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特許7195441低ヒドロキシ基高純度石英ガラスの調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】低ヒドロキシ基高純度石英ガラスの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20221216BHJP
【FI】
C03B20/00 A
C03B20/00 D
C03B20/00 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021534259
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 CN2020134893
(87)【国際公開番号】W WO2021174936
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2021-06-11
(31)【優先権主張番号】202011001200.0
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521258094
【氏名又は名称】中天科技精密材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHONGTIAN TECHNOLOGY ADVANCED MATERIALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Zhongtian Road No. 3, Nantong Economic And Technological Development Zone, Nantong City, Jiangsu Province, China
(73)【特許権者】
【識別番号】520150485
【氏名又は名称】江蘇中天科技股▲ふん▼有限公司
【住所又は居所原語表記】JIANGSU ZHONGTIAN TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】湯 明明
(72)【発明者】
【氏名】王 蒙非
(72)【発明者】
【氏名】銭 宜剛
(72)【発明者】
【氏名】馬 俊逸
(72)【発明者】
【氏名】張 賢根
(72)【発明者】
【氏名】沈 一春
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲や▼麗
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-528960(JP,A)
【文献】特開2004-026586(JP,A)
【文献】特開2004-338992(JP,A)
【文献】特開平06-263468(JP,A)
【文献】特開昭56-104732(JP,A)
【文献】特開平05-186234(JP,A)
【文献】特開平05-058667(JP,A)
【文献】特公平03-017775(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 20/00
C03B 8/04
C03C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ基を含有するシリカ粉体を提供するステップと、
前記シリカ粉体を第1温度で乾燥するステップ、前記シリカ粉体を第2温度まで昇温し、ハロゲンガスを含む第1酸化ガスを通気し、第1脱ヒドロキシ基粉体を得るステップ、および前記第1脱ヒドロキシ基粉体を第3温度まで昇温し、酸素ガス又はオゾンを含む第2酸化ガスを通気し、第2脱ヒドロキシ基粉体を得るステップを含む、前記シリカ粉体を脱ヒドロキシ基化する脱ヒドロキシ基化ステップと、
前記第2脱ヒドロキシ基粉体を第4温度まで上昇させてガラス化体を得るステップと、
前記ガラス化体を冷却して低ヒドロキシ基高純度石英ガラスを得るステップと、を含み、
前記第1酸化ガスの総質量は、前記シリカ粉体の総質量の1%以内である、ことを特徴とする低ヒドロキシ基高純度石英ガラスの調製方法。
【請求項2】
前記第2脱ヒドロキシ基粉体を第4温度まで上昇させてガラス化体を得るステップのに、
前記ガラス化体を、1600℃~2300℃である第5温度まで昇温し、1時間以上保持して高温均一化するステップをさらに含む請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記ガラス化体を冷却するステップは、
前記ガラス化体を、0.05℃/min以下の降温速度で前記第4温度から室温まで降温させるステップを含む請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
前記シリカ粉体の調製方法は、
珪素含有原料を提供するステップと、
前記珪素含有原料を気相堆積法により加水分解して前記シリカ粉体を形成するステップと、を含む請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
前記珪素含有原料は、SiCl、SiF、C18Si、C24Si、C1030Si、C1236Siの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項6】
前記気相堆積法は、化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法、気相軸付け法、管外気相堆積法のいずれかを含むことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項7】
前記第1酸化ガスは、フッ素ガス、塩素ガス、ガス状臭素の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項8】
前記第1酸化ガスおよび前記第2酸化ガスのうちの少なくとも1つは、窒素ガス、ヘリウムガスおよびアルゴンガスのうちの少なくとも1つを含む不活性ガスをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項9】
前記第1温度は200℃~400℃であり、前記第2温度は700℃~1000℃であり、前記第3温度は1050℃~1250℃であり、前記第4温度は1300℃~1500℃であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、材料調製の技術分野に関し、特に低ヒドロキシ基高純度石英ガラスおよびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石英ガラスは、純シリカが溶融して形成され、レンズ、プリズム、リフレクター、窓、フォトマスク板、及びウェハ等の技術分野に広く使用されている。
【0003】
従来、石英ガラスは通常、ワンステップ法で調製され(すなわち、石英ガラスは、気相堆積により直接得られ、例えばCVD法、PVCD法等)、ワンステップ法で石英ガラスを調製されることは、堆積温度が低く、堆積速度が高く、エネルギー消費や製造コストが低いなどの利点があり、現在の石英ガラスを調製するための優先的な技術である。
【0004】
しかしながら、ワンステップ法で調製された石英ガラスは、ヒドロキシ基含有量が高く、且つ石英ガラスの均一性は好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の内容を鑑み、調製される石英ガラスのヒドロキシ基含有量が低い低ヒドロキシ基高純度石英ガラスの調製方法を提供する必要がある。
【0006】
また、本願は、上記調製方法で調製された低ヒドロキシ基高純度石英ガラスも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
低ヒドロキシ基高純度石英ガラスの調製方法は、ヒドロキシ基を含有するシリカ粉体を提供するステップと、
前記シリカ粉体を第1温度で乾燥するステップ、前記シリカ粉体を第2温度まで昇温し、ハロゲンガスを含む第1酸化ガスを通気し、第1脱ヒドロキシ基粉体を得るステップ、および前記第1脱ヒドロキシ基粉体を第3温度まで昇温し、酸素ガス又はオゾンを含む第2酸化ガスを通気し、第2脱ヒドロキシ基粉体を得るステップを含む、前記シリカ粉体を脱ヒドロキシ基化する脱ヒドロキシ基化ステップと、
前記第2脱ヒドロキシ基粉体を第4温度まで上昇させてガラス化体を得るステップと、
前記ガラス化体を冷却して低ヒドロキシ基高純度石英ガラスを得るステップと、を含む。
【0008】
さらに、前記第2脱ヒドロキシ基粉体を第4温度まで上昇させてガラス化体を得るステップの前に、
前記ガラス化体を、1600℃~2300℃である第5温度まで昇温し、1時間以上保持して高温均一化するステップをさらに含む。
【0009】
さらに、前記ガラス化体を冷却するステップは、
前記ガラス化体を、0.05℃/min以下の降温速度で前記第4温度から室温まで降温させるステップを含む。
【0010】
さらに、前記シリカ粉体の調製方法は、
珪素含有原料を提供するステップと、
前記珪素含有原料を気相堆積法により加水分解して前記シリカ粉体を形成するステップと、を含む。
【0011】
さらに、前記珪素含有原料は、SiCl、SiF、C18Si、C24Si、C1030Si、C1236Siの少なくとも1種を含む。
【0012】
さらに、前記気相堆積法は、化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法、気相軸付け法、管外気相堆積法のいずれかを含む。
【0013】
さらに、前記第1酸化ガスは、フッ素ガス、塩素ガス、ガス状臭素の少なくとも1つを含む。
【0014】
さらに、前記第1酸化ガスおよび前記第2酸化ガスのうちの少なくとも1つは、窒素ガス、ヘリウムガスおよびアルゴンガスのうちの少なくとも1つを含む不活性ガスをさらに含む。
【0015】
さらに、前記第1温度は200℃~400℃であり、前記第2温度は700℃~1000℃であり、前記第3温度は1050℃~1250℃であり、前記第4温度は1300℃~1500℃である。
【0016】
前記調製方法で調製された低ヒドロキシ基高純度石英ガラスであって、
前記石英ガラスのヒドロキシ基の含有量は、1ppm未満であり、光学的均一性は4.3×10-5以下である。
【発明の効果】
【0017】
第1酸化ガスによりヒドロキシ基を除去し、第2酸化ガスにより第1酸化ガスを除去し、ヒドロキシ基含有量が低く均一性の良い石英ガラスを得る、低ヒドロキシ基高純度石英ガラスを製造する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本願のある実施例による低ヒドロキシ基高純度石英ガラスの調製方法のフローチャートである。
図2】本願のある実施例による低ヒドロキシ基高純度石英ガラスの分光透過率グラフである。
図3】脱ヒドロキシ基化の温度・時間グラフである。
図4】ガラス化および均一化の温度・時間グラフである。 本願の実施例は、以下の詳細な説明において上記の図面と併せてさらに説明される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願の実施例における上記目的、特徴および利点をより明確に理解できるように、以下、図面および具体的な実施形態を組み合わせて本願を詳細に説明する。なお、本願の実施形態の特徴は、お互いに矛盾しない場合、組み合わせることができる。
【0020】
以下の説明では、本出願の実施例を十分に理解するために、多くの特定の詳細が述べられているが、説明した実施形態は、本出願の実施形態の一部に過ぎず、実施形態のすべてではない。創造的な努力なしに本出願の実施形態に基づいて当業者によって得られる他のすべての実施形態は、本出願の範囲内である。
【0021】
本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、特に定義されない限り、本出願の実施例が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本出願の明細書で使用される用語は、具体的に実施例を説明するためのものであり、本出願を限定するものではない。
【0022】
図1を参照して、本願実施例は、以下のステップを含む、低ヒドロキシ基高純度石英ガラスの調製方法を提供する。
ステップS1:シリカ粉体を提供する。
本実施例では、ステップS1でシリカ粉体を調製することは、以下のステップを含む。
ステップS10:純度が99.999%(質量分率で計算する)を超える珪素含有原料であるSiClを提供する。本出願の他の実施例において、前記珪素含有原料は、SiF、C18Si、C24Si、C1030Si、C1236Siの少なくとも1種を含む。
ステップS11:気相軸付け法(Vapor AxialDeposition、VAD)を用いて前記珪素含有原料を加水分解して前記シリカ粉体を形成する。前記気相堆積法は、酸水素炎の中で前記珪素含有原料を反応させて前記シリカ粉体を得ることを備え、前記珪素含有原料の総反応式は、以下の通りである。
前記珪素含有原料を酸水素炎中で反応させて前記シリカ粉体を得る前記珪素含有原料の酸水素炎中の総反応式が以下の通りである。
SiCl+2H+O→SiO+4HCl
【0023】
本実施例では、前記シリカ粉体は灰色かつ緩い状態であり、前記シリカ粉体の密度ρは0.5g/cm~0.9g/cmである。前記珪素含有原料は、酸水素炎中で反応する過程で、前記シリカ粉体中に遊離状態で存在する水分子またはヒドロキシ基が多量に導入され、前記ヒドロキシ基は、前記シリカ粉体に水素結合または共有結合で結合される。
【0024】
本願の別の実施例において、前記シリカ粉体は、気相軸付け法(Plasma Outside Vapor Deposition、 Vapor Axial Deposition、 VAD)や管外気相堆積法(Outside Vapor Deposition、 OVD)等の方法によって調製されてもよい。
【0025】
ステップS2:前記シリカ粉体を脱ヒドロキシ基化し、前記脱ヒドロキシ基化ステップは、以下のステップを含む。
ステップS20:図3を参照して、高温炉を200℃~400℃である温度T1まで調整し、前記シリカ粉体を高温炉の中で温度T1で乾燥保温し、乾燥保温時間t1(t1≧3h)にて前記シリカ粉体中の遊離の水分子を除去する。
本実施例では、ステップS20において、前記乾燥保温は、窒素ガス、ヘリウムガス、及びアルゴンガスの少なくとも一つを含む純度が99.999999%の不活性ガス雰囲気中で行われる。
【0026】
ステップS21:高温炉を700℃~1000℃である第2温度T2まで上昇し、前記シリカ粉体が位置する高温炉に第1酸化ガスを通気し、通気時間t2(t2≧0.5h)にて第1脱ヒドロキシ基粉体を得る。
本実施例では、ステップS21において、前記第1酸化ガスは、フッ素ガス、塩素ガスおよびガス状臭素の少なくとも1つを含む。前記第1酸化ガスにおける高電気陰性原子(フッ素原子、塩素原子および臭素原子)は、前記シリカ中のヒドロキシ基およびその他の不純物(例えば、金属原子等)を酸化還元反応によって置換する。
本実施例では、ステップS21において、通気される前記第1酸化ガスの総質量は、前記シリカ粉体総質量の1%以内であり、通気される第1酸化ガスの総質量が、前記シリカ粉体総質量の1%を超えると、前記第1酸化ガスが過剰となって前記シリカ粉体中に雑ぜされる可能性があるので、後続の石英ガラスの均一性に影響しつつ、第1酸化ガスの無駄を招くおそれがある。
本実施形態において、前記第1酸化ガスは、キャリアガスとして酸素ガスおよび/またはオゾンを前記高温炉に供給する前記不活性ガスをさらに含む。
【0027】
ステップS22:高温炉の温度を1050℃~1250℃である第3温度T3まで上昇し、前記第1脱ヒドロキシ基粉体が位置する高温炉に、酸素ガス又はオゾンの少なくとも一つを含む第2酸化ガスを通気し、通気時間t3(t3≧3h)にて第2脱ヒドロキシ基粉体を得る。前記第1酸化ガスおよび第2酸化ガスは、それぞれハロゲン原子および酸素原子を含み、第1酸化ガス中のハロゲン原子は、第1脱ヒドロキシ基粉体に結合してシリコンハロゲン結合を形成し、第2酸化ガス中の酸素原子は、第1脱ヒドロキシ基粉体に結合して珪酸結合を形成する。珪酸結合の安定性がシリコンハロゲン結合よりも高いため、前記第1脱ヒドロキシ基粉体に結合したハロゲン原子は、前記酸素原子で置換されやすく、前記不活性ガスから持ち出してフッ素、塩素又は臭素を除去するため、後続で合成される石英ガラスの光学的均一性の向上に有利である。
本実施形態では、ステップS23において、第2酸化ガスは、キャリアガスとして、酸素ガスおよび/またはオゾンを前記高温炉に搬入するための不活性ガスをさらに含む。
【0028】
ステップS3:前記第2脱ヒドロキシ基粉体をガラス化して、ガラス化体を得る。
本実施形態において、ステップS3におけるガラス化は具体的には、前記高温炉に前記不活性ガスを通気し、炉に残留される遊離状態の酸素や塩素を持ちだされ、第4温度T4に段階的に昇温して、反応時間t4(t4≧1h)にて粉体をガラス化し、前記第4温度T4の範囲は1300℃~1500℃である。
【0029】
ステップS4、アニール冷却して前記低ヒドロキシ基高純度石英ガラスを得る。
本実施例では、図4を参照して、ステップS4において、前記アニール冷却は、具体的には、前記ガラス化体を前記第4温度T4から降温速度ν(ν≦0.05℃/min)で降温させることを含む。
【0030】
本実施例では、ステップS3とステップS4の間にさらに以下のステップを含んでいる。
ステップS30:1600℃~2300℃である第5温度T5まで高温炉を昇温し、時間t5(t5≧1h)に保持して、前記ガラス化体を高温均化し、フッ素、塩素、または臭素をさらに除去することができ、後続の石英ガラスの光学的均一性の向上に有利である。
【0031】
また、前記方法により製造される、前記石英ガラスのヒドロキシ基の含有量<1ppmとした場合、光学的均一性(光学的均一性とは、一定の領域における各部分の屈折率変化の不均一さ)が4.3×10-5以下であり、好ましくは光学的均一性が2×10-6未満である低ヒドロキシ基高純度石英ガラスを提供する。
【0032】
本実施例において、図2を参照して、前記石英ガラスの190nm~2700nmにおける分光透過率が90%より大きい。前記石英ガラスの金属不純物の含有量は0.2ppm未満であり、応力複屈折は2nm/cm未満である。
【0033】
本願により低ヒドロキシ基高純度石英ガラスは、ヒドロキシ基の含有率が低いため、透過率を増加させ、高出力レーザーへの適用が可能であり、発熱が低く、長寿命であるという特徴を有する。紫外、赤外、または全波長帯光学レンズへの加工にも好適に使用することができ、透過率が高いという特徴を有する。光学窓に加工することもでき、極めて優れた耐高温性、耐高圧性、あるいは耐食性能を有する。光学透過率が高い、材料安定性が良いという特徴があるフォトマスク板やウェハ等の製品に加工してもよい。
【0034】
以下に、本願の石英粉の製造例及び製品性能を例示して説明する。
【実施例1】
【0035】
純度が99.999%以上である気態の四塩化ケイ素と、純度が99.9999%以上である酸水素炎とを加水分解反応させて前記シリカ粉体を形成し、前記シリカ粉体の密度ρ=0.6g/cmとした。
前記シリカ粉体は、高温炉で温度T1=300℃に保温され、ヘリウムガスを保護ガスとし、ヘリウムガス純度は99.9999%であり、保温時間t1=5h。
前記シリカ粉体が位置する高温炉には、ヘリウム塩素混合ガスが通気し、ヘリウム塩素混合ガスの流量比は20:1であり、塩素ガス投入量は0.4kgであり、炉温T2=900℃且つ反応時間t2=1hで、前記第1脱ヒドロキシ基粉体を得る。
前記第1脱ヒドロキシ基粉体が位置する高温炉の温度をT3=1150℃まで昇温し、ヘリウム酸素混合ガスの流量比は5:1であり、反応時間t3=5hで、前記第2脱ヒドロキシ基粉体を得る。
前記第2脱ヒドロキシ基粉体が位置する高温炉には、純度99.999999%の高純度ヘリウムガスを通気し、T4=1350℃まで段階的に昇温し、反応時間t4=3hにて前記ガラス化体を得る。
前記ガラス化体を速度ν=0.02℃/minで300℃まで降温した後、常温冷却して前記石英ガラスを得る。
以上の条件でサンプル1#、2#、3#、4#を作製し、金属不純物含有量、ヒドロキシ基含有量、分光透過率、光学的均一性、応力複屈折を表1に示す。
【0036】
【0037】
なお、表1において、前記透過率とは、前記石英ガラスの表面に入射するエネルギーに対する、特定波長(190nm、2700nm)の光波を透過するエネルギーの割合を意味する。表1において、光学的均一性とは、一定の領域における各部分の屈折率変化の不均一さであり、屈折率変化の最大差で表される。表1において、応力複屈折とは、合成される石英における異なる領域密度差によって光が透過する光路長差を意味する。
実施例1のステップの大体は、粉体の合成、粉体の脱ヒドロキシ、粉体ガラス化およびアニールの4つの主な過程に分ける。実施例1において、各サンプルのヒドロキシ基の含有率は1ppm未満であり、光学的均一性は43×10-6以下である。
【実施例2】
【0038】
純度が99.999%以上である気態の四塩化ケイ素と、純度が99.9999%以上である酸水素炎とを加水分解反応させて前記シリカ粉体を形成し、前記シリカ粉体の密度ρ=0.6g/cmとした。
前記シリカ粉体は、高温炉で温度T1でT1=300℃に保温され、ヘリウムガスを保護ガスとし、高純度ヘリウムガス純度は99.9999%であり、保温時間t1=5hである。
前記シリカ粉体が位置する高温炉には、ヘリウム塩素混合ガスが通気し、ヘリウム塩素混合ガスの流量比は20:1であり、塩素ガス投入量は0.4kgであり、炉温T2=900℃且つ反応時間t2=1hで、前記第1脱ヒドロキシ基粉体を得る。
前記第1脱ヒドロキシ基粉体が位置する高温炉の温度をT3=1150℃まで昇温し、ヘリウム酸素混合ガスの流量比は5:1であり、反応時間t3=5hで、第2脱ヒドロキシ基粉体を得る。
前記第2脱ヒドロキシ基粉体が位置する高温炉には、純度99.999999%の高純度ヘリウムガスを通気し、T4=1350℃まで段階的に昇温し、反応時間t4=3hにて前記ガラス化体を得る。
前記ガラス化体を、T5=1800℃まで昇温し続けて均質化して、均質化の持続時間t5=3hにする。
前記ガラス化体を速度ν=0.02℃/minで300℃までに降温した後、常温冷却して前記石英ガラスを得る。
以上の条件でサンプル5#、6#、7#、8#を作製し、金属不純物含有量、ヒドロキシ基含有量、分光透過率、光学的均一性、応力複屈折を表2に示す。
【0039】
【0040】
実施例2のステップの大体は、粉体の合成、粉体の脱ヒドロキシ、粉体ガラス化、高温均質化およびアニールの5つの主な過程に分けることができる。実施例1において、各サンプルのヒドロキシ基の含有量がいずれも1ppm未満であり、光学的均一性が0.8×10-6~1.2×10-6であり、実施例2に比べ、高温均一化は、石英ガラスの光学的均一性を顕著に向上させることが分かった。
【比較例1】
【0041】
純度が99.999%以上である気態の四塩化ケイ素と、純度が99.9999%以上である酸水素炎とを加水分解反応させて前記シリカ粉体を形成し、前記シリカ粉体の密度ρ=0.6g/cmとした。
前記シリカ粉体は、高温炉で温度T1でT1=300℃に保温され、高純度ヘリウムガスを保護ガスとし、ヘリウムガス純度は99.9999%であり、保温時間t1=5hである。
前記シリカ粉体が位置する高温炉には、ヘリウム塩素混合ガスが通気し、ヘリウム塩素混合ガスの流量比は20:1であり、塩素ガス投入量は0.4kgであり、炉温T2=900℃且つ反応時間t2=1hで、前記第1脱ヒドロキシ基粉体を得る。
前記シリカ粉体が位置する高温炉には、純度99.999999%の高純度ヘリウムガスを通気し、T4=1350℃まで段階的に昇温し、反応時間t4=3hにて前記ガラス化体を得る。
前記シリカ粉体が位置する高温炉には、純度99.999999%の高純度ヘリウムガスを通気し、T4=1350℃まで段階的に昇温し、反応時間t4=3hにて前記ガラス化体を得た。
前記ガラス化体を、T5=1800℃まで昇温し続けて均質化して、均質化の持続時間t5=3hにする。
前記ガラス化体を速度ν=0.02℃/minで300℃までに降温した後、常温冷却して前記石英ガラスを得る。
以上の条件でサンプル9#、10#、11#、12#を作製し、金属不純物含有量、ヒドロキシ基含有量、分光透過率、光学的均一性、応力複屈折を表3に示す。
【0042】
【0043】
比較例1のステップの大体は、粉体の合成、粉体の脱ヒドロキシ、粉体ガラス化、高温均質化およびアニールの5つの主な過程に分ける。比較例1において、各サンプルのヒドロキシ基の含有率は1ppm未満であり、光学的均一性が10×10-6~12×10 -6以下であり、実施例2に比べ、残留される塩素は、最終的に石英ガラスの光学的均一性を低下させることが分かった。
【比較例2】
【0044】
純度が99.999%以上である気態の四塩化ケイ素と、純度が99.9999%以上である酸水素炎とを加水分解反応させて前記シリカ粉体を形成し、前記シリカ粉体の密度ρ=0.6g/cmとした。
前記シリカ粉体が位置する高温炉には、純度99.999999%の高純度ヘリウムガスを通気し、T4=1350℃まで段階的に昇温し、反応時間t4=3hにて前記ガラス化体を得る。
前記ガラス化体を速度ν=0.02℃/minで300℃までに降温した後、常温冷却して前記石英ガラスを得る。
以上の条件でサンプル13#、14#、15#、16#を作製し、金属不純物含有量、ヒドロキシ基含有量、分光透過率、光学的均一性、応力複屈折を表4に示す。
【0045】
【0046】
比較例2のステップの大体は、粉体の合成、粉体ガラス化およびファインアニールの3つの主な過程に分ける。比較例1において、各サンプルのヒドロキシ基の含有率はいずれも30ppmより高い、光学的均一性が0.9×10-6~1.1×10-6以下であり、実施例1に比べ、塩素ガスがヒドロキシ基の含有量を著しく低下させることができるとともに、塩素が最終的に石英ガラスの光学的均一性を低下させることが分かった。
【0047】
以上の実施形態は、本願実施例の技術的な態様を説明するためにのみ用いられるものであり、限定するものではない。以上のより良い実施形態を参照して本願実施例を詳細に説明したが、当業者は、本願実施例の技術的な態様を修正または同等に置換しても本願実施例の技術案の精神的及び範囲から逸脱してはならないことを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4