(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂含有ワニス、エポキシ樹脂組成物含有ワニス、プリプレグ、樹脂シート、プリント配線板、半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/62 20060101AFI20221216BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20221216BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C08G59/62
C08J5/24 CFC
H05K1/03 610L
(21)【出願番号】P 2021082352
(22)【出願日】2021-05-14
(62)【分割の表示】P 2018206652の分割
【原出願日】2014-08-01
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中西 政隆
(72)【発明者】
【氏名】井上 一真
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌照
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-292066(JP,A)
【文献】特開2013-043958(JP,A)
【文献】特開2014-129430(JP,A)
【文献】特開2013-209503(JP,A)
【文献】特開2004-339381(JP,A)
【文献】特開2005-015616(JP,A)
【文献】特開2005-112965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00-59/72
C08J 5/24
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂、硬化剤及び有機溶剤からなるエポキシ樹脂組成物含有ワニスであって、
前記有機溶剤がケトン類であり、
エポキシ樹脂組成物含有ワニス中の溶剤を除く固形分濃度が10~80重量%であり、
前記硬化剤がフェノールアラルキル樹脂またはビフェニルアラルキル樹脂であるエポキシ樹脂組成物含有ワニス。
【化1】
(式中、(a)(b)の比率は(a)/(b)=1~3である。Gはグリシジル基を表す。nは繰り返し数であり、0~5である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶液での安定性にすぐれるエポキシ樹脂含有ワニス、またそのワニスを用いたエポキシ樹脂組成物含有ワニスおよびその成型体に関し、誘電特性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂に関する。
【0002】
さらに、本発明は高機能が要求される電気電子材料用途、特に半導体の封止剤、薄膜基板材料として好適なエポキシ樹脂組成物含有ワニス、プリプレグ、樹脂シート、プリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0003】
エポキシ樹脂組成物は作業性及びその硬化物の優れた電気特性、耐熱性、接着性、耐湿性(耐水性)等により電気・電子部品、構造用材料、接着剤、塗料等の分野で幅広く用いられている。
【0004】
しかし近年、電気・電子分野においてはその発展に伴い、樹脂組成物の高純度化をはじめ耐湿性、密着性、誘電特性、フィラー(無機または有機充填剤)を高充填させるための低粘度化、成型サイクルを短くするための反応性のアップ等の諸特性の一層の向上が求められている。又、構造材としては航空宇宙材料、レジャー・スポーツ器具用途などにおいて軽量で機械物性の優れた材料が求められている。
特に近年、機械どうしの通信はもちろん、人と人との通信量が格段に増えていく中、情報量は膨大に肥大化していくことが想定される。
現在、スマートフォンやWifi等の通信の周波数が大きくなってきており、スマートフォンでは周波数700MHz~3.4GHz、wifi等であれば2~5GHz、等と通信の周波数帯が使用されてきており、幅広い周波数帯での誘電特性、特に誘電正接が重要になってきている。
また情報通信量が非常に多くなり、以下に早く多くの情報を伝えるかということが重要となってきており、高速通信化が基板にたいして重要なファクターとなる。
またスマートフォン等は年々薄型化、さらには電池の体積をとるために、小型化が大きく進んでいる。さらに年々機能を飛躍的に向上させる必要がる。このような環境の中、使用される基板の厚みは薄型化、多層化する必要があり、基板の耐熱性、剛性が製造における工程耐性として必要となってくることは明白である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】参考資料SIG-1-3-2 我が国の電波の使用状況等 総務省 ホームページ[平成26年7月29日検索]、インターネット<http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/wire/pdf/050915_2_san2.pdf>
【文献】容量76%増、面積も厚さも増えた2次電池 新型iPad分解(3)2012/3/23 12:35 情報元 日本経済新聞 電子版[平成26年7月29日検索]、インターネット<http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2103C_R20C12A3000000/>
【文献】日立化成テクニカルレポートNo.56(2013・12月)[平成26年7月29日検索]、インターネット<URL:http://www.hitachi-chem.co.jp/japanese/report/056/56_tr02.pdf>
【文献】利昌工業 RISHO NEWS Technical Report No91[平成26年7月29日検索]、インターネット<URL:http://www.risho.co.jp/rishonews/technical_report/tr91/r180_tr91.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高速通信向けの材料としては、その特性からどうしてもポリフェニレンエーテルやBTレジン等といった特殊樹脂が主として使用されているが、単独では取り扱いが難しく、また特性が足りず、密着性や強度の改善のためエポキシ樹脂と併用される。また、パッケージ基板材料においてはエポキシ樹脂がメインで使われる場合も多いが、上記のとおり、今後高速通信が重要となってきた場合、誘電特性の改善のため、上述の特殊樹脂との組み合わせが増えてくることとなる。こういった特殊樹脂との組み合わせにおいてはワニスとしての安定性が無いと配合ができず、生産毎にワニスを作成し、もしくは分散して使用するということであると生産性が非常に悪い。さらに、ワニス作成時に相溶性が悪かったり、作成後まもなく結晶等が析出し分離すると安定した生産ができず、産業として成立が難しい。このためワニスとして安定的に生産できる高機能なエポキシ樹脂が求められている。
誘電特性の良いエポキシとしてビフェニレンアラルキルタイプのエポキシ樹脂が挙げられる。当該エポキシ樹脂は、非常に電気特性は良いものの、基板とする場合に溶剤への溶解性が悪く、溶解させても結晶が析出しやすいという傾向があるばかりか、耐熱性の改良が難しい(特許文献特開2012-229436号公報)。
一方、耐熱性の高いエポキシ樹脂は一般に架橋密度の高いエポキシ樹脂となる。
架橋密度の高いエポキシ樹脂は、その架橋密度が高いことが起因して、誘電特性が非常に悪くなりやすい。また、もろく、熱分解特性がわるくなる。架橋密度を下げるとこれらの特性は改善されるが、耐熱性が低くなり、ガラス転移点(Tg)が低下する。というトレードオフの関係にある。
【0008】
本発明においては溶剤での安定性が高いワニス状で取り扱えるエポキシ樹脂含有ワニスとそれを用いるエポキシ樹脂組成物ワニス、さらには機材への含浸をしたプリプレグおよび、または樹脂シート、およびそれらから製造される高い耐熱性と高度な誘電特性を有する積層板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記したような実状に鑑み、鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は
(1)下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂と有機溶剤からなるエポキシ樹脂含有ワニス、
【化1】
(式中、(a)(b)の比率は(a)/(b)=1~3である。Gはグリシジル基を表す。nは繰り返し数であり、0~5である。)
(2)前項(1)に記載のエポキシ樹脂含有ワニスを用いたエポキシ樹脂組成物含有ワニス、
(3)前項(1)に記載のエポキシ樹脂含有ワニス又は前項(2)に記載のエポキシ樹脂組成物含有ワニスを用いてなるプリプレグ、
(4)前項(1)に記載のエポキシ樹脂含有ワニス又は前項(2)に記載のエポキシ樹脂組成物含有ワニスを用いてなる樹脂シート、
(5)前項(3)に記載のプリプレグおよび/または前項(4)に記載の樹脂シートを成形してなる積層板、
(6)前項(3)に記載のプリプレグおよび/または前項(4)に記載の樹脂シートを硬化してなるプリント配線基板、
(7)前項(5)に記載の積層板からなるプリント配線基板、
(8)前項(6)又は(7)のいずれか一項に記載のプリント配線板からなる半導体装置、
を、提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエポキシ樹脂含有ワニスは高い耐熱性と高度な誘電特性を有するため積層板、プリント配線基板に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のエポキシ樹脂含有ワニスは、エポキシ樹脂と有機溶剤からなる。
本発明に使用するエポキシ樹脂は下記式(1)
【化2】
(式中、(a)(b)の比率は(a)/(b)=1~3である。Gはグリシジル基を表す。nは繰り返し数であり、0~5である。)であらわされるエポキシ樹脂を必須成分とし、有機溶剤としてメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アセトン、イソホロン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類のいずれかすくなくとも1種を必須成分とする。
【0012】
必要に応じて、ジメチルアセトアミドやN-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、カルビトールアセテートなどの高沸点溶剤を添加することは、溶剤乾燥時の表面改質のために有効であり、また、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等を添加することで乾燥時の状態を変えることも可能である。
ハロゲン系の溶剤の使用は環境問題から好ましくなく、ジエチルエーテル等はその危険性の高さから好ましくない。
なお、本発明のエポキシ樹脂含有ワニスは上述のエポキシ樹脂、溶剤以外に、後述するカップリング剤やゴム成分、ポリマー成分を添加しても均一の溶液となっている分(0℃~50℃のいずれかの温度において1cm角の石英セルにおいて測定した際のヘイズが200以下となる)には構わない。
【0013】
樹脂濃度としては10~80重量%である。特に好ましくは15~75%である。濃度が濃い分には後の工程で希釈することができるので、大きな問題にはならないが、流動性が確保できないと取り扱いが困難であるばかりか、缶やドラムへの残量が多くなってしまい、廃棄物の量が増大、環境への負荷が大きくなる。
【0014】
樹脂粘度は0℃~50℃のいずれかの温度において10mPa・s~100Pa・sの範囲に入ることが好ましく、特に好ましくは100mPa・s~80Pa・sである。粘度に関しては塗工工程によって適宜好適な粘度がある。例えば表面支持体にアプリケータ等で数十ミクン~数百ミクロンで塗布する場合は5~80Pa・s程度の粘度がハジキやできる樹脂シートの膜厚をコントロールするのによい。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂含有ワニスの製造方法としては上記溶剤を撹拌しているところに、本発明で用いられるエポキシ樹脂を分割で添加し、徐々に溶解させながら均一な状態とする。
分割で溶解する時間は30~10時間である。溶解の温度は樹脂の軟化点に対し、20℃以上下の温度か、もしくは樹脂の軟化点以上の温度で行うことが好ましい。樹脂の軟化点~軟化点-20℃の温度領域(具体的に位は軟化点80℃であれば80~60℃)では樹脂同士がブロッキングし、釜の破損、さらにはこれにより、釜内から金属がガラス片が異物として混入する可能性があり好ましくない。
【0016】
このようにして得られたエポキシ樹脂含有ワニスは100μm以下の目の細かさのフィルタで濾過して保管することが好ましい。特に好ましくは1~78μmである。100μmをこえる目開きのフィルタの場合、異物が混入した場合、塗布後ムラになり、支持体を傷つけてしまう可能性があり好ましくない。1μmを切るフィルタの場合、濾過速度が非常に遅くなり、生産性が悪い。
濾過にかかる温度は10~100℃であり、特に好ましくは20~90℃である。
加温することで流動性が上がり濾過しやすくなるが、100℃を超えると溶剤の沸点にもよるが濾過液からの臭気が強くなり、人的な被害の可能性があり好ましくない。また10℃を切ると流動性の問題から濾過性が悪くなりやすいばかりか、生産に時間がかかり好ましくない。
このようにして得られる本発明のワニスは5℃で2か月以上、0℃で1か月以上結晶の析出、もしくは樹脂の析出が見られない。
【0017】
本発明においては本発明のエポキシ樹脂含有ワニスを用いてプリプレグもしくは樹脂シートを成型することができる。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物含有ワニスには本発明のエポキシ樹脂含有ワニスを使用する。
本発明のエポキシ樹脂組成物含有ワニスにおいて他に添加する物質としては、特殊樹脂、併用する他のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、硬化促進剤、カップリング剤、無機充填剤であり、少なくともこれらから2種以上(すなわちエポキシ樹脂含有ワニスと合わせて3種以上)を含有する。
【0019】
特殊樹脂としては、前述に記載したものを含め、ポリフェニレンエーテル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、可溶性ポリイミド、可溶性ポリアミド、BTレジン、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、スチレン/無水マレイン酸コポリマーもしくはその変性体等の樹脂が挙げられる。
これら樹脂の使用量は、樹脂全体の10~90重量%であり、特に好ましくは20~80重量%となる。
【0020】
本発明において用いられるエポキシ樹脂組成物と併用されうる他のエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビスフェノールAD等)またはフェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等)との重縮合物;前記フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物;前記フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物;前記フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール、ビフェニルジメタノール等)との重縮合物;前記フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’-ジクロロキシレン、ビスクロロメチルビフェニル等)との重縮合物;前記フェノール類と芳香族ビスアルコキシメチル類(ビスメトキシメチルベンゼン、ビスメトキシメチルビフェニル、ビスフェノキシメチルビフェニル等)との重縮合物;前記ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物またはアルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられるが、通常用いられるエポキシ樹脂であればこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0021】
本発明において用いられるエポキシ樹脂組成物を配合する場合、硬化剤を使用することができる。使用できる硬化剤の具体例としては、アミン化合物(アニリン樹脂を含む)や、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などの酸無水物系化合物、ビスフェノール類、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等)との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物、などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0022】
本発明において用いられるエポキシ樹脂組成物において硬化剤を使用する場合の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.6~1.1当量が好ましい。エポキシ基1.1当量超える場合、また、0.6当量を切る場合、硬化剤が取り残されることとなり、硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。ただし、エポキシ樹脂と硬化可能な特殊樹脂が含有される場合はこの限りではなく、特殊樹脂によって消費されるエポキシの量を差し引いた残りのエポキシ基に対する硬化剤の量となるため、配合によって適宜調整が必要となる。
【0023】
本発明において用いられるエポキシ樹脂組成物においては、硬化促進剤を含有させても差し支えない。使用できる硬化促進剤の具体例としては2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾ-ル類、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1~10.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0024】
本発明において用いられるエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて難燃剤、充填剤等の添加剤を、硬化物の誘特性や耐熱性等の特性を悪化させない範囲で配合することができる。
【0025】
必要に応じて配合される充填剤は、特に限定されないが、無機充填剤としては溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、マイカ、ガラス、石英、雲母などが挙げられる。さらに難燃効果を付与するため、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を使用することも好ましい。ただし、これらに限定されない。また2種以上を混合して使用しても良い。これら無機充填剤のうち、溶融シリカや結晶性シリカなどのシリカ類はコストが安く、電気信頼性も良好なため好ましい。
本発明において用いられるエポキシ樹脂組成物において、無機充填剤の使用量は内割りで通常10重量%~95重量%、好ましくは10重量%~80重量%、より好ましくは10重量%~75重量%の範囲である。少なすぎると難燃性の効果が得られない、また弾性率が下がってしまう、また、多すぎると封止する溶液に溶かしたワニスとした際にフィラーが沈降してしまい、均質な成型体が得られない可能性がある。
なお、無機充填剤の形状、粒径等も特に限定されないが、通常、粒径0.01~50μm、好ましくは0.1~20μmのものである。
【0026】
本発明において用いられるエポキシ樹脂組成物にはガラスクロスや無機充填剤と樹脂成分との接着性を高めるためにカップリング剤を配合することができる。カップリング剤としては従来公知のものをいずれも使用できるが、例えばビニルアルコキシシラン、エポキアルコキシシラン、スチリルアルコキシシラン、メタクリロキシアルコキシシラン、アクリロキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、イソシアナートアルコキシシランなどの各種アルコキシシラン化合物、アルコキシチタン化合物、アルミニウムキレート類などが挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上併用しても良い。カップリング剤の添加方法は、カップリング剤であらかじめ無機充填剤表面を処理した後、樹脂と混合しても良いし、樹脂にカップリング剤を混合してから無機充填剤を混合しても良い。
【0027】
本発明において用いられるエポキシ樹脂組成物にさらに他の有機溶剤を添加してすることができる。用いられる溶剤としては、例えばγ-ブチロラクトン類、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。溶剤は、得られたワニス中の溶剤を除く固形分濃度が通常10~80重量%、好ましくは20~70重量%となる範囲で使用する。
【0028】
更に本発明のエポキシ樹脂組成物含有ワニスには、必要に応じて公知の添加剤を配合することが出来る。用いうる添加剤の具体例としては、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリスチレン、ポリエチレン、フッ素樹脂、シリコーンゲル、シリコーンオイル、並びにカーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤などが挙げられる。
【0029】
本発明のプリプレグについて説明する。
本発明のプリプレグは上記樹脂組成物含有ワニスを繊維基材に含浸してなるものである。これにより、耐熱性、低膨張性および難燃性に優れたプリプレグを得ることができる。
前記繊維基材としては、例えばガラス織布、ガラス不繊布、ガラスペーパー等のガラス繊維基材、紙、アラミド、ポリエステル、芳香族ポリエステル、フッ素樹脂等の合成繊維等からなる織布や不織布、金属繊維、カーボン繊維、鉱物繊維等からなる織布、不織布、マット類等が挙げられる。これらの基材は単独又は混合して使用してもよい。これらの中でもガラス繊維基材が好ましい。これにより、プリプレグの剛性、寸法安定性を向上することができる。
ガラス繊維基材としては、Tガラス、Sガラス、Eガラス、NEガラス、および石英ガラスからなる群から選ばれる少なくとも一種を含むものが好ましい。
【0030】
前記樹脂組成物を前記繊維基材に含浸させる方法は、例えば基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターによる塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対する樹脂組成物の含浸性を向上することができる。なお、基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。
例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物をそのままで、又は溶媒に溶解若しくは分散させたワニスの形態で、ガラス布等の基材に含浸させた後、乾燥炉中等で通常、80~200℃(ただし、溶媒を使用した場合は溶媒の揮発可能な温度以上とする)、好ましくは150~200℃の温度で、1~30分間、好ましくは1~15分間乾燥させることによってプリプレグが得られる。
また後述する樹脂シートをガラスクロスに押し付け、転写し、プリプレグを得るという手法も適用可能である。
【0031】
本発明の樹脂シートについて説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物含有ワニスを用いた樹脂シートは上記ワニスをそれ自体公知のグラビアコート法、スクリーン印刷、メタルマスク法、スピンコート法などの各種塗工方法により平面状支持体に乾燥後の厚さが所定の厚さ、たとえば5~100μmになるように塗布後、乾燥して得られるが、どの塗工方法を用いるかは支持体の種類、形状、大きさ、塗工の膜厚、支持体の耐熱性等により適宜選択される。平面支持体としては、たとえばポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等の各種高分子、および/またはその共重合体から作られるフィルム、あるいは銅箔等の金属箔等が挙げられる。
塗布後、乾燥し、シート状の組成物を得ることができる(本発明のシート)が、本シートをさらに加熱することでシート状の硬化物とすることもできる。また一度の加熱で溶剤乾燥と硬化工程を兼ねてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は上記支持体の両面もしくは片面に上記方法で塗工、加熱することにより、該支持体の両面または片面に本発明の硬化物の層を形成することができる。また硬化前に被着体を貼り合わせ、硬化させることで積層体を作成することも可能である。
また本発明の樹脂シートは支持体から剥がすことで接着シートとして使用することもでき、被着体に接触させ、必要に応じて圧力と熱をかけ、硬化とともに接着させるということもできる。
【0032】
本発明の積層板について説明する。
本発明で用いられる積層板は、上記のプリプレグおよび/または樹脂シートを加熱加圧成形してなるものである。これにより、耐熱性、低膨張性および難燃性に優れたプリント配線板を得ることができる。プリプレグおよび/または樹脂シート1枚のときは、その上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。また、プリプレグおよび/または樹脂シートを2枚以上積層することもできる。プリプレグおよび/または樹脂シート2枚以上積層するときは、積層したプリプレグおよび/または樹脂シートの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔あるいはフィルムおよび/または樹脂シートを重ねる。次に、プリプレグおよび/または樹脂シートと金属箔とを重ねたものを加熱加圧成形することでプリント配線板を得ることができる。前記加熱する温度は、特に限定されないが、120~220℃が好ましく、特に150~200℃が好ましい。前記加圧する圧力は、特に限定されないが、1.5~5MPaが好ましく、特に2~4MPaが好ましい。また、必要に応じて高温漕等で150~300℃の温度で後硬化を行ってもかまわない。
【0033】
本発明のプリント配線基板について説明する。
プリント配線板は、前記積層板を内層回路板として用いる。積層板の片面又は両面に回路形成する。場合によっては、ドリル加工、レーザー加工によりスルーホールを形成し、めっき等で両面の電気的接続をとることもできる。
【0034】
前記内装回路基板に市販又は本発明の樹脂シート、または前記本発明のプリプレグを重ね合わせて加熱加圧成形し、多層プリント配線基板を得ることができる。
具体的には、上記樹脂シートの絶縁層側と内層回路板とを合わせて、真空加圧式ラミネーター装置などを用いて真空加熱加圧成形させ、その後、熱風乾燥装置等で絶縁層を加熱硬化させることにより得ることができる。
ここで加熱加圧成形する条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度60~160℃、圧力0.2~3MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度140~240℃、時間30~120分間で実施することができる。
あるいは、前記本発明のプリプレグを内層回路板に重ね合わせ、これを平板プレス装置などを用いて加熱加圧成形することにより得ることができる。ここで加熱加圧成形する条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度140~240℃、圧力1~4MPaで実施することができる。このような平板プレス装置等による加熱加圧成形では、加熱加圧成形と同時に絶縁層の加熱硬化が行われる。
【0035】
また、本発明に係る多層プリント配線基板の製造方法は、前記樹脂シート、または本発明のプリプレグを、内層回路基板の内層回路パターンが形成された面に重ね合わせて連続積層する工程、及び導体回路層をセミアディティブ法等のビルドアップ工法で形成する工程を含む。
【0036】
前記樹脂シート、または本発明のプリプレグより形成された絶縁層の硬化は、次のレーザー照射および樹脂残渣の除去を容易にし、デスミア性を向上させるため、半硬化状態にしておく場合もある。また、一層目の絶縁層を通常の加熱温度より低い温度で加熱することにより一部硬化(半硬化)させ、絶縁層上に、一層ないし複数の絶縁層をさらに形成し半硬化の絶縁層を実用上問題ない程度に再度加熱硬化させることにより絶縁層間および絶縁層と回路との密着力を向上させることができる。この場合の半硬化の温度は、80℃~200℃が好ましく、100℃~180℃がより好ましい。尚、次工程においてレーザーを照射し、絶縁層に開口部を形成するが、その前に基材を剥離する必要がある。基材の剥離は、絶縁層を形成後、加熱硬化の前、または加熱硬化後のいずれに行っても特に問題はない。
なお、前記多層プリント配線基板を得る際に用いられる内層回路板は、例えば、銅張積層板の両面に、エッチング等により所定の導体回路を形成し、導体回路部分を黒化処理したものを好適に用いることができる。
【0037】
レーザー照射後の樹脂残渣等は過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤などにより除去することが好ましい。また、平滑な絶縁層の表面を同時に粗化することができ、続く金属メッキにより形成する導電配線回路の密着性を上げることができる。
【0038】
次に、外層回路を形成する。外層回路の形成方法は、金属メッキにより絶縁樹脂層間の接続を図り、エッチングにより外層回路パターン形成を行う。樹脂シート、またはプリプレグを用いたときと同様にして、多層プリント配線基板を得ることができる。
尚、金属箔を有する樹脂シート、またはプリプレグを用いた場合は、金属箔を剥離することなく、導体回路として用いるためにエッチングにより回路形成を行ってもよい。その場合、厚い銅箔を使用した基材付き絶縁樹脂シートを使うと、その後の回路パターン形成においてファインピッチ化が困難になるため、1~5μmの極薄銅箔を使うか、または12~18μmの銅箔をエッチングにより1~5μmに薄くするハーフエッチングする場合もある。
【0039】
さらに絶縁層を積層し、前記同様回路形成を行っても良いが、多層プリント配線板の設計上、最外層には、回路形成後、ソルダーレジストを形成する。ソルダーレジストの形成方法は、特に限定されないが、例えば、ドライフィルムタイプのソルダーレジストを積層(ラミネート)し、露光、および現像により形成する方法、または液状レジストを印刷したものを露光、および現像により形成する方法によりなされる。なお、得られた多層プリント配線板を半導体装置に用いる場合、半導体素子を実装するため接続用電極部を設ける。接続用電極部は、金めっき、ニッケルメッキおよび半田めっき等の金属皮膜で適宜被覆することができる。このような方法により多層プリント配線板を製造することができる。
【0040】
次に、本発明の半導体装置について説明する。
前記で得られた多層プリント配線板に半田バンプを有する半導体素子を実装し、半田バンプを介して、前記多層プリント配線板との接続を図る。そして、多層プリント配線板と半導体素子との間には液状封止樹脂を充填し、半導体装置を形成する。半田バンプは、錫、鉛、銀、銅、ビスマスなどからなる合金で構成されることが好ましい。
半導体素子と多層プリント配線板との接続方法は、フリップチップボンダーなどを用いて基板上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプとの位置合わせを行ったあと、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、多層プリント配線板と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。尚、接続信頼性を良くするため、予め多層プリント配線板上の接続用電極部に半田ペースト等、比較的融点の低い金属の層を形成しておいても良い。この接合工程に先んじて、半田バンプおよび、または多層プリント配線板上の接続用電極部の表層にフラックスを塗布することで接続信頼性を向上させることもできる。
【0041】
基板としてはマザーボード、ネットワーク基板、パッケージ基板等に使用され、基板として使用される。特にパッケージ基板としては片面封止材料用の薄層基板として有用である。また半導体封止材として使用した場合、その配合から得られる半導体装置としてはとしては、例えばDIP(デュアルインラインパッケージ)、QFP(クワッドフラットパッケージ)、BGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)、SOP(スモールアウトラインパッケージ)、TSOP(シンスモールアウトラインパッケージ)、TQFP(シンクワッドフラットパッケージ)等が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
ここで、各物性値の測定条件は下記の通りである。
・エポキシ当量
JIS K-7236に記載された方法で測定し、単位はg/eq.である。
・軟化点
JIS K-7234に準拠した方法で測定し、単位は℃である。
【0043】
合成例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらWO2007/007827に準拠して製造した下記式で表されるフェノール樹脂((a)/(b)=1.3 n=0.5 水酸基当量134g/eq. 軟化点93℃)134部、エピクロロヒドリン450部、メタノール54部を加え、撹拌下で溶解し、70℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム42.5部を90分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間反応を行った。反応終了後,水洗し、塩を除いた後、得られた有機層をロータリーエバポレーターを用いて減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤類を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン500部を加え溶解し、撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液17部を加え、1時間反応を行った後、油層の洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液から、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで本発明のエポキシ樹脂(EP1)195部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は211g/eq.軟化点71℃、150℃における溶融粘度(ICI溶融粘度 コーン#1)は0.34Pa・sであった。
【化3】
【0044】
実施例1、比較例1
合成例1で得られたエポキシ樹脂(EP1)、比較用のエポキシ樹脂((NC-3000 日本化薬製))について、樹脂濃度が60重量%になるように溶剤としてメチルエチルケトンに溶解させエポキシ樹脂ワニスを得た。
得られた本発明のエポキシ樹脂含有ワニスは含有するエポキシ樹脂の分子量がほぼ同等にもかかわらず、5℃で2か月以上、0℃で1か月以上結晶の析出、もしくは樹脂の析出が見られなかった。一方、比較用のエポキシ樹脂含有ワニスは2週間目の段階で結晶の析出が確認できた。
【0045】
実施例2
エポキシ樹脂組成物含有ワニスとして合成例1で得られた(EP1)を21部、硬化剤(日本化薬製 ビフェニルアラルキル樹脂 KAYAHARD GPH-65)20部、硬化促進剤0.2部、メチルエチルケトン40部を加え、均一に溶解したものを用意し、を調整した。得られたワニスを、ポリイミド(ユーピレックス)に100ミクロンのアプリケータを用いて塗布後、120℃10分、窒素ガスを流しながら熱風乾燥器で乾燥をおこない、本発明の樹脂シートを得た。得られた樹脂シートのDSCを測定すると82℃から発熱ピークがあり、硬化可能なシートであることを確認した。
【0046】
実施例3
合成例1で得られたエポキシ樹脂(EP1)を、エポキシ当量1モル当量に対し、硬化剤を等当量で配合し、触媒をエポキシ樹脂100重量部に対し、1重量部となる割合で配合し、これをメチルエチルケトンで樹脂濃度80%に調整し、エポキシ樹脂組成物含有ワニスとして表1に示す組成にて調整した。それぞれ得られたワニスを、ポリイミド(ユーピレックス)に100ミクロンのアプリケータを用いて塗布後、120℃10分、窒素ガスを流しながら熱風乾燥器で乾燥をおこない、本発明の樹脂シートを得た。
【0047】
比較例2
実施例3において、エポキシ樹脂(EP1)を表1に示す他のエポキシ樹脂に変えた以外は、同様の配合・方法にてそれぞれ比較用樹脂シートを得た。
【0048】
実施例4~6
実施例3で得られた樹脂シートを10枚ポリイミドより剥がし、熱板プレス上に設置した、その後10kg/cm2、温度180℃で10分の加熱加圧形成を行い、積層板を作製した。作製した積層板について、下記の項目及び方法でその特性の測定を行った。測定結果を表1に示す。
・弾性率(DMA)
動的粘弾性測定器:TA-instRuments、DMA-2980
測定温度範囲:-30~280℃
温速度:2℃/分
試験片サイズ:5mm×50mmに切り出した物を使用した
Tg:DMA測定に於けるTan-δのピーク点をTgとした。
・ガラス転移温度(Tg)
熱機械測定装置(TMA):熱機械測定装置TA-instRuments製 TMA Q400EM製
昇温速度:2℃/分
・誘電率、誘電正接
空洞共振器を使用し、関東電子応用化学製 1GHz用の治具を用いて測定(0.5mmx70mmに切り出したものを使用)
【0049】
比較例3~9
実施例4~6において、本発明の樹脂シートを比較例2にて得られた比較用樹脂シートに変えた以外は同様の方法にて比較用積層板を作製した。測定結果を表1に示す。
【表1】
【0050】
また、表1で得られた硬化物性を、横軸に耐熱性(TMA Tg)と縦軸に誘電正接をプロットしたグラフを
図1に示し、横軸に耐熱性(DMA Tg)と縦軸に誘電正接をプロットしたグラフを
図2に示す。
【0051】
【0052】
【0053】
図1、
図2より、他のエポキシ樹脂含有ワニスを用いた場合は、耐熱性の向上に比例し誘電特性が高く(悪く)なっていること及びその傾きがほぼ一定であることが分かる。これに対し本発明のエポキシ樹脂含有ワニスを用いた場合は、耐熱性向上に伴う誘電特性の悪化は緩やか傾きになっていることがわかった。
すなわち、本発明のエポキシ樹脂含有ワニスを用いる樹脂組成物は耐熱性に対して誘電正接が低い傾向があり、高度な耐熱性と誘電特性を両立することがわかる。