空間37を形成したり、又は焼成時の収縮による隙間を生じやすくしたりしてもよい。
【0083】
本変形例のように層状空間37を設けると、例えば、溶融状態の接合材27(
図3参照)が層状空間37に侵入し、硬化状態の接合材27が第2絶縁層19Bの第1絶縁層19A側の面に係合する。これにより、接合材27が接続部16から剥離する蓋然性が低減される。ひいては、端子17と接続部16との接続の信頼性が向上する。
【0084】
また、例えば、空間421又は層状空間37の容積の8割以上又は全部が真空とされ、又は空間421又は層状空間37の容積の8割以上又は全部に気体が存在している(例えば封入されている)場合においては、層状空間37は、断熱層として機能する。その結果、抵抗発熱体15から基体13の下面13b側へ逃げる熱を低減して、基体13の上面13aに熱を伝えやすくすることができる。また、空間本体(空間21)の平面透視における面積を大きくする場合に比較して、基体13の体積が確保されるから、ヒータプレート409の強度確保及び/又は熱容量増加に有利である。
【0085】
(第4変形例)
図8(b)は、第4変形例に係るヒータプレート509を示す、
図8(a)と同様の断面図である。
【0086】
第3変形例では、空間421は、第1面(基体13の下面13b)の平面透視において、内部導体14の配置領域の比較的広い範囲(例えば8割以上)に亘っていてよいことを述べた。このような態様は、第4変形例に示すように、第1空間523によって実現されても構わない。
【0087】
また、図示の例では、第1絶縁層19Aと第3絶縁層19Cとの間にスペーサ39が設けられている。スペーサ39は、例えば、基体13の強度確保に寄与している。スペーサ39は、第2絶縁層19Bの一部であってもよいし、第2絶縁層19Bとは異なる材料から構成されていてもよい。スペーサ39は、例えば、柱状であってもよいし、壁状であってもよい。壁状のスペーサ39は、第1絶縁層19Aと第3絶縁層19Cとの間の空間を複数に区画して、接続部16を露出させるための第1空間523とは隔離された空間を形成していてもよい。もちろん、このようなスペーサ39は設けられなくてもよい。
【0088】
また、第4変形例は、1つの第1空間523が複数の接続部16に接している(平面透視において重なっている)例ともなっている。このように1つの第1空間523が複数の接続部16に重なっている場合において、第2空間525も複数の接続部16に重なっていてもよいし(図示の例)、複数の第2空間が複数の接続部16に対して個別に重なっていてもよい。
【0089】
(第5変形例)
図9(a)は、第5変形例に係るヒータプレート609を示す、
図3に相当する断面図である。また、
図9(b)は、ヒータプレート609の空間621の壁面の様相を示す模式的な斜視図である。
【0090】
この変形例では、平面透視において、第2空間625の形状及び大きさが第1空間23の形状及び大きさと同様とされている。換言すれば、空間621の壁面は、段差21a(
図3)を有さず、接続部16の位置(第2絶縁層19Bの上面の位置)から基体13の下面13bまで連続している。このような変形例に係るヒータプレート609は、例えば、実施形態の製造方法によって作製される。ただし、第2開口形成工程において、第2開口(第2空間625)は、その形状及び大きさが第1開口(第1空間23)の形状及び大きさと同等となるように形成される。
【0091】
焼成前に第1空間23(第1開口)を形成し、焼成後に第2空間625(第2開口)を形成することにより、ヒータプレート609には、焼成後に空間621の全体を形成した場合とは異なる特徴が現れることがある。
【0092】
例えば、積層工程及び焼成工程の条件にもよるが、
図9(a)に示すように、内部導体14(別の観点では第1絶縁層19Aの下面)は、空間621(第1空間23)に重なっている部分が、第1面(基体13の下面13b)側に撓む。撓みの大きさは、例えば、接続部16の断面を撮像した画像において目視可能な大きさである。また、例えば、第1空間23に重なる範囲において、内部導体14の最も高い位置と最も低い位置との差は、内部導体14の厚さの0.5倍以上、1倍以上、2倍以上又は5倍以上である。内部導体14の撓んでいる部分の形状は適宜なものとされてよい。例えば、全体的に湾曲していてもよいし(図示の例)、一部又は全部が直線状に形成されていてもよい。
【0093】
また、例えば、実施形態の説明でも述べたように、第1空間23の壁面(第1領域)と、第2空間625の壁面(第2領域)とは様相が異なることがある。
図9(b)では、第2空間625の壁面のみに切削痕33が形成されている態様を例示している。なお、このことから理解されるように、空間の壁面が連続している(段差を有さない)という場合、切削痕33のような意図していない微細な凹凸(段差)は無視する。
【0094】
以上のように、本変形例では、セラミック構造体(ヒータプレート609)は、基体13及び内部導体14を有している。基体13は、セラミックからなり、第1面(下面13b)を有している。内部導体14は、基体13内に位置しており、接続部16を有している。基体13は、接続部16から下面13bに亘っている空間621を有している。内部導体14は、下面13bに沿って空間621及びその外側に跨っている導体層(例えば抵抗発熱体15)を有している。抵抗発熱体15は、空間621に重なる部分が下面13b側に撓んでいる。
【0095】
従って、例えば、接続部16が下面13b側に凹状となっている態様(このような態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、接続部16と端子17との間に接合材27に囲まれた気泡が形成されて導通面積が低減される蓋然性が低減される。また、例えば、内部導体14よりも上面13a側の基体13の体積を多少なりとも大きくして、上面13a側の蓄熱性を向上させることができる。また、例えば、基体13と端子17との熱膨張差によって端子17(別の観点では接合材27)と接続部16との間に応力が生じたときに、接続部16の弾性変形によって応力が緩和されることが期待される。
【0096】
また、本変形例では、空間621の壁面は、接続部16の位置から第1面(基体13の下面13b)まで連続している。別の観点では、第1空間23と第2空間625とは平面視において一致している。
【0097】
この場合、例えば、第2空間625が比較的大きく形成されているから、端子17の第1空間23への配置及び端子17と接続部16との接合等が容易である。
【0098】
(第6変形例)
図10(a)は、第6変形例に係るヒータプレート709を示す、
図3に相当する断面図である。また、
図10(b)は、
図10(a)の領域Xbの拡大図である。
【0099】
内部導体14(より詳細には例えば接続部16)は、第5変形例と同様に、基体13の下面13b側に撓んでいる。また、本変形例では、第5変形例と異なり、内部導体14と基体13との間に空隙41が構成されている。空隙41は、真空とされていてもよいし、気体が存在していてもよい。また、空隙41は、空間21と通じていてもよいし、通じていなくてもよい。
【0100】
空隙41の形状は適宜に設定されてよい。図示の例では、空隙41は、第1絶縁層19Aの平面状の下面と、内部導体14の下方に湾曲する上面とによって構成されている。ひいては、空隙41は、断面視において、概略、平面と弧とによって構成される形状を有している。ただし、図示の例とは異なり、例えば、第1絶縁層19Aの下面及び内部導体14の上面の双方が下方に湾曲し、かつ後者の方が大きく下方に撓むことによって空隙41が形成されていてもよい。また、空隙41の下面(内部導体14の上面)は平坦な部分を含んでいてもよい。空隙41の平面視における形状も任意である。
【0101】
空隙41の大きさ等も適宜に設定されてよい。例えば、第5変形例における内部導体14の撓みの大きさの説明は、本変形例における内部導体14に援用されてよい。また、例えば、空隙41の厚さ(上下方向)は、接続部16の断面を撮像した画像において目視可能な大きさである。また、例えば、空隙41の厚さは、最大で、接続部16の厚さの0.1倍以上、0.5倍以上、1倍以上、2倍以上又は5倍以上とされてよい。平面視において、空隙41は、端子17の上端面17aよりも広くてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、狭くてもよい。
【0102】
空隙41は、適宜な方法によって形成されてよい。例えば、第1実施形態と同様の製造方法において、導体配置工程、積層工程及び/又は焼成工程の各種の条件を適宜に設定すると、内部導体14が第1絶縁層19Aの下面から剥離しつつ空間21内へ撓む。これにより、空隙41が形成される。また、焼成前の第1絶縁層19Aの下面のうち第1空間23と重なる予定の領域に樹脂を配置し、その上に内部導体14となる材料を配置してもよい。この場合、焼成工程において樹脂が消失することによって空隙41が形成される。
【0103】
また、本変形例では、端子17の上端面17aは、その一部のみが接続部16に接合されている。すなわち、上端面17aは、接続部16に接合されている接合領域17aaと、接続部16に接合されていない非接合領域17abとを有している。非接合領域17abは、例えば、接続部16と隙間43(および接合材27)を介して対向している。
【0104】
接合領域17aa及び非接合領域17abの上端面17aにおける位置は適宜に設定されてよい。ただし、例えば、非接合領域17ab(別の観点では隙間43)は、接合領域17aaから上端面17aの外縁に至るように設定されている。この場合、隙間43は、空間21に通じている。
【0105】
図示の例では、概ね、上端面17aの中央が接続部16の下面13b側への凸形状の頂部に対向して接続部16に接合されている。ひいては、接合領域17aaは、上端面17aの中央側の領域となっており、非接合領域17abは、接合領域17aaを囲む領域、及び/又は所定の断面において接合領域17aaの両側に位置する領域となっている。ただし、図示の例とは異なり、例えば、上端面17aの中央側から偏心した領域が接続部16の凸形状の頂部に対向してもよい。ひいては、所定の断面において、横方向の一方側に接合領域17aaが位置し、他方側に非接合領域17abが位置してもよい。
【0106】
また、接合領域17aa及び非接合領域17ab(別の観点では隙間43)の広さも適宜に設定されてよい。例えば、前者は後者よりも広くてもよいし、同等でもよいし、狭くてもよい。隙間43の厚さ(上下方向)も適宜に設定されてよい。隙間43の厚さ(上下方向)は、接続部16の断面を撮像した画像において目視可能な大きさである。また、例えば、隙間43の厚さは、最大で、接続部16の厚さの0.1倍以上、0.5倍以上又は1倍以上とされてよい。
【0107】
以上のとおり、本変形例では、導体層(内部導体14)の空間21に重なる部分(接続部16)が第1面(下面13b)側に撓んでいることに加え、基体13と接続部16との間に空隙41が位置している。
【0108】
この場合、例えば、端子17と基体13との熱膨張差を接続部16の弾性変形によって吸収することができる。その結果、例えば、端子17(別の観点では接合材27)と接続部16との間に生じる熱応力を低減し、両者の間で剥離が生じる蓋然性を低減できる。また、例えば、端子17と基体13との間に生じる熱応力を低減し、基体13にクラックが生じる蓋然性を低減できる。
【0109】
また、本変形例では、端子17の上端面17aは、接続部16に接合されている接合領域17aaと、接合領域17aaから上端面17aの外縁に至り、接続部16と隙間43を介して対向している非接合領域17abと、を有している。
【0110】
この場合、例えば、接続部16と非接合領域17abとが近接及び離反するような接続部16の変形によって、端子17と基体13との熱膨張差が吸収されることが期待される。その結果、例えば、端子17(別の観点では接合材27)と接続部16との間で剥離が生じる蓋然性を低減できる。
【0111】
なお、以上の実施形態又は変形例において、ヒータ1、ヒータプレート9、209、309、409、509、609及び709それぞれはセラミック構造体の一例である。基体13の下面13bは第1面の一例である。抵抗発熱体15は導体層の一例である。第1空間23及び523それぞれの壁面は第1領域の一例である。第2空間25、225、525及び625それぞれの壁面は第2領域の一例である。空間21、221及び621は空間本体の一例である。第1絶縁層19Aは第1部分の一例である。第2絶縁層19Bは第2部分の一例である。第3絶縁層19Cは第3部分の一例である。焼成前の第1絶縁層19Aは第1セラミックグリーンシートの一例である。焼成前の第2絶縁層19Bは第2セラミックグリーンシートの一例である。焼成前の第3絶縁層19Cは第3セラミックグリーンシートの一例である。第1空間23及び523それぞれは第1開口の一例である。第2空間25、225、525及び625それぞれは第2開口の一例である。
【0112】
本開示に係るヒータは、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0113】
上述した実施形態及び各種の変形例は適宜に組み合わされてよい。例えば、
図7(b)の接続用導体35は、各種の変形例に組み合わされてよい。また、例えば、
図8(a)の層状空間37は、
図9(a)のように第1空間23及び第2空間625が平面透視において一致する構成に組み合わされてよい。
【0114】
実施形態では、セラミック構造体として、加熱機能を有するヒータプレートを例に取った。ただし、セラミック構造体は、他の機能を有するものであってもよい。例えば、セラミック構造体は、静電チャック、又はプラズマ発生用電極部材であってもよいし、これら及びヒータの2つ以上の組み合わせとして機能するものであってもよい。さらに、セラミック構造体は、このようなウェハの加工用のもの(サセプタ等)に限定されず、あらゆる技術分野に適用可能である。
【0115】
別の観点では、内部導体は、実施形態では加熱用の抵抗発熱体であったが、他の用途の導体であってよく、例えば、静電チャック用の電極、又はプラズマ発生用の電極であってもよい。セラミック構造体は、これらの電極及び抵抗発熱体の1つ、又は2以上の組み合わせを有していてもよい。内部導体は、例えば、全体として、基体(13)の上面に沿って広がっている(上方に面している)といえる形状を有している導体とされてよい。また、例えば、平面視において内部導体全体を囲む最小の凸曲線を仮定したときに、当該凸曲線により囲まれた領域は、基体の上面の6割以上又は8割以上を占めてよい。
【0116】
また、内部導体の一部又は全部は、抵抗発熱体又は電極のように、セラミック構造体の機能を直接的に担う導体でなくてもよい。例えば、抵抗発熱体及び/又は電極と、基体の下面との間に、抵抗発熱体及び/又は電極と端子とを接続するための配線層を設けてよい。そして、この配線層の一部又は当該一部に重ねられる接続用導体によって、空間と接する接続部が構成されてよい。すなわち、内部導体は、配線層を含んでよい。
【0117】
実施形態の説明で述べたように、実施形態に係る製造方法は、第2開口(第2空間)を形成するときに基体のうちの第1空間よりも第1面とは反対側(実施形態では上面13a側)に付与される衝撃を緩和できるという効果が奏する。静電チャックは、基体内の電極(内部導体)から基体の上面までの厚みが比較的小さい(例えば0.3μm以下)。従って、セラミック構造体としての静電チャックに本開示に係る技術を適用した場合においては、上記効果が有効に奏される。プラズマの発生等に利用される、セラミック構造体としての電極内蔵フォーカスリングに本開示に係る技術を適用した場合においても同様である。また、ヒータを含み、流体又は化学組成物を加熱する、セラミック構造体としての熱交換器は、細いフィンを有していることがある。このようなセラミック構造体に本開示に係る技術を適用した場合においても上記効果が有効に奏される。
【符号の説明】
【0118】
1…ヒータ(セラミック構造体)、13…基体、13b…下面(第1面)、14…内部導体、15…抵抗発熱体(導体層)、16…接続部、21…空間、23…第1空間、25…第2空間。