(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】一酸化窒素の送達による治療の最中に酸素化を監視する装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61M 16/10 20060101AFI20221216BHJP
【FI】
A61M16/10 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021107613
(22)【出願日】2021-06-29
(62)【分割の表示】P 2020102066の分割
【原出願日】2014-03-13
【審査請求日】2021-07-27
(32)【優先日】2013-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516160429
【氏名又は名称】マリンクロット ホスピタル プロダクツ アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フラナガン, クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン, デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】アッカー, ジャロン
(72)【発明者】
【氏名】トルミー, クレイグ アール.
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-315739(JP,A)
【文献】特表2004-524933(JP,A)
【文献】特表2002-503507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0076907(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0118407(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0241957(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0240019(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央処理装置(CPU)を用いて、一酸化窒素と呼吸ガスの組み合わせの流れの平均気道圧(MAP)を圧力測定手段によって測定すること、
前記CPUを用いて、吸入酸素濃度(FiO
2)をFiO
2測定手段によって測定すること、
前記CPUを用いて、動脈血酸素飽和度(SaO
2)、末梢血中酸素飽和度(SpO
2)および/または動脈血酸素分圧(PaO
2)から選択される1つ以上の酸素測定を酸素測定手段によって測定すること、
前記CPUを用いて、平均気道圧測定
、酸素測定、およびFiO
2測定に基づいて酸素化パラメータを計算すること、
前記CPUを用いて、前記酸素化パラメータが予め決められた限界値を下回る
かまたは上回る
かを計算すること、
前記CPUを用いて、前記酸素化パラメータが前記予め決められた限界値内に入るように、前記一酸化窒素の流れまたは前記呼吸ガスの流れを自動的に調整すること、
および
前記CPUを用いて、酸素化指数および/または酸素飽和度指数を含む前記酸素化パラメータの表現を表示すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記圧力測定手段は、圧力トランスデューサである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧力測定手段は、人工呼吸器である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
SpO
2をモニター可能な血液ガスモニターをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
流量トランスデューサにより前記呼吸ガスの流れを測定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
メトヘモグロビンを測定すること、このメトヘモグロビン測定を表示することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
メトヘモグロビンの予め決められた値を示すアラームを発することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酸素飽和度指数を継続的に監視することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸素飽和度指数が低下している
か否かを決定することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸素飽和度指数が低下している場合、前記一酸化窒素の用量を低下させることができることの表示を提供することを更に含む
、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的な換気または非侵襲性の支援を受けている間に、吸入された一酸化窒素によって治療する最中に、酸素化(oxygenation)パラメータを計算し、監視し、およびその傾向を示す(trending)装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸入一酸化窒素(NO)の安全性および有効性は、血管拡張薬、静脈内輸液(intravenous fluids)、重炭酸療法、および機械的な換気を含む低酸素性呼吸不全の治療を受けている患者において確立された。吸入によってNOを安全かつ効果的に投与するための方法は、当技術分野では周知である。吸入用のNOは市販されている。NO吸入は、好ましくは、確立された医療行為に従っている。
【0003】
吸入一酸化窒素(iNO:inhaled nitric oxide)は、肺高血圧症の臨床上のまたは心エコーによる証拠に関連した低酸素性呼吸不全の治療に適応が必要とされる血管拡張薬である。患者において、iNOは、酸素化の改善、および体外式膜型人工肺(ECMO)療法の必要性の低下を示した。NOは、細胞質グアニル酸シクラーゼに結合し、それを活性化させ、それにより、環状グアノシン3’,5’-一リン酸(cGMP)の細胞内レベルを上昇させる。これは、次に、血管平滑筋を弛緩させて、血管拡張を生じる。吸入NOは、効率的なヘモグロビンスカベンジング(hemoglobin scavenging)の結果、全身血管系の効果は最小限にして、肺血管系を選択的に拡張する。急性肺損傷(ALI)および急性呼吸促迫症候群(ARDS)では、動脈血酸素分圧(PaO2)の上昇は、良好に換気が行われている肺領域における肺血管拡張に続いて起こると考えられている。その結果、肺血流は、低換気/かん流比の肺領域から、通常の比率の領域の方へ再分配される。
【0004】
メトヘモグロビン血症は、一酸化窒素吸入療法の用量依存性の副作用である。メトヘモグロビンの上昇は、一酸化窒素(NO)吸入療法の公知の毒性である。それゆえ、一酸化窒素吸入療法の実施中に、メトヘモグロビンレベルおよび酸素化指数を監視することが望ましいとし得る。
【0005】
さらに、一酸化窒素と酸素とを含有する気体混合物中では、二酸化窒素(NO2)が急速に形成される。このように生じたNO2は、気道の炎症および障害を生じ得る。
【0006】
様々な形態の酸素化インジケータを使用して、人工呼吸器をつけている間の患者の病状の進行または後退が経時的に追跡されてきた。例は、酸素化指数(OI)、酸素飽和度指数(OSI)、PaO2/FiO2比(P/F比)および呼吸重症度指数(RSI)を含む。しかしながら、これらの酸素化インジケータは、現在の方法を用いた監視には煩わしいものになり得る。それゆえ、一酸化窒素の送達による治療の最中に酸素化インジケータを計算および監視する装置および方法が望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、一酸化窒素の送達による治療の最中に酸素化を計算および監視する装置に関する。この態様の1つ以上の実施形態では、装置は、一酸化窒素または一酸化窒素放出剤を含む治療用ガス供給部と流体連通して配置される第1の入口;呼吸ガスの流れと流体連通して配置される第2の入口;第1の入口、第2の入口、および患者と流体連通して配置される出口;平均気道圧を決定するための近位圧力トランスデューサ;吸入酸素濃度(fraction of inspired oxygen)(FiO2)を測定するためのFiO2測定手段;動脈血酸素飽和度(SaO2)、末梢血中酸素飽和度(SpO2)および動脈血酸素分圧(PaO2)からなる群から選択される1つ以上の酸素測定値を測定するための酸素測定手段;近位圧力トランスデューサから取得した平均気道圧測定値、酸素測定手段から取得した酸素測定値、およびFiO2測定手段から取得したFiO2測定値に基づいて酸素化パラメータを計算できる信号プロセッサー;およびディスプレイを含む。酸素化パラメータは、酸素化指数または酸素飽和度指数の1つ以上を含み得る。
【0008】
信号プロセッサーは中央処理装置とし得る。1つ以上の実施形態では、FiO2測定手段は、人工呼吸器またはFiO2センサーを含み得る。1つ以上の実施形態では、酸素測定手段はパルスオキシメータを含み、および酸素測定値はSpO2を含み得る。1つ以上の実施形態では、装置は、さらに、PaO2を測定するための連続的な血液ガスモニター、またはTcO2で構成された酸素測定値による経皮的血液ガスモニターを含み得る。
【0009】
1つ以上の実施形態では、装置はまた、酸素化指数、酸素飽和度指数、SpO2、SaO2、メトヘモグロビン、または気道圧の予め決められた値を示す前記信号プロセッサーからの信号によって動作可能なアラームシステムを含み得る。
【0010】
1つ以上の実施形態では、装置は、さらに、呼吸ガスの流れを測定する流量トランスデューサ、および流量トランスデューサと通信する制御システムを含み得る。1つ以上の実施形態では、流量トランスデューサは、呼吸ガスの流れと、一酸化窒素または一酸化窒素放出剤を含む治療用ガスの流れとを組み合わせる注入モジュールに一体化され得る。
【0011】
1つ以上の実施形態では、装置はさらに、患者に、予め決められた濃度の一酸化窒素をもたらす量で、一酸化窒素または一酸化窒素放出剤を含む治療用ガスの流れを送達する、1つ以上の制御弁を含み得る。
【0012】
信号プロセッサーは、吸入酸素濃度(FiO2)を測定するFiO2測定手段、ならびに動脈血酸素飽和度(SaO2)、末梢血中酸素飽和度(SpO2)および動脈血酸素分圧(PaO2)からなる群から選択される1つ以上の酸素測定値を測定する酸素測定手段と通信するように構成され得る。
【0013】
ディスプレイは、メトヘモグロビン、酸素化指数、酸素飽和度指数、SpO2、SaO2、および気道圧の計算値を示し得る。
【0014】
1つ以上の実施形態では、装置は、さらに、メトヘモグロビン、酸素化指数、酸素飽和度指数、SpO2、SaO2、および気道圧の計算値をリモート情報管理システムに伝送する送信機を含み得る。
【0015】
1つ以上の実施形態では、装置は、さらにパージ弁を含み得る。
【0016】
本発明の別の態様は、酸素化指数を監視する方法であって:近位圧力トランスデューサから平均気道圧(MAP)測定値を取得するステップ;動脈血酸素飽和度(SaO
2)、末梢血中酸素飽和度(SpO
2)、動脈血酸素分圧(PaO
2)およびTcO
2からなる群から選択される1つ以上の酸素測定値を酸素測定手段から取得するステップ;FiO
2測定手段から吸入酸素濃度(FiO2)測定値を取得するステップ;MAP測定値、酸素測定値およびFiO
2測定値を信号プロセッサーに伝送するステップ;信号プロセッサーによって酸素化パラメータ値を計算し、および酸素化パラメータをディスプレイによってエンドユーザーに伝達するステップを含む方法に関する。1つ以上の実施形態では、酸素化パラメータは、以下の式:
を使用して計算される。
【0017】
酸素化パラメータに依存して、他の酸素測定値、例えばSaO2、SpO2またはTcO2を、上記の式のPaO2の代わりに使用し得る。値はまた、慣例的に行われているように、100を乗じてもよい。
【0018】
1つ以上の実施形態では、方法は、さらに、一酸化窒素を含む治療用ガスを患者に投与するステップを含み得る。1つ以上の実施形態では、方法は、さらに、酸素化パラメータ値を、予め決められた上限値と比較し、酸素化パラメータが上限値を超える場合、アラームを発するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明に記載する構成またはプロセスのステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、および様々な方法で実行または実施できる。
【0021】
本発明の一態様は、個体の酸素化パラメータを決定する装置に関する。本明細書では用語「個体」は、ヒト、ならびに、畜産動物、家畜動物、愛玩動物、および実験に使用する動物、例えばサル、ラット、ウサギなどを含む群から選択されるメンバーと理解される。
【0022】
本明細書で説明するように、酸素化パラメータは、患者の換気パラメータと患者の酸素ステータスとの関係を説明するパラメータである。そのような酸素化パラメータは、限定されるものではないが、酸素化指数(OI)、酸素飽和度指数(OSI)、PaO2/FiO2比(P/F比)および呼吸重症度指数(RSI)を含む。換気パラメータは、限定されるものではないが、FiO2、MAP、最大気道圧、CPAPなどを含む。患者の酸素ステータスは、限定されるものではないが、PaO2、SaO2、SpO2、TcO2などを含む、いくつかのパラメータで表わされ得る。
【0023】
説明を容易にするために、これらの酸素化パラメータの1つのみまたはいくつかを以下明示的に説明するが、他のパラメータは、適切な式を使用して計算、表示および監視され得る。
【0024】
例えば、患者の酸素化指数は、以下の式:
を使用して計算され得る。
【0025】
同様に、患者の酸素飽和度指数は、以下の式:
を使用して計算され得、かつ呼吸重症度指数は、以下の式:
を使用して計算され得る。
【0026】
図1に示すように、本発明の1つ以上の実施形態は、個体に関する1つ以上の呼吸パラメータを決定する装置10に関し、この装置は、前記1つ以上の呼吸パラメータを決定する中央処理装置(CPU)20、個体の呼吸器系に流入または流出するガス流における酸素レベル(FiO
2、平均気道圧など)を検出するための、人工呼吸器などの呼吸ガス送達手段30、近位圧力トランスデューサ100、パルスオキシメータ90または個体の血液循環における酸素レベル(SaO
2、SpO
2、PaO
2)を検出しかつそれに従ってコンピュータに出力するための他の酸素測定手段を含み、このコンピュータは、酸素化パラメータの1つ以上の測定値を計算、検索および記憶するように適合されている。1つ以上の実施形態では、装置は、PaO
2を測定するために血液ガスモニターを含み得る。本明細書では、用語「呼吸パラメータ」は、肺から血液への酸素運搬に関するパラメータ、例えば、酸素化指数、異常換気、肺から肺毛細管血液への酸素摂取に対する抵抗に関するパラメータ、および動脈血流への静脈血のシャントに関するパラメータと理解される。これらの呼吸パラメータは、絶対値として、または一連の標準値と比較されるときの相対値として与えられ得る。パラメータは、さらに、他の個体、少なくとも同じ種の個体で測定された同様のパラメータと比較できるパラメータを得るために、正規化または一般化され得る。
【0027】
本発明の様々な実施形態は、吸入一酸化窒素による治療の最中の酸素化パラメータを計算および監視する装置および方法に関する。NO療法に関する酸素化指数の臨床面は、NO療法の開始または継続、治療の有効性、および患者の病状の進行の評価に関して内科開業医が治療の決定を行うのを支援する有用な情報を、OIおよびOSIがもたらすことである。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態は、一般的に、患者に、一酸化窒素を含む治療用ガスを送達する装置10を提供する。治療用ガスは、窒素などのキャリアガスに一酸化窒素を含む。好適な治療用ガスの一酸化窒素の濃度は可変とし、100ppm~1000ppmの範囲であり得る。
【0029】
図1に示すように、医療用ガス(pharmaceutical gas)源が、一般的に、キャリアガス中の医療用ガスを入れているガス供給タンク70によって提供される。医療用ガスがNOであるとき、キャリアガスは、従来窒素であり、および典型的に利用可能な濃度は、100ppm~1600ppmの範囲である。
【0030】
従って、供給タンクからは、タンク圧力計と、タンク圧力をガス送達システムの作動圧力まで引き下げる調整器とがある。医療用ガスは、送達システムと供給タンクとの間を導管によって迅速に接続できる入口からガス送達システムに流入する。ガス送達システムは、汚染物質がシステムの安全な運転に支障をきたさないようにすることを保証するフィルターと、供給圧力が適切であるかどうかを検出する圧力センサーを有し、その後、送達システムに入る医療用ガスの制御としてガス遮断弁を含んで、送達システムが医療用ガスを患者に過剰に送達している場合に安全管理を行う。そのような過剰送達の場合、遮断弁は直ちに閉鎖され、および警報を鳴らして、ユーザーに、ガス送達システムが機能しなくなったことを警告する。そのようなものとして、遮断弁は、マイクロプロセッサを含む中央処理装置から向けられた信号から動作されるソレノイド弁とし得る。
【0031】
入口または出口にはパージ弁が含まれて、供給ラインにあり得る任意の他のガスをシステムからパージし、かつシリンダーからパージ弁への供給ラインを新鮮なNO/窒素で補充し得るため、システムは、正しい供給ガスで再び満たされ、周囲空気などの無関係なガスはなくなる。
【0032】
本発明の一実施形態では、装置10は、一酸化窒素を含む治療用ガス供給を受け入れる第1の入口32と;呼吸ガスを受け入れる第2の入口34と;患者への治療用ガスの流量を監視しかつ制御するために、治療用ガス供給部と連通する治療用ガス注入モジュール50と;患者に呼吸ガスおよび治療用ガスを供給するために第1の入口32および第2の入口34と流体連通する出口と;呼吸ガスの流量が所望の範囲外にあるときに指示または警告をトリガするための、治療用ガス注入モジュール50と通信する制御回路と;前記1つ以上の呼吸パラメータを決定するためのコンピュータと、個体の呼吸器系に流入するまたはそこから流出するガス流における酸素レベル(FiO2、平均気道圧など)を検出する人工呼吸器と、近位圧力トランスデューサ100と、パルスオキシメータ90または個体の血液循環における酸素レベル(SaO2、SpO2、PaO2)を制御しかつそれに従ってコンピュータに出力を行う他の酸素測定手段とを含み、コンピュータは、酸素化指数の1つ以上の測定値を計算、検索および記憶するように適合されている。
【0033】
図1は、この態様に従って酸素化指数を監視するための装置10の一実施形態を示す。第1の入口32は、一酸化窒素を含む治療用ガスと流体連通して配置されるように構成されている。第2の入口34は、患者に呼吸ガスをもたらす、人工呼吸器などの呼吸ガス送達手段30と流体連通して配置されるように構成されている。治療用注入モジュール50は、第1の入口32および第2の入口34、ならびに出口と流体連通している。出口36は、第1の入口および第2の入口と流体連通しており、および患者に呼吸ガスおよび治療用ガスを供給するように構成されている。流量センサー40は、第2の入口34と流体連通しておりかつその下流にあり、および治療用注入モジュール50を通る呼吸ガスの流量を監視する。制御回路60は、治療用注入モジュール50と通信し、および流量センサーをCPU20に接続する。流量センサー40によって測定された流量が、予め決められたレベルを上回るまたは下回るとき、中央処理装置(CPU)20はインジケータに信号を送信する。インジケータは、装置10のユーザーに、流量センサーが特定の範囲外であることを通知する。
【0034】
出口36および鼻カニューレ11と吸息呼吸チューブが流体連通している。吸息呼吸ホース12は、呼吸ガスと治療用ガスの気体混合物を鼻カニューレ11にもたらし、鼻カニューレは、気体混合物を患者に送達する。患者ガスサンプルラインが、吸息呼吸ホースからの気体混合物の流れの一部をそらし、およびサンプルブロック120に持ち込む。
【0035】
サンプルポンプとしても公知のサンプルブロック120は、ガスサンプルラインを通る気体混合物の流れの一部を引き込む。サンプルブロック120は、制御モジュール60に組み込まれ得る。サンプルブロック120は、気体混合物中の一酸化窒素、酸素、および二酸化窒素の濃度を分析する。
【0036】
サンプルブロックで測定された一酸化窒素、酸素および二酸化窒素の濃度は、ディスプレイ80に表示され得る。
【0037】
流量センサー40とも呼ばれる流量トランスデューサは、任意の適切な流量測定装置とし得る。これは、限定されるものではないが、ニューモタコ(pneumotach)、熱線流速計、熱式流量センサー、可変オリフィス、熱飛行時間(thermal time-of-flight)、回転ベーンなどを含む。流量を決定するために、オリフィス通過前後での圧力低下などの圧力を測定する流量トランスデューサも好適である。一実施形態によれば、流量トランスデューサは治療用注入モジュールの一部である。そのような一実施形態では、流量センサー40は熱膜センサーおよびサーミスタを含む。サーミスタは、注入モジュールを流れる呼吸ガスの温度を測定する。一定温度の熱膜センサーは、白金薄膜の温度を一定に維持するのに必要なエネルギーに比例して、呼吸ガスの流量を測定する。他の実施形態では、流量センサーは治療用注入モジュールの上流にある。
【0038】
用語「制御回路」は、治療用ガス送達装置10を動作させるために様々な信号処理機能を実行するために用いられ得る様々な方法を含むものとする。特定の実施形態では、制御回路は、CPU20および流量調整器を含む。CPU20は、流量センサー40に対し、信号を送信し、かつそこから信号を受信し得る。具体的な実施形態では、CPU20は、流量センサー40から、およびユーザーが所望の用量の一酸化窒素を選択できるようにする入力装置から、情報を取得し得る。
【0039】
制御回路60の具体的な実施形態では、流量センサー40は、本明細書で説明するように、患者への複数のガスの各々の流量を監視する中央処理装置(CPU)20と通信する。特定の用量の一酸化窒素が投与されたら、CPU20は、呼吸ガスの測定された流量および治療用ガスシリンダー中の一酸化窒素の濃度に基づいて、治療用ガスの必要な流量を計算できる。
【0040】
中央処理装置は、様々な医療用ガス流装置およびサブプロセッサーを制御するための、工業または医療環境で使用され得るコンピュータプロセッサ-の任意の形態の1つとし得る。CPU20は、メモリ(図示せず)に結合されることができ、かつ1つ以上の容易に入手できるメモリ、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、コンパクトディスク、フロッピーディスク、ハードディスク、または任意の他の形態のローカルまたはリモートデジタルストーレージとし得る。CPU20にはサポート回路(図示せず)が結合されて、CPU20を従来の方法で支援し得る。これらの回路は、キャッシュ、電力供給装置、クロック回路、入力/出力回路、サブシステムなどを含む。
【0041】
装置10はまた、呼吸ガスの流量が予め決められたレベルよりも上昇するまたは下回ると、装置10のユーザーに通知する警告を含む。1つ以上の実施形態では、インジケータは、NOの流量が予め決められたレベルよりも上昇するまたは下回ると、警告をもたらす。いくつかの実施形態では、警告は、可聴警告、可視警告およびテキスト警告の1つ以上を含む。そのような警告は、装置10自体の場所にもたらされることができるか、または医療スタッフもしくは看護ステーションに直接など、離れた場所にもたらされてもよい。警告が離れた場所にもたらされるとき、信号は、有線または無線通信によって装置10から離れた場所へ伝達され得る。警告の例は、テキストメッセージ、サイレン、音、アラーム、イメージの点滅、表示色の変化、またはユーザーの注意をひく任意の他の手段を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、警告は、可聴警告、可視警告およびテキスト警告の1つ以上を含む。そのような警告は、装置10自体の場所にもたらされることができるか、または医療スタッフもしくは看護ステーションに直接など、離れた場所にもたらされてもよい。
【0043】
装置10はまた、呼吸ガスの体積流量の可視的なおよび/または数字の表示をもたらすディスプレイ80を含み得る。この可視的なおよび/または数字の表示は、数字、図表、イメージなどを含む、呼吸ガスの流量を表示する任意の手段を含み得る。ディスプレイ80はまた、ダイアル、ゲージまたは他のアナログ装置を含む任意の種類の適切な表示装置、またはLED、LCD、CRTなどを含む任意の電子表示装置とし得る。そのような装置は、必ずしも、装置10に接続される必要はなく、および遠隔装置(remote capacity)で使用され得る。いくつかの実施形態では、可視的なおよび/または数字の表示は、体積流量、一回換気量、および毎分換気量の1つ以上を含む。
【0044】
装置10は、ユーザーからの入力を受信できる入力装置を含み得る。そのようなユーザー入力は、所望の一酸化窒素濃度および流量限界などの動作パラメータを含み得る。一実施形態では、入力装置および表示装置は、タッチスクリーン装置などの1つのユニットに組み込まれ得る。
【0045】
呼吸ガス送達システムは、患者に呼吸ガスを供給できる任意のシステムを含み得る。呼吸ガスは、換気補助、機械的に支援された換気によって、または自然換気によって、供給され得る。好適な換気装置の例は、限定されるものではないが、従来の人工呼吸器、ジェット人工呼吸器、高頻度振動人工呼吸器およびCPAP装置10を含む。呼吸ガスの供給には、バブルCPAP、SiPAP、鼻カニューレおよび加熱された高流量鼻カニューレを含む非侵襲性の手法も使用し得る。
【0046】
治療用注入モジュール50は、呼吸ガスの流れと治療用ガスの流れを組み合わせる。注入モジュール50は、CPU20との通信を介した呼吸ガスの流量の変化に基づいた設定用量での、吸入一酸化窒素の適切な送達を保証する。一部の実施形態では、治療用注入モジュールは、従来の注入モジュールまたは最新の注入モジュールである。
【0047】
本発明の別の態様によれば、患者に治療用ガスの送達を監視する方法であって:呼吸ガスの流れを提供するステップ;一酸化窒素を含む治療用ガスの流れを提供するステップ;患者に呼吸ガスおよび治療用ガスを送達するステップ;呼吸ガスの流量を測定して、測定された呼吸ガスの流量を取得するステップ;およびディスプレイモジュールに、測定された呼吸ガスの流量を表示するステップを含む方法が提供される。
【0048】
具体的な実施形態では、方法は、さらに、警告に応答して、患者に送達される呼吸ガスまたはNOの流量を調整するステップを含む。流量は、医療スタッフによって手動で調整できる、または装置10によって自動的に調整され得る。ある実施形態によれば、呼吸ガス送達手段30と通信するCPU20は、臨床決定ソフトウェアを使用して、酸素化指数が予め決められた限界値を下回るまたは上回るときを決定し、および呼吸ガス送達手段30に信号を送信して、呼吸ガス流量を、予め決められた流量限界値内に調整する。
【0049】
1つ以上の実施形態では、NO呼吸ガスの測定された流量の表示は、体積流量、一回換気量、および毎分換気量の1つ以上の表示を含む。表示は、数字、図表、イメージなどの任意の可視的なおよび/または数字の表示とし得る。ディスプレイモジュールは、ダイアル、ゲージまたは他のアナログ装置を含む任意の適切な表示装置、またはLED、LCD、CRTなどを含む任意の電子表示装置によって実施され得る。
【0050】
所望量のガス状薬物が装置に設定されると、システムは、各呼吸に送達される医療用ガスの量、および薬物の総所望量を送達するのに費やす時間および/または呼吸数を決定する。モニターディスプレイ80はまた、患者に送達されるときのNOの送達された用量の現在までの合計、FiO2、平均気道圧、酸素レベル(SaO2、SpO2、PaO2)および計算された酸素化指数を表示し得るため、ユーザーは、治療の経過を監視できる。これは、より多くの医療用ガスが送達されるため、呼吸ごとに更新され得る。
【0051】
装置10は、制御回路と通信する治療用ガス注入モジュールを含み、OI、NO、NO2のレベルまたは呼吸ガスの流量が一定レベルまたは範囲よりも上昇しているかまたは別のレベルまたは範囲よりも下回っていると、ユーザーに通知する。他の実施形態は、患者に治療用一酸化窒素ガスを送達している最中の酸素化指数を監視する方法に関する。
【0052】
本発明の1つ以上の実施形態では、装置は、酸素化指数を計算するために提供され、近位圧力トランスデューサ;FiO2測定手段;酸素測定手段;およびこれらの様々な測定手段からの測定値に基づいて酸素化指数を計算できる信号プロセッサーを含む。本発明の別の実施形態では、装置はまた、メトヘモグロビン測定を実施し得る。
【0053】
図1は、本発明による装置の実施形態の概略図を示す。
図1に示すように、一酸化窒素の供給部は、ガスのシリンダー70の形態で設けられる。ガスは、好ましくは、窒素と混合された一酸化窒素であり、かつ市販の混合物である。好ましい実施形態は、現在市販されているNO/窒素混合物を用いるが、NOは、他のなんらかのガス、好ましくは不活性ガスを介して患者に導入され得る。さらに、二酸化窒素(NO
2)または亜硝酸塩(NO
2
-)などの一酸化窒素放出剤を、適切な還元剤または共反応体と一緒に使用して、NOの流れをもたらし得る。圧力サンプルラインは、iNO注入点またはガス濃度監視点付近の吸息リム(limb)のサンプルT字箇所に接続され得るため、マルチルーメンチューブを使用して、患者周囲の雑然さを減らし得る。好ましい実施形態では、圧力サンプルラインは、可能な限り気道の近くに接続され、平均気道圧を正確に推定することを保証する。別の実施形態では、圧力トランスデューサは、患者に近い呼吸回路コネクタの内部に配置され得、それにより、測定された圧力は、ケーブルまたはワイヤレスインターフェースによってCPUに伝達されるため、サンプルラインは必要ではない。
【0054】
1つ以上の実施形態では、患者の方へ向かうiNOガス流は、NO送達装置内に配置された圧力センサーを介して平均気道圧を測定するために瞬間的に停止され、それにより、別個の空気圧系またはトランスデューサを気道に配置する必要性が回避され得る。送達されたNO流に対しての、NO送達チューブの圧力低下は、平均気道圧を決定するためにオフセットの減算を可能にするという特徴を有する。圧力感知ラインにあるNOガスに起因するオフセットによるこの気道測定方法は、回路のデブリを掃除するような感覚を保つ、パージ流の形態とみなされるであろう。
【0055】
近位圧力トランスデューサ100が設けられ、かつ好ましくは、患者付近の呼吸チューブに取り付けられて、チューブの圧力を測定する。1つ以上の実施形態では、近位圧力トランスデューサ100は、呼吸回路などの呼吸チューブに接続されたサンプルライン110からの圧力を測定する。近位圧力トランスデューサのデータは、アナログ信号からデジタル形式に変換され、かつCPU20によって処理されて、平均気道圧、最大吸入圧(peak inhalation pressure)および最大終末吸入圧(PEEP)などの患者の圧力パラメータを計算する。平均気道圧は、PEEPなどのバックグラウンド圧力を含む、呼吸サイクル全体にわたる平均圧力である。近位圧力トランスデューサ100は、呼吸器系内の平均圧力を推定する手段として、患者の回路の圧力の測定値をもたらす。これはまた、発生し得る患者回路の閉塞の検出に使用される。近位圧力トランスデューサの代わりにまたはそれに加えて、圧力パラメータは、人工呼吸器によって、または呼吸ガス監視システムによって、測定され得る。さらに、MAP圧力測定値は、NO送達チューブを通しておよび/または注入モジュール流量センサー内で決定され得る。
【0056】
1つ以上の実施形態では、装置は、血液酸素化(blood oxygenation)測定手段、例えばパルスオキシメータ90を含み、患者の酸素パラメータ、例えば、人工呼吸器を使用する患者の動脈血酸素飽和度(SaO2)、末梢血中酸素飽和度(SpO2)および/または動脈血酸素分圧(PaO2)を測定する(連続的な血液ガスまたは経皮的モニターを使用する)。パルスオキシメータは、酸素飽和度の指標となる、飽和されたヘモグロビンの光吸収特性に依存する。本発明の様々な実施形態の装置は、当技術分野では周知である様々な異なる人工呼吸器システムを使用し得る。SaO2は、酸素によって占められる血流中のヘモグロビン結合部位の百分率を示し、および全ヘモグロビンの百分率で表わされる。パルスオキシメータなどの血液酸素飽和度検出器は、被検体の血液酸素飽和度に関する情報を検出し、これは、被検体の呼吸不全の症状(presentation)と密接に関連する。パルスオキシメータは、被検体の指先にプローブを取り付けることによって、被検体患者の血液酸素飽和度を簡単に測定できる。パルスオキシメータは、動脈血酸素飽和度(SaO2)ではなく末梢血中機能的酸素飽和度(SpO2)を直接測定するが、SpO2は、SaO2の値に非常に近い数字であることが多いため、SaO2を直接測定する場合よりも煩わしくない。しかしながら、一部の実施形態では、SaO2は、血液試料を引き出し、かつその血液試料を血液ガス分析器に挿入することによって、直接測定され得る。
【0057】
低酸素分圧では、ほとんどのヘモグロビンは脱酸素化される。>10kPaの酸素分圧では、S字曲線に従って約90%の酸素ヘモグロビン飽和が生じ、100%に近づく。しかしながら、いくつかの要因が、酸素飽和度に影響を及ぼし得る。酸素-ヘモグロビン解離曲線としても公知の酸素飽和度曲線は、当業者によく知られており、およびSaO2値をPaO2値に変換するために使用され得る。あるいは、PaO2は、血液試料を引き出し、その血液試料を血液ガス分析器に挿入することによって、直接測定され得る。
【0058】
OSIは、酸素化ヘモグロビン(oxyHb)曲線が平坦になるとき、感度を失い得る。従って、1つ以上の実施形態では、使用に際し上限があってもよい。
【0059】
患者の酸素測定値は、予め決められた時間の間隔にわたる、関連のある出力信号の平均として測定される。患者のSaO2、SpO2およびPaO2は、心拍毎に変化することがあるため、平均値が、任意の時点での患者の状態をより示す。従って、SaO2、SpO2またはPaO2の平均値が、ある時間の間隔にわたって計算される。
【0060】
一部の実施形態では、パルスオキシメータからのSaO2またはSpO2出力信号は、「更新時間」間隔の呼息の前に、予め決められた時間間隔にわたって平均化される。CPU20は、患者の測定されたパルスオキシメトリを、予め決められた期間にわたって平均化する。
【0061】
図1の装置はまた、患者に供給された呼吸ガスのFiO
2を取得するFiO
2測定手段を含む。
図1に示すように、FiO
2は、患者に呼吸ガスをもたらす人工呼吸器によって測定され得る。しかしながら、他の実施形態では、FiO
2は、iNO送達システム内のガス濃度監視によって測定されるか、または呼吸ガス監視システムによって測定され得る。
【0062】
図1から分かるように、ガス送達システムからのガスの流量を検出する流量トランスデューサも含まれ得る。ガスは、ガス送達システムから送達され、その流量は、流量トランスデューサによって感知され、およびCPU20への流量を示す信号が、伝送される。流量トランスデューサは、限定されるものではないが、呼吸気流曲線描写(pneumotachography)、熱線流速計、膜流速計、熱式流量センサー、可変オリフィス、熱飛行時間、回転ベーンなどを含む、様々な技術とし得る。流量を決定するために、オリフィス通過前後での圧力低下などの圧力を測定する流量トランスデューサも好適である。
【0063】
様々な実施形態では、装置はまた、患者への送達前に呼吸ガスの流れと治療用ガスの流れを組み合わせる送達アダプターまたは治療用注入モジュールを含む。1つ以上の実施形態によれば、流量センサーは、治療用注入モジュールの一部である。そのような一実施形態では、流量センサーは、熱膜センサーおよびサーミスタを含む。サーミスタは、注入モジュールを流れる呼吸ガスの温度を測定する。一定温度の熱膜センサーは、白金薄膜の温度を一定に維持するのに必要なエネルギーに比例して、呼吸ガスの流量を測定する。1つ以上の実施形態では、流量センサーは治療用注入モジュールの上流にある。
【0064】
流量トランスデューサは、本明細書で説明するように、患者への複数のガスのそれぞれの流量を監視する制御システムと通信し得る。特定の用量の一酸化窒素が投与される場合、制御システムのCPU20は、測定された呼吸ガスの流量、および治療用ガス中の一酸化窒素または一酸化窒素放出剤の濃度に基づいて、治療用ガスの必要な流量を計算できる。そのような計算は、以下の式:
Qtherapeutic=[γset/(γtherapeutic-γset)]*Qbreathing
(式中、Qbreathingは、呼吸ガスの流量であり、γsetは、所望の一酸化窒素濃度であり、γtherapeuticは、治療用ガス供給における一酸化窒素の濃度であり、およびQtherapeuticは、気体混合物に一酸化窒素の所望の濃度をもたらすために必要な治療用ガスの流量である)
を使用して実行できる。ここで、必要なQtherapeuticは、制御システムと通信する1つ以上の制御弁によってもたらされ得る。
【0065】
信号処理手段、例えばCPU20が設けられて、いくつかの式およびアルゴリズムを解いて、一酸化窒素送達システムを動作させる。1つ以上の実施形態では、CPU20は、人工呼吸器、近位圧力トランスデューサ100およびパルスオキシメータ90から信号を受信する。CPU20は、近位圧力トランスデューサ100からの平均気道圧、パルスオキシメータ90からの酸素飽和度、および人工呼吸器からの吸入酸素濃度を使用して、酸素化指数の計算を実施するのに十分な情報を有する。CPU20は、酸素化指数を計算するためのプログラム、人工呼吸器システムの協調、呼吸アルゴリズム、アラーム、ディスプレイおよびユーザーインターフェース機能を記憶および実行するために、マイクロプロセッサおよび関連のメモリを含み得る。
【0066】
一実施形態では、装置のコンピュータは、さらに、少なくとも一度、プロシージャを行うように適合されており、プロシージャは、近位圧力トランスデューサから取得した平均気道圧測定値、酸素測定手段から取得した酸素測定値、およびFiO2測定手段から取得したFiO2測定値に基づいた酸素化指数の計算、およびデータ構造における計算された測定値の検索および記憶を含む。それによって生じた、収集されかつ計算されたデータは、出力装置、例えばディスプレイまたはモニターによって人間のオペレータに出力され得るため、オペレータは、患者の酸素化指数を評価できる。あるいは、制御データ項目は、コンピュータの別の部分またはコンピュータ内のコンピュータプログラムによって、またはガス混合ユニットへの少なくとも1種のガスの流量を制御する手段を自動的に制御するための外部制御装置によって、使用され得る。
【0067】
本発明の1つ以上の実施形態では、コンピュータは、近位圧力トランスデューサ、人工呼吸器、またはパルスオキシメータのうちの少なくとも1つの出力に基づいた個体の総酸素摂取量または消費量の平衡状態に関するパラメータを決定し;および前記パラメータを、予め定義した閾値と比較し、かつ前記パラメータが前記閾値を超える場合、それに従って制御データ項目を生成するように適合される。
【0068】
コンピュータが、現在の酸素レベルからの、吸息ガス中の酸素レベル(FiO2)の適切な変化を評価し、血液中の目標酸素レベルを所与の所望の目標酸素レベル(SaO2)にし、かつそれに従って制御データ項目を生成するように適合されているため、測定または計算されたデータに従って酸素レベルを調整できる場合も好都合である。実際の調整は、装置のオペレータによって実施され、その場合、計算または測定されたデータは、出力装置に出力される。
【0069】
本発明の実施形態において、吸息ガスの酸素レベルの変化の評価は、コンピュータに関連付けられたデータ記憶手段に記憶された変数の統計的分布を表す予め定義された組のデータ、および前記測定値に基づき得る。吸息ガスの酸素レベルの変化の評価は、吸息ガス流の酸素レベル(FiO2)の変化に応答する検出手段のうちの少なくとも1つの出力の変化の割合に基づき得る。
【0070】
システムに含まれたガス送達ユニットは、患者換気装置などのこの機能を含む、スタンドアロンの装置、または任意の他の装置のいずれかにできる。換気ガスは、フェイスマスク、ノーズクリップと組み合わせられたマウスピース、喉頭気管内チューブなどを通して患者/被検体に送達されかつそこから除去される。
【0071】
上述の構成要素のそれぞれ、例えばFiO2測定手段、近位圧力トランスデューサ、または酸素測定手段は、全て、同じ装置に組み込まれても、または個別に追加されてもよい。一部の実施形態では、一酸化窒素送達装置は、従来の一酸化窒素送達の構成要素と、FiO2測定手段、近位圧力トランスデューサまたは酸素測定手段の1つ以上とを含む。例示的な1つの構成は、近位圧力トランスデューサを組み込み、かつFiO2測定手段および酸素測定手段からの情報を受信するように構成された従来の一酸化窒素送達装置(例えば、INO Therapeutics LLCから入手可能なINOmax(登録商標)DSIR送達システム)を含む。別の例示的な構成は、近位圧力トランスデューサおよびFiO2測定手段(例えば、患者に投与された酸素の濃度を監視するために使用される酸素センサー)を組み込み、かつ酸素測定手段からの情報を受信するように構成された従来の一酸化窒素送達装置を含む。さらに別の例示的な構成は、近位圧力トランスデューサを組み込み、かつ酸素測定手段(例えばパルスオキシメータ)と一体化され、かつFiO2測定手段、例えば人工呼吸器からの情報を受信するように構成された従来の一酸化窒素送達装置を含む。別の構成は、この機能性を人工呼吸器または患者監視システムに組み込むであろう。
【0072】
酸素化指数の計算
酸素化指数は、患者がいかに良くO2を取り込むかの測定値であり、かつ治療に関する患者の病状の進行を評価するために使用され得る。酸素化指数(OI)は、吸入酸素濃度(FiO2)およびその体内での使用を測定するために集中治療医学において使用される計算である。ヒトの酸素化が改善すると、より低いFiO2および/または平均気道圧(MP AW)において、動脈血(PaO2)中のより高い酸素分圧を実現することができる。結果として得られるOIは低くなる。OIは、以下の通り計算される。
【0073】
酸素化指数は、患者がiNO療法または体外式膜型人工肺(ECMO)療法を始めるべきかどうかを決定する重要なパラメータであることが多い。例えば、病院のプロトコールでは、患者は、OI>35のときiNO療法を受ける必要があると提示され得る。
【0074】
患者の酸素化指数を計算するとき、平均気道圧を決定することが必要である。現在のところ、平均気道圧およびFiO2は、最も一般的には、近位圧力センサーを有しても有していなくてもよい人工呼吸器によって測定される。そこで、平均気道圧は、人工呼吸器によって、1つ以上の呼吸周期にわたって継続的に計算される。その後、その値が人工呼吸器ユーザーインターフェースに表示される。OIを計算するために、FiO2および平均気道圧が人工呼吸器から読み取られ、およびPaO2がパルスオキシメータから読み取られる。
【0075】
呼吸療法士または呼吸器科医は、患者を人工呼吸器から離脱させるときには、平均気道圧を目標とし得る。しばしば、適切な酸素化は、適切な血液酸素化を維持しつつ、肺損傷を防止するために最良の組み合わせを見つけようとしながら、平均気道圧の低下とFiO2との間のバランスを取ることである。
【0076】
人工呼吸器によって制御された吸息酸素FiO2は、PaO2または血液酸素飽和度を改善するためには必要であるが、高分圧でもたらされると、毒性があり得る。酸素毒性は、分子酸素(O2)を高分圧で呼吸することの弊害から生じる状態である。低いレベルのFiO2で集中治療換気を管理することが必要であり、および酸素化指数の報告によって定量化され得る。
【0077】
本発明の装置および方法は、近位圧力トランスデューサから取得した平均気道圧測定値、パルスオキシメータまたは他の酸素測定手段から取得した酸素測定値、および人工呼吸器または他のFiO2測定手段から取得したFiO2測定値を使用して、患者の酸素化指数を計算する。
【0078】
CPU20は、以下の式:
(FiO
2=吸入酸素濃度
MAP=平均気道圧
PaO
2=動脈血の酸素分圧)
によって酸素化指数(OI)を計算し得る。
【0079】
近位圧力トランスデューサは、人工呼吸器の呼吸回路内の圧力を感知するように構成されている。ここで、この近位圧力信号は、CPUによる信号処理によって処理され、平均気道圧を取得できる。平均気道圧は、それぞれ人工呼吸器およびパルスオキシメータを使用することから取得できる吸入酸素濃度(FiO2)およびPaO2の測定値と共に、酸素化指数を計算するために使用される。FiO2は、人工呼吸器によってもたらされる酸素レベルの測定値である。酸素センサーは、人工呼吸器によって送達されたFiO2を測定する。近位圧力トランスデューサから取得された平均気道圧は、モニター上に表示され得る。
【0080】
1つ以上の実施形態では、装置はまた、メトヘモグロビン、酸素化指数、SpO2、SaO2、および気道圧の計算値を、リモート情報管理システムに伝送する送信機を含む。
【0081】
装置は、患者の実際の酸素化指数を継続的に監視できるようにし、それゆえ安全モニターとして使用され得る。低い酸素化指数は、呼吸ガスによって供給された酸素のより効率的な利用を示すため、低い酸素化指数は、患者の治療がより成功であることを示す。酸素化指数が、ユーザーによって確立された予め決められた値よりも上昇する場合、アラームがトリガされ得るため、ユーザーは、問題に注意を払うことができる。
【0082】
従って、本装置の使用によって、酸素化指数は、継続的に監視され、および装置自体によって、所望の予め決められた値と比較される。それゆえ、システムは独立しており、および任意の機械的な人工呼吸器、ガス比例装置(gas proportioning device)または他のガス送達システムと一緒に簡単に使用されて、公知の所望の濃度のNOを患者に送達し得る。
【0083】
装置はまた、OSIおよびMetHbを継続的に監視し、iNO用の「用量」モニターとして使用され得る。用量が多すぎる場合、MetHbのレベルは高い。用量が少なすぎる場合、OSIは、有効性がほとんどまたは全くないことを示す(完全なノンレスポンダーでない限り)。あるいは、患者がレスポンダーであり、およびOSIが低下している場合、これは、iNOの用量が低下されて、最終的には患者を療法から離脱させ得ることを示す。
【0084】
本発明の装置および方法は、ガス状形態の一酸化窒素、液体一酸化窒素組成物または任意の医療的に利用可能な有用な形態の一酸化窒素のいずれかを使用して治療された任意の疾病または障害を含む、様々な疾病および障害を治療または防止するために使用され得る。一酸化窒素、一酸化窒素前駆物質、それらの類似体、またはそれらの誘導体による治療から恩恵を受け得るかまたはそれらに関連付けられる疾病、障害、および状態は、肺動脈圧の上昇、および肺高血圧症、急性呼吸促迫症候群(ARDS)を含む、低酸素血症(例えば、通常と比較して血中酸素量が低い、すなわち、動脈血においてヘモグロビン飽和88%未満、およびPaO260mmHg未満)および/または平滑筋の収縮(constriction)に関連付けられた肺障害、ぜんそくおよび嚢胞性線維症などの気管支管(bronchial passages)の疾病、慢性閉塞性肺疾患を含む他の肺の状態、成人呼吸促迫症候群、高地肺水腫、慢性気管支炎、サルコイドーシス、肺性心、肺塞栓症、気管支拡張症、気腫、ピックウィック症候群、および睡眠時無呼吸を含む。
【0085】
一酸化窒素または一酸化窒素関連の治療に関連付けられた状態の追加的な例は、心血管および心肺障害、例えばアンギナ、心筋梗塞、心不全、高血圧症、先天性心疾患、鬱血性心不全、心臓弁膜症、および、例えば、虚血、心力不全および/またはそのような疾患を有する患者の後負荷の増大によって特徴づけられる心疾患、およびアテローム性動脈硬化を含む。一酸化窒素関連の治療はまた、血管形成で使用される。
【0086】
追加的な例は、NOまたは関連の分子による治療、すなわち、NOが赤血球の形状を通常のものに変化させるか、またはそれらの機能を通常通りの機能に修復するか、または血餅を溶解させることによって改善される血液疾患を含む、血液疾患を含む。血液疾患の例は、例えば、鎌状赤血球症、および播種性血管内凝固症候群(DIC)を含む凝固障害、心臓発作、脳卒中、およびCoumadinブロッキング用タンパク質Cおよびタンパク質Sに起因するCoumadinに誘発された凝固、および血小板凝集を含む。追加的な例は、低血圧症、再狭窄、炎症、内毒素血症、ショック、敗血症、脳卒中、鼻炎、および脳血管収縮および血管拡張、例えば片頭痛および非片頭痛の頭痛、虚血、血栓症、および輸血およびかん流技術のための血小板の保存および処理を含む血小板凝集、眼筋系の疾患、胃腸系の疾患、例えば逆流性食道炎(GERD)、痙攣、下痢、過敏性腸症候群、および他の消化管運動性機能障害(gastrointestinal motile dysfunctions)、鬱病、神経変性、アルツハイマー病、認知症、パーキンソン病、ストレスおよび不安などの状態を含む。一酸化窒素および一酸化窒素に関する治療はまた、病原細胞、例えば腫瘍細胞、癌細胞、または、限定されるものではないが、病原菌、病原性ミコバクテリア、病原性寄生体、および病原真菌を含む微生物を抑制する、殺す、および抑えるのに有用であり得る。
【0087】
装置は、メトヘモグロビン血症または低酸素血症を発症するかまたは発症し得る患者の治療に用いられ得る。これらの状態は、例えば、左心不全、成人呼吸促迫症候群、肺炎、術後低酸素血症、肺線維症、中毒性肺リンパ浮腫、肺塞栓症、慢性閉塞性肺疾患および心シャントからなる群から選択され得る。
【0088】
本明細書を通して、「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「1つ以上の実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明した特定の特徴、構造、材料、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。それゆえ、本明細書を通して様々な個所における「1つ以上の実施形態では」、「いくつかの実施形態では」、「一実施形態では」または「実施形態では」などの語句の出現は、必ずしも、本発明の同じ実施形態を指すものではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つ以上の実施形態で任意の好適な方法で組み合わせ得る。
【0089】
本明細書では、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これらの実施形態は、単に、本発明の原理および適用例を説明するためのものであることを理解されたい。当業者には、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、本発明の方法および装置10に対する様々な修正形態および変形形態をなし得ることが明白である。それゆえ、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内にある修正形態および変形形態を含むものとする。