IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立マクセル株式会社の特許一覧

特許7195454光源装置、それを利用した情報表示システムおよびヘッドアップディスプレイ装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】光源装置、それを利用した情報表示システムおよびヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20221216BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
G02B27/01
G02F1/13357
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021554255
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2020038053
(87)【国際公開番号】W WO2021079741
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2019191685
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020090189
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】杉山 寿紀
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】梶原 浩一
(72)【発明者】
【氏名】高木 栄治
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044732(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/138242(WO,A1)
【文献】特開2019-003081(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080488(WO,A1)
【文献】特開2010-078795(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0020902(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
B60K 35/00-37/06
H04N 5/64-5/655
G02F 1/13357
F21S 2/00
F21V 8/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像表示装置に表示した映像を、ウィンドガラスを介して外界の景観に重畳して監視者が視認できる情報表示システムであって、
前記映像表示装置に特定の偏光方向の光を挟角な発散角で供給する光源装置を備え、
前記監視者が前記映像を視認する監視角度を一定として、前記ウィンドガラスに対して前記映像表示装置の位置または角度を位置と角度を併せて変化させて配置することで前記ウィンドガラスにおける前記映像の反射位置を変化させ、前記監視者が視認する前記映像の虚像表示距離と虚像の映像の大きさを変更可能であり
前記光源装置は、
点状または面状の光源と、
前記光源からの光の発散角を低減する光学手段と、
前記光源からの光を反射し、前記映像表示装置に伝搬する第1の反射面を有する導光体と、
前記導光体の他方の面に対向して配置される位相差板と、
前記導光体の前記第1の反射面と前記第1の反射面とをつなぐ第2の反射面と、を備え、
前記導光体に設けた前記第1の反射面は、前記光源からの光を反射させ前記導光体に対向して配置された前記映像表示装置に伝搬するように配置され、
前記導光体の前記第1の反射面と前記映像表示装置との間には反射型偏光板が配置されており、
前記反射型偏光板で反射した特定の偏光方向の光を前記導光体の前記第2の反射面で反射させ、前記位相差板を2度通過することで偏光変換を行い、前記反射型偏光板を通過させて前記映像表示装置に特定の偏光方向の光を伝搬し、
前記光源から前記映像表示装置に入射する光束の発散角の一部または全部を、前記導光体に設けた前記第1の反射面および前記第2の反射面の少なくとも一方の形状と面粗さによって調整する、情報表示システム。
【請求項2】
請求項に記載の情報表示システムにおいて、
前記映像表示装置に入射する光の発散角は、±30度以下である、情報表示システム。
【請求項3】
請求項に記載の情報表示システムにおいて、
前記映像表示装置に入射する光の発散角は、±10度以下である、情報表示システム。
【請求項4】
請求項に記載の情報表示システムにおいて、
前記映像表示装置に入射する光の水平拡散角と垂直拡散角とが互いに異なる、情報表示システム。
【請求項5】
請求項に記載の情報表示システムにおいて、
前記映像表示装置は、液晶表示素子を備え、光入射面および光出射面に設けられた偏光板の特性により得られるコントラストに前記反射型偏光板のクロス透過率の逆数を乗じたコントラスト性能を有する、情報表示システム。
【請求項6】
映像表示装置に表示した映像を、ウィンドガラスを介して外界の景観に重畳して監視者が視認できるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記映像表示装置に特定の偏光方向の光を挟角な発散角で供給する光源装置を備え、
前記監視者が前記映像を視認する監視角度を一定として、前記ウィンドガラスに対して前記映像表示装置の位置または角度を位置と角度を併せて変化させて配置することで前記ウィンドガラスにおける前記映像の反射位置を変化させ、前記監視者が視認する前記映像の虚像表示距離と虚像の映像の大きさを変更可能であり
前記光源装置は、
点状または面状の光源と、
前記光源からの光の発散角を低減する光学手段と、
前記光源からの光を反射し、前記映像表示装置に伝搬する第1の反射面を有する導光体と、
前記導光体の他方の面に対向して配置される位相差板と、
前記導光体の前記第1の反射面と前記第1の反射面とをつなぐ第2の反射面と、を備え、
前記導光体に設けた前記第1の反射面は、前記光源からの光を反射させ前記導光体に対向して配置された前記映像表示装置に伝搬するように配置され、
前記導光体の前記第1の反射面と前記映像表示装置との間には反射型偏光板が配置されており、
前記反射型偏光板で反射した特定の偏光方向の光を前記第2の反射面で反射させ、前記位相差板を2度通過することで偏光変換を行い、前記反射型偏光板を通過させて前記映像表示装置に特定の偏光方向の光を伝搬し、
前記光源から前記映像表示装置に入射する光束の発散角の一部または全部を、前記導光体に設けた前記第1の反射面および前記第2の反射面の少なくとも一方の形状と面粗さによって調整する、ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記映像表示装置に入射する光の発散角は、±30度以下である、ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項8】
請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記映像表示装置に入射する光の発散角は、±10度以下である、ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項9】
請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記映像表示装置に入射する光の水平拡散角と垂直拡散角とが互いに異なる、ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項10】
請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置において、
前記映像表示装置は、液晶表示素子を備え、光入射面および光出射面に設けられた偏光板の特性により得られるコントラストに前記反射型偏光板のクロス透過率の逆数を乗じたコントラスト性能を有する、ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項11】
請求項1に記載の情報表示システムに用いる光源装置であって、
点状または面状の光源と、
前記光源からの光の発散角を低減する光学手段と、
前記光源からの光を反射し、映像表示装置に伝搬する第1の反射面を有する導光体と、
前記導光体の他方の面に対向して導光体から順に位相差板と
前記導光体の前記第1の反射面と前記第1の反射面とをつなぐ第2の反射面と、を備え、
前記導光体に設けた前記第1の反射面は、前記光源からの光を反射させ前記導光体に対向して配置された前記映像表示装置に伝搬するように配置され、前記導光体の前記第1の反射面と前記映像表示装置との間には反射型偏光板が配置されており、
前記反射型偏光板で反射した特定の偏光方向の光を前記第2の反射面で反射させ、前記位相差板を2度通過することで偏光変換を行い、前記反射型偏光板を通過させて前記映像表示装置に特定の偏光方向の光を伝搬し、
前記光源から前記映像表示装置に入射する光束の発散角の一部または全部を、前記導光体に設けた前記第1の反射面および前記第2の反射面の少なくとも一方の形状と面粗さによって調整する、光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、それを利用した情報表示システムおよびヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の情報表示システムとして運転者が運転中に監視する実景に、映像表示装置に映し出された映像を、凹面ミラーの作用により虚像を形成しウィンドガラスで反射させて、運転者に拡大映像を提供する非特許文献1に示すようなHUD(Head up Display)が知られている。
【0003】
このHUDの第一の課題はウィンドガラスの車内面(内面と記載)と車外面(外面と記載)の2つの面が反射面となるため、虚像は見かけ上二重像となること。また、第二の課題はセットの容積が大きく、遠方に大きな虚像を得るAR(Augmented Reality)-HUDでは容積が10リットルを超えるため、ステアリングとウィンドガラスの間の空間に配置することができない。更に、万が一HUDに不具合が発生した場合に簡単に交換ができないため、メンテナンスの自由度も低いなど普及の障害になっていた。また、表示映像の解像度は視野角1度あたり80ドット程度が現状システムの最大値で、高精細な映像表示ができないなど通信環境の高度化に対応しづらいハード構成となっていた。上述した第一の課題を解決するために、特許文献1に示すような、フロントガラスに上下方向で膜厚を楔状に変化させた中間膜を設けることでこの問題を解決する技術手段が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/029916号
【非特許文献】
【0005】
【文献】DENSO TECHNICAL REVIEW Vol.21 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術の投影型情報表示システムや装置では、映像光を車内の観察者に対して効率良く(効果的に)届けて光の利用効率を向上すること、これにより光源を含む装置の消費電力を低減すること等に関しては考慮されていない。また、HUD装置に太陽光が入射して映像表示装置である液晶パネルにダメージを与えることに対しての対応については考慮されていなかった。更に、HUDのセット容積を低減することや、簡便に取り外しができる構成や配置に関する記載や得られる映像の高解像度化に関する記載もなかった。
【0007】
そこで、本発明は、映像表示システムとして、空間の内部(車内)に対して好適な映像を表示することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば、特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本発明は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、点状または面状の光源と、前記光源からの光の発散角を低減する光学手段と、前記光源からの光を反射し、映像表示装置に伝搬する反射面を有する導光体と、を備え、前記導光体には前記映像表示装置に対向した面を備え、前記導光体の反射面は、前記光源からの光束を前記導光体と対向して配置された前記映像表示装置に向けて反射させ、前記映像表示装置と前記反射面との間には前記映像表示装置と前記導光体の間に反射型偏光板が配置し、前記反射型偏光板で反射した特定の偏光方向の光を、前記導光体の前記反射面と反射面を繋ぐ部分で透過させ導光体の前記映像表示装置側の反対面に波長板と並行して設けた反射面で反射させ、前記波長板を前記特定の偏光方向の光が2度通過させることで
前記特定の偏光方向の光の偏光方向を変換し、前記映像表示装置に特定の偏光方向とは異なる偏波方向の光として伝搬し、前記光源から前記映像表示装置に入射する光の発散角の一部は、前記反射面の形状と面粗さによって制御する。
【0009】
この結果、特定偏波を出力する薄型の高輝度な直視映像表示装置が実現でき、この映像をウィンドガラスで反射させ直接運転者に映像情報を供給する。ウィンドガラスで発生する二重像と車外から入射する太陽光が映像表示装置(液晶パネル)に与えるダメージを軽減するためには、ウィンドガラスに設けた中間膜に位相差板(λ/2)を設けて対応する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車内に対して好適に映像を表示することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る情報表示システムの周辺機器構成を示す概略構成図である。
図2】情報表示システムを搭載した車両の上面図である。
図3】フロントガラスの曲率半径の違いを示す図である。
図4A】両眼視による左右の眼球に入る光の像がずれて二重像になる現象を説明する説明図である。
図4B】両眼視による左右の映像の歪を示した模式図である。
図4C】虚像距離の違いによる両眼視による左右の映像のずれを示した模式図である。
図5】(a)(b)は、1つの眼球に入る光の像がずれて二重になる現象を説明するための模式図である。
図6】フロントガラスにより二重像が発生するメカニズムを説明するための模式図である。
図7】情報表示システムの遠方表示光学系の一実施例を示す概略構成図である。
図8】太陽光をガードして二重像を軽減する本願の原理を説明するための断面図である。
図9】太陽光などの自然光のP偏光とS偏光に対するガラスへの入射角度に対する反射率を示す図である。
図10】太陽光などの自然光の波長分布を示す図である。
図11】実施例に係わる映像表示装置がフロントガラスに表示する映像位置を説明するための説明図である。
図12】運転者が運転中に前方を注視する場合の視点移動の範囲を求めた実験結果を纏めた特性図である。
図13】実施例に係わる映像表示装置がフロントガラスに表示する映像位置を説明するための説明図である。
図14】映像表示装置の具体的な構成の一例を示す図である。
図15】実施例に係わる映像表示装置がフロントガラスに表示する映像位置を説明するための説明図である。
図16】映像表示装置の具体的な構成の一例を示す図である。
図17】映像表示装置の具体的な構成の一例を示す図である。
図18】実施例の映像表示位置と運転者が監視する実景に対する相対的な映像サイズの関係を示す図である。
図19】実施例の映像表示装置を自動車に取り付ける場合の配置を説明する概略構成図である。
図20】従来の映像表示装置を自動車に取り付ける場合の配置を説明する概略構成図である。
図21】映像表示装置の具体的な構成の一例を示す図である。
図22】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図23】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図24】(a)(b)は、映像表示装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図25】(a)(b)は、映像表示装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図26】映像表示装置の具体的な構成の他の一例を示す図である。
図27】光源装置の具体的な構成の一例を示す図である。
図28】(a)(b)は、光源装置の具体的な構成の一例を示す図である。
図29】(a)(b)は、光源装置の具体的な構成の一例を示す図である。
図30】(a)(b)は、映像表示装置の映像光拡散特性を示す図である。
図31】映像表示装置の映像光拡散特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施例は、例えば、大面積な映像発光源からの映像光による映像を、ショーウインドウのガラス等の空間を仕切る透明な部材を介して透過して店舗(空間)の外部に表示することが可能な情報表示システムに関する。また、かかる情報表示システムを用いて自動車や電車(以下では、総称して「車両」と言う)のフロントガラスやリアガラスやサイドガラスおよびコンバイナーを介して車内に映像を投影する車両用情報表示システムに関する。
【0013】
以下の実施例によれば、例えば、ショーウインドウのガラス面や車両のリアガラスやフロントガラス、側面のガラスまたは実施例で提案のコンバイナーなどでも高解像度な映像情報が表示可能であり、出射する映像光の発散角を小さく、即ち鋭角とし、更に、特定の偏波に揃えることで、映像光を観察者に対して効率良く届けて光の利用効率を向上することによって、光源を含む装置による消費電力を大幅に低減することが可能な、新規で利用性に優れた情報表示システムを提供することができる。また、例えば、車両のフロントガラスやリアガラスやサイドガラスを含むシールドガラスを介して、車両内において視認可能である、いわゆる、一方向性の表示が可能でウィンドガラスの両面で発生する二重像が軽減でき、太陽光に対して十分な保護機能を有する車両用情報表示システムを提供することができる。
【0014】
なお、従来から存在する車内に向かって実像の映像情報を表示する一般的な車両用情報表示システムとしては、LED(Light Emitting Diode)チップをマトリックス状に配列し、映像情報に合わせて点灯表示するシステムがある。このようなシステムでは、(1)LEDチップの拡散角が広角であるために所望の明るさを得るため大電力が必要となる。また、(2)所望の明るさを得るLEDチップは個々の寸法が大きくなり、車両に搭載できる寸法の情報表示システムとしては高い解像度が得られない。更に、(3)装置の大型化を防ごうとすると映像のカラー表示が困難である。
【0015】
一方、カラー表示可能な大型液晶パネルを用い、凹面ミラーを用いて拡大された虚像を遠方や広い範囲において表示できる映像表示装置を実現するには、大型な凹面ミラーが必要となり、映像表示装置から凹面ミラーまでの光路を確保するためには、セットサイズが大型となる。そうすると、例えば図2等に示すフロントガラス6とステアリング43の間の空間に情報処理装置を収納することができなくなる。また、運転者の両目を含む視認空間(アイボックス)の範囲や両目と虚像を結んだ線分は成す角度の水平成分と垂直成分を広げると、更に凹面ミラーの寸法を大きくする必要が生じて上述したセットサイズの大型化を招く。
【0016】
これに対して、本願の車両用映像表示装置では、高解像度な液晶パネルを使用し光源装置の発散角を挟角とすることで高輝度化を実現する。更に、光の利用効率を高めるためにウィンドガラスやコンバイナーに対して斜め入射した映像光の反射率が高いS偏光を映像出力として使用する。
【0017】
更に、図7等に示す太陽が特定の角度にある時凹面ミラーを介して集光された太陽光が、映像表示パネル11や光束方向変換手段54に入射してダメージを与えることがないように、フロントガラスまたはコンバイナーに偏光方向を変換するフィルターを設けることで、太陽光の反射率を高め液晶パネルに入射する光量を低減する。
【0018】
また、映像光がフロントガラス6の映像反射面と車外に接する面で2回反射することで、発生する二重像についても上述のフィルターの持つ作用により大幅に軽減することができる。
【0019】
以下、図面等を用いて、本発明の実施例について詳細に説明する。なお、本発明は実施例の説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものには、同一の符号を付与し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0020】
<情報表示システム>
次に、図1には、情報表示システムのより具体的な構成を示しており、映像表示装置49を構成する映像表示パネル11は、例えば、画面サイズが15インチを超える比較的大型な液晶表示パネルにより構成されている。なお、歪補正によって実用上問題のないレベルの補正を行うためには、パネルの解像度は1280×720ドット以上が好ましく、外部に文字情報の他映像情報を静止画または動画を表示するには、1980×1080ドット以上の解像度が望ましい。なお、図示しないが複数のパネルを組み合わせてブレンディング機能を使用して高い解像度を実現することも可能であり、また、それぞれの映像表示装置に異なる映像を表示することも可能である。
【0021】
また、映像表示装置49は、映像表示パネル11と共に、その光源を構成する光源装置48を備えており、その構成を図21に示す。図21では、光源装置48を映像表示パネル11と共に展開斜視図として示している。この液晶表示パネルは、矢印30で示すように、バックライト装置である光源装置48からの光により挟角な拡散特性を有する、即ち、指向性(直進性)が強く、かつ、偏光面を一方向に揃えたレーザ光に似た特性の面発光の照明光束を得て、入力される映像信号に応じて変調をかけた映像光を、図8に示したウィンドガラスの表面または内部に設けた透明シート7bに向かって出射する。
【0022】
また、図21では、情報表示システムは映像表示装置49を構成する映像表示パネル11と、光源装置48および必要に応じて、光源装置48からの出射光束の指向特性を制御する光束方向変換手段54、および、挟角拡散板(図示せず)を備えて構成される。映像表示パネル11の両面には偏光板が設けられ、特定の偏波の映像光が映像信号により光の強度を変調して出射する(図21の矢印30を参照)構成となっている。これにより、所望の映像を指向性(直進性)の高い特定偏波の光として、光束方向変換手段54を介して、フロントガラス6に向けて投写し、その表面で反射して監視者の眼に向けて反射する。上述した光束方向変換手段54を設けずに映像表示装置49をフロントガラス6に対して傾けることで、フロントガラス6に対する映像光の入射角度を制御することも可能である。
【0023】
本実施例では、光源装置48からの出射光束の利用効率を向上させ、消費電力を大幅に低減するために、光源装置48と映像表示パネル11を含んで構成される映像表示装置49において、光源装置48からの光(図21の矢印30を参照)であって、フロントガラス6の表面に設けた透明シート51を透過し、または拡散する映像光の輝度に対して、レンチキュラーレンズや透明パネル等の光学部品によって高い指向性を付与する。このことによれば、映像表示装置49からの映像光は、レーザ光のようにフロントガラス6の内側にいる観察者に対して高い指向性(直進性)で効率良く届くこととなり、その結果、高品位な映像を高解像度で表示すると共に、光源装置48のLED素子200を含む映像表示装置49による消費電力を著しく低減することが可能となる。
【0024】
<車両用情報表示システム>
上述した実施例によれば、図1に示すように映像表示装置49から発生し被投写部材であるフロントガラス6に向けて出射する映像光を、(1)LEDからの発散光を、以下に述べる光学系により、面発光のレーザのような作用を持つ映像源(光源装置48)からの映像光のような、拡散角度が狭く(高い直進性)、かつ特定の偏波成分のみの映像光とし、これにより高品位な映像を高解像度な映像表示パネル11で表示すると共に、出射光の利用効率を向上して消費電力を大幅に低減することを可能とし、同時に、(2)上述した構成部品からも明らかなように、装置の全体外形を平面(パネル)状に構成することが可能となっている。
【0025】
このため、車体のコンソールの一部に収納スペースを設け後付けで設置することが可能となる。更に、映像表示装置49からの映像光は拡散特性が挟角なため、高輝度な映像を低消費電力で実現できる。この時、車載用の情報表示システムとして、昼間、ウィンドガラスを介して監視者に映像を視認させるには、映像光がS偏波の場合、40000(nt)以上の輝度が必要となる。一方、本実施例の映像表示装置は、高輝度であるため車載用途だけでなく屋外用途のタブレット端末としても使用できる。この時必要な輝度は2000(nt)程度で、消費電力が1/20程度となるため、小型のバッテリーで長時間の駆動が可能となり、スマートフォンなどの情報処理装置からの情報を無線にて伝搬し、映像として表示し、インターラクション機能により情報の選択や情報の深部まで選択的に進めることができる。
【0026】
図19に本願の実施例である映像表示装置49を車体コンソール部に配置した状況を示す。図20に示した凹面ミラー1を用いた従来の映像表示装置55に比べ映像光は通過する空間が存在しないため、コンパクト化が可能となる。
【0027】
映像表示装置49からフロントガラス6までの間に光学部材の配置を不要とし、図20に示した凹面ミラー1を用いた従来の映像表示装置55に比べ、映像光束が通過する空間領域を不要とできるため、コンパクト化が可能となる。更に、映像表示装置の映像表示画面の全面を使用した場合には、図11に示すよう運転者に正対したフロントガラス6の全領域dに映像表示ができるように設定し、車速や車内に設けた運転者の視点を感知するカメラ(図示せず)により運転者の視点に応じて表示領域a、表示領域b、表示領域cなど、表示位置を移動または最適に選択する。更に、視点中央に対して左右に表示領域を分割し、その表示位置を車速や視点移動に応じて移動させ、または選択する機能を持たすことで、表示した映像が運転の支障とならない運転支援システムが構築できる。
【0028】
また、停止状態においては映像表示領域の全領域に映像表示することでたくさんの映像情報を同時に表示できる。
【0029】
一方、映像表示装置49に表示する映像としてはナビゲーション情報や運転支援ECUからの速度情報、エンジンのトルク情報、電気自動車では残電力、ガソリン車やハイブリッド車両では残燃料情報などの他に、車載カメラからの車両周辺の監視情報に加え注意喚起のアラート情報などが表示される。更に、スマートフォンなどの情報処理装置からの情報も有線または無線にて伝搬され映像として表示され、インターラクション機能により情報の選択や情報の深部まで選択的に進めることができる。これらの特徴を利用して、本発明の情報表示システムを、自動車や電車や航空機等の車両に適用した、いわゆる、車両用情報表示システムの様々な例について、以下に詳細に説明する。
【0030】
図2図3は、上記した映像表示装置49等を商用車に搭載した例を示しており、フロントガラス6の一部(ステアリング43の上部)や、サイドガラス6”等の一部、または全部に映像情報を表示する。図2図3には、画像表示領域の一例を示している。
【0031】
自動車の(一部または全部の)ウィンドガラスを介して映像を表示する具体的な手段としては、例えば、図1に示したような大型の映像表示パネル11を含む映像表示装置49を、車体のウィンドガラスに沿って設ける。映像表示パネル11の裏面には、図24および図25に示した光源装置48を構成する複数の反射型導光体304を、光源装置48として設け、面発光レーザ光源からの光のような拡散角度が狭く(高い直進性)、かつ偏光面の揃った映像光を得る。これらの光束は、映像表示パネル11により映像信号に応じて光強度を変調され、フロントガラス6、リアガラス6’、サイドガラス6”を介して、車内または車外に表示される。映像表示パネル11は従来のTV用のパネルを流用可能であり、大型液晶パネルや高解像度な8k相当のパネルも活用できる。従来のTV用のパネルに高光出力に対応した液晶を封止した特殊仕様のパネルを使用しても良い。この時、大型液晶パネルや高解像度な8k相当のパネルも活用できる。
【0032】
または、図2に示すような商用車や普通車への活用においては、ウィンドガラス(フロントガラスやリアガラス等)は、曲面のものが使用される場合があり、ガラスを介して車外から映像監視するとガラスの屈折作用により映像が歪む場合がある。同様にウィンドガラスの内面で映像光を反射させてもウィンドガラスの曲面形状により反射映像に歪が生じる。映像監視側から正常な形状の映像を再現できるように、元画像を補正形状に歪ませてガラス通過後の映像が正規な映像となるようにすると良い。
【0033】
また、車両用情報表示システムでは、車両自体が太陽光を含む自然光の下に晒されることから、かかる太陽光に対する対応が必要となるが、太陽光などの自然光は、図10に示すように、紫外線から赤外線までの幅広い波長領域の光であるばかりでなく、偏光方向も光の進行方向に垂直な振動方向の光と、水平方向の光である2種類の偏光方向(以下S偏光とP偏光と記載)の光とが混ざった状態で存在する。特に、フロントガラス6への入射角度が50度を超えるような領域では、図9に示すように、ガラス面上での反射率は、S偏光やP偏光、更には、入射角によりそれぞれ異なる。
【0034】
そこで、本実施例では、上述した発明者による知見に基づき、即ち、フロントガラス6を通して侵入する太陽光の多くはP偏光成分であることを考慮し、映像表示装置に照射侵入する太陽光を含む外光を抑制するためには、特に、P波成分の低減が有効であること、加えて、映像表示装置から出射され車外に出射されて監視者に認識されるべき映像光としては、S波成分を利用することが効果的であることを確認した。また、本実施例の情報表示システムでは、映像表示装置である液晶パネルにおいて太陽光が入射した領域を感知し、この領域に対応した光源装置のLEDを消灯することで、映像非表示として映像表示装置の温度上昇を低減して信頼性の向上を実現する。
【0035】
上述した車両用情報表示システムの課題について以下詳細に説明する。図4Aは第一の課題である両眼視差により発生する二重像の発生原理を説明するための模式図である。図4Bに示すように、監視者が右目で認識する画像と左目で認識する画像にはずれが発生する。この原因は眼球位置の違いで生じる視差により、反射面であるフロントガラス6の相対曲率が異なるため両眼のそれぞれで認識される虚像が異なって見えることになる。
【0036】
この原因は、上述した両眼視差により虚像を形成する光学系が異なるために発生するものであり、これを解決するためには、図4Cに示すように虚像距離を遠方に離すことで瞳間距離(平均60mm)により生じる視差により発生する虚像を見込む角度が小さくなるため、二重像の影響が小さくなる。発明者らは実験的に虚像距離が8mを超すと視力1.0の監視者での識別範囲を超え、13mでは視力1.2以上の監視者では識別しにくいことを明らかにした。
【0037】
図5(a)は、第二の課題であるフロントガラス6の2つに空気界面での反射像がずれて、監視者の瞳孔を通過して網膜に結像するため発生する縦方向二重像の発生原理を示した模式図である。これを解決するためには、虚像距離を図5(b)および図6に示すように、フロントガラス6の2面の反射面により発生する虚像を見込む角度を小さくするためには、虚像距離を遠方に移動させると良い。発明者らは実験的に、この二重像が実用的に問題のないレベルとなる虚像距離を実験的に求めた。その結果、平均的な瞳径7mmの監視者では、虚像距離が12mを超すと視力1.0の監視者でも識別範囲を超え、15mでは視力1.2以上の監視者でも識別しにくいことを明らかにした。以上述べた原理的に発生する二重像を軽減する第二の解決手段については後述する。
【0038】
本願の車両用情報表示システムを車体内に配置した状態を模式的に示した断面構造を図7に示す。映像表示装置49は、挟角な拡散特性を有し特定の偏波を液晶表示素子に供給する光源装置を備え、映像表示パネル11では供給された光を映像信号に合わせて出力光強度を変調することで所望の映像を得る。このため、装置の容積は小型の映像表示装置55の映像を凹面ミラー1で拡大し虚像を得る図20に示した従来型のHUDに比べ光路となる空間が存在しないので大幅なコンパクト化が可能となる。
【0039】
この映像表示装置49は、フロントガラス6が水平軸に対して45度以上傾斜していれば図7中に示すように水平軸に対してウィンドガラス側に傾斜(図7中は傾斜角θ2で表記)させる必要があり、ウィンドガラスの上下方向の映像表示位置は映像表示装置からの映像の画面中心とフロントガラス6下端までの距離と前述したθ2をパラメータとすれば、任意に決定できる。ただしθ2をパラメータとして使用すると、フロントガラス6反射後の映像光の反射角度θ1が変化するため注意する必要がある。映像表示装置49の表示領域を広くすることで、フロントガラス6のほぼ全面を反射面として使用できるので、表示領域の一部に映像を表示させ映像監視者である運転者の視点位置を感知するカメラ(図示せず)の出力に合わせて、最適位置に映像表示が可能となる。したがって、自動車の製造ラインで車体に精密取り付けする必要がなく、販売店で顧客の視点に合わせて表示位置を適宜変更できる情報表示システムが実現できる。この時、ウィンドガラスの表示位置により発生する画像歪が異なるが、顧客の視点に合わせカメラで表示映像を撮影し、得られた映像情報から映像表示装置に表示する画像を歪ませ逆補正することで、フロントガラス6で反射した映像では歪を軽減できる。
【0040】
映像表示装置49からの映像光束は、保護カバー41を介して射出させフロントガラス6に向け射出されフロントガラス6で反射し監視者に届く。保護カバー41が映像表示パネル11の汚れや水分などから保護する他、太陽光の一部である紫外線や赤外線などを遮光する作用を持たしても良い。
【0041】
本願の車載用情報表示システムの第一の実施例について、映像情報表示位置(ウィンドガラスにおける映像反射位置と虚像の結像位置)と表示領域別に適した表示内容について図11を用いて以下説明する。図11に示すように、映像表示装置49をステアリングとウィンドガラスの間に配置し表面を、保護カバー41で覆うことで埃や水分などが外部から侵入することを妨げる。また、太陽光のうち近赤外および赤外光、P偏波等カットするフィルター特性を持たせることで、映像表示装置49に対する太陽光のストレスを軽減する。図7に示した保護カバー41は映像表示装置49同様に脱着可能とし、映像表示装置49を前述した屋外用のタブレット端末として車外に持ち出す場合や将来的にパネルサイズが同一で解像度の高い映像表示装置が実現された場合に、保護カバー41を取り外すだけで簡単に映像表示装置41の高解像度化が実現できる。
【0042】
映像表示装置49の表示領域は、右ハンドルの車種では前面のフロントガラス6を介して観ている外界の右半分の領域、即ち運転者が着座したシートの前面(表示領域dで図示)であり、必要に応じて複数の領域(表示領域a,表示領域b,表示領域c)に必要な情報を必要な時期とタイミングで表示する。表示映像としては、ナビゲーションの情報や車載カメラ100により得られた車外の情報を、図1に示した周辺監視装置63で解析し、障害物や人などの運転の支障となる情報を選択し、アラート情報を発生させ表示装置に重畳することで注意喚起を行う。
【0043】
図12は発明者らが乗用車を運転する際(時速50kmの市街地走行)に、運転者の目線の異動を調査した結果をプロットしたグラフである。基準線は0度(視線はドライバーから約20m前方)に対して通常-3度から10度(水平線)の範囲にあり、インパネ内にあるスピードメータやタコメータなどに視線を動かすと前方の景観を観ることができなくなり、安全運転の支障となる。このためインパネ部分は意識的に観る以外には視点移動が極端に少ないことが判った。
【0044】
また、水平方向の視点移動は、対向車が走る反対側車線に向くことが多いが、歩行者がいる左側も視点移動がなされ、運転者正面の20m前方から左右それぞれで10度(特に右側の頻度が高い)の範囲に集中されている。このため、この外側に発生する事象に対してアラート表示をして注意を喚起することは、安全運転支援においては重要な要素となる。運転者の眼からフロントガラス6の映像反射位置中央までの距離を1mとすれば、時速50kmで一般道を走行中の運転者は、通常±10度の範囲を視認できているため、フロントガラス上には視線の中央から±160mmの範囲を超えた場所にアラート情報を表示すれば、運転者の気付きに繋がること、即ち、車速を感知するセンサ情報に基づき、アラート情報の表示位置を、低速走行時に比べ高速走行時には通常表示しないアラート情報を運転者の水平方向視認範囲の内側に移動させることで、車速によらず同一レベルで運転時の注意喚起情報を表示できることが判った。
【0045】
そこで、発明者らは自動車の運行上必要な速度情報やエンジンの回転数、燃料やバッテリーの残存量、冷却水の温度等をHUDに表示させる最適な表示位置として運転の支障にならない位置は、表示位置cの領域であることを見出した。更に、ナビゲーションの情報など道路の分岐点から遠い位置で視認するには、画面上部の表示領域aに分岐点に近づいた場合には、表示領域bに表示するなど道路の状況や自車の位置により表示位置を変えることが視認性と利便性の両面から優れていることを見出した。
【0046】
一方、高速運転時には運転者の視点移動範囲(図示せず)は更に狭くなり(基準線として、0度で視線はドライバーから約40m前方)、高速運転時(時速100km走行)の同様の評価結果では、正面に対して左右で±5度の範囲は視認でき、走行車線を走行時には右側の追い越し車両を注視する頻度が高く、追い越し車線を走行中には中央分離帯を注視する頻度が高くなるなど特徴的な結果が得られた。また、近景と遠景の注視の度合いは、視点で2度以上の遠方を観ている頻度が90%以上となった。なお、以上で述べた運転者の視点移動の測定結果は、車両の右側に運転者が着座し左側走行の条件下での評価結果である。
【0047】
以上纏めると、高速走行時には運転者の視認範囲は±5度程度で、視角は2度以上の前方を監視しており、時速50kmでは視認範囲は左右±10度程度で視角は±5度の範囲である。即ち、車速に応じて画像の表示位置を変化させると良く、このため時速50kmと時速100kmの走行時では必要な解像度が4倍は必要となる。また、自車が停止している場合には映像表示装置のパネル解像度を全て使用すると良い。即ち、上述したように、ウィンドガラス上の映像反射位置に応じて表示映像の解像度を変えることで監視者の視認性を向上させることができた。
【0048】
発明者らはウィンドガラス上の映像表示位置に応じて、必要な解像度を実験により求めた。結果は、ウィンドガラス上部(視度5度以上)では80dot/度 以下の解像度で良く、中央部(視度0度付近)では120dot/度 以下の解像度があれば充分であることが判った。また上述した条件を満足し、停車状態でタブレット端末として十分な解像度を得るためには、WQXGA(1920×1200dot)同等の解像度が必要であった。
【0049】
車載用の映像表示装置として専用使用するには、(1280×720dot)の解像度があれば十分使用できることも分かった。
【0050】
次に、本願の車載用情報表示システムの第二の実施例について、映像情報表示位置(ウィンドガラスにおける映像反射位置と虚像の結像位置)と表示領域別に適した表示内容について図13を用いて以下説明する。映像表示装置49(図示せず)をステアリング43とフロントガラス6の間に配置し表面を保護カバー41で覆うことで、第一の実施例と同じように埃や水分などが外部から侵入することを妨げる。また、太陽光のうち近赤外および赤外光、P偏波等カットするフィルター特性を持たせることで、映像表示装置49に対する太陽光のストレスを軽減する。
【0051】
映像表示装置49の表示領域は、前面のフロントガラス6を介して観ている外界全領域、即ち運転者が着座したシートの前面全体(表示領域fで図示)であり、自動車の運行上必要な速度情報やエンジンの回転数、燃料やバッテリーの残存量、冷却水の温度等をHUDに表示させる最適な表示位置として運転の支障にならない位置(図中表示位置eで表示)に情報を表示する。この結果、図13に示す車両にインパネ部分は不要となり、ステアリングとフロントガラス6の間には大きな空間が生まれることで大型の映像表示装置49が配置できる。この結果、図14に示すようなフロントガラス6全面を反射面とした虚像V1が表示可能となる。
【0052】
また、助手席前方には、運転の支障にならない範囲でスマートフォンの情報や映画やTV画像などのエンターティメント情報や、走行中の地域情報などを必要に応じて表示することも可能となる。この時、映像表示装置49の画面垂直方向の高さはフロントガラス6の傾きにより若干の差異は生じるが、フロントガラス6の垂直断面での高さとほぼ等しくなる。このため図14に示すように縦幅(画面縦寸法)が大きな液晶パネルとなる。
【0053】
一方、フロントガラス6を監視者から見た場合の縦横比は一般の乗用車では2.5:1以上となるため単独で縦横比を合わせた液晶パネルを用いても良く、縦横比が16:9のTV用の液晶パネルを複数枚使用することでも実現できる。また、フロントガラス6の室内側面には後述する透明シート7b、51を設けることで表示映像の二重像化や太陽光入射による映像表示装置49へのダメージを大幅に軽減できる。
【0054】
本願の車載用情報表示システムの第三の実施例について、図15を用いて説明する。映像情報はフロントガラス6とステアリング43の間にコンバイナー301を設け表示する。映像表示装置49(図示せず)は、前述した2つの実施例と同様のステアリング43とフロントガラス6の間に配置し表面を保護カバー41で覆うことで、埃や水分などが外部から侵入することを妨げる。また、太陽光のうち近赤外および赤外光、P偏波等カットするフィルター特性を持たせることで、映像表示装置49に対する太陽光のストレスを軽減する。
【0055】
映像表示装置49の表示領域は、コンバイナー301を介して観ている外界領域即ち運転者が着座したシートに対向したコンバイナー全面(表示領域gおよび表示領域hで図示)であり、自動車の運行上必要な速度情報やエンジンの回転数、燃料やバッテリーの残存量、冷却水の温度等をHUDに表示させる最適な表示位置として、運転の支障にならない位置(図中表示位置hで表示、図16の虚像V2)に情報を表示する。また、ナビゲーションなどの情報は、遠方の虚像V1に対応する位置に結像させ、コンバイナー301情報の上で重ねて表示させる。この結果、図15に示す車両にインパネ部分は不要となり、ステアリングとフロントガラス6の間には大きな空間が生まれることで、コンバイナー301を含んだ大型の映像表示装置49が配置できる。この結果、図16に示すようなコンバイナー301全面上部を反射面とした虚像V1と全面下部を反射領域とした虚像V2の表示が可能となる。
【0056】
また、助手席前方には、運転の支障にならない範囲でスマートフォンの情報や映画やTV画像などのエンターティメント情報や走行中の地域情報などを必要に応じて表示することも可能となる。この時、映像表示装置49の画面垂直方向の高さは、フロントガラス6の傾きにより若干の差異は生じるが、フロントガラス6の垂直断面での高さとほぼ等しくなる。このため図14に示すように縦幅(画面縦寸法)が大きな液晶パネルとなる。
【0057】
一方、コンバイナー301の監視者から見た場合の縦横比は、一般の乗用車では2.0:1以上となるため単独で縦横比を合わせた液晶パネルを用いても良く、縦横比が16:9のTV用の液晶パネルを複数枚使用することでも実現できる。また、フロントガラス6の室内側面には後述する透明シート7b、51を設けることで、表示映像の二重像化や太陽光入射による映像表示装置49へのダメージを大幅に軽減できる。
【0058】
以上で述べた3つの実施例において、虚像距離L3と映像表示位置および最適な映像表示サイズの関係を図17および図18を用いて説明する。図17は、本願の映像表示装置49に表示された映像情報を、フロントガラス6越しに観察者が虚像V1を観ている状態を模式的に表した図である。虚像V1の寸法は虚像距離L3と(L1+L2)の比で決定される。図18に示すように、虚像の表示距離L3を2mとした場合を基準として考えると、図12に示すように20m先に映像を表示した場合の角度を基準角度(0度)とし、虚像表示位置2m(-2.5度相当の瞳の移動で認識)で水平寸法20インチの虚像を表示させるのに必要な映像表示装置の水平寸法を20インチとして選定すれば、同じ映像表示装置49を用いて表示位置20m(基準角度0度)の位置に表示される虚像は200インチ相当になる。同様に、虚像表示位置40m(2.4度相当の瞳の移動で認識)では、400インチ相当の虚像を表示できることになる(図18中●印にて表記)。即ち、本実施例では映像表示装置49からの映像光束がフロントガラス6において反射する位置をパラメータとし、同時に映像表示装置がウィンドガラスに対して成す角度を変更することで、虚像の表示距離と映像の大きさを任意に決定できるという今までにない利点を持った情報表示システムが実現できる。
【0059】
同様に、図18に示すように、20m先に映像を表示した場合の角度を基準角度(0度)とし、虚像表示位置2m(-2.5度相当の瞳移動で認識)で水平寸法7インチの虚像を表示させるのに必要な映像表示装置の水平寸法を7インチとして選定すれば、同じ映像表示装置49を用いて表示位置20m(基準角度0度)の位置に表示される虚像は95インチ相当になる。同様に、虚像表示位置40m(2.4度相当の瞳の移動で認識)では、190インチ相当の虚像を表示できることになる(図18中△印にて表記)。即ち、本実施例では、映像表示装置49からの映像光束がフロントガラス6において反射する位置をパラメータとすることで、監視者が映像を観ているFOV(Field of View)を一定とした情報表示システムが実現できるので、虚像の表示距離と映像の大きさを変える手段として表示高さをパラメータとして、即ち、フロントガラス6の下端とステアリングの間に配置する映像表示装置49の取り付け位置をパラメータとすることで、任意に決定できるという今までにない利点を持つ情報表示システムが実現できる。以上述べた本願の実施例である情報表示システムが、FOVを一定として虚像表示距離をパラメータとした場合に対応してそれぞれの位置に所望の虚像が表示できる理由は、後述するように映像表示装置49からの映像光が挟角の発散角を持ちテレセントリックな映像光を放射するためである。
【0060】
<映像表示装置の例1>
図22には、映像表示装置49の具体的な構成の一例を示す。図22では、図21の光源装置48の上に映像表示パネル11と光束方向変換手段54を配置している。この光源装置48は、図に示したようにケース状に、例えば、プラスチックなどにより形成され、その内部にLED素子200、導光体203を収納して構成されており、導光体203の端面には、図21に示したように、それぞれのLED素子200からの発散光を略平行光束に変換するために、受光部に対して対面に向かって徐々に断面積が大きくなる形状を有し、内部を伝搬する際に複数回全反射することで発散角を徐々に小さくなるような作用を有するレンズ形状を設けている。その上面には、映像表示装置49を構成する映像表示パネル11が取り付けられている。また、光源装置48のケースの1つの側面(本例では左側の端面)には、半導体光源であるLED素子200や、その制御回路を実装したLED基板202が取り付けられると共に、LED基板202の外側面には、LED素子200および制御回路で発生する熱を冷却するための部材であるヒートシンクを取り付けることもある。
【0061】
また、光源装置48のケースの上面に取り付けられる映像表示パネル11のフレーム(図示せず)には、当該フレームに取り付けられた映像表示パネル11と、更に、当該映像表示パネル11に電気的に接続されたFPC(Flexible Printed Circuits:フレキシブル配線基板)(図示せず)などが取り付けられて構成される。即ち、液晶表示素子を備えた映像表示パネル11は、固体光源であるLED素子200と共に、電子装置を構成する制御回路(図示せず)からの制御信号に基づいて、透過光の強度を変調することによって表示映像を生成する。この時、生成される映像光は拡散角度が狭く特定の偏波成分のみとなるため、映像信号により駆動された面発光レーザ映像源に近い、従来にない新しい映像表示装置が得られることとなる。なお、現状では、レーザ装置により、上述した映像表示装置49で得られる画像と同等のサイズのレーザ光束を得ることは、技術的にも安全上からも不可能である。そこで、本実施例では、例えば、LED素子を備えた一般的な光源からの光束から、上述した面発光レーザ映像光に近い光を得る。
【0062】
続いて、光源装置48のケース内に収納されている薄型化が可能な光源の光学系の構成について、図22と共に、図23を参照しながら詳細に説明する。
【0063】
図22および図23は断面図であるため、光源を構成する複数のLED素子200が1つだけ示されており、これらは導光体203の受光端面203aの形状により略コリメート光に変換される。このため導光体端面の受光部とLED素子は所定の位置関係を保って取り付けられている。なお、この導光体203は、各々、例えば、アクリル等の透光性の樹脂により形成されている。そして、この導光体端部のLED受光面は、例えば、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面有し、その頂部では、その中央部に凸部(即ち、凸レンズ面)を形成した凹部有し、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)を有するものである(図示せず)。なお、LED素子200を取り付ける導光体の受光部外形形状は、円錐形状の外周面を形成する放物面形状をなし、LED素子から周辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0064】
他方、LED素子200は、その回路基板である、LED基板202の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板202は、LEDコリメータ(受光端面203a)に対して、その表面上のLED素子200が、それぞれ、前述した凹部の中央部に位置するように配置されて固定される。
【0065】
かかる構成によれば、導光体203の受光端面203aの形状によって、LED素子200から放射される光は略平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0066】
以上述べたように、光源装置48は、導光体203の端面に設けた受光部である受光端面203aに、光源であるLED素子200を複数並べた光源ユニットを取り付けて構成され、LED素子200からの発散光束を導光体端面の受光端面203aのレンズ形状によって略平行光として、矢印で示すように、導光体203内部を導光し(図面に平行な方向)、光束方向変換手段204によって、導光体に対して略平行に伝搬された光源光を映像表示パネル11に向かって反射させる(図面から手前に垂直な方向)。映像表示パネル11により映像信号に応じて光強度が変調された映像光束は、光束方向変換手段54によって所望の方向になる。導光体内部または表面の形状によって、この光源光束の分布(面内密度)を最適化することで、映像表示パネル11に入射する光束の均一性を制御する。
【0067】
上述した光束方向変換手段204は導光体表面の形状や導光体内部に、例えば、屈折率の異なる部分を設けることで導光体内を伝搬した光束を、導光体に対して略平行に配置された映像表示パネル11に向かって(図面から手前に垂直な方向)出射する。この時、映像表示パネル11を画面中央に正対し、画面対角寸法と同じ位置に視点を置いた状態で、画面中央と画面周辺部の輝度を比較した場合の相対輝度比は20%以上あれば実用上問題なく、30%を超えていれば、更に優れた特性となる。
【0068】
なお、図22は、上述した導光体203とLED素子200を含む光源装置48において、偏光変換する本実施例の光源の構成とその作用を説明するための断面配置図である。図22において、光源装置48は、例えば、プラスチックなどにより形成される表面または内部に光束方向変換手段204を設けた導光体203、光源としてのLED素子200、反射シート205、位相差板206、レンチキュラーレンズなどから構成されており、その上面には、光源光入射面と映像光出射面に偏光板を備える映像表示パネル11が取り付けられている。
【0069】
また、光源装置48に対応した映像表示パネル11の光源光入射面(図の下面)には、フィルムまたはシート状の反射型偏光板52を設けており、LED素子200から出射した自然光束210のうち片側の偏波(例えばP波212)を選択的に反射させ、導光体203の一方(図の下方)の面に設けた反射シート205で反射して、再度、映像表示パネル11に向かうようにする。そこで、反射シート205と導光体203の間もしくは導光体203と反射型偏光板52の間に位相差板(λ/4板)を設けて、反射シート205で反射させ、片方の偏波の反射光束を2回通過させることで反射光束をP偏光からS偏光に偏光変換し、光源光の利用効率を向上させる。映像表示パネル11で映像信号により光強度を変調された映像光束は(図22の矢印213)、図7および図8に示したように、フロントガラス6に大きな入射角で入射するため、透明シート7bでの反射率が大きくなり、車内で映像を監視するためには良好な特性を得ることができる。
【0070】
図23は、図22と同様に、導光体203とLED素子200を含む光源装置250において、偏光変換する本実施例の光源の構成と作用を説明するための断面配置図である。光源装置101も、同様に、例えばプラスチックなどにより形成される表面または内部に光束方向変換手段204を設けた導光体203、光源としてのLED素子200、反射シート205、位相差板206、レンチキュラーレンズなどから構成されており、その上面には、映像表示パネル11として、光源光入射面と映像光出射面に偏光板を備える映像表示パネル11が取り付けられている。
【0071】
また、光源装置48に対応した映像表示パネル11の光源光入射面(図の下面)にはフィルムまたはシート状の反射型偏光板52を設け、LED素子200から出射した自然光束210うち片側の偏波(例えばS波211)を選択的に反射させ、導光体203の一方(図の下方)の面に設けた反射シート205で反射して再度映像表示パネル11に向かう。反射シート205と導光体203の間もしくは導光体203と反射型偏光板52の間に位相差板(λ/4板)を設けて、反射シート205で反射させ、位相差板を2回通過させることで反射光束をS偏光からP偏光に偏光変換することも可能である。以上述べたように本願発明では自然光である光源光束を略平行とし、同時に特定偏波の光束に変換できるため、液晶パネル11の特性に合わせて選択でき、結果として光源光の利用効率を向上することができる。このため、映像表示パネル11で映像信号により光強度変調された映像光束は(図23の矢印214)、図7に示したように、フロントガラス6に大きな入射角で入射するため、透明シート7bでの反射率が大きくなり、車内で映像を監視するためには良好な特性を得ることができる。
【0072】
図22および図23に示す光源装置においては、対応する映像表示パネル11の光入射面に設けた偏光板の作用の他に、反射型偏光板で片側の偏光成分を反射するために、理論上得られるコントラスト比は、反射型偏光板のクロス透過率の逆数と液晶表示パネルに付帯した2枚の偏光板により得られるクロス透過率の逆数を乗じたものとなるため、高いコントラスト性能が得られる。実際には、表示画像のコントラスト性能が10倍以上向上することを実験により確認した。この結果、自発光型の有機ELと比較しても遜色ない高品位な映像が得られた。また光源装置48が薄型化できるので、上述したタブレット端末と併用した映像表示装置を実現する技術手段の一つとなる。
【0073】
<映像表示装置の例2>
図26には、映像表示装置49の具体的な構成の他の一例を示す。図26の映像表示装置49では、図1等の光源装置48が光源装置101に変更されている。この光源装置101は、図にも示すように、そのケース(図26参照)内に、例えば、プラスチックなどにより形成され、その内部にLED、コリメータ、合成拡散ブロック、導光体等を収納して構成されており、その上面には映像表示パネル11が取り付けられている。また、光源装置101のケースの1つの側面には、半導体光源であるLED素子14a、14bや、その制御回路を実装した図27に示すLED基板102が取り付けられると共に、LED基板102の外側面には、LED素子および制御回路で発生する熱を冷却するための部材であるヒートシンク103が取り付けられている。
【0074】
また、ケースの上面に取り付けられた液晶表示パネルフレームには、当該フレームに取り付けられた映像表示パネル11と、更に、映像表示パネル11に電気的に接続されたFPC(Flexible Printed Circuits:フレキシブル配線基板)403(図26参照)などが取り付けられて構成されている。即ち、液晶表示素子を備えた映像表示パネル11は、固体光源であるLED素子14a、14bと共に、電子装置を構成する制御回路(ここでは図示せず)からの制御信号に基づいて、透過光の強度を変調することによって表示映像を生成する。
【0075】
<映像表示装置の例3>
続いて、図24(a)を用いて映像表示装置49の具体的な構成の他の一例を説明する。この映像表示装置49の光源装置48は、LEDからの自然光(P偏波とS偏波が混在)の発散光束をLEDコリメータ18により略平行光束に変換し、拡散特性を変換する光学素子303を通過後、反射型導光体304により映像表示パネル11に向け反射する。反射光は、映像表示パネル11と反射型導光体304の間に配置された波長板と反射型偏光板52に入射する。反射型偏光板で特定の偏波(例えばS偏波)が反射され、波長板で位相が変換され、反射面に戻り再び位相差板を通過して反射型偏光板を透過する偏波(例えばS偏波)に変換される。
【0076】
この結果、LEDからの自然光は特定の偏波(例えばS偏波)に揃えられ、映像表示パネル11に入射し、映像信号に合わせて輝度変調されパネル面に映像を表示する。上述の例と同様に光源を構成する複数のLEDが示されており(ただし、縦断面のため図24(a)(b)では1個のみ図示)、これらはLEDコリメータ18に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータ18は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂またはガラスにより形成されている。そして、このLEDコリメータ18は、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面を有すると共に、その頂部では、その中央部に凸部(即ち、凸レンズ面)を形成した凹部を有する。また、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)を有している。なお、LEDコリメータ18の円錐形状の外周面を形成する放物面は、LEDから周辺方向に出射する光を、その内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0077】
LEDコリメータ18により略平行光に変換された光は、図24(b)に示すように偏光変換素子21で片側の偏波に揃えられ(例えばS偏光)その後、反射型導光体304で反射し再度、波長板(位相差板)と反射型偏光板の作用により特定の偏波に揃えられる。この結果、偏光度が高くできるため高コントラスト化が実現できる。図24(b)の第二の実施例において、前述した反射型偏光板と波長板を除いても第一の実施例と同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0078】
続いて、図25(a)を用いて映像表示装置49の具体的な構成の他の一例を説明する。この映像表示装置49の光源装置48は、LEDからの自然光(P偏波とS偏波が混在)の発散光束をLEDコリメータ18により略平行光束に変換し、反射型導光体304の反射面により映像表示パネル11に向け反射する。反射光は、映像表示パネル11と反射型導光体304の間に配置された反射型偏光板206で特定の偏波(例えP偏波)が反射され、反射型導光体304の透過部で透過した特定の偏波の光は、反射面310で反射し、導光体304と反射面310の間に配置されたλ/4板(位相差板)309を2度通過して偏光変換(例えばS偏波)され反射型偏光板206を透過する。
【0079】
この結果、LEDからの自然光は特定の偏波(例えばS偏波)に揃えられ、映像表示パネル11に入射し、映像信号に合わせて輝度変調され液晶表示パネル面に映像を表示し、映像光は、拡散特性を変換する光学素子330を通過後所望の指向特性が付加される。映像光束はフロントガラスで反射され監視者に視認される。フロントガラス6の反射面にはλ/2板(位相差板)を設け、S偏波の透過光を偏光変換してP偏波とすることで、フロントガラス6の車外に接する面での反射を大幅に低減し、映像光の二重像を実用上問題のないレベルに軽減できる。
【0080】
上述した映像表示装置49に対して、図25(b)に示す実施例はLCDコリメータ18と反射型導光体304の間に偏光変換を行う第一の偏光変換部として偏光変換素子21を設け、後段に設けた反射型偏光板206と位相差板309と反射面310により構成された第2の偏光変換部が併設されていることである。この結果、偏光度が高くできるため高コントラスト化が実現できる。図25(b)の第二の実施例において、前述した反射型偏光板と波長板を除いても第一の実施例と同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0081】
ここで、液晶表示パネルからの出射光は、従来のTVセットでは、画面水平方向(図30(a)X軸で表示)と画面垂直方向(図30(b)Y軸で表示)ともに、同様な拡散特性を持っている。これに対して、上述した実施例の液晶表示パネルからの出射光束の拡散特性は、例えば、図30の例1に示すように、輝度が正面視(角度0度)の50%になる視野角が13度とすることで、従来の62度に対して1/5となる。同様に垂直方向の視野角は、上下不均等として上側の視野角を下側の視野角に対して1/3程度に抑えるように反射型導光体の反射角度と反射面の面積等を最適化する。この結果、従来の液晶TVに比べ監視方向に向かう映像光量が大幅に向上し、輝度は50倍以上となる。
【0082】
更に、図31の例2に示す視野角特性とすれば輝度が正面視(角度0度)の50%になる視野角が5度とすることで、従来の62度に対して1/12となる。同様に垂直方向の視野角は上下均等として視野角を従来に対して1/12程度に抑えるように反射型導光体の反射角度と反射面の面積等を最適化する。この結果、従来の液晶TVに比べ監視方向に向かう映像光量が大幅に向上し、輝度は100倍以上となる。以上述べたように視野角を挟角とすることで、監視方向に向かう光束量を集中できるので、光の利用効率が大幅に向上する。この結果、従来のTV用の液晶表示パネルを使用しても、光源装置の光拡散特性を制御することで同様な消費電力で大幅な輝度向上が実現可能で、屋外に向けての情報表示システムに対応した映像表示装置とすることができる。
【0083】
基本構成としては、図7に示すように、光源装置48により挟角な指向特性の光束を映像表示パネル11に入射させ、映像信号に合わせて輝度変調することで、映像表示パネル11の画面上に表示した映像情報を、ガラス6を介して室内の運転者や同乗者に向け表示する。この時、ガラス表面にはガラス両面での反射により映像が二重像となるので後述する透明シート51を設けて軽減すると良い。
【0084】
<光源装置の例1>
続いて、図26に示す光源装置101等のケース内に収納されている光学系の構成について、図27と共に、図28(a)および(b)を参照しながら、詳細に説明する。
【0085】
図27および図28には、光源を構成する複数(本例では、2個)のLED14a、14bが示されており、これらはLEDコリメータ15に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータ15は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂により形成されている。そして、このLEDコリメータ15は、図28(b)にも示すように、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面156を有すると共に、その頂部では、その中央部に凸部(即ち、凸レンズ面157)を形成した凹部153を有する。また、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面154(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)を有している。なお、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面156を形成する放物面は、LED14a、14bから周辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0086】
また、LED14a、14bは、その回路基板である、LED基板102の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板102は、LEDコリメータ15に対して、その表面上のLED14aまたは14bが、それぞれ、その凹部153の中央部に位置するように配置されて固定される。
【0087】
かかる構成によれば、上述したLEDコリメータ15によって、LED14aまたは14bから放射される光のうち、特に、その中央部分から上方(図の右方向)に向かって放射される光は、LEDコリメータ15の外形を形成する2つの凸レンズ面157、154により集光されて平行光となる。また、その他の部分から周辺方向に向かって出射される光は、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面を形成する放物面によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面を形成したLEDコリメータ15によれば、LED14aまたは14bにより発生された光のほぼ全てを平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0088】
なお、LEDコリメータ15の光の出射側には偏光変換素子21が設けられている。この偏光変換素子21は、図28からも明らかなように、断面が平行四辺形である柱状(以下、平行四辺形柱)の透光性部材と、断面が三角形である柱状(以下、三角形柱)の透光性部材とを組み合わせ、LEDコリメータ15からの平行光の光軸に対して直交する面に平行に、複数、アレイ状に配列して構成されている。更に、これらアレイ状に配列された隣接する透光性部材間の界面には、交互に、偏光ビームスプリッタ膜221と反射膜222とが設けられており、また、偏光変換素子21へ入射して偏光ビームスプリッタ膜221を透過した光が出射する出射面には、λ/2位相板213が備えられている。
【0089】
この偏光変換素子21の出射面には、更に、図28(a)にも示す矩形状の合成拡散ブロック16が設けられている。即ち、LED14aまたは14bから出射された光は、LEDコリメータ15の働きにより平行光となって合成拡散ブロック16へ入射し、出射側のテクスチャー161により拡散された後、導光体17に到る。
【0090】
導光体17は、例えばアクリル等の透光性の樹脂により断面が略三角形(図28(b)参照)の棒状に形成された部材であり、そして、図27からも明らかなように、合成拡散ブロック16の出射面に第1の拡散板18aを介して対向する導光体光入射部(面)171と、斜面を形成する導光体光反射部(面)172と、第2の拡散板18bを介して、液晶表示素子を備えた映像表示パネル11と対向する導光体光出射部(面)173とを備えている。
【0091】
この導光体17の導光体光反射部(面)172には、その一部拡大図である図27にも示すように、多数の反射面172aと連接面172bとが交互に鋸歯状に形成されている。そして、反射面172a(図では右上がりの線分)は、図において一点鎖線で示す水平面に対してαn(n:自然数であり、本例では、例えば、1~130である)を形成しており、その一例として、ここでは、αnを43度以下(ただし、0度以上)に設定している。
【0092】
導光体光入射部(面)171は、光源側に傾斜した湾曲の凸形状に形成されている。これによれば、合成拡散ブロック16の出射面からの平行光は、第1の拡散板18aを介して拡散されて入射し、図27からも明らかなように、導光体光入射部(面)171により上方に僅かに屈曲(偏向)しながら導光体光反射部(面)172に達し、ここで反射して、図27の上方の出射面に設けた映像表示パネル11に到る。
【0093】
以上に詳述した映像表示装置49によれば、光利用効率やその均一な照明特性をより向上すると同時に、モジュール化されたS偏光波の光源装置を含め、小型かつ低コストで製造することが可能となる。なお、上記の説明では、偏光変換素子21をLEDコリメータ15の後に取り付けるものとして説明したが、本発明はそれに限定されることなく、液晶表示パネルに到る光路中に設けることによっても同様の作用・効果が得られる。
【0094】
図27に示すように、導光体光反射部(面)172には、多数の反射面172aと連接面172bとが交互に鋸歯状に形成されており、照明光束は、各々の反射面172a上で全反射されて上方に向かい、更には、導光体光出射部(面)173には挟角拡散板を設けて略平行な拡散光束として指向特性を制御する光束方向変換手段54に入射し、斜め方向から映像表示パネル11へ入射する。本実施例では、光束方向変換手段54を導光体光出射部(面)173と映像表示パネル11の間に設けたが、図26に示すように映像表示パネル11の出射面に設けても、同様の効果が得られる。
【0095】
<光源装置の例2>
光源装置48の光学系の構成について、他の例を図29に示す。図28に示した例と同様に、光源を構成する複数(本例では、2個)のLED14a、14bが示されており、これらはLEDコリメータ15に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータ15は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂により形成されている。そして、図28に示した例と同様に、このLEDコリメータ15は、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面156を有すると共に、その頂部では、その中央部に凸部(即ち、凸レンズ面157)を形成した凹部153を有する。また、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面154(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)を有している。なお、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面156を形成する放物面は、LED14aから周辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0096】
また、LED14a、14bは、その回路基板である、LED基板102の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板102は、LEDコリメータ15に対して、その表面上のLED14aまたは14bが、それぞれ、その凹部153の中央部に位置するように配置されて固定される。
【0097】
かかる構成によれば、上述したLEDコリメータ15によって、LED14aまたは14bから放射される光のうち、特に、その中央部分から上方(図の右方向)に向かって放射される光は、LEDコリメータ15の外形を形成する2つの凸レンズ面157、154により集光されて平行光となる。また、その他の部分から周辺方向に向かって出射される光は、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面を形成する放物面によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面を形成したLEDコリメータ15によれば、LED14aまたは14bにより発生された光のほぼ全てを、平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0098】
なお、LEDコリメータ15の光の出射側には第1の拡散板18aを介して導光体170が設けられている。導光体170は、例えばアクリル等の透光性の樹脂により断面が略三角形(図29(a)参照)の棒状に形成された部材であり、そして、図29(a)からも明らかなように、合成拡散ブロック16の出射面に第1の拡散板18aを介して対向する導光体170の導光体光入射部(面)171と、斜面を形成する導光体光反射部(面)172と、反射型偏光板252を介して液晶表示素子を備えた映像表示パネル11と対向する導光体光出射部(面)173とを備えている。
【0099】
この反射型偏光板252は、例えばP偏光を反射(S偏光は透過)させる特性を有する物を選択すれば、光源であるLEDから発した自然光のうちP偏波を反射し、図29(b)に示した導光体光反射部(面)172に設けたλ/4板177を通過して反射面176で反射し、再びλ/4板177を通過することでS偏波に変換され、映像表示パネル11に入射する光束は全てS偏波に統一される。
【0100】
同様に、反射型偏光板252としてS偏光を反射(P偏光は透過)させる特性を有する物を選択すれば、光源であるLEDから発した自然光のうちS偏波を反射し、導光体光反射部(面)172に設けた図29(b)に示すλ/4板177を通過して反射面176で反射し、再びλ/4板177を通過することでP偏波に変換され、映像表示パネル11に入射する光束は全てP偏波に統一される。以上述べた構成でも偏光変換が実現できる。
【0101】
<光源装置の例3>
光源装置の他の例を図24図25に示す。また、本例の光源装置と映像表示パネル11の配置も図24図25に示す。光源装置はLEDからの自然光(P偏波とS偏波が混在)の発散光束をLEDコリメータ18により略平行光束に変換し反射型導光体304により映像表示パネル11に向け反射する。反射光は映像表示パネル11と反射型導光体304の間に配置された波長板および/または反射型偏光板206で特定偏波は反射され、他方の偏波は透過し液晶パネル11に入射する。反射型偏光板で特定の偏波(例えばS偏波)が反射され、波長板で位相が変換され反射面に戻り、再び位相差板を通過して反射型偏光板を透過する偏波(例えばP偏波)に変換される。あるいは、反射型偏光板206で反射した特定の偏波(例えばS偏波)は、反射型導光体304の透過部を透過して反射型導光体304の反対面に設けた反射板310で反射する。反射型導光体304と反射板310の間には位相差板が配置され位相差板310を2度通過して反射型偏光板を透過する偏波(例えばP偏波)に変換される。
【0102】
この結果、LEDからの自然光は特定の偏波(例えばP偏波)に揃えられる。上述の例と同様に光源を構成する複数のLEDが示されており(ただし、横断面のため図24図25では1個のみ図示)、これらはLEDコリメータ18に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータ18は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂またはガラスにより形成されている。そして、このLEDコリメータ18は、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面を有すると共に、その頂部では、その中央部に凸部(即ち、凸レンズ面)を形成した凹部を有する。また、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)を有している。なお、LEDコリメータ18の円錐形状の外周面を形成する放物面は、LEDコリメータ18から周辺方向に出射する光を、その内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0103】
また、LEDは、その回路基板である、LED基板102の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板102は、LEDコリメータ18に対して、その表面上のLEDが、それぞれ、その凹部の中央部に位置するように配置されて固定される。
【0104】
かかる構成によれば、LEDコリメータ18によって、LEDから放射される光のうち、特に、その中央部分から放射される光は、LEDコリメータ18の外形を形成する2つの凸レンズ面により集光されて平行光となる。また、その他の部分から周辺方向に向かって出射される光は、LEDコリメータ18の円錐形状の外周面を形成する放物面によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面を形成したLEDコリメータ18によれば、LEDにより発生された光のほぼ全てを平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0105】
なお、LEDコリメータ18の光の出射側には、図24(a)、図25(a)に示す断面図において、図面の垂直方向と水平方向(図の前後方向で図示せず)の拡散特性を変換する光学素子303を設けても良い。導光体の反射面に効率良く光を照射するために、画面垂直方向の拡散角を導光体反射面の垂直面の幅に合わせ、水平方向は映像表示パネル11から出射する光束の面密度が均一になるようにLEDの数量と光学素子303からの発散角を設計パラメータとして最適設計すると良い。
【0106】
前述した反射型偏光板と反射型導光体の間に配置した位相差板は、S偏光を反射(P偏光は透過)させる特性を有する物を選択すれば、光源であるLEDから発した自然光のうちS偏波を反射し、図24等に示した波長板を通過して反射面で反射し、再び波長板を通過することでP偏波に変換され映像表示パネル11に入射する。この波長版の厚さは波長板への光線の入射角度により最適値を選ぶ必要があり、λ/16からλ/4の範囲に最適値が存在する。この時、反射型導光体での反射角も設計パラメータとして液晶表示パネルに入射する角度が画面領域全面で一定になるように設計することで明るさの均一性を向上することができる。あるいは、前述した反射型導光体の反射角も設計パラメータとして液晶表示パネルに入射する角度が画面領域全面で一定になるように設計することで明るさの均一性を向上することができる。
【0107】
偏光度を高め高コントラストを実現するため、図24(b)、図25(b)の光源装置48には、LEDコリメータ18の光出射面に偏光変換プリズム21を設けても良い。
【0108】
更に、上述したように本実施例に係る光源装置を用いることで、図31の(a)および(b)の例1、例2に示したような挟角な拡散特性を有する映像表示装置が実現できる。映像表示装置49を車載用として使用する場合にはフロントガラス6を介して観る映像表示装置48と運転者の目までに距離が1〈m〉相当なので、パネルサイズが7インチの場合、拡散特性は図31に示す例1と例2の中間に近い特性がマッチしている。一方、屋外で使用するタブレット端末として使用する場合には、明視の距離が0.3(m)であるので、広い拡散特性が必要で、例2の特性がマッチするなど用途に応じて導光体の光反射面の面形状と面粗さをパラメータとして最適設計することが望ましい。
【0109】
<レンチキュラーレンズシート>
以上述べた光源装置による出射光の制御に加えて、映像表示パネル11からの映像光の拡散分布を制御するために、光源装置101と映像表示パネル11の間、或いは、映像表示パネル11の表面に、レンチキュラーレンズを設け、レンズ形状を最適化することで、一方向の出射特性を制御することもできる。更に、マイクロレンズアレイをマトリックス状に配置することで、映像表示装置49からの映像光束をX軸およびY軸方向の出射特性を独立もしくは同時に制御でき、液晶パネル11の画面中央部と周辺部で異なる指向特性を持たせることもでき、所望の拡散特性を有する映像表示装置を得ることができる。
【0110】
次に、レンチキュラーレンズによる作用について説明する。レンチキュラーレンズは、レンズ形状を最適化することで、上述した映像表示装置49からの出射光束の指向特性を制御して、フロントガラス6の内部に設けた透明シート7bや表面に設けた透明シート51上で効率良く反射または拡散させることを可能とする。即ち、映像表示装置49からの映像光に対し、2枚のレンチキュラーレンズを組み合わせまたはマイクロレンズアレイをマトリックス状に配置して、拡散特性を制御するシートを設けて、X軸およびY軸方向において、映像光の輝度(相対輝度)をその反射角度(垂直方向を0度)に応じて制御することができる。本実施例では、このようなレンチキュラーレンズにより、従来に比較し、図31(b)に示すように垂直方向の輝度特性を急峻にし、更に上下(Y軸の正負方向)方向の指向特性のバランスを変化させることで、反射や拡散による光の輝度(相対輝度)を高めることにより、面発光レーザ映像源からの映像光のように、拡散角度が狭く(高い直進性)、かつ特定の偏波成分のみの映像光とし、効率良く監視者の眼に届くようにしている。
【0111】
一方、上述した光源装置により、図31の(a)(b)に示した一般的な液晶パネルからの出射光拡散特性特性(図中では従来と表記)に対して、X軸方向およびY軸方向ともに大幅に挟角な指向特性とすることで、特定方向に対して平行に近い映像光束を出射する特定偏波の光を出射する映像表示装置が実現できる。
【0112】
図30には、本実施例で採用した光源装置の特性の一例を示している。上述したレンチキュラーレンズの特性を加えてピーク輝度をX方向(垂直方向)に30度傾けている。具体的には、特性Oは、光の出射方向のピークが垂直方向(0度)から上方に30度付近の角度であり、上下に対称な輝度特性を示している。また、図30の特性Aや特性Bは、更に、30度付近において、ピーク輝度の上方の映像光を集光して輝度(相対輝度)を高めた特性の例を示している。このため、これらの特性AやBでは、30度を超えた角度において、特性Oに比較して、急激に光の輝度(相対輝度)が低減する。
【0113】
上述した本実施例で採用した光源装置を含んだ光学系によれば、図26に示すように、映像表示装置49からの映像光を、以下に述べるフロントガラス6の表面に設けた透明シート51を介して、特定の方向において、その輝度を増大(強調)して反射または拡散させることができる。これにより、映像表示装置49からの映像光を、面発光レーザ映像源からの映像光のように、拡散角度が狭く(高い直進性)かつ特定の偏波成分のみの光として効率良く室外または室内の監視者の眼に届くようにすることが可能となる。この結果映像表示装置49からの映像光の強度(輝度)が低減しても、監視者は映像光を正確に認識して情報を得ることができる。換言すれば、映像表示装置49の出力をより低減することにより、消費電力が低い情報表示システムを実現することができる。
【0114】
一般的なTFT(Thin Film Transister)液晶パネルは、光の出射方向によって液晶と偏光板相互の特性により輝度、コントラスト性能が異なる。パネル面に垂直(出射角度0度)な出射角より少しずれた角度での特性(本実施例では+5度)が優れている。これは液晶の上下方向では光をねじる特性が印加電圧最大の時に0度とならないためである。
【0115】
他方、上下方向のコントラスト性能は、-15度から+15度の範囲が優れており、輝度特性と合わせると5度を中心にして±10度の範囲での使用が最も優れた特性を得ることとなる。
【0116】
また、パネル左右方向での輝度と視野角の特性は、パネル面に垂直(出射角度0度)な出射角での特性が優れている。これは液晶の左右方向では光をねじる特性が印加電圧最大の時に0度となるためである。
【0117】
同様に、左右方向のコントラスト性能は、-5度から-10度の範囲が優れており、輝度特性と合わせると-5度を中心にして±5度の範囲での使用が最も優れた特性を得ることとなる。このため液晶表示パネルから出射する映像光の出射角度は、図22図23の光源装置250の導光体203に設けた光束方向変換手段204により最も優れた特性が得られる方向から液晶表示パネルに光を入射させ、映像信号により光変調することが映像表示装置49の画質と性能を向上させることになる。
【0118】
液晶表示素子を備えた映像表示パネルからの映像光を所望の方向に曲げるためには、液晶表示パネルの出射面にレンチキュラーレンズシートなどを用いた光束方向変換手段54を設けると良い。
【0119】
<透明シートの効果1>
図7に示した自動車のフロントガラス6には、本願の実施例としての透明シート7bが設けられている。図8を用いてより詳細な構成とその効果について説明する。自動車の車内に注がれた太陽光はP偏波とS偏波が混在した自然光である。このうち、S偏光はフロントガラス6の反射率が高いためP偏波の比率が高い光となって照射される。図8には、映像光束を車内に反射させる透明シート7bの構成や、太陽光をガードして二重像を軽減するための原理等が示されている。透明シート7bは、フロントガラス6内部に設けられたガラスが損傷した場合に飛散することを防ぐ飛散防止シート7の映像光束入射面側に設けられている。透明シート7bは、通過したP偏波の比率が高い太陽光をS偏光に変換する位相差板(λ/2板)を備え、透過する偏光をS偏光に変換する。この結果、フロントガラス6の車内側面において高い反射率で反射し車外に向かう。この時、再度位相差板(λ/2板)を通過することでP偏光に変換されるためフロントガラス6の車外に接する面での反射が低減される。この結果、車内に入射する太陽光は大幅に低減されるため映像表示装置49を構成する映像表示パネル11に対するストレスが軽減される。
【0120】
<透明シートの効果2>
次に、上述した透明シートの第2の効果を説明する。映像表示装置49で、S偏光を映像信号に合わせて強度変調した映像光は、フロントガラス6の映像光入射面で反射し監視者に向かう。しかし、映像光入射面を透過した光は位相差板(λ/2板)を通過して、P偏光に変換される。その結果、フロントガラス6の外界に接する面では反射率が低いため、フロントガラス6の両面での反射による二重像が実用上問題のないレベルまで軽減される。以上述べた位相差板(λ/2板)は、映像表示装置49から映像光がフロントガラス6への入射角度と角度分布により最適な位相差板の厚さを選択すると良く、透明拡散シートの拡散特性に合わせて最適な値を選ぶと良く、入射角が大きい場合は垂直入射の場合に比べて位相差板の厚さを薄くしたほうが良好な特性を得ることができる。
【0121】
また、上述した透明シート7bをフロントガラス6の車内側面に設け、その表面にS偏波に対する反射率を高めた増反射コーティングを設けることで、高輝度な映像が得られるばかりか相対的に反射映像により生じる二重像の強度も大幅に軽減できることを確認した。
【0122】
更に、上述した透明シートに代えて、リアガラス6’に例えばサンテックディスプレイ(株)のPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)を使用し、映像表示状態では電圧を印加せず映像光を分散させ、映像非表示状態では電圧を印加して透明な状態とすることで透明シートの代用とすると良い。また、発明者たちは、実験によりPDLCに印加する電圧を可変させて分散特性を可変、映像信号のON/OFFまたは強弱に同期させて印加電圧を変調させることで、映像に合わせて透過率を可変できる新たな機能を執するスクリーン機能を併せ持ったウィンドガラスが実現できる。この結果、映像表示装置からの挟角な映像光束を、自動車の内外に向け垂直・水平方向に拡散させることで所望の監視範囲を有する映像情報表示システムが実現できる。
【0123】
以上に詳述した実施例によれば、映像表示装置49からの映像光は、面発光レーザ映像源からの映像光のように、拡散角度が狭く(高い直進性)かつ特定の偏波成分のみの光とすることができる。このことにより、例えば車内と車外を分離するそれぞれのウィンドガラスを利用して、車内または車外に対して様々な情報を表示することができ、自動車を移動する映像広告体として利用効率を著しく向上することが可能となる。また、高品位な映像を高解像度で表示すると共に、光源からの出射光の利用効率を向上して消費電力を大幅に低減することが可能な情報表示システムが実現される。また、より大きな映像を表示する場合には、光源装置101と共に映像表示装置49を構成する液晶表示素子を備えた映像表示パネル11として、複数枚液晶パネルを組み合わせることで縦横比が16:9より横長な液晶表示装置を実現する。
【0124】
この時、光源装置もそれぞれの液晶パネルに対応して複数枚備えても良く、複数枚の液晶パネルと異なる数の光源装置を組み合わせて、接合部を連続的にして一体とした大型の映像表示パネル11を採用することも可能である。この場合、光源装置101からの光束を、平行にウィンドガラスに設けられた上述の透明シート7b、51へ向け、当該透明シートによって一方向に反射・拡散させることによっても、消費電力を大幅に低減しながらも、より拡大した映像情報を表示することが可能となる。
【0125】
以上、種々の実施例について詳述したが、しかしながら、本発明は、上述した実施例のみに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するためにシステム全体を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0126】
6…フロントガラス、6”…サイドガラス、11…映像表示パネル、15…LEDコリメータ、21…偏光変換素子、43…ステアリング、50…太陽光、41…保護カバー、48…光源装置、49…映像表示装置、7b、51…透明シート、54…光束方向変換手段、301…コンバイナー、200…LED素子、202…LED基板、203…導光体、205…反射シート、42…インパネ、304…反射型導光体。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31