(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】セパレータ及び電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/443 20210101AFI20221216BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20221216BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20221216BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20221216BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20221216BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20221216BHJP
【FI】
H01M50/443 B
H01M50/417
H01M50/42
H01M50/434
H01M50/443 E
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/451
(21)【出願番号】P 2021517395
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(86)【国際出願番号】 CN2020078453
(87)【国際公開番号】W WO2020224319
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】201910380301.4
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】樊 曉賀
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0044529(KR,A)
【文献】特開2016-025093(JP,A)
【文献】特表2017-525100(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198534(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40- 50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、
前記多孔質基材の少なくとも一方の面上に位置する第1塗膜と、
前記第1塗膜は、コアシェル構造の粒子である第1ポリマーバインダーと、第1無機粒子とを含み、
第1ポリマーバインダーが、下記式(1)~(3)を満たし、
300nm≦Dv50≦5000nm…式(1)、
Dv90≦1.5*Dv50…式(2)、
Dn10≦200nm…式(3)、
ここで、Dv50は、体積基準の粒度分布において、小粒径側から体積累積50%となる粒子径を示し、Dv90は、体積基準の粒度分布において、小粒径側から体積累積90%となる粒子径を示し、Dn10は、数基準の粒度分布において、小粒径側から数累積10%となる粒子径を示し、
セパレータが下記式(4)を満たすセパレータ。
0.3*第1ポリマーバインダーDv50≦第1無機粒子Dv50≦0.7*第1ポリマーバインダーDv50…式(4)。
【請求項2】
前記多孔質基材と前記第1塗膜との間に配置され、第2ポリマーバインダーと第2無機粒子を含む第2塗膜をさらに備える請求項1記載のセパレータ。
【請求項3】
前記第1ポリマーバインダーのコアは、以下のモノマー、すなわちアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、スチレン、クロロスチレン、フルオロスチレン、メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸の少なくとも1つが重合してなるポリマーから選択される請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記第1ポリマーバインダーのシェルは、以下のモノマー、すなわちアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレン、クロロスチレン、フルオロスチレン、メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルの少なくとも1種が重合してなるポリマーから選択される請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記第1塗膜は、補助バインダーをさらに含み、前記第1ポリマーバインダーと、前記第1無機粒子と、前記補助バインダーとの質量比が、10~80:85~5:5~15である請求項1に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記第1塗膜は、粒子単層構造である請求項1に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記第1無機粒子は、三酸化二アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、セリア、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上である請求項1に記載のセパレータ。
【請求項8】
正極タブと、
負極タブと、
正極タブと前記負極タブとの間に設けられ、請求項1~
7のいずれか1項に記載のセパレータとを含む電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電気化学デバイス分野に関し、特に、セパレータおよび前記セパレータを適用した電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
セパレータ中のポリマーバインダーは、電解質の膨潤及び化成工程の熱圧を経た後、押しつぶされて成膜され、電気化学デバイス(例えば、リチウムイオン電池)の倍率性能及び循環性能に影響し、ひいては、循環途中の負極へのリチウムの析出を招く。セパレーターのポリマーバインダーは、弱極性ポリマーバインダーであることが多く、電解液との親和性が悪いことによる、電解液の輸送が困難となり、高圧密材系では電解液浸潤不良が生じやすい。
【0003】
上記問題を克服するために、従来は、以下の2つの手段が一般的に採用されている。第一に、ポリマーバインダーの架橋度を上げることにより、ポリマーバインダーの膨潤度を下げ、第2に、化成工程条件を調整し、例えば、化成工程温度を下げ、化成工程圧力を小さく、化成工程フロー時間を短縮する。しかしながら、ポリマーバインダーの架橋度を増加させると、ポリマーバインダーの粒子の剛性が増加し、ポリマーバインダーの接着力が低下してしまう。また、一般的に、架橋度の変化によって膨潤度を正確に調整することは困難である。一方、化成工程条件を調整することによって、セパレータとタブとの間の界面接着力が低下し、電気化学デバイスが変形しやすくなる。また、電気化学デバイス界面平坦度が低下すると、界面におけるリチウム析出が発生しやすく、ひいては電気化学デバイスの循環性能に影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、セパレータの多孔質基材上に無機粒子を含むバインダー塗膜を形成することにより、電解液の膨潤及び化成工程の熱圧を経た後、押しつぶされて成膜されるのを防止するとともに、セパレータの電解液との親和性を向上させ、電解液の輸送を促進する。
【0005】
本発明の一実施例は、多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一方の面上に位置する第1塗膜と、を含むセパレータを提供する。前記第1塗膜は、コアシェル構造の粒子である第1ポリマーバインダーと、第1無機粒子とを含む。
【0006】
いくつかの実施例において、前記セパレータは、前記多孔質基材と前記第1塗膜との間に配置され、第2ポリマーバインダーと第2無機粒子を含む第2塗膜をさらに備える。
【0007】
いくつかの実施例において、前記第1塗膜は、補助バインダーをさらに含み、前記第1ポリマーバインダーと、前記第1無機粒子と、前記補助バインダーとの質量比が、10~80:85~5:5~15である。
【0008】
いくつかの実施例において、前記第1塗膜は、粒子単層構造である。
【0009】
いくつかの実施例において、第1ポリマーバインダーが、下記式(1)~(3)を満たし、300nm≦Dv50≦5000nm…式(1)、Dv90≦1.5*Dv50…式(2)、Dn10≦200nm…式(3)、ここで、Dv50は、体積基準の粒度分布において、小粒径側から体積累積50%となる粒子径を示し、Dv90は、体積基準の粒度分布において、小粒径側から体積累積90%となる粒子径を示し、Dn10は、数基準の粒度分布において、小粒径側から数累積10%となる粒子径を示す。
いくつかの実施例において、前記セパレータが下記式(4)を満たす請求項1に記載のセパレータ。
0.3*第1ポリマーバインダーDv50≦第1無機粒子Dv50≦0.7*第1ポリマーバインダーDv50…式(4)。
【0010】
いくつかの実施例において、前記第1ポリマーバインダーのコアは、以下のモノマー、すなわちアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、スチレン、クロロスチレン、フルオロスチレン、メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸の少なくとも1つが重合してなるポリマーから選択される。
【0011】
いくつかの実施例において、前記第1ポリマーバインダーのシェルは、以下のモノマー、すなわちアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレン、クロロスチレン、フルオロスチレン、メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルの少なくとも1種が重合してなるポリマーから選択される。
【0012】
いくつかの実施例において、前記第1無機粒子は、三酸化二アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、セリア、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上である。
【0013】
また、本発明の一実施例は、正極タブと、負極タブと、正極タブと前記負極タブとの間に設けられた前記セパレータとを含む電気化学デバイスを提供する。
【0014】
本出願は第1塗膜において、第1無機粒子を用いることにより、第1ポリマーバインダーが接着作用を発揮するのを確保しつつ、電解液の輸送を促進し、電気化学デバイスのレート性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本出願実施の形態や従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下に、実施の形態や従来技術における説明に必要な図面を簡単に紹介し、以下において、図面は本出願の一部の実施の形態に過ぎず、当業者にとって、創造的な工夫を要することなく、また、これらの図面からも他の図面が得られることは明らかである。
【
図1】
図1は、本出願の一実施の形態に係るセパレータの概略構成図である。
【
図2】
図2は、本出願の他の実施の形態に係るセパレータの概略構成図である。
【
図3】
図3は、本願実施例2のセパレータの1000倍に拡大した走査型電子顕微鏡(SEM)図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本出願の実施の形態における図面を結び合わせて、本発明の実施例中の技術案について明確かつ完全に記述するが、当然ながら、記述される実施例は本発明の一部の実施例であるにすぎず、すべての実施例ではない。本発明中の実施例に基づき、当業者が、創造的な作業を行っていない前提の下で得た他のあらゆる実施例は、いずれも本発明が保護する範囲に属する。
【0017】
図1は、本出願の一実施の形態に係るセパレータの概略構成図である。
図1を参照して、本出願のセパレータは、多孔質基材1と、多孔質基材1上に設けられた第1塗膜2とを含む。第1塗膜2は、多孔質基材1の一方の面上に位置している。他の実施の形態では、多孔質基材1の両面に第1塗膜2が設けられていてもよい。
【0018】
多孔質基材1は、以下のいずれか1種類の重合体または2種以上の混合物からなるポリマーフィルム、多層ポリマーフィルムまたは不織布である。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリカルボン酸、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、シクロオレフィン共重合体(シクロオレフィンコポリマー)、ポリフェニレンスルフィドおよびポリビニルナフタレン。ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種の成分である。多孔質基材1の平均孔径は0.001μm~10μmである。多孔質基材1の空孔率は、5%~95%である。また、多孔質基材1の厚さは、0.5~50μmである。
【0019】
第1塗膜2は、第1ポリマーバインダー3と、第1無機粒子4とを含む。第1ポリマーバインダー3は、コアシェル構造の粒子である。第1ポリマーバインダー3の核は、以下のモノマーから選択される少なくとも1種の重合により形成されるポリマーである。アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、スチレン、クロロスチレン、フルオロスチレン、メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸。第1ポリマーバインダー3のシェルは、以下のモノマーから選択される少なくとも1種の重合により形成されたポリマーである。アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレン、クロロスチレン、フルオロスチレン、メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル。本出願では、コアシェル粒子構造の第1ポリマーバインダーを利用することにより、ポリマーバインダーの粒子の均一性の向上に寄与する一方で、後期加熱プロセスにおいて、第1ポリマーバインダーのシェルは、まず、軟化することができ、その後、第1ポリマーバインダーのコアは、接着作用を奏することができる。第1ポリマーバインダーのコアシェル構造の粒子は、本分野において通常の乳化重合法により得ることができる。
【0020】
いくつかの実施例において、第1無機粒子4は、三酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、二酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上である。第1無機粒子4は、高硬度の無機材料であり、電解液の膨潤及び化成工程の熱圧を経た後に著しく変化せず、支持骨格として機能するとともに、第1無機粒子4は、良好な電解液親和性を有し、電解液輸送に有利である。
【0021】
また、
図2を参照して、いくつかの実施例において、セパレータは、多孔質基材1と第1塗膜2との間に設けられた第2塗膜7をさらに含み、前記第2塗膜7は、第2ポリマーバインダーおよび第2無機粒子を含む。第2塗膜7における第2ポリマーバインダーは、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、フッ化ビニリデン-トリクロロエチレンの共重合体、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、
ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニルの共重合体、ポリイミド、ポリエチレンオキシド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエンの共重合体、ポリフェニレンサルファミド、ポリビニルアルコール、スチレン-ブタジエンの共重合体及びポリフッ化ビニリデンから選択される1種または2種以上である。ポリアクリル酸エステルは、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル及びポリアクリル酸ブチルのうちの1種以上を含む。
【0022】
いくつかの実施例において、第2無機粒子は、三酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、二酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウムのうちの一つまたは複数種から選択されてもよい。第2無機粒子の含有量は特に限定されない。しかし、第2塗膜7の総重量を100%として、第2無機粒子の重量パーセントが40%~99%である。第2無機粒子の重量パーセントが40%未満であると、第2ポリマーバインダーが多く存在し、第2無機粒子間に形成される隙間体積が低下し、孔径および空隙率が低下するため、リチウムイオンの伝導が遅くなり、電気化学デバイスの性能が低下する。第2無機粒子の重量パーセントが99%を超えると、第2ポリマーバインダーの含有量が低くなりすぎると、第2無機粒子間を十分に付着させることができず、最終的に形成されるセパレータの機械的特性が低下する。
【0023】
また、ある実施の形態において、第1塗膜2は補助バインダをさらに含み、第1のポリマーバインダと第1無機粒子と補助バインダとの質量比は10~80:85~5:5~15である。いくつかの実施例において、補助バインダは、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、フッ化ビニリデン-トリクロロエチレンの共重合体、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニルの共重合体、ポリイミド、ポリエチレンオキシド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエンの共重合体、ポリフェニレンサルファミド、ポリビニルアルコール、スチレン-ブタジエンの共重合体及びポリフッ化ビニリデンから選択される1種または2種以上である。ポリアクリル酸エステルは、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル及びポリアクリル酸ブチルのうちの1種以上を含む。第1ポリマーバインダーの含有量が少なすぎると、接着性能が低下し、第1ポリマーバインダーの含有量が多すぎると、電気化学デバイスの倍率性能が低下する。補助接着剤は、第1塗膜の接着性を高めることに寄与し、補助接着剤の含有量が少なすぎると、接着性能の向上が目立たず、補助接着剤の含有量が多すぎると、電気化学デバイスの倍率性能が悪化する。第1無機粒子の添加量が少なすぎると、支持効果が起きず、添加量が多すぎると、第1ポリマーバインダーの接着作用の発揮に影響する。
【0024】
図1に示すように、いくつかの実施の形態において、第1塗膜2は、粒子単層構造である。粒子単層構造は、電気化学デバイスのエネルギー密度の向上に寄与するとともに、電気化学デバイスの倍率性能及び循環性能を改善することができる。
【0025】
いくつかの実施例において、第1ポリマーバインダーは、球形または類球形であり、第1ポリマーバインダーは、下記式(1)~(3)を満たすものである。
300nm≦Dv50≦5000nm…式(1)。
Dv90≦1.5*Dv50…式(2)。
Dn10≦200nm…式(3)。
【0026】
ここで、Dv50は、体積基準の粒度分布において、小粒径側から体積累積50%となる粒子径を示し、Dv90は、体積基準の粒度分布において、小粒径側から体積累積90%となる粒子径を示し、Dn10は、数基準の粒度分布において、小粒径側から数累積10%となる粒子径を示す。以上の式を満たす第1ポリマーバインダーは、粒子の整合性が高く、粒子の整合性が高い方が第1ポリマーバインダーの接着作用を発揮することに寄与するとともに、電気化学デバイスの厚みの整合性を高めることができる。第1ポリマーバインダーの粒径は小さすぎると、電気化学デバイスの倍率性能が低下し、第1ポリマーバインダーの粒径が大きすぎると、接着性能が影響を受ける。
【0027】
いくつかの実施例において、セパレータは、下記式(4)を満たす。
0.3*第1ポリマーバインダーDv50≦第1無機粒子Dv50≦0.7*第1ポリマーバインダーDv50…式(4)。
【0028】
第1無機粒子の主な作用は、化成工程において第1ポリマーバインダーが押しつぶされることを防止することであり、第1無機粒子の粒径が小さすぎると、支持作用を果たすことができない。一方、第1無機粒子の粒径が大きすぎると、例えば第1ポリマーバインダーの粒径に近づいたり大きくなったりすると、熱圧時に第1ポリマーバインダーが接着作用を発揮できなくなることによる、接着が失われる。また、第1無機粒子が支持している厚さの空間が電解液の輸送に寄与する。
【0029】
また、本発明は、前記セパレータを含むリチウムイオン電池を提供する。本出願において、リチウムイオン電池は、電気化学デバイスの一例としてのみ、電気化学デバイスは、他の好適な装置を備えていてもよい。正極タブと、負極タブと、電解質とをさらに備え、正極タブと負極タブとの間には本出願のセパレータが挿入されている。正極タブは正極集電体を含み、負極タブは負極集電体を含み、正極集電体はアルミ箔やニッケル箔であってもよく、負極集電体は銅箔やニッケル箔であってもよい。
【0030】
正極タブ
正極タブは、正極材料を含み、正極材料は、リチウム(Li)を吸蔵・放出可能な正極材料(以下、「リチウムLiを吸蔵・放出可能な正極材料」ということがある)を含む。リチウム(Li)を吸蔵・放出可能な正極材料の例としては、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸バナジウム酸素リチウム、リン酸鉄リチウム、チタン酸リチウム及びリチウムリッチマンガン系材料を含んでもよい。
【0031】
具体的には、コバルト酸リチウムの化学式は、化学式1のようにすることができる。
LixCoaM1bO2-c 化学式1
【0032】
ここで、M1は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)及びシリコン(Si)から選ばれる少なくとも1種を表し、x、a、b及びc値は、それぞれ、0.8≦x≦1.2、0.8≦a≦1、0≦b≦0.2、-0.1≦c≦0.2の範囲内である。
【0033】
ニッケルコバルトマンガン酸リチウムやアルミニウム酸リチウムは、化学式2のようにすることができる。
Li
y
Ni
d
M2
e
O
2-f 化学式2
【0034】
ここで、M2は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)およびケイ素(Si)から選ばれる少なくとも1種を表し、y、d、eおよびf値は、それぞれ、0.8≦y≦1.2、0.3≦d≦0.98、0.02≦e≦0.7、-0.1≦f≦0.2の範囲内である。
【0035】
マンガン酸リチウムの化学式は、化学式3のようにすることができる。
LizMn2-gM3gO4-h 化学式3
【0036】
ここで、M3は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)から選ばれる少なくとも1種を表し、z、gおよびhは、それぞれ、0.8≦z≦1.2、0≦g≦1.0、および-0.2≦h≦0.2の範囲内である。
【0037】
負極タブ
負極タブは、負極材料を含み、負極材料は、リチウム(Li)を吸蔵・放出可能な負極材料(以下、「リチウムLiを吸蔵・放出可能な負極材料」ということがある)を含む。リチウム(Li)を吸蔵・放出可能な負極材料の例としては、炭素材料、金属化合物、酸化物、硫化物、リチウムの窒化物、例えば、LiN3、リチウム金属、リチウムと合金を形成する金属、ポリマー材料を挙げることができる。
【0038】
炭素材料の例としては、低黒鉛化の炭素、易黒鉛化の炭素、人造黒鉛、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ソフト炭素、ハード炭素、熱分解炭素、コークス、ガラス炭素、有機ポリマー化合物焼結体、炭素繊維及び活性炭を含んでもよい。コークスは、ピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークスを含んでもよい。有機高分子化合物焼結体とは、例えば、フェノールプラスチックやフラン樹脂などのポリマー材料を適切な温度で焼成して炭化させることにより得られる材料であり、これらの材料のいくつかは、低黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分割される。ポリマー材料の例は、ポリアセチレンやポリピロールを含んでもよい。
【0039】
リチウム(Li)を吸蔵・放出可能なこれらの負極材料には、さらに、リチウム金属の充電と放電の電圧に近い材料を選択する。負極材料の充電と放電の電圧が低いほど、電気化学デバイス(例えばリチウムイオン電池)は、より高いエネルギー密度を有しやすいからである。このうち、負極材料は、炭素材料を選択することができ、充電と放電時の結晶構造がわずかに変化するため、これにより、良好な循環特性と大きな充電と放電の容量を得ることができる。特に、グラファイトを選択することができ、大きな電気化学当量と高いエネルギー密度を与えることができるからである。
【0040】
また、リチウム(Li)を吸蔵・放出可能な負極材料は、単体のリチウム金属、リチウム(Li)とともに合金を形成可能な金属元素および半金属元素、これらの元素を含む合金および化合物等を含んでいてもよい。特に、これらは、炭素材料とともに用いられ、この場合、循環特性に優れ、かつ高エネルギー密度が得られるからである。ここで用いられる合金としては、2種または複数種の金属元素を含む合金の他、1種または複数種の金属元素と1種または複数種の半金属元素とを備える合金を含んでもよい。この合金は、以下の状態である固溶体、共晶結晶(共晶混合物)、金属間化合物及びその混合物であってもよい。
【0041】
金属元素および半金属元素としては、例えば、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、シリコン(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)およびハフニウム(Hf)を含んでいてもよい。上記合金及び化合物の例は、化学式であるMasMbtLiuを有する材料及び化学式であるMapMcqMdrを有する材料を含んでもよい。これらの化学式において、Maは、リチウムとともに合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種の元素を示し、Mbは、リチウムおよびMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種の元素を示し、Mcは、非金属元素の少なくとも1つの元素を示し、Mdは、Maを除く金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種の元素を示し、そして、s、t、u、p、q及びrは、s>0、t≧0、u≧0、p>0、q>0及びr≧0を満たす。
【0042】
また、負極には、リチウム(Li)を含まない無機化合物が用いられてもよく、例えば、MnO2、V2O5、V6O13、NiS及びMoS。
【0043】
電解質
上記リチウムイオン電池は、さらに電解質を含み、電解質は、ゲル電解質、固体電解質、電解液の一種又は複数種であってもよく、電解液は、リチウム塩と非水溶媒とを含む。
【0044】
リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiSiF6、LiBOBおよびジフルオロホウ酸リチウムから選ばれる1種または複数種である。例えば、リチウム塩は、LiPF6が好ましく用いられ、高いイオン導電率を有し循環特性が向上するからである。
【0045】
非水溶媒は、カーボネート化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、その他の有機溶媒またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0046】
カーボネート化合物は、鎖状カーボネート化合物、環状カーボネート化合物、フッ素化カーボネート化合物、又はその組み合わせであってもよい。
【0047】
鎖状カーボネート化合物としては、例えば、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチルメチルカーボネート(MEC)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。環状カーボネート化合物としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)およびそれらの組合せが挙げられる。かかるフッ素化カーボネート組成物としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロエチレンカーボネート、1,1,2,2-テトラフルオロエチレンカーボネート、1-フルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、1-フルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネートおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
カルボン酸エステル化合物としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、デカラクトン、バレロラクトン、メバロノラクトン、メチルバレロラクトン、カプロラクトン、ギ酸メチルおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0049】
エーテル化合物の一例は、ジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1、2-ジメトキシエタン、1、2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランおよびこれらの組み合わせである。
【0050】
その他の有機溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、1、2-ジオキソラン、スルホラン、メチルスルホラン、1、3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル、及びリン酸エステル等が例示される。
【0051】
上記においてリチウムイオン電池を例に挙げて説明したが、本出願を読んだうえで、本出願のセパレータは、他の適切な電気化学デバイスに使用できると当業者が想到できる。このような電気化学デバイスは、電気化学反応を生じさせるすべてのデバイスであり、具体的には、一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池、または容量の全てを含む。
【0052】
この電気化学デバイスは、当業者が知る従来の方法で製造することができる。電気化学デバイスの製造方法のある実施の形態において、正極タブと負極タブとの間に介挿されたセパレータによって電気化学デバイスを形成する。最終製品の製造方法と要求性能に応じて、電気化学デバイスの製造過程において適切な工程で液状の電解質を注入することができる。すなわち、液状の電解質を、電気化学デバイスの組み立て前、あるいは電気化学デバイスの組み立て中の最後の工程で注入することができる。
【0053】
具体的には、本出願の電気化学デバイスはリチウムイオン電池であり、リチウムイオン電池の電気化学デバイスは、捲回型、ラミネート型(積載型)、折り畳み型であってもよい。
【0054】
以下、リチウムイオン電池を例に挙げ、具体的な実施例を併せてリチウムイオン電池の製造について説明するが、当業者は、本出願において記載された製造方法が、あくまで一例であり、他のいかなる適切な製造方法も本出願の範囲にあることは理解できる。
【0055】
本出願の実施例と比較例のリチウムイオン電池の製造過程を以下に示す。
【0056】
比較例1
(1)セパレータの作製
ベーマイトとポリアクリル酸エステルを質量比90:10で混合し、脱イオン水に溶かして第2塗膜スラリーを形成する。次いで、マイクログラビアコート法を利用して、第2塗膜スラリーを多孔質基材(ポリエチレン、厚さ7μm、平均孔径0.073μm、空孔率26%)の一面に均一に塗布し、乾燥処理によって、第2塗膜と多孔質基材の2層構造を得る。
【0057】
ポリフッ化ビニリデンとポリアクリル酸エステルとを質量比96:4で混合して脱イオン水に溶かして第1塗膜スラリーを形成し、ポリフッ化ビニリデンのDv50は、600nmである。その後、マイクログラビアコート法を利用して、第1塗膜スラリーを、第2塗膜と多孔質基材との2層構造の表面に均一に塗布し、乾燥処理によって所要のセパレータが得られる。
【0058】
(2)正極タブの準備
正極活物質であるコバルト酸リチウムと、導電剤であるアセチレンブラックと、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを質量比94:3:3でN-メチル-2-ピロリドン溶媒系に十分に撹拌混合均一にした後、正極集電体Al箔上に塗布し、乾燥、冷間、ストリップ(strip)、正極タブを得る。
【0059】
(3)負極タブの製造
負極活物質である人造黒鉛と、導電剤であるアセチレンブラックと、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を質量比96:1:1.5:1.5で脱イオン水溶媒系に均一に撹拌混合した後、負極集電体Cu箔上に塗布し、乾燥、冷間、ストリップ(strip)、負極タブを得る。
【0060】
(4)電解液の調製
リチウム塩LiPF6と非水有機溶媒(エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC)=50:50、質量比)は質量比8:92で調製された溶液は、リチウムイオン電池の電解液となる。
【0061】
(5)リチウムイオン電池の製造方法
正極タブ、セパレータ、負極タブをこの順に積層して、セパレータが、正極タブと負極タブとの間にあって安全に隔離する役割を果たし、捲回して電気化学デバイスを得る。電気化学デバイスをパッケージに収容し、電解液を注液してパッケージ化し、リチウムイオン電池を得る。
【0062】
比較例2
比較例1の製造方法と一致し、異なる点は、比較例2におけるポリフッ化ビニリデンとポリアクリル酸エステルの質量比が8:16である。
【0063】
比較例3
比較例1の製造方法と一致し、異なる点は、比較例3のセパレータの製造方法が以下の通りである。
【0064】
ベーマイトとポリアクリル酸エステルを質量比90:10で脱イオン水に混合して溶解させて第2塗膜スラリーを形成する。次いで、マイクログラビアコート法を利用して、第2塗膜スラリーを多孔質基材(ポリエチレン、厚さ7μm、平均孔径0.073μm、空孔率26%)の一面に均一に塗布し、乾燥処理することにより、第2塗膜と多孔質基材の2層構造を得る。
【0065】
第1ポリマーバインダー(コアがポリメタクリル酸エチル、シェルがメチルメタクリレート-メチルスチレンの共重合体)をパルセータに添加し、第1ポリマーバインダーのDv50が600nm、Dv90が823nm、Dn10が121nmである。そして、補助バインダであるポリアクリル酸エステルを添加して均一に撹拌し続け、最後に脱イオン水を加えてスラリー粘度を調整する。第1ポリマーバインダーと補助バインダーとの質量比は、90:10である。スラリーを上記第2塗膜と多孔質基材との2層構造の両表面に塗布し、両表面に第1塗膜を形成し、乾燥し、所望のセパレータを得る。
【0066】
実施例1
比較例1の製造方法と一致し、異なる点は、実施例1のセパレータの製造方法が以下の通りである。
【0067】
ベーマイトとポリアクリル酸エステルを質量比90:10で脱イオン水に混合して溶解させて第2塗膜スラリーを形成する。次いで、マイクログラビアコート法を利用して、第2塗膜スラリーを多孔質基材(ポリエチレン、厚さ7μm、平均孔径0.073μm、空孔率26%)の一面に均一に塗布し、乾燥処理することにより、第2塗膜と多孔質基材の2層構造を得る。
【0068】
第1ポリマーバインダー(コアがポリメタクリル酸エチル、シェルがメチルメタクリレート-メチルスチレンの共重合体)をパルセータに添加し、第1ポリマーバインダーのDv50が300nm、Dv90が276nm、Dn10が109nmである。三酸化二アルミニウム粒子(第一無機粒子)を添加し、50%ずつ2回に分けて加え、均一に攪拌する。三酸化二アルミニウム粒子のDv50は150nmである。そして、補助バインダーであるポリアクリル酸エステルを添加し、撹拌を続けて均一に撹拌し、最後に脱イオン水を加えてスラリー粘度を調整する。第1ポリマーバインダーと、三酸化二アルミニウムと、補助バインダーとの質量比が40:50:10である。上記第2塗膜と多孔質基材との2層構造の両面にスラリーを塗布し、両表面に第1塗膜が形成され、粒子は、単層構造であり、乾燥、すなわち、所望のセパレータを得る。
【0069】
実施例2
実施例1の製造方法と一致し、異なる点は、実施例2における第1ポリマーバインダーのDv50が600nm、Dv90が823nm、Dn10が121nmであり、三酸化二アルミニウム粒子のDv50が、300nmであることである。
【0070】
実施例3
実施例1の製造方法と一致し、異なる点は、実施例3における第1ポリマーバインダーのDv50が1200nm、Dv90が1670nm、Dn10が133nmであり、三酸化二アルミニウム粒子のDv50が600nmであることである。
【0071】
実施例4
実施例1の製造方法と一致し、異なる点は、実施例4における第1ポリマーバインダーのDv50が1600nm、Dv90が2253nm、Dn10が136nmであり、三酸化二アルミニウム粒子のDv50が800nmであることである。
【0072】
実施例5
実施例1の製造方法と一致し、異なる点は、実施例5における第1ポリマーバインダーのDv50が2800nm、Dv90が3891nm、Dn10が152nmであり、三酸化二アルミニウム粒子のDv50が1400nmであることである。
【0073】
実施例6
実施例1の製造方法と一致し、異なる点は、実施例6における第1ポリマーバインダーのDv50が4000nm、Dv90が5391nm、Dn10が172nmであり、三酸化二アルミニウム粒子のDv50が2000nmであることである。
【0074】
実施例7
実施例1の製造方法と一致し、異なる点は、実施例7における第1ポリマーバインダーのDv50が5000nm、Dv90が6931nm、Dn10が196nmであり、三酸化二アルミニウム粒子のDv50が2500nmであることである。
実施例8
【0075】
実施例2の製造方法と一致し、異なる点は、実施例8における第1ポリマーバインダーと、三酸化二アルミニウムと、補助バインダーとの質量比が10:80:10であることである。
【0076】
実施例9
実施例2の製造方法と一致し、異なる点は、実施例9における第1ポリマーバインダーと、三酸化二アルミニウムと、補助バインダーとの質量比が30:60:10であることである。
【0077】
実施例10
実施例2の製造方法と一致し、異なる点は、実施例10における第1ポリマーバインダーと、三酸化二アルミニウムと、補助バインダーとの質量比が50:40:10であることである。
【0078】
実施例11
実施例2の製造方法と一致し、異なる点は、実施例11における第1ポリマーバインダーと、三酸化二アルミニウムと、補助バインダーとの質量比が60:30:10であることである。
【0079】
実施例12
実施例2の製造方法と一致し、異なる点は、実施例12における第1ポリマーバインダーと、三酸化二アルミニウムと、補助バインダーとの質量比が80:10:10であることである。
【0080】
実施例13
実施例2の製造方法と一致し、異なる点は、実施例13における三酸化二アルミニウム粒子のDv50が180nmであることである。
【0081】
実施例14
実施例2の製造方法と一致し、異なる点は、実施例14における三酸化二アルミニウム粒子のDv50が240nmであることである。
【0082】
実施例15
実施例2の製造方法と一致し、異なる点は、実施例15における三酸化二アルミニウム粒子のDv50が360nmであることである。
【0083】
実施例16
実施例2の製造方法と一致し、異なる点は、実施例16における三酸化二アルミニウム粒子のDv50が420nmであることである。
【0084】
実施例17
実施例2の製造方法と一致し、異なる点は、実施例17における第1ポリマーバインダーのDv90が1132nm、Dn10が182nmであることである。
【0085】
実施例18
実施例2の製造方法と一致し、異なる点は、実施例18における第1ポリマーバインダーのDv90が886nm、Dn10が279nmであることである。
【0086】
実施例19
実施例2の製造方法と一致し、異なる点は、実施例19における第1ポリマーバインダーのDv90が1097nm、Dn10が273nmであることである。
その後、実施例および比較例のリチウムイオン電池について、接着力と倍率性能試験を行い、具体的な試験方法は以下の通りである。
【0087】
(1)接着力試験
180°剥離試験基準でセパレータと正負極シートの乾圧接着力を試験し、セパレータおよび正負極タブを54.2mm*72.5mmのサンプルに断裁し、セパレータを正極タブ/負極タブに複合し、熱圧プレスを用いて熱圧し、条件が85℃、1MPa、85Sであり、複合したサンプルを15mm*54.2mmの小条に断裁し、180°剥離試験基準に基づいて接着力を試験する。
【0088】
(2)倍率性能試験
恒温タンクの温度を25℃に設定する。0.5C定電流で4.4Vに充電し、定電圧で0.05Cに充電し、5minで静置し、0.1C定電流で3Vに充電し、5minで静置する。その後で、0.5C定電流で4.4Vに充電し、定電圧で0.05Cに充電し、5minで静置し、2C定電流で3Vに充電し、2C放電容量を記録し、倍率性能試験を行う。2C放電倍率性能=2C放電容量/0.1C放電容量*100%。
【0089】
実施例1-19および比較例1-3についての実験パラメータと測定結果を下記の表1に示す。比較の便宜のため、表1の結果をグループ分けして示す。
【0090】
【0091】
実施例1-19と比較例1-2を比較することにより、第1塗膜に第1無機粒子を用いることにより、セパレータと正/負極タブとの乾圧接着力が増大したり、リチウムイオン電池の倍率性能が顕著に向上したりすることが分かる。
【0092】
実施例1-7を比較することにより、第1ポリマーバインダーの粒子粒径の増大に伴い、セパレータと正/負極タブとの乾圧接着力が小さくなり、リチウムイオン電池の倍率性能が次第に向上する傾向にあることが分かる。
【0093】
実施例2、8-12を比較することにより、第1ポリマーバインダーに対する第1無機粒子の含有量の増大に伴い、セパレータおよび正/負極タブの乾圧接着力が小さくなり、リチウムイオン電池の倍率性能が向上する傾向にあることが分かる。
【0094】
実施例2と13-16の比較することにより、第1無機粒子Dv50と第1ポリマーバインダーDv50とは、0.3*第1ポリマーバインダーDv50≦第1無機粒子Dv50≦0.7*第1ポリマーバインダーDv50を満たすべきである。第1無機粒子の粒径が小さすぎると、支持作用を果たすことができない。一方、第1無機粒子の粒径が大きくなり過ぎると、例えば、第1ポリマーバインダーの粒径に近接または大きすぎると、熱圧時に第1ポリマーバインダーが接着作用を発揮できず、接着が失われ、第1ポリマーバインダーDv50に対する第1無機粒子Dv50の増大に伴い、セパレータと正/負極タブとの乾圧接着力が減少する傾向となり、リチウムイオン電池の倍率性能が向上する傾向にあるからである
【0095】
実施例2と17-19とを比較することにより、第1ポリマーバインダーの粒径が大きすぎて、Dv90≦1.5*Dv50、またはDn10≦200nmの関係を満たさないと、第1ポリマーバインダー粒子の整合性が悪く、セパレータと正/負極タブとの乾圧接着力が小さくなり、小粒子のDn10がリチウムイオン電池の倍率性能に影響することがわかる。
【0096】
実施例2、8-12および比較例3を比較することにより、第1塗膜に第1無機粒子を採用することにより、リチウムイオン電池の倍率性能が顕著に向上することがわかる。
【0097】
なお、
図3を参照して、本出願の実施例2で得られたセパレータを1000倍で拡大して走査型電子顕微鏡(SEM)図を観察し、そのうち、5は第1ポリマーバインダー、6は第1無機粒子であり、第1ポリマーバインダーの粒子分布は均一であることが認められる。
【0098】
以上、開示されたのは本出願の好適な実施の形態のみであり、本出願をここに限定することは勿論できないため、本出願の均等な変化に従って、本出願に包含される範囲を限定するものである。
【符号の説明】
【0099】
多孔質基材 1
第1塗膜 2
第1ポリマーバインダー 3、5
第1無機粒子 4、6
第2塗膜 7