(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】靴インソールおよび靴
(51)【国際特許分類】
A43B 17/00 20060101AFI20221216BHJP
A43B 17/14 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
A43B17/00 A
A43B17/14
(21)【出願番号】P 2021067721
(22)【出願日】2021-04-13
(62)【分割の表示】P 2016181886の分割
【原出願日】2016-09-16
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植草 貴行
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-052128(JP,A)
【文献】特開2004-350737(JP,A)
【文献】登録実用新案第3083956(JP,U)
【文献】実開平06-017504(JP,U)
【文献】米国特許第05288765(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00~23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
この順番に積層された、
JIS K6253に準拠して、厚さ3mmのプレスシートの状態で測定される、押針接触開始直後のショアーA硬度の値と、押針接触開始から15秒後におけるショアーA硬度の値と、の間の変化量ΔHSが5以上60以下である熱可塑性樹脂組成物の発泡体を主成分としてなる層と、
エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂の発泡体を主成分としてなる衝撃吸収層と、
滑り止め層と、
を含む、靴インソール。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂組成物の発泡体の、JIS K6262に準拠して測定した23℃での圧縮永久歪は、50%以下である、請求項1に記載の靴インソール。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂組成物の発泡体の、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδがピーク値となる温度は、0℃以上45℃未満である、請求項1または2に記載の靴インソール。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂組成物の発泡体の、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδのピーク値は、0.4以上5.0未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の靴インソール。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂組成物の発泡体は、
4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)および
4-メチル-1-ペンテンを除く炭素原子数2~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)を含む4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)であって、
構成単位(i)および(ii)の合計を100モル%としたときに、
構成単位(i)を60モル%以上90モル%以下、
構成単位(ii)を10モル%以上40モル%以下含む、
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)と、
前記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂(B)と、
を含有する組成物の発泡体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の靴インソール。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂組成物の発泡体は、
スチレン系エラストマー(A-2)と、
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂と、
を含有する組成物の発泡体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の靴インソール。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の靴インソールを含む靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴インソールおよび靴に関する。
【背景技術】
【0002】
靴には、歩行者および走者などの靴を使用する者(以下、単に「歩行者等」ともいう。)からの体重を支えて分散し、かつ、地面から歩行者への衝撃を吸収および分散するため、インソールが設けられる。インソールは、エチレン-酢酸ビニル共重合体の発泡体などを含む、弾性を有する合成樹脂などから形成される。
【0003】
インソールには、足裏全体からの体重を分散し、一方で地面からの衝撃を足裏全体に分散するため、歩行者等の足裏の形状に密着することが望まれる。そのため、歩行者等の足裏の形状にあわせて変形できる材料から形成されるインソールが検討されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、低密度ポリエチレンとエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)とを含有する樹脂組成物を発泡および架橋させた樹脂発泡体は、外力によって変形した形状を簡易に保持できるため、インソールに好適に用いられると記載されている。特許文献1によれば、低密度ポリエチレン(A)とエチレン酢酸ビニル共重合体(B)との質量比が(A)/(B)=95/5~90/10であると、圧縮残留ひずみ率および引張強度がいずれも十分に大きく、インソールとして用いたときに、被足裏からかかる体重により上記樹脂発泡体中の気泡が潰れて、上記樹脂組成物が足裏面の形状に沿って塑性変形できると記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、光硬化性樹脂組成物を封入した軟質フィルムを足裏に押し付けた状態で、光の照射により上記光硬化性樹脂組成物を硬化させて、足裏の形状に腑形したインソールを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-238790号公報
【文献】特開2016-131718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明者の知見によると、特許文献1に記載の樹脂発泡体は、気泡が潰れて塑性変形するときに、クッション性が低下し、衝撃吸収性が低下してしまうため、インソールとしたときに地面からの衝撃を吸収しにくく、歩行者等の履き心地を良好に維持することが難しい。また、特許文献2に記載の方法は、軟質フィルムを足裏に押し当てて光を照射せねばならず、製造に手間がかかる。
【0008】
上記の課題に鑑み、本発明は、足裏の形状にあわせて変形可能であり、かつ、衝撃吸収性も高めることができる靴インソールおよびそのような靴インソールを有する靴を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、以下の靴インソールおよび靴に関する。
[1]この順番に積層された、JIS K6253に準拠して、厚さ3mmのプレスシートの状態で測定される、押針接触開始直後のショアーA硬度の値と、押針接触開始から15秒後におけるショアーA硬度の値と、の間の変化量ΔHSが5以上60以下である熱可塑性樹脂組成物の発泡体を主成分としてなる層と、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂の発泡体を主成分としてなる衝撃吸収層と、滑り止め層と、を含む、靴インソール。
[2]前記熱可塑性樹脂組成物の発泡体の、JIS K6262に準拠して測定した23℃での圧縮永久歪は、50%以下である、[1]に記載の靴インソール。
[3]前記熱可塑性樹脂組成物の発泡体の、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδがピーク値となる温度は、0℃以上45℃未満である、[1]または[2]に記載の靴インソール。
[4]前記熱可塑性樹脂組成物の発泡体の、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδのピーク値は、0.4以上5.0未満である、[1]~[3]のいずれかに記載の靴インソール。
[5]前記熱可塑性樹脂組成物の発泡体は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)および4-メチル-1-ペンテンを除く炭素原子数2~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)を含む4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)であって、構成単位(i)および(ii)の合計を100モル%としたときに、構成単位(i)を60モル%以上90モル%以下、構成単位(ii)を10モル%以上40モル%以下含む、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)と、前記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂(B)と、を含有する組成物の発泡体である、[1]~[4]のいずれかに記載の靴インソール。
[6]前記熱可塑性樹脂組成物の発泡体は、スチレン系エラストマー(A-2)と、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂と、を含有する組成物の発泡体である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の靴インソール。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の靴インソールを含む靴。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、足裏の形状にあわせて変形可能であり、かつ、衝撃吸収性も高めることができる靴インソールおよびそのような靴インソールを有する靴が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の靴インソールについてより詳細に説明する。
【0012】
本発明の一実施形態に係る靴インソールは、 JIS K6253に準拠して、厚さ3mmのプレスシートの状態で測定される、押針接触開始直後のショアーA硬度の値と、押針接触開始から15秒後におけるショアーA硬度の値と、の間の変化量ΔHSが5以上60以下である熱可塑性樹脂組成物を主成分としてなる層(以下、単に「凹凸追従層」ともいう。)を含む。
【0013】
靴インソールは、上記凹凸追従層のみからなってもよいが、上記凹凸追従層と他の層とを含む積層体であってもよい。たとえば、靴インソールは、上記凹凸追従層の歩行者等の足裏と接する側などに、滑り止めのため層(以下、単に「滑り止め層」ともいう。)が設けられていてもよい。
【0014】
また、靴インソールは、上記凹凸追従層に加えて、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル重合体、エチレン-酢酸ビニル樹脂共重合体またはポリウレタンなどの発泡体から形成される層(以下、単に「衝撃吸収層」ともいう。)が設けられていてもよい。
【0015】
靴インソールは、上記凹凸追従層、滑り止め層および衝撃吸収層の3つの層を含んでもよい。このとき、滑り止め層が歩行者等の足裏と接する側などの表面に位置すればよく、(凹凸追従層-衝撃吸収層-滑り止め層)の順に積層されてもよいし、(衝撃吸収層-凹凸追従層-滑り止め層)の順に積層されてもよい。また、上述した各層は互いに接することが好ましいが、靴インソールの凹凸追従性を顕著に低下させない限り、これらの層間にさらに別の層を含んでもよい。
【0016】
凹凸追従層の厚みは、0.1mm以上200mm以下であることが好ましく、0.5mm以上50mm以下であることがより好ましく、1mm以上10mm以下であることがさらに好ましい。
【0017】
衝撃吸収層の厚みは、0.5mm以上20mm以下であることが好ましく、1mm以上10mm以下であることがより好ましい。
【0018】
なお、凹凸追従層が上述した熱可塑性樹脂の発泡体であるときは、積層体を構成する層が凹凸追従層と衝撃吸収層との双方に該当することがある。このとき、ΔHSが5以上60以下である熱可塑性樹脂組成物の発泡体を含む層が2層以上あるときは、そのいずれかを凹凸追従層として、他方を衝撃吸収層とすればよい。また、ΔHSが5以上60以下である熱可塑性樹脂組成物の発泡体を含む層と、上記ΔHSの条件を満たさない熱可塑性樹脂組成物の発泡体を含む層とが存在するときは、前者を凹凸追従層として、後者を上記衝撃吸収層とすればよい。
【0019】
A.凹凸追従層
凹凸追従層は、JIS K6253に準拠して、厚さ3mmのプレスシートの状態で測定される、押針接触開始直後のショアーA硬度の値と、押針接触開始から15秒後におけるショアーA硬度の値と、の間の変化量ΔHSが5以上60以下である熱可塑性樹脂組成物を主成分としてなる。ΔHSが5以上である熱可塑性樹脂組成物は、応力の印加によって変形させやすい。また、ΔHSが60以下である熱可塑性樹脂組成物は、応力を印加しても過剰に変形することがなく、歩行者等の足裏の形状に容易に適合することができる。そのため、ΔHSが上記範囲である熱可塑性樹脂組成物は、凹凸追従層としたときに凹凸追従性に優れる。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物のΔHSは10以上60以下であることが好ましく、15以上40以下であることがより好ましい。
【0020】
ショアーA硬度は、厚さ3mmのプレスシートを測定試料として用い、JIS K6253に準拠してショアーA硬度計で測定して求めることができる。ただし、熱可塑性樹脂組成物のショアーA硬度の測定が困難である場合は、代わりにショアーD硬度計を用いて測定したショアーD硬度を、その熱可塑性樹脂組成物のショアーA硬度と推定してもよい。
【0021】
また、上記熱可塑性樹脂組成物は、JIS K6262に準拠して測定した23℃での圧縮永久歪が、50%以下であることが好ましい。上記圧縮永久歪が50%以下である熱可塑性樹脂組成物は、衝撃吸収性が高く、凹凸追従層としたときに、地面からの衝撃を吸収するため、歩行者等の履き心地が良好となりやすい。また、上記圧縮永久歪が50%以下である熱可塑性樹脂組成物は、歩行者等が靴を脱いだ後に元の形状を回復しやすいため、歩行者等の足裏の形状が変化したときでも容易に新たな形状に適合することができる。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物の上記圧縮永久歪は10%以上50%以下であることが好ましく、20%以上50%以下であることがより好ましい。
【0022】
また、上記熱可塑性樹脂組成物は、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδがピーク値となる温度が、0℃以上45℃以下であることが好ましい。上記温度が0℃以上45℃以下である熱可塑性樹脂組成物は、足裏による加圧で変形しやすい。そのため、tanδがピーク値となる温度が上記範囲である熱可塑性樹脂組成物は、凹凸追従層としたときに足裏の形状にあわせて容易に変形する。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物のtanδがピーク値となる温度は25℃以上45℃以下であることが好ましく、28℃以上40℃以下であることがより好ましい。
【0023】
また、上記熱可塑性樹脂組成物は、上記tanδのピーク値が0.4以上5.0以下であることが好ましい。tanδのピーク値が5.0以下である熱可塑性樹脂組成物は、応力の印加によって変形させやすい。また、tanδのピーク値が0.4以上である熱可塑性樹脂組成物は、応力を印加しても過剰に変形することがなく、歩行者等の足裏の形状に容易に適合させることができる。そのため、tanδのピーク値が上記範囲である熱可塑性樹脂組成物は、凹凸追従層としたときに凹凸追従性に優れる。また、tanδのピーク値が0.4以上である熱可塑性樹脂組成物は、応力吸収性が高いため、凹凸追従層としたときに使用者が違和感を覚えにくい。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物のtanδのピーク値は0.6以上4.0以下であることが好ましく、0.8以上3.5以下であることがより好ましい。
【0024】
tanδは、45mm×10mm×3mmの短冊片を測定試料として用い、粘弾性測定装置(たとえば、ANTONPaar社製MCR301)を用いて、10rad/sの周波数で-40~150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定して求めることができる。具体的には、上記測定で得られる貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)との比(G”/G’:損失正接)をtanδとする。0~30℃の範囲でtanδがピーク値(最大値)となる際の温度を、上記tanδがピーク値となる温度とし、その際のtanδの値を上記tanδのピーク値とする。なお、上記ピークは、熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度に起因すると考えられる。
【0025】
また、上記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D 412に準拠して測定される引裂強度が、10N/mm以上であることが好ましい。上記引裂強度が10N/mm以上である熱可塑性樹脂組成物は、凹凸追従層としたときに歩行または走行中の破損が生じにくい。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物の上記引裂強度は20N/mm以上であることが好ましく、24N/mm以上であることがより好ましい。
【0026】
また、上記熱可塑性樹脂組成物は、JIS K7222に準拠して測定される比重が、0.03以上1.0以下であることが好ましい。上記比重が0.03以上である熱可塑性樹脂組成物は、凹凸追従層としたときに歩行または走行中の破損が生じにくい。上記比重が1.0以下である熱可塑性樹脂組成物は、反発弾性が高く、かつ軽量であるため、凹凸追従層としたときに、歩行者等に重量感を感じさせにくく、歩行者等の履き心地を高めやすい。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物の上記比重は0.05以上1.0以下であることがより好ましく、0.05以上0.9以下であることがさらに好ましく、0.08以上0.5以下であることが特に好ましい。
【0027】
比重は、インソールに成形した上記熱可塑性樹脂組成物の端部(側面)から20mm以上内部、かつ、上下の表面から2.5mm以上内部から切り取ったサンプルを用いて測定する。このとき、熱可塑性樹脂組成物の均一性をより高める観点からは、異なる5箇所から切り取ったサンプルを測定して得られた比重のうち、最大値と最小値との差が0.08以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。
【0028】
また、上記熱可塑性樹脂組成物は、融点(Tm)が50℃以上160℃以下であるか、または観測されないことが好ましい。融点(Tm)が50℃以上160℃以下であるか、または観測されないである熱可塑性樹脂組成物は、成形が容易である。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物の融点(Tm)は80℃以上160℃以下であるか、または観測されないことが好ましく、観測されないであることがより好ましい。
【0029】
融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)(たとえば、セイコーインスツルメンツ社製DSC220C)を用いて測定することができる。このとき、7~12mg程度の熱可塑性樹脂組成物をアルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/分で200℃まで加熱し、完全融解させるために試料を200℃で5分間保持し、次いで10℃/分で-50℃まで冷却し、-50℃で5分間静置した後、10℃/分で200℃まで再度加熱する。この再度の(2度目の)加熱で測定されるピーク値温度を、融点(Tm)とする。
【0030】
また、上記熱可塑性樹脂組成物は、JIS K6758に準拠して、温度230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1g/10分以上100g/10分以下であることが好ましい。上記MFRが上記範囲である熱可塑性樹脂組成物は、加熱時の流動性が高く、成形が容易である。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物の上記MFRは1以上50以下であることが好ましく、4以上40以下であることがより好ましい。
【0031】
また、上記熱可塑性樹脂組成物は、発泡体でも未発泡体でもよいが、クッション性を高めて衝撃吸収性を高めやすいため、発泡体であることが好ましい。
【0032】
上記熱可塑性樹脂組成物は、上述した物性を満たすものであれば限定されないが、例えば、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)またはスチレン系エラストマー(A-2)と、上記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂(B)と、を含有する組成物とすることができる。
【0033】
1.4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)
1-1.4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の構成
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)および4-メチル-1-ペンテンを除く炭素原子数2~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)を含む。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、任意に、非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)を含んでもよい。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、1種単独で、または2種類以上を組み合せて用いることができる。
【0034】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、構成単位(i)、構成単位(ii)および構成単位(iii)の合計を100モル%としたときに、構成単位(i)を60モル%以上90モル%以下、構成単位(ii)を10モル%以上40モル%以下、構成単位(iii)を0モル%以上10モル%以下含む。
【0035】
なお、構成単位(i)の割合の下限値は、60モル%であるが、67モル%であることが好ましく、70モル%であることがより好ましい。一方、構成単位(ii)の割合の上限値は、90モル%であるが、86モル%であることが好ましく、80モル%であることがより好ましい。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)が含む構成単位(ii)の割合が上記下限値以上であると、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)のtanδがピーク値となる温度が室温付近になるため、熱可塑性樹脂組成物のtanδがピーク値となる温度も上述した範囲に調整しやすい。また、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)が含む構成単位(i)の割合が上記上限値以下であると、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)が適度な柔軟性を有するため、熱可塑性樹脂組成物のΔHSを上述した範囲に調整しやすい。
【0036】
当然ながら、このとき、構成単位(ii)の割合の上限値は、40モル%であるが、33モル%であることが好ましく、30モル%であることがより好ましい。一方、構成単位(ii)の割合の下限値は、10モル%であるが、14モル%であることが好ましく、20モル%であることがより好ましい。
【0037】
構成単位(ii)を導くα-オレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および1-エイコセンなどを含む炭素原子数2~20(好ましくは炭素原子数2~15、より好ましくは炭素原子数2~10)の直鎖状のα-オレフィン、ならびに、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、および3-エチル-1-ヘキセンなどを含む炭素原子数5~20(好ましくは炭素原子数5~15)の分岐状のα-オレフィンが挙げられる。これらの中でもエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。構成単位(ii)は、これらのうち1つの化合物から導かれてもよいし、2以上の化合物から導かれてもよい。
【0038】
構成単位(iii)を導く非共役ポリエンの例には、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、および4-エチリデン-1,7-ウンデカジエンなどを含む鎖状非共役ジエン、メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-イソブテニル-2-ノルボルネン、シクロペンタジエン、およびノルボルナジエンなどを含む環状非共役ジエン、ならびに、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン、および4-エチリデン-8-メチル-1,7-ナノジエンなどを含むトリエンなどが含まれる。これらのうち、特に構成単位(ii)を導くα-オレフィンがプロピレンであるときは、架橋効率を高める観点からは、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)および5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)が好ましい。構成単位(iii)は、これらのうち1つの化合物から導かれてもよいし、2以上の化合物から導かれてもよい。
【0039】
ただし、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、実質的に構成単位(i)および構成単位(ii)からなることが好ましい。
【0040】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、以下の要件(a)、(b)および(c)から選ばれる1以上の要件を満たすことが好ましい。
要件(a);
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]は、0.1dL/g以上5.0dL/g以下であることが好ましく、0.5dL/g以上4.0dL/g以下であることがより好ましく、0.5dL/g以上3.5dL/g以下であるさらに好ましい。上記極限粘度[η]が上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、シート状の熱可塑性樹脂組成物への成形が容易である。
【0041】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の上記極限粘度[η]は、重合による製造中に水素を添加して分子量や重合活性を制御して、上記範囲に調整することができる。
【0042】
要件(b);
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(分子量分布:Mw/Mn)は、1.0以上3.5であることが好ましく、1.2以上3.0以下であることがより好ましく、1.5以上2.8以下であることがさらに好ましい。上記Mw/Mnが上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、低分子量、低立体規則性ポリマーによる成形性の低下が生じにくく、シート状の熱可塑性樹脂組成物への成形が容易である。
【0043】
また、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、500以上10,000,000以上であることが好ましく、1,000以上5,000,000以下であることがより好ましく、1,000以上2,500,000以下であることがさらに好ましい。
【0044】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)のMw/MnおよびMwは、たとえばメタロセン触媒を使用することで、上記範囲に調整することができる。
【0045】
上記MwおよびMw/Mnは、たとえば、液体クロマトグラフとしてWaters製ALC/GPC 150-C plus型(示唆屈折計検出器一体型)を用い、カラムとして東ソー株式会社製GMH6-HT×2本およびGMH6-HTL×2本を直列接続し、移動相媒体としてo-ジクロロベンゼンを用い、流速1.0ml/分、140℃で測定して得られるクロマトグラムを、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析して、求めることができる。
【0046】
要件(c);
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)のASTM D 1505に準拠して測定される密度は、870kg/m3以上830kg/m3以下であることが好ましく、865kg/m3以上830kg/m3以下であることがより好ましく、855kg/m3以上830kg/m3以下であることがさらに好ましい。上記密度が上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、軽量であるため、歩行者等に重量感を感じさせにくく、歩行者等の履き心地を低下させにくい凹凸追従層を製造しやすい。
【0047】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の上記密度は、構成単位(i)~構成単位(iii)の組成比によって適宜調整することができる。
【0048】
なお、上記要件(a)~要件(c)に係る極限粘度[η]、Mw/Mn、Mwおよび密度は、上述した熱可塑性樹脂組成物と同様の測定で求めることができる。
【0049】
1-2.4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の製造方法
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、上記構成単位(i)~構成単位(iii)を導くモノマーを、マグネシウム担持型チタン触媒またはメタロセン触媒などの適当な触媒の存在下で重合させて,製造することができる。重合は、溶解重合および懸濁重合などを含む液相重合法、ならびに気相重合法などから適宜選択して行うことができる。
【0050】
液相重合法では、液相を構成する溶媒として不活性炭化水素溶媒を用いることができる。上記不活性炭化水素の例には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、および灯油などを含む脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、およびメチルシクロヘキサンなどを含む脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどを含む芳香族炭化水素、ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、およびテトラクロロメタンなどを含むハロゲン化炭化水素、ならびにこれらの混合物などが含まれる。
【0051】
また、液相重合法では、上記構成単位(i)~構成単位(iii)を導くモノマー自身を溶媒とする塊状重合とすることもできる。
【0052】
なお、上記構成単位(i)~構成単位(iii)を導くモノマーの共重合を段階的に行うことにより、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)を構成する構成単位(i)~構成単位(iii)の組成分布を適当に制御することもできる。
【0053】
重合温度は、-50℃以上200℃以下が好ましく、0℃以上100℃以下がより好ましく、20℃以上100℃以下がさらに好ましい。
【0054】
重合圧力は、常圧以上10MPaゲージ圧であることが好ましく、常圧以上5MPaゲージ圧であることがより好ましい。
【0055】
重合の際に、生成するポリマーの分子量や重合活性を制御する目的で水素を添加してもよい。添加される水素の量は、上記構成単位(i)~構成単位(iii)を導くモノマーの合計量1kgに対して、0.001NL以上100NL以下程度が適当である。
【0056】
2.スチレン系エラストマー(A-2)
2-1.スチレン系エラストマー(A-2)の構成
スチレン系エラストマー(TPS)(A-2)の例には、硬質部(結晶部)となるポリスチレンブロックと軟質部となるイソプレンまたはブタジエンなどの共役ジエン系モノマーブロックとのブロック共重合体(SBC)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合(SBS)、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレン共重合体(SIB)などが含まれる。スチレン系エラストマー(A-2)は、1種単独で、または2種類以上を組み合せて用いることができる。
【0057】
上記ブロック共重合体(SBC)またはスチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SIS)は、共役ジエンがイソプレンである場合、中間ブロックがビニル-ポリイソプレンであることが好ましい。このとき、中間ブロックを構成する共役ジエン由来の構成要素は水素添加されていてもよい。そのようなスチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SIS)の例には、株式会社クラレ製ハイブラー5127(「ハイブラー」は同社の登録商標)(スチレン含有量20wt%、tanδピーク値=1.1、ピーク値温度=19℃)」などが含まれる。
【0058】
また、上記ブロック共重合体(SBC)またはスチレン・ブタジエン・スチレン共重合(SBS)は、共役ジエンがブタジエンである場合、ブタジエン由来の構成要素は水素添加されていてもよい。また、このとき、軟質部となるブタジエンブロックはブタジエンとスチレンとの共重合体であってもよい。このようなスチレン・ブタジエン・スチレン共重合(SBS)の例には、旭化成ケミカルズ株式会社製S.O.E.L609(「S.O.E」は同社の登録商標)(スチレン含量=67wt%、tanδピーク値=1.3、ピーク値温度=19℃)、S.O.E.L606(スチレン含量=51wt%、tanδピーク値=1.7、ピーク値温度=8℃)、S.O.E.S1605(スチレン含量=67wt%、tanδピーク値=1.5、ピーク値温度=17℃)などが含まれる。
【0059】
なお、スチレン系エラストマー(A-2)も、上述した要件(a)、(b)および(c)から選ばれる1以上の要件を満たすことが好ましい。
【0060】
2-2.スチレン系エラストマー(A-2)の製造方法
スチレン系エラストマー(TPS)(A-2)は、重合体を構成する構成単位を導くスチレンおよびその他の共役ジエンなどを、アルキルリチウム化合物を開始剤とするアニオン重合により製造することができる。
【0061】
上記アルキルリチウム化合物の例には、メチルリチウム、エチルリチウム、ペンチルリチウム、およびブチルリチウムなどの炭素数1以上10以下のアルキル基を有するアルキルリチウム、ナフタレンジリチウム、ならびにジチオヘキシルベンジルリチウムなどが含まれる。
【0062】
重合方法の例には、(1)アルキルリチウム化合物を開始剤としてスチレンに続いて共役ジエンを逐次重合し、次いでスチレンを逐次重合する方法、(2)スチレンに続いて共役ジエンを重合し、これをカップリング剤によりカップリングする方法、などが含まれる。上記カップリング剤の例には、ジクロロメタン、ジブロモメタン、ジブロモベンゼンなどが含まれる。
【0063】
重合の際には、反応を適切に制御するために溶媒を使用することが好ましい。上記溶媒の例には、重合開始剤に対して不活性な有機溶媒、例えばヘキサン、へプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、およびベンゼン等の炭素数が6~12の脂肪族高水素、脂環式炭化水素、ならびに芳香族炭化水素などが含まれる。
【0064】
重合温度は-70℃以上80℃以下であることが好ましく、重合時間は0.5時間以上50時間以下であることが好ましい。
【0065】
ブロック共重合体のtanδのピーク値やピーク値温度、ΔHSは、イソプレン、ブタジエンの3,4結合、又は1,2結合の数およびスチレンブロックとイソプレン、ブタジエンブロックの各分子量を調整する方法等により調整することが可能であり、共触媒としてルイス塩基を用いることにより比較的容易に調整することができる。ルイス塩基としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、トリエチルアミン、N,N,N‘N-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N-メチルモルホリンなどのアミン化合物などが挙げられる。これらのルイス塩基は、重合開始剤のリチウムのモル数に対して0.1~1000倍用いることが好ましい。また、ピーク値温度やピーク値は水素添加の有無や水素転化率を調整することによっても調整可能である。
【0066】
3.熱可塑性樹脂(B)
3-1.熱可塑性樹脂(B)の構成
熱可塑性樹脂(B)は、上記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)またはスチレン系エラストマー(A-2)以外の熱可塑性樹脂であればよい。
【0067】
熱可塑性樹脂(B)は、 また、上記熱可塑性樹脂組成物は、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδがピーク値となる温度が、0℃未満であることが好ましく、-5℃未満であることがより好ましく、-10℃未満であることがさらに好ましく、-30℃未満であることが特に好ましい。tanδがピーク値となる温度の下限は特に限定されないが、例えば-60℃とすることができる。このような熱可塑性樹脂からは、tanδがピーク値となる温度が0℃以上45℃以下である熱可塑性樹脂組成物を製造しやすい。
【0068】
熱可塑性樹脂組成物が含有する4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)またはスチレン系エラストマー(A-2)と熱可塑性樹脂(B)との合計量を100質量部としたとき、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)またはスチレン系エラストマー(A-2)の含有量の上限値は、90質量部であることが好ましく、75質量部であることがより好ましく、60質量部であることがさらに好ましく、50質量部であることが特に好ましい。また、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)またはスチレン系エラストマー(A-2)の含有量の下限値は、10質量部であることが好ましく、15質量部であることがより好ましく、25質量部であることがさらに好ましく、30質量部であることが特に好ましい。このような組成比とすると、熱可塑性樹脂組成物の柔軟性、応力緩和性および凹凸追従性をより高めることができる。
【0069】
言い換えると、熱可塑性樹脂(B)含量の下限値は、10質量部であることが好ましく、25質量部であることがより好ましく、40質量部であることがさらに好ましく、50質量部であることが特に好ましく、上限値は、90質量部であることが好ましく、85質量部であることがより好ましく、75質量部であることがさらに好ましく、70質量であることが特に好ましい。
【0070】
熱可塑性樹脂(B)は、オレフィン系樹脂(B-1)、オレフィン系エラストマー(B-2)、スチレン系エラストマー(B-3)、または熱可塑性エラストマー組成物(B-4)であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂(B)は、上記以外の熱可塑性樹脂(B-5)であってもよい。これらの熱可塑性樹脂(B)は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
3-1-1.オレフィン系樹脂(B-1)
オレフィン系樹脂(B-1)の例には、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするエチレン系共重合体、プロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするプロピレン系共重合体などが含まれる。オレフィン系樹脂(B-1)は、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、環状オレフィン共重合体、および塩素化ポリオレフィンなどが好ましい。
【0072】
3-1-2.オレフィン系エラストマー(B-2)
オレフィン系エラストマー(B-2)の例には、オレフィン系ブロック共重合体から形成されるエラストマーを使用することができる。例えば硬質部となるポリプロピレン等の結晶性の高いポリマーを形成するポリオレフィンブロックと、軟質部となる非晶性を示すモノマー共重合体とのブロック共重合体が挙げられ、具体的には、オレフィン(結晶性)・エチレン・ブチレン・オレフィンブロック共重合体、ポリプロピレン・ポリオレフィン(非晶性)・ポリプロピレンブロック共重合体などが含まれる。オレフィン系エラストマー(B-2)の市販品の例には、JSR株式会社製DYNARON(「DYNARON」は同社の登録商標)、三井化学株式会社製タフマー(「タフマー」は同社の登録商標)、ノティオ(「ノティオ」は同社の登録商標)、ダウケミカル株式会社製ENGAGE(「ENGAGE」は同社の登録商標)、VERSIFY(「VERSIFY」は同社の登録商標)、エクソンモービルケミカル株式会社製Vistamaxx(「Vistamaxx」は同社の登録商標)などが含まれる。
【0073】
3-1-3.スチレン系エラストマー(B-3)
スチレン系エラストマー(B-3)の例には、硬質部(結晶部)となるポリスチレンブロックと、軟質部となるジエン系モノマーブロックとのブロック共重合体(SBS)、水添スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(HSBR)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIBS)、およびスチレン・イソブチレン共重合体(SIB)などが含まれる。
【0074】
水添スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(HSBR)の市販品の例には、JSR株式会社製ダイナロン(「ダイナロン」は同社の登録商標)などが含まれる。
【0075】
スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)は、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)に水素添加してなるものである。SISの市販品の例には、JSR株式会社製JSR SIS(「JSR SIS」は同社の登録商標)、株式会社クラレ製ハイブラー(「ハイブラー」は同社の登録商標)、およびシェル株式会社製クレイトンD(「クレイトン」は同社の登録商標)などが含まれる。
【0076】
SEPSの市販品の例には、株式会社クラレ製セプトン(「セプトン」は同社の登録商標)、およびシェル株式会社製クレイトンなどが含まれる。
【0077】
SEBSの市販品の例には、旭化成株式会社製タフテック(「タフテック」は同社の登録商標)、およびシェル株式会社製クレイトンなどが含まれる。
【0078】
また、SIBSおよびSIBの市販品の例には、株式会社カネカ製シブスター(「シブスター」は同社の登録商標などが含まれる。
【0079】
3-1-4.熱可塑性エラストマー組成物(B-4)
熱可塑性エラストマー組成物(B-4)は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]とポリオレフィン樹脂[II]とを含む混合物を動的架橋して得られる組成物である。
【0080】
3-1-4-1.エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、エチレンから導かれる構成単位(I-a)と、α-オレフィンから導かれる構成単位(I-b)とを、(I-a)/(I-b)が50/50以上95/5以下であることが好ましく、60/40以上80/20以下であることがより好ましく、65/35以上75/25以下であることがさらに好ましい。
【0081】
また、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]が含有する、非共役ポリエン量から導かれる構成単位(I-c)の含有量は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]の全質量に対して2質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0082】
上記α-オレフィンは、炭素原子数3~20のα-オレフィンであることが好ましい。このようなα-オレフィンの例には、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、および12-エチル-1-テトラデセンなどが含まれる。上記α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、および1-オクテンが好ましく、プロピレンがより好ましい。これらα-オレフィンは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
上記非共役ポリエンの例には、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、および4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン、メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-イソブテニル-2-ノルボルネン、シクロペンタジエン、およびノルボルナジエン等の環状非共役ジエン、ならびに、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン、および4-エチリデン-8-メチル-1,7-ナノジエン等のトリエンなどが含まれる。上記非共役ポリエンは、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)および5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)が好ましい。
【0084】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、非共役ポリエンから導かれる構成単位(I-c)の含有量の一指標であるヨウ素価が1以上50以下であることが好ましく、5以上40以下であることがより好ましく、10以上30以下であることがさらに好ましい。
【0085】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]が1dl/g以上10dl/g以下であることが好ましく、1.5dl/g以上8dl/g以下であることがより好ましい。
【0086】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、その製造の際に軟化剤好ましくは鉱物油系軟化剤を配合した、いわゆる油展ゴムであってもよい。上記鉱物油系軟化剤の例には、公知の鉱物油系軟化剤、たとえばパラフィン系プロセスオイルなどが含まれる。
【0087】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]のムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は、10以上250以下であることが好ましく、30以上150以下であることがより好ましい。エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、単独で、あるいは二種以上のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を用いてもよい。 エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、従来公知の方法により製造することができる。
【0088】
3-1-4-2.ポリオレフィン樹脂[II]
ポリオレフィン樹脂[II]は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどのα-オレフィンの単独重合体であるか、または、二種以上の上記α-オレフィンの共重合体であって、主たるα-オレフィンの含有量が90モル%以上の共重合体である。ポリオレフィン樹脂[II]は、融点(Tm)が70℃以上200℃以下で在ることが好ましく、80℃以上170℃以下であることが好ましい。
【0089】
ポリオレフィン樹脂[II]は、主鎖に不飽和結合を実質的に有さないことが好ましい。
【0090】
ポリオレフィン樹脂[II]は、単独で、あるいは二種以上のオレフィン系重合体を用いてもよい。
【0091】
これらのポリオレフィン樹脂[II]の中でも、プロピレン系重合体(II-1)、エチレン系重合体(II-2)が好ましい。
【0092】
3-1-4-2-1.プロピレン系重合体(II-1)
プロピレン系重合体(II-1)は、プロピレンの単独重合体、プロピレンと10モル%以下の炭素数2~10のα-オレフィンとのランダム共重合体、または、プロピレンの単独重合体と非晶性あるいは低結晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体とのブロック共重合体である。上記炭素数2~10のα-オレフィンの例には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、および4-メチル-1-ペンテンが含まれる。プロピレン系重合体(II-1)は、融点(Tm)が120℃以上170℃以下であることが好ましく、145℃以上165℃以下であることがより好ましい。
【0093】
プロピレン系重合体(II-1)は、ポリプロピレン樹脂として市販されているものとすることができる。
【0094】
プロピレン系重合体(II-1)は、立体構造がアイソタクチック構造であるものが好ましいが、シンジオタクチック構造のものやこれらの構造の混ざったもの、あるいは、一部アタクチック構造を含むものであってもよい。
【0095】
プロピレン系重合体(II-1)は、温度230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレート(MFR)0.05g/10分以上100g/10分以下であることが好ましく、0.1g/10分以上50g/10分以下であることがより好ましい。
【0096】
プロピレン系重合体(II-1)は、種々公知の重合方法によって重合される。
【0097】
3-1-4-2-2.エチレン系重合体(II-2)
エチレン系重合体(II-2)は、エチレンの単独重合体、または、エチレンと10モル%以下の炭素数2~10のα-オレフィンとのランダム共重合体である。上記炭素数2~10のα-オレフィンの例には、プロピレン、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、および4-メチル-1-ペンテンが含まれる。エチレン系重合体(II-2)は、融点(Tm)が80℃以上150℃以下であることが好ましく、90℃以上130℃以下であることがより好ましい。
【0098】
エチレン系重合体(II-2)は、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、または高密度ポリエチレンとして市販されているものとすることができる。
【0099】
エチレン系重合体(II-2)は、温度230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレート(MFR)0.05g/10分以上100g/10分以下であることが好ましく、0.1g/10分以上50g/10分以下であることがより好ましい。
【0100】
エチレン系重合体(II-2)は、種々公知の重合方法によって重合される。
【0101】
3-1-5.その他の熱可塑性樹脂(B-5)
熱可塑性樹脂(B)は、上記以外の熱可塑性樹脂(B-5)であってもよい。このような熱可塑性樹脂(B-%)の例には、脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、およびナイロン612)などを含むポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系エラストマー、ビニル芳香族系樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、およびAS樹脂などを含むポリエステル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体、公知のアイオノマー、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、フッ素系樹脂ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイドポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ならびにポリエーテルスルホンなどが含まれる。
【0102】
3-2.熱可塑性樹脂(B)の製造方法
上述したオレフィン系樹脂(B-1)、オレフィン系エラストマー(B-2)、スチレン系エラストマー(B-3)、およびその他の熱可塑性樹脂(B-5)は、公知の重合方法でこれらを構成する構成単位を導くモノマーを重合することにより得られる。
【0103】
熱可塑性エラストマー組成物(B-4)は、上述したエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]とポリオレフィン樹脂[II]とを含む混合物、好ましくはエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]とポリオレフィン樹脂[II]とを[I]/[II](質量比)が90/10以上5/95以下、より好ましくは70/30以上10/90以下の範囲で含む混合物、あるいは、必要に応じて公知の軟化剤などを所定量含む混合物(前駆体)を動的架橋することにより得られる。動的架橋を行う際には、公知の架橋剤の存在下、あるいは上記架橋剤と公知の架橋助剤の存在下に、動的に熱処理するのがよい。ここに、「動的に熱処理する」とは、溶融状態で混練することをいう。
【0104】
動的な熱処理は、非開放型の装置中で行われることが好ましい。また、動的な熱処理は、窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。熱処理の温度は、ポリオレフィン樹脂[II]の融点以上300℃以下の範囲であり、150℃以上270℃以下が好ましく、170℃以上250℃以下がより好ましい。混練時間は、1分間以上20分間以下であることが好ましく、1分間以上10分間以下であることがよりこのましい。このとき、剪断速度で10sec-1以上50,000sec-1以下、好ましくは100sec-1以上10,000sec-1以下の剪断力が加えられることが好ましい。
【0105】
混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー(たとえばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機等を用いることができるが、非開放型の装置が好ましい。
【0106】
4.その他の成分
熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、上述した以外の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0107】
たとえば、熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、および軟化剤等の添加剤を含んでもよい。
【0108】
上記軟化剤の例には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルトおよびワセリンなどを含む石油系物質、コールタールおよびコールタールピッチなどを含むコールタール類、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油および椰子油などを含む脂肪油、トール油、蜜ロウ、カルナウバロウおよびラノリンなどを含むロウ類、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-水酸化ステアリン酸、モンタン酸、オレイン酸およびエルカ酸などを含む脂肪酸またはその金属塩、石油樹脂、クマロンインデン樹脂およびアタクチックポリプロピレンなどを含む合成高分子、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートおよびジオクチルセバケートなどを含むエステル系可塑剤、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエンまたはその変性物もしくは水添物、ならびに液状チオコールなどを含む公知の軟化剤が含まれる。
【0109】
前記充填剤の例には、マイカ、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、グラファイト、ステンレス、アルミニウムなどの粉末充填剤;ガラス繊維や金属繊維などを含む繊維状充填剤、親水性の層状粘土鉱物、および公知の特定形状(層状を除く)の親水性無機化合物などが含まれる。
【0110】
上記親水性の層状粘土鉱物の例には、2次元に広がる層が複数積層されたフィロ珪酸塩鉱物、たとえば、スメクタイトなどが含まれる。スメクタイトは、モンモリロン石群鉱物である。スメクタイトの例には、モンモリロン石(モンモリロンナイト)、マグネシアンモンモリロン石、テツモンモリロン石、テツマグネシアンモンモリロン石、バイデライト、アルミニアンバイデライト、ノントロン石、アルミニアンノントロナイト、サポー石(サポナイト)、アルミニアンサポー石、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、およびベントナイトなどが含まれる。
【0111】
上記親水性の層状粘土鉱物の例には、バーミキュル石(バーミキュライト)、ハロイサイト、膨潤性マイカ、および黒鉛などが含まれる。このような親水性の層状粘土鉱物の市販品の例には、クニミネ工業社製クニピアシリーズ(モンモリロナイト)、ホージュン社製ベンゲルシリーズ(ベントナイト)、およびコープケミカル社製ソマシフMEシリーズ(膨潤性マイカ)などを含む天然品、ならびに、クニミネ工業社製スメクトン(サポナイト)、コープケミカル社製ルーセンタイトSWNシリーズ(ヘクトライト)、およびロックウッドホールディングス社製ラポナイト(ヘクトライト)などの合成品などが含まれる。一般に、合成品は天然品よりも最大長さが小さいため小さい油滴を得ることができるため、上記親水性の層状粘土鉱物は、合成品が好ましい。
【0112】
前記難燃剤の例には、アンチモン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛、グァニジン系難燃剤、ジルコニウム系難燃剤等の無機化合物、ポリリン酸アンモニウム、エチレンビストリス(2-シアノエチル)ホスフォニウムクロリド、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド等のリン酸エステル及びその他のリン化合物、塩素化パラフィン、塩素化ポリオレフィン、パークロロシクロペンタデカン等の塩素系難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド、テトラブロモビスフェノールA誘導体、テトラブロモビスフェノールS、およびテトラブロモジペンタエリスリトール等の臭素系難燃剤、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0113】
これらの添加剤の使用量の合計は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)またはスチレン系エラストマー(A-2)と、上記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂(B)と、の合計を100質量部として、0.001~50質量部とすることが好ましい。
【0114】
5.熱可塑性樹脂組成物の製造方法
上記熱可塑性樹脂組成物は、公知の方法で製造することができる。たとえば、上述した4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)またはスチレン系エラストマー(A-2)と、上記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂(B)と、任意に含まれる上記その他の成分と、を混合して、熱可塑性樹脂組成物とすることができる。このとき、上記各樹脂の溶融温度以上に加熱して混合してもよい。
【0115】
B.衝撃吸収層
1.衝撃吸収層の構成
上記衝撃吸収層は、JIS K6253に準拠して、厚さ3mmのプレスシートの状態で測定される、押針接触開始直後のショアーA硬度の値が40未満である樹脂組成物を主成分とすることが好ましい。上記ショアーA硬度の価が40未満である樹脂組成物は、クッション性および衝撃吸収性が高い。そのため、このような樹脂組成物を主成分とする層を含む積層体は、凹凸追従層による高い凹凸追従性に加えて、上記衝撃吸収層によってクッション性および衝撃吸収性がより高められる。
【0116】
上記衝撃吸収層を形成する発泡体は、公知の熱可塑性樹脂またはアイオノマーの発泡体とすることができる。上記熱可塑性術の例には、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル樹脂、ゴム、ポリウレタン、およびアクリル系共重合体などが含まれる。これらのうち、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル樹脂、ゴム、およびポリウレタンなどが好ましい。
【0117】
上記オレフィン系樹脂の例には、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするエチレン系共重合体、プロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、ならびに、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするプロピレン系共重合体などが含まれる。これらのうち、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、環状オレフィン共重合体、および塩素化ポリオレフィンが好ましい。
【0118】
上記スチレン系樹脂の例には、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、水添スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(HSBR)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIBS)、およびスチレン・イソブチレン共重合体(SIB)などが含まれる。
【0119】
上記アクリル系共重合体は、アクリルモノマー由来の構成単位を含む共重合体である。上記アクリル形共重合体の例には、アクリル酸エステルモノマーと他のモノマーとからなる共重合体などが含まれる。上記アクリル酸エステルモノマーの例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピルエステルなどの、アクリル酸と、炭素数1~10のアルキルまたはヒドロキシアルキルのエステル化合物が含まれる。上記他のモノマーの例には、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、エチレン、スチレン、アクロレイン、2-クロロエチルアクリレート、ブタジエン、およびN-ビニルピロリドンなどが含まれる。上記他のモノマーは、得られる共重合体の柔軟性や耐候性等を向上させるなどの観点から選択することができる。上記アクリル酸エステルモノマーと、他のモノマーとの共重合の比率は適宜選択できるが、アクリル酸エステルモノマー:他のモノマーのモル比が1:90~90:1程度とすることが好ましい。
【0120】
上記ゴムは、ゴム弾性を示すポリマーであれば特に限定されない。上記ゴムの例には、天然ゴム、ならびにイソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、およびウレタンゴムなどの各種合成ゴムなどが含まれる。特に、常温ではゴムとしての性質を示し、高温では熱可塑性を示す熱可塑性エラストマーは、成形作業や気泡構造の制御等が容易であるため、特に好ましい。このような熱可塑性エラストマーの例には、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体などを含むオレフィン系エラストマー、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、およびスチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレン共重合体などを含むスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ならびにポリウレタン系エラストマーなどが含まれる。これらのポリマーは単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0121】
上記オレフィン系エラストマーの例には、オレフィン系ブロック共重合体からなるエラストマーが含まれる。上記オレフィン系エラストマーの例には、硬質部となるポリプロピレン等の結晶性の高いポリマーを形成するポリオレフィンブロックと、軟質部となる非晶性を示すモノマー共重合体とのブロック共重合体が挙げられる。このようなブロック共重合体の例には、オレフィン(結晶性)・エチレン・ブチレン・オレフィンブロック共重合体、およびポリプロピレン・ポリオレフィン(非晶性)・ポリプロピレンブロック共重合体などが含まれる。上記ブロック共重合体の市販品の例には、JSR株式会社製DYNARON(ダイナロン)、三井化学株式会社製タフマーおよびノティオ、ダウケミカル株式会社製ENGAGEおよびVERSIFY、ならびにエクソンモービルケミカル株式会社製Vistamaxxなどが含まれる。
【0122】
これらのうち、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂およびウレタン樹脂が好ましく、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂およびポリウレタン樹脂がより好ましい。
【0123】
上記発泡体は、見かけ密度が、0.01kg/m3以上0.8kg/m3以下であることが好ましい。見かけ密度が0.01kg/m3以上である発泡体は、強度および衝撃吸収性がより高いため、凹凸追従層としたときに歩行者等の履き心地を高めやすい。見かけ密度が0.8kg/m3以下である発泡体は軽量であるため、歩行者等に重量感を感じさせにくく、歩行者等の履き心地を低下させにくい凹凸追従層を製造しやすい。上記観点からは、上記発泡体の見かけ密度は0.1kg/m3以上0.5以下kg/m3であることがより好ましい。
【0124】
1-2.衝撃吸収層の製造方法
発泡体は、上記熱可塑性樹脂またはアイオノマーに無機系または有機系の化学発泡剤を所定量添加して成形して、製造することができる。
【0125】
上記無機系発泡剤の例には、重炭酸ナトリウム(重曹)、重炭酸アンモニウム、および炭酸アンモニウムなどが含まれる。
【0126】
上記有機系発泡剤の例には、N,N'-ジニトロソ・ペンタメチレン・テトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビス・イソブチロニトリル、ベンゼン・スルホニル・ヒドラジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエン・スルホニル・ヒドラジド、p-トルエン・スルホニル・セミカルバジド、およびバリウム・アゾジカルボキシレートなどが含まれる。
【0127】
また、発泡体は、水(水蒸気)および発泡剤を利用した水発泡によって製造してもよい。
【0128】
上記発泡剤の例には、結晶水含有無機物、およびカリウムアイオノマーなどの吸湿性樹脂などが含まれる。
【0129】
発泡の際には、分解温度の調整や消臭などの観点から、脂肪酸金属塩、金属酸化物、および尿素などの発泡助剤を併用することが望ましい。
【0130】
C.滑り止め層
滑り止め層は、布地、紙、レーヨンおよび綿などの天然繊維から形成されてもよいし、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのオレフィン重合体、ポリエステルテレフタラート(PET)などのポリエステル、ならびにエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)などのビニルアルコール系樹脂などを含む合成繊維、天然皮革および人造皮革などから形成される。滑り止め層は、防臭性を高めるための防臭剤や抗菌性を高めるための抗菌剤を保持していてもよい。滑り止め層は、通気性を高めるためメッシュ地としていてもよい。
【0131】
D.靴インソールの製造方法
靴インソールは、上述の各層を接着させて、製造することができる。これらの接着方法は特に限定されず、凹凸追従層、滑り止め層および衝撃吸収層の材料によって適宜選択することができる。接着方法の例には、接着剤による接着、熱融着、超音波融着、縫合などが含まれる。
【0132】
E.靴
靴インソールは、靴の内部底面の形状に合わせて成形されて、上記靴の内部底面に配置されることができる。靴インソールは、靴と一体的に形成されてもよいし、靴から着脱自在に形成されていてもよい。靴インソールを含む靴は、靴インソールが足裏の形状にあわせて容易に変形可能であり、かつ、衝撃吸収性も高いため、歩行者等の履き心地に優れる。
【実施例】
【0133】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に言及しない限り「部」は質量部を意味する。
【0134】
[測定条件等]
実施例における物性の測定条件等は、以下のとおりである。
【0135】
〔組成〕
ポリマー中の4-メチル-1-ペンテン含量およびα-オレフィン含量は、13C-NMRにより以下の装置および条件により測定した。日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒,試料濃度55mg/0.6mL、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。
【0136】
〔密度・比重〕
ポリマーの密度および組成物の比重は、ASTM D 1505(水中置換法)に従って、ALFA MIRAGE社電子比重計MD-300Sを用い、水中と空気中で測定された各試料の重量から算出した。
【0137】
〔融点(Tm)〕
ポリマーの融点(Tm)は、セイコーインスツルメンツ社製DSC220C装置で示差走査熱量計(DSC)により測定した。試料7~12mgをアルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/分で200℃まで加熱した。その試料を、完全融解させるために200℃で5分間保持し、次いで10℃/分で-50℃まで冷却した。-50℃で5分間置いた後、その試料を10℃/分で200℃まで再度加熱した。この再度の(2度目の)加熱でのピーク値温度を、融点(Tm)として採用した。
【0138】
〔極限粘度〕
ポリマーの極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて135℃で測定した。
【0139】
〔分子量(Mw、Mn)、分子量分布(Mw/Mn)〕
重合体(A)の分子量は、液体クロマトグラフ:Waters製ALC/GPC 150-C plus型(示唆屈折計検出器一体型)を用い、カラムとして東ソー株式会社製GMH6-HT×2本およびGMH6-HTL×2本を直列接続し、移動相媒体としてo-ジクロロベンゼンを用い、流速1.0ml/分、140℃で測定した。
【0140】
得られたクロマトグラムを、公知の方法によって、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析することで、Mw/Mn値を算出した。1サンプル当たりの測定時間は60分であった。
【0141】
〔メルトフローレート(MFR)〕
ポリマーのMFRは、JIS K-6721に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定した。
【0142】
〔各種測定用プレスシートの作製法〕
実施例および比較例の物性測定用に使用したプレスシート(シート層)は、190℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaの圧力でシート成形した。1~3mm厚のシート(スペーサー形状;240×240×2mm厚の板に80×80×0.5~3mm、4個取り)の場合、余熱を5~7分程度とし、10MPaで1~2分間加圧した後、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaで圧縮し、5分程度冷却して測定用試料を作成した。熱板として5mm厚の真鍮板を用いた。上記方法により作製したサンプルを各種物性評価試料に供した。
【0143】
〔圧縮永久歪〕
圧縮永久歪(JIS K6262に準拠)の測定では、厚さ12mm、直径20mmφのプレスシートを用い、室温で25%に圧縮させた状態で22時間静置させ解放後30分後のシートの厚みから算出した。
【0144】
〔ショアー硬度測定〕
ショアー硬度(JIS K6253に準拠)の測定では、厚さ3mmのプレスシートを測定試料として用い、ショアーA硬度計の押針接触開始直後と押針接触開始から15秒後の目盛りを読み取った。
【0145】
さらに下式で定義されるショアー硬度の値の変化ΔHSを求めた。
ΔHS=(押針接触開始直後のショアー硬度値 - 押針接触開始から15秒後のショアー硬度値)
ここで、ショアー硬度の測定は、原則としてショアーA硬度計を用いて行ったが、ショアーA硬度の測定が困難な測定試料に対しては、代わりにショアーD硬度計を用いて行った。ここで、同じ種類の硬度計を用いたときには、ΔHSが大きいほど凹凸追従性が高いといえる。
【0146】
〔動的粘弾性〕
動的粘弾性の測定では、厚さ3mmのプレスシートを測定試料として用い、さらに動的粘弾性測定に必要な45mm×10mm×3mmの短冊片を切り出した。ANTONPaar社製MCR301を用いて、10rad/sの周波数で-40~150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定し、0~30℃の範囲でガラス転移温度に起因する損失正接(tanδ)がピーク値(最大値)となる際の温度(以下「ピーク値温度」ともいう。)、およびその際の損失正接(tanδ)の値を測定した。
【0147】
なお、重合体(A)および重合体(B)各々の動的粘弾性の測定でも、各々の重合体からなる厚さ3mmのプレスシートを上記と同様の方法で作成し、このプレスシートを測定試料として用いた。重合体(A)の場合は、-40~150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定し、0~45℃の範囲でピーク値温度およびtanδの値を測定した。重合体(B)の場合は、-70~150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定し、-60~0℃の範囲でピーク値温度およびtanδの値を測定した。
【0148】
〔インソールの作製法〕
実施例および比較例の物性測定用に使用した積層体は、220℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、〔各種測定用プレスシートの作製法〕と同様の手法で120×120×3mm厚のシート状のサンプルを作製した。必要に応じて、上記サンプルをEVA発泡体(三井デュポンポリケミカル株式会社製エバフレックスを用いて、厚み2mmtの発泡体を作製)およびポリウレタン発泡体(イノアックコーポレーション製PORON、品番L-24 厚み2mmt)の発泡体と接着剤で接着した。
【0149】
〔加温時の腑形性(評価)〕
作製したインソールを50℃に設定したオーブンに30分間入れ、シート全体を柔軟化させた。その後オーブンから取り出して、被験者として20~50歳台までの男女計5名にシートの上に乗ってもらい、自重で変形させることで、各人の足の形状に合ったインソールを作製した。
その後、インソールを23℃で2時間静置しておき、目視および再度履いた感触により、腑形性について評価した。
〇:足の形状が維持されていた
×:形状が元の形に戻ってしまった
【0150】
〔触感(官能評価)〕
被験者として20~50歳台までの男女計5名を集めた。被験者を1名ずつ、23℃、50%RHに調湿した環境試験室に入室してもらい、しばらく安静にしてもらった後、実施例または比較例で作製したインソールを靴に入れて履いてもらい、以下の5段階で評価した。
5:履き心地が優れている。
4:履き心地がやや優れている。
3:普通。
2:履き心地がやや劣る。
1:履き心地が劣る。
【0151】
〔合成例1〕
充分に窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4-メチル-1-ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.13MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは36.9gで、ポリマー中の4-メチル-1-ペンテン含量は72.5mol%、プロピレン含量は27.5mol%であった。物性測定結果を表1に示す。
【0152】
【0153】
〔実施例1〕
合成例1の4-メチルー1-ペンテン共重合体 25質量部と、三井化学株式会社製ミラストマー5030NS 75質量部とを混合して、重合体組成物を得た。この組成物をプレス成形してシート層を形成し、当該シート層の物性を測定した。
また、上述した作成方法で重合体組成物の3mm厚のプレスシートとEVA発泡体(2mm厚シート)とを接着して積層体を形成し、当該積層体としての物性を測定した。各種物性を表2に示す。
【0154】
〔実施例2〕
合成例1の4-メチルー1-ペンテン共重合体30質量部と、三井化学株式会社製ミラストマー5030NS:45部と、旭化成ケミカルズ株式会社製タフテックH1221:25部とを混合して、重合体組成物を得た。この組成物をプレス成形してシート層を形成し、当該シート層の物性を測定した。
また、上述した作成方法で重合体組成物の3mm厚のプレスシートとEVA発泡体(2mm厚シート)とを接着して積層体を形成し、当該積層体としての物性を測定した。各種物性を表2に示す。
【0155】
〔実施例3〕
合成例1の4-メチルー1-ペンテン共重合体 30質量部と、旭化成ケミカルズ株式会社製タフテックH1221 70質量部と発泡剤としてセルマイクC-2(商品名:三協化成株式会社 アゾジカルボンアミド(略号ADCA)を2質量部混合して重合体組成物を得た。この組成物をプレス成形してシート層を形成し、当該シート層の物性を測定した。
また、上述した作成方法で重合体組成物の3mm厚のプレスシートとポリウレタン発泡体(2mm厚シート)とを接着して積層体を形成し、当該積層体としての物性を測定した。各種物性を表2に示す。
【0156】
〔実施例4〕
合成例1の4-メチルー1-ペンテン共重合体 30質量部と、旭化成ケミカルズ株式会社製タフテックH1221 70質量部、発泡剤としてセルマイクC-2(商品名:三協化成株式会社 アゾジカルボンアミド(略号ADCA)を2質量部混合して、重合体組成物を得た。この組成物をプレス成形してシート層を形成し、当該シート層の物性を測定した。
【0157】
〔実施例5〕
合成例1の4-メチルー1-ペンテン共重合体 50質量部と、三井化学株式会社製ミラストマー5030NS 50質量部と、発泡剤としてセルマイクC-2(商品名:三協化成株式会社 アゾジカルボンアミド(略号ADCA) 2質量部とを混合して、重合体組成物を得た。この組成物をプレス成形してシート層を形成し、当該シート層の物性を測定した。
【0158】
〔比較例1〕
三井化学株式会社製ミラストマー5030NS 100質量部をプレス成形してシート層を形成し、当該シート層の物性を測定した。
また、上述した作成方法で重合体組成物の3mm厚のプレスシートとEVA発泡体(2mm厚シート)とを接着して積層体を形成し、当該積層体としての物性を測定した。各種物性を表2に示す。
【0159】
〔比較例2〕
EVA発泡体(12mm厚シート)のみの物性を表2に示す。
【0160】
なお、三井化学株式会社製ミラストマー5030NHSはtanδピーク値温度-40℃、ピーク値0.5であり、ミラストマー5030NSはtanδピーク値温度-41℃、ピーク値0.55であり、ミラストマー8030NHSはtanδピーク値温度-40℃、ピーク値0.25であり、三井化学株式会社製ミラストマー5030NS:45部と旭化成ケミカルズ株式会社製タフテックH1221:25部とのブレンドはtanδピーク値温度-28℃、ピーク値0.7である。
【0161】
【0162】
JIS K6253に準拠して、厚さ3mmのプレスシートの状態で測定される、押針接触開始直後のショアーA硬度の値と、押針接触開始から15秒後におけるショアーA硬度の値と、の間の変化量ΔHSが5以上60以下である熱可塑性樹脂組成物を主成分としてなるシート層である、実施例1~実施例5は、加温状態での腑形性も履き心地も良好だった。