(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】演算装置、入力装置、演算方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/044 20060101AFI20221216BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
G06F3/044 130
G06F3/041 580
G06F3/044 124
G06F3/041 520
(21)【出願番号】P 2021537572
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2020011128
(87)【国際公開番号】W WO2021024536
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2019143990
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】梅村 俊佑
【審査官】木内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/180280(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/174771(WO,A1)
【文献】特開2016-224834(JP,A)
【文献】特開2008-134836(JP,A)
【文献】特開2019-95841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/044
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交して配設された複数の第1検出電極および複数の第2検出電極を備え、前記複数の第1検出電極および前記複数の第2検出電極の各々が複数の検出面を有する静電容量センサにおいて検出された、前記複数の第1検出電極および前記複数の第2検出電極の各々の静電容量検出値に基づいて、操作面に対する操作体の近接状態を表すイメージデータを算出する演算装置であって、
前記複数の第1検出電極および前記複数の第2検出電極の各々の、前記静電容量検出値を取得する検出値取得部と、
前記検出値取得部によって取得された複数の前記静電容量検出値と、前記複数の第1検出電極および前記複数の第2検出電極の各々に対して予め設定された前記検出面毎の係数とに基づいて、前記複数の第1検出電極および前記複数の第2検出電極の各々の前記検出面毎の第1の静電容量算出値を算出する第1静電容量値算出部と、
前記第1静電容量値算出部によって算出された複数の前記第1の静電容量算出値に基づいて、前記イメージデータを算出するイメージデータ算出部と
を備えることを特徴とする演算装置。
【請求項2】
前記複数の第1検出電極が備える前記検出面の総数と、前記複数の第2検出電極が備える前記検出面の総数とが異なることに応じて、前記複数の第1検出電極に対して予め設定されている前記係数の総数と、前記複数の第2検出電極に対して予め設定されている前記係数の総数とが異なる
ことを特徴とする請求項1に記載の演算装置。
【請求項3】
前記第1静電容量値算出部は、
前記第1検出電極の一端側の第1の検出部で検出された第1の静電容量検出値と、
前記第1の静電容量検出値に対する前記検出面毎の係数と、
前記第1検出電極の他端側の第2の検出部で検出された第2の静電容量検出値と、
前記第2の静電容量検出値に対する前記検出面毎の係数と
に基づいて、前記第1検出電極の前記検出面毎の前記第1の静電容量算出値を算出し、
前記第2検出電極の一端側の第3の検出部で検出された第3の静電容量検出値と、
前記第3の静電容量検出値に対する前記検出面毎の係数と、
前記第2検出電極の他端側の第4の検出部で検出された第4の静電容量検出値と、
前記第4の静電容量検出値に対する前記検出面毎の係数と
に基づいて、前記第2検出電極の前記検出面毎の前記第1の静電容量算出値を算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の演算装置。
【請求項4】
前記第1静電容量値算出部によって算出された複数の前記第1の静電容量算出値に基づく所定の補間処理によって、前記複数の第1検出電極と前記複数の第2検出電極との交差点毎の第2の静電容量算出値を算出する第2静電容量値算出部をさらに備え、
前記イメージデータ算出部は、
前記第1静電容量値算出部によって算出された複数の前記第1の静電容量算出値と、前記第2静電容量値算出部によって算出された複数の前記第2の静電容量算出値とに基づいて、前記イメージデータを算出する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の演算装置。
【請求項5】
第2静電容量値算出部は、前記第1静電容量値算出部によって算出された複数の前記第1の静電容量算出値に基づくバイキュービック補間処理によって、複数の前記第2の静電容量算出値を算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の演算装置。
【請求項6】
前記第1検出電極および前記第2検出電極のうちの一方の前記検出面の前記第1の静電容量算出値を、当該検出面を取り囲む、前記第1検出電極および前記第2検出電極のうちの他方の前記検出面の前記第1の静電容量算出値で制約する制約部
をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の演算装置。
【請求項7】
前記制約部は、
制約前の前記第1の静電容量算出値に対して、所定の制約係数を乗じることにより、制約後の前記第1の静電容量算出値を算出する
ことを特徴とする請求項6に記載の演算装置。
【請求項8】
前記第1検出電極および前記第2検出電極のうちの一方の前記第1の静電容量算出値の合計値を、前記第1検出電極および前記第2検出電極のうちの他方の前記第1の静電容量算出値の合計値と等しくする正規化処理を行う正規化部
をさらに備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の演算装置。
【請求項9】
前記静電容量センサと、
請求項1から8のいずれか一項に記載の演算装置と
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項10】
互いに直交して配設された複数の第1検出電極および複数の第2検出電極を備え、前記複数の第1検出電極および前記複数の第2検出電極の各々が複数の検出面を有する静電容量センサにおいて検出された、前記複数の第1検出電極および前記複数の第2検出電極の各々の静電容量検出値に基づいて、操作面に対する操作体の近接状態を表すイメージデータを算出する演算方法であって、
前記複数の第1検出電極および前記複数の第2検出電極の各々の、前記静電容量検出値を取得する検出値取得工程と、
前記検出値取得工程において取得された複数の前記静電容量検出値と、前記複数の第1検出電極および前記複数の第2検出電極の各々に対して予め設定された前記検出面毎の係数とに基づいて、前記複数の第1検出電極および前記複数の第2検出電極の各々の前記検出面毎の第1の静電容量算出値を算出する第1静電容量値算出工程と、
前記第1静電容量値算出工程において算出された複数の前記第1の静電容量算出値に基づいて、前記イメージデータを算出するイメージデータ算出工程と
を含むことを特徴とする演算方法。
【請求項11】
互いに直交して配設された複数の第1検出電極および複数の第2検出電極を備え、前記複数の第1検出電極および前記複数の第2検出電極の各々が複数の検出面を有する静電容量センサにおいて検出された、前記複数の第1検出電極および前記複数の第2検出電極の各々の静電容量検出値に基づいて、操作面に対する操作体の近接状態を表すイメージデータを算出するためのプログラムであって、
コンピュータを、
前記複数の第1検出電極および前記複数の第2検出電極の各々の、前記静電容量検出値を取得する検出値取得部、
前記検出値取得部によって取得された複数の前記静電容量検出値と、前記複数の第1検出電極および前記複数の第2検出電極の各々に対して予め設定された前記検出面毎の係数とに基づいて、前記複数の第1検出電極および前記複数の第2検出電極の各々の前記検出面毎の第1の静電容量算出値を算出する第1静電容量値算出部、および、
前記第1静電容量値算出部によって算出された複数の前記第1の静電容量算出値に基づいて、前記イメージデータを算出するイメージデータ算出部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算装置、入力装置、演算方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに直交する複数の縦電極と複数の横電極とを備えた静電容量センサにより、入力装置の操作面に対する操作体の近接状態を検出し、当該近接状態を表すイメージデータを生成する技術が利用されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、複数の検出面が直線状に並べて設けられた検出電極が利用されている。このような検出電極を用いた静電容量センサでは、縦電極の隣接する2つの検出面の中間部分と、横電極の隣接する2つの検出面の中間部分を交差させる必要がある。
【0005】
しかしながら、従来技術では、縦電極と横電極との交差点(すなわち、各検出電極の中間部分)を検出点としているが、実際に各検出電極において検出感度が高いのは、より面積が広い各電極の検出面上である。よって、演算によって求められる近接位置の検出精度が低下する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の演算装置は、互いに直交して配設された複数の第1検出電極および複数の第2検出電極を備え、複数の第1検出電極および複数の第2検出電極の各々が複数の検出面を有する静電容量センサにおいて検出された、複数の第1検出電極および複数の第2検出電極の各々の静電容量検出値に基づいて、操作面に対する操作体の近接状態を表すイメージデータを算出する演算装置であって、複数の第1検出電極および複数の第2検出電極の各々の、静電容量検出値を取得する検出値取得部と、検出値取得部によって取得された複数の静電容量検出値と、複数の第1検出電極および複数の第2検出電極の各々に対して予め設定された検出面毎の係数とに基づいて、複数の第1検出電極および複数の第2検出電極の各々の検出面毎の第1の静電容量算出値を算出する第1静電容量値算出部と、第1静電容量値算出部によって算出された複数の第1の静電容量算出値に基づいて、イメージデータを算出するイメージデータ算出部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態によれば、各検出電極が複数の検出面を有する静電容量センサにおいて、近接位置の検出精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る静電容量センサの構成を示す図
【
図2】一実施形態に係る入力装置の装置構成を示すブロック図
【
図3】一実施形態に係る演算装置の機能構成を示すブロック図
【
図4】一実施形態に係る演算装置による処理の手順を示すフローチャート
【
図5】一実施形態に係る演算装置が使用する係数テーブルの一例を示す図
【
図6】一実施形態に係る係数補正部およびイメージ補正部による処理の一例を示す図
【
図7】一実施形態に係る係数補正部およびイメージ補正部による処理の一例を示す図
【
図8】一実施形態に係る制約部による処理の一例を示す図
【
図9】本実施形態に係る演算装置の一実施例を示す図
【
図10】本実施形態に係る演算装置の一実施例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、一実施形態について説明する。
【0010】
(静電容量センサ100の構成)
図1は、一実施形態に係る静電容量センサ100の構成を示す図である。
図1に示すように、静電容量センサ100は、互いに直交して配設された、複数(
図1に示す例では、5つ)の第1検出電極Xa~Xeと、複数(
図1に示す例では、4つ)の第2検出電極Ya~Ydとを備える。
【0011】
第1検出電極Xa~Xeは、いずれも縦方向に延在する検出電極である。第1検出電極Xa~Xeは、横方向に一定の間隔を有して互いに平行に並べて配置されている。第1検出電極Xa~Xeは、いずれも、複数(
図1に示す例では、5つ)の菱形の検出面Fが縦方向に連結された形状を有している。すなわち、
図1に示す例では、静電容量センサ100には、5本の第1検出電極Xa~Xeにより、25個の検出面Fが5行×5列のマトリクス状に配置されている。第1検出電極Xa~Xeは、いずれも、上端部および下端部の各々に、静電容量値を検出するための検出部Dを有する。第1検出電極Xa~Xeは、いずれも、金属膜(例えば、銅膜)やITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム錫)、他の導電性を有する材料が用いられて形成される。
【0012】
第2検出電極Ya~Ydは、いずれも横方向に延在する検出電極である。第2検出電極Ya~Ydは、縦方向に一定の間隔を有して互いに平行に並べて配置されている。第2検出電極Ya~Ydは、いずれも、複数(
図1に示す例では、6つ)の菱形の検出面Fが横方向に連結された形状を有している。すなわち、
図1に示す例では、静電容量センサ100には、4本の第2検出電極Ya~Ydにより、24個の検出面Fが4行×6列のマトリクス状に配置されている。第2検出電極Ya~Ydは、いずれも、左端部および右端部の各々に、静電容量値を検出するための検出部Dを有する。第2検出電極Ya~Ydは、いずれも、金属膜(例えば、銅膜)やITO、他の導電性を有する材料が用いられて形成される。
【0013】
図1に示すように、第1検出電極Xa~Xeの各々は、隣接する2つの検出面Fの各中間点である各交差点Mにおいて、第2検出電極Ya~Ydの各々と交差している。同様に、第2検出電極Ya~Ydの各々は、隣接する2つの検出面Fの各中間点である各交差点Mにおいて、第1検出電極Xa~Xeの各々と交差している。すなわち、
図1に示す例では、静電容量センサ100には、第1検出電極Xa~Xeと、第2検出電極Ya~Ydとにより、20個の交差点Mが4行×5列のマトリクス状に形成されている。
【0014】
(入力装置10の装置構成)
図2は、一実施形態に係る入力装置10の装置構成を示すブロック図である。
図2に示す入力装置10は、操作面10Aに対する操作体の近接状態(位置、範囲、および距離)を検出し、検出された近接状態を表すイメージデータを生成および出力することが可能な装置である。
【0015】
図2に示すように、入力装置10は、静電容量センサ100(
図1参照)、検出回路120、および演算装置140を備える。
【0016】
静電容量センサ100は、操作面10Aに対して重ねて設けられている。静電容量センサ100は、操作面10Aに対する操作体の近接状態に応じて、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の静電容量値が変化する。
【0017】
検出回路120は、第1検出電極Xa~Xeの各々について、上端および下端の各々の検出部Dにおける静電容量値を検出する。第1検出電極Xa~Xeの各々は、抵抗を有するため、第1検出電極Xa~Xeの各々において、上端の検出部Dにおいて検出される静電容量値と、下端の検出部Dにおいて検出される静電容量値とは、操作体の近接位置に応じて異なるものとなる。
【0018】
また、検出回路120は、第2検出電極Ya~Ydの各々について、左端および右端の各々の検出部Dにおける静電容量値を検出する。第2検出電極Ya~Ydの各々は、抵抗を有するため、第2検出電極Ya~Ydの各々において、左端の検出部Dにおいて検出さえる静電容量値と、右端の検出部Dにおいて検出される静電容量値とは、操作体の近接位置に応じて異なるものとなる。
【0019】
演算装置140は、検出回路120によって検出された各静電容量値に基づいて、入力装置10の操作面10Aに対する操作体の近接状態を表すイメージデータを算出する。演算装置140は、例えば、IC(Integrated Circuit)によって実現される。
【0020】
ここで、本実施形態の演算装置140は、静電容量センサ100が備える複数の検出面Fの各々の検出点P(
図1参照)の静電容量値(以下、「第1の静電容量算出値」と示す)を算出することができる。また、本実施形態の演算装置140は、静電容量センサ100上の複数の交差点M(
図1参照)の各々の静電容量値(以下、「第2の静電容量算出値」と示す)を算出することができる。そして、本実施形態の演算装置140は、複数の検出点Pの各々の第1の静電容量算出値と、複数の交差点Mの各々の第2の静電容量算出値とに基づいて、近接状態の検出精度がより高く、且つ、より高分解能なイメージデータを算出することができる。
【0021】
(演算装置140の機能構成)
図3は、一実施形態に係る演算装置140の機能構成を示すブロック図である。
図3に示すように、演算装置140は、検出値取得部141、第1静電容量値算出部142、第2静電容量値算出部143、およびイメージデータ算出部144を備える。
【0022】
検出値取得部141は、検出回路120から、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の、静電容量検出値を取得する。ここで、検出値取得部141は、第1検出電極Xa~Xeの各々について、上端側(「第1検出電極の一端側」の一例)の検出部D(「第1の検出部」の一例)で検出された静電容量検出値と、下端側(「第1検出電極の他端側」の一例)の検出部D(「第2の検出部」の一例)で検出された静電容量検出値との各々を取得する。また、検出値取得部141は、第2検出電極Ya~Ydの各々について、左端側(「第2検出電極の一端側」の一例)の検出部D(「第3の検出部」の一例)で検出された静電容量検出値と、右端側(「第2検出電極の他端側」の一例)の検出部D(「第4の検出部」の一例)で検出された静電容量検出値との各々を取得する。
【0023】
第1静電容量値算出部142は、検出値取得部141によって取得された複数の静電容量検出値と、各係数テーブル501~504(
図5参照)に設定されている、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々に対して予め設定された検出面F毎の係数とに基づいて、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の検出面F毎の第1の静電容量算出値を算出する。
【0024】
具体的には、第1静電容量値算出部142は、係数補正部142A、イメージ補正部142B、正規化部142C、および制約部142Dを有する。
【0025】
係数補正部142Aは、検出値取得部141によって取得された複数の静電容量検出値に基づいて、各係数テーブル501~504に設定されている係数を補正する。係数補正部142Aによる補正方法については、
図6および
図7を用いて後述する。
【0026】
イメージ補正部142Bは、係数補正部142Aによる補正後の各係数テーブル501~504に基づいて、第1検出電極Xa~Xeのイメージに含まれる各検出面Fの第1の静電容量算出値、および、第2検出電極Ya~Ydのイメージに含まれる各検出面Fの第1の静電容量算出値を補正する。なお、「第1検出電極Xa~Xeのイメージ」は、第1検出電極Xa~Xeの各々の各検出面Fの第1静電容量算出値を表すものであり、検出値取得部141によって取得された第1検出電極Xa~Xeの静電容量検出値に基づいて求められるものである。また、「第2検出電極Ya~Ydのイメージ」は第2検出電極Ya~Ydの各々の各検出面Fの第1静電容量算出値を表すものであり、検出値取得部141によって取得された第2検出電極Ya~Ydの静電容量検出値に基づいて求められるものである。
【0027】
なお、イメージ補正部142Bは、「第1検出電極Xa~Xeのイメージ」および「第2検出電極Ya~Ydのイメージ」として、任意の0以外の値が、各検出面Fの第1静電容量算出値の初期値として設定されたものを用いてもよい。また、イメージ補正部142Bは、2回目以降の計算の場合、「第1検出電極Xa~Xeのイメージ」および「第2検出電極Ya~Ydのイメージ」として、前回の計算による補正後の値が、各検出面Fの第1静電容量算出値の初期値として設定されたものを用いてもよい。この場合、演算装置140は、計算時間を早めることができる場合がある。
【0028】
具体的には、イメージ補正部142Bは、第2検出電極Ya~Ydの各々について、現在の第2検出電極Ya~Ydのイメージに含まれる各検出面Fの第1の静電容量算出値を、横方向・左係数テーブル501に設定されている各検出面Fの係数(係数補正部142Aによる補正後の係数)で除することにより、各検出面Fの静電容量値の第1の中間算出値を算出する。
【0029】
次に、イメージ補正部142Bは、第2検出電極Ya~Ydの各々について、現在の第2検出電極Ya~Ydのイメージに含まれる各検出面Fの第1の静電容量算出値を、横方向・右係数テーブル502に設定されている各検出面Fの係数(係数補正部142Aによる補正後の係数)で除することにより、各検出面Fの静電容量値の第2の中間算出値を算出する。
【0030】
そして、イメージ補正部142Bは、第2検出電極Ya~Ydの各々について、検出面F毎に第1の中間算出値と第2の中間算出値とを合算することにより、第2検出電極Ya~Ydのイメージに含まれる各検出面Fの第1の静電容量算出値の、補正後の値を算出する。
【0031】
また、イメージ補正部142Bは、第1検出電極Xa~Xeの各々について、現在の第1検出電極Xa~Xeのイメージに含まれる各検出面Fの第1の静電容量算出値を、縦方向・上係数テーブル503に設定されている各検出面Fの係数(係数補正部142Aによる補正後の係数)で除することにより、各検出面Fの静電容量値の第1の中間算出値を算出する。
【0032】
次に、イメージ補正部142Bは、第2検出電極Ya~Ydの各々について現在の第1検出電極Xa~Xeのイメージに含まれる各検出面Fの第1の静電容量算出値を、縦方向・下係数テーブル504に設定されている各検出面Fの係数(係数補正部142Aによる補正後の係数)で除することにより、各検出面Fの静電容量値の第2の中間算出値を算出する。
【0033】
そして、イメージ補正部142Bは、第1検出電極Xa~Xeの各々について、検出面F毎に第1の中間算出値と第2の中間算出値とを合算することにより、第1検出電極Xa~Xeのイメージに含まれる各検出面Fの第1の静電容量算出値の、補正後の値を算出する。
【0034】
正規化部142Cは、第1静電容量値算出部142によって算出された複数の検出面F毎の第1の静電容量算出値(イメージ補正部142Bによる補正後の第1の静電容量算出値)の各々を正規化する。本実施形態の静電容量センサ100は、第1検出電極Xa~Xeの各々と、第2検出電極Ya~Ydの各々とで、電極数が異なるため、第1検出電極Xa~Xeの各々と、第2検出電極Ya~Ydの各々とで、静電容量値の検出量が異なる。そこで、本実施形態の演算装置140は、後続の制約部142Dによる制約処理を適切に行うことができるようにするために、静電容量値の検出量の差異を解消すべく、正規化部142Cによる正規化処理を行う。例えば、演算装置140は、第1検出電極Xa~Xeの各々の静電容量値の検出量(複数の検出面Fの第1の静電容量算出値の合計値)が、第2検出電極Ya~Ydの各々の静電容量値の検出量(複数の検出面Fの第1の静電容量算出値の合計値)と等しくなるように、第1検出電極Xa~Xeの各々の複数の第1の静電容量算出値、または、第2検出電極Ya~Ydの各々の複数の第1の静電容量算出値を調整する。
【0035】
制約部142Dは、第1静電容量値算出部142によって算出された複数の検出面F毎の第1の静電容量算出値(正規化部142Cによる正規化後の第1の静電容量算出値)の各々に制約をかける。
【0036】
具体的には、制約部142Dは、第1検出電極Xa~Xeの各検出面Fについて、当該検出面Fの第1の静電容量算出値を、当該検出面Fを取り囲む、他の複数(例えば4つ)の他の検出面F(第2検出電極Ya~Ydの検出面F)の第1の静電容量算出値で制約する。
【0037】
また、制約部142Dは、第2検出電極Ya~Ydの各検出面Fについて、当該検出面Fの第1の静電容量算出値を、当該検出面Fを取り囲む、他の複数(例えば4つ)の検出面F(第1検出電極Xa~Xeの検出面F)の第1の静電容量算出値で制約する。
【0038】
本実施形態では、第1の静電容量算出値の制約方法の一例として、下記数式(1)を用いる。但し、βは、所定の制約係数である。本実施形態では、制約係数βの好適な一例として「0.9」を用いている。また、AVGは、他の複数の検出面Fの第1の静電容量算出値の平均値である。
【0039】
第1の静電容量算出値=(第1の静電容量算出値×β)+(AVG×(1-β))・・・(1)
【0040】
なお、制約係数βの値をより小さくすることにより、計算時間をより短くすることができるが、イメージの品質はより低下する(例えば、ゴーストが発生してしまう)。反対に、制約係数βの値をより大きくすることにより、イメージの品質をより高めることができるが、計算時間はより長くなる。したがって、イメージの品質を重視するか、計算時間を重視するかに応じて、制約係数βは調整可能であってもよい。
【0041】
第2静電容量値算出部143は、第1静電容量値算出部142によって算出された複数の検出面F毎の第1の静電容量算出値に基づく所定の補間処理によって、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の、隣接する検出面Fの中間点M毎の第2の静電容量算出値を算出する。本実施形態では、所定の補間処理の好適な一例として、バイキュービック補間処理を用いている。但し、これに限らず、所定の補間処理として、その他の補間処理(例えば、バイリニア補間処理等)を用いてもよい。
【0042】
イメージデータ算出部144は、第1静電容量値算出部142によって算出された複数の検出面F毎の第1の静電容量算出値と、第2静電容量値算出部143によって算出された複数の中間点M毎の第2の静電容量算出値とに基づいて、入力装置10の操作面10Aに対する操作体の近接状態を表すイメージデータを算出する。
【0043】
図3に示す演算装置140の各機能は、例えば、演算装置140において、プロセッサがメモリに記憶されているプログラムを実行することによって実現される。
【0044】
(演算装置140による処理の手順)
図4は、一実施形態に係る演算装置140による処理の手順を示すフローチャートである。
【0045】
まず、検出値取得部141が、検出回路120から、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の、静電容量検出値を取得する(ステップS401)。
【0046】
次に、係数補正部142Aが、ステップS401で取得された複数の静電容量検出値に基づいて、各係数テーブル501~504に設定されている係数を補正する(ステップS402)。
【0047】
次に、イメージ補正部142Bが、ステップS401で取得された第1検出電極Xa~Xeの静電容量検出値と、ステップS402で補正された、縦方向・上係数テーブル503および縦方向・下係数テーブル504に設定されている各係数とに基づいて、第1検出電極Xa~Xeのイメージを補正することにより、第1検出電極Xa~Xeの各々の検出面F毎の最新の第1の静電容量算出値を算出する(ステップS403)。
【0048】
また、イメージ補正部142Bが、ステップS401で取得された第2検出電極Ya~Ydの静電容量検出値と、ステップS402で補正された、横方向・左係数テーブル501および横方向・右係数テーブル502に設定されている各係数とに基づいて、第2検出電極Ya~Ydのイメージを補正することにより、第2検出電極Ya~Ydの各々の検出面F毎の最新の第1の静電容量算出値を算出する(ステップS404)。
【0049】
次に、正規化部142Cが、ステップS403,S404で算出された複数の検出面F毎の第1の静電容量算出値の各々を正規化する(ステップS405)。
【0050】
次に、制約部142Dが、ステップS404で正規化された、複数の検出面F毎の第1の静電容量算出値の各々に制約をかける(ステップS406)。
【0051】
そして、第2静電容量値算出部143が、ステップS406で制約がかけられることによって得られた複数の検出面F毎の第1の静電容量算出値に基づく所定の補間処理(本実施形態では、バイキュービック補間処理)によって、第1検出電極Xa~Xeと第2検出電極Ya~Ydとの交差点M毎の第2の静電容量算出値を算出する(ステップS407)。
【0052】
さらに、イメージデータ算出部144が、ステップS406で制約がかけられることによって得られた複数の検出面F毎の第1の静電容量算出値と、ステップS407で算出された複数の交差点M毎の第2の静電容量算出値とに基づいて、入力装置10の操作面10Aに対する操作体の近接状態を表すイメージデータを算出する(ステップS408)。
【0053】
その後、演算装置140は、
図4に示す一連の処理を終了する。
【0054】
なお、演算装置140は、ステップS402~S406を繰り返し実行することにより、複数の検出面F毎の第1の静電容量算出値を、徐々に最適解に導くことができる。
【0055】
(係数テーブル501~504の一例)
図5は、一実施形態に係る演算装置140が使用する係数テーブル501~504の一例を示す図である。
【0056】
図5(a)に示すように、横方向・左係数テーブル501は、第2検出電極Ya~Ydの各々について、複数(
図5に示す例では、6つ)の検出面Fの各々に対する係数が設定されている。横方向・左係数テーブル501は、第2検出電極Ya~Ydの左端側の検出部Dで検出された静電容量値に対する検出面F毎の係数が設定されたものである。
図5(a)に示すように、横方向・左係数テーブル501は、複数の検出面Fの各々について、第2検出電極Ya~Ydの左端部に設けられた検出部Dへの影響度を示すものであるから、左端部の検出部Dに近い検出面Fほど、第2検出電極Ya~Ydの抵抗が小さくなって影響度が高くなるため、より高い係数が設定される。
【0057】
図5(b)に示すように、横方向・右係数テーブル502は、第2検出電極Ya~Ydの各々について、複数(
図5に示す例では、6つ)の検出面Fの各々に対する係数が設定されている。横方向・右係数テーブル502は、第2検出電極Ya~Ydの右端側の検出部Dで検出された静電容量値に対する検出面F毎の係数が設定されたものである。
図5(b)に示すように、横方向・右係数テーブル502は、複数の検出面Fの各々について、第2検出電極Ya~Ydの右端部に設けられた検出部Dへの影響度を示すものであるから、右端部の検出部Dに近い検出面Fほど、第2検出電極Ya~Ydの抵抗が小さくなって影響度が高くなるため、より高い係数が設定される。
【0058】
図5(c)に示すように、縦方向・上係数テーブル503は、第1検出電極Xa~Xeの各々について、複数(
図5に示す例では、5つ)の検出面Fの各々に対する係数が設定されている。縦方向・上係数テーブル503は、第1検出電極Xa~Xeの上端側の検出部Dで検出された静電容量値に対する検出面F毎の係数が設定されたものである。
図5(c)に示すように、縦方向・上係数テーブル503は、複数の検出面Fの各々について、第1検出電極Xa~Xeの上端部に設けられた検出部Dへの影響度を示すものであるから、上端部の検出部Dに近い検出面Fほど、第1検出電極Xa~Xeの抵抗が小さくなって影響度が高くなるため、より高い係数が設定される。
【0059】
図5(d)に示すように、縦方向・下係数テーブル504は、第1検出電極Xa~Xeの各々について、複数(
図5に示す例では、5つ)の検出面Fの各々に対する係数が設定されている。縦方向・下係数テーブル504は、第1検出電極Xa~Xeの下端側の検出部Dで検出された静電容量値に対する検出面F毎の係数が設定されたものである。
図5(d)に示すように、縦方向・下係数テーブル504は、複数の検出面Fの各々について、第1検出電極Xa~Xeの下端部に設けられた検出部Dへの影響度を示すものであるから、下端部の検出部Dに近い検出面Fほど、第1検出電極Xa~Xeの抵抗が小さくなって影響度が高くなるため、より高い係数が設定される。
【0060】
なお、各係数テーブル501~504の各係数は、各検出面Fの抵抗比と、各検出面Fの面積とを乗じることによって求められる。但し、本実施形態では、複数の検出面Fの面積が同一であるため、横方向・左係数テーブル501の各係数は、実質的に、各検出面Fの抵抗比によって求められる。
【0061】
(係数補正部142Aおよびイメージ補正部142Bによる処理の一例)
図6および
図7は、一実施形態に係る係数補正部142Aおよびイメージ補正部142Bによる処理の一例を示す図である。
【0062】
まず、
図6を参照して、係数補正部142Aによる横方向・左係数テーブル501の補正と、補正後の横方向・左係数テーブル501'に基づくイメージ補正部142Bによるイメージの補正とについて説明する。
【0063】
図6(1a)は、係数補正部142Aによる補正前の横方向・左係数テーブル501(第2検出電極Ya~Ydの各検出面Fの係数)を表している。
図6(1b)は、イメージ補正部142Bによる補正前のイメージ(第2検出電極Ya~Ydの各検出面Fのイメージの静電容量値)を表している。
【0064】
まず、係数補正部142Aは、
図6(1b)に示す各検出面Fのイメージの静電容量値に対して、
図6(1a)に示す各検出面Fの係数を乗じることにより、
図6(1c)に示すように、第2検出電極Ya~Ydの各検出面Fに対して、算出値を算出する。
【0065】
次に、係数補正部142Aは、
図6(1d)に示すように、第2検出電極Ya~Ydの各々について、
図6(1c)に示す複数の検出面Fの算出値の合計値を、第2検出電極Ya~Ydの左端部の検出部Dで検出される静電容量値の予測値として算出する。
【0066】
次に、係数補正部142Aは、第2検出電極Ya~Ydの各々について、
図6(1d)に示す予測値を、
図6(1e)に示す実測値(実際に左端部の検出部Dで検出された静電容量値)で除することにより、
図6(1f)に示すように、補正値を算出する。
【0067】
そして、係数補正部142Aは、
図6(1a)に示す横方向・左係数テーブル501を、
図6(1f)に示す補正値で補正する。具体的には、係数補正部142Aは、第2検出電極Ya~Ydの各々について、
図6(1f)に示す補正値を、
図6(1a)に示す複数の検出面Fの各々の補正前の係数で除することにより、複数の検出面Fの各々の補正後の係数を算出する。これにより、係数補正部142Aは、
図6(1g)に示す補正後の横方向・左係数テーブル501'を導出する。
【0068】
続いて、イメージ補正部142Bが、
図6(1g)に示す補正後の横方向・左係数テーブル501'に基づいて、
図6(1b)に示す第2検出電極Ya~Ydの各検出面Fのイメージの静電容量値を補正する。具体的には、イメージ補正部142Bは、第2検出電極Ya~Ydの各検出面Fについて、
図6(1b)に示す補正前のイメージの静電容量値を、
図6(1g)に示す補正後の係数で除することにより、
図6(1h)に示すように、補正後のイメージの静電容量値(第1の中間算出値)を算出する。
【0069】
次に、
図7を参照して、係数補正部142Aによる横方向・右係数テーブル502の補正と、補正後の横方向・右係数テーブル502'に基づくイメージ補正部142Bによるイメージの補正とについて説明する。
【0070】
図7(2a)は、係数補正部142Aによる補正前の横方向・右係数テーブル502(第2検出電極Ya~Ydの各検出面Fの係数)を表している。
図7(2b)は、イメージ補正部142Bによる補正前のイメージ(第2検出電極Ya~Ydの各検出面Fのイメージの静電容量値)を表している。
【0071】
まず、係数補正部142Aは、
図7(2b)に示す各検出面Fのイメージの静電容量値に対して、
図7(2a)に示す各検出面Fの係数を乗じることにより、
図7(2c)に示すように、第2検出電極Ya~Ydの各検出面Fに対して、算出値を算出する。
【0072】
次に、係数補正部142Aは、
図7(2d)に示すように、第2検出電極Ya~Ydの各々について、
図7(2c)に示す複数の検出面Fの算出値の合計値を、第2検出電極Ya~Ydの右端部の検出部Dで検出される静電容量値の予測値として算出する。
【0073】
次に、係数補正部142Aは、第2検出電極Ya~Ydの各々について、
図7(2d)に示す予測値を、
図7(2e)に示す実測値(実際に右端部の検出部Dで検出された静電容量値)で除することにより、
図7(2f)に示すように、補正値を算出する。
【0074】
そして、係数補正部142Aは、
図7(2a)に示す横方向・右係数テーブル502を、
図7(2f)に示す補正値で補正する。具体的には、係数補正部142Aは、第2検出電極Ya~Ydの各々について、
図7(2f)に示す補正値を、
図7(2a)に示す複数の検出面Fの各々の補正前の係数で除することにより、複数の検出面Fの各々の補正後の係数を算出する。これにより、係数補正部142Aは、
図7(2g)に示す補正後の横方向・右係数テーブル502'を導出する。
【0075】
続いて、イメージ補正部142Bが、
図7(2g)に示す補正後の横方向・右係数テーブル502'に基づいて、
図7(2b)に示す第2検出電極Ya~Ydの各検出面Fのイメージの静電容量値を補正する。具体的には、イメージ補正部142Bは、第2検出電極Ya~Ydの各検出面Fについて、
図7(2b)に示す補正前のイメージの静電容量値を、
図7(2g)に示す補正後の係数で除することにより、
図7(2h)に示すように、補正後のイメージの静電容量値(第2の中間算出値)を算出する。
【0076】
最後に、イメージ補正部142Bが、第2検出電極Ya~Ydの各検出面Fについて、
図6(1h)に示す補正後のイメージの静電容量値(第1の中間算出値)と、
図7(2h)に示す補正後のイメージの静電容量値(第2の中間算出値)とを合算することにより、
図7(2i)に示すように、イメージの静電容量値の最新更新値を算出する。
【0077】
なお、係数補正部142Aは、上記した係数テーブル501,502の補正方法と同様の補正方法により、係数テーブル503,504を補正する。
【0078】
また、イメージ補正部142Bは、上記した係数テーブル501,502に基づく第2検出電極Ya~Ydのイメージの補正方法と同様の補正方法により、係数テーブル503,504に基づく第1検出電極Xa~Xeのイメージを補正する。
【0079】
(制約部142Dによる処理の一例)
図8は、一実施形態に係る制約部142Dによる処理の一例を示す図である。
図8では、第2検出電極Yaの左から5番目の検出面F(以下、「検出面Fya5」と示す)の第1の静電容量算出値を制約する例を表している。
【0080】
図8に示すように、検出面Fya5は、第1検出電極Xdの上から1番目の検出電極(以下、「検出面Fxd1」と示す)、第1検出電極Xdの上から2番目の検出電極(以下、「検出面Fxd2」と示す)、第1検出電極Xeの上から1番目の検出電極(以下、「検出面Fxe1」と示す)、および、第1検出電極Xeの上から2番目の検出電極(以下、「検出面Fxe2」と示す)に囲まれている。
【0081】
制約部142Dは、検出面Fya5の第1の静電容量算出値「5」を、これら4つの検出面Fxd1,Fxd2,Fxe1, Fxe2の第1の静電容量算出値「5」,「6」,「6」.「7」で制約する。
【0082】
例えば、制約部142Dは、上記数式(1)により、検出面Fya5の制約後の第1の静電容量算出値として、(5×0.9)+(6×(1-0.9))=5.1を算出する。
【0083】
同様に、制約部142Dは、第1検出電極Xa~Yeの他の検出面Fの各々について、当該検出面Fの第1の静電容量算出値を、当該検出面Fを取り囲む、他の検出面F(第2検出電極Ya~Ydの検出面F)の第1の静電容量算出値で制約する。
【0084】
また、制約部142Dは、第2検出電極Ya~Ydの各検出面Fについて、当該検出面Fの第1の静電容量算出値を、当該検出面Fを取り囲む、他の検出面F(第1検出電極Xa~Xeの検出面F)の第1の静電容量算出値で制約する。
【0085】
これにより、制約部142Dは、第1検出電極Xa~Yeと、第2検出電極Ya~Ydとで相互に制約をかけることができ、第1検出電極Xa~Yeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の各検出面Fの第1の静電容量算出値を最適解へ導くことができる。
【0086】
(実施例)
図9および
図10は、本実施形態に係る演算装置140の一実施例を示す図である。本実施例では、従来の演算装置と、本実施形態に係る演算装置140とそれぞれについて、どのようなイメージデータが得られるかを確認した。なお、本実施例では、従来の演算装置として、第1検出電極と第2検出電極との各交差点を検出点とし、各検出点の静電容量値に基づいてイメージデータを算出するものを用いている。
【0087】
図9(a)は、入力装置の操作面に対して2つの操作体を接触させた際に、従来の演算装置によって算出されたイメージデータの一例を示す。
図9(b)は、入力装置10の操作面に対して2つの操作体を接触させた際に、本実施形態に係る演算装置140によって算出されたイメージデータの一例を示す。
【0088】
図10(a)は、入力装置の操作面に対して3つの操作体を接触させた際に、従来の演算装置によって算出されたイメージデータの一例を示す。
図10(b)は、入力装置10の操作面に対して3つの操作体を接触させた際に、本実施形態に係る演算装置140によって算出されたイメージデータの一例を示す。
【0089】
本実施例では、
図9および
図10に示すように、本実施形態に係る演算装置140により、従来の演算装置よりも、分解能が高いイメージデータが得られることが確認された。従来の演算装置は、第1検出電極Xa~Yeと第2検出電極Ya~Ydとの交差点である、20個の検出点の静電容量値に基づいてイメージデータを生成するのに対し、本実施形態に係る演算装置140は、第1検出電極Xa~Ye上の25個の検出面F上の検出点の第1の静電容量算出値と、第2検出電極Ya~Yd上の24個の検出面F上の検出点の第1の静電容量算出値と、第1検出電極Xa~Yeと第2検出電極Ya~Ydとの20個の交差点Mの第2の静電容量算出値との、合計69個の検出点の静電容量値に基づいてイメージデータを生成することができるからである。
【0090】
以上説明したように、本実施形態に係る演算装置140は、互いに直交して配設された第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydを備え、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々が複数の検出面Fを有する静電容量センサ100において検出された、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の静電容量検出値に基づいて、操作面10Aに対する操作体の近接状態を表すイメージデータを算出する演算装置140であって、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の、静電容量検出値を取得する検出値取得部141と、検出値取得部141によって取得された複数の静電容量検出値と、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々に対して予め設定された検出面F毎の係数とに基づいて、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の検出面F毎の第1の静電容量算出値を算出する第1静電容量値算出部142と、第1静電容量値算出部142によって算出された複数の第1の静電容量算出値に基づいて、イメージデータを算出するイメージデータ算出部144とを備える。
【0091】
これにより、本実施形態に係る演算装置140は、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の検出面F上を、静電容量値の検出位置として求めことができるため、演算によって求められる近接位置と、実際の近接位置とのズレを抑制することができる。したがって、本実施形態に係る演算装置140によれば、各検出電極が複数の検出面を有する静電容量センサ100において、近接位置の検出精度の低下を抑制することができる。
【0092】
また、本実施形態に係る演算装置140は、第1検出電極Xa~Xeが備える検出面Fの総数と、第2検出電極Ya~Ydが備える検出面Fの総数とが異なることに応じて、第1検出電極Xa~Xeに対して予め設定されている係数の総数と、第2検出電極Ya~Ydに対して予め設定されている係数の総数とが異なる。
【0093】
これにより、本実施形態に係る演算装置140は、第1検出電極Xa~Xeが備える検出面Fの総数と、第2検出電極Ya~Ydが備える検出面Fの総数とが異なる静電容量センサ100においても、各検出面Fに対して個別に係数を設定することができるため、近接状態の検出精度をより高めることができる。
【0094】
また、本実施形態に係る演算装置140において、第1静電容量値算出部142は、第1検出電極Xa~Xeの上端側の検出部D(第1の検出部)で検出された静電容量値(第1の静電容量検出値)と、第1の静電容量検出値に対する検出面F毎の係数と、第1検出電極Xa~Xeの下端側の検出部D(第2の検出部)で検出された静電容量値(第2の静電容量検出値)と、第2の静電容量検出値に対する検出面F毎の係数とに基づいて、第1検出電極Xa~Xeの検出面F毎の第1の静電容量算出値を算出し、第2検出電極Ya~Ydの左端側の検出部D(第3の検出部)で検出された静電容量値(第3の静電容量値)と、第3の静電容量検出値に対する検出面F毎の係数と、第2検出電極Ya~Ydの右端側の検出部D(第4の検出部)で検出された静電容量値(第4の静電容量値)と、第4の静電容量検出値に対する検出面F毎の係数とに基づいて、第2検出電極Ya~Ydの検出面F毎の第1の静電容量算出値を算出する。
【0095】
これにより、本実施形態に係る演算装置140は、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々について、検出面F毎の複数の第1の静電容量算出値の各々の算出精度をより高めることができる。
【0096】
また、本実施形態に係る演算装置140は、第1静電容量値算出部142によって算出された複数の第1の静電容量算出値に基づく所定の補間処理によって、第1検出電極Xa~Xeと第2検出電極Ya~Ydとの交差点M毎の第2の静電容量算出値を算出する第2静電容量値算出部143をさらに備え、イメージデータ算出部144は、第1静電容量値算出部142によって算出された複数の第1の静電容量算出値と、第2静電容量値算出部143によって算出された複数の第2の静電容量算出値とに基づいて、イメージデータを算出する。
【0097】
これにより、本実施形態に係る演算装置140は、より多くの検出点について求められた静電容量値に基づいて、イメージデータを算出することができるため、算出されるイメージデータの分解能をより高めることができる。
【0098】
特に、本実施形態に係る演算装置140において、第2静電容量値算出部143は、第1静電容量値算出部142によって算出された複数の第1の静電容量算出値に基づくバイキュービック補間処理によって、複数の第2の静電容量算出値を算出する。
【0099】
これにより、本実施形態に係る演算装置140は、複数の第2の静電容量算出値の各々の算出精度をより高めることができる。
【0100】
また、本実施形態に係る演算装置140は、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydのうちの一方の検出面Fの第1の静電容量算出値を、当該検出面Fを取り囲む、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydのうちの他方の検出面Fの第1の静電容量算出値で制約する制約部142Dをさらに備える。
【0101】
これにより、本実施形態に係る演算装置140は、第1検出電極Xa~Xeと第2検出電極Ya~Ydとの間で、第1の静電容量算出値の相互補完を行うことができる。このため、本実施形態に係る演算装置140によれば、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々について、検出面F毎の複数の第1の静電容量算出値の各々の算出精度をより高めることができる。
【0102】
特に、本実施形態に係る演算装置140において、制約部142Dは、制約前の第1の静電容量算出値に対して、所定の制約係数βを乗じることにより、制約後の第1の静電容量算出値を算出する。
【0103】
これにより、本実施形態に係る演算装置140は、第1の静電容量算出値を徐々に変化させることができ、したがって、第1の静電容量算出値を徐々に最適解に導くことができる。
【0104】
また、本実施形態に係る演算装置140は、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydのうちの一方の第1の静電容量算出値の合計値を、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydのうちの他方の第1の静電容量算出値の合計値と等しくする正規化処理を行う正規化部をさらに備える。
【0105】
これにより、本実施形態に係る演算装置140は、第1検出電極Xa~Xeと第2検出電極Ya~Ydとの間で、第1の静電容量算出値の相互補完を行うことができる。このため、本実施形態に係る演算装置140によれば、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々について、検出面F毎の複数の第1の静電容量算出値の各々の算出精度をより高めることができる。
【0106】
また、本実施形態に係る入力装置10は、静電容量センサ100と、演算装置140とを備える。
【0107】
これにより、本実施形態に係る入力装置10は、演算装置140によって、静電容量センサ100が備える第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の検出面F上を、静電容量値の検出位置として求めことができるため、演算によって求められる近接位置と、実際の近接位置とのズレを抑制することができる。したがって、本実施形態に係る入力装置10によれば、各検出電極が複数の検出面を有する静電容量センサ100において、近接位置の検出精度の低下を抑制することができる。
【0108】
また、本実施形態に係る演算方法は、互いに直交して配設された第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydを備え、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々が複数の検出面Fを有する静電容量センサ100において検出された、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の静電容量検出値に基づいて、操作面10Aに対する操作体の近接状態を表すイメージデータを算出する演算方法であって、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の、静電容量検出値を取得する検出値取得工程と、検出値取得工程において取得された複数の静電容量検出値と、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々に対して予め設定された検出面F毎の係数とに基づいて、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の検出面F毎の第1の静電容量算出値を算出する第1静電容量値算出工程と、第1静電容量値算出工程において算出された複数の第1の静電容量算出値に基づいて、イメージデータを算出するイメージデータ算出工程とを含む。
【0109】
これにより、本実施形態に係る演算方法は、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の検出面F上を、静電容量値の検出位置として求めことができるため、演算によって求められる近接位置と、実際の近接位置とのズレを抑制することができる。したがって、本実施形態に係る演算方法によれば、各検出電極が複数の検出面を有する静電容量センサ100において、近接位置の検出精度の低下を抑制することができる。
【0110】
また、本実施形態に係るプログラムは、互いに直交して配設された第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydを備え、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々が複数の検出面Fを有する静電容量センサ100において検出された、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の静電容量検出値に基づいて、操作面10Aに対する操作体の近接状態を表すイメージデータを算出するためのプログラムであって、コンピュータを、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の、静電容量検出値を取得する検出値取得部141、検出値取得部141によって取得された複数の静電容量検出値と、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々に対して予め設定された検出面F毎の係数とに基づいて、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の検出面F毎の第1の静電容量算出値を算出する第1静電容量値算出部142、および、第1静電容量値算出部142によって算出された複数の第1の静電容量算出値に基づいて、イメージデータを算出するイメージデータ算出部144として機能させる。
【0111】
これにより、本実施形態に係るプログラムは、第1検出電極Xa~Xeおよび第2検出電極Ya~Ydの各々の検出面F上を、静電容量値の検出位置として求めことができるため、演算によって求められる近接位置と、実際の近接位置とのズレを抑制することができる。したがって、本実施形態に係るプログラムによれば、各検出電極が複数の検出面を有する静電容量センサ100において、近接位置の検出精度の低下を抑制することができる。
【0112】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形または変更が可能である。
【0113】
本国際出願は、2019年8月5日に出願した日本国特許出願第2019-143990号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0114】
10 入力装置
10A 操作面
100 静電容量センサ
120 検出回路
140 演算装置
141 検出値取得部
142 第1静電容量値算出部
142A 係数補正部
142B イメージ補正部
142C 正規化部
142D 制約部
143 第2静電容量値算出部
144 イメージデータ算出部
501 横方向・左係数テーブル
502 横方向・右係数テーブル
503 縦方向・上係数テーブル
504 縦方向・下係数テーブル
D 検出部
M 交差点
F 検出面
P 検出点
Xa,Xb,Xc,Xd,Xe 第1検出電極
Ya,Yb,Yc,Yd 第2検出電極