(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素、これを含む硫黄-炭素複合体及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/583 20100101AFI20221216BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221216BHJP
C01B 32/00 20170101ALI20221216BHJP
【FI】
H01M4/583
H01M4/36 A
H01M4/36 C
C01B32/00
(21)【出願番号】P 2021532088
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 KR2020006963
(87)【国際公開番号】W WO2020242237
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0064308
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0064552
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジャンソ・イ
(72)【発明者】
【氏名】キヒョン・キム
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0308213(US,A1)
【文献】特開2002-025865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/36、4/583
C01B32/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素
であって、
リチウム-硫黄電池の正極材として使用される、レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素。
【請求項2】
前記レドックス官能基含有高分子は、電子を収容してレドックス帯を形成することで導電性を発現するリチウム伝導型化合物である、請求項1に記載のレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素。
【請求項3】
前記レドックス官能基含有高分子は、ポリアントラキノン、ポリナフトキノン及びポリベンゾキノンからなる群から選択されるキノン系化合物、またはπ共役系化合物である、請求項1又は2に記載のレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素。
【請求項4】
前記レドックス官能基含有高分子はポリアントラキノンで、前記ポリアントラキノンはポリ(1,4-アントラキノン)またはポリ(1,5-アントラキノン)である、請求項1から3の何れか一項に記載のレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素。
【請求項5】
前記レドックス官能基含有高分子の含量は、前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素の全体重量を基準にして0.1ないし5重量%である、請求項1から4の何れか一項に記載のレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素。
【請求項6】
前記炭素は、カーボンナノチューブ、グラフェン及び還元グラフェンオキシドからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1から5の何れか一項に記載のレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素。
【請求項7】
表面にレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素を含む、硫黄-炭素複合体
であって、
リチウム-硫黄電池の正極材として使用される、硫黄-炭素複合体。
【請求項8】
前記表面にレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素が10ないし40重量%含まれ、硫黄が60ないし90重量%を含まれる、請求項7に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項9】
請求項1に記載のレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素を製造するための方法であって、
炭素の表面にレドックス官能基含有高分子をコーティングしてレドックス官能基含有高分子層を形成する段階を含む、レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素の製造方法。
【請求項10】
前記コーティングは、ドロップキャスト(dropcast)、湿式コーティング(wet coating)、ディップコーティング(dip-coating)方式、ブレードコーティング(blade coating)方式、スプレーコーティング(spray coating)方式、マイヤーバーコーティング(meyer bar coating)方式または真空ろ過(vacuum filter)を含むコーティング法によって行われるものである、請求項9に記載のレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素の製造方法。
【請求項11】
前記レドックス官能基含有高分子層を形成する時、前記レドックス官能基含有高分子と伝導性炭素がπ-π相互作用によって結合する、請求項9又は10に記載のレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素の製造方法。
【請求項12】
正極;負極;前記正極と負極の間に介在された分離膜及び電解質を含むリチウム二次電池において、
前記正極は、請求項1に記載のレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素、または請求項7に記載の硫黄-炭素複合体を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年5月31日付韓国特許出願第10-2019-0064308号及び2020年5月28日付韓国特許出願第10-2020-0064552号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素、これを含む硫黄-炭素複合体及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギー貯蔵技術に対する関心が次第に高くなるにつれ、携帯電話、タブレット(tablet)、ノートパソコン(laptop)及びカムコーダー、さらに電気自動車(EV)及びハイブリッド電気自動車(HEV)のエネルギーまで適用分野が拡がり、電気化学素子に対する研究及び開発が徐々に増大されている。電気化学素子は、このような側面で最も注目されている分野であり、その中でも充放電可能なリチウム-硫黄二次電池のような二次電池の開発は関心の点になっていて、最近はこのような電池を開発するにあたり、容量密度及び比エネルギーを向上させるために新しい電極と電池の設計に対する研究開発につながっている。
【0004】
このような電気化学素子、その中でリチウム-硫黄二次電池(Li-S battery)は高いエネルギー密度(理論容量)を持ち、リチウムイオン電池を代替することができる次世代二次電池として脚光を浴びている。このようなリチウム-硫黄二次電池内では、放電の際に硫黄の還元反応とリチウム金属の酸化反応が起き、この時、硫黄はリング構造のS8から線状構造のリチウムポリスルフィド(Lithium Polysulfide、LiPS)を形成するようになるが、このようなリチウム-硫黄二次電池はポリスルフィドが完全にLi2Sに還元されるまで段階的に放電電圧を示すのが特徴である。
【0005】
しかし、リチウム-硫黄二次電池の商業化において、最大の障害物はリチウムポリスルフィドの溶出及びシャトル現象であり、これによってリチウム-硫黄二次電池の容量が減少するという大きな問題点を抱えている。すなわち、正極で溶出されたポリスルフィドは有機電解液への溶解度が高いため、電解液を通じて負極側に望まない移動(PS shuttling)が生じることがあり、その結果、正極活物質の非可逆的損失による容量減少、及び副反応によるリチウム金属表面への硫黄粒子蒸着による電池寿命減少が発生する。
【0006】
ここで、韓国公開特許第2018-0048309では、表面がイオン伝導性高分子でコーティングされたカーボンナノチューブ及び硫黄を含む硫黄-炭素複合体をリチウム-硫黄二次電池に適用してポリスルフィドの溶出及びシャトル現象と係る問題点を解消できると開示している。
【0007】
このようにリチウム-硫黄二次電池の正極材で使われる硫黄-炭素複合体の外郭を包んだり、分離膜の表面を処理したり、または負極保護膜を使ってリチウムポリスルフィドの溶出を防ぐ技術が開発されたことがあるが、その効果は微々たるものである。
【0008】
よって、単に物理的な膜を利用してリチウムポリスルフィドの溶出問題を解決しようとする方式以外、別の側面でリチウムポリスルフィドの溶出及びシャトル問題を解決できる技術開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは前記問題点を解決するために多角的に研究した結果、リチウムポリスルフィドの還元反応を促進する触媒機能ができるレドックス官能基含有高分子層を含む炭素、または前記レドックス官能基含有高分子層を含む炭素を利用して製造された硫黄-炭素複合体をリチウム二次電池の正極材で適用し、リチウム二次電池の容量と寿命特性が改善されたことを確認した。
【0011】
よって、本発明の目的はリチウム二次電池の正極材で適用して電池容量と寿命特性を改善させることができる硫黄-炭素複合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、表面にレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素を提供する。
【0013】
本発明は、また、表面にレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素を含む、硫黄-炭素複合体を提供する。
【0014】
本発明は、また、炭素の表面にレドックス官能基含有高分子をコーティングしてレドックス官能基含有高分子層を形成する段階を含む、レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素の製造方法を提供する。
【0015】
本発明は、また、正極;負極;前記正極と負極の間に介在された分離膜及び電解質を含むリチウム二次電池において、前記正極は前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素または前記硫黄-炭素複合体を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素は、レドックス官能基含有高分子がリチウムポリスルフィドを還元させる触媒の役目をすることができるので、リチウム二次電池の正極材で適用する時、動力学(kinetic)を向上させてリチウムポリスルフィドが早く還元されることができて反応性が高くなると同時に、前記リチウムポリスルフィドが正極の外に抜け出る現象を防ぐことができる。
【0017】
また、前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素は単独でまたは硫黄-炭素複合体の形態でリチウム二次電池の正極材で適用する場合、リチウムポリスルフィドの溶出及びシャトル現象を防止して電池の容量と寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1a】実施例及び比較例で製造されたリチウム二次電池の放電容量を示すグラフである。
【
図1b】実施例及び比較例で製造されたリチウム二次電池の放電容量を示すグラフである。
【
図1c】実施例及び比較例で製造されたリチウム二次電池の放電容量を示すグラフである。
【
図2a】実施例及び比較例で製造されたリチウム二次電池のサイクリックボルタンメトリーによる寿命特性評価結果を示すグラフである。
【
図2b】実施例及び比較例で製造されたリチウム二次電池のサイクリックボルタンメトリーによる寿命特性評価結果を示すグラフである。
【
図3a】実施例及び比較例で製造されたリチウム二次電池のサイクリックボルタンメトリーによるリチウムポリスルフィドに対する活性を示すグラフである。
【
図3b】実施例及び比較例で製造されたリチウム二次電池のサイクリックボルタンメトリーによるリチウムポリスルフィドに対する活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を理解しやすくするために本発明をより詳しく説明する。
【0020】
本明細書及び特許請求の範囲で使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味で限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈しなければならない。
【0021】
レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素及びこれを含む硫黄-炭素複合体
本発明は、表面にレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素に係り、前記レドックス官能基含有高分子層はリチウム二次電池の正極材で適用されてもよい。また、前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素は硫黄-炭素複合体の形態でリチウム二次電池の正極材で適用されてもよい。
【0022】
本発明において、レドックス官能基含有高分子は、レドックス(Redox)作用を通じて正極で溶出されたリチウムポリスルフィド(LiPS)の還元を促進させる成分であって、電子を収容してレドックス帯を形成することで、導電性を発現するリチウム伝導型化合物であってもよい。具体的に、前記レドックス官能基含有高分子をリチウム二次電池の正極材に適用する場合、動力学(kinetic)を上昇させる作用をし、リチウムポリスルフィドを早く還元させることができて反応性を高め、前記リチウムポリスルフィドが正極の外に溶出される現象を防ぐことができる。
【0023】
このようなレドックス官能基含有高分子は、ベンゼン環に=O官能基が結合された化合物であれば特に制限されず、例えば、キノン類、イミド類またはナフタレン類のような化合物であってもよい。
【0024】
具体的に、前記レドックス官能基含有高分子として下記化学式1で表されるポリ(1,4-アントラキノン)(poly(1,4-anthraquinone)、P14AQ)またはポリ(1,5-アントラキノン)(poly(1,5-anthraquinone)、P15AQ)のようなポリアントラキノン;ポリナフトキノン;及びポリベンゾキノン;などのキノン系化合物を代表的に例示することができる:
【0025】
【0026】
前記化学式1において、nは1ないし1,000の自然数である。
【0027】
その他、レドックス官能基含有高分子では、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェリナフタレン、ポリプラン、ポリフルラン、ポリチエニレン、ポリピリジンジイル、ポリイソチアナフテン、ポリキノキサリン、ポリピリジン、ポリピリミジン、ポリインドール、ポリアミノアントラキノン、ポリイミダゾール及びこれらの誘導体などのπ共役系化合物など、電子収容の際にレドックス帯を形成して導電性を発現する物質であれば特に制限せずに適用される。
【0028】
本発明において、前記レドックス官能基含有高分子の含量は、前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素全体重量を基準にして0.1ないし5重量%であってもよく、具体的に0.1重量%以上、0.15重量%以上、または0.25重量%以上であってもよく、1重量%以下、3重量%以下、または5重量%以下であってもよい。前記レドックス官能基含有高分子の含量が0.1重量%未満であればレドックス官能基含有高分子と炭素を使うことで得られる効果が微々たるものであり、5重量%超過であれば前記レドックス官能基含有高分子層に過電圧が発生することがあって、この場合、エネルギー密度がむしろ低下するので、電池性能上、損害が発生することがある。また、前記レドックス官能基含有高分子の数平均分子量(Mn)は500ないし200,000であってもよく、具体的には500以上または1,000以上であってもよく、100,000以下または200,000以下であってもよい。
【0029】
本発明によるレドックス官能基含有高分子層は、過電圧の発生を防ぐために数ナノメートルから数十ナノメートルぐらい薄くて均一に形成することが好ましい。
【0030】
本発明において、前記炭素は伝導性を持っていて電子をレドックス官能基含有高分子に伝達することでリチウムポリスルフィドの還元効率を向上させる効果を示すことができる伝導性の炭素材であれば特に制限せずに適用することができる。その中でもカーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン(graphene)及び還元グラフェンオキシド(rGO)を例えることができる。これらの中で前記還元グラフェンオキシドの使用が好ましく、熱膨張によって剥離が有利で、これによって薄く大面積コーティングが可能で優れる性能を示すことができる熱的剥離還元グラフェンオキシド(thermally exfoliated reduced graphene oxide;TErGO)を使うことがより好ましい。
【0031】
その他、前記炭素には気孔が形成され、前記気孔の空隙率は40ないし90%であってもよく、具体的に40%以上、50%以上または60%以上であってもよく、80%以下、85%以下または90%以下であってもよい。前記空隙率が40%未満であればリチウムイオンの伝達がまともに行われず、抵抗成分として作用して問題が発生することがあり、90%を超過する場合は機械的強度が低下する問題が発生することがある。また、前記伝導性炭素の気孔の大きさは10nmないし5μmであってもよく、具体的に10nm以上、20nm以上、30nm以上、40nm以上または50nm以上であってもよく、4μm以下、4.5μm以下または5μm以下であってもよい。前記気孔の大きさが10nm未満であればリチウムイオンが透過できない問題が発生することがあり、5μmを超過する場合は電極の間の接触による電池短絡及び安全性問題が発生することがある。
【0032】
前記表面にレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素は、前記硫黄-炭素複合体の全体重量を基準にして10ないし40重量%で含まれてもよく、具体的に10重量%以上、15重量%以上、または20重量%以上であってもよく、30重量%以下、35重量%以下または45重量%以下で含まれてもよい。前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素の含量が10重量%未満であれば正極で電解液の出入りが円滑ではなく、リチウムイオンの伝導度が低下するので、電圧が降下して十分な電池容量を具現することができず、リチウムポリスルフィド還元効果が低下することがある。また、前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素の含量が40重量%超過であれば、電池の放電容量と寿命特性が低下することがある。
【0033】
本発明において、前記硫黄はリチウム二次電池に一般的に使われる硫黄であれば特に制限されずに適用されてもよい。具体的に、前記硫黄は、硫黄(S8)、Li2Sn(n≧1)、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー[(C2Sx)n、xは2.5ないし50の整数、n≧2]からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0034】
前記硫黄は前記硫黄-炭素複合体の全体重量を基準にして60ないし90重量%で含まれてもよく、具体的に60重量%以上、65重量%以上または70重量%以上であってもよく、80重量%以下、85重量%以下または90重量%以下で含まれてもよい。前記硫黄の含量が60重量%未満であれば電池内の硫黄含量が減って電池容量が過度に減少し、90重量%超過であれば電極内の電気伝導度が過度に減少して抵抗が増加することがある。
【0035】
レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素及びこれを含む硫黄-炭素複合体の製造方法
本発明は、また、レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素の製造方法に係り、(S1)炭素の表面にレドックス官能基含有高分子層を形成する段階;を含むものであってもよい。
【0036】
また、前記(S1)段階以後、(S2)前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素と硫黄を混合して熱処理する段階;を含むことで、硫黄-炭素複合体を製造することもできる。
【0037】
本発明において、前記(S1)段階で前記レドックス官能基含有高分子層はコーティング法によって形成されてもよく、前記コーティング法は当業界でレイヤー(layer)を形成するために利用するコーティング法であれば特に制限されず、湿式コーティング(wet coating)、ドロップキャスト(dropcast)、ディップコーティング(dip-coating)方式、ブレードコーティング(blade coating)方式、スプレーコーティング(spray coating)方式、マイヤーバーコーティング(meyer bar coating)方式または真空ろ過(vacuum filter)によって形成されてもよい。
【0038】
前記コーティングの時、溶媒が必要な場合、水(water)やエタノール、アセトン、イソプロピルアセテート(IPA:Isopropyl alcohol)、テトラヒドロフラン(THF:TetraHydroFuran)、メチレンクロライド(MC:methylene chloride)、ジメチルホルムアミド(DMF:dimethylformamide)、ジメチルスルホキシド(DMSO:dimethyl sulfoxide)及びジメチルアセトアミド(DMAc:Dimethylacetamide)などの有機溶媒を例示することができ、この中でTHFまたはこれと類似な性質を持つ化合物を溶媒で適用することが好ましい。
【0039】
また、前記炭素表面にレドックス官能基含有高分子層が形成される時、前記炭素とレドックス官能基含有高分子層の界面での結合は、前記レドックス官能基含有高分子と炭素間反応(π-π相互作用による結合)が行われ、この時、反応は常温ないし100℃で行われてもよく、具体的に20℃以上、25℃以上、30℃以上、35℃以上または40℃以上であるか、70℃以下、75℃以下、80℃以下、85℃以下、90℃以下、95℃以下または100℃以下で1時間以上、2時間以上、3時間以上または4時間以上であるか、10時間以下、12時間以下、14時間以下、16時間以下、18時間以下、20時間以下、22時間以下または24時間以下で行われてもよい。
【0040】
本発明において、前記(S2)段階では、前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素と硫黄を混合して熱処理することにより、前記硫黄が前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素に担持される。
【0041】
前記熱処理温度は硫黄が溶けて前記炭素に染みこんで担持されるようにする温度であって、硫黄の融点以上であってもよい。
【0042】
具体的に、前記熱処理時の温度は100℃以上、110℃以上または120℃以上であってもよく、180℃以下、190℃以下、または200℃以下であってもよく、溶融拡散法によって熱処理してもよい。前記範囲未満であれば硫黄が溶けて炭素に染みこむ過程が行われないので、硫黄-炭素複合体自体が製造されないこともあり、前記範囲超過であれば硫黄の気化によって流失率が大きくなって、硫黄-炭素複合体が変性され、リチウム二次電池の正極材で適用する時、電池性能改善効果が微々たることがある。
【0043】
リチウム二次電池
本発明は、また、正極;負極;前記正極と負極の間に介在された分離膜及び電解質を含むリチウム二次電池に係り、前記正極は前述したようなレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素または硫黄-炭素複合体を正極活物質で含むリチウム二次電池に関する。
【0044】
正極
本発明に使われる正極に関して説明すれば、正極活物質、導電材及びバインダーを含む正極組成物を製造した後、これを所定溶媒(分散媒)に希釈して製造されたスラリーを正極集電体上に直接コーティング及び乾燥することで正極層を形成することができる。または、前記スラリーを別途支持体上にキャスチングした後、前記支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションして正極層を製造することができる。他にも、当該技術分野における通常の知識を有する技術者に広く知られた方法を使って様々な方式で正極を製造することができる。
【0045】
前記導電材(Conducting material)は、正極集電体から電子が正極活物質まで移動する経路の役目をして電子伝導性を与えるだけでなく、電解質と正極活物質を電気的に連結させて電解質内のリチウムイオン(Li+)が硫黄まで移動して反応させる経路の役目を同時にする。よって、導電材の量が十分ではなかったり役目をまともに遂行できなくなれば電極内の硫黄の中で反応できない部分が増加し、結局、容量減少を生じさせる。また、高率放電特性と充放電サイクル寿命にも悪影響を及ぼすようになるので、適切な導電材の添加が必要となる。前記導電材の含量は正極組成物の総重量を基準にして0.01ないし30重量%の範囲内で適切に添加することが好ましい。
【0046】
前記導電材は当該電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、グラファイト;デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム及びニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛及びチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使われてもよい。市販中の導電材の具体例では、アセチレンブラック系のシェブロン・ケミカル・カンパニー(Chevron Chemical Company)やデンカブラック(Denka Singapore Private Limited)、ガルフオイルカンパニー(Gulf Oil Company)製品、ケッチェンブラック(Ketjenblack)、EC系アルマックカンパニー(Armak Company)製品、バルカン(Vulcan)XC-72キャボットカンパニー(Cabot Company)製品及びスーパー-ピー(Super-P;Timcal社製品)などが使われてもよい。
【0047】
前記バインダーは正極活物質を集電体によく付着させるためのものであって、溶媒によく溶解されなければならず、正極活物質と導電材との導電ネットワークをよく構成しなければならないうえ、電解液の含浸性も適当に持たなければならない。前記バインダーは、当該業界で公知された全てのバインダーであってもよく、具体的には、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene fluoride、PVdF)またはポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブチジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー、ポリエステル系バインダー、シラン系バインダー;からなる群から選択された1種以上の混合物や共重合体であってもよいが、これに制限されない。
【0048】
前記バインダーの含量は正極組成物の総重量を基準にして0.5ないし30重量%であってもよいが、これに限定されるものではない。前記バインダー樹脂の含量が0.5重量%未満の場合は、正極の物理的性質が低下して正極活物質と導電材が脱落することがあり、30重量%を超過する場合は、正極で活物質と導電材の割合が相対的に減少して電池容量が減少することがあり、抵抗要素で作用して効率が低下することがある。
【0049】
前記正極活物質、導電材及びバインダーを含む正極組成物は所定溶媒に希釈され、正極集電体上に当業界に知られた通常の方法を利用してコーティングすることができる。先ず、正極集電体を準備する。前記正極集電体は一般的に3ないし500μmの厚さを使う。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさずに高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼結炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使われてもよい。集電体はその表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。
【0050】
次に、前記正極集電体上に正極活物質、導電材及びバインダーを含む正極組成物を溶媒に希釈したスラリーを塗布する。前述した正極活物質、導電材及びバインダーを含む正極組成物を所定溶媒と混合してスラリーに製造することができる。この時、溶媒は乾燥しやすく、バインダーをよく溶解させることができるものの、正極活物質及び導電材は溶解させずに分散状態で維持させることができるものが最も好ましい。溶媒が正極活物質を溶解させる場合は、スラリーで硫黄の比重(D=2.07)が高いため硫黄がスラリーで沈むようになって、コーティングする時集電体に硫黄が集まって導電ネットワークに問題が生じ、電池作動に問題が発生する傾向がある。前記溶媒(分散媒)は水または有機溶媒が可能であり、前記有機溶媒はジメチルホルムアミド、イソプロピルアルコールまたはアセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン群から選択される1種以上であってもよい。
【0051】
続いて、前記スラリー状態の正極組成物を塗布する方法には特に制限がなく、例えば、ドクターブレードコーティング(Doctor blade coating)、ディップコーティング(Dip coating)、グラビアコーティング(Gravure coating)、スリットダイコーティング(Slit die coating)、スピンコーティング(Spin coating)、コンマコーティング(Comma coating)、バーコーティング(Bar coating)、リバースロールコーティング(Reverse roll coating)、スクリーンコーティング(Screen coating)、キャップコーティング(Cap coating)方法などを行って製造することができる。このようなコーティング過程を経った正極組成物は、以後乾燥過程を通じて溶媒(分散媒)の蒸発、コーティング膜の稠密性及びコーティング膜と集電体との密着性などが行われる。この時、乾燥は通常の方法で実施され、これを特に制限しない。
【0052】
負極
負極ではリチウムイオンを吸蔵及び放出することができるものを全て使うことができ、例えば、リチウム金属、リチウム合金などの金属材と、低結晶性炭素、高結晶性炭素などの炭素材を例えることができる。低結晶性炭素では、軟化炭素(Soft carbon)及び硬化炭素(Hard carbon)が代表的で、高結晶性炭素では、天然黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(Pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(Mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(Meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(Petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。この他、シリコンが含まれた合金系やLi4Ti5O12などの酸化物もよく知られている負極である。
【0053】
この時、負極は結着剤を含むことができ、結着剤では、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidenefluoride、PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(Polymethylmethacrylate)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)など多様な種類のバインダー高分子が使われることができる。
【0054】
前記負極は前記負極活物質及びバインダーを含む負極活性層を支持するための負極集電体を選択的にさらに含むこともできる。前記負極集電体は、具体的に銅、ステンレススチール、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、これらの合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。前記ステンレススチールは、カーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されてもよく、前記合金ではアルミニウム-カドミウム合金が使われてもよい。その他にも焼成炭素、導電材で表面処理された非伝導性高分子、または伝導性高分子などが使われてもよい。
【0055】
前記バインダーは負極活物質のペースト化、活物質間の相互接着、活物質と集電体との接着、活物質の膨張及び収縮に対する緩衝効果などの役目をする。具体的に、前記バインダーは正極のバインダーで説明したとおりである。また、前記負極はリチウム金属またはリチウム合金であってもよい。非制限的な例として、負極はリチウム金属の薄膜であってもよく、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Al及びSnからなる群から選択される1種以上の金属との合金であってもよい。
【0056】
分離膜
分離膜は多孔性基材からなってもよく、前記多孔性基材は、通常電気化学素子に使われる多孔性基材であれば、いずれも使用可能であり、例えば、ポリオレフィン系多孔性膜(membrane)または不織布を使うことができるが、これに特に限定されるものではない。
【0057】
前記ポリオレフィン系多孔性膜の例では、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独で、またはこれらを混合した高分子で形成した膜(membrane)を挙げることができる。
【0058】
前記不織布では、ポリオレフィン系不織布の他に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)及びポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalene)などをそれぞれ単独で、またはこれらを混合した高分子で形成した不織布を挙げることができる。不織布の構造は、長繊維で構成されたスパンボンド不織布またはメルトブローン不織布であってもよい。
【0059】
前記多孔性基材の厚さは特に制限されないが、1μm以上または5μm以上であってもよく、50μm以下または100μm以下であってもよい。
【0060】
多孔性基材に存在する気孔の大きさ及び気孔度も特に制限されないが、それぞれ0.001μmないし50μm及び10%ないし95%であってもよい。
【0061】
電解液
電解液は溶媒(Solvents)及びリチウム塩(Lithium Salt)を含み、必要に応じて添加剤(Additives)をさらに含むことができる。前記溶媒では電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役目をする通常の非水性溶媒を特に制限せずに使うことができる。前記非水性溶媒の例では、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒及び非プロトン性溶媒などを挙げることができる。
【0062】
より具体的に例えば、前記カーボネート系溶媒としてジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネート(BC)などがあって、前記エステル系溶媒では、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、1,1-ジメチルエチルアセテート、メチルプロピオネイト、エチルプロピオネイト、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)及びカプロラクトン(carprolactone)などがあり、前記エーテル系溶媒では、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及びポリエチレングリコールジメチルエーテルなどがある。また、前記ケトン系溶媒ではシクロヘキサノンなどがあり、前記アルコール系溶媒ではエタノール及びイソプロピルアルコールなどがあり、前記非プロトン性溶媒ではアセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソラン(DOL)などのジオキソラン類及びスルホラン(sulfolane)などがある。以上のような非水性溶媒は単独または2以上混合して使うことができ、2つ以上混合する場合の混合の割合は目的とする電池性能によって適切に調節することができ、1,3-ジオキソランとジメトキシエタンを1:1の体積比で混合した溶媒を例えることができる。
【0063】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明なことであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0064】
実施例1
(1)硫黄-炭素複合体製造
(1-1)レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素形成
レドックス官能基含有高分子としてポリ(1,4-アントラキノン)を23%の濃度でMC(methylene chloride)に溶解させた溶液を利用して湿式(wet)コーティング法によって乳鉢で炭素であるCNTの表面にナノ単位厚さのレドックス官能基含有高分子層を形成した。この時、前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素全体重量を基準にして前記ポリ(1,4-アントラキノン)の含量が0.25重量%になるようにした。
【0065】
(1-2)硫黄-炭素複合体形成
前記(1-1)で得たレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素粉末25重量%及び硫黄粉末75重量%を混合して混合物を得た。
【0066】
前記混合物を155℃で熱処理し、溶融拡散法を通じて前記炭素に硫黄が担持されるようにして硫黄-炭素複合体を製造した。
【0067】
(2)正極製造
正極活物質として前記(1)で得た硫黄-炭素複合体、導電材として気相法炭素繊維(VGCF:Vapor grown carbon fiber)、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を8:1:1の重量比で混合し、22.5%の濃度で水に分散させて正極スラリーを製造した。
【0068】
前記正極スラリーをAlホイルに225μm厚さでコーティングし、50℃で乾燥させて正極を製造した。
【0069】
(3)リチウム二次電池製造
負極として50μm厚さのリチウムホイル、前記(2)で製造された正極、電解液は溶媒としてDOL/DME(1:1、v/v)を使い、1M LiTFSIと3重量%のLiNO3を含む組成にして製造された電解液、及びポリオレフィン分離膜を使ってコインセル形態のリチウム二次電池を製造した。この時、DOLはジオキソラン、DMEはジメトキシエタンを意味する。
【0070】
実施例2
前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素全体重量を基準にして前記ポリ(1,4-アントラキノン)の含量が0.5重量%のなるようにしたことを除いて、実施例1と同様の方法でレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素を含む硫黄-炭素複合体及びリチウム二次電池を製造した。
【0071】
実施例3
前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素全体重量を基準にして前記ポリ(1,4-アントラキノン)の含量が1.0重量%になるようにしたことを除いて、実施例1と同様の方法でレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素を含む硫黄-炭素複合体及びリチウム二次電池を製造した。
【0072】
実施例4
(1)レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素製造
レドックス官能基含有高分子としてポリ(1,4-アントラキノン)をMC(methylene chloride)に溶解させた溶液を利用して湿式(wet)コーティング法によって乳鉢で炭素であるCNTの表面にレドックス官能基含有高分子層を形成した。この時、前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素全体重量を基準にして前記ポリ(1,4-アントラキノン)の含量が0.25重量%になるようにした。
【0073】
(2)正極製造
正極活物質として前記(1)で得たレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素、導電材として気相法炭素繊維(VGCF:Vapor grown carbon fiber)、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を8:1:1の重量比で混合して水に分散させて正極スラリーを製造した。
【0074】
前記正極スラリーをAlホイルにコーティングして乾燥させて正極を製造した。
【0075】
(3)リチウム二次電池製造
負極として50μm厚さのリチウムホイル、前記(2)で製造された正極、電解液は溶媒としてDOL/DME(1:1、v/v)を使い、1M LiTFSIと3重量%のLiNO3を含む組成にして製造された電解液、及びポリオレフィン分離膜を使ってコインセル形態のリチウム二次電池を製造した。この時、DOLはジオキソラン、DMEはジメトキシエタンを意味する。
【0076】
実施例5
前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素全体重量を基準にして前記ポリ(1,4-アントラキノン)の含量が0.5重量%になるようにしたことを除いて、実施例4と同様の方法でレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素及びリチウム二次電池を製造した。
【0077】
実施例6
前記レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素全体重量を基準にして前記ポリ(1,4-アントラキノン)の含量が1.0重量%になるようにしたことを除いて、実施例4と同様の方法でレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素及びリチウム二次電池を製造した。
【0078】
比較例1
レドックス官能基含有高分子層が形成されていない炭素を利用したことを除いて、実施例1と同様の方法で硫黄-炭素複合体及びリチウム二次電池を製造した。
【0079】
比較例2
レドックス官能基含有高分子であるポリ(1,4-アントラキノン)を炭素表面にコーティングする代わりに単純に添加したことを除いて、実施例1と同様の方法で硫黄-炭素複合体及びリチウム二次電池を製造した。
【0080】
比較例3
リチウムポリスルフィド(LiPS)を添加した電解液を使ったことを除いて、実施例4と同様の方法でレドックス官能基含有高分子層が形成された炭素及びリチウム二次電池を製造した。
【0081】
比較例4
Alホイルの一面にCNT層を形成し、前記CNT層の上にレドックス官能基含有高分子層を形成して正極を製造したことを除いて、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0082】
この時、前記CNT層はCNT、導電材として気相法炭素繊維(VGCF:Vapor grown carbon fiber)、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を8:1:1の重量比で混合し、22.5wt%の濃度で水に分散させてスラリーを製造し、前記スラリーをAlホイルにコーティングして乾燥させて形成した。
【0083】
また、前記レドックス官能基含有高分子層は、レドックス官能基含有高分子としてポリ(1,4-アントラキノン)を1wt%濃度でMC(methylene chloride)に溶解させた溶液を利用して湿式(wet)コーティング法によって前記CNT層に225μmの厚さでコーティングし、50℃で乾燥させて形成した。
【0084】
実験例1
実施例1、2、3及び比較例1、2で製造されたリチウム二次電池の放電電流速度を0.1Cで3回、0.2Cで3回、以後0.5Cに設定した後、放電容量を観察した。
【0085】
図1a、
図1b及び
図1cは、実施例及び比較例で製造されたリチウム二次電池の放電容量を示すグラフである。
【0086】
図1aを参照すれば、レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素を含む硫黄-炭素複合体を適用した実施例1ないし3のリチウム二次電池は、レドックス官能基含有高分子層が形成されていない炭素を含む硫黄-炭素複合体を適用した比較例1のリチウム二次電池に比べて初期放電容量と平均比容量がいずれも優れるように示されることを確認することができた。
【0087】
図1bを参照すれば、集電体、CNT層及びレドックス官能基含有高分子層が順次積層された比較例4は、レドックス官能基含有高分子層が形成された炭素を含む硫黄-炭素複合体を適用した実施例1に比べて寿命特性がよくないことが分かる。
【0088】
図1cを参照すれば、レドックス官能基含有高分子が単純添加された形態の比較例2は、レドックス官能基含有高分子を含まない比較例1に比べて寿命特性がもっとよくないことが分かる。
【0089】
実験例2
実施例4、5、6及び比較例2で製造されたリチウム二次電池に対し、サイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry)を適用して寿命特性を評価した。
【0090】
図2a及び
図2bは、実施例及び比較例で製造されたリチウム二次電池のサイクリックボルタンメトリーによる寿命特性評価結果を示すグラフである。
図2aは0.1mV/sの速度でサイクリックボルタンメトリーを評価したもので、
図2bは実施例4のリチウム二次電池に対してそれぞれ0.1mV/s、0.2mV/s、0.3mV/s、0.4mV/s及び0.5mV/sの速度でサイクリックボルタンメトリーを評価したものである。
【0091】
図2aを参照すれば、レドックス官能基含有高分子のポリ(1,4-アントラキノン)である高分子層の形態で含まれた実施例4、5、6と単純添加された比較例2のいずれも前記レドックス官能基含有高分子が含まれているという自体で電気化学反応性が存在し、可逆的であることが分かった。
【0092】
図2bを参照すれば、レドックス官能基含有高分子であるポリ(1,4-アントラキノン)自体の反応性が速いことを確認することができ、セルを適用する時に高率運転でも効果を示すことが分かった。
【0093】
実験例3
実施例4及び比較例3で製造されたリチウム二次電池に対して、0.1mV/sの速度でサイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry)を適用してリチウムポリスルフィドに対する活性を評価した。
【0094】
図3a及び
図3bは、実施例及び比較例で製造されたリチウム二次電池のサイクリックボルタンメトリーによるリチウムポリスルフィドに対する活性を示すグラフである。
【0095】
図3aを参照すれば、実施例4はリチウムポリスルフィドが電解液に添加された比較例3に比べてリチウムポリスルフィドに対する活性が高いことが分かる。
【0096】
図3bを参照すれば、20サイクル後も実施例4は比較例3に比べてリチウムポリスルフィドに対する活性が高いことが分かる。
【0097】
以上、本発明は限定された実施例と図面によって説明されたが、本発明はこれによって限定されず、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と下記特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは勿論である。