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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】推定装置及び推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20221216BHJP
   G01N 3/08 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01N3/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021577489
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2021013160
(87)【国際公開番号】W WO2022059238
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】17/022,833
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】葉名 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】リウ、デホン
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-159477(JP,A)
【文献】特開2013-015445(JP,A)
【文献】特許第6789452(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01N 3/00-3/62
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の表面にある観測面を計測面とし、前記計測面の形状の変化を計測面変形ベクトルとして計測する計測部と、
前記構造物の形状がモデル化された形状モデルから生成した推定モデルの一部としての計測面類似変化ベクトルと前記計測面変形ベクトルとをパラメータとしたL1ノルム最小化問題を解くことにより得られたスパース解を構成する係数ベクトル及び前記推定モデルの他の一部としての前記計測面類似変化ベクトルに対応する亀裂発生面類似変化ベクトルに基づいて、前記構造物の内部において少なくとも1つの亀裂が発生したと推定される候補面を決定し、決定した前記候補面を亀裂発生面として前記亀裂発生面の変位を推定する推定部と、
を備える推定装置。
【請求項2】
前記推定部は、
前記計測面と、前記亀裂発生面とによって生成された前記形状モデルに対して、予め設定された境界条件に基づいた構造解析によって、前記計測面の変化を推定した複数の計測面推定変化ベクトルと前記亀裂発生面の変化として前記亀裂発生面の変位変化を推定した複数の亀裂発生面推定変化ベクトルとからなる前記推定モデルを生成するモデル生成部と、
前記計測面変形ベクトルとの類似度が予め設定された基準類似度よりも高い前記計測面推定変化ベクトルを前記計測面類似変化ベクトルとし、前記計測面類似変化ベクトルに対応する前記亀裂発生面推定変化ベクトルを前記亀裂発生面類似変化ベクトルとし、前記推定モデルの一部としての前記計測面類似変化ベクトルと前記推定モデルの他の一部としての前記亀裂発生面類似変化ベクトルとを抽出する類似ベクトル抽出部と、
前記計測面変形ベクトルと、前記計測面類似変化ベクトルと、に基づいて、前記ノルム最小化問題としてL1ノルム最小化問題を解くことにより前記係数ベクトルを抽出する特徴抽出部と、
前記係数ベクトル及び前記亀裂発生面類似変化ベクトルに基づいて、前記亀裂発生面の変位変化の分布変化を推定する亀裂解析部と、
を備える請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記類似ベクトル抽出部は、前記類似度としてcos類似度を用いる請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記モデル生成部は、前記亀裂発生面を複数の要素に分割し、各前記要素を構成する複数の節点を亀裂とし、各前記節点の変位変化を各前記亀裂発生面推定変化ベクトルとして推定する請求項2又は請求項3に記載の推定装置。
【請求項5】
前記モデル生成部は、各前記要素のうち前記亀裂発生面の一部の領域において連続して隣り合う複数の前記要素を構成する複数の前記節点の変位変化に絞り込む請求項4に記載の推定装置。
【請求項6】
前記モデル生成部は、前記形状モデルを円筒座標系のモデルとしてモデル化する請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項7】
前記計測部は、前記形状モデルを生成する前段階として、前記構造物に荷重が加わった状態で計測する請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項8】
前記モデル生成部は、前記亀裂発生面の変化として前記亀裂発生面の荷重変化を推定する請求項2から請求項7のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項9】
前記計測部は、前記計測面の変化として、前記計測面における変位変化、ひずみ変化、及び角度変化の少なくとも1つを計測する請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項10】
構造物の表面にある観測面を計測面とし、前記計測面の形状の変化を計測面変形ベクトルとして計測するステップと、
前記構造物の形状がモデル化された形状モデルから生成した推定モデルの一部としての計測面類似変化ベクトルと前記計測面変形ベクトルとをパラメータとしたL1ノルム最小化問題を解くことにより得られたスパース解を構成する係数ベクトル及び前記推定モデルの他の一部としての前記計測面類似変化ベクトルに対応する亀裂発生面類似変化ベクトルに基づいて、前記構造物の内部おいて亀裂が発生したと推定される候補面を決定し、決定した前記候補面を亀裂発生面として亀裂発生面の変位を推定するステップと、
を含む推定方法。
【請求項11】
前記推定するステップは、
前記計測面と、前記亀裂発生面とによって生成された前記形状モデルに対して、予め設定された境界条件に基づいた構造解析によって、前記計測面の変化を推定した複数の計測面推定変化ベクトルと前記亀裂発生面の変位変化を推定した複数の亀裂発生面推定変化ベクトルとからなる前記推定モデルを生成するステップと、
前記計測面変形ベクトルとの類似度が予め設定された基準類似度よりも高い前記計測面推定変化ベクトルを前記計測面類似変化ベクトルとし、前記計測面類似変化ベクトルに対応する前記亀裂発生面推定変化ベクトルを前記亀裂発生面類似変化ベクトルとし、前記推定モデルの一部としての前記計測面類似変化ベクトルと前記推定モデルの他の一部としての前記亀裂発生面類似変化ベクトルとを抽出するステップと、
前記計測面変形ベクトル及び前記計測面類似変化ベクトルに基づいて、前記ノルム最小化問題としてL1ノルム最小化問題を解くことにより前記係数ベクトルを抽出するステップと、
前記係数ベクトルと、前記亀裂発生面類似変化ベクトルと、に基づいて、前記亀裂発生面の変位変化の分布を推定するステップと、
を含む請求項10に記載の推定方法。
【請求項12】
前記構造物に加える荷重及び前記構造物における物性値に基づいて前記亀裂発生面における亀裂の進展量を求めるステップと、
前記亀裂の進展量と前記構造物における前記亀裂の大きさ及び位置とに基づいて前記構造物の残存使用期間を決定するステップと、
をさらに含む請求項11に記載の推定方法。
【請求項13】
前記亀裂の進展量と前記構造物における前記亀裂の大きさ及び位置とに基づいて前記構造物の使用停止を促す報知をするステップをさらに含む請求項12に記載の推定方法。
【請求項14】
前記境界条件に応じて生じる前記亀裂発生面における応力が最大となる点を前記亀裂の発生箇所として特定するステップをさらに含む請求項12又は請求項13に記載の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、推定装置及び推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タービン発電機においては、1つ以上の亀裂が回転電機機械構造の内部に生じる虞がある。一般的に、肉眼により亀裂を検出するのは実用的ではない。残念なことに通常の検査では検出されない亀裂は、亀裂の拡大及び構造物の寿命の低下という結果となる。従って、亀裂の入った構造をしているタービン発電機は、不利な影響を受ける。
【0003】
そのため、従来、亀裂を検出する非破壊検査方法には、構造物の内部で生じた亀裂が検出され得るように構造物の表面のひずみを計測することが知られている(例えば、特開2012-159477号公報参照)。
【0004】
上記亀裂検出方法は、超音波探傷、X線検査等のような他の非破壊検査方法と比べて装置の小型化が容易であり、それ故に低コスト化が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記亀裂検出方法は、構造物の内部に生じる亀裂サイズの推定には安定していない。
【0006】
上記亀裂検出方法は、構造物の内部に生じる亀裂の位置及び大きさを推定することによって、構造物表面における形状の変化に基づいて構造物の内部に生じる亀裂を導く逆解析を使用する。
【0007】
逆解析を行うために、逆問題を解決する必要がある。逆問題の解決に満足な結果を得るためには次の3つの条件が必要である。第1に、逆問題の解決は、解の存在性が存在することにある。第2に、逆問題の解決は、解の一意性にある。第3に、逆問題の解決は、解の安定性が安定していることである。
【0008】
しかし、これらの3つの条件、すなわち、解の存在性、解の一意性及び解の安定性は満たされないかもしれず、亀裂に依存している。
【0009】
3つの上記条件のうち少なくとも1つが満足しない場合、逆問題は、ゼロの解又はゼロの一意の解に到達され得る不良設定問題となる。この結果、亀裂の推定精度は低下する。
【0010】
本開示は、上記のような逆問題を解決するためになされたものであり、構造部の内部に生じる亀裂の形状及び大きさを精度よく推定するために、特に、推定装置及び推定方法を使用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る推定装置は、構造物の表面にある観測面を計測面とし、前記計測面の変化を計測面変形ベクトルとして計測する計測部と、前記構造物の形状がモデル化された形状モデルから生成した推定モデルの一部と前記計測面変形ベクトルとをパラメータとしたL1ノルム最小化問題を解くことにより得られたスパース解を構成する係数ベクトル及び前記推定モデルの他の一部に基づいて、少なくとも1つの亀裂が前記構造物の内部に発生したと推定される候補面を亀裂発生面として前記亀裂発生面の変化を推定する推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、構造物内部における亀裂を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1における推定装置の構成例を示すブロック図である。
図2図1の推定装置による推定対象となる構造物としての平板に引張荷重が加わった状態の一例を示す図である。
図3図2の平板に曲げモーメントが加わった状態の一例を示す図である。
図4図2及び図3の候補面に設定された基準座標の一例を示す図である。
図5図4の候補面における分割時の各要素の一例を示す図である。
図6図2及び図3の観察面に設定された基準座標の一例を示す図である。
図7図6の観察面における分割時の各要素の一例を示す図である。
図8図5の候補面における亀裂の位置毎の各節点の変位変化の差分による変位変化のベクトルを示す図である。
図9図8の複数の変位変化のベクトルから構成される亀裂面行列を示す図である。
図10図5の候補面における亀裂の位置毎の図7の観察面における各節点のひずみの差分によるひずみ変化のベクトルを示す図である。
図11図13の複数のひずみ変化のベクトルから構成される計測面行列を示す図である。
図12図1の亀裂状態推定部により処理される各式を示す図である。
図13図1の推定装置により実行される処理を説明するフローチャートである。
図14図13のフローチャートに含まれる学習データ作成処理を説明するフローチャートである。
図15図14のフローチャートの続きの処理を説明するフローチャートである。
図16図13のフローチャートに含まれる推定処理を説明するフローチャートである。
図17図1の推定装置による推定対象となる構造物を円柱部材としたときに、円柱部材内部に内圧が付与されたときの座標系を示す斜視図である。
図18図17の円柱部材を示す平面図である。
図19】実施の形態2における学習データ作成処理を説明するフローチャートである。
図20図19のフローチャートの続きの処理を説明するフローチャートである。
図21図19の境界条件付与処理時に決定される亀裂発生面の辺の一例を示す図である。
図22図19の境界条件付与処理時に決定される亀裂発生面において亀裂として特定される節点の第1の例を示す図である。
図23図19の境界条件付与処理時に決定される亀裂発生面において亀裂として特定される節点の第2の例を示す図である。
図24図19の境界条件付与処理時に決定される亀裂発生面において亀裂として特定される節点の第3の例を示す図である。
図25図19の境界条件付与処理を説明するフローチャートである。
図26】実施の形態3において候補面における亀裂の位置毎の観察面における各節点の変位変化を表す変位変化のベクトルを示す図である。
図27図26の複数の変位変化のベクトルから構成される計測面行列を示す図である。
図28】実施の形態3において候補面における亀裂の位置毎の観察面における各節点の角度を表す角度変化のベクトルを示す図である。
図29図28の複数の角度変化のベクトルから構成される計測面行列を示す図である。
図30】実施の形態4における候補面における亀裂の位置毎の各節点の荷重を表す荷重変化のベクトルを示す図である。
図31図30の複数の荷重変化のベクトルから構成される亀裂面行列を示す図である。
図32】実施の形態5における推定装置の構成例を示すブロック図である。
図33図32の推定装置により実行される処理を説明するフローチャートである。
図34】実施の形態6における図13及び図33の出力処理を説明するフローチャートである。
図35】実施の形態7における図13及び図33の出力処理を説明するフローチャートである。
図36】実施の形態8における候補面を示す図である。
図37図36の候補面を決定する処理を説明するフローチャートである。
図38】ハードウェア構成例を説明する図である。
図39】他のハードウェア構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における推定装置の構成例を示すブロック図である。図2は、図1の推定装置による推定対象となる構造物としての平板5に引張荷重F1が加わった状態の一例を示す図である。図3は、図2の平板5に曲げモーメントF2が加わった状態の一例を示す図である。
【0015】
図1に示すように、推定装置は、計測部3と、推定部1とを備えている。図2の平板5は、推定部1により亀裂55の位置及び大きさの推定対象となる。
【0016】
平板5の内部には候補面53が設定可能である。また、平板5の表面には観測面51が設定可能である。図2及び図3においては、平板5は、直交座標系により示されている。候補面53は、亀裂55の発生が想定される箇所に設定される。観測面51は、候補面53の変化によって平板5の表面が変化する範囲に設定される。
【0017】
計測部3は、平板5の表面の少なくとも一部を観測面51とし、観測面51の変化を計測する。計測部3は、例えば、ひずみゲージから構成されている。ひずみゲージは、計測するために観測面51に取り付けられて使用される。
【0018】
ひずみゲージは、ベース材と、抵抗材料とから構成されている。ベース材の材料は、電気絶縁物から構成されている。抵抗材料は、ベース材に取り付けられている。抵抗材料において、ベース材から突出した部位には引き出し線が設けられている。ベース材は、平板5の表面に接着剤を介して取り付けられている。これような取り付け構成により、ベース材が伸縮すると、抵抗材料も伸縮し、抵抗材料の電気抵抗が変化する。引き出し線は、推定部1に接続されている。
【0019】
例えば、平板5の表面にひずみが生じると、抵抗材料は伸縮するため、抵抗材料の電気抵抗は変化する。その電気抵抗の変化は、引き出し線を介して推定部1に伝達される。この結果、ひずみゲージは、平板5の表面のひずみ変化を計測し、計測結果を推定部1に供給する。
【0020】
即ち、図2の引張荷重F1又は図3の曲げモーメントF2が平板5に加えられた状態が保持されたまま、計測部3は、平板5の表面にある観測面51のひずみ変化を計測する。
【0021】
詳細については後述するが、計測部3は、観測面51を計測面として、計測面の変化を計測面変形ベクトルとして計測する。
【0022】
推定部1は、計測部3によって計測された計測面の変化に基づいて、平板5の内部における亀裂55を推定する。即ち、推定部1は、平板5の表面における形状の変化と、平板5の内部における亀裂55との関係を用いることによる逆解析によって平板5の内部における亀裂55を推定する。
【0023】
具体的には、推定部1により処理される各種フェーズには、学習フェーズと、活用フェーズとしての逆解析フェーズとがある。逆解析フェーズは、推定部1によって学習フェーズの後に処理される。
【0024】
学習フェーズにおいては、平板5の内部における亀裂55と、平板5の表面における形状変化との関係が1組の学習データを予め使用することによって準備される。また、逆解析フェーズにおいては、学習フェーズにおいて学習された関係を用いることにより平板5の内部における亀裂55の位置と大きさとが推定される。
【0025】
推定問題は、基本的には逆問題である。逆問題の有意義な解決に至るためには、3つの条件、すなわち、解の存在性、解の一意性及び解の安定性が満たされる必要がある。
【0026】
しかし、学習データ及び計測部3によって計測された計測面のひずみに依存する上記3つの条件は満たされない可能性がある。
【0027】
例えば、未知量の数が観測量の数よりも小さい場合、解が存在しないため、解の存在性が満たされない。
【0028】
さらにまた、例えば、未知量の数が観測量の数よりも大きい場合、解が無数に存在するため、解の一意性が満たされない。
【0029】
さらに、例えば、平板5に生じる応力によって平板5にひずみが生じたとしても、そのひずみの影響を受けた場所が、ひずみが生じた場所から離れるほど急速に減衰する場合、解の安定性は満たされない。
【0030】
このため、逆問題は、不良設定問題、即ち、不適切問題となる可能性がある。
【0031】
学習プロセスにおいて、このような推定には、射影行列の擬似逆行列を計算することが要求される最小二乗法が通常用いられる。従って、学習データを用いることによって亀裂55の位置と大きさとを推定しようとしても、このような不適切問題であれば、精度よく解くことができない。
【0032】
そこで、実施の形態1においては、推定部1は、平板5の形状を形状モデルにモデル化する。推定部1は、形状モデルから推定モデルを生成する。推定部1は、2つの項を含むL1ノルム最小化問題を解くことにより係数ベクトルとしてスパース解に達成する。2つの項のうちの1つは、推定モデルのデータ忠実項である。2つの項のうちのもう1つは、計測面変形ベクトルのスパース解である。推定部1は、係数ベクトルと、推定モデルの他の一部と、に基づいて、候補面53を亀裂発生面として亀裂発生面の変化を推定する。
【0033】
具体的には、推定部1は、モデル生成部11と、亀裂状態解析部12と、記憶部13と、解析結果出力部14と、を備えている。
モデル生成部11は、形状モデル生成部111と、推定モデル生成部112とを備えている。
【0034】
形状モデル生成部111は、形状モデルを生成する。推定モデル生成部112は、形状モデルから構造解析モデルを生成する。推定モデル生成部112は、構造解析モデルから推定モデルを生成する。
【0035】
生成される推定モデルは、構造解析モデルによって異なるものとなる。構造解析モデルは、構造解析が行うために使用されるモデルである。構造解析が行われるためには、構造解析モデルの他に、構造解析モデルに対する境界条件が必要となる。
【0036】
境界条件は、荷重条件と、拘束条件とから構成されている。構造解析が行われるためには、構造解析モデル、荷重条件及び拘束条件の3つが必要である。
【0037】
従って、構造解析モデルを用いて構造解析が行われるときには、荷重条件と、拘束条件とが定義される。
【0038】
荷重条件は、荷重が加えらえた構造物の場所及び荷重の大きさ、すなわち、構造物モデルにおいて荷重が加えられる場所における力のベクトルの情報を含む。
【0039】
一方、拘束条件は、特に、構造解析モデルにおいて支持された場所の変形量をゼロとすることによって、どのような場所が支持されているかという情報について構造物の支持される場所が定義される。
【0040】
境界条件は、生成される形状モデルによって異なる条件となる。
【0041】
形状モデルは、計測面と、亀裂発生面とによって平板5の全体又は一部として生成される検査対象のモデルである。
【0042】
平板5の全体を形状モデルとした場合、境界条件としてさらに温度分布が追加されてもよい。
【0043】
温度分布は次のように利用される。まず第1に、設定された初期温度において、既知の一様な温度分布の情報が構造解析モデルに荷重として付与される。次に、設定された初期温度と異なる解析用温度において、初期温度と解析用温度との差により全体を膨張又は収縮させることにより構造解析が行われる。
【0044】
一方、平板5の一部を形状モデルとした場合、平板5の一部として抽出された面における変位変化の情報又は荷重分布の情報が境界条件として付与される。
【0045】
このように、境界条件に基づいて構造解析されるときには形状モデルの計測面及び亀裂発生面が格子状に分割されたモデルが構造解析モデルとして使用される。
【0046】
従って、亀裂発生面は、候補面53を格子状に分割することにより構造解析モデルの一部として生成される。また、計測面は、観測面51を格子状に分割することにより構造解析モデルの他の一部として生成される。
【0047】
図4は、図2及び図3の候補面53に設定された基準座標の一例を示す図である。図5は、図4の候補面53における分割時の各要素Aの一例を示す図である。
【0048】
図5に示すように、構造解析モデルの亀裂発生面は、複数の要素Aに分割されている。各要素Aは、X軸方向に沿ってn個に分割され、Y軸方向に沿ってm個に分割されている。
【0049】
即ち、形状モデルの亀裂発生面が横n個及び縦m個の格子状に分割されることにより、各格子は交差し、構造解析モデルの亀裂発生面には複数の要素Aが作成される。
【0050】
各格子の座標は、(i,j)により表される。(i,j)の原点は、(0,0)である。(i,j)が最大となる位置は、(n,m)である。各格子を節点とすると、各節点は、要素Aを形成する線上に位置する点である。
【0051】
亀裂発生面の構造解析は、亀裂発生面における各節点の位置毎に行われる。
【0052】
例えば、亀裂発生面における(0,0)の位置の節点に亀裂55が生じている場合、亀裂発生面における(0,0)の位置から(n,m)の位置までの亀裂発生面における全ての節点の変位変化について構造解析が行われる。この場合、(0,0)の位置の節点は亀裂55に該当するので空洞になっている。従って、(0,0)の位置に変位変化が生じる。一方、(0,0)の位置以外の位置の節点には亀裂55がないと仮定しているため、境界条件によっては荷重方向の変位変化が生じない。
【0053】
次に、例えば、亀裂発生面における(0,1)の位置の節点に亀裂55が生じている場合、亀裂発生面における(0,0)の位置から(n,m)の位置までの亀裂発生面における全ての節点の変位変化について構造解析が行われる。この場合、(0,1)の位置の節点は亀裂55に該当するので空洞になっている。従って、(0,1)の位置の変位変化は生じる。一方、(0,1)の位置以外の位置の節点には亀裂55が無いと仮定しているため、境界条件によっては荷重方向の変位変化は生じない。
【0054】
以後、亀裂発生面における(0,0)及び(0,1)の位置以外の位置の節点についても亀裂発生面における全ての節点の変位変化について構造解析が同様に行われる。即ち、亀裂発生面における各節点の位置毎に亀裂55が生じていると仮定して、亀裂発生面における全節点の位置についての変位変化が求められる。このように求められた変位変化のうち、少なくとも最大の変位変化の情報が記憶部13に記憶される。上記における亀裂55とする節点の位置の順番は予め決められている。
【0055】
換言すれば、亀裂発生面における各節点と境界条件とは次のような関係が設定される。拘束条件が設定されている亀裂発生面における節点には、拘束する方向の変化量がゼロに設定されている。これにより、拘束条件が設定されている亀裂発生面における節点は、拘束する方向に動かない。一方、荷重条件が設定されている亀裂発生面における節点のうち亀裂55が生じていない節点には、一定の方向の荷重の変化量がゼロ以外に設定されている。また、荷重条件が設定されている亀裂発生面における節点のうち亀裂55が生じている節点には、全ての方向の荷重の変化量がゼロに設定されている。
【0056】
図6は、図2及び図3の観測面51に設定された基準座標の一例を示す図である。図7は、図6の観測面51における分割時の各要素Bの一例を示す図である。
【0057】
図7に示すように、構造解析モデルの計測面は、複数の要素Bに分割されている。各要素Bは、X軸方向に沿ってn個に分割され、Z軸方向に沿ってp個に分割されている。
【0058】
即ち、形状モデルの計測面が横n個縦p個の格子状に分割される。この結果、各格子は交差し、構造解析モデルの亀裂発生面には複数の要素Bが作成される。
【0059】
各格子位置の座標は、原点(0,0)から(n,p)の最大座標の位置まで、(k,l)で表されます。各格子を節点とすると、各節点は、要素Bを形成する線上に位置する点である。
【0060】
計測面の構造解析は、亀裂発生面における各節点の位置毎に行われる。
【0061】
例えば、亀裂発生面における(0,0)の位置の節点に亀裂55が生じている場合、計測面における(0,0)の位置から(n,p)の位置までの計測面における全ての節点のひずみ変化について構造解析が行われる。
【0062】
次に、例えば、亀裂発生面における(0,1)の位置の節点に亀裂55が生じている場合、計測面における(0,0)の位置から(n,p)の位置までの計測面における全ての節点のひずみ変化について構造解析が行われる。
【0063】
以後、亀裂発生面における(0,0)及び(0,1)の位置以外の位置の節点についても計測面における(0,0)の位置から(n,p)の位置までの計測面における全ての節点のひずみ変化について構造解析が同様に行われる。即ち、亀裂発生面における各節点の位置毎に亀裂55が生じていると仮定して、計測面における全節点の位置についてのひずみ変化が求められる。このように求められたひずみ変化のうち、全ての可能な亀裂位置のひずみ変化情報が記憶部13に記憶される。
【0064】
換言すれば、計測面における各節点と境界条件との間の関係が決定される。計測面の拘束条件に関連付いている節点には、拘束する方向の変位変化量がゼロに設定されている。拘束する方向の変位変化量がゼロということは、各節点は拘束する方向に動かないということである。一方、計測面における荷重条件が設定されている節点には、固定された方向における荷重の変化量がゼロ以外の値に設定されている。
【0065】
また、Z軸上の引張荷重F1又はZX軸上の曲げモーメントF2が加わる場合のひずみには、主ひずみ、トレスカの降伏条件により定義される相当ひずみ又はミーゼスの降伏条件により定義される相当ひずみが用いられてもよい。
【0066】
上記の説明を要約すると、モデル生成部11は、計測面と、亀裂発生面とによって生成された形状モデルに対して、予め設定された境界条件に基づいて構造解析を行う。モデル生成部11は、構造解析によって、計測面の変化を推定した複数の計測面推定変化ベクトルを生成する。モデル生成部11は、構造解析によって、亀裂発生面の変化として亀裂発生面の変位変化を推定した複数の亀裂発生面推定変化ベクトルを生成する。モデル生成部11は、計測面推定変化ベクトルと亀裂発生面推定変化ベクトルとからなる推定モデルを生成する。
【0067】
具体的には、モデル生成部11は、亀裂55が発生していない境界条件を構造解析モデルにおける亀裂発生面の各節点に与える。モデル生成部11は、構造解析モデルにおける亀裂発生面の各節点の変位変化量を算出する。モデル生成部11は、構造解析モデルにおける計測面の各節点の変形として各節点のひずみを算出する。
【0068】
また、モデル生成部11は、亀裂発生面の各節点を亀裂55とする境界条件を構造解析モデルにおける亀裂発生面の各節点に与える。モデル生成部11は、上記と同様に、亀裂発生面の各節点の変位変化量と、計測面の各節点の変形としての各節点のひずみと、を算出する。
【0069】
モデル生成部11は、ベクトルの各エントリが構造解析モデルにおける亀裂発生面の節点の変位変化を示す変位変化のベクトルを作成する。
【0070】
図8は、ベクトルの各エントリが図5の候補面53における亀裂55の位置の節点に対応する変位変化を示す変位変化のベクトルを示す図である。図8に示すように、Δ(-,-)の列ベクトルに含まれる各節点の変位データは、各節点に想定される亀裂55を移動させる順番に並べられている。ここで、‘-’は、無意味な不定データを示す。以下の説明においても‘-’は、同様に無意味な不定データを示す。
【0071】
例えば、δ(i,j)は、図5の候補面53における節点が(i,j)位置にある節点の変位変化を表す。
【0072】
さらに、この列ベクトルに構造解析時の亀裂55の位置が付与され、この列ベクトルに含まれる各節点の変位データに構造解析時の亀裂55の位置が付与される。
【0073】
図9は、図8の複数の変位変化のベクトルから構成される亀裂面行列Δcrack_diffを示す図である。図8の複数の変位変化のベクトルのそれぞれは、列ベクトルから構成されている。これらの各列ベクトルを各節点に想定される亀裂55を移動させる順番に並べたものが図9の亀裂面行列Δcrack_diffとなる。亀裂面行列Δcrack_diffは、次の式(1)により表される。
【数1】
【0074】
また、モデル生成部11は、構造解析モデルにおける計測面の節点のひずみの差分によるひずみ変化のベクトルを作成する。
【0075】
図10は、図5の候補面53における亀裂55の位置毎の図7の観測面51における各節点のひずみの差分によるひずみ変化のベクトルを示す図である。図10に示すように、E(-,-)の列ベクトルに含まれる各節点のひずみデータは、各節点に想定される亀裂55を移動させる順番に並べられている。
【0076】
例えば、ε(i,j)は、図7の観測面51における節点が(i,j)位置にある節点のひずみ変化を表す。
【0077】
さらに、この列ベクトルに構造解析時の亀裂55の位置が付与され、この列ベクトルに含まれる各節点のひずみデータに構造解析時の亀裂55の位置が付与される。
【0078】
図11は、図10の複数のひずみ変化のベクトルから構成される計測面行列Emeasureを示す図である。図10の複数のひずみ変化のベクトルのそれぞれは、列ベクトルから構成されている。これらの各列ベクトルを各節点に想定される亀裂55を移動させる順番に並べたものが図11の計測面行列Emeasureとなる。計測面行列Emeasureは、次の式(2)により表される。
【数2】
【0079】
平板5の内部に亀裂55がない条件である場合と、平板5の内部に亀裂55が発生した条件である場合とのそれぞれの場合について、計測部3により平板5における観測面51のひずみ変化が計測される。平板5の内部に亀裂55がない条件である場合における観測面51のひずみと、平板5の内部に亀裂55がある条件である場合における観測面51のひずみとの差分が求められる。求められたひずみの差分を各節点に想定される亀裂55を移動させる順番と同じ順番に列ベクトルとして並べたものが、次の式(3)により表される。
【数3】
【0080】
計測部3は、式(3)に表された列ベクトルを計測面変形ベクトルとして計測する。計測面変形ベクトルにおいて、サフィックスの0*0は、図7の観測面51における節点が(0,0)位置にある節点を示す。また、例えば、計測面変形ベクトルにおいて、サフィックスのn*pは、図7の観測面51における節点が(n,p)位置にある節点を示す。
【0081】
亀裂状態解析部12は、データ取得部121及び亀裂状態推定部122を備えている。
【0082】
データ取得部121は、計測部3により計測された計測面変形ベクトルを取得する。データ取得部121は、計測部3から取得した計測面変形ベクトルを亀裂状態推定部122に供給する。
【0083】
図12は、図1の亀裂状態推定部122により処理される各式を示す図である。
【0084】
亀裂状態推定部122は、類似ベクトル抽出部1221、特徴抽出部1222及び亀裂解析部1223を備えている。
【0085】
類似ベクトル抽出部1221は、式(2)により表される計測面行列Emeasureを構成する列ベクトルのそれぞれを計測面推定変化ベクトルとする。計測面推定変化ベクトルは、次の式(4)により表される。
【数4】
【0086】
類似ベクトル抽出部1221は、式(3)により表される計測面変形ベクトルとの類似度が予め設定された基準類似度よりも高い計測面推定変化ベクトルを計測面類似変化ベクトルとする。類似ベクトル抽出部1221は、類似度としてcos類似度を用い、基準類似度を例えば0とする。
【0087】
cos類似度は、次の式(5)により表される。
【数5】
【0088】
計測面類似変化ベクトルは、次の式(6)により表される。
【数6】
【0089】
類似ベクトル抽出部1221は、式(1)により表される亀裂面行列Δcrack_diffを構成する列ベクトルのそれぞれを亀裂発生面推定変化ベクトルとする。類似ベクトル抽出部1221は、式(6)により表される計測面類似変化ベクトルに対応する亀裂発生面推定変化ベクトルを亀裂発生面類似変化ベクトルとする。
【0090】
亀裂発生面類似変化ベクトルは、次の式(7)により表される。
【数7】
【0091】
類似ベクトル抽出部1221は、推定モデルの一部としての式(6)により表される計測面類似変化ベクトルと、推定モデルの他の一部としての式(7)により表される亀裂発生面類似変化ベクトルとを抽出する。
【0092】
特徴抽出部1222は、式(3)により表される計測面変形ベクトルと、式(6)により表される計測面類似変化ベクトルと、に基づいて、ノルム最小化問題としてL1ノルム最小化問題を解くことにより係数ベクトルを抽出する。
【0093】
係数ベクトルは、次の式(8)により表される。
【数8】
【0094】
式(8)において、λはラグランジェ乗数である。式(8)により、式(3)により表される計測面変形ベクトルと、式(6)により表される計測面類似変化ベクトルとの差分を最小にする係数ベクトルが抽出される。
【0095】
亀裂解析部1223は、式(8)により表される係数ベクトルと、式(7)により表される亀裂発生面類似変化ベクトルと、に基づいて、亀裂発生面の変位変化の分布を推定する。
【0096】
亀裂発生面の変位変化の分布は、次の式(9)により表される。
【数9】
【0097】
式(9)において、位置及び大きさの情報を示す係数ベクトルと、位置及び大きさの情報を示す亀裂発生面類似変化ベクトルとが乗算される。従って、式(9)の演算結果は、位置及び大きさの情報を示す。これにより、亀裂発生面において推定される亀裂の位置及び大きさが求められる。
【0098】
ここまでの推定に使用するベクトル量は、2次元配列もしくはイメージデータとして取り扱っても本開示は実現可能である。
【0099】
図13は、図1の推定装置により実行される処理を説明するフローチャートである。ステップS11の処理~ステップS23の処理は、学習フェーズにおいて実行される処理である。ステップS24の処理~ステップS26の処理は、逆解析フェーズにおいて実行される処理である。
【0100】
ステップS11において、推定部1は、学習データの条件を受け付けたか否かを判定する。推定部1によって学習データの条件を受け付けていないと判定される場合、ステップS11の処理は、繰り返される。学習データには、推定される亀裂55の発生起点、形状モデル及び推定される亀裂55の形状が含まれている。
【0101】
一方、ステップS11において、推定部1によって学習データの条件を受け付けたと判定される場合、ステップS11の処理は、ステップS12の処理に進む。
【0102】
ステップS12において、推定部1は、亀裂55の発生起点を決定する。次に、ステップS12の処理は、ステップS13の処理に進む。
【0103】
ステップS13において、推定部1は、候補面53を決定する。次に、ステップS13の処理は、ステップS14の処理に進む。
【0104】
ステップS14において、推定部1は、観測面51を決定する。次に、ステップS14の処理は、ステップS15の処理に進む。
【0105】
ステップS15において、推定部1は、形状モデルを生成する。次に、ステップS15の処理は、ステップS16の処理に進む。
【0106】
ステップS16において、推定部1は、候補面53を格子状の複数の要素Aに分割する。次に、ステップS16の処理は、ステップS17の処理に進む。
【0107】
ステップS17において、推定部1は、候補面53の複数の要素Aに複数の節点を設定する。次に、ステップS17の処理は、ステップS18の処理に進む。
【0108】
ステップS18において、推定部1は、候補面53における亀裂55の条件を変えた構造解析のパターンを複数決定する。次に、ステップS18の処理は、ステップS19の処理に進む。
【0109】
ステップS19において、推定部1は、構造解析のパターン毎に各節点における亀裂55を学習させる順番を決定する。次に、ステップS19の処理は、ステップS20の処理に進む。
【0110】
ステップS20において、推定部1は、観測面51を格子状の複数の要素Bに分割する。次に、ステップS20の処理は、ステップS21の処理に進む。
【0111】
ステップS21において、推定部1は、観測面51の複数の要素Bに複数の節点を設定する。次に、ステップS21の処理は、ステップS22の処理に進む。
【0112】
ステップS22において、推定部1は、構造解析のパターン毎に観測面51の各節点におけるひずみを学習させる順番を決定する。次に、ステップS22の処理は、ステップS23の処理に進む。
【0113】
ステップS23において、推定部1は、学習データ作成処理を実行する。学習データ作成処理の詳細は、図14及び図15又は図19及び図20に記載されている。次に、ステップS23の処理は、ステップS24の処理に進む。
【0114】
ステップS24において、推定部1は、計測データを取得する。次に、ステップS24の処理は、ステップS25の処理に進む。
【0115】
ステップS25において、推定部1は、推定処理を実行する。推定処理の詳細は、図16に記載されている。次に、ステップS25の処理は、ステップS26の処理に進む。
【0116】
ステップS26において、推定部1は、出力処理を実行する。出力処理の詳細は、図34及び図35のそれぞれに記載されている。次に、ステップS26の処理は、終了する。
【0117】
図14は、図13のフローチャートに含まれる学習データ作成処理を説明するフローチャートである。
【0118】
ステップS31において、推定部1は、亀裂55の発生起点の情報を取得する。次に、ステップS31の処理は、ステップS32の処理に進む。
【0119】
ステップS32において、推定部1は、形状モデルの情報を取得する。次に、ステップS32の処理は、ステップS33の処理に進む。
【0120】
ステップS33において、推定部1は、構造解析のパターンの情報を取得する。次に、ステップS33の処理は、ステップS34の処理に進む。
【0121】
ステップS34において、推定部1は、亀裂55を学習させる順番の情報を取得する。次に、ステップS34の処理は、ステップS35の処理に進む。
【0122】
ステップS35において、推定部1は、ひずみを学習させる順番の情報を取得する。次に、ステップS35の処理は、ステップS36の処理に進む。
【0123】
ステップS36において、推定部1は、構造解析モデルを作成する。次に、ステップS36の処理は、ステップS37の処理に進む。
【0124】
ステップS37において、推定部1は、亀裂発生面を決定する。次に、ステップS37の処理は、ステップS38の処理に進む。
【0125】
ステップS38において、推定部1は、計測面を決定する。次に、ステップS38の処理は、ステップS39の処理に進む。
【0126】
ステップS39において、推定部1は、亀裂発生面を格子状の複数の要素Aに分割する。次に、ステップS39の処理は、ステップS40の処理に進む。
【0127】
ステップS40において、推定部1は、亀裂発生面の複数の要素Aに複数の節点を設定する。次に、ステップS40の処理は、ステップS41の処理に進む。
【0128】
ステップS41において、推定部1は、計測面を格子状の複数の要素Bに分割する。次に、ステップS41の処理は、ステップS42の処理に進む。
【0129】
ステップS42において、推定部1は、計測面の複数の要素Bに複数の節点を設定する。次に、ステップS42の処理は、ステップS43の処理に進む。
【0130】
ステップS43において、推定部1は、亀裂発生面の各節点に亀裂55が発生していない境界条件を構造解析モデルに付与する。次に、ステップS43の処理は、ステップS44の処理に進む。
【0131】
ステップS44において、推定部1は、亀裂発生面の各節点の変位変化量を算出する。次に、ステップS44の処理は、ステップS45の処理に進む。
【0132】
ステップS45において、推定部1は、計測面の各節点のひずみを算出する。次に、ステップS45の処理は、ステップS46の処理に進む。
【0133】
ステップS46において、推定部1は、亀裂発生面の節点を亀裂55とする境界条件を構造解析モデルに付与する。次に、ステップS46の処理は、ステップS47の処理に進む。
【0134】
ステップS47において、推定部1は、亀裂発生面の節点の変位変化量を算出する。次に、ステップS47の処理は、ステップS48の処理に進む。
【0135】
ステップS48において、推定部1は、計測面の節点のひずみを算出する。次に、ステップS48の処理は、図15に記載されているステップS49の処理に進む。
【0136】
図15は、図14のフローチャートの続きの処理を説明するフローチャートである。
【0137】
ステップS49において、推定部1は、亀裂発生面の節点の変位変化量の差分による変位変化のベクトルを作成する。次に、ステップS49の処理は、ステップS50の処理に進む。
【0138】
ステップS50において、推定部1は、計測面の節点のひずみの差分によるひずみ変化のベクトルを作成する。次に、ステップS50の処理は、ステップS51の処理に進む。
【0139】
ステップS51において、推定部1は、変位変化のベクトルを記憶部13に保存する。次に、ステップS51の処理は、ステップS52の処理に進む。
【0140】
ステップS52において、推定部1は、ひずみ変化のベクトルを記憶部13に保存する。次に、ステップS52の処理は、ステップS53の処理に進む。
【0141】
ステップS53において、推定部1は、亀裂発生面の全ての節点について構造解析したか否かを判定する。推定部1によって亀裂発生面の全ての節点について構造解析していないと判定される場合、ステップS53の処理は、ステップS54の処理に進む。
【0142】
ステップS54において、推定部1は、亀裂55とする節点を変更する。次に、ステップS54の処理は、図14に記載されているステップS46の処理に戻る。
【0143】
一方、ステップS53において、推定部1によって亀裂発生面の全ての節点について構造解析したと判定される場合、ステップS53の処理は、ステップS55の処理に進む。
【0144】
ステップS55において、推定部1は、変位変化のベクトルから構成される亀裂面行列Δcrack_diffを作成する。次に、ステップS55の処理は、ステップS56の処理に進む。
【0145】
ステップS56において、推定部1は、ひずみ変化のベクトルから構成される計測面行列Emeasureを作成する。次に、ステップS56の処理は、ステップS57の処理に進む。
【0146】
ステップS57において、推定部1は、亀裂面行列Δcrack_diffと計測面行列Emeasureとからなる推定モデルを生成する。次に、ステップS57の処理は、学習データ作成処理を終了する。
【0147】
図16は、図13のフローチャートに含まれる推定処理を説明するフローチャートである。
【0148】
ステップS71において、推定部1は、推定モデルの情報を読み込む。次に、ステップS71の処理は、ステップS72の処理に進む。
【0149】
ステップS72において、推定部1は、推定処理の実行を開始する前にステップS24において取得した計測データから計測面変形ベクトルを作成する。次に、ステップS72の処理は、ステップS73の処理に進む。
【0150】
ステップS73において、推定部1は、計測面推定変化ベクトルの情報を取得する。次に、ステップS73の処理は、ステップS74の処理に進む。
【0151】
ステップS74において、推定部1は、計測面推定変化ベクトルと計測面変形ベクトルとのcos類似度を求める。次に、ステップS74の処理は、ステップS75の処理に進む。
【0152】
ステップS75において、推定部1は、cos類似度が基準類似度よりも高いか否かを判定する。推定部1によってcos類似度が基準類似度よりも高くないと判定される場合、ステップS75の処理は、ステップS76の処理に進む。ここで、推定部1によってcos類似度が基準類似度よりも高くないと判定される場合は、推定部1によってcos類似度が基準類似度以下であると判定される場合に相当する。
【0153】
ステップS76において、推定部1は、計測面推定変化ベクトルを変更する。次に、ステップS76の処理は、ステップS74の処理に戻る。
【0154】
一方、ステップS75において、推定部1によってcos類似度が基準類似度よりも高いと判定される場合、ステップS75の処理は、ステップS77の処理に進む。
【0155】
ステップS77において、推定部1は、計測面推定変化ベクトルを計測面類似変化ベクトルとして記憶部13に保存する。次に、ステップS77の処理は、ステップS78の処理に進む。
【0156】
ステップS78において、推定部1は、計測面類似変化ベクトルに対応する亀裂発生面推定変化ベクトルを亀裂発生面類似変化ベクトルとして記憶部13に保存する。次に、ステップS78の処理は、ステップS79の処理に進む。
【0157】
ステップS79において、推定部1は、全ての計測面推定変化ベクトルについて計測面変形ベクトルと比較したか否かを判定する。推定部1によって全ての計測面推定変化ベクトルについて計測面変形ベクトルと比較していないと判定される場合、ステップS79の処理は、ステップS76の処理に戻る。
【0158】
一方、ステップS79において、推定部1によって全ての計測面推定変化ベクトルについて計測面変形ベクトルと比較したと判定される場合、ステップS79の処理は、ステップS80の処理に進む。
【0159】
ステップS80において、推定部1は、計測面類似変化ベクトルと亀裂発生面類似変化ベクトルとから構成される類似推定モデルを作成する。次に、ステップS80の処理は、ステップS81の処理に進む。
【0160】
ステップS81において、推定部1は、計測面変形ベクトルと、計測面類似変化ベクトルと、に基づいて、L1ノルム最小化問題を解くことにより係数ベクトルを抽出する。ステップS81の処理は、ステップS82の処理に進む。
【0161】
ステップS82において、推定部1は、係数ベクトルを亀裂発生面類似変化ベクトルに乗じて亀裂発生面の変位変化の分布を推定する。次に、ステップS82の処理は、ステップS83の処理に進む。
【0162】
ステップS83において、推定部1は、亀裂発生面の変位変化の分布に基づいて亀裂55の位置及び大きさを求める。次に、ステップS83の処理は、推定処理を終了する。
【0163】
図17は、図1の推定装置による推定対象となる構造物を円柱部材7としたときに、円柱部材内部に内圧Piが付与されたときの座標系を示す斜視図である。図17においては、円柱部材7は、円筒座標系により示されている。
【0164】
図18は、図17の円柱部材7を示す平面図である。図18に示すように、焼き嵌め時に円柱部材7の内周面7iには内圧Piが加わっている。従って、円柱部材7は、亀裂55が円柱部材7の内部に発生することにより外周面7oの形状が変化する。円柱部材7は、例えば、回転電機の回転子の端部に突出した回転子鉄心の保持環に焼き嵌めにより取り付けられる。
【0165】
以上の説明によれば、実施の形態1において、推定装置は、計測部3と、推定部1とを備える。計測部3は、構造物の表面にある観測面51を計測面とし、計測面の変化を計測面変形ベクトルとして計測する。推定部1は、構造物の形状がモデル化された形状モデルから生成した推定モデルの一部と前記計測面変形ベクトルとをパラメータとしたノルム最小化問題を解くことにより係数ベクトルを得る。係数ベクトルは、スパース解を構成する。推定部1は、係数ベクトルと、推定モデルの他の一部と、に基づいて、構造物の内面にあり、亀裂55の発生が想定される候補面53を亀裂発生面として亀裂発生面の変化を推定する。
【0166】
このような構成により、亀裂発生面の変位変化の分布を推定するときには計測面変形ベクトルの特徴量が係数ベクトルとして抽出されている。この係数ベクトルはスパース解を構成する。この結果、この係数ベクトルは少数の非零要素となる。従って、解の一意性、解の存在性、及び解の安定性が満たされるため、構造物内部における亀裂55を精度よく推定することができる。
【0167】
また、推定部1は、モデル生成部11と、類似ベクトル抽出部1221と、特徴抽出部1222と、亀裂解析部1223とを備える。
【0168】
モデル生成部11は、計測面と、亀裂発生面とによって生成された形状モデルに対して、予め設定された境界条件に基づいた構造解析を行う。モデル生成部11は、構造解析によって、計測面の変化を推定した複数の計測面推定変化ベクトルを生成する。モデル生成部11は、構造解析によって、亀裂発生面の変化として亀裂発生面の変位変化を推定した複数の亀裂発生面推定変化ベクトルを生成する。モデル生成部11は、計測面推定変化ベクトルと、亀裂発生面推定変化ベクトルとからなる推定モデルを生成する。
【0169】
類似ベクトル抽出部1221は、計測面変形ベクトルとの類似度が予め設定された基準類似度よりも高い計測面推定変化ベクトルを計測面類似変化ベクトルとする。類似ベクトル抽出部1221は、計測面類似変化ベクトルに対応する亀裂発生面推定変化ベクトルを亀裂発生面類似変化ベクトルとする。類似ベクトル抽出部1221は、推定モデルの一部としての計測面類似変化ベクトルと推定モデルの他の一部としての亀裂発生面類似変化ベクトルとを抽出する。
【0170】
特徴抽出部1222は、計測面変形ベクトルと、計測面類似変化ベクトルと、に基づいて、ノルム最小化問題としてL1ノルム最小化問題を解くことにより係数ベクトルを抽出する。
【0171】
亀裂解析部1223は、係数ベクトルと、亀裂発生面類似変化ベクトルと、に基づいて、亀裂発生面の変位変化の分布変化を推定する。
【0172】
このような構成により、計測面推定変化ベクトルのうち、類似度の高いものを計測面類似変化ベクトルとして用いるため、学習データを選別した上で推定処理を実行することができる。従って、亀裂発生面の変位変化の分布の推定結果が高精度になる。
【0173】
また、類似ベクトル抽出部1221は、類似度としてcos類似度を用いる。
【0174】
このため、類似度の演算時間を短縮することができる。
【0175】
また、モデル生成部11は、亀裂発生面を複数の要素Aに分割し、各要素Aを構成する複数の節点を亀裂55とし、各節点の変位変化を各亀裂発生面推定変化ベクトルとして推定する。
【0176】
このような構成により、学習データが限定されるため、推定モデルの生成時間を短縮することができる。
【0177】
また、モデル生成部11は、形状モデルを円筒座標系のモデルとしてモデル化する。
【0178】
このような構成により、構造物が円柱形状であっても、構造物内部における亀裂55を精度よく推定することができる。
【0179】
実施の形態2.
実施の形態2において、実施の形態1と同一又は同等の構成及び機能についての説明は省略される。実施の形態2における亀裂55として特定される節点は、実施の形態1における亀裂55として特定される節点と異なる。実施の形態2における他の構成は、実施の形態1の構成と同様である。つまり、実施の形態2における他の構成は、実施の形態1における構成と同一又は同等の構成及び機能である。従って、実施の形態2における他の構成には、実施の形態1における構成と同一符号が付されている。
【0180】
図19は、実施の形態2における学習データ作成処理を説明するフローチャートである。ステップS101の処理~ステップS115の処理、ステップS117の処理及びステップS118の処理は、図14のステップS31の処理~ステップS45の処理、ステップS47の処理及びステップS48の処理と同様の処理である。従って、それらの説明は省略されている。ここでは、ステップS116の処理が実施の形態1と異なる処理である。ステップS116において、推定部1は、境界条件付与処理を実行する。境界条件付与処理の詳細は、図25に記載されている。
【0181】
図20は、図19のフローチャートの続きの処理を説明するフローチャートである。ステップS119の処理~ステップS127の処理は、ステップS124の処理の次に実行される処理を除き、図15のステップS49の処理~ステップS57の処理と同様の処理である。従って、それらの説明は省略されている。推定部1によってステップS124の処理が実行された後、ステップS124の処理は、ステップS116の処理に戻る。
【0182】
図21は、図19の境界条件付与処理時に決定される亀裂発生面の辺Cの一例を示す図である。
【0183】
図22は、図19の境界条件付与処理時に決定される亀裂発生面において亀裂55として特定される節点の第1の例を示す図である。図22においては、辺C上の(0,0)位置にある節点が亀裂55として特定されている。これにより、(0,0)位置に亀裂55が設定される。このような境界条件により構造解析を行うことにより、計測面推定変化ベクトルが算出される。
【0184】
図23は、図19の境界条件付与処理時に決定される亀裂発生面において亀裂55として特定される節点の第2の例を示す図である。図23においては、(3,2)位置にある節点が亀裂55として特定されている。この場合、亀裂55は、辺C以外にある。従って、節点から辺Cまでの垂線に含まれる節点全てが亀裂55として決定される。これにより、(3,2)位置と、(3,1)位置と、(3,0)位置とに亀裂55が設定される。このような境界条件により構造解析を行うことにより、計測面推定変化ベクトルが算出される。
【0185】
図24は、図19の境界条件付与処理時に決定される亀裂発生面において亀裂55として特定される節点の第3の例を示す図である。図24においては、(n-2,4)位置にある節点が亀裂55として特定されている。この場合、亀裂55は、辺C以外にある。従って、節点から辺Cまでの垂線に含まれる節点全てが亀裂55として決定される。これにより、(n-2,4)位置と、(n-2,3)位置と、(n-2,2)位置と、(n-2,1)位置と、(n-2,0)位置とに亀裂55が設定される。このような境界条件により構造解析を行うことにより、計測面推定変化ベクトルが算出される。
【0186】
図25は、図19の境界条件付与処理を説明するフローチャートである。
【0187】
ステップS131において、推定部1は、亀裂発生面の辺Cを決定する。次に、ステップS131の処理は、ステップS132の処理に進む。
【0188】
ステップS132において、推定部1は、亀裂発生面の辺Cに接する節点を決定する。次に、ステップS132の処理は、ステップS133の処理に進む。
【0189】
ステップS133において、推定部1は、決定した節点を起点とした辺Cの垂線上に含ませる節点を特定する。次に、ステップS133の処理は、ステップS134の処理に進む。
【0190】
ステップS134において、推定部1は、特定した節点を亀裂55とする境界条件を構造解析モデルに付与する。次に、ステップS134の処理は、境界条件付与処理を終了する。
【0191】
以上の説明によれば、実施の形態2において、モデル生成部11は、各要素Aのうち亀裂発生面の一部の領域において連続して隣り合う複数の要素Aを構成する複数の節点の変位変化に絞り込む。
【0192】
このような構成により、亀裂55として特定される節点を絞り込むことにより、学習データを制限することができる。従って、過学習による亀裂発生面の変化の推定精度の低下を抑制することができる。
【0193】
実施の形態3.
実施の形態3において、実施の形態1及び実施の形態2と同一又は同等の構成及び機能についての説明は省略される。実施の形態3における計測面行列Dismeasure及び計測面行列Ameasureは、実施の形態1及び実施の形態2における計測面行列Emeasureと異なる。実施の形態3における他の構成は、実施の形態1及び実施の形態2の構成と同様である。つまり、実施の形態3における他の構成は、実施の形態1及び実施の形態2における構成と同一又は同等の構成及び機能である。従って、実施の形態3における他の構成には、実施の形態1及び実施の形態2における構成と同一符号が付されている。
【0194】
図26は、実施の形態3において候補面53における亀裂55の位置毎の観測面51における各節点の変位変化を表す変位変化のベクトルを示す図である。図26に示すように、Dis(-,-)の列ベクトルに含まれる各節点の変位データは、各節点に想定される亀裂55を移動させる順番に並べられている。d(i,j)は、図7の観測面51における節点が(i,j)位置にある節点の変位変化を表す。さらに、この列ベクトルに構造解析時の亀裂55の位置が付与され、この列ベクトルに含まれる各節点の変位データに構造解析時の亀裂55の位置が付与される。
【0195】
図27は、図26の複数の変位変化のベクトルから構成される計測面行列Dismeasureを示す図である。図26の複数の変位変化のベクトルのそれぞれは、列ベクトルから構成されている。これらの各列ベクトルを各節点に想定される亀裂55を移動させる順番に並べたものが図27の計測面行列Dismeasureとなる。計測面行列Dismeasureは、次の式(10)により表される。
【数10】
【0196】
また、観測面51における各節点の変位変化を測定する場合、計測部3は、少なくとも変位センサから構成されている。変位センサは、レーザー変位センサ、渦電流損式変位センサ、静電容量式変位センサ、接触式変位センサ、ワイヤ式変位センサ、レーザーマイクロメータ等から構成されている。
【0197】
また、変位計測方法としてスペックル干渉法、モアレ干渉法、デジタル画像相関法等の光学計測で構成されてもよい。
【0198】
図28は、実施の形態3において候補面53における亀裂55の位置毎の観測面51における各節点の角度を表す角度変化のベクトルを示す図である。図28に示すように、A(-,-)の列ベクトルに含まれる各節点の角度データは、各節点に想定される亀裂55を移動させる順番に並べられている。A(i,j)は、図7の観測面51における節点が(i,j)位置にある節点の角度変化を表す。さらに、この列ベクトルに構造解析時の亀裂55の位置が付与され、この列ベクトルに含まれる各節点の角度データに構造解析時の亀裂55の位置が付与される。
【0199】
図29は、図28の複数の角度変化のベクトルから構成される計測面行列Ameasureを示す図である。図28の複数の角度変化のベクトルのそれぞれは、列ベクトルから構成されている。これらの各列ベクトルを各節点に想定される亀裂55を移動させる順番に並べたものが図29の計測面行列Ameasureとなる。計測面行列Ameasureは、次の式(11)により表される。
【数11】
【0200】
また、観測面51における各節点の角度を測定する場合、計測部3は、少なくとも傾斜センサから構成されている。即ち、傾斜センサにより観測面51における各節点の傾斜角度が測定される。また、光テコの原理を用いて観測面51における節点の角度を計測しても良い。
【0201】
以上の説明によれば、実施の形態3において、計測部3は、計測面の変化として、計測面における変位変化、ひずみ変化、及び角度変化の少なくとも1つを計測する。
【0202】
このような構成により、構造物における計測面の変化をひずみ変化、変位変化及び角度変化の少なくとも1つを用いることができるので、計測方法の種類を増やすことができる。
【0203】
また、構造物における観測面51の変化としてひずみ変化ではなく変位変化又は角度変化を用いることにより、ひずみ計測よりも短時間且つ高精度に構造物における観測面51の変化を計測することができる。
【0204】
実施の形態4.
実施の形態4において、実施の形態1~実施の形態3と同一又は同等の構成及び機能についての説明は省略される。実施の形態4における亀裂面行列Zcrack_diffは、実施の形態1~実施の形態3における亀裂面行列Δcrack_diffと異なる。実施の形態4における他の構成は、実施の形態1~実施の形態3の構成と同様である。つまり、実施の形態4における他の構成は、実施の形態1~実施の形態3における構成と同一又は同等の構成及び機能である。従って、実施の形態4における他の構成には、実施の形態1~実施の形態3における構成と同一符号が付されている。
【0205】
図30は、実施の形態4における候補面53における亀裂55の位置毎の各節点の荷重を表す荷重変化のベクトルを示す図である。図30に示すように、Z(-,-)の列ベクトルに含まれる各節点の荷重データは、各節点に想定される亀裂55を移動させる順番に並べられている。ζ(i,j)は、図5の候補面53における節点が(i,j)位置にある節点の荷重を表す。さらに、この列ベクトルに構造解析時の亀裂55の位置が付与され、この列ベクトルに含まれる各節点の荷重データに構造解析時の亀裂55の位置が付与される。
【0206】
図31は、図30の複数の荷重変化のベクトルから構成される亀裂面行列Zcrack_diffを示す図である。図30の複数の荷重変化のベクトルのそれぞれは、列ベクトルから構成されている。これらの各列ベクトルを各節点に想定される亀裂55を移動させる順番に並べたものが図31の亀裂面行列Zcrack_diffとなる。亀裂面行列Zcrack_diffは、次の式(12)により表される。
【数12】
【0207】
具体的には、亀裂55がある位置の節点の力は0となり、亀裂55がない位置の節点の力は0以外となる。即ち、亀裂55がある位置以外の節点には力が発生するため、節点の荷重データを用いても構造物内部における亀裂55を精度よく推定することができる。
【0208】
以上の説明によれば、実施の形態4において、モデル生成部11は、亀裂発生面の変化として亀裂発生面の荷重変化を推定する。
【0209】
このような構成により、亀裂面行列Zcrack_diffに荷重変化の情報を含ませることができるので、さまざまな側面から亀裂55を精度よく推定することができる。
【0210】
実施の形態5.
実施の形態5において、実施の形態1~実施の形態4と同一又は同等の構成及び機能についての説明は省略される。実施の形態5においては点検のために構造物に荷重を加える構成が、実施の形態1~実施の形態4における構成と異なる。実施の形態5における他の構成は、実施の形態1~実施の形態4の構成と同様である。つまり、実施の形態5における他の構成は、実施の形態1~実施の形態4における構成と同一又は同等の構成及び機能である。従って、実施の形態5における他の構成には、実施の形態1~実施の形態4における構成と同一符号が付されている。
【0211】
図32は、実施の形態5における推定装置の構成例を示すブロック図である。図32に示すように、形状モデル生成部111は、荷重設定部1111を備えている。データ取得部121は、荷重指示部1211を備えている。荷重設定部1111は、荷重指示部1211に、構造物に加えるべき荷重の大きさと、構造物に荷重を加える位置とを指示する。荷重指示部1211は、荷重設定部1111からの指示に基づいて、構造物に荷重を加える。これにより、計測部3は、構造物に荷重が加わった状態で観測面51の表面の変化を計測することができる。
【0212】
図33は、図32の推定装置により実行される処理を説明するフローチャートである。ステップS141の処理~ステップS144の処理は、学習フェーズにおいて実行される処理である。ステップS151の処理~ステップS155の処理は、逆解析フェーズにおいて実行される処理である。
【0213】
ステップS141において、推定部1は、検査対象を決定する。ステップS141の処理は、図13のステップS11の処理~ステップS14の処理に該当する処理である。次に、ステップS141の処理は、ステップS142の処理に進む。
【0214】
ステップS142において、推定部1は、点検荷重を設定する。ステップS142の処理は、図13のステップS11の処理~ステップS26の処理には存在しない処理である。次に、ステップS142の処理は、ステップS143の処理に進む。
【0215】
ステップS143において、推定部1は、形状モデルを生成する。ステップS143の処理は、図13のステップS15の処理に該当する。次に、ステップS143の処理は、ステップS144の処理に進む。
【0216】
ステップS144において、推定部1は、推定モデルを生成する。ステップS144の処理は、図13のステップS16の処理~ステップS23の処理に該当する処理である。次に、ステップS144の処理は、学習フェーズを終了する。
【0217】
ステップS151において、推定部1は、学習フェーズにおいて設定した点検荷重を指示する。ステップS151の処理は、図13のステップS11の処理~ステップS26の処理には存在しない処理である。次に、ステップS151の処理は、ステップS152の処理に進む。
【0218】
ステップS152において、推定部1は、計測データを取得する。ステップS152の処理は、図13のステップS24の処理に該当する処理である。次に、ステップS152の処理は、ステップS153の処理に進む。
【0219】
ステップS153において、推定部1は、学習フェーズにおいて生成した推定モデルの情報を読み込む。ステップS153の処理は、図16のステップS71の処理に該当する処理である。次に、ステップS153の処理は、ステップS154の処理に進む。
【0220】
ステップS154において、推定部1は、亀裂状態を推定する。ステップS154の処理は、図16のステップS72の処理~ステップS83の処理に該当する処理である。次に、ステップS154の処理は、ステップS155の処理に進む。
【0221】
即ち、ステップS153の処理及びステップS154の処理は、図13のステップS25の処理に該当する処理である。
【0222】
ステップS155において、推定部1は、出力処理を実行する。ステップS155の処理は、図13のステップS26の処理に該当する処理である。次に、ステップS155の処理は、亀裂状態解析フェーズを終了する。
【0223】
以上の説明によれば、実施の形態5において、計測部3は、形状モデルを生成する前段階として、構造物に荷重が加わった状態で計測する。
【0224】
このような構成により、構造物の検査時に構造物に荷重を加えることができるため、予め荷重が加えられていない構造物の検査も可能となる。従って、検査可能な構造物を増やすことができる。
【0225】
実施の形態6.
実施の形態6において、実施の形態1~実施の形態5と同一又は同等の構成及び機能についての説明は省略される。実施の形態6においては出力処理の詳細が記載されている点が、実施の形態1~実施の形態5における構成と異なる。実施の形態6における他の構成は、実施の形態1~実施の形態5の構成と同様である。つまり、実施の形態6における他の構成は、実施の形態1~実施の形態5における構成と同一又は同等の構成及び機能である。従って、実施の形態6における他の構成には、実施の形態1~実施の形態5における構成と同一符号が付されている。
【0226】
解析結果出力部14は、亀裂55の位置の情報、亀裂55の大きさの情報、構造物に加わる荷重の情報、構造物における物性値、構造物が使用不可となる亀裂55の大きさの情報及び構造物が使用不可となる亀裂55の位置の情報を取得する。ここで、物性値とは、例えば、平面ひずみ破壊靭性値である。
【0227】
亀裂55の位置の情報、亀裂55の大きさの情報及び構造物に加わる荷重の情報は、亀裂状態解析部12から取得可能である。構造物における物性値、構造物が使用不可となる亀裂55の大きさの情報及び構造物が使用不可となる亀裂55の位置の情報は、記憶部13から取得可能である。構造物が使用不可となる亀裂55の大きさの情報及び構造物が使用不可となる亀裂55の位置の情報は、限界値として用いられる。
【0228】
ここで、記憶部13に記憶されている各種情報は、製品設計段階時には確定されている情報が記憶されている。
【0229】
解析結果出力部14は、これらの情報に基づいて求めた亀裂55の進展量と、限界値と、に基づいて、残存使用期間を決定する。
【0230】
残存使用期間は、亀裂55の位置、亀裂55の大きさ、構造物における物性値及び構造物に加わる荷重と、破壊力学の知見による構造物の使用条件と、に基づいて決定される。また、残存使用期間は、時系列における亀裂55の大きさ及び位置の変化から推定されてもよい。
【0231】
図34は、実施の形態6における図13及び図33の出力処理を説明するフローチャートである。
【0232】
ステップS161において、推定部1は、亀裂55の位置及び大きさの情報を取得する。次に、ステップS161の処理は、ステップS162の処理に進む。
【0233】
ステップS162において、推定部1は、構造物に加える荷重の情報を取得する。次に、ステップS162の処理は、ステップS163の処理に進む。
【0234】
ステップS163において、推定部1は、構造物における物性値の情報を取得する。次に、ステップS163の処理は、ステップS164の処理に進む。
【0235】
ステップS164において、推定部1は、構造物が使用不可となる亀裂55の大きさ及び位置の情報を限界値として取得する。次に、ステップS164の処理は、ステップS165の処理に進む。
【0236】
ステップS165において、推定部1は、亀裂55の位置及び大きさ、構造物に加える荷重及び構造物における物性値に基づいて、亀裂発生面における亀裂55の進展量を求める。次に、ステップS165の処理は、ステップS166の処理に進む。
【0237】
ステップS166において、推定部1は、亀裂55の進展量と限界値とに基づいて、残存使用期間を決定する。次に、ステップS166の処理は、ステップS167の処理に進む。
ステップS167において、推定部1は、決定した残存使用期間の情報を出力する。次に、ステップS167の処理は、出力処理を終了する。
【0238】
以上の説明によれば、実施の形態6において、まず、構造物に加える荷重及び構造物における物性値に基づいて亀裂発生面における亀裂55の進展量が求められる。次に、亀裂55の進展量と構造物における亀裂55の大きさ及び位置とに基づいて構造物の残存使用期間が決定される。
【0239】
このような構成により、推定した亀裂55の位置及び大きさの情報に基づいて、残存使用期間が出力されるため、構造物の運用計画をより具体的に策定することができる。例えば、構造物を補修すべき時期と、構造物を更新すべき時期とが事前に明確になるため、構造物の補修及び更新を計画的に行うことが可能となる。
【0240】
実施の形態7.
実施の形態7において、実施の形態1~実施の形態6と同一又は同等の構成及び機能についての説明は省略される。実施の形態7における出力処理は、実施の形態1~実施の形態6における構成と異なる。実施の形態7における他の構成は、実施の形態1~実施の形態6の構成と同様である。つまり、実施の形態7における他の構成は、実施の形態1~実施の形態6における構成と同一又は同等の構成及び機能である。従って、実施の形態7における他の構成には、実施の形態1~実施の形態6における構成と同一符号が付されている。
【0241】
解析結果出力部14は、亀裂解析部1223により推定された亀裂55の位置及び大きさの情報を取得する。解析結果出力部14は、記憶部13に限界値として記憶されている構造物が使用不可となる亀裂55の位置及び大きさの情報を取得する。解析結果出力部14は、推定された亀裂55の位置及び大きさが限界値を超える場合、構造物の使用停止を促すアラームを発生する。また、解析結果出力部14は、残存使用期間の情報を取得できる場合、残存使用期間を報知する。
【0242】
アラーム及び報知は、例えば、音声、文字、点滅、点灯等を用いて実施される。解析結果出力部14は、スピーカー、液晶ディスプレイ及び発光デバイスのうち、少なくとも1つを備えている。
【0243】
例えば、解析結果出力部14がスピーカーを備えていれば、音声によるアラーム及び報知が可能である。また、解析結果出力部14が液晶ディスプレイを備えていれば、文字によるアラーム及び報知が可能である。また、解析結果出力部14が発光デバイスを備えていれば、点滅及び点灯によるアラーム及び報知が可能である。
【0244】
図35は、実施の形態7における図13及び図33の出力処理を説明するフローチャートである。
【0245】
ステップS181において、推定部1は、亀裂55の位置及び大きさの情報を取得する。次に、ステップS181の処理は、ステップS182の処理に進む。
【0246】
ステップS182において、推定部1は、亀裂55の位置及び大きさを報知する。次に、ステップS182の処理は、ステップS183の処理に進む。
【0247】
ステップS183において、推定部1は、構造物に加える荷重の情報を取得する。次に、ステップS183の処理は、ステップS184の処理に進む。
【0248】
ステップS184において、推定部1は、構造物における物性値の情報を取得する。次に、ステップS184の処理は、ステップS185の処理に進む。
【0249】
ステップS185において、推定部1は、構造物が使用不可となる亀裂55の位置及び大きさの情報を限界値として取得する。次に、ステップS185の処理は、ステップS186の処理に進む。
【0250】
ステップS186において、推定部1は、亀裂55の位置及び大きさが限界値を超えるか否かを判定する。推定部1によって亀裂55の位置及び大きさが限界値を超えると判定された場合、ステップS186の処理は、ステップS187の処理に進む。
【0251】
ステップS187において、推定部1は、構造物の使用停止を促すアラームを発生する。次に、ステップS187の処理は、出力処理を終了する。
【0252】
一方、ステップS186において、推定部1によって亀裂55の位置及び大きさが限界値を超えていないと判定された場合、ステップS186の処理は、ステップS188の処理に進む。ここで、推定部1によって亀裂55の位置及び大きさが限界値を超えていないと判定された場合は、推定部1によって亀裂55の位置及び大きさが限界値以下であると判定された場合に相当する。
【0253】
ステップS188において、推定部1は、亀裂55が有る旨を報知する。次に、ステップS188の処理は、ステップS189の処理に進む。
【0254】
ステップS189において、推定部1は、残存使用期間の情報を取得可能であるか否かを判定する。推定部1によって残存使用期間の情報を取得可能であると判定される場合、ステップS189の処理は、ステップS190の処理に進む。
【0255】
ステップS190において、推定部1は、残存使用期間の情報を取得する。次に、ステップS190の処理は、ステップS191の処理に進む。
【0256】
ステップS191において、推定部1は、残存使用期間を報知する。次に、ステップS191の処理は、出力処理を終了する。
【0257】
一方、ステップS189において、推定部1によって残存使用期間の情報を取得可能でないと判定される場合、ステップS189の処理は、出力処理を終了する。
【0258】
以上の説明によれば、実施の形態7において、亀裂55の進展量と構造物における亀裂55の大きさ及び位置とに基づいて構造物の使用停止を促す報知が行われる。
【0259】
このような構成により、構造物の使用停止を構造物の運用側に迅速に判断させることができる。
【0260】
実施の形態8.
実施の形態8において、実施の形態1~実施の形態7と同一又は同等の構成及び機能についての説明は省略される。実施の形態8において決定される候補面53は、実施の形態1~実施の形態7における構成と異なる。実施の形態8における他の構成は、実施の形態1~実施の形態7の構成と同様である。つまり、実施の形態8における他の構成は、実施の形態1~実施の形態7における構成と同一又は同等の構成及び機能である。従って、実施の形態8における他の構成には、実施の形態1~実施の形態7における構成と同一符号が付されている。
【0261】
図36は、実施の形態8における候補面53を示す図である。図36に示すように、応力が最大となる点が最大応力σmaxとして計測又は構造解析により求まっている場合、モデル生成部11は、応力が最大となる点を亀裂55の発生箇所として特定する。モデル生成部11は、特定した発生箇所における応力に垂直であって、特定した発生箇所と相対する面を貫通する面を候補面53として決定する。
【0262】
図37は、図36の候補面53を決定する処理を説明するフローチャートである。
【0263】
ステップS201において、推定部1は、構造物に発生する応力の分布が求まっているか否かを判定する。推定部1によって構造物に発生する応力の分布が求まっていないと判定される場合、ステップS201の処理は、繰り返される。
【0264】
一方、ステップS201において、推定部1によって構造物に発生する応力の分布が求まっていると判定される場合、ステップS201の処理は、ステップS202の処理に進む。
【0265】
ステップS202において、推定部1は、応力が最大となる点があるか否かを判定する。推定部1によって応力が最大となる点がないと判定される場合、ステップS202の処理は、繰り返される。
【0266】
一方、ステップS202において、推定部1によって応力が最大となる点があると判定される場合、ステップS202の処理は、ステップS203の処理に進む。
【0267】
ステップS203において、推定部1は、応力が最大となる点を亀裂55の発生箇所として特定する。次に、ステップS203の処理は、ステップS204の処理に進む。
【0268】
ステップS204において、推定部1は、特定した亀裂55の発生箇所における応力に垂直であって、亀裂55の発生箇所と相対する面を貫通する面を候補面53として決定する。次に、ステップS204の処理は、処理を終了する。
【0269】
以上の説明によれば、実施の形態8において、境界条件に応じて生じる前記亀裂発生面における応力が最大となる点が亀裂55の発生箇所として特定される。
【0270】
このような構成により、構造物の内部において亀裂55の発生させやすい面を候補面53として決定することができる。従って、亀裂55の推定精度をより向上させることができる。
【0271】
また、各実施の形態について、推定装置を実行するための処理回路が備えられている。処理回路は、専用のハードウェアであっても、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSPともいう)であってもよい。
【0272】
図38は、ハードウェア構成例を説明する図である。図38においては、処理回路401がバス402に接続されている。処理回路401が専用のハードウェアである場合、処理回路401は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA又はこれらを組み合わせたものが該当する。推定装置の各部の機能のそれぞれは、処理回路401で実現されてもよいし、各部の機能はまとめて処理回路401で実現されてもよい。
【0273】
図39は、他のハードウェア構成例を説明する図である。図39においては、プロセッサ403及びメモリ404がバス402に接続されている。処理回路がCPUの場合、推定装置の各部の機能は、ソフトウェア、ファームウェア又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア又はファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ404に格納される。処理回路は、メモリ404に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、推定装置は、処理回路により実行されるときに、ステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ404を備えている。また、これらのプログラムは、実行する手順又は方法をコンピュータに実行させるものであるといえる。ここで、メモリ404とは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性若しくは揮発性の半導体メモリ又は、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等が該当する。
【0274】
なお、推定装置の各部の機能は、一部が専用のハードウェアで実現され、他の一部がソフトウェア又はファームウェアで実現されるようにしてもよい。例えば、専用のハードウェアとしての処理回路で各機能のうちモデル生成部11を実現させることができる。また、処理回路がメモリ404に格納されたプログラムを読み出して実行することによって各機能のうち亀裂解析部1223を実現させることが可能である。
【0275】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はこれらの組み合わせによって、上記の各機能を実現することができる。
【0276】
なお、実施の形態1~実施の形態8には、候補面53を格子状に分割したものを要素Aとし、観測面51を格子状に分割したものを要素Bとする一例が記載されているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、候補面53を台形形状に分割されたものが要素Aとして決定され、観測面51を台形形状に分割されたものが要素Bとして決定されてもよい。
【0277】
また、実施の形態1には、ひずみゲージを計測部3として用いる一例が記載されているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、デジタルカメラ等の光学機器と、光学機器により取得された画像情報を解析するソフトウェアがインストールされたデバイスとが計測部3として用いられてもよい。この場合、このデバイスによってデジタル画像相関法による画像解析アルゴリズムが実行されることにより、構造物の表面のひずみが非接触により計測される。
【0278】
また、実施の形態8においては、計測又は構造解析の結果、最大応力σmaxとが定まっている一例が記載されているが、最大応力σmaxの発生箇所は、境界条件が設定された部位に発生しやすい。従って、最大応力σmaxの発生箇所が着目されることにより、境界条件の設定が見直されてもよい。
【符号の説明】
【0279】
1 推定部、11 モデル生成部、111 形状モデル生成部、1111 荷重設定部、112 推定モデル生成部、12 亀裂状態解析部、121 データ取得部、1211 荷重指示部、122 亀裂状態推定部、1221 類似ベクトル抽出部、1222 特徴抽出部、1223 亀裂解析部、13 記憶部、14 解析結果出力部、3 計測部、4 処理回路、402 バス、403 プロセッサ、404 メモリ、5 平板(構造物)、51 観測面、53 候補面、55 亀裂、7 円柱部材、7o 外周面、7i 内周面、A、B 要素、C 辺、Δcrack_diff,Zcrack_diff 亀裂面行列、Emeasure,Dismeasure,Ameasure 計測面行列。
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