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特許7195357インクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】インクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221216BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20221216BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20221216BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/21
B41J2/015
B41J2/01 401
B41M5/00 100
B41M5/00 120
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021037375
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137730
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】永田 高章
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 淳
(72)【発明者】
【氏名】高野 大地
(72)【発明者】
【氏名】増田 久
(72)【発明者】
【氏名】川野 和央
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 隆宏
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-185779(JP,A)
【文献】特開2014-040011(JP,A)
【文献】国際公開第2019/243440(WO,A1)
【文献】特開平05-293955(JP,A)
【文献】特開2012-242792(JP,A)
【文献】特開2007-132760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドから被印刷物に活性エネルギー線硬化インクの液滴を吐出して印刷するインクジェット印刷方法であって、
前記被印刷物に少なくとも1層のカラー層を形成する通常印刷工程と、
前記カラー層の上に、複数の凸部が互いに前記活性エネルギー線硬化インクの液滴の直径以上の間隔を空けて配置される凹凸層を1層形成するように前記活性エネルギー線硬化インクの液滴を吐出する第1の間引き印刷工程と、
前記凹凸層の前記凸部の上に、前記活性エネルギー線硬化インクの液滴を重ねるように吐出することで形成される凹凸層を少なくとも1層積層する第2の間引き印刷工程と、
を含み、
前記被印刷物の被印刷領域は細長形状であり、
前記インクジェットヘッドを前記被印刷領域の長手方向に移動させながら、前記活性エネルギー線硬化インクを前記被印刷領域に吐出し、
前記インクジェットヘッドは、所定の方向に並設され、前記活性エネルギー線硬化インクを吐出する複数のノズルを有するとともに、前記長手方向に往復移動可能であり、
前記第1の間引き印刷工程では、前記インクジェットヘッドを前記長手方向に片道移動させながら1層の凹凸層を形成し、
前記第2の間引き印刷工程では、前記インクジェットヘッドを前記長手方向に片道移動させる毎に1層の凹凸層を形成し、
前記第1の間引き印刷工程及び前記第2の間引き印刷工程では、前記所定の方向が前記被印刷領域の短手方向に対して略平行になる状態で前記インクジェットヘッドを前記被印刷領域の長手方向に移動させながら、複数の前記ノズルのうち所定の一部の前記ノズルを用いて前記凹凸層を形成し、
前記所定の一部のノズルは、前記凹凸層の形成に用いないノズルを間に挟んで配置されるように選択されるインクジェット印刷方法。
【請求項2】
前記通常印刷工程、前記第1の間引き印刷工程、及び前記第2の間引き印刷工程では、前記被印刷物を保持可能なロボットアームを用いて、前記被印刷領域が前記インクジェットヘッドの印刷可能領域に含まれるように、前記被印刷物を保持した前記ロボットアームを動かす請求項1に記載のインクジェット印刷方法。
【請求項3】
前記活性エネルギー線硬化インクが単色である請求項1又は2に記載のインクジェット印刷方法。
【請求項4】
前記被印刷物が自動車のインスツルメントパネルである請求項1からの何れかに1項に記載のインクジェット印刷方法。
【請求項5】
所定の方向に並設され、活性エネルギー線硬化インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドを有し、被印刷物に前記活性エネルギー線硬化インクを吐出して印刷する印刷部と、
前記印刷部を制御する制御部と、を備え、
前記被印刷物の被印刷領域は細長形状であり、
前記インクジェットヘッドは、前記被印刷領域の長手方向に往復移動可能であり、
前記制御部は、前記被印刷物の上に少なくとも1層のカラー層を形成し、前記カラー層の上に、複数の凸部が互いに前記活性エネルギー線硬化インクの液滴の直径以上の間隔を空けて配置される凹凸層を前記インクジェットヘッドを前記長手方向に片道移動させることで1層形成するように前記活性エネルギー線硬化インクの液滴を吐出し、前記凹凸層の前記凸部の上に、前記活性エネルギー線硬化インクの液滴を重ねるように吐出することで形成される凹凸層を少なくとも1層積層し、前記インクジェットヘッドを前記長手方向に片道移動させる毎に1層の凹凸層を形成し、前記所定の方向が前記被印刷領域の短手方向に対して略平行になる状態で前記インクジェットヘッドを前記被印刷領域の長手方向に移動させながら、複数の前記ノズルのうち所定の一部の前記ノズルを用いて前記凹凸層を形成し、前記所定の一部のノズルは、前記凹凸層の形成に用いないノズルを間に挟んで配置されるように選択されるように前記印刷部の動作を制御するインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のインストルメントパネル等の表面に凹凸を有する被塗装物や被印刷物を着色する技術が知られている。この種の技術が記載されているものとして例えば特許文献1がある。特許文献1には、立体加飾部が形成されたインストルメントパネルの表面全体に塗膜層を形成した後に、立体加飾部を覆う塗膜層だけをレーザーにより除去して外観品質を向上される技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-269221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、被塗装物の外観品質を向上させることができるものの、被塗装物の表面全体を塗装した後で、立体加飾部を覆う塗膜層を除去する工程が必要であり、効率的に塗装するという点で改善の余地があった。
【0005】
ここで、UV等を照射することで硬化する活性エネルギー線硬化インクを用いて被印刷物を印刷するインクジェット印刷方法が知られている。このインクジェット印刷方法によれば効率的に被印刷物を印刷できるが、表面に凹凸を有する被印刷物を印刷する場合、表面が平坦な被印刷物に比べてインクジェットヘッドを被印刷物の表面に近付けることができず、離れた位置から活性エネルギー線硬化インクを吐出する必要がある。インクジェットヘッドから被印刷物までの距離が長い場合、活性エネルギー線硬化インクの液滴が小さいとインクジェットヘッドから被印刷物に届く前に空気抵抗等によって着弾位置がズレる傾向にある。これに対して、活性エネルギー線硬化インクの液滴を大きくすることによってより長い距離を真っ直ぐ飛ばすことができるが、被印刷物の表面に付着した液滴が濡れ広がり、隣接する液滴と合体して光沢が増加するおそれがある。
【0006】
本発明は、表面に凹凸を有する被印刷物に対して、光沢が低減された印刷面を効率的に形成できるインクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インクジェットヘッドから被印刷物に活性エネルギー線硬化インクの液滴を吐出して印刷するインクジェット印刷方法であって、前記被印刷物に少なくとも1層のカラー層を形成する通常印刷工程と、前記カラー層の上に、複数の凸部が互いに前記活性エネルギー線硬化インクの液滴の直径以上の間隔を空けて配置される凹凸層を1層形成するように前記活性エネルギー線硬化インクの液滴を吐出する第1の間引き印刷工程と、前記凹凸層の前記凸部の上に、前記活性エネルギー線硬化インクの液滴を重ねるように吐出することで形成される凹凸層を少なくとも1層積層する第2の間引き印刷工程と、を含むインクジェット印刷方法に関する。
【0008】
前記被印刷物の被印刷領域は細長形状であり、前記インクジェットヘッドを前記被印刷領域の長手方向に移動させながら、前記活性エネルギー線硬化インクを前記被印刷領域に吐出してもよい。
【0009】
前記インクジェットヘッドは前記長手方向に往復移動可能であり、前記第1の間引き印刷工程では、前記インクジェットヘッドを前記長手方向に片道移動させながら1層の前記凹凸層を形成し、前記第2の間引き印刷工程では、前記インクジェットヘッドを前記長手方向に片道移動させる毎に1層の前記凹凸層を形成してもよい。
【0010】
前記インクジェットヘッドは、所定の方向に並設され、前記活性エネルギー線硬化インクを吐出する複数のノズルを有し、前記第1の間引き印刷工程及び前記第2の間引き印刷工程では、前記所定の方向が前記被印刷領域の短手方向に対して略平行になる状態で前記インクジェットヘッドを前記被印刷領域の長手方向に移動させながら、複数の前記ノズルのうち所定の一部の前記ノズルを用いて前記凹凸層を形成してもよい。
【0011】
前記通常印刷工程、前記第1の間引き印刷工程、及び前記第2の間引き印刷工程では、前記被印刷物を保持可能なロボットアームを用いて、前記被印刷領域が前記インクジェットヘッドの印刷可能領域に含まれるように、前記被印刷物を保持した前記ロボットアームを動かしてもよい。
【0012】
前記活性エネルギー線硬化インクが単色であってもよい。
【0013】
前記被印刷物が自動車のインスツルメントパネルであってもよい。
【0014】
また本発明は、被印刷物に活性エネルギー線硬化インクを吐出して印刷する印刷部と、前記印刷部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記被印刷物の上に少なくとも1層のカラー層を形成し、前記カラー層の上に、複数の凸部が互いに前記活性エネルギー線硬化インクの液滴の直径以上の間隔を空けて配置される凹凸層を1層形成するように前記活性エネルギー線硬化インクの液滴を吐出し、前記凹凸層の前記凸部の上に、前記活性エネルギー線硬化インクの液滴を重ねるように吐出することで形成される凹凸層を少なくとも1層積層するように前記印刷部の動作を制御するインクジェット印刷装置に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表面に凹凸を有する被印刷物に対して、光沢が低減された印刷面を効率的に形成できるインクジェット印刷方法及びインクジェット印刷装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷方法によって印刷された印刷物の断面図である。
図2】印刷物の60°グロスと平均高さRcと液滴ピッチとの関係を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置のインクジェットヘッド及び被印刷物の平面図であり、第1の間引き印刷工程を開始する前の様子を示す。
図5A】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷方法における印刷前の被印刷物の断面図である。
図5B】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷方法における下地層が印刷されている被印刷物の断面図である。
図5C】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷方法におけるカラー層が印刷されている被印刷物の断面図である。
図5D】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷方法における第1の間引き印刷工程によって、1層目の凹凸層が間引き印刷されている被印刷物の断面図である。
図5E】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷方法における第2の間引き印刷工程によって、2層目の凹凸層が間引き印刷されている被印刷物の断面図である。
図5F】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷方法における第2の間引き印刷工程によって、4層目の凹凸層が間引き印刷されている被印刷物の断面図である。
図6A】従来技術に係るインクジェット印刷方法によって被印刷物に凹凸層を形成する前の様子を示す平面図である。
図6B】従来技術に係るインクジェット印刷方法によって被印刷物に凹凸層を形成する途中の様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、以下に示す実施形態は本発明を例示するものであって、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0018】
まず、本実施形態に係るインクジェット印刷方法によって印刷された印刷物1について説明する。図1は、本実施形態のインクジェット印刷方法によって印刷された印刷物1の断面図である。
【0019】
印刷物1は、被印刷物10と、印刷面80と、を有する。印刷面80は、下地層20と、カラー層30と、凹凸層40と、3層の凹凸層50である凹凸層51,52,53と、を含んで構成される。インクジェット印刷方法では、UV(紫外線)やEB(電子線)を照射することによって液滴が硬化する活性エネルギー線硬化インクが用いられる。本実施形態では、活性エネルギー線硬化インクとして、UVを照射することによって液滴が硬化するUV硬化インクを用いている。
【0020】
被印刷物10は、その表面13に凹凸(図示省略)を有する。被印刷物10としては、例えば、自動車のインストルメントパネル等が挙げられる。本実施形態では、自動車のインストルメントパネルを例にして説明する。
【0021】
被印刷物10は、基材11と基材11の上に形成された樹脂製の表皮12とを含む。表皮12には、その表面13に凹凸が形成されているため、平坦な被印刷物に比べて後述するインクジェット印刷装置100のインクジェットヘッド121を表面13に近付けることができない。本実施形態の被印刷物10は、インクジェット印刷装置100による印刷対象となる被印刷領域14が細長形状である。被印刷領域14としては、例えば、インストルメントパネルに設けられた縫い目やパイピングを模した装飾形状等が挙げられる。
【0022】
下地層20は、略平坦であり、UV硬化インクの色が付きやすくなるように印刷される層である。本実施形態の下地層20は、単色(白色)の層であり、下側から上側に下地層21,22の2層設けられる。
【0023】
カラー層30は、略平坦な層である。本実施形態のカラー層30は単色(赤色)の層であり、下側から上側にカラー層31,32,33,34の4層設けられる。
【0024】
凹凸層40は、カラー層34の上に設けられ、UV硬化インクからなる複数の凸部71を含んで構成される。1つの凸部71は、UV硬化インクの液滴Iを1つ吐出することによって形成され、平面視において略円状であり、その直径D1はUV硬化インクの液滴Iの直径と略同じである。凹凸層40には、複数の凸部71が互いにUV硬化インクの液滴Iの直径以上の間隔D2を空けて配置される。凹凸層40は、UV硬化インクの液滴Iをカラー層34の上に吐出して間引き印刷することで形成される。本実施形態の凹凸層40は、単色(赤色)の層である。
【0025】
凹凸層51は、UV硬化インクからなる複数の凸部72を含んで構成される。1つの凸部72は、UV硬化インクの液滴Iを1つ吐出することによって形成される。複数の凸部72のそれぞれは、凹凸層40の凸部71の上に配置される。凹凸層51は、凹凸層40の凸部71の上に、UV硬化インクの液滴Iを重ねることで形成される。本実施形態では、凹凸層51は単色(赤色)の層である。
【0026】
凹凸層52は、UV硬化インクからなる複数の凸部73を含んで構成される。1つの凸部73は、UV硬化インクの液滴Iを1つ吐出することによって形成される。複数の凸部73のそれぞれは、凹凸層51の凸部72の上に配置される。凹凸層52は、凹凸層51の凸部72の上に、UV硬化インクの液滴Iを重ねることで形成される。本実施形態では、凹凸層52は単色(赤色)の層である。
【0027】
凹凸層53は、UV硬化インクからなる複数の凸部74を含んで構成される。1つの凸部74は、UV硬化インクの液滴Iを1つ吐出することによって形成される。複数の凸部74のそれぞれは、凹凸層53の凸部73の上に配置される。凹凸層53は、凹凸層52の凸部73の上に、UV硬化インクの液滴Iを重ねることで形成される。本実施形態では、凹凸層53は単色(赤色)の層である。
【0028】
図1に示すように、被印刷物10には、凸部71~74がカラー層34の表面に対して略直交する方向に重なった複数の積層体70が形成される。印刷物1は、積層体70の高さであるカラー層34の表面から凸部74の頂部までの高さD3がその平均高さRcが所定の値以上になるように設定されている。また、積層体70のそれぞれは、隣接する積層体70に対してUV硬化インクの液滴Iの直径以上の間隔D2を空けて配置される。
【0029】
印刷物1は、隣接する積層体70同士が凸部71の直径D1以上の間隔D2を空けて配置され、かつ、凹凸層40の上に凹凸層50が積層されている。この構成により、図1に示すように、印刷物1に入射する光Lを散乱させることができ、印刷面80の光沢を低減できる。
【0030】
次に、UV硬化インクIを用いて印刷した印刷物の60°グロスと印刷物の表面粗さを示す平均高さRcや液滴ピッチの関係について図2を参照しながら説明する。60°グロスは、60°の入射角で光を入射させた場合の光沢度である。また、本明細書でいう液滴ピッチ及び間隔D2は、隣接する液滴の外周から外周までの最短距離を意味する。
【0031】
図2は、液滴ピッチ140μm又は180μmの凹凸層が形成される印刷物の平均高さRcと60°グロスと液滴ピッチとの関係を示す図である。なお、図2の縦軸は60°グロスを示し、横軸は平均高さRc(μm)を示している。
【0032】
印刷物の60°グロスの評価に用いたサンプルの作成方法について説明する。サンプルは、被印刷物であるABS樹脂の平板プレート(以下、ABSプレート)にカラー層を4層ベタ塗りし、後述する第1の間引き印刷工程及び第2の間引き印刷工程による間引き印刷を行うことにより作成した。間引き印刷は、ABSプレートを後述するインクジェット印刷装置に設置し、インクジェットヘッドから約10mm離して行った。間引き印刷の回数とインクジェットヘッドからUV硬化インクの液滴を吐出するタイミングを変更し、複数のサンプルを作成した。具体的には、間引き印刷の回数を0回~10回の間で変更し、液滴を吐出するタイミングを液滴ピッチが140μm又は180μmになるように調整した。また間引き印刷は、直径が約134μmのUV硬化インクの液滴を用いて行った。
【0033】
図2に示すように、液滴ピッチ140μm及び180μmの何れのサンプルも平均高さRcが大きくなるにつれて、60°グロスが低下することが確認できる。即ち、印刷物1の積層体70の高さD3が高くなるにつれて、60°グロスが低下することが確認できる。
【0034】
また、図2に示すように、液滴ピッチが140μmのサンプルは液滴ピッチが180μmのサンプルに比べて、同じ60°グロスを得るためにより高い平均高さRcが必要になることが確認できる。即ち、液滴ピッチが大きくなるにつれて60°グロスを抑制するために必要な平均高さRcが大きくなり、液滴ピッチが小さくなるにつれて60°グロスが必要な平均高さRcが小さくなる。液滴ピッチを小さくすれば光沢を抑制するために必要な表面の平均高さRcが小さくなるが、液滴のサイズが大きい場合は被印刷物に付着したときの濡れ広がりが大きくなり、隣接する液滴同士が合体して表面が平坦になる。この結果、印刷面80の平均高さRcが低下してしまうので、液滴同士が合体しないように液滴の大きさやインクジェットヘッドから被印刷物の表面までの距離に応じて、所定の間隔以上の液滴ピッチを設ける必要がある。そして、設定した液滴ピッチに応じて平均高さRcを調整する必要がある。
【0035】
本実施形態では、表面13に凹凸を有する被印刷物10を印刷するので、表面が平坦な被印刷物に印刷する場合に比べて、インクジェットヘッド121を近付けることができない。このため、UV硬化インクの液滴Iの着弾位置がズレないように、UV硬化インクの液滴Iのサイズを大きくしている。さらに本実施形態では、複数の凸部71が互いにUV硬化インクの液滴Iの直径以上の間隔D2を空けて配置されるようにUV硬化インクの液滴Iを吐出することで、サイズの大きい液滴同士の合体を防止している。そして、凸部71の上に凸部72~74を積層することで、平均高さRcを向上させている。この結果、印刷面80の光沢が抑制される。
【0036】
例えば、図2に示すように、UV硬化インクの液滴Iの直径が134μmである場合、間隔D2が140μmであると、平均高さRcを11μm以上とすることで60°グロスが約5.0以下になることが確認できる。
【0037】
次に、本実施形態に係るインクジェット印刷方法に用いられるインクジェット印刷装置100について図3及び図4を参照しながら説明する。図3はインクジェット印刷装置100の電気的な構成を示すブロック図である。図4はインクジェット印刷装置100のインクジェットヘッド121及び被印刷物10の平面図であり、後述する第1の間引き印刷工程開始時のインクジェットヘッド121及び被印刷物10の位置を示す。なお、図4では、被印刷物10におけるドットパターンの円はUV硬化インクの液滴Iが吐出される箇所を示し、インクジェットヘッド121におけるドットパターンの円はUV硬化インクの液滴Iを吐出するノズル123を示している。また、図4では、UVヘッド122の図示を省略している。
【0038】
インクジェット印刷装置100は、ロボットアーム110と、印刷部120と、制御部130と、を備える。
【0039】
ロボットアーム110は、被印刷物10を保持可能に構成される。ロボットアーム110は、被印刷物10を保持しながら、制御部130からの信号に基づいて移動可能に構成される。
【0040】
印刷部120は、インクジェットヘッド121と、UVヘッド122a,122bと、を備える。インクジェットヘッド121は、細長形状の部位である。インクジェットヘッド121は、UV硬化インクの液滴Iを吐出する複数のノズル123を有する。図4に示すように、ノズル123は、インクジェットヘッド121の長手方向に間隔を空けて並設される。なお、図4では、インクジェットヘッド121の一部のノズル123のみ図示している。
【0041】
UVヘッド122a,122bは、細長形状であり、活性エネルギー線であるUVを照射する。UVヘッド122aはインクジェットヘッド121の短手方向の一側に配置され、UVヘッド122bはインクジェットヘッド121の短手方向の他側に配置される。
【0042】
制御部130は、例えばCPU、メモリ等を有し、制御プログラムを実行するコンピュータであり、ロボットアーム110及び印刷部120の動作を制御する。
【0043】
次に、本実施形態に係るインクジェット印刷方法について図4から図6Bを参照しながら説明する。図5Aは印刷前の被印刷物10の断面図である。図5Bは下地層20が印刷されている被印刷物10の断面図である。図5Cはカラー層30が印刷されている被印刷物10の断面図である。図5Dは凹凸層40が間引き印刷されている被印刷物10の断面図である。図5Eは凹凸層51が間引き印刷されている被印刷物10の断面図である。図5Fは凹凸層53が間引き印刷されている被印刷物10の断面図である。
【0044】
本実施形態に係るインクジェット印刷方法は、被印刷物10に下地層20を形成する第1の通常印刷工程と、被印刷物10に少なくとも1層のカラー層30を形成する第2の通常印刷工程(通常印刷工程)と、カラー層30の上に、凹凸層40を1層形成するように間引き印刷する第1の間引き印刷工程と、凹凸層40の凸部71の上に3層の凹凸層50を積層するように間引き印刷する第2の間引き印刷工程と、を含む。本実施形態では、インクジェット印刷装置100を用いる場合を例に説明する。
【0045】
まず、制御部130が、ロボットアーム110を制御して被印刷物10をロボットアーム110に保持させるとともに、被印刷物10の被印刷領域14がインクジェットヘッド121の印刷可能領域に含まれるように被印刷物10を移動させる。そして、制御部130は、図4に示すように、ロボットアーム110及び印刷部120を制御して、被印刷物10の被印刷領域14の短手方向とインクジェットヘッド121の複数のノズル123が並ぶ方向が略平行になるように位置を調整する。このとき、制御部130は、インクジェットヘッド121が図4の矢印の方向に移動すると、複数のノズル123の吐出口(図示省略)が被印刷領域14に対向するように被印刷物10とインクジェットヘッド121の位置を調整する。
【0046】
次に、第1の通常印刷工程として、被印刷物10の上に2層の下地層20を形成する。具体的には、制御部130の制御によって、印刷部120は被印刷領域14の長手方向一側(図5A図5Fでは右側)の端部から長手方向他側(図5A図5Fでは左側)の端部に向かって移動しながら、図5Aに示す被印刷物10の表面13にUV硬化インクの液滴Iを吐出する。このとき、印刷部120は、被印刷物10に付着したUV硬化インクの液滴IにUVヘッド122bからUVを照射してUV硬化インクの液滴Iを硬化させる。
【0047】
被印刷領域14の長手方向他側の端部に付着したUV硬化インクの液滴IにUVが照射されると、制御部130は印刷部120の移動方向を180°変更させる。そして、制御部130は、被印刷領域14の長手方向他側の端部から長手方向一側の端部に向かって印刷部120を移動させながら、インクジェットヘッド121からUV硬化インクの液滴Iを吐出させる。このとき、図5Bに示すように、被印刷物10に付着したUV硬化インクの液滴IにUVヘッド122aからUVを照射してUV硬化インクの液滴Iを硬化させる。印刷部120が被印刷領域14の長手方向一側の端部から長手方向他側の端部の間を往復移動することで、2層の下地層20が形成される。なお、第1の通常印刷工程では、UV硬化インクとして、単色(白色)のインクを使用する。
【0048】
次に、第2の通常印刷工程(通常印刷工程)として、被印刷物10に少なくとも1層のカラー層30を形成する。具体的には、下地層20を形成した場合と同様に、制御部130の制御によって、印刷部120は被印刷領域14の長手方向一側の端部から長手方向他側の端部の間を移動しながら、UV硬化インクの液滴Iの吐出とUVの照射を行う。図5Cに示すように、印刷部120が被印刷領域14の長手方向一側の端部から長手方向他側の端部の間を2往復することで下地層22の上に4層のカラー層30が形成される。なお、第2の通常印刷工程では、UV硬化インクとして、単色(赤色)のインクを使用する。
【0049】
次に、第1の間引き印刷工程として、カラー層34の上に、複数の凸部71がUV硬化インクの液滴Iの直径以上の間隔D2を空けて配置される凹凸層40を形成するようにUV硬化インクの液滴Iを吐出する。UV硬化インクの液滴Iのサイズは、例えば、被印刷物10が表面13に凹凸を有するインストルメントパネル等である場合、35pL~45pLであることが好ましい。
【0050】
第1の間引き印刷工程では、図5Dに示すように、制御部130の制御によって、印刷部120は被印刷領域14の長手方向一側の端部から長手方向他側の端部に向かって移動しながら、インクジェットヘッド121から一定の量のUV硬化インクの液滴Iを一定のタイミングで吐出する。そして、印刷部120は、カラー層30に付着したUV硬化インクIにUVヘッド122bからUVを照射してUV硬化インクIを硬化して凸部71を形成する。これにより、印刷部120を被印刷領域14の一側の端部から他側の端部に片道移動させることで、被印刷領域14の長手方向において、複数の凸部71がUV硬化インクの液滴Iの直径以上の間隔D2を空けて配置される凹凸層40を1層形成できる。
【0051】
また、このとき、印刷部120は、その長手方向に並設される複数のノズル123のうち所定の一部のノズル123からUV硬化インクの液滴Iを吐出する。本実施形態では、UV硬化インクの液滴Iを吐出する所定の一部のノズル123は、隣接するUV硬化インクの液滴Iを吐出するノズル123の間に少なくとも1つのUV硬化インクの液滴Iを吐出しないノズル123が位置するように選択される。例えば、図4に示すように、インクジェットヘッド121のノズル123a~123eのうち、ノズル123bと123dからUV硬化インクの液滴Iを吐出させて、ノズル123a,123c,123eからUV硬化インクの液滴Iを吐出させない。即ち、UV硬化インクの液滴Iを吐出するノズル123とUV硬化インクの液滴Iを吐出しないノズル123とを交互に配置する。これにより、UV硬化インクの液滴Iを吐出する全てのノズル123から同じタイミングでUV硬化インクの液滴Iを吐出させた場合であっても、被印刷領域14の短手方向においても隣接する凸部71がUV硬化インクの液滴Iの直径以上の間隔D2を空けて配置される凹凸層40を形成できる。なお、第1の間引き印刷工程では、UV硬化インクとして、単色(赤色)のインクを使用する。
【0052】
ここで、本実施形態のインクジェット印刷方法と従来技術の違いを説明するために、従来技術のインクジェット印刷方法について図6A及び図6Bを参照しながら説明する。
【0053】
図6A及び図6Bはインクジェットヘッド121及び被印刷物10の平面図である。図6Aでは、従来技術のインクジェット印刷方法によって被印刷物10へのUV硬化インクからなる凹凸層の形成開始前の状態を示している。図6Bでは、従来技術のインクジェット印刷方法によってUV硬化インクからなる凹凸層を形成する途中の状態を示している。なお、図6A及び図6Bでは、UVヘッド122の図示を省略している。また、図6Aにおいて、被印刷物10におけるドットパターンの円はインクジェットヘッド121の片道移動時にUV硬化インクの液滴Iが吐出される箇所を示し、インクジェットヘッド121におけるドットパターンの円はUV硬化インクの液滴Iを吐出するノズル123を示している。図6Bにおいて、被印刷物10におけるドットパターンの円はインクジェットヘッド121の往復移動後にUV硬化インクの液滴Iが吐出された箇所を示し、インクジェットヘッド121におけるドットパターンの円はUV硬化インクの液滴Iを吐出するノズル123を示している。
【0054】
図6Aに示すように、従来技術のインクジェット印刷方法では、被印刷領域14に対向する全てのノズル123a~123eを用いてUV硬化インクの液滴Iを吐出する。具体的には、UV硬化インクの液滴Iは、ノズル123a,123c,123eの組と、ノズル123b,123dの組とからタイミングをずらして交互に吐出される。この結果、インクジェットヘッド121が被印刷領域14の一側の端部から他側の端部に片道移動した後に、被印刷領域14の短手方向及び長手方向においてUV硬化インクの液滴Iの直径以上の間隔を空けて凸部が配置される状態となる。そして、インクジェットヘッド121が被印刷領域14の他側の端部から一側の端部に戻りながら、被印刷領域14に形成された凸部の間に向かってノズル123a,123c,123eの組と、ノズル123b,123dの組とでタイミングをずらして交互にUV硬化インクの液滴Iを吐出する。この結果、隣接する凸部の間隔D2が凸部の直径D1未満である1層の凹凸層が形成される。しかし、図6A及び図6Bに示す従来技術では、間隔D2が狭いため、UV硬化インクの液滴Iのサイズによっては吐出されたUV硬化インクの液滴I同士が合体するおそれがある。また、図6A及び図6Bに示す従来技術では、被印刷領域14に1層の凹凸層を形成させるために、印刷部120が被印刷領域14の一側の端部と他側の端部との間を往復移動する必要がある。
【0055】
これに対して本実施形態では、隣接する凸部71がUV硬化インクの液滴I以上の間隔D2を空けるようにUV硬化インクの液滴Iを吐出するので、吐出されたUV硬化インクの液滴I同士が合体することを抑制できる。また、上述の通り、印刷部120を片道移動させることで1層の凹凸層40を形成できる。
【0056】
次に、第2の間引き印刷工程として、凹凸層40の凸部71の上に、UV硬化インクの液滴Iを重ねるように吐出して凹凸層50を少なくとも1層積層する。
【0057】
第2の間引き印刷工程では、図5Eに示すように、制御部130の制御によって、印刷部120は被印刷領域14の長手方向他側の端部から長手方向一側の端部に向かって移動しながら、インクジェットヘッド121からUV硬化インクの液滴Iを凹凸層40の凸部71の上に吐出する。即ち、印刷部120は、凸部71の上にUV硬化インクの液滴Iが重なるように、インクジェットヘッド121から第1の間引き印刷工程と同じ量のUV硬化インクの液滴Iを同じタイミングで吐出する。そして、印刷部120は、UVヘッド122aから凸部71の上に吐出されたUV硬化インクの液滴IにUVを照射して凸部72を形成する。これにより、印刷部120を被印刷領域14の他側の端部から一側の端部に片道移動させることで、凸部71がUV硬化インクの液滴Iの直径以上の間隔D2を空けて配置される凹凸層40の上に凹凸層51を形成できる。
【0058】
UVヘッド122aが被印刷領域14の長手方向一側の端部に付着したUV硬化インクの液滴IにUVを照射すると、制御部130は印刷部120の移動方向を180°変更させる。そして、制御部130は、上述した凹凸層40及び凹凸層51を形成した動作を繰り返し行うように印刷部120を制御する。これにより、図5Fに示すように凹凸層51の凸部72の上にUV硬化インクの液滴Iが吐出され、硬化して凸部73,74となり、積層体70が形成される。そして、印刷部120が被印刷領域14の一側の端部と他側の端部との間を1往復すると、凹凸層51の上に凹凸層52,53が形成される。よって、平均高さRcが高く、光沢が抑制された印刷面80を効率的に形成できる。なお、第2の間引き印刷工程では、UV硬化インクとして、単色(赤色)のインクを使用する。
【0059】
本実施形態に係るインクジェット印刷方法によれば、以下の効果を奏する。
【0060】
本実施形態に係るインクジェット印刷方法は、インクジェットヘッド121から被印刷物10にUV硬化インクの液滴Iを吐出して印刷するインクジェット印刷方法であって、被印刷物10に少なくとも1層のカラー層30を形成する通常印刷工程と、カラー層30の上に、複数の凸部71が互いにUV硬化インクの液滴Iの直径以上の間隔D2を空けて配置される凹凸層40を1層形成するようにUV硬化インクの液滴Iを吐出する第1の間引き印刷工程と、凹凸層40の凸部71の上に、UV硬化インクの液滴Iを重ねるように吐出することで形成される凹凸層51を少なくとも1層積層する第2の間引き印刷工程と、を含む。
【0061】
これにより、隣接する凸部71同士の間隔D2がUV硬化インクの液滴Iの直径以上になるように被印刷物10にUV硬化インクの液滴Iが吐出されるので、UV硬化インクの液滴Iのサイズに応じた間隔D2を確保できる。このため、UV硬化インクの液滴Iのサイズを大きくした場合であっても、より確実に凹凸を有する印刷面80を形成できる。そして、凸部71の上に凸部72等を積み重ねるようにUV硬化インクの液滴Iが吐出されるので、効率的に平均高さRcを増加させることができる。よって、表面13に凹を有する被印刷物10に対して、光沢が低減された印刷面80を効率的に形成できる。
【0062】
本実施形態に係るインクジェット印刷方法において、被印刷物10の被印刷領域14は細長形状であり、インクジェットヘッド121を被印刷領域14の長手方向に移動させながら、UV硬化インクIを被印刷領域14に吐出する。
【0063】
これにより、インクジェットヘッド121を一方向に移動させるだけで、容易にカラー層30や凹凸層40,51,52,53を有する印刷面80を形成できる。
【0064】
本実施形態に係るインクジェット印刷方法において、インクジェットヘッド121は長手方向に往復移動可能であり、第1の間引き印刷工程では、インクジェットヘッド121を長手方向に片道移動させながら1層の凹凸層40を形成し、第2の間引き印刷工程では、インクジェットヘッド121を長手方向に片道移動させる毎に1層の凹凸層50を形成する。
【0065】
これにより、インクジェットヘッド121の片道移動によって1層の凹凸層40を形成でき、インクジェットヘッド121の往復移動によって凹凸層40の上に2層の凹凸層50を積み重ねることができるのでサイクルタイムを向上できる。
【0066】
本実施形態に係るインクジェット印刷方法において、インクジェットヘッド121は、所定の方向に並設され、UV硬化インクIを吐出する複数のノズル123を有し、第1の間引き印刷工程及び前記第2の間引き印刷工程では、所定の方向が被印刷領域14の短手方向に対して略平行になる状態でインクジェットヘッド121を被印刷領域14の長手方向に移動させながら、複数のノズル123のうち所定の一部のノズル123を用いて凹凸層40及び凹凸層50を形成する。
【0067】
これにより、インクジェットヘッド121を短手方向に動かすことなく、凹凸層40及び凹凸層50を有する印刷面80を形成できる。
【0068】
本実施形態に係るインクジェット印刷方法において、通常印刷工程、第1の間引き印刷工程、及び第2の間引き印刷工程では、被印刷物10を保持可能なロボットアーム110を用いて、被印刷領域14がインクジェットヘッド121の印刷可能領域に含まれるように、被印刷物10を保持したロボットアーム110を動かす。
【0069】
これにより、インクジェットヘッド121だけでなく、被印刷物10自体を動かすことができ、UV硬化インクIをより精度良く被印刷物10に着弾させることができる。
【0070】
本実施形態に係るインクジェット印刷方法において、UV硬化インクが単色である。
【0071】
これにより、単色であるため、インクジェットヘッド121を一方向にのみ移動させることで凹凸層40及び凹凸層50を形成できる。
【0072】
本実施形態に係るインクジェット印刷方法において、被印刷物10が自動車のインスツルメントパネルである。
【0073】
これにより、インスツルメントパネルのように凹凸が大きい面にも光沢度の低い印刷面80を効率的に形成できる。
【0074】
以上、本発明に関する実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0075】
上記実施形態に係るインクジェット印刷方法により形成された印刷面80は、下地層20と、カラー層30と、凹凸層40と、凹凸層50と、を含んで構成されていたが、下地層20を含んでいなくてもよい。
【0076】
上記実施形態に係るインクジェット印刷方法により形成されたカラー層30の層数は4層であったが、少なくとも1層形成していれば層数は特に限定されない。例えば、カラー層30を3層以下形成しても5層以上形成してもよい。
【0077】
上記実施形態に係るインクジェット印刷方法により形成された凹凸層50の層数は3層であったが、少なくとも1層形成していれば層数は特に限定されない。例えば、凹凸層50の層数を2層としても3層としても5層以上としてもよい。凹凸層50の層数は、目標とする光沢度やUV硬化インクの液滴Iの直径D1、凸部71同士の間隔D2等に応じて適宜調整できる。
【0078】
上記実施形態に係るインクジェット印刷方法では、活性エネルギー線インクとして単色のものを用いたが、インクの種類は特に限定されない。
【符号の説明】
【0079】
10 被印刷物
30、31、32、33、34 カラー層
40、50、51、52、53 凹凸層
71、72,73、74 凸部
121 インクジェットヘッド
D2 間隔
I UV硬化インクの液滴
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B