(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】タレット用カムフォロア構造
(51)【国際特許分類】
F16H 25/06 20060101AFI20221216BHJP
F16H 53/06 20060101ALI20221216BHJP
B23B 29/32 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
F16H25/06 Z
F16H53/06
B23B29/32
(21)【出願番号】P 2021000567
(22)【出願日】2021-01-05
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591028072
【氏名又は名称】株式会社日研工作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中薗 隆美
(72)【発明者】
【氏名】吉本 浩治
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-045662(JP,A)
【文献】特開平07-305755(JP,A)
【文献】特開2013-185654(JP,A)
【文献】特開2018-151011(JP,A)
【文献】特開2000-346173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/06
F16H 53/06
B23B 29/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に支持されるタレットと、
前記タレットに周方向等間隔に立設される複数のカムフォロアと、
前記カムフォロアに順次噛み合うカム溝を有するカムとを具備し、
前記カムフォロアは、先端から根元に向かって延びる中心孔を有し前記根元が前記タレットに形成される根元孔に差し込まれて当該タレットに結合するローラ軸と、前記ローラ軸の先端部外周に同軸に設けられて前記カム溝に沿って回転するローラと、前記ローラ軸および前記ローラの環状隙間に配置される複数の転動体と、前記ローラ軸よりも固い材料からなり前記根元孔の中に達するまで前記中心孔に圧入される芯部材とを備える、タレット用カムフォロア構造。
【請求項2】
前記芯部材の一端が前記根元孔の内部に配置され、前記芯部材の他端が、前記ローラの内部に配置される、請求項1に記載のタレット用カムフォロア構造。
【請求項3】
前記根元孔は、前記タレットを貫通し、
前記ローラ軸は、前記根元の外周に形成される雄ねじと、前記雄ねじよりも先端側に形成されて前記根元よりも大径の大径部とを有し、
前記カムフォロアは、前記根元孔から突出する前記根元の前記雄ねじと締結するナットをさらに備える、請求項1または2に記載のタレット用カムフォロア構造。
【請求項4】
前記カムフォロアは、前記タレットの回転軸線と平行な姿勢で立設される、請求項1~3のいずれかに記載のタレット用カムフォロア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円テーブル装置を動作させるカム機構に関する。
【背景技術】
【0002】
タレットの外周部に立設される複数のカムフォロアと、カムフォロアに噛み合うカム溝を備えるローラギアカムとして従来、例えば特開2009-197897号公報(特許文献1)に記載の技術が知られている。カムフォロアは円筒状のローラと、ローラを回転自在に支持するローラ軸を有する。ローラはローラギアカムに接触し、カム溝に沿って回動する。ローラを伴うローラ軸は、特開2018-151011号公報(特許文献2)に記載されるように、取付ボルトでタレットに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-197897号公報
【文献】特開2018-151011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のようなタレットのカムフォロアにあっては、以下に説明するような問題を生ずる。つまり単に取付ボルトでタレットに固定する場合、ローラ軸の剛性が不足する虞がある。そうするとタレットの割り出し精度が低下する。
【0005】
本発明は、上述の実情に鑑み、割り出し精度を向上させたタレット用カムフォロア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため本発明によるタレット用カムフォロア構造は、回転自在に支持されるタレットと、タレットに周方向等間隔に立設される複数のカムフォロアと、カムフォロアに順次噛み合うカム溝を有するカムとを具備し、カムフォロアは先端から根元に向かって延びる中心孔を有し根元がタレットに形成される根元孔に差し込まれて当該タレットに結合するローラ軸と、ローラ軸の先端部外周に同軸に設けられてカム溝に沿って回転するローラと、ローラ軸およびローラの環状隙間に配置される複数の転動体と、ローラ軸よりも固い材料からなり根元孔の中に達するまでローラ軸の中心孔に圧入される芯部材とを備える。
【0007】
かかる本発明によれば、芯部材がローラ軸の中心孔に圧入され、根元孔の中に達する。これによりカムフォロアの剛性が従来よりも大きくされる。本実施形態によれば、カムフォロアとカムの噛み合いの精密性が向上する。なお、ローラ軸の根元とタレットの連結構造は特に限定されない。例えばローラ軸の根元は、タレットにねじ止めされる。
【0008】
芯部材はカムフォロアの軸線に沿って延び、その軸線方向長さは限定されない。本発明の一局面として、芯部材の一端が根元孔の内部に配置され、芯部材の他端がローラの内部に配置される。かかる局面によれば、カムフォロアの根元部から先端部まで剛性が大きくされる。他の局面として、芯部材の一端および他端が根元孔の内部に配置される。あるいは他の局面として、芯部材の一端が根元孔の内部に配置され、芯部材の中央領域がローラの内部に通され、芯部材の他端がローラの内部から突出する。
【0009】
本発明の好ましい局面として根元孔はタレットを貫通し、ローラ軸はローラ軸の根元部の外周に形成される雄ねじと、雄ねじよりも先端側に形成されてローラ軸の根元部よりも大径の大径部とを有し、カムフォロアは根元孔から突出するローラ軸根元部の雄ねじと締結するナットをさらに備える。かかる局面によれば、カムフォロアがタレットに確りと取付固定される。他の局面として、雄ねじおよびナットによる締結に代えて、雌ねじおよびボルトによる締結や、あるいは他のねじ止め構造であってもよい。
【0010】
カムフォロアの配列は特に限定されないが、本発明のさらに好ましい局面として、カムフォロアはタレットの回転軸線と平行な姿勢で立設される。かかる局面によれば、本発明がバレルカム機構に適合する。他の局面として、タレットを中心にして複数のカムフォロアが放射状に配置される。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明によれば、カム機構のカムフォロアの剛性が大きくなり、タレットの割り出し精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のカムフォロア構造を具備する割り出し円テーブルを示す全体図である。
【
図2】
図1の割り出し円テーブルを示す縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態になるカムフォロア構造を示す縦断面図である。
【
図4】
図3から芯部材を取り出して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態になるタレット用カムフォロア構造を具備する割り出し円テーブル装置を示す全体図であって、円テーブルの回転軸線方向に見た状態を、装置内部とともに表す。
図2は、同実施形態の割り出し円テーブル装置を示す縦断面図であって、円テーブルの回転軸線を含む平面で装置を切断した断面を表す。
図1および
図2において、本発明と無関係な部分は簡略表示される。
【0014】
円テーブル装置10は、円テーブル11と、円テーブル11を回転自在に支持する筐体21と、円テーブル11を回転駆動するモータ部31を具備する。
図2に示すように円テーブル11は、表面11bを筐体21の外側に向け、裏面11cを筐体21の中に収容する。かかる裏面11cにはタレット12がボルトで取付固定される。
【0015】
タレット12は、円テーブル11の外径よりも小さな外径であって、筐体21に内蔵される。タレット12は、裏面11cに結合される円盤部12bと、円盤部12bの中心に配置されて円盤部12bから軸線方向内側へ突出する内筒部12cと、円盤部12bの外縁に配置されて円盤部12bから軸線方向内側へ突出する外筒部12dと、外筒部12dの突出端に形成されるフランジ部12fとを有する。これら円盤部12b、内筒部12c、外筒部12d、およびフランジ部12fはすべて同軸配置される。なお、ここでいう軸線方向内側とは、円テーブル11の軸線Oに沿って、筐体21の内方へ指向する側をいう。これに対し軸線方向外側とは、円テーブル11の軸線Oに沿って、筐体21の外方へ指向する側をいう。
【0016】
内筒部12cおよび外筒部12dに区画される環状空間には、軸受13と、筐体21に一体形成された略円筒形状のタレット支持部22が、軸線Oと同軸に配置される。軸受13は、内径側にインナーレース13b、外径側にアウタレース13c、およびこれらレース間に複数の転動体13dを有し、軸線O方向のアキシャル荷重および径方向のラジアル荷重の双方を負担することができる。インナーレース13bは、ボルト23でタレット支持部22にねじ止めされる。アウタレース13cは、円盤部12bを貫通するボルト14でタレット12にねじ止めされる。
【0017】
タレット支持部22は、軸線Oに沿って延びている静止部材であり、軸受13を介してタレット12および円テーブル11を回転自在に支持する。
【0018】
図1に示すようにタレット12の外周縁には、周方向等間隔に、複数のカムフォロア41が立設される。
図3は1本のカムフォロア41を取り出して示す縦断面図である。各カムフォロア41は、ローラ軸42と、ローラ43と、複数の転動体44と、芯部材45とを備える。
【0019】
ローラ軸42の根元は、タレット12に形成される根元孔12hに差し込み固定される。根元孔12hは、フランジ部12fを貫通して軸線Oと平行に延びる貫通孔である。
ローラ軸42は、フランジ部12fを根元とし、円テーブル11から遠い側を先端として、円テーブル11から離れる方向へ突出する。
【0020】
ローラ軸42の先端には先端フランジ部42bが形成される。ローラ軸42の中央部外周にはフランジ部42cが形成される。フランジ部42cは、先端フランジ部42bよりも小径である。ローラ軸42の先端領域の外周には、円筒形状のローラ43が被される。ローラ43はフランジ部42を収容する。転動体44は例えば針状ころであり、ローラ軸42およびローラ43の環状隙間に配置される。これによりローラ43は回転自在に支持される。また転動体44は、先端フランジ部42bと、フランジ部42cの間に配置され、これらフランジ間に位置を規制される。またローラ43は、先端フランジ部42bによって抜け止めされる。
【0021】
ローラ軸42の中心には、先端から根元に向かって延びる一連の中心孔(42e,42f,42g)が形成される。かかる中心孔は、ローラ軸42を軸線方向に貫通し、先端部分42eを多角形断面とされ、根元部分42gを小径孔とされ、残りの中央領域42fを一定内径の丸孔とされる。これらの断面積は、根元部分42g、中央領域42f、先端部分42eの順で大きくなる。
【0022】
先端部分42eの穴奥には、ローラ軸42の外周面と接続する連絡孔42hが形成される。連絡孔42hは、先端フランジ部42bとフランジ部42cの間の空間と、中心孔の先端部分42eを連絡する。
【0023】
ローラ軸42の根元部外周には雄ねじ42dが形成される。雄ねじ42dはタレット12の根元孔12hから円テーブル11側(
図2)へ突出し、ナット46と螺合する。ナット46を締結することにより、タレット12のフランジ部12fはナット46およびフランジ部42cに挟圧され、ローラ軸42がタレット12に取付固定される。中心孔の中央領域42fは、根元側で根元孔12hの中に位置し、先端側で根元孔12hから突出し、ローラ43の中に位置する。
【0024】
芯部材45は、端部が球面状に丸められたピンであり、ローラ軸42よりも硬い材料からなる。ローラ軸42よりも硬い材料として、例えば超硬合金がある。これに対し、ローラ軸42等、芯部材45以外のカムフォロワ41の部品は、例えば鋼製である。芯部材45は中心孔の先端部分42eから中央領域42fに圧入され、中心孔の中央領域42fと根元部分42gが接続する段差42iに当接する。芯部材45の一端は、根元孔12hの中に位置する。芯部材45の他端は、ローラ43の中に位置する。芯部材45によりローラ軸42の中央領域は中実にされる。そしてカムフォロア41の剛性が大きくされる。
【0025】
、
図1に示すように、カム溝52は、カム51の外周に形成され、螺旋状に延びる。カムフォロア41のローラ43はカム51のカム溝52に入り込み、カムフォロア41はカム51と噛合する。カム51は、カム軸53の中央領域に同軸に設けられ、カム51およびカム軸53は一体回転する。
【0026】
カム軸53は、両端部で軸受54,55に回転自在に支持される。またカム軸53の端部にはギヤ56が同軸に結合する。ギヤ56は、モータ部31のモータ回転軸32と同軸に結合するギヤ33と噛合する。モータ部31は、カム51を駆動すると、複数のカムフォロア41が順次、カム溝52に噛合し、各ローラ43がカム51に接触しながら回転する。これによりタレット12は所定角度だけ回転し、円テーブル11が割り出しされる。
【0027】
本実施形態によれば、芯部材45がローラ軸42の中心孔に圧入され、根元孔12hの中に達する。これによりカムフォロア41の剛性が従来よりも大きくされる。本実施形態によれば、タレット12および円テーブル11の割り出し精度が従来のカム機構よりも向上する。
【0028】
また本実施形態によれば、芯部材45の一端が根元孔12hの内部に配置され、芯部材45の他端が、ローラ43の内部に配置されることから、カムフォロア41の剛性が、根元部から先端部まで大きくされる。
【0029】
また本実施形態によれば、根元孔12hはタレット12のフランジ部12fを貫通し、ローラ軸42はローラ軸42の根元部の外周に形成される雄ねじ42dと、雄ねじ42dよりも先端側に形成されてローラ軸42の根元部よりも大径のフランジ部42cとを有し、根元孔12hを貫通して突出するローラ軸42の雄ねじ42dにナット46が螺合することから、カムフォロア41がタレット12に強固に締結される。
【0030】
また本実施形態のカムフォロアは、タレット12の回転軸線Oと平行な姿勢で立設されることから、バレルカム機構に適合する。
【0031】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、工作機械において有利に利用される。
【符号の説明】
【0033】
10 円テーブル装置、 11 円テーブル、 12 タレット、
12h 根元孔、 13 軸受、 21 筐体、
22 タレット支持部、 31 モータ部、 41 カムフォロア、
42 ローラ軸、 42b 先端フランジ部、 42d 雄ねじ、
42e 中心孔の先端部分、 42f 中心孔の中央領域、
42g 中心孔の根元部分、 42h 連絡孔、 42i 段差、
43 ローラ、 44 転動体、 45 芯部材、 46 ナット、
51 カム、 52 カム溝、 53 カム軸、 O 軸線。