(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物および空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20221216BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20221216BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/09
B60C1/00 A
B60C1/00 B
(21)【出願番号】P 2022172855
(22)【出願日】2022-10-28
【審査請求日】2022-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池内 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】箕内 則夫
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-149133(JP,A)
【文献】特開2019-77849(JP,A)
【文献】特開2021-107499(JP,A)
【文献】国際公開第2020/039788(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分および植物油を含有するタイヤ用ゴム組成物であって、
前記植物油は、含有するパルミチン酸とオレイン酸との質量比((パルミチン酸)/(オレイン酸))が0.65以上1.2以下である植物油であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記植物油がパーム油である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記植物油のヨウ素価が50以上75以下である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記植物油のオレイン酸含有量が40質量%以上53質量%以下である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物を加硫成形してなるゴム部材を備える空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物および空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題への対応として、タイヤ用ゴム組成物に関してもサステナブルな原材料の使用が望まれている。タイヤ用ゴム組成物の原料としてオイル成分があるが、従来から使用されてきた石油系オイルから植物油系オイルへの置き換えが検討されつつある。
【0003】
下記特許文献1では、2種以上のジエン系ゴムを含むゴム成分と、石油外資源由来のグリセロール脂肪酸トリエステルとを含み、ゴム成分が、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、ブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1種のジエン系ゴムを含み、グリセロール脂肪酸トリエステルは、オレイン酸の含有量が45質量%以上であるサイドウォールまたはベーストレッド用ゴム組成物が記載されている。
【0004】
下記特許文献2では、ジエン系ゴム100重量部に対し、無機充填剤5~150重量部、シランカップリング剤0~30重量部、およびヨウ素価が130以下である植物油脂5~100重量部を含有するゴム組成物が記載されている。
【0005】
下記特許文献3では、少なくともゴム組成物を含むタイヤトレッドであって、組成物が、少なくともジエンエラストマー、補強用無機充填剤、カップリング剤および可塑化剤を含み、ジエンエラストマーが30phrよりも多いブチルゴムを含み、かつ可塑化剤がグリセロールの不飽和(C12-C22)脂肪酸トリエステルを含むトレッドが記載されている。
【0006】
下記特許文献4では、(1)25phr以上、100phr以下の量のガラス転移温度Tgが-75℃~-40℃の一種または複数のジエンエラストマーと、(2)0phr以上、75phr以下の量のガラス転移温度Tgが-110℃~-75℃の一種または複数のジエンエラストマーと、(3)5~35phrの量の、上記ジエンエラストマーと混和性があり、ガラス転移温度Tgが10℃~150℃で、数平均分子量が400g/mol~2000g/molである少なくとも一種の炭化水素の可塑化用樹脂と、(4)5~35phrの量の、少なくとも一種のグリセロール脂肪酸トリエステルをこの脂肪酸によって形成される全体がオレイン酸を60質量%以上の比率で含む少なくとも一種の合成または天然の可塑化用化合物と、を含む(phr=エラストマー100重量部当りの重量部)ことを特徴とする、1997年のASTM規格D2240に準じて測定したショアーA硬度が45以上かつ57以下である、氷雪路面および雪面での走行に適し、しかも、耐摩耗性と湿った路面上でのグリップが改善されたタイヤ、特に乗用車用タイヤのトレッドの製造で使用可能な架橋されたゴム組成物が記載されている。
【0007】
下記特許文献5では、タイヤトレッドを構成するために使用できる架橋性または架橋ゴム組成物であって、組成物が、少なくとも、一種以上のジエンエラストマーと、グリセロールオレイン酸トリエステルを含む可塑剤とをベースとし、可塑剤が、少なくとも一種のグリセロール脂肪酸トリエステルを、該脂肪酸によって形成される凝集体がオレイン酸を60%以上の質量分率で含む様に含む、石油から抽出されたものではない一種以上の合成および/または天然化合物を45%~100%の質量分率で含み、かつパラフィン系、芳香族系またはナフテン系の石油から抽出された一種以上の可塑化用油を55%~0%の質量分率で含むゴム組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-131860号公報
【文献】特開2003-64222号公報
【文献】特表2007-510025号公報
【文献】特表2005-537369号公報
【文献】特表2004-519551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1~5に記載の技術では、特にゴムの破断強度が低下する傾向にあり、植物油を特にタイヤ用途に使用する場合に、さらなる改良の余地があった。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、破断強度に優れたタイヤ用加硫ゴムの原料となるタイヤ用ゴム組成物および該ゴム組成物の加硫ゴムを備える空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は下記の如き構成により解決し得る。すなわち本発明は、ゴム成分および植物油を含有するタイヤ用ゴム組成物であって、前記植物油は、含有するパルミチン酸とオレイン酸との質量比((パルミチン酸)/(オレイン酸))が0.65以上1.2以下である植物油であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物(1)に関する。
【0012】
上記タイヤ用ゴム組成物(1)において、前記植物油がパーム油であるタイヤ用ゴム組成物(2)が好ましい。
【0013】
上記タイヤ用ゴム組成物(1)または(2)において、前記植物油のヨウ素価が50以上75以下であるタイヤ用ゴム組成物(3)が好ましい。
【0014】
上記タイヤ用ゴム組成物(1)~(3)のいずれかにおいて、前記植物油のオレイン酸含有量が40質量%以上53質量%以下であるタイヤ用ゴム組成物(4)が好ましい。
【0015】
また本発明は、上記タイヤ用ゴム組成物(1)~(4)のいずれかを加硫成形してなるゴム部材を備える空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0016】
ゴム組成物中に配合される石油系オイルを植物油系オイルへ置き換えると、一般的に得られる加硫のゴム物性、特には破断強度が低下する傾向がある。本発明者らは、特に加硫ゴムの破断強度を向上すべく鋭意検討した結果、植物油の精製の過程で調整可能なパルミチン酸とオレイン酸との質量比((パルミチン酸)/(オレイン酸))に着目し、その最適範囲を検討した。その結果、含有するパルミチン酸とオレイン酸との質量比((パルミチン酸)/(オレイン酸))が0.65以上1.2以下である植物油は、タイヤ用ゴム組成物に配合した場合、破断強度に優れたタイヤ用加硫ゴムを製造できることを見出した。かかる効果が得られる理由は明らかではないが、パルミチン酸とオレイン酸との質量比((パルミチン酸)/(オレイン酸))が0.65以上1.2以下である植物油をタイヤ用ゴム組成物中に配合した場合、補強性充填剤の分散性が著しく向上し、その結果、タイヤ用加硫ゴムの破断強度が向上するものと推察可能である。
【0017】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物の加硫ゴムは、破断強度に優れるとともに、ゴム成分などの他の配合如何によっては、さらに耐スコーチ性や耐摩耗性にも優れる。このため、本発明に係るタイヤ用ゴム組成物の加硫ゴムは、空気入りタイヤのトレッド、特にはベーストレッド、およびサイドウォール用途に特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物の加硫ゴムは、含有するパルミチン酸とオレイン酸との質量比((パルミチン酸)/(オレイン酸))が0.65以上1.2以下である植物油を含有する。本発明では、該質量比を満たす植物油であれば特に限定なく使用可能であるが、精製の過程で融点分別によりパルミチン酸とオレイン酸との質量比を調製し易く、また得られるタイヤ用加硫ゴム破断強度が優れることから、パーム油が特に好ましい。
【0019】
本発明で使用する植物油、特にはパーム油のパルミチン酸とオレイン酸との質量比((パルミチン酸)/(オレイン酸))は0.65以上1.2以下となるように調整する。該質量比が0.65未満、あるいは1.2を超える場合、得られるタイヤ用加硫ゴムの破断強度が悪化する傾向がある。
【0020】
本発明で使用する植物油、特にパーム油は、ヨウ素価が50以上75以下であることが好ましい。植物油に含まれる二重結合は電子リッチな反応サイトとなり、植物油のヨウ素価は二重結合量と関係がある。植物油のヨウ素価が75を超えて高すぎると、タイヤ用ゴム組成物に配合した場合にスコーチタイムが短くなり、耐スコーチ性が悪化する傾向がある。一方、ヨウ素価が50未満で低すぎると、得られるタイヤ用加硫ゴムの軟化が小さくなり、植物油の可塑剤としての性能が劣り、タイヤ用ゴム組成物の加工性が悪化する傾向がある。
【0021】
本発明で使用する植物油、特にパーム油は、オレイン酸含有量が40質量%以上53質量%以下であることが好ましい。オレイン酸含有量が53質量%を超えて多くなると、植物油中の飽和脂肪酸の比率が下がり、その不飽和部分が反応し易いことに起因して、得られるタイヤ用加硫ゴムの架橋密度の低下を招き、ゴム強度および破断強度が低下する傾向がある。一方、オレイン酸含有量が40質量%未満で少なくなると、やはりタイヤ用加硫ゴムの架橋密度が低下し、著しく耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0022】
本発明で使用する植物油、特にはパーム油の配合量は、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、1~50質量部であることが好ましく、2~40質量部であることがより好ましい。
【0023】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物はゴム成分を含有する。ゴム成分としては、例えばジエン系ゴムが好ましい。ジエン系ゴムとしては、特に限定されるものでなく、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物は、補強性充填剤としてのカーボンブラックおよび/またはシリカ、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、ステアリン酸、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などを含有してもよい。
【0025】
補強性充填剤としては、カーボンブラックおよび/またはシリカを用いることが好ましい。すなわち、補強性充填剤は、カーボンブラック単独でも、シリカ単独でも、カーボンブラックとシリカとの併用でもよい。補強性充填剤の含有量は、特に限定されず、例えばゴム成分の全量を100質量部としたとき、10~100質量部であることが好ましく、より好ましくは20~90質量部である。
【0026】
カーボンブラックは、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。シリカとしては、通常のゴム補強に用いられる湿式シリカ、乾式シリカ、ゾル-ゲルシリカ、表面処理シリカなどが用いられる。なかでも、湿式シリカが好ましい。
【0027】
充填剤としてシリカを含有する場合、併せてシランカップリング剤を含有することも好ましい。シランカップリング剤としては、分子中に硫黄を含むものであれば特に限定されず、ゴム組成物においてシリカとともに配合される各種のシランカップリング剤を用いることができる。例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(例えば、デグサ社製「Si69」)、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(例えば、デグサ社製「Si75」)、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランが挙げられる。
【0028】
加硫剤としては、好適には硫黄が使用可能である。硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。本発明に係るタイヤ用ゴム組成物では、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、加硫剤の含有量は、0.5~3.5質量部であることが好ましい。
【0029】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0030】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0031】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分および植物油に加えて、補強用充填剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化亜鉛、老化防止剤、ステアリン酸、ワックスなどの軟化剤、加工助剤などを、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りすることにより得られる。
【0032】
また、上記各成分の配合方法は特に限定されず、加硫剤および加硫促進剤などの加硫系配合剤以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでもよい。
【0033】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物の加硫ゴムは、破断強度に優れるとともに、ゴム成分如何によっては、さらに耐スコーチ性や耐摩耗性にも優れる。このため、本発明に係るタイヤ用ゴム組成物の加硫ゴムは、トレッド用途、特にはベーストレッド用途、およびサイドウォール用途に特に有用である。
【実施例】
【0034】
以下に、この発明の実施例を記載してより具体的に説明する。
【0035】
(タイヤ用ゴム組成物の調製)
ゴム成分100質量部に対して、表1~4の配合処方に従い、実施例1~12および比較例1~6のゴム組成物を配合し、通常のバンバリーミキサーを用いて混練し、タイヤ用ゴム組成物を調整した。表1~4に記載の各配合剤を以下に示す。
【0036】
(ゴム成分)
・SBR1(ESBR(乳化重合SBR)):商品名「SBR1502」(ENEOSマテリアル社製)
・SBR2(SSBR(溶液重合SBR)):商品名「HPR350」(ENEOSマテリアル社製)
・BR1:商品名「BR150B」(UBEエラストマー社製)
・NR:商品名「RSS#3」
(補強用充填剤)
・カーボンブラック1(CB1)(HAF):商品名「N339シーストKH」(東海カーボン社製)
・カーボンブラック2(CB2)(HAF):商品名「シースト3」(東海カーボン社製)
・カーボンブラック3(CB3)(FEF):商品名「N550シーストSO」(東海カーボン社製)
・シリカ:商品名「ニップシールAQ」(東ソー社製)
(植物油)
・植物油1(大豆白絞油):[ヨウ素価128、オレイン酸量23、パルミチン酸とオレイン酸との質量比((パルミチン酸)/(オレイン酸))=0.43](日清オイリオ社製)
・植物油2(パーム油):商品名「PL65」[ヨウ素価65、オレイン酸量48、パルミチン酸とオレイン酸との質量比((パルミチン酸)/(オレイン酸))=0.73](日清オイリオ社製)
・植物油3(パーム油):商品名「精製パーム油(S)」(日清オイリオ社製)を原料として、融点分別によりパルミチン酸とオレイン酸との質量比を調製したもの[ヨウ素価53、オレイン酸量40、パルミチン酸とオレイン酸との質量比((パルミチン酸)/(オレイン酸))=1.10]
・植物油4(パーム油):商品名「精製パーム油(S)」(日清オイリオ社製)を原料として、融点分別によりパルミチン酸とオレイン酸との質量比を調製したもの[ヨウ素価75、オレイン酸量52、パルミチン酸とオレイン酸との質量比((パルミチン酸)/(オレイン酸))=0.65]
(その他の成分)
・シランカップリング剤:商品名「Si69」(デグサ社製)
・パラフィンオイル:商品名「プロセスP200」(JOMO社製)
・ステアリン酸:商品名「ルナックS-20」(花王社製)
・酸化亜鉛:商品名「酸化亜鉛2種」(三井金属鉱業社製)
・ワックス:商品名「OZOACE0355」(日本精鑞社製)
・老化防止剤1:商品名「ノクラック6C」(大内新興化学工業社製)
・老化防止剤2:商品名「アンテージRD」(川口化学工業社製)
・炭化水素樹脂1:商品名「ペトロタック90」(東ソー社製)
・加硫促進剤1:商品名「ソクシノールCZ」(住友化学社製)
・加硫促進剤2:商品名「ノクセラーD」(大内新興化学工業社製)
・加硫促進剤3:商品名「サンセラーNS-G」(三新化学工業社製)
・硫黄:商品名「粉末硫黄」(鶴見化学工業社製)
【0037】
上記で得られた実施例1~12および比較例1~6のゴム組成物の未加硫試料を作製後、以下の条件により加硫ゴムの破断強度、耐スコーチ性および耐摩耗性を評価した。
【0038】
(加硫ゴムの破断強度)
得られた各未加硫試料を160℃×30分の条件で加硫し、JIS K6251に準じて、引張試験(ダンベル状3号形)を実施して引っ張り強さを測定し、実施例1~3および比較例2に関しては比較例1の値を100とした指数で表示し、実施例4~6および比較例4に関しては比較例3の値を100とした指数で表示し、実施例7~9に関しては比較例5の値を100とした指数で表示し、実施例10~12に関しては比較例6の値を100とした指数で表示した。数値が大きいほど、破断強度が大きく、補強性に優れることを示す。
【0039】
(加硫ゴムの耐スコーチ性)
JIS K6300-1に準拠したムーニースコーチ試験機(L型ロータ)を用い、余熱1分、温度125℃で測定時のt5値を求め、実施例1~3および比較例2に関しては比較例1の値を100とした指数で表示し、実施例4~6および比較例4に関しては比較例3の値を100とした指数で表示し、実施例7~9に関しては比較例5の値を100とした指数で表示し、実施例10~12に関しては比較例6の値を100とした指数で表示した。数値が大きいほど、焼けが生じにくく、耐スコーチ性に優れることを示す。
【0040】
(加硫ゴムの耐摩耗性)
得られた各未加硫試料を160℃×30分の条件で加硫し、JIS K6264に準じて、ランボーン摩耗試験機を用いて、荷重3kg、スリップ率20%、温度23℃で摩耗量を測定し、実施例1~3および比較例2に関しては比較例1の値の逆数を100とした指数で表示し、実施例4~6および比較例4に関しては比較例3の値の逆数を100とした指数で表示し、実施例7~9に関しては比較例5の値の逆数を100とした指数で表示し、実施例10~12に関しては比較例6の値の逆数を100とした指数で表示した。数値が大きいほど耐摩耗性に優れることを示す。
【0041】
【0042】
表1の結果から、実施例1~3に係るタイヤ用ゴム組成物を原料として得られたタイヤ用加硫ゴムは、特に破断強度が大きく、補強性に優れることがわかる。
【0043】
【0044】
表2の結果から、実施例4~6に係るタイヤ用ゴム組成物を原料として得られたタイヤ用加硫ゴムは、特に破断強度が大きく、補強性に優れることがわかる。加えて、実施例4~6に係るタイヤ用ゴム組成物を原料として得られたタイヤ用加硫ゴムは、耐スコーチ性にも優れることがわかる。
【0045】
【0046】
表3の結果から、実施例7~9に係るタイヤ用ゴム組成物を原料として得られたタイヤ用加硫ゴムは、特に破断強度が大きく、補強性に優れることがわかる。加えて、実施例7~9に係るタイヤ用ゴム組成物を原料として得られたタイヤ用加硫ゴムは、耐スコーチ性および耐摩耗性にも優れることがわかる。
【0047】
【0048】
表4の結果から、実施例10~12に係るタイヤ用ゴム組成物を原料として得られたタイヤ用加硫ゴムは、特に破断強度が大きく、補強性に優れることがわかる。加えて、実施例10~12に係るタイヤ用ゴム組成物を原料として得られたタイヤ用加硫ゴムは、耐摩耗性にも優れることがわかる。なお、実施例10~12に係るタイヤ用ゴム組成物を原料として得られたタイヤ用加硫ゴムは、耐スコーチ性が幾分悪化するが、実用的に問題ないレベルであった。
【要約】
【課題】破断強度に優れたタイヤ用加硫ゴムの原料となるタイヤ用ゴム組成物および該ゴム組成物の加硫ゴムを備える空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】ゴム成分および植物油を含有するタイヤ用ゴム組成物であって、該植物油は、含有するパルミチン酸とオレイン酸との質量比((パルミチン酸)/(オレイン酸))が0.65以上1.2以下である植物油であるタイヤ用ゴム組成物。該植物油はパーム油であることが好ましく、該植物油のヨウ素価は50以上75以下であることが好ましく、該植物油のオレイン酸含有量は40質量%以上53質量%以下であることが好ましい。
【選択図】 なし