(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】集積回路
(51)【国際特許分類】
H04W 52/48 20090101AFI20221216BHJP
H04W 52/22 20090101ALI20221216BHJP
H04W 28/04 20090101ALI20221216BHJP
【FI】
H04W52/48
H04W52/22
H04W28/04 110
(21)【出願番号】P 2021098583
(22)【出願日】2021-06-14
(62)【分割の表示】P 2020001458の分割
【原出願日】2016-05-13
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴリチェク エドラー フォン エルプバルド アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】堀内 綾子
(72)【発明者】
【氏名】ワン リレイ
【審査官】▲高▼木 裕子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0051272(US,A1)
【文献】特表2016-504798(JP,A)
【文献】国際公開第2015/094257(WO,A1)
【文献】特開2015-092758(JP,A)
【文献】国際公開第2016/053451(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信システムにおけるアップリンクデータパケット送信の送信プロトコルを動作させるユーザ機器の処理を制御する集積回路であって、前記処理は、
再送信インジケータを受信するように動作する受信処理であり、前記再送信インジケータは、以前に送信されたデータパケットの再送信を基地局が要求しているか否かを示す、受信処理と、
前記再送信インジケータが前記要求の肯定を示す場合に、前記データパケットの前記以前の送信にすでに使用されたものと
同一の送信パラメータを用いて前記データパケットを再送信するように動作する送信処理と、
を含み、
前記再送信インジケータは、前記以前に送信されたデータパケットの一部の再送信が実行されることを示し、
前記送信処理は、前記以前に送信されたデータパケットの前記一部の前記再送信の送信電力については、前記以前に送信されたデータパケットの合計送信電力と等しくなるように送信電力を使用する、集積回路。
【請求項2】
前記データパケットの再送信に用いられる前記同一
の送信パラメータは、少なくとも前記以前に送信されたデータパケットのスクランブルコードである、
請求項1に記載の集積回路。
【請求項3】
前記以前に送信されたデータパケットの一部は、前記以前に送信されたデータパケットの50%または25%であり、
前記再送信の送信電力の使用において、前記データパケットの50%を使用すると、前記以前に送信されたデータパケットの前記一部の送信電力が2倍に増加する、請求項1
または2に記載の集積回路。
【請求項4】
前記受信処理は、前記以前に送信されたデータパケットの前記送信後の第1のタイミングに前記再送信インジケータを受信するようにさらに動作し、前記第1のタイミングは、固定、または、前記基地局により準静的に設定可能である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項5】
前記送信処理は、前記受信処理による前記再送信インジケータの受信後の第2のタイミングに前記データパケットの前記再送信を送信するようにさらに動作し、
前記第2のタイミングは、固定、または、前記基地局により準静的に設定可能、または、前記受信再送信インジケータに含まれる各情報に基づいて可変である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項6】
データパケットの再送信は、DCIと称するダウンリンク制御情報、および/または、HIと称するHARQインジケータによってもトリガ可能であり、
前記データパケットの前記以前の送信と前記再送信インジケータの前記受信との間の第1の期間、および/または、前記再送信インジケータの前記受信と前記データパケットの前記再送信との間の第2の期間は、DCIまたはHIの受信とそれに対応する前記データパケットの再送信との間の第3の期間よりも短く、前記第1の期間および前記第2の期間の少なくとも一方が4msよりも短い、
請求項1~5のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項7】
前記受信処理が、前記再送信インジケータによる前記データパケットの前記再送信を実行する要求および前記DCIまたはHIによる別のデータパケットの送信を同時に実行する要求を受信した場合、前記送信処理は、前記再送信インジケータによる前記要求に従い、前記DCIまたはHIによる前記要求を無視するようにさらに動作する、
請求項6に記載の集積回路。
【請求項8】
前記再送信インジケータは、前記送信処理により前記データパケットの前記以前の送信に使用されたHARQプロセスを示すHARQプロセス番号インジケータをさらに含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項9】
前記データパケットの前記以前の送信は、前記データパケットの初期送信または再送信である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項10】
前記受信処理は、HIと称するHARQインジケータの受信に使用される無線リソースにおいて前記再送信インジケータを受信するか、前記再送信インジケータをDCIとして受信するか、共通サーチスペースの予め設定された無線リソースにおいて前記再送信インジケータを受信するか、または、ユーザ機器固有のサーチスペースの予め設定された無線リソースにおいて前記再送信インジケータを受信するようにさらに動作する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項11】
前記ユーザ機器がデータパケットの送信に複数の送信アンテナを使用する場合、
前記受信処理は、前記データパケットの再送信をトリガする前記再送信インジケータを受信するようにさらに動作し、
前記送信処理は、前記複数の送信アンテナを用いて前記データパケットを前記基地局に再送信するようにさらに動作する、
または、
前記受信処理は、前記データパケットのうちの1つの再送信をトリガする前記再送信インジケータを受信するようにさらに動作し、
前記送信処理は、前記複数の送信アンテナを用いて前記データパケットのうちの前記1つを前記基地局に再送信するようにさらに動作する、
請求項1~10のいずれか一項に記載の集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システムにおけるアップリンクデータパケット送信の送信プロトコルを動作させる方法に関する。また、本開示は、本明細書に記載の方法に関与するユーザ機器および基地局を提供している。
【背景技術】
【0002】
[ロングタームエボリューション(LTE:Long Term Evolution)]
WCDMA(登録商標)無線アクセス技術に基づく第3世代移動体システム(3G)が世界中で広範囲に展開されている。この技術の改良または進化の第1段階には、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA:High-Speed Downlink Packet Access)および改良アップリンク(高速アップリンクパケットアクセス(HSUPA:High-Speed Uplink Packet Access)とも称する)の導入による競争優位な無線アクセス技術の付与を必然的に伴う。
【0003】
ユーザ需要のさらなる増加に備え、新たな無線アクセス技術に対して優位性を確保するため、3GPPでは、ロングタームエボリューション(LTE)と称する新たな移動体通信システムを導入した。LTEは、高速データ・メディア転送のほか、大容量音声対応について、今後10年間のキャリア要求を満たすように設計されている。高ビットレートを提供できることは、LTEの主要な尺度である。
【0004】
進化型UMTS地上無線アクセス(UTRA:UMTS Terrestrial Radio Access)およびUMTS地上無線アクセスネットワーク(UTRAN:UMTS Terrestrial Radio Access Network)と称するロングタームエボリューション(LTE)に関する作業項目(WI)仕様は、第8版(LTE Rel.8)として完結されている。LTEシステムは、低レイテンシ(low latency)かつ低コストな完全IPベースの機能を提供する効率的なパケットベース無線アクセスおよび無線アクセスネットワークを表す。LTEにおいては、所与のスペクトルを用いた柔軟なシステム配置の実現のため、1.4、3.0、5.0、10.0、15.0、および20.0MHz等の拡張可能な複数の送信帯域幅が指定されている。ダウンリンクにおいては、低シンボルレートによるマルチパス干渉(MPI)に対する固有の耐性、巡回プレフィックス(CP)の使用、および異なる送信帯域幅構成への親和性により、直交周波数分割多重(OFDM)ベースの無線アクセスが採用されていた。アップリンクにおいては、ユーザ機器(UE:User Equipment)の送信電力の制約を考慮して、ピークデータレートの向上よりも広範囲のサービスエリアの提供が優先されていたため、シングルキャリア周波数分割多元接続(SC-FDMA)ベースの無線アクセスが採用されていた。LTE Rel.8/9においては、多入力多出力(MIMO)チャネル送信技術を含む多くの主要なパケット無線アクセス技術が採用されており、高効率の制御シグナリング構造が実現されている。
【0005】
[LTEアーキテクチャ]
全体的なLTEアーキテクチャを
図1に示す。E-UTRANは、eNodeBからなり、E-UTRAユーザプレーン(PDCP/RLC/MAC/PHY)および制御プレーン(RRC)プロトコル終端を、ユーザ機器(UE)に向けて提供する。eNodeB(eNB)は、ユーザプレーンヘッダ圧縮および暗号化の機能を含む物理(PHY)、メディアアクセス制御(MAC)、無線リンク制御(RLC)、およびパケットデータ制御プロトコル(PDCP)レイヤをホスティングする。また、制御プレーンに対応した無線リソース制御(RRC)機能も提供する。eNodeBは、無線リソース管理、アドミッション制御、スケジューリング、交渉によるアップリンクサービス品質(QoS)の強制、セル情報ブロードキャスト、ユーザおよび制御プレーンデータの暗号化/復号化、ならびにダウンリンク/アップリンクユーザプレーンパケットヘッダの圧縮/解凍といった多くの機能を実行する。eNodeBは、X2インターフェースによって相互に接続されている。
【0006】
また、eNodeBは、S1インターフェースによってEPC(進化型パケットコア)にも接続されており、より具体的には、S1-MMEによってMME(モビリティ管理エンティティ)に、S1-Uによってサービングゲートウェイ(SGW)に接続されている。S1インターフェースは、MME/サービングゲートウェイとeNodeBとの間の多対多の関係に対応している。SGWは、eNodeB間ハンドオーバ時のユーザプレーンのモビリティアンカーとして、また、LTEと他の3GPP技術との間のモビリティのアンカーとしても作用しつつ(S4インターフェースを終端させるとともに、2G/3GシステムとPDN GWとの間のトラヒックを中継しつつ)、ユーザデータパケットのルーティングおよび転送を行う。アイドル状態のユーザ機器に対して、SGWは、ダウンリンクデータパスを終端させ、ダウンリンクデータがユーザ機器に到着した場合にページングをトリガする。SGWは、ユーザ機器のコンテキスト(たとえば、IPベアラサービスのパラメータ)またはネットワーク内部ルーティング情報を管理・記憶する。また、合法的傍受の場合のユーザトラヒックの複製も実行する。
【0007】
MMEは、LTEアクセスネットワークの主要な制御ノードである。再送信を含めて、アイドルモードのユーザ機器の追跡およびページング手順を担う。MMEは、ベアラ有効化/無効化プロセスに関与するとともに、初期接続時およびコアネットワーク(CN)ノードの再配置を伴うLTE内ハンドオーバ時におけるユーザ機器のSGWの選定を担う。また、(HSSとの相互作用により)ユーザの認証を担う。MMEでは、非アクセス層(NAS)シグナリングが終端するとともに、仮識別情報の生成およびユーザ機器への配分も担う。ユーザ機器の認証を確認して、サービスプロバイダの公衆陸上移動体ネットワーク(PLMN)に留まるとともに、ユーザ機器のローミング制限を強制する。MMEは、NASシグナリングの暗号化/完全性保護のためのネットワーク中の終端点であり、セキュリティの主要管理を取り扱う。MMEは、シグナリングの合法的傍受にも対応している。また、MMEは、S3インターフェースがSGSNからMMEで終端している状態のLTEと2G/3Gアクセスネットワークとの間のモビリティの制御プレーン機能も提供する。また、MMEは、ホームHSSに向かってS6aインターフェースを終端させ、ユーザ機器をローミングさせる。
【0008】
[LTEにおけるコンポーネントキャリア構造]
3GPP LTEシステムのダウンリンクコンポーネントキャリアは、時間-周波数領域において、いわゆるサブフレームに細分化される。3GPP LTEにおいては、
図2に示すように、各サブフレームが2つのダウンリンクスロットに分割され、第1のダウンリンクスロットが第1のOFDMシンボル内に制御チャネル領域(PDCCH領域)を含む。各サブフレームは、時間領域において所与数のOFDMシンボル(3GPP LTE(Rel.8)においては12個または14個のOFDMシンボル)からなり、各OFDMシンボルがコンポーネントキャリアの帯域幅全体に及ぶ。したがって、OFDMシンボルはそれぞれ、各サブキャリア上で送信される多数の変調シンボルからなる。LTEにおいて、各スロットの送信信号は、N
DL
RBN
RB
SC個のサブキャリアおよびN
DL
symb個のOFDMシンボルのリソースグリッドにより記述される。N
DL
RBは、帯域幅内のリソースブロックの数である。数量N
DL
RBは、セル中に設定されたダウンリンク送信帯域幅によって決まり、N
min,DL
RB≦N
DL
RB≦N
max,DL
RBを満たすものとする。ここで、N
min,DL
RB=6およびN
max,DL
RB=110はそれぞれ、最小および最大のダウンリンク帯域幅であり、現行版の仕様が対応している。N
RB
SCは、1つのリソースブロック内のサブキャリアの数である。通常の巡回プレフィックスサブフレーム構造の場合は、N
RB
SC=12およびN
DL
symb=7となる。
【0009】
たとえば3GPPロングタームエボリューション(LTE)において用いられるOFDM等を採用したマルチキャリア通信システムを仮定して、スケジューラにより割り当て可能なリソースの最小単位は、1つの「リソースブロック」である。
図2に例示の通り、物理リソースブロック(PRB)は、時間領域においては連続するOFDMシンボル(たとえば、7個のOFDMシンボル)として、周波数領域においては連続するサブキャリア(たとえば、コンポーネントキャリアの場合は12個のサブキャリア)として規定される。このため、3GPP LTE(Rel.8)において、物理リソースブロックは、時間領域における1スロットおよび周波数領域における180kHzに対応したリソースエレメントからなる(ダウンリンクリソースグリッドの詳細については、たとえばhttp://www.3gpp.orgで入手可能な3GPP TS 36.211「Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA);Physical Channels and Modulation (Release 8)」(現行版13.0.0、第6.2項)を参照できるが、これを本明細書に援用する)。
【0010】
1つのサブフレームは2つのスロットからなるため、いわゆる「通常の」CP(巡回プレフィックス)が用いられる場合はサブフレーム中に14個のOFDMシンボルが存在し、いわゆる「拡張」CPが用いられる場合はサブフレーム中に12個のOFDMシンボルが存在する。専門用語の便宜上、以下では、サブフレーム全体に及ぶ同じ連続サブキャリアと同等の時間-周波数リソースを「リソースブロック対」または同等の「RB対」もしくは「PRB対」と称する。
【0011】
用語「コンポーネントキャリア」は、周波数領域における複数のリソースブロックの組み合わせを表す。LTEの将来版において、用語「コンポーネントキャリア」は使用されなくなる。代替として、専門用語が「セル」に変更となるが、これは、ダウンリンクリソースおよび任意選択でアップリンクリソースの組み合わせを表す。ダウンリンクリソースのキャリア周波数とアップリンクリソースのキャリア周波数との連携については、ダウンリンクリソース上で送信されるシステム情報において指定される。
【0012】
コンポーネントキャリア構造に関する同様の仮定が後継版にも当てはまる。
【0013】
[より広い帯域幅に対応するためのLTE-Aにおけるキャリアアグリゲーション]
世界無線通信会議2007(WRC-07)において、IMTアドバンスの周波数スペクトルが決定された。IMTアドバンスの全周波数スペクトルが決定されたものの、実際に利用可能な周波数帯域幅は、地域または国ごとに異なる。ただし、利用可能な周波数スペクトルの概略の決定に続いて、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)においては、無線インターフェースの標準化が開始となった。3GPP TSG RAN #39会合においては、「E-UTRAのさらなる進展(LTEアドバンス)」に関する検討事項記載が承認された。この検討事項は、たとえばIMTアドバンスに関する要件の満足等、E-UTRAの進化について考慮すべき技術要素を網羅している。
【0014】
LTEアドバンスシステムが対応可能な帯域幅は100MHzである。一方、LTEシステムは、20MHzにしか対応できない。今日、無線スペクトルの不足が無線ネットワークの発展のボトルネックとなっており、結果として、LTEアドバンスシステムに十分な広さのスペクトル帯を見出すのが困難である。その結果、より広い無線スペクトル帯を獲得する方法を見出すことが喫緊の課題であり、その考え得る答えがキャリアアグリゲーション機能である。
【0015】
キャリアアグリゲーションにおいては、最大100MHzのより広い送信帯域幅に対応するために、2つ以上のコンポーネントキャリアが集約される。LTEシステムの複数のセルがLTEアドバンスシステムの1つのより広いチャネルに集約され、これは、LTEのこれらセルが異なる周波数帯であったとしても、100MHzに十分な広さである。
【0016】
少なくともコンポーネントキャリアの帯域幅がLTE Rel.8/9セルの対応帯域幅を超えない場合は、LTE Rel.8/9準拠となるようにすべてのコンポーネントキャリアを設定可能である。ユーザ機器により集約されたすべてのコンポーネントキャリアが必ずしもRel.8/9準拠である必要はない。Rel.8/9ユーザ機器がコンポーネントキャリアに留まらないように、既存のメカニズム(たとえば、バーリング(barring))が用いられるようになっていてもよい。
【0017】
ユーザ機器は、その能力に応じて、(複数のサービングセルに対応する)1つまたは複数のコンポーネントキャリア上で受信または送信を同時に行うようにしてもよい。キャリアアグリゲーションの受信および/または送信能力を備えたLTE-A Rel.10ユーザ機器は、複数のサービングセル上で受信および/または送信を同時に行うことができる。一方、LTE Rel.8/9ユーザ機器は、コンポーネントキャリアの構造がRel.8/9仕様に従うことを前提として、単一のサービングセル上でしか受信および送信を行うことができない。
【0018】
キャリアアグリゲーションは、(3GPP LTE(Rel.8/9)ヌメロロジを用いた)それぞれ周波数領域において最大110個のリソースブロックに限定される連続および非連続の両コンポーネントキャリアに関して対応がなされている。
【0019】
アップリンクおよびダウンリンクにおいて、同じeNodeB(基地局)に由来する異なる数のコンポーネントキャリアおよび異なる数の潜在的に異なる帯域幅を集約するように、3GPP LTE-A(Rel.10)準拠ユーザ機器を設定することができる。設定可能なダウンリンクコンポーネントキャリアの数は、UEのダウンリンクアグリゲーション能力によって決まる。逆に、設定可能なアップリンクコンポーネントキャリアの数は、UEのアップリンクアグリゲーション能力によって決まる。現在は、ダウンリンクコンポーネントキャリアよりも多くのアップリンクコンポーネントキャリアでは、移動端末を設定できない場合がある。通常のTDD配置においては、アップリンクおよびダウンリンクにおけるコンポーネントキャリア数および各コンポーネントキャリアの帯域幅が同じである。同じeNodeBに由来するコンポーネントキャリアは、同じサービスエリアを提供する必要がない。
【0020】
連続して集約されたコンポーネントキャリアの中心周波数間の間隔は、300kHzの倍数であるものとする。これは、3GPP LTE(Rel.8/9)の100kHz周波数ラスタに適合すると同時に、15kHz間隔のサブキャリアの直交性を保つためである。アグリゲーションシナリオに応じて、連続するコンポーネントキャリア間に少数の未使用サブキャリアを挿入することにより、n×300kHzの間隔を促進することができる。
【0021】
複数キャリアのアグリゲーションの性質は、MACレイヤまでしか現れない。アップリンクおよびダウンリンクの両者について、集約されたコンポーネントキャリアごとに1つのHARQエンティティがMACに求められる。1つのコンポーネントキャリアについては、(アップリンクにSU-MIMOがない場合)存在するトランスポートブロックは高々1つである。トランスポートブロックおよびその潜在的なHARQ再送信は、同じコンポーネントキャリア上でマッピングされる必要がある。
【0022】
キャリアアグリゲーションが設定された場合、移動端末とネットワークとのRRC接続は、1つだけである。RRC接続の確立/再確立においては、LTE Rel.8/9と同様に、1つのセルがセキュリティ入力(1つのECGI、1つのPCI、および1つのARFCN)および非アクセス層モビリティ情報(たとえば、TAI)を提供する。RRC接続の確立/再確立後、当該セルに対応するコンポーネントキャリアは、ダウンリンクプライマリセル(PCell)と称する。接続状態の1つのユーザ機器については常に、ダウンリンクPCell(DL PCell)およびアップリンクPCell(UL PCell)がそれぞれ1つだけ存在する。設定された一組のコンポーネントキャリアにおいて、他のセルは、セカンダリセル(SCell)と称し、そのSCellのキャリアは、ダウンリンクセカンダリコンポーネントキャリア(DL SCC)およびアップリンクセカンダリコンポーネントキャリア(UL SCC)である。1つのUEについて、PCellを含む最大5つのサービングセルを設定可能である。
【0023】
[MACレイヤ/エンティティ、RRCレイヤ、物理レイヤ]
LTEレイヤ2ユーザプレーン/制御プレーンプロトコルスタックは、RRC、PDCP、RLC、およびMACという4つのサブレイヤを含む。メディアアクセス制御(MAC)レイヤは、LTE無線プロトコルスタックのレイヤ2アーキテクチャの最下位サブレイヤであり、たとえば3GPP技術規格TS 36.321(現行版13.0.0)によって規定されている。その下の物理レイヤへの接続はトランスポートチャネルを介し、その上のRLCレイヤへの接続は論理チャネルを介する。したがって、MACレイヤは、論理チャネルとトランスポートチャネルとの多重化および逆多重化を実行する。送信側のMACレイヤは、論理チャネルを通じて受信したMAC SDUからトランスポートブロックとして知られるMAC PDUを構成し、受信側のMACレイヤは、トランスポートチャネルを通じて受信したMAC PDUからMAC SDUを復元する。
【0024】
MACレイヤは、論理チャネルを通じたRLCレイヤのデータ転送サービス(TS 36.321の第5.4項および5.3項を参照できるが、これを本明細書に援用する)を提供するが、これらの論理チャネルは、制御データ(たとえば、RRCシグナリング)を搬送する制御論理チャネルまたはユーザプレーンデータを搬送するトラヒック論理チャネルである。一方、MACレイヤからのデータは、ダウンリンクまたはアップリンクとして分類されるトランスポートチャネルを通じて物理レイヤと交換される。データは、無線送信の方法に応じてトランスポートチャネルへと多重化される。
【0025】
物理レイヤは、データおよび制御情報の実際の無線送信を担う。すなわち、物理レイヤは、送信側で、MACトランスポートチャネルからのすべての情報を無線搬送する。物理レイヤが実行する重要な機能としては、符号化および変調、リンクアダプテーション(AMC)、電力制御、(初期同期およびハンドオーバを目的とした)セルサーチ、ならびに、RRCレイヤに関する(LTEシステムの内側およびシステム間の)他の測定が挙げられる。物理レイヤは、変調方式、符号化レート(すなわち、変調・符号化方式(MCS))、物理リソースブロック数等の送信パラメータに基づいて、送信を実行する。物理レイヤの機能に関する詳細については、3GPP技術規格36.213(現行版13.0.0)に見られるが、これを本明細書に援用する。
【0026】
無線リソース制御(RRC)レイヤは、無線インターフェースにおけるUEとeNBとの間の通信および複数のセルを移動するUEのモビリティを制御する。また、RRCプロトコルは、NAS情報の転送にも対応している。RRC_IDLEのUEの場合、RRCは、着呼のネットワークからの通知にも対応している。RRC接続制御は、ページング、測定の設定および報告、無線リソース設定、初期セキュリティ有効化、ならびに、シグナリング無線ベアラ(SRB)およびユーザデータを搬送する無線ベアラ(データ無線ベアラDRB)の確立等を含む、RRC接続の確立、変更、および解放に関連するすべての手順を網羅する。
【0027】
無線リンク制御(RLC)サブレイヤは、主としてARQ機能を含み、データの分割(segmentation)および連結(concatenation)に対応している。すなわち、RLCレイヤは、MACレイヤが指定するサイズへとRLC SDUのフレーミングを実行する。後者2つにより、データレートとは独立してプロトコルオーバヘッドが最小限に抑えられる。RLCレイヤは、論理チャネルを介してMACレイヤに接続されている。各論理チャネルは、異なる種類のトラヒックを伝送する。RLCレイヤの上位レイヤは通常、PDCPレイヤであるが、場合によってはRRCレイヤである。すなわち、論理チャネルBCCH(ブロードキャスト制御チャネル)、PCCH(ページング制御チャネル)、およびCCCH(共通制御チャネル)上で送信されるRRCメッセージには、セキュリティ保護が不要なため、PDCPレイヤを迂回して直接RLCレイヤに向かう。RLCサブレイヤの主要なサービスおよび機能としては、
AM、UM、またはTMデータ転送に対応する上位レイヤPDUの転送、
ARQを通じた誤り訂正、
TBのサイズに応じた分割、
必要に応じた再分割(たとえば、無線品質すなわち対応TBサイズの変更時)、
FFSにおいて無線ベアラが同じ場合のSDUの連結、
上位レイヤPDUのシーケンス内配送、
複製検出、
プロトコル誤り検出および復元、
SDU破棄、
リセット、
が挙げられる。
【0028】
RLCレイヤが提供するARQ機能については、以下により詳しく論じる。
【0029】
[LTEのアップリンクアクセス方式]
アップリンク送信の場合、サービスエリアを最大化するには、電力効率の良いユーザ端末送信が必要である。進化型UTRAアップリンク送信方式としては、動的な帯域幅配分を伴うFDMAと組み合わされたシングルキャリア送信が選定されている。シングルキャリア送信が優先される主な理由は、マルチキャリア信号(OFDMA)と比べて、ピーク対平均電力比(PAPR)が低く、対応して電力増幅器の効率が改善されるとともにサービスエリアが改善されている(所与の端末ピーク電力に対してデータレートが高い)ことである。各時間間隔において、eNodeBは、ユーザデータを送信する一意の時間/周波数リソースをユーザに割り当てることにより、セル内直交性を確保する。アップリンクにおける直交アクセスによって、セル内干渉の除外によりスペクトル効率の向上が期待される。マルチパス伝搬に起因する干渉は、送信信号への巡回プレフィックスの挿入によって、基地局(eNodeB)で処理される。
【0030】
データ送信に用いられる基本的な物理リソースは、符号化情報ビットがマッピングされた1つの時間間隔(たとえば、サブフレーム)におけるサイズBWgrantの周波数リソースからなる。送信時間間隔(TTI)とも称するサブフレームは、ユーザデータ送信の最小時間間隔であることに留意されたい。ただし、サブフレームの連結によって、1つのTTIよりも長い時間にわたる周波数リソースBWgrantをユーザに割り当てることができる。
【0031】
[レイヤ1/レイヤ2制御シグナリング]
スケジューリングされたユーザにそれぞれの配分ステータス、トランスポートフォーマット、および他のデータに関連する情報(たとえば、HARQ)を知らせるため、ダウンリンク上でデータと併せてL1/L2制御シグナリングが送信される必要がある。制御シグナリングは、(ユーザ配分がサブフレームごとに変化し得ることを仮定して)サブフレームにおいてダウンリンクデータと多重化される必要がある。ここで、ユーザ配分はTTI(送信時間間隔)ベースで実行されてもよく、TTI長がサブフレームの倍数であることに留意されたい。TTI長は、すべてのユーザについてサービスエリアで固定されていてもよいし、異なるユーザごとに異なっていてもよいし、ユーザごとに動的であってもよい。一般的に、L1/L2制御シグナリングは、TTIごとに送信されればよい。L1/L2制御シグナリングは、物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)上で送信される。PDCCH上では、アップリンクデータ送信、ULグラントへの割り当ても送信されることに留意されたい。
【0032】
以下では、DL配分の各アップリンク割り当て用に伝達される詳細なL1/L2制御シグナリング情報について説明する。
【0033】
[ダウンリンクデータ送信]
ダウンリンクパケットデータ送信と併せて、L1/L2制御シグナリングが別個の物理チャネル(PDCCH)上で送信される。このL1/L2制御シグナリングは通常、以下に関する情報を含む。
【0034】
・データが送信される物理リソース(たとえば、OFDMの場合のサブキャリアまたはサブキャリアブロック、CDMAの場合のコード):この情報によれば、UE(受信機)は、データが送信されるリソースを識別することができる。
【0035】
・送信に用いられるトランスポートフォーマット:これは、データのトランスポートブロックサイズ(ペイロードサイズ、情報ビットサイズ)、MCS(変調・符号化方式)レベル、スペクトル効率、符号化率等が考えられる。この情報によれば(通例、リソース配分と併せて)、UE(受信機)は、情報ビットサイズ、変調方式、および符号化率を識別して、復調、デレートマッチング、および復号化プロセスを開始することができる。場合によっては、変調方式が明示的に伝達されるようになっていてもよい。
【0036】
・ハイブリッドARQ(HARQ)情報:
プロセス番号:データがマッピングされるハイブリッドARQプロセスをUEが識別できるようになる。
シーケンス番号または新規データインジケータ:送信が新たなパケットか再送信パケットかをUEが識別できるようになる。
冗長および/または信号点配置バージョン:使用されるハイブリッドARQ冗長バージョン(デレートマッチングに必要)および/または使用される変調信号点配置バージョン(復調に必要)をUEに知らせる。
【0037】
・UE識別情報(UE ID):L1/L2制御シグナリングが対象とするUEを知らせる。通常の実施態様において、この情報は、L1/L2制御シグナリングのCRCのマスクによって、他のUEがこの情報を読めないようにするために用いられる。
【0038】
[アップリンクデータ送信]
アップリンクパケットデータ送信を可能にするにため、ダウンリンク(PDCCH)上でのL1/L2制御シグナリングの送信によって、送信の詳細をUEに知らせる。このL1/L2制御シグナリングは通常、以下に関する情報を含む。
【0039】
・UEがデータを送信すべき物理リソース(たとえば、OFDMの場合のサブキャリアまたはサブキャリアブロック、CDMAの場合のコード)。
【0040】
・UEが送信に使用すべきトランスポートフォーマット:これは、データのトランスポートブロックサイズ(ペイロードサイズ、情報ビットサイズ)、MCS(変調・符号化方式)レベル、スペクトル効率、符号化率等が考えられる。この情報によれば(通例、リソース配分と併せて)、UE(送信機)は、情報ビットサイズ、変調方式、および符号化率を得て、変調、レートマッチング、および符号化プロセスを開始することができる。場合によっては、変調方式が明示的に伝達されるようになっていてもよい。
【0041】
・ハイブリッドARQ情報:
プロセス番号:データを得るべきハイブリッドARQプロセスをUEに知らせる。
シーケンス番号または新規データインジケータ:新たなパケットの送信またはパケットの再送信をUEに知らせる。
冗長および/または信号点配置バージョン:使用するハイブリッドARQ冗長バージョン(レートマッチングに必要)および/または使用する変調信号点配置バージョン(変調に必要)をUEに知らせる。
UE識別情報(UE ID):データを送信すべきUEを知らせる。通常の実施態様において、この情報は、L1/L2制御シグナリングのCRCのマスクによって、他のUEがこの情報を読めないようにするために用いられる。
【0042】
前述の情報の正確な送信方法には複数の異なる特色がある。さらに、L1/L2制御情報は、別の情報を含んでいてもよいし、情報の一部を省略していてもよい。たとえば、以下の通りである。
【0043】
・同期HARQプロトコルの場合、HARQプロセス番号は不要となる可能性がある。
【0044】
・チェイス合成が用いられる場合(常に同じ冗長および/もしくは信号点配置バージョン)または冗長および/もしくは信号点配置バージョンのシーケンスが予め規定されている場合、冗長および/または信号点配置バージョンは不要となる可能性がある。
【0045】
・電力制御情報が制御シグナリングに別途含まれていてもよい。
【0046】
・たとえばプリコーディング等のMIMO関連制御情報が制御シグナリングに別途含まれていてもよい。
【0047】
・マルチコードワードMIMO送信の場合は、複数のコードワードのトランスポートフォーマットおよび/またはHARQ情報が含まれていてもよい。
【0048】
LTEのPDCCH上で伝達されるアップリンクリソース割り当て(PUSCH)の場合は、LTEアップリンクに同期HARQプロトコルが採用されるため、L1/L2制御情報にHARQプロセス番号を含まない。アップリンク送信に用いられるHARQプロセスは、タイミングによって与えられる。さらに、冗長バージョン(RV)情報がトランスポートフォーマット情報と一緒に符号化される。すなわち、RV情報は、トランスポートフォーマット(TF)フィールドに埋め込まれることに留意されたい。TFの各MCSフィールドは、たとえば5ビットのサイズを有し、32個のエントリに対応する。RV1、2、または3の指定には、3つのTF/MCSテーブルエントリが確保される。その他のMCSテーブルエントリは、RV0を非明示的に指定するMCSレベル(TBS)を伝達するのに用いられる。PDCCHのCRCフィールドのサイズは、16ビットである。PUSCH上のアップリンクリソース配分の制御情報に関する詳細については、TS 36.212の第5.3.3項およびTS 36.213の第8.6項に見られる。
【0049】
LTEのPDCCH上で伝達されるダウンリンク割り当て(PDSCH)の場合、冗長バージョン(RV)は、2ビットフィールドで別個に伝達される。さらに、変調順序情報は、トランスポートフォーマット情報と一緒に符号化される。アップリンクの場合と同様に、PDCCH上では、5ビットのMCSフィールドが伝達される。明示的な変調順序を伝達するのにエントリのうちの3つが確保され、トランスポートフォーマット(トランスポートブロック)情報が提供されない。その他の29個のエントリについて、変調順序およびトランスポートブロックサイズ情報が伝達される。PUSCH上のアップリンクリソース配分の制御情報に関する詳細については、TS 36.212の第5.3.3項およびTS 36.213の第7.1.7項に見られるが、これらを本明細書に援用する。
【0050】
[E-UTRAN測定 - 測定ギャップ(measurement gaps)]
E-UTRANは、測定情報を報告し、たとえばUEモビリティの制御をサポートするようにUEを設定可能である。各測定設定要素は、RRCConnectionReconfigurationメッセージによってシグナリングされる。たとえば、アップリンクまたはダウンリンク送信がスケジューリングされない時間を測定ギャップが規定するため、UEは、測定を実行するようにしてもよい。測定ギャップは、ギャップを利用したすべての測定に共通である。周波数間測定では、UEの能力(たとえば、デュアル受信機を有するか)に応じて、測定ギャップの設定が必要となる場合がある。UEは、サービングセル以外のキャリア周波数上で動作するE-UTRAセルを識別する。UEが2つ以上の受信機を持たない場合、セル識別を含む周波数間測定は、周期的な測定ギャップにおいて実行される。それぞれ長さが6msの2つの考え得るギャップパターンをネットワークによって設定可能である。ギャップパターン#0ではギャップが40msごとに発生する一方、ギャップパターン#1ではギャップが80msごとに発生する。
【0051】
たとえば、基準信号受信電力(RSRP)は、測定期間にわたる測定帯域幅内のセル固有の基準信号に対してUEにより測定される。
【0052】
[ARQ/ハイブリッドARQ(HARQ)方式]
LTEにおいては、信頼性を与える2つの再送信レベル、すなわち、MACレイヤにおけるHARQおよびRLCレイヤにおける外部ARQ(outer ARQ)が存在する。RLC再送信メカニズムは、上位レイヤへの誤りのないデータ配送の提供を担う。これを実現するため、たとえば応答モードにおいて、受信機および送信機のRLCエンティティ間で(再)送信プロトコルが動作する。ノイズ、予測不可能なチャネル変動等に起因する送信誤りは、RLCレイヤが処理可能であるものの、ほとんどの場合は、MACレイヤのHARQ再送信プロトコルによって処理される。したがって、RLCレイヤの再送信メカニズムの使用は、当初は不要に見える場合がある。ただし、事実は異なり、実際には、フィードバックシグナリングの差が、RLCベースおよびMACベースの両再送信メカニズムの十分なきっかけとなる。たとえば、RLC-ARQメカニズムは、MAC HARQメカニズムで起こり得る潜在的なNACK対ACK誤りに対処する。
【0053】
信頼性の低いチャネル上でのパケット送信システムの誤り検出および訂正の一般的な技術は、ハイブリッド自動再送要求(HARQ)と称する。ハイブリッドARQは、順方向誤り訂正(FEC)とARQとの組み合わせである。FEC符号化パケットが送信され、受信機がパケットを正しく復号できない場合(誤りは通例、CRC(巡回冗長検査)によって検査される)、受信機は、パケットの再送信を要求する。
【0054】
[RLC再送信プロトコル]
RLCは、失われたPDUの再送信を要求するように設定されている場合、応答モード(AM:Acknowledged Mode)で動作しているものと考えられる。これは、WCDMA/HSPAで用いられる対応するメカニズムと同様である。
【0055】
全体として、RLCには、透過モード(TM:Transparent Mode)、非応答モード(UM:Unacknowledged Mode)、および応答モード(AM:Acknowledged Mode)という3つの動作モードが存在する。各RLCエンティティは、RRCによって、これらのモードのうちの1つで動作するように設定されている。
【0056】
透過モードにおいては、上位レイヤから受信されたRLC SDUに対してプロトコルオーバヘッドが追加されない。特別な場合に、分割/再組み立て能力が制限された送信を実現可能である。無線ベアラセットアップ手順においては、分割/再組み立ての使用の有無を取り決める必要がある。透過モードは、たとえば会話のように遅延の影響を大きく受けやすいサービスに用いられる。
【0057】
非応答モードにおいては、再送信プロトコルが使用されないため、データ配送が保証されない。PDU構造には、上位レイヤにおける完全性観測用のシーケンス番号を含む。RLCシーケンス番号に基づいて、受信UM RLCエンティティは、受信RLC PDUの並べ替えを実行可能である。分割および連結は、データに追加されたヘッダフィールドによって与えられる。非応答モードにおけるRLCエンティティは、アップリンクとダウンリンクとの間に関連付けが規定されていないため、単方向である。誤ったデータが受信された場合は、設定に応じて対応するPDUが破棄またはマーキングされる。送信機において、タイマにより指定される一定の時間内に送信されないRLC SDUは、破棄されて送信バッファから除外される。上位レイヤから受信したRLC SDUは、送信側でRLC PDUへと分割/連結される。受信側では、これに対応して再組み立てが実行される。非応答モードは、たとえば特定のRRCシグナリング手順の場合のMBMSおよびボイスオーバIP(VoIP)等のセルブロードキャストサービス等、配送時間の短さと比較して誤りのない配送の重要度が低いサービスに用いられる。
【0058】
応答モードにおいて、RLCレイヤは、自動再送要求(ARQ)プロトコルによる誤り訂正に対応しており、通常は、誤りのないデータ配送に一番の関心があるファイル転送等のIPベースのサービスに用いられる。RLC再送信は、たとえばピアRLC受信エンティティから受信されたRLCステータスレポートすなわちACK/NACKに基づく。応答モードは、高いエアインターフェースビット誤り率の存在下での再送信による確実なパケットデータの伝送用に設計されている。PDUの誤りまたは喪失の場合は、受信機からのRLCステータスレポートの受信に応じて、送信機により再送信が行われる。
【0059】
ARQは、誤ったPDUまたは失われたPDUの再送信のための再送信方式として利用される。たとえば、入力シーケンス番号をモニタリングすることにより、受信RLCエンティティは、失われたPDUを識別することができる。そして、受信RLC側でRLCステータスレポートを生成し、送信RLCエンティティにフィードバックして、失われたPDUまたは上手く復号されなかったPDUの再送信を要求することができる。また、RLCステータスレポートは、送信機によりポーリング可能である。すなわち、RLC送信機がポーリング機能を使用して、RLC受信機からステータスレポートを取得することにより、受信バッファステータスをRLC送信機に知らせる。ステータスレポートは、HARQ並べ替えが完了する最後のRLCデータPDUまで、RLCデータPDUまたはその一部上で肯定応答(ACK)または否定応答情報(NACK)を提供する。RLC受信機は、ポーリングフィールドを備えたPDUが「1」に設定された場合またはRLCデータPDUが失われた旨が検出された場合、ステータスレポートをトリガする。TS 36.322(現行版13.0.0)の第5.2.3項には、RLC送信機においてRLCステータスレポートのポーリングをトリガする特定のトリガが規定されており、これを本明細書に援用する。送信機においては、送信ウィンドウ内のPDUにのみ送信が許可されており、送信ウィンドウは、RLCステータスレポートによってのみ更新される。したがって、RLCステータスレポートが遅延すると、送信ウィンドウを進められず、送信が停滞する可能性がある。
【0060】
受信機は、トリガされたときRLCステータスレポートを送信機に送信する。
【0061】
すでに上述した通り、データPDU配送のほか、ピアエンティティ間で制御PDUを伝達可能である。
【0062】
[MAC HARQプロトコル]
MACレイヤは、送受信HARQ動作を担うHARQエンティティを含む。送信HARQ動作には、トランスポートブロックの送信および再送信ならびにACK/NACKシグナリングの受信および処理を含む。受信HARQ動作には、トランスポートブロックの受信、受信データの合成、およびACK/NACKシグナリングの生成を含む。以前のトランスポートブロックが復号されている間の継続送信を可能にするため、最大8つのHARQ並列プロセスの使用により、マルチプロセス「ストップアンドウェイト」(SAW)HARQ動作に対応する。各HARQプロセスは、別個のSAW動作を担うとともに、別個のバッファを管理する。
【0063】
HARQプロトコルにより提供されるフィードバックは、応答(ACK:Acknowledgement)または否定応答(NACK:Negative Acknowledgement)である。ACKおよびNACKは、送信が正しく受信され得るか否か(たとえば、復号に成功したか)に応じて生成される。さらに、HARQ動作においては、UEがインクリメンタル冗長(IR:Incremental redundancy)合成を採用して合成利得により別の符号化利得を得られるように、再送信において、元のトランスポートブロックからの異なる符号化バージョンをeNBが送信可能である。
【0064】
FEC符号化パケットが送信され、受信機がパケットを正しく復号できない場合(誤りは通例、CRC(巡回冗長検査)によって検査される)、受信機は、パケットの再送信を要求する。一般的に(かつ本明細書全体を通して)、追加の情報の送信は、「(パケットの)再送信」と称し、この再送信は、同じ符号化情報の送信を意味し得るものの、必ずしもそれを意味しない。また、たとえば異なる冗長バージョンの使用により、パケットに属する任意の情報(たとえば、追加の冗長情報)の送信も意味し得る。
【0065】
一般的に、HARQ方式は、同期または非同期として分類可能であり、各場合の再送信は適応的または非適応的である。同期HARQは、各HARQプロセスのトランスポートブロックの再送信が初期送信に対する所定の(周期的)時間に発生することを意味する。このため、送信タイミングから推論可能であることにより、再送信スケジュールまたはたとえばHARQプロセス番号を受信機に示すのに、明示的なシグナリングは必要ない。
【0066】
これに対して、非同期HARQによれば、初期送信に対する任意の時間に再送信が起こり得る。これは、エアインターフェース条件に基づいて再送信をスケジューリングする柔軟性を与える。ただし、この場合は、正しい合成およびプロトコル動作を可能にするため、たとえばHARQプロセスを受信機に示すには、別の明示的なシグナリングが必要となる。3GPP LTEシステムにおいては、8つのプロセスを伴うHARQ動作が用いられる。
【0067】
LTEにおいては、ダウンリンクに非同期適応HARQが用いられ、アップリンクに同期HARQが用いられる。アップリンクにおいて、再送信は、たとえばアップリンクグラントにおいて送信属性の新たなシグナリングが与えられているかに応じて、適応的であってもよいし、非適応的であってもよい。
【0068】
アップリンクHARQプロトコル動作(すなわち、アップリンクデータ送信の応答)においては、再送信のスケジューリング方法に関して2つの異なる選択肢が存在する。再送信は、NACKによる「スケジューリング」(同期非適応再送信とも称する)またはPDCCHの送信によるネットワークによる明示的なスケジューリング(同期適応再送信とも称する)が行われる。
【0069】
同期非適応再送信の場合、この再送信では、以前のアップリンク送信と同じパラメータを使用することになる。すなわち、この再送信は、それぞれ同じ変調方式/トランスポートフォーマットを使用する同じ物理チャネルリソース上で伝達されることになる。ただし、冗長バージョンは、0、2、3、1という所定の冗長バージョンのシーケンスで変化すなわち循環することになる。
【0070】
同期適応再送信がPDCCHによって明示的にスケジューリングされることから、eNodeBは、再送信の特定のパラメータを変更することができる。アップリンクにおける分断を回避するため、たとえば異なる周波数リソース上で再送信をスケジューリングすることも可能であるし、eNodeBが変調方式を変更するか、あるいは、再送信に使用する冗長バージョンをユーザ機器に示すことも可能である。UL HARQ FDD動作の場合、HARQフィードバック(ACK/NACK)およびPDCCHシグナリングは、同じタイミングで発生することに留意されたい。したがって、ユーザ機器は、同期非適応再送信がトリガされているか(すなわち、NACKのみが受信されているか)またはeNodeBが同期適応再送信を要求しているか(すなわち、PDCCHも伝達されているか)を1回だけ確認すればよい。
【0071】
PHICHは、eNodeBがPUSCH上の送信を正しく受信したかを示すHARQフィードバックを搬送する。HARQインジケータは、肯定応答(ACK)の場合に0、否定応答(NACK)の場合に1が設定される。アップリンクデータ送信用のACK/NACKメッセージを搬送するPHICHは、同じユーザ端末に対して、物理ダウンリンク制御チャネルPDCCHと同時に送信されるようになっていてもよい。このような同時送信により、ユーザ端末は、PDCCHによる端末への指示すなわちPHICHの内容に関わらず、新たな送信(NDIを切り替える新たなULグラント)または再送信(適応再送信と称する)(NDIを切り替えない新たなULグラント)を実行する旨の指示を決定することができる。端末のPDCCHが検出されない場合、PHICHの内容は、端末のUL HARQ挙動を決定するが、これは以下のようにまとめられる。
【0072】
NACK:端末は、非適応再送信すなわち同じHARQプロセスで以前に使用されたものと同じアップリンクリソース上での再送信を実行する。
【0073】
ACK:端末は、アップリンク再送信を一切実行せず、当該HARQプロセスの間、データをHARQバッファに維持する。当該HARQプロセスに関する別途送信は、PDCCHによって、後続のグラントによる明示的なスケジューリングが必要となる。このようなグラントの受信まで、端末は、「中断状態」となる。
【0074】
【0075】
LTEにおけるアップリンクHARQプロトコルのスケジュールタイミングを
図3に例示する。eNBがPDCCH上で第1のアップリンクグラント301をUEに送信し、これに応答して、UEがPUSCH上で第1のデータ302をeNBに送信する。PDCCHアップリンクグラントとPUSCH送信との間のタイミングは、現在のところ4msに固定されている。UEからの第1のデータ送信302を受信したのち、eNBは、受信した送信のフィードバック情報(ACK/NACK)および、例えば、ULグラント303をUEに送信する(あるいは、UL送信に成功した場合、eNBは、適当な第2のアップリンクグランドの送信によって、新たなアップリンク送信をトリガしている可能性もある)。PUSCH送信とフィードバック情報を搬送する対応するPHICHとの間の時間についても、現在のところ4msに固定されている。その結果、アップリンクHARQプロトコルにおける次の(再)送信機会を示すラウンドトリップタイム(RTT:Round Trip Time)は、8msである。この8msの後、UEは、eNBが指示する以前のデータの再送信304を送信するようにしてもよい。この別途動作に対して、別の再送信(たとえば、フィードバックとしてのNACK305の送信)の実行をeNodeBがUEに指示するように、以前に送信されたデータパケットの再送信304が再び成功しなかったものと仮定する。これに応答して、UEは、別途再送信306を実行することになる。
【0076】
図3の上部には、サブフレームのナンバリングのほか、HARQプロセスのサブフレームとの例示的な関連付けを示している。ここから明らかなように、8つの利用可能なHARQプロセスがそれぞれ、各サブフレームと循環的に関連付けられている。
図3の例示的なシナリオにおいては、初期送信302ならびにその対応する再送信304および306が同じHARQプロセス番号5により処理されるものと仮定する。
【0077】
UEで測定を実行する測定ギャップは、HARQ再送信よりも優先度が高い。このため、HARQ再送信が測定ギャップと衝突した場合はいつでも、HARQ再送信が起こらない。一方、PHICH上のHARQフィードバック送信が測定ギャップと衝突した場合はいつでも、UEがACKを予想されるHARQフィードバックの内容と仮定する。
【0078】
ダウンリンク制御情報には、HARQ動作を補助する複数のフィールドが存在する。
【0079】
・新規データインジケータ(NDI:New Data Indicator):トランスポートブロックの送信がスケジューリングされるたびに切り替えられる(すなわち、初期送信とも称する)(「切り替え」は、このHARQプロセスの以前の送信中の値に対して、関連するHARQ情報中に与えられたNDIビットの変更/切り替えが行われたことを意味する)。
・冗長バージョン(RV):送信または再送信用に選択されたRVを示す。
・MCS:変調・符号化方式
【0080】
HARQ動作は複雑であり、本明細書では完全には説明しない/できない上、本発明を完全に理解するのに必要でもない。HARQ動作の関連部分は、たとえば3GPP TS 36.321(現行版13.0.0)の第5.4.2項「HARQ operation」に記載されており、これを本明細書に援用するとともに、その一部を以下に引用する。
【0081】
「5.4.2 HARQ動作
5.4.2.1 HARQエンティティ
MACエンティティでは、アップリンクが設定されたサービングセルごとに1つのHARQエンティティが存在し、以前の送信の受信成功または不成功に関するHARQフィードバックを待ちながら、送信が継続的に起こり得るようにする多くの並列HARQプロセスを維持する。
HARQエンティティ当たりの並列HARQプロセスの数については、第8項[2]に指定されている。
物理レイヤがアップリンク空間多重用に設定されている場合[2]、所与のTTIとは、2つのHARQプロセスが関連付けられている。それ以外の場合は、所与のTTIと1つのHARQプロセスが関連付けられている。
所与のTTIにおいて、当該TTIにアップリンクグラントが示されている場合、HARQエンティティは、送信を行うべきHARQプロセスを識別する。また、物理レイヤにより中継された受信HARQフィードバック(ACK/NACK情報)、MCS、およびリソースを適当なHARQプロセスへとルーティングする。
TTIバンドルが設定されている場合は、パラメータTTI_BUNDLE_SIZEがTTIバンドルのTTIの数を与える。TTIバンドル動作は、同じバンドルの一部である各送信に対して同じHARQプロセスを呼び出すHARQエンティティに依拠する。バンドル内では、HARQ再送信が非適応的であり、TTI_BUNDLE_SIZEに従って、以前の送信からのフィードバックを待たずにトリガされる。バンドルのHARQフィードバックは、(たとえば、測定ギャップが生じた場合に)バンドルの最後のTTI(すなわち、TTI_BUNDLE_SIZEに対応するTTI)における送信が起こるか否かに関わらず、当該TTIにおいてのみ受信される。TTIバンドルの再送信もまたTTIバンドルである。TTIバンドルは、アップリンクが設定された1つまたは複数のSCellがMACエンティティに設定されている場合は非対応である。
TTIバンドルは、E-UTRANがRNサブフレーム設定と組み合わされたRN通信では非対応である。
ランダムアクセス時のMsg3の送信(第5.1.5項参照)には、TTIバンドルは当てはまらない。
各TTIについて、HARQエンティティは、
このTTIと関連付けられたHARQプロセスを識別し、各識別HARQプロセスについて、
このプロセスおよびこのTTIに関してアップリンクグラントが示された場合、
受信グラントがPDCCH上で仮C-RNTIにアドレス指定されておらず、このHARQプロセスの以前の送信中の値に対して、関連するHARQ情報中に与えられたNDIの切り替えが行われた場合、または
C-RNTIに関してPDCCH上でアップリンクグラントが受信されており、識別プロセスのHARQバッファが空である場合、または
ランダムアクセス応答においてアップリンクグラントが受信された場合、
Msg3バッファにMAC PDUが存在し、ランダムアクセス応答においてアップリンクグラントが受信された場合、
Msg3バッファから送信するMAC PDUを取得する。
上記以外の場合は、
「多重化・組み立て」エンティティから送信するMAC PDUを取得する。
MAC PDU、アップリンクグラント、およびHARQ情報を識別HARQプロセスに配送する。
新たな送信のトリガを識別HARQプロセスに指示する。
上記以外の場合は、
アップリンクグラントおよびHARQ情報(冗長バージョン)を識別HARQプロセスに配送する。
適応再送信の生成を識別HARQプロセスに指示する。
上記以外の場合で、このHARQプロセスのHARQバッファが空ではない場合、
非適応再送信の生成を識別HARQプロセスに指示する。
以前の送信の値に対してNDIが切り替えられたかを判定する場合、MACエンティティは、その仮C-RNTIに関して、PDCCH上ですべてのアップリンクグラントにおいて受信されたNDIを無視するものとする。」
【0082】
[NB-IoT/eMTCのアップリンクHARQプロトコル]
NB-IoTおよびeMTC(Rel.13)については、非同期UL HARQプロトコルが導入されている(また、アンライセンスキャリア上のアップリンクに関する進行中のRel.14作業項目のために議論されている)。旧来のLTEに用いられる同期アップリンクHARQプロトコルと異なり、NB-IoTまたはeMTC UEに対する再送信は、適応的かつ非同期である。より詳細に、再送信は、同じプロセスの以前のHARQ送信に対して固定タイミングで起こる必要がなく、再送信を明示的にスケジューリングする柔軟性を与える。さらに、明示的なHARQフィードバックチャネル(PHICH)は存在しないことになる。すなわち、再送信/初期送信は、PDCCHによって指示される(初期送信と再送信とでNDIが区別される)。本質的に、NB-IoTまたはeMTC UEに対するアップリンクHARQプロトコル挙動は、Rel-8以降のダウンリンクに用いられる非同期HARQプロトコルと酷似することになる。
【0083】
NB-IoTの場合は、UL HARQプロセスが1つだけ存在することに留意されたい。
【0084】
NB-IoT/eMTC UEに導入される非同期アップリンクHARQプロトコルの詳細については、3GPP TS 36.321(V13.1.0)(2016-03)の第5.4.2項を参照するものとし、これを本明細書に援用する。
【0085】
[短レイテンシ(Short Latency)検討事項(Study Item)]
パケットデータレイテンシは、ベンダー、事業者ひいてはエンドユーザが(速度テストアプリケーションにより)定期的に測定する性能測定基準の1つである。レイテンシ測定は、新たなソフトウェアリリースまたはシステムコンポーネントを確認する場合、システムを展開する場合、およびシステムを商用運用する場合、無線アクセスネットワークシステムの耐用期間のすべての段階で行われる。
【0086】
3GPP RATの以前世代よりも優れたレイテンシは、LTEの設計を誘導する1つの性能測定基準であった。LTEは現在、エンドユーザによって、移動無線技術の以前世代よりも高速なインターネットアクセスおよび低いデータレイテンシを提供するシステムとしても認識されている。
【0087】
3GPPコミュニティにおいては、LTEの最初のリリース(Rel.8)から最新のリリース(Rel.12)まで、データレートの向上に多大な努力が払われてきた。キャリアアグリゲーション(CA:Carrier Aggregation)、8×8MIMO、256QAM等の特徴が、L1データレートの技術的潜在力を300Mbpsから4Gbpsまで高めてきた。Rel.13においては、CAに最大32個のコンポーネントキャリアを導入することによって、さらに高いビットレートを導入することを3GPPは目標にしている。
【0088】
ただし、具体的にシステムの遅延を対象とした別途改善に関しては、ほとんど何もなされていない。パケットデータレイテンシは、システムの認識される応答性に対してのみ重要なわけではなく、スループットに間接的な影響を及ぼすパラメータでもある。HTTP/TCPは今日、インターネット上で用いられる優位なアプリケーションおよびトランスポートレイヤプロトコルの組である。HTTP Archive(http://httparchive.org/trends.php)によれば、インターネット上のHTTPベースのトランザクションの典型的なサイズは、数十Kbyte~1Mbyteの範囲である。このサイズ範囲において、TCPスロースタート期間は、パケットストリームの全伝送期間の大部分である。TCPスロースタート時は、性能がレイテンシの制約を受ける。このため、この種のTCPベースのデータトランザクションについては、平均スループットを向上させるためのレイテンシの改善をかなり容易に示すことができる。また、実際に高いビットレート(Rel.13 CAではGbpsの範囲)を実現するには、それに応じてUEバッファをサイズ規定する必要がある。RTTが長いほど、大きなバッファが必要となる。UEおよびeNB側でのバッファリング要件を抑える唯一の方法は、レイテンシの低減である。
【0089】
レイテンシの低減は、無線リソースの効率にも好影響を及ぼし得る。パケットデータレイテンシが低いと、一定の遅延範囲内で可能な送信試行数が増えるため、データ送信により高いBLERターゲットを使用することも可能となり、無線リソースの制限がなくなる一方、不十分な無線状態のユーザにも同レベルのロバスト性を保ち続ける。一定の遅延範囲内に可能な送信の数が増えると、同じBLERターゲットを維持する場合は、実時間データストリーム(たとえば、VoLTE)のよりロバストな送信も可能となる。これにより、VoLTEボイスシステムの容量が増大することになる。
【0090】
多くの既存の用途では、認識される経験品質の向上に関して低レイテンシの好影響を受けるその他多くが存在する。一例として、ゲーム、VoLTE/OTT VoIPのような実時間アプリケーション、およびテレビ電話/会議が挙げられる。
【0091】
将来的には、遅延がますます重要となる多くの新たなアプリケーションが存在することになる。一例として、車両の遠隔制御/運転、たとえばスマートグラスにおける拡張現実用途、または低レイテンシおよびクリティカル通信を要する特定の機械通信が挙げられる。
【0092】
レイテンシをある程度まで低下させるには、さまざまなプレスケジューリング方法を使用可能であるが、Rel.9において導入された低スケジューリング要求(SR)間隔と同様に、効率に関するすべての側面に必ずしも対応しているわけではない。
【0093】
また、ユーザプレーンデータのレイテンシが低減されると、制御シグナリングの伝送が速くなるため、コールセットアップ/ベアラセットアップ時間も間接的に短くなる可能性があることにも留意されたい。
【0094】
したがって、LTEの進化および競争性を確保するには、パケットデータレイテンシの検討および改善が必要と考えられる。
【0095】
この検討事項の目的は、E-UTRAN無線システムの強化を検討して、
・有効なUEのLTE-Uuエアインターフェース上のパケットデータレイテンシを大幅に低減するとともに、
・(接続状態で)長期間にわたって無効であったUEのパケットデータトランスポートラウンドトリップレイテンシを大幅に低減する、
ことである。
【0096】
検討範囲には、エアインターフェース容量、バッテリ寿命、制御チャネルリソース、仕様影響、および技術的実現可能性といったリソース効率を含む。FDDおよびTDDの両二重モードが考えられる。
【0097】
第1の側面として、通常の用途および使用事例におけるレイテンシの改善による応答時間の短縮およびTCPスループットの向上といった潜在的利益が特定され文書化される。結論として、この検討の側面は、レイテンシの低減が望ましい旨を示すことになる。
【0098】
第2の側面として、以下の領域を検討して文書化するものとする。
【0099】
・高速アップリンクアクセスソリューション
有効なUEおよび長時間にわたって無効であったもののRRC接続が維持されているUEに関し、現行のTTI長および処理時間を保つ場合および保たない場合の両者について、現規格が可能とするプレスケジューリングソリューションとの比較により、スケジューリングされたUL送信のユーザプレーンレイテンシを低減するとともに、プロトコルおよびシグナリングが強化されたリソース効率の高いソリューションを得ることに焦点を当てるものとする。
・TTIの短縮および処理時間の短縮
基準信号および物理レイヤ制御シグナリングへの影響を考慮に入れて、0.5msとOFDMシンボルとの間のTTI長の仕様影響、検討実現可能性、および性能を評価する。
下位互換性は保たれるものとする(これにより、同じキャリア上でRel.13以前のUEの正常動作が可能となる)。
【0100】
[アップリンク用の処理チェーン機能]
図4に示す処理チェーンについては、3GPP TS 36.212(V13.1.0)(2016-03)の第5.2.2項を参照するものとし、これを本明細書に援用する。
【0101】
図4は、シングルコードワード/トランスポートブロックの物理レイヤ内の符号化チェーン機能を含むブロック図である。入力は、MACレイヤにより継承されたトランスポートブロックからなる。トランスポートブロックの再送信のため、冗長バージョン(RV)は、「レートマッチングブロック」内の入力パラメータである。その結果、再送信に異なるRVを使用する場合は、少なくともブロック「レートマッチング」、「コードブロック連結」、「データ・制御多重化」、および「チャネルインターリーバ」を処理する必要がある。
【0102】
ブロック「チャネルインターリーバ」の出力は、
図5に示す物理チャネル処理ステップへの「コードワード」入力として機能するが、これについては、3GPP TS 36.211(V13.1.0)(2016-03)の第5.3項を参照するものとし、これを本明細書に援用する。
【0103】
図5は、物理レイヤ内の物理チャネル処理機能を含むブロック図である。入力は、[36.212]
図5.2.2-1に示される符号化チェーンの結果として得られるコードワードからなる。通常(非MTCまたはNB-IoT)の処理の場合、「スクランブル」ブロックは、その入力パラメータの中に、無線フレーム内の送信サブフレーム指標を有する。したがって、コードワード入力が同一であったとしても、サブフレーム指標が異なれば「スクランブル」ブロックの出力も異なる。トランスポートブロックの再送信のため、冗長バージョン(RV)は、「レートマッチングブロック」内の入力パラメータである。その結果、再送信に異なるRVを使用する場合は、少なくともブロック「レートマッチング」、「コードブロック連結」、「データ・制御多重化」、および「チャネルインターリーバ」を処理する必要がある。
【発明の概要】
【0104】
非限定的かつ例示的な実施形態は、ユーザ機器のアップリンクデータパケット送信の改良された送信プロトコル動作を提供する。
【0105】
独立請求項は、非限定的かつ例示的な実施形態を提供する。有利な実施形態は、従属請求項が対応する。
【0106】
本明細書に記載の複数の態様によれば、送信プロトコル動作が改良されるものとする。
【0107】
一般的な一態様によれば、通信システムにおけるアップリンクデータパケット送信の送信プロトコルを動作させるユーザ機器であって、高速再送信インジケータを受信する受信機を備えた、ユーザ機器が記載される。このため、高速再送信インジケータは、以前に送信されたデータパケットの再送信を基地局が要求しているか否かを示す。ユーザ機器は、データパケットの以前の送信にすでに使用されたものと同じ冗長バージョンを用いてデータパケットを再送信する送信機を備える。
【0108】
一般的な別の態様によれば、通信システムにおけるアップリンクデータパケット送信の送信プロトコルを動作させる基地局であって、高速再送信インジケータを送信する送信機を備えた、基地局が記載される。このため、高速再送信インジケータは、以前に送信されたデータパケットの再送信を基地局が要求しているか否かをユーザ機器に示す。基地局は、ユーザ機器によりデータパケットの以前の送信にすでに使用されたものと同じ冗長バージョンの再送信データパケットをユーザ機器から受信する受信機を備える。
【0109】
上記に対応して、一般的な別の態様において、本明細書に開示の技術は、通信システムにおけるアップリンクデータパケット送信の送信プロトコルをユーザ機器において動作させる方法を特徴とする。この方法は、FRIと称する高速再送信インジケータを受信するステップであり、FRIが、以前に送信されたデータパケットの再送信を基地局が要求しているか否かを示す、高速再送信インジケータを受信するステップを含む。この方法は、データパケットの以前の送信にすでに使用されたものと同じ冗長バージョンを用いてデータパケットを再送信するステップをさらに含む。
【0110】
上記に対応して、一般的な別の態様において、本明細書に開示の技術は、通信システムにおけるアップリンクデータパケット送信の送信プロトコルを基地局において動作させる方法を特徴とする。この方法は、FRIと称する高速再送信インジケータを送信するステップであり、FRIが、以前に送信されたデータパケットの再送信が要求されているか否かをユーザ機器に示す、高速再送信インジケータを送信するステップを含む。この方法は、ユーザ機器によりデータパケットの以前の送信にすでに使用されたものと同じ冗長バージョンの再送信データパケットをユーザ機器から受信するステップをさらに含む。
【0111】
開示の実施形態の別の利益および利点については、本明細書および図面から明らかとなるであろう。これらの利益および/または利点は、開示の明細書および図面の種々実施形態および特徴により個々にもたらされるようになっていてもよいが、すべてがもたらされる必要はなく、そのうちの1つまたは複数が得られるようになっていてもよい。
【0112】
これらの一般的かつ具体的な態様は、システム、方法、およびコンピュータプログラム、ならびにシステム、方法、およびコンピュータプログラムの任意の組み合わせを用いて実現されていてもよい。
【0113】
以下、添付の図面を参照して、例示的な実施形態をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【
図1】3GPP LTEシステムの例示的なアーキテクチャを示した図である。
【
図2】3GPP LTE(Rel.8/9)用に規定されたサブフレームのダウンリンクスロットの例示的なダウンリンクリソースグリッドを示した図である。
【
図3】アップリンク送信およびその再送信の場合のUEとeNodeBとの間の送信プロトコル動作を例示的に示した図である。
【
図4】シングルコードワード/トランスポートブロックの物理レイヤ内の符号化チェーン機能を含む模式的なブロック図である。
【
図5】物理レイヤ内の物理チャネル処理機能を含む模式的なブロック図である。
【
図6】本実施形態に係る、送信要求および対応する送信のタイミングチャートである。
【
図7】本実施形態に係る、同時に要求された再送信が衝突した場合の送信要求および対応する送信のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0115】
図3および「背景」項におけるその説明から分かるように、現在のところ、PDCCH/PHICHと対応するPUSCHアップリンク送信との間には4msの遅延が存在する。この遅延は主として、PDCCH/PHICHの検出のほか、上に概説した符号化チェーンおよび物理チャネル処理ステップを含むUE側で必要な処理に起因してもたらされる。この4msのレイテンシは、上述の「短レイテンシ」検討事項の範囲内で論じている通り、TTIの短縮によっても低減可能であるが、主要な時間の節約は、トランスポートブロックサイズの縮小および高速処理を可能にするハードウェア/ソフトウェア設計の潜在的な改善による。それでもなお、このような節約は依然として、再送信の場合であっても、同じトランスポートブロック(データパケット)の以前の送信と比較して、特に異なるRVが再送信に用いられる場合、上に概説した通り、送信チェーンのすべての機能ブロックを処理する必要性の制約を受ける。
【0116】
現時点で4msという長さの別の遅延には、PUSCH送信と同じHARQプロセスについてのPDCCH/PHICHによる次の潜在的トリガとの間のギャップがある。このギャップは、eNBがPUSCHを処理してその復号を試行するとともに、復号の試行に失敗した場合は、適正なスケジューリングおよびリンクアダプテーション手順を再び決定して、他のユーザのアップリンク送信の必要性も考慮に入れる必要がある再送信用の適当な一組の物理レイヤ送信パラメータ(MCS、RBの数と位置、RV、送信電力を含む)を決定するのに必要なため生じる。最終的に、これらのパラメータが決まったら、(適応再送信の場合の)(E)PDCCH上のDCIおよび/または(非適応再送信の場合の)PHICH上のHIによりUEまで運ばれる必要がある。
【0117】
特に異なるRVバージョンおよびサブフレームに依存したスクランブルのため、非適応再送信をトリガするコンパクトな方法としてPHICHを見なすことも可能であるが、UEは依然として、送信可能となる前にかなり多くのステップを実行する必要がある。
【0118】
本発明の目的は、UEからのPUSCH上の送信とeNodeBによる対応する再送信指示との間の遅延を抑えることである。また、別の目的は、eNodeBによる再送信の指示とUEからのPUSCH上の対応する再送信との間の遅延を抑えることである。
【0119】
本発明者らによれば、上記説明の問題のうちの1つまたは複数を緩和するのに、以下の例示的な実施形態が考えられる。
【0120】
本実施形態の複数の変形例の特定の実施態様は、3GPP規格が示す広範な仕様において実現されることになり、「背景」項においても一部を説明しているが、特定の主要な特徴については、記載の実施形態に関する以下の説明において追加する。本実施形態は、たとえば上記「背景技術」項において説明した3GPP LTE-A(Rel.10/11/12/13)通信システム等の移動通信システムにおいて使用可能であるのが好都合であるものの、この特定の例示的な通信ネットワークにおける使用には限定されないことに留意されたい。
【0121】
以下の説明は、本開示の範囲を制限するものではなく、本開示をより深く理解するための実施形態の一例に過ぎないと理解されるべきである。当業者であれば、本明細書において明示的に記載されていない方法で、特許請求の範囲に記載の本開示の一般原理がさまざまなシナリオに適用可能であることを認識するはずである。説明の便宜上、複数の仮定を行っているが、これらは以下の実施形態の範囲を制限しないものとする。
【0122】
以下、前述の問題を解決する一実施形態について詳しく説明する。本実施形態の異なる実施態様および変形例についても同様に説明する。
【0123】
本実施形態は、通信システムにおけるアップリンクデータパケット送信の送信プロトコルを動作させるユーザ機器(UE)を提供する。この送信プロトコルによれば、eNodeBにおいてPUSCHの復号の試行に失敗した場合、UEで短時間に高速な再送信をトリガするのに高速再送信インジケータ(FRI:Fast Retransmission Indicator)が用いられる。このFRIを採用した場合は、DCI/HIを使用した場合よりも早く、eNodeBによって再送信要求を送信することができる。
【0124】
UEがDCIへの応答よりも高速にデータパケットを再送信するため、UEは、本実施形態の一変形例によれば、HIによる非適応再送信のトリガのように同じ無線リソースを使用するのみならず、DCIまたはHIによりトリガされた最新の送信データパケットに適用可能であった他の同一のパラメータをデータパケットの再送信に使用するようにしてもよい。
【0125】
同様に、本実施形態は、アップリンクデータパケット送信の送信プロトコルを動作させる基地局であって、FRIのUEへの送信によって、以前に送信されたデータパケットの再送信が要求されているか否かを示す、基地局を提供する。このような要求に対して、基地局は、データパケットの以前の送信にすでに使用されたものと同じ冗長バージョンの再送信データパケットをUEから受信する。
【0126】
全般的な考察として、たとえば緊急を要するサービス品質(Quality-of-Service)要件のため、eNodeBがデータパケットの高速再送信をトリガしようとする場合は、無線チャネル容量の非最適使用を可能な限り犠牲にして、極力高速に再送信を行うことがより重要となる。このようなデータパケットの高速再送信を実現する主要な一態様として、eNodeBは、データパケットの以前の送信に対してすべてのパラメータがすでに決定されていることから、リンクアダプテーション評価を完全に行う必要がない。
【0127】
「背景」項で説明済みではあるが、再送信にHIを使用する場合であっても、再送信データブロックに対して冗長バージョンが変化することになる。この場合、冗長バージョンは、たとえば0、2、3、1という所定の冗長バージョンのシーケンスで循環する。
図4に示すように、再送信に対して具体的に選択された冗長バージョンは、「レートマッチング」ブロックの入力値である。このため、異なる冗長バージョン(RV)を使用する再送信データブロックごとに、少なくともブロック「レートマッチング」、「コードブロック連結」、「データ・制御多重化」、および「チャネルインターリーバ」を再び処理する必要がある。また、「チャネルインターリーバ」ブロックの出力は、
図5に示す物理チャネル処理全体に入力される。
【0128】
データパケットの再送信の送信に要する時間の大幅な短縮を実現するため、本実施形態の一実施態様において、UEは、データパケットの以前の送信にすでに使用されたものと同じ冗長バージョンをデータパケットの再送信に使用する。UEがそのデータパケットの再送信に、以前のDCIトリガ送信と同一の送信パラメータのサブセットすなわち以前に送信されたデータパケットと同じ冗長バージョンを使用するため、データパケットの冗長バージョンの変更に伴うすべての処理ステップを省略可能である。
【0129】
すなわち、データパケットの以前のDCI(または、HI)トリガ送信と同じRVを使用するだけの場合であっても、スクランブル(
図5に示す)の開始まで、新たな「レートマッチング」および後続ブロック(
図4に示す)を処理する必要がない。言い換えると、最も新しく送信されたコードワードをUEがバッファリングしている場合、高速再送信にはこれで十分であり、
図5に示すように、これらバッファリングされたコードワードを物理チャネル処理手順に供給する。
【0130】
図6には、送信要求および対応する送信のタイミングチャートを示している。この図から分かるように、eNodeBによるDCIの送信とUEによるデータパケットの対応する送信との間の期間は、期間t0として示されており、この期間t0は、「第3のタイミング」という名称であってもよい。LTEリリース8から採用されているアップリンクHARQプロトコルの場合、期間t0は、
図3に示すように4msの期間に対応しており、DCIによるアップリンクデータ送信のトリガに関する従来の場合を示している。
図6から分かるように、
図3との対照として、UEによるデータパケットの送信(PUSCH)とeNodeBによるFRIの送信との間の期間t1(
図6にも示す)は、t0以下であってもよい。一方、本実施形態の好適な変形例においては、t1が期間t0よりも短い。将来のさらなる発展により、期間t0が4ms未満となる可能性もあるが、本発明の範囲を制限するものではなく、本実施形態の記述では、特に明記しない限り、期間t0が4msであるものと仮定する。
【0131】
したがって、本実施形態の別の変形例として、「第1のタイミング」という名称も可能な期間t1は、固定期間または基地局により準静的に設定可能な期間であって、4ms未満であるのが好ましい。
【0132】
FRIは一般的に、少なくとも2つの状態を示し得ることに留意する。「状態1」によれば、FRIは、「肯定FRI」であり、高速再送信をトリガする一方、この場合は、受信データパケットの否定応答と見なされる可能性もある。「状態2」によれば、FRIは、「否定FRI」であり、高速再送信をトリガしない。この場合は、受信データパケットの肯定応答と見なされる可能性もあるからである。したがって、状態の機能的に等価な解釈としては、「肯定FRI」が「否定応答(NACK)」を搬送するFRIと等価であり、「否定FRI」が「応答(ACK)」を搬送するFRIと等価である。本実施形態の範囲を限定しない簡素化のため、以降の記述では、専門用語「肯定FRI」および「否定FRI」のみを使用する。
【0133】
図6からさらに導き出されることとして、eNodeBにより送信された肯定FRIとUEにより送信された対応するPUSCH送信との間の時間として規定される期間t2は、DCI(または、HI)とそれに対応するPUSCH送信との間の期間である期間t0よりも短くなければならない。期間t0と比較して期間t2が短くなるのは、上述した以前のDCI/HIトリガ送信と同一の送信パラメータのサブセットをデータパケットの再送信に使用することで、UEでの計算時間が節約された結果である。
図6には、同一の冗長バージョンの使用を示している。たとえば、冗長バージョンRV#0を使用することにより、DCIにより開始されたPUSCH送信およびFRIにより開始されたPUSCH送信の両者が実行される。言い換えると、RV#0は、DCI開始PUSCH送信により決定され、FRI開始PUSCH送信により再利用されたものである。
【0134】
したがって、本実施形態の別の変形例として、「第2のタイミング」という名称も可能な期間t2は、固定期間もしくは基地局により準静的に設定可能な期間、または送信/受信FRIに含まれる各情報に基づく変数である。好ましくは、期間t2は、4ms未満であってもよい。
【0135】
本実施形態の別の実施態様によれば、肯定FRIは、データパケットの以前の送信に使用されたものと同一の追加の送信パラメータで再送信が実行されることを示すが、これら追加の同一の送信パラメータはその後、UEによるデータパケットの再送信および基地局における再送信データパケットの受信に用いられる。
【0136】
本実施形態の別の実施態様によれば、データパケットの再送信に用いられる追加の同一の送信パラメータは、少なくとも以前に送信されたデータパケットのスクランブルコードである。同じスクランブルコード等の同一の送信パラメータを別途有する利点として、
図4に示したような前述のブロック「レートマッチング」から「チャネルインターリーバ」へのスキップのほか、データパケットの再送信に対して、
図5に示す「スクランブル」ブロックを処理する必要がない。
【0137】
本実施形態の別の変形例においては、以前のDCI開始PUSCH送信から、プリコーディング情報が利用可能となる時点、すなわち、
図5のブロック「プリコーディング」後まで、追加の同一の送信パラメータが再利用されるようになっていてもよい。たとえば、以前のDCI開始PUSCH送信から、別途追加の同一の送信パラメータが変調方式およびレイヤマッピングを再利用することにより、以前の送信と同じ送信方式が再送信に用いられるようになっていてもよい。すなわち、同数の送信レイヤおよび同じアンテナポートが用いられるようになっていてもよい。以前の送信と同じプリコーディングベクトルを使用することは、FRIが異なるプリコーダの使用を示していない場合に最も合理的である。
【0138】
ただし、以前のDCI開始PUSCH送信から
図5に示すブロック「プリコーディング」を越えて別途同一の送信パラメータを再利用する場合は、リソースの一部のみが再送信に利用される。たとえば、「リソースエレメントマッパ」ブロックでは、以前の送信に使用されたリソースの一部(たとえば、リソースブロックの50%等、リソースブロックの一部)のみにデータがマッピングされることになる。これと同等に、高速再送信の場合は、「リソースエレメントマッパ」ブロックの出力の一部のみが「SC-FDMA信号生成」ブロックへの入力として使用される。したがって、UEが以前の送信の「リソースエレメントマッパ」ブロックの出力をバッファリングし、部分的な再送信のトリガに際しては、バッファから対応する部分のみを読み出して、SC-FDMA信号生成への入力としてこれらを適用すれば十分である。高速再送信に使用される部分は、TS 36.213に規定された「リソースブロック」または「リソースブロック群」のような基準時間または周波数リソース単位の非負整数の倍数からなるのが好ましい。これには、一部のリソースブロックまたはリソースブロック群によるリソースの浪費なく、未使用リソースを他のUEに最適に割り当て可能となる利点がある。また、当該部分は、リソースブロックM
PUSCH
RBに関してPUSCHの帯域幅になるものとするが、ここでは、M
PUSCH
RB=2
α2・3
α3・5
α5であるとともに、α
2,α
3,α
5は、一組の非負整数である。したがって、指定された部分が非整数個のリソースブロックもしくはリソースブロック群となる場合または結果としての帯域幅M
PUSCH
RBが条件2
α2・3
α3・5
α5を満たさない場合、UEは、好ましくは指定部分を超える最も少ない整数個のリソースブロックもしくはリソースブロック群またはM
PUSCH
RB=2
α2・3
α3・5
α5をそれぞれ満たす指定部分よりも大きな最小整数値M
PUSCH
RBへの切り上げを行うものとする。
【0139】
本実施形態の別の変形例においては、追加の同一の送信パラメータとして、データパケットの再送信用の基準信号の生成と同じ「循環シフトパラメータ」が用いられるようになっていてもよい。この点に関しては、3GPP技術規格36.211の第5.5.2項を参照する。生成された基準信号に同一の「循環シフトパラメータ」を使用することにより、再送信の全処理時間がさらに短くなる。別の変形例においては、eNodeBにより送信されたFRIが「循環シフトパラメータ」に関する情報をさらに含んでいてもよく、UEによって、データパケットの再送信用の基準信号の生成に用いられることになる。
【0140】
データブロックの最新の送信がUL-SCHデータからなるのみならず、ACK/NACK、CSI等のアップリンク制御情報(UCI)を含む可能性もある。
図4から分かるように、このような情報は、ブロック「データ・制御多重化」においてデータに追加される。一般的に、このような情報は、データブロックの最新の送信と同様に、FRIによりトリガされた再送信にも追加されるのが好ましい。ただし、同一のACK/NACKまたはCSI情報を送信することは、必ずしも合理的ではない。以前の送信とトリガ再送信との間の遅延によって、内容が失効し得るためである。したがって、別の実施形態においては、再送信にUCIを含まないが、情報が存在していたようにこれらのリソースを確保する。結果として、データブロックビットの順序は不変にすることができるため、再送信のためにビットを並び替える手順が別途必要になることはない。
【0141】
同様に、アップリンクサブフレームのリソースの一部、好ましくはサブフレームの末尾には、サウンディング基準シンボル(SRS:Sounding Reference Symbol)を含んでいてもよい。このような場合は、以前の送信と同様に、高速再送信がSRSを含んでいてもよい。すなわち、リソースが確保される(たとえば、ミュート)。結果として、PUSCHのリソースエレメントへのマッピングは不変を維持することができるため、再送信のためにREを並び替える手順が別途必要になることはない。
【0142】
図6および
図7を参照して、データパケットの受信に成功しなかった場合は、UEからのデータパケットの再送信がFRI、DCI、またはHIのいずれを用いて要求され、FRI、DCI、またはHIのいずれをUEに送信するかをeNodeBが柔軟に判定してもよいことに留意する。同様に、UEは、FRI、DCI、またはHIのいずれかの受信に応じて、上述の通り、受信したFRI、DCI、またはHIに基づいてデータパケットの対応する送信/再送信を柔軟に実行するようにしてもよい。
【0143】
本実施形態の別の実施態様によれば、FRIは、以前に送信されたデータパケットの一部の再送信が実行されることを示し、任意選択で、一部が以前に送信されたデータパケットの50%または25%である。このような場合、UEは、以前に送信されたデータパケットの示された部分を再送信する。UEは、以前に送信されたデータパケットの上記部分の再送信の合計送信電力が以前に送信されたデータパケットの合計送信電力と等しくなるように、再送信に送信電力を適応させるようにしてもよく、任意選択で、データパケットの50%を使用すると、以前に送信されたデータパケットの上記部分の送信電力が2倍に増加する。
【0144】
以前の送信の周波数リソースの一部のみが再送信に利用される場合は、UEが部分的な再送信に送信する合計電力も一部となる。ただし、部分的な再送信データの品質を向上させるため、その電力を相互に、周波数リソースの割合まで増加させることができる。たとえば、部分的な再送信に周波数リソースの50%のみを利用する場合、部分的な再送信の各REは、2倍に増加可能であり、部分的な再送信の全送信REと完全再送信との合計送信電力は等しい。このような部分的な再送信は、完全再送信によってトランスポートブロックの復号を成功に導く必要がない場合またはeNodeBが周波数リソースの一部のみを再送信に使用して、残りの部分を別のUEにスケジューリングできるようにしようとする場合、特に魅力的である。
【0145】
部分的な再送信に利用される周波数リソースの量は、以下に従って決定することができる。
1.準静的な設定:肯定FRIが高速再送信をトリガした場合はいつでも、UEが設定値を調べ、それに応じて適用する。
2.FRI内での指定:FRIは、部分的なリソースの量を決定するインジケータを搬送可能である。たとえば、第1のFRI値が50%の部分的再送信をトリガし、第2のFRI値が25%の部分的再送信をトリガし、第3の値が完全再送信(すなわち、100%)をトリガする一方、第4のFRI値は高速再送信をトリガしない。したがって、この例では、3つの肯定FRI値および1つの否定FRI値が存在する。
【0146】
これらの組み合わせも可能である。たとえば、eNodeBが3つの異なる部分的再送信値(場合により100%を含む)を設定した後、肯定FRI値はそれぞれ、対応する準静的な部分的再送信値をそれぞれ指し示す(1つのFRI値は高速再送信を指示しない(すなわち否定FRI値))。
【0147】
本実施形態の別の実施態様において、ユーザ機器は、データパケットを送信する複数の送信アンテナを備えていてもよい。この場合は、UEが複数の送信アンテナを用いてデータパケットをeNodeBに再送信するように、受信FRIがデータパケットの再送信をトリガする。すなわち、SU-MIMOのように送信が2つのトランスポートブロック(コードワード)を含む場合は、
図5に関して当然のことながら、肯定FRIが両トランスポートブロックの再送信を指示して、過剰なPHY再処理なく、送信バッファを可能な限り多く再利用するのが好ましい。この場合は、
図5を参照して、両トランスポートブロックを再送信する場合に送信バッファを再利用すると、
図5に示すブロックを一切処理する必要がなくなる。すなわち、2つのトランスポートブロックの再送信は、各「SC-FDMA信号生成」ブロックの直後に起こるため、別途処理なく、eNodeBに直接送信可能である。
【0148】
同じく複数のアンテナを使用可能なeNodeB側では、トランスポートブロックの再送信をトリガするFRIの送信に際して、再送信されたトランスポートブロックが複数の受信アンテナを用いてeNodeBで受信される。
【0149】
ただし、(単一の)FRIによる両トランスポートブロックの再送信のトリガは、無線リソース効率および信号対雑音比を犠牲にすることになる。したがって、本実施形態の別の実施態様では、1つのトランスポートブロックのeNodeBへの再送信および1つのトランスポートブロックのeNodeBでの受信が複数の送信アンテナを用いて実行されるように、FRI当たり1つのトランスポートブロックの再送信をトリガすることになる。この場合は、SC-FDMA信号が送信に利用可能となるまで、UEでより多くの処理が必要になることに留意する。すなわち、
図5を参照して、FRIが1つのトランスポートブロックの再送信のみをトリガする場合は、「SC-FDMA信号生成」ブロックまで、「レイヤマッピング」ブロックの処理を伴う。
【0150】
上記説明は、再送信の挙動に関し、これによれば、同じトランスポートブロックのデータが送信および再送信に使用されるものと仮定する。すなわち、再送信が同じHARQプロセスに当てはまることを暗示している。ただし、同期または非同期プロトコルに従って、同時にスケジューリング可能な複数のHARQプロセスが存在していてもよい。
【0151】
いずれの場合も、
図7に示すように、高速再送信は時間「#t_pusch」でのTTIに発生することになる。したがって、一般的に異なるHARQプロセスに関して、時間「#t_pusch」でのPUSCH送信が肯定FRIにより時間「#t_pusch-t2」にトリガされる可能性もあるし、DCI(または、HI)により時間「#t_pusch-t0」にトリガされる可能性もある。したがって、
図7においては、異なるHARQプロセスP0およびP1を示している。
図7に示す例示的な場合においては、HARQプロセスP0が時間「#t_pusch」におけるFRI開始再送信に関する一方、HARQプロセスP1が時間「#t_pusch-t0」におけるDCI開始再送信に関する。
【0152】
図7にさらに示すように、両HARQプロセスP0およびP1の再送信は、結果的に時間「#t_pusch」における再送信となる。ただし、送信の衝突を回避するため、UEは、時間「#t_pusch」になすべきことを決定する必要がある。第1の選択肢は、HARQプロセスP0の再送信を続けることである。すなわち、時間「#t_pusch-t2」に受信されたFRIトリガに従う。第2の選択肢は、HARQプロセスP1の再送信を続けることである。すなわち、時間「#t_pusch-t0」に受信されたDCI(または、HI)に従う。
【0153】
この点、本実施形態の好適な一実施態様は、UEの具体的な挙動に関し、FRIによるデータパケットの再送信を実行する要求およびDCIまたはHIによる別のデータパケットの送信を同時に実行する要求を受信した場合、FRIによる要求に従う(すなわち、前述の第1の選択肢)とともにDCIまたはHIによる要求を無視する。
【0154】
「背景」項に示した通り、HIとDCIとが衝突する場合、UEは、DCIに従い、HIを無視する。ただし、これとは対照的に、本実施形態の別の実施態様により提供されるような場合は、高速再送信に従って、DCI(または、HI)を無視するものとする。これは、同じサブフレームに対応するDCIよりも遅い時点に肯定FRIが送信されたためである。その結果、eNodeBは、UEがDCIではなく肯定FRIに従うようにしようとする場合、肯定FRIのみを送信すると仮定すべきである。そうでなければ、当該サブフレームについては、肯定FRIによる再送信をトリガしていないことになる。
【0155】
図6に関して上述した通り、UEがFRIによる要求に従って送信の衝突を回避する場合も、
図7に示すように、同一の冗長バージョンRV#0の使用により、DCIにより開始されるPUSCH送信およびFRIにより開始されるPUSCH送信の両者が実行される。言い換えると、RV#0は、DCI開始PUSCH送信により決定され、FRI開始PUSCH送信により再利用されたものである。
【0156】
さらに、本実施形態の別の変形例において、FRIは、HARQプロセス番号インジケータをさらに含むことにより、送信機によってデータパケットの以前の送信に使用された特定のHARQプロセスを示す。
【0157】
以下の表においては、受信FRIおよびDCI/HIの内容に関する複数の場合について、UE挙動を示す。
【表2】
【0158】
以下の表においては、受信FRIおよびDCI/HIの内容に関する複数の場合について、別のUE挙動を示す。
【表3】
【0159】
以上の説明を参照して、本実施形態の一変形例によれば、FRIは、以下の要素のうちの少なくとも1つを示していてもよい。
・高速再送信がトリガされたか否か(肯定FRIまたは否定FRIあるいはNACKまたはACK)
・高速再送信がトリガされた場合:トリガされた再送信のHARQプロセス番号インジケータ
・高速再送信がトリガされた場合:再送信されるデータブロックの要求部分を示す部分的再送信パラメータ
・高速再送信がトリガされた場合:UEが送信するまでの期間t2に関する指示
【0160】
本実施形態の別の実施態様によれば、UEは、HIの受信に使用される無線リソースにおいてFRIを受信するか、FRIをDCI(たとえば、DCIフォーマット7)として受信するか、共通サーチスペースの予め設定された無線リソースにおいてFRIを受信するか、または、ユーザ機器固有のサーチスペースの予め設定された無線リソースにおいてFRIを受信する。
【0161】
一般的に、FRIは、以下のうちの1つの方法で送信可能である。
・UEがPHICHの発見を予想する同じRE(ただし、PUSCH送信と対応するHIを搬送するサブフレームとの間の時間よりも期間t1が短い場合は異なるサブフレーム)すなわちサブフレーム/TTIの制御チャネル領域内のREGに属するREにおける送信、または、
・DCIの共通サーチスペースに属するREすなわちすべてのUEがFRIを検出するREにおける送信:または
・複数のUEおよび/またはサブフレームのFRIが好適に多重化されるDCIにおける送信。たとえば、DCIは、4つのFRIを含む可能性もあり、第1のFRIをUE1に適用可能、第2のFRIをUE2に適用可能といったように、他も同様である。特にTDDシステムの場合は、1つのUEについて複数のFRIをDCIへと多重化またはバンドルすることも可能であるため、たとえば最初の4つのFRIをUE1の4つのPUSCH送信に適用可能、次の3つのFRIをUE2の3つのPUSCH送信に適用可能といったように、他も同様である。複数のUEについてFRIが多重化される場合は、DCIが共通サーチスペースにおいて送信されるのが好ましい。1つのUEについてのみFRIが送信される場合は、DCIがUE固有のサーチスペースにおいて送信されるのが好ましい。
【0162】
本実施形態の一変形例として、上記内容のうちの1つまたは複数をFRIに含む代わりに、上記のうちの1つまたは複数を用いて、FRIが送信されるREを決定することも可能である。たとえば、HARQプロセスによって、FRIが送信されるREを決定することも可能である。そして、UEは、複数のFRIリソースをモニタリングし、最大電力で受信されたFRIのみを評価するのが好ましい。
【0163】
上記実施形態の複数の変形例に関して説明した通り、「背景」項において説明したHIによりトリガされる再送信とは対照的に、肯定FRIは、再送信に対するRVの非明示的または明示的な変化を暗示しない。ただし、本実施形態の別の変形例として、FRIによりトリガされた再送信は、PHICHによる非適応再送信の潜在的なRV決定ルールに影響を及ぼさないものとする。「背景」項において上記した通り、PHICHによりトリガされる再送信は、RV{0,2,3,1}間で非明示的かつ循環的に切り替わる。この変形例によれば、後々の非適応再送信のRV決定を目的として肯定FRIが無視されるものとする。すなわち、RV切り替え/循環では、以前のDCI/HIトリガ(再)送信のRVのみを考慮に入れるものとする。
【0164】
本実施形態の別の変形例として、上述の通りFRIを使用するほか、PUSCHが1msのTTI全体ではなく(上記「短レイテンシ」検討事項で論じている)短いTTIのみを占有する場合は、トランスポートブロックが1msのTTIよりも小さいため、eNodeBにおける復号結果(OK/失敗)を即座に利用可能となる。したがって、この場合は、従来システムにおけるDCI/HIよりも早くFRIを送信することも可能である。
【0165】
本実施形態の別の実施態様として、データパケットの以前の送信は、「データパケットの初期送信」または「データパケットの再送信」であってもよい。
【0166】
[本開示のハードウェアおよびソフトウェア実装]
他の例示的な実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアと連携したソフトウェアの使用による上述の種々実施形態の実装に関する。これに関連して、ユーザ機器(移動端末)が提供される。ユーザ機器は、本明細書に記載の方法を実行するように構成されており、受信機、送信機、プロセッサ等の対応するエンティティがこれらの方法に適宜関与する。
【0167】
コンピュータ機器(プロセッサ)を用いて種々実施形態が実装または実行され得ることもさらに認識される。コンピュータ機器またはプロセッサは、たとえば汎用プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または他のプログラム可能な論理デバイス等であってもよい。また、種々実施形態は、これらのデバイスの組み合わせによって実行または具現化されていてもよい。特に、上述の各実施形態の説明に使用した各機能ブロックは、集積回路としてのLSIにより実現可能である。これらは、チップとして個々に形成されていてもよいし、機能ブロックの一部または全部を含むように1つのチップが形成されていてもよい。これらは、データ入出力が結合されていてもよい。ここで、LSIは、集積度の違いに応じて、IC、システムLSI、超LSI、または極超LSIとも称し得る。ただし、集積回路を実装する技術はLSIに限定されず、個別回路または汎用プロセッサを用いることにより実現されるようになっていてもよい。また、LSIの製造後にプログラム可能なFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはLSIの内側に配設された回路セルの接続および設定を再構成可能な再構成可能プロセッサが用いられるようになっていてもよい。
【0168】
さらに、種々実施形態は、プロセッサによる実行またはハードウェアにおける直接的な実行がなされるソフトウェアモジュールによって実装されていてもよい。また、ソフトウェアモジュールおよびハードウェア実装の組み合わせも可能と考えられる。ソフトウェアモジュールは、たとえばRAM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、レジスタ、ハードディスク、CD-ROM、DVD等、如何なる種類のコンピュータ可読記憶媒体に記憶されていてもよい。さまざまな実施形態の個々の特徴は、個別または任意の組み合わせにより、別の実施形態の主題であってもよいことにさらに留意されたい。
【0169】
当業者には当然のことながら、特定の実施形態に示すように、本開示の多くの変形および/または改良が可能である。したがって、本実施形態は、あらゆる点で例示に過ぎず、何ら限定的なものではないと考えるべきである。