(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼およびその製錬方法
(51)【国際特許分類】
C22B 9/18 20060101AFI20221216BHJP
C21C 5/28 20060101ALI20221216BHJP
C21C 7/04 20060101ALI20221216BHJP
C21C 7/064 20060101ALI20221216BHJP
C21C 7/076 20060101ALI20221216BHJP
C21C 7/10 20060101ALI20221216BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C22B9/18 F
C21C5/28 Z
C21C7/04 A
C21C7/064
C21C7/076 A
C21C7/10 Z
C22C38/00 301Z
(21)【出願番号】P 2022542417
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(86)【国際出願番号】 CN2021132372
(87)【国際公開番号】W WO2022083787
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】202011632275.9
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522275980
【氏名又は名称】大冶特殊鋼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DAYE SPECIAL STEEL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.316 Huangshi Avenue Huangshi, Hubei 435001, China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100214400
【氏名又は名称】大西 一郎
(72)【発明者】
【氏名】胡夢▲でぃ▼
(72)【発明者】
【氏名】雷応華
(72)【発明者】
【氏名】張洲
(72)【発明者】
【氏名】胡瑞海
(72)【発明者】
【氏名】鄭文超
(72)【発明者】
【氏名】王占忠
(72)【発明者】
【氏名】周立新
(72)【発明者】
【氏名】劉光輝
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101713050(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106312000(CN,A)
【文献】特開平07-305121(JP,A)
【文献】特開平07-233426(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102424934(CN,A)
【文献】特開平06-073492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
C21C 5/00- 5/34
C22C 38/00-38/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電歯車用鋼の製錬方法であって、
原料溶銑とスクラップとを配合比に基づいて転炉に加えて一次製錬を行い、一次製錬溶鋼を得る、ステップS1と、
前記ステップS1で得られた前記一次製錬溶鋼が充填されたレードルを精錬炉に吊り下げ、そしてプリメルトタイプ精錬スラグを添加して精錬し、溶鋼の成分を制御し、精製溶鋼を得、
当該精錬
において、プリメルトタイプ精錬スラグの主成分は、Al
2
O
3
及びCaF
2
を含むステップS2と、
前記ステップS2で得られた
前記精製溶鋼に対して真空脱ガス処理を行い、
前記精製溶鋼における水素及び酸素を除去する、ステップS3と、
前記ステップS3
で真空脱ガスされた
前記精製溶鋼のレードルを連続鋳造レードルに吊り下げて、スラグ検出、ロングノズル不活性ガス保護及び浸漬ノズル保護、タンディッシュ不活性ガス保護、タンディッシュカバースラグ、連続測温、結晶器プリメルトスラグを採用する鋳造の保護、液面の自動的な制御、結晶器の電磁撹拌、二次冷却帯の水の動的な制御、及び終段の電磁撹拌を行い、恒温定引張速度で、連続鋳造スラブを得る、連続鋳造
において、
前記タンディッシュカバースラグはタンディッシュ被覆剤であり、主成分は、酸化マグネシウム、シリカ及び酸化ケイ素を含み、
前記恒温定引張速度は、温度が1500~1600℃であり、引張速度が0.2~0.28m/minであり、
前記連続鋳造スラブの中心収縮孔は、1.0級以下であるステップS4と、
前記ステップS4で得られた前記連続鋳造スラブをエレクトロスラグ炉に入れ、
前記エレクトロスラグ炉にガス保護装置が設けられ、
前記ガス保護装置から保護ガスを充填し、そしてスラグ材を加え、スラグ化した後にパイロット、溶製、補縮を行い、純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼を得る、ガス保護炉エレクトロスラグ再溶融
において、
前記溶製の溶融速度は12~15kg/minであり、
前記エレクトロスラグ再溶融の時に添加されたスラグ材は二元スラグ系であり、二元スラグ系はCa系化合物とAl系化合物で構成され、
充填された前記保護ガスはアルゴンガス又は窒素ガスであるステップS5と、
を含
み、
前記風力発電歯車用鋼は、化学組成が、質量%で、C:0.15~0.19%、Si≦0.4%、Mn:0.5~0.7%、P≦0.012%、S≦0.006%、Cr:1.5~1.8%、Mo:0.28~0.35%、Ni:1.4~1.7%、Al:0.02~0.04%、により構成され、残部がFeおよび不可避的不純物である、
ことを特徴とする風力発電歯車用鋼の製錬方法。
【請求項2】
前記ステップS1において前記溶銑を
前記転炉に入れる前にKR脱硫装置を用いて脱硫し、脱硫された後の
前記溶銑に占める硫黄の割合は、質量%で、0.003%以下である、
ことを特徴とする請求項
1に記載
の風力発電歯車用鋼の製錬方法。
【請求項3】
前記ステップS1において原料に占める前記溶銑の割合は、質量%で、80~90%であり、残部はスクラップであ
る、
ことを特徴とする請求項
1に記載
の風力発電歯車用鋼の製錬方法。
【請求項4】
前記スクラップは、良質スクラップであり、前記スクラップにおける不純物は、質量%で、As≦0.04%、Sn≦0.03%、Pb≦0.002%、Sb≦0.005%、Cu≦0.20%、Ti≦0.0005%、を含み、前記スクラップは、放射≦0.15μSv/h又は放射性≦0.1Bq/gを満たす、
ことを特徴とする請求項3に記載の風力発電歯車用鋼の製錬方法。
【請求項5】
前記ステップS1で得られた前記一次製錬溶鋼に占めるTiの割合は、
質量%で0.002%以下であり、Caの割合は、
質量%で0.001%以下である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼の製錬方法。
【請求項6】
前記ステップS2で得られた前記精製溶鋼における介在物のレベルは、A細≦1.5級、A太≦0.5級、B細≦1.0級、B太≦0.5級、C細=0級、C太=0級、D細≦1.0級、D太≦1.0級、DS≦1.0級に達する、
ことを特徴とする請求項
1に記載
の風力発電歯車用鋼の製錬方法。
【請求項7】
前記ステップS3における前記真空脱ガス処理は、RH真空循環脱ガスを採用し、真空度≦67Paに達し、
前記真空脱ガス処理した後、質量%で、溶鋼に占める水素の割合は、1.0ppm未満であり、溶鋼に占める酸素の割合は、5.0ppm以下である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の風力発電歯車用鋼の製錬方法。
【請求項8】
前記連続鋳造スラブの内部介在物のレベルは、A系介在物≦1.5級、B系介在物≦1.0級、C系介在物≦0.5級、D系介在物≦1.0級である、
ことを特徴とする請求項
1に記載
の風力発電歯車用鋼の製錬方法。
【請求項9】
前記二元スラグ系は、CaF
2及びAl
2O
3スラグ系であり、CaF
2とAl
2O
3との質量比は7:3である、
ことを特徴とする請求項
1に記載
の風力発電歯車用鋼の製錬方法。
【請求項10】
前記ステップS5において充填された前記保護ガスはアルゴンガスである、
ことを特徴とする請求項
1に記載
の風力発電歯車用鋼の製錬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製錬技術分野に属し、具体的には、純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼およびその製錬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、中国国内の風力発電業界の発展はますます急速になり、風力発電ユニットが常にゴビ、荒漠、海洋等の自然条件が比較的悪い区域に取り付けられており、歯車箱が故障すると、メンテナンスが極めて困難であるため、その信頼性の要求は一般的な機械よりもはるかに高くなった。歯車箱の製造コストは、一般的に、風力発電装置の総製造コストの15~20%を占め、その研究と開発は風力発電技術のコアである。
【0003】
業界内において、風力発電歯車材料の純度、耐用年数及び変速歯車箱のメンテナンス、交換周期にはより高度な要求が為される。歯車(ギア)は歯車箱(ギアボックス)におけるコア材料であり、純度や緻密性等の因子が歯車の耐用年数を決定し、歯車の耐用年数は、常に一台の風力発電歯車箱の全体耐用年数を決定する。
【0004】
従来の風力発電歯車箱の歯車材料は、いずれも、電気炉型鋳塊に由来し、プロセス経路は、「電気炉製錬-炉外精錬-真空脱ガス-鋳造鋼塊」であり、そのプロセスは、長年の発展を経て、成熟に向かう傾向であるが、現在の電気炉鋼塊の製鋼プロセスでは、製鋼過程において耐火材料が浸食されて溶鋼に落ちて外生介在物を形成しやすくなったり、製錬過程を完全にガス保護下におくことができず、内生介在物を形成しやすくなったり、という2つの問題が存在して未だ効果的な解決に到っていない。
【0005】
したがって、その純度を効果的に保障することができないことにより、鋼における大粒子介在物を完全に回避することが困難である。それ以外に、現在の風力発電歯車箱の歯車の生産及び使用過程に依然として様々な問題(例えば探傷不良率が高く、歯車の疲労寿命が短いことによる断裂しやすい等の問題)が存在して未だ効果的に解決することができない。
【0006】
したがって、上記従来技術の不足に対する改良技術案を提供する必要があり、高純度や高信頼性の歯車材料を探すことは、将来の風力発電業界の発展の方向になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、純度、信頼性を向上させる風発電歯車用鋼およびその製錬方法を提供し、上記従来技術における製鋼過程において介在物の形成による鋼の純度を保障できないという問題を克服し、製錬された鋼を風力発電歯車に用いて風力発電歯車の探傷合格率及び歯車の疲労寿命を大幅に向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を実現するために、本発明は以下のような技術案を提供する。
純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼であって、
前記風力発電歯車用鋼の化学組成が、質量%で、C:0.15~0.19%、Si≦0.4%、Mn:0.5~0.7%、P≦0.012%、S≦0.006%、Cr:1.5~1.8%、Mo:0.28~0.35%、Ni:1.4~1.7%、Al:0.02~0.04%、を含み、残部がFeおよび不可避的不純物である。
【0009】
上記のような純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼の製錬方法は、好ましい方案として、
原料溶銑とスクラップ(屑鋼、屑鉄)とを配合比に基づいて転炉に加えて一次製錬を行い、一次製錬溶鋼を得る、一次製錬であるステップS1と、
ステップS1で得られた前記一次製錬溶鋼が充填されたレードルを精錬炉に吊り下げ、そしてプリメルトタイプ精錬スラグを添加して精錬し、溶鋼の成分を制御し、精製溶鋼を得る、精錬であるステップS2と、
ステップS2で得られた精製溶鋼に対して真空脱ガス処理を行い、溶鋼における水素及び酸素を除去する、真空脱ガスであるステップS3と、
ステップS3に真空脱ガスされた溶鋼のレードルを連続鋳造レードルに吊り下げ、スラグ検出、ロングノズル不活性ガス保護及び浸漬ノズル保護、タンディッシュ不活性ガス保護、タンディッシュカバースラグ、連続測温、結晶器プリメルトスラグを採用する鋳造の保護、液面の自動的な制御、結晶器の電磁撹拌、二次冷却帯の水の動的な制御、及び終段の電磁撹拌を行い、恒温定引張速度で、連続鋳造スラブを得る、連続鋳造であるステップS4と、
ステップS4で得られた前記連続鋳造スラブをエレクトロスラグ炉に入れ、エレクトロスラグ炉にガス保護装置が設けられ、ガス保護装置から保護ガスを充填し、そしてスラグ材を加え、スラグ化した後にパイロット(点弧、点火)、溶製、補縮を行い、純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼を得る、ガス保護炉エレクトロスラグ再溶融であるステップS5と、を含む。
【0010】
上記のような純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼の製錬方法は、好ましい方案として、ステップS1において前記溶銑を転炉に入れる前にKR脱硫装置を用いて脱硫する必要があり、脱硫された後の溶銑に占めるSの割合は、質量%で、0.003%以下である。
【0011】
上記のような純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼の製錬方法は、好ましい方案として、ステップS1において原料に占める前記溶銑の割合は、質量%で、80~90%であり、残部はスクラップであり、
好ましくは、前記スクラップは、良質スクラップであり、前記スクラップにおける不純物は、質量%で、As≦0.04%、Sn≦0.03%、Pb≦0.002%、Sb≦0.005%、Cu≦0.20%、Ti≦0.0005%、を含み、前記スクラップは、放射≦0.15μSv/h又は放射性≦0.1Bq/gを満たす。
【0012】
上記のような純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼の製錬方法は、好ましい方案として、質量%で、ステップS1で得られた前記一次製錬溶鋼に占めるTiの割合は、0.002%以下であり、Caの割合は、0.001%以下である。
【0013】
上記のような純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼の製錬方法は、好ましい方案として、ステップS2におけるプリメルトタイプ精錬スラグの主成分は、Al2O3及びCaF2を含み、
好ましくは、ステップS2で得られた前記精製溶鋼における介在物のレベルは、A細≦1.5級、A太(粗)≦0.5級、B細≦1.0級、B太≦0.5級、C細=0級、C太=0級、D細≦1.0級、D太≦1.0級、DS≦1.0級に達する。
上記のような純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼の製錬方法は、好ましい方案として、ステップS3における前記真空脱ガス処理は、RH真空循環脱ガスを採用し、真空度≦67Paに達し、
前記真空脱ガス処理した後、質量%で、溶鋼に占める水素の割合は、1.0ppm未満であり、溶鋼に占める酸素の割合は、5.0ppm以下である。
上記のような純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼の製錬方法は、好ましい方案として、ステップS4において前記恒温定引張速度は、具体的に、温度が1500~1600℃であり、引張速度が0.2~0.28m/minであり、
好ましくは、ステップS4で得られた前記連続鋳造スラブの中心収縮孔は、1.0級以下であり、
より好ましくは、前記連続鋳造スラブの内部介在物のレベルは、A系介在物≦1.5級、B系介在物≦1.0級、C系介在物≦0.5級、D系介在物≦1.0級である。
上記のような純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼の製錬方法は、好ましい方案として、ステップS5においてエレクトロスラグ再溶融の時に添加されたスラグ材は二元スラグ系であり、前記二元スラグ系はCa系化合物とAl系化合物で構成され、
好ましくは、前記二元スラグ系は、CaF2及びAl2O3スラグ系であり、CaF2とAl2O3との質量比は7:3である。
【0014】
上記のような純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼の製錬方法は、好ましい方案として、ステップS5において前記溶製の溶融速度は12~15kg/minであり、
好ましくは、ステップS5において充填された前記保護ガスはアルゴンガス又は窒素ガスであり、
より好ましくは、ステップS5において充填された前記保護ガスはアルゴンガスである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に提供された技術案は、最も近い先行技術と比べ、以下の優れた効果を有している。
本発明における製錬方法は、従来工程を基に、「電気炉製錬+ダイカスト」から「転炉製錬+連続鋳造」へ変更する同時に、「ガス保護炉エレクトロスラグ再溶融」の工程を追加し、連続鋳造プロセスを採用して純粋なエレクトロスラグマスターバッチを得て、連続鋳造後にエレクトロスラグ再溶融工程を追加し、材料の純度をさらに向上させ、エレクトロスラグ再溶融過程において、液体金属がスラグ池に覆われることにより、再酸化を回避し、同時に、水冷結晶器内に溶融し精錬し凝固することにより、耐火材料が鋼に対する汚染を途絶し、鋼塊が凝固する前に、その上端に保温と補縮の役割を果たして鋼塊の緻密性を保証する金属溶融池及びスラグ池があり、不活性ガスの保護雰囲気でエレクトロスラグ再溶融を行うとともに、従来装置を基に、対応する補助装置(ガス保護エレクトロスラグ炉の二層煙カバー)を追加し、ガス保護の効果を補強し、焼損しやすい合金元素の過度焼損を効果的に回避し、それを比較的狭い範囲内に制御させるとともに、内生介在物の発生を回避する。
【0016】
本発明における製錬方法により製造された鋼材料は風力発電歯車に用いられ、使用後の探傷検出が優れ、プロセス変更前の従来技術における「電気炉製錬+ダイカスト」の製錬プロセスに比べて、探傷合格率が顕著に向上させる一方、生産効率も向上させ、ASPEX走査により、従来技術における「電気炉製錬+ダイカスト」の製錬プロセスに比べて、本発明における製錬方法により製造された鋼材料における大粒介在物が顕著に減少し、高倍率顕微鏡で観察すると、従来技術における「電気炉製錬+ダイカスト」の製錬プロセスに比べ、本発明により製造された鋼材料における介在物がより細かく且つ分散し、酸洗低倍組織の比較により、従来技術における「電気炉製錬+ダイカスト」の製錬プロセスに比べて、本発明により製造された鋼材料の低倍組織はより緻密である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本願の一部を構成する明細書図面は、本発明への更なる理解を提供するために用いられ、本発明の模式的な実施例及びその説明は、本発明への解釈のために用いられ、本発明に対する不適当な限定にならない。ただし、
【
図1】本発明の具体的な実施例1及び比較例1で製錬された風力発電歯車用鋼の鋼における最大介在物の寸法ASPEX走査試験結果の比較図である。
【
図2】本発明の具体的な実施例1における風力発電歯車用鋼材料の高倍顕微鏡での形態である。
【
図3】本発明の具体的な比較例1における風力発電歯車用鋼材料の高倍顕微鏡での形態である。
【
図4】本発明の具体的な実施例1における風力発電歯車用鋼材料の酸洗による低倍組織図である。
【
図5】本発明の具体的な比較例1における風力発電歯車用鋼材料の酸洗による低倍組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例における技術案を明確で完全に説明し、明らかにするのは、説明された実施例は本発明の一部の実施例だけであり、全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づき、当業者が得られた全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0019】
以下、図面を参照して実施例を組み合わせて本発明を詳細に説明する。なお、対立する状況がない場合、本発明における実施例及び実施例における特徴は互いに組み合わせることができる。
【0020】
本発明における純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼の製錬方法は、従来工程を基に、「電気炉製錬+ダイカスト」から「転炉製錬+連続鋳造」へ変更する同時に、「ガス保護炉エレクトロスラグ再溶融」の工程を増加し、エレクトロスラグ再溶融過程において、液体金属がスラグ池に覆われることにより、再酸化を回避し、同時に、水冷結晶器内に溶融し精錬し凝固することにより、鋼に対する耐火材量の汚染を途絶し、鋼塊が凝固する前に、その上端に保温と補縮の役割を果たして鋼塊の緻密性を保証する金属溶融池及びスラグ池があり、不活性ガスの保護雰囲気でエレクトロスラグ再溶融を行うとともに、従来装置を基に、対応する補助装置(ガス保護エレクトロスラグ炉の二層煙カバー)を追加し、ガス保護の効果を補強し、焼損しやすい合金元素の過度焼損を効果的に回避し、それを比較的狭い範囲内に制御させるとともに、内生介在物の発生を回避する。
【0021】
本発明は、化学組成が、質量%で、C:0.15~0.19%(例えば、0.15%、0.155%、0.16%、0.165%、0.17%、0.175%、0.18%、0.185%、0.19%)、Si≦0.4%(例えば、0%、0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%)、Mn:0.5~0.7%(例えば、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%)、P≦0.012%(例えば、0.002%、0.004%、0.006%、0.008%、0.01%、0.012%)、S≦0.006%(例えば、0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%)、Cr:1.5~1.8%(例えば、1.5%、1.55%、1.6%、1.65%、1.7%、1.75%、1.8%)、Mo:0.28~0.35%(例えば、0.28%、0.29%、0.30%、0.31%、0.32%、0.33%、0.34%、0.35%)、Ni:1.4~1.7%(例えば、1.4%、1.45%、1.5%、1.55%、1.6%、1.65%、1.7%)、Al:0.02~0.04%(例えば、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%)、を含み、残部がFeおよび不可避的不純物である純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼を提供する。
【0022】
本発明における純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼をよりよく理解するために、本発明は、以下のステップS1~ステップS5を含む純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼の製錬方法をさらに提供する。
【0023】
一次製錬であるステップS1は、
原料溶銑と良質スクラップとを配合比に応じて転炉に入れて一次製錬を行い、一次製錬溶鋼を得る。ただし、転炉製鋼は、溶銑、スクラップ等を主原料とし、外部からのエネルギー源を借りず、溶銑自体の物理的熱及び溶銑成分間の化学反応によって発生した熱で転炉において製鋼過程を完了するものである。
【0024】
本発明の具体的な実施例において、ステップS1において溶銑を転炉に入れる前にKR脱硫装置を用いて脱硫する必要があり、脱硫された後の溶銑に占めるSの割合は、質量%で、0.003%以下(例えば、0.0005%、0.001%、0.0015%、0.002%、0.0025%、0.003%)である。ただし、KR脱硫装置は、通気撹拌機能付きの撹拌パドルを採用し、撹拌パドルをレードル溶融池に一定の深さに進入させ、その回転による渦により、秤量された脱硫剤を供給装置を介して溶銑表面に添加し、且つ溶銑に巻き込まれた酸化カルシウム系脱硫粉剤を溶銑に十分に接触反応させ、脱硫の目的を達成する。
【0025】
好ましくは、溶銑は1780m3の大高炉溶銑を採用して焼き嵌めする。
本発明の具体的な実施例において、ステップS1において原料に占める溶銑の割合は、質量%で、80~90%(例えば、80%、82%、84%、86%、88%、90%)であり、残部はスクラップである。
【0026】
好ましくは、スクラップは、良質スクラップであり、スクラップにおける不純物は、質量%で、As≦0.04%(例えば、0.005%、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%)、Sn≦0.03%(例えば、0.005%、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%)、Pb≦0.002%(例えば、0.0005%、0.001%、0.0015%、0.002%)、Sb≦0.005%(例えば、0.0005%、0.001%、0.0015%、0.002%、0.0025%、0.003%、0.0035%、0.004%、0.0045%)、Cu≦0.20%(例えば、0.01%、0.03%、0.05%、0.1%、0.15%、0.17%、0.2%)、Ti≦0.0005%(例えば、0.0001%、0.0002%、0.0003%、0.0004%、0.0005%)、を含み、スクラップは、さらに、放射≦0.15μSv/h(例えば、0.02μSv/h、0.04μSv/h、0.06μSv/h、0.08μSv/h、0.1μSv/h、0.12μSv/h、0.14μSv/h、0.15μSv/h)又は放射性≦0.1Bq/g(例えば、0.01Bq/g、0.02Bq/g、0.03Bq/g、0.04Bq/g、0.05Bq/g、0.06Bq/g、0.07Bq/g、0.08Bq/g、0.09Bq/g)を満たす。
【0027】
本発明の具体的な実施例において、質量%で、ステップS1で得られた一次製錬溶鋼に占めるTiの割合は、0.002%以下(例えば、0.005%、0.01%、0.015%、0.002%)であり、Caの割合は、0.001%以下(例えば、0.0002%、0.0004%、0.0006%、0.0008%、0.001%)である。
【0028】
精錬であるステップS2は、
ステップS1で得られた前記一次製錬溶鋼が充填されたレードルを精錬炉に吊り下げ、そしてプリメルトタイプ精錬スラグを添加して精錬し、溶鋼の成分を制御し、精製溶鋼を得る。ただし、溶鋼の成分を制御することは、添加に必要な合金材の量を正確に計算することにより、溶鋼の成分を微調整する。
本発明の具体的な実施例において、ステップS2におけるプリメルトタイプ精錬スラグの主成分は、Al2O3及びCaF2を含み、プリメルトタイプ精錬スラグが溶鋼における介在物を吸着するために用いられる。
【0029】
プリメルトタイプ精錬スラグの融点が非常に低く、最も速い速度で溶融することができ、溶鋼が精錬パケットにおける滞留時間が短縮され、製錬が強化される。プリメルトタイプ精錬スラグは各種の原料が精選されて焼結又は溶融し、12CaO・7Al2O3を主とする鉱物を生成し、その含有量は85%より大きく、大量のカルキ成分は溶鋼における酸素、硫黄と反応して低融点で浮上しやすい生成物を生成し、鋼における有害元素及び不純物の含有量を低減させ、溶鋼を浄化させる目的を達成する。レードル精錬において、プリメルトタイプ精錬スラグを添加するのは、製鋼時間を効果的に短縮することができ、鋼における非金属介在物を吸収する能力が強く、溶鋼浄化に対して顕著な作用を有する。
より好ましくは、ステップS2で得られた精製溶鋼における介在物のレベルは、A細≦1.5級、A太≦0.5級、B細≦1.0級、B太≦0.5級、C細=0級、C太=0級、D細≦1.0級、D太≦1.0級、DS≦1.0級に達する。
【0030】
鋼における非金属介在物の評価方法は、GB/T10561-2005規格を参照することができる。本発明においてJK規格を採用して格付し、介在物をそれぞれ、硫化物、アルミナ、ケイ酸塩及び球状酸化物であるA、B、C及びDという4つの基本的なタイプに分けており、各種類の介在物は、厚さ及び直径の違いに応じて細系及び太系という2つの系列に分けられ、各介在物は、介在物の数の漸増を識別する五級(1~5)で構成される。ただし、介在物のレベルを評価する際には、ハーフレベルの評価が許可され、その結果、各試料の、介在物の種類ごとの最も悪い視野のレベル数で示す。
【0031】
真空脱ガスであるステップS3は、
ステップS2で得られた精製溶鋼に対して真空脱ガス処理を行い、溶鋼における水素及び酸素を除去する。
【0032】
本発明の具体的な実施例において、ステップS3における真空脱ガス処理は、RH真空循環脱ガスを採用し、真空度≦67Paに達し、通常、ステップS3における真空脱ガス処理の時間は20minを超える(例えば、20min、22min、24min、26min、28min、30min、32min、34min、36min、38min、40min)必要がある。
【0033】
真空脱ガス処理した後、質量%で、溶鋼に占める水素の割合は、1.0ppm未満(例えば、0.1ppm、0.2ppm、0.3ppm、0.4ppm、0.5ppm、0.6ppm、0.7ppm、0.8ppm、0.9ppm)であり、溶鋼に占める酸素の割合は、5.0ppm以下(例えば、0.5ppm、1ppm、1.5ppm、2ppm、2.5ppm、3ppm、3.5ppm、4ppm、4.5ppm、4.8ppm)である。
【0034】
連続鋳造であるステップS4は、
ステップS3に真空脱ガスされた溶鋼のレードルを連続鋳造レードルに吊り下げ、スラグ検出、ロングノズル不活性ガス保護及び浸漬ノズル保護(浸漬で溶鋼と空気との接触を防止する)、タンディッシュ不活性ガス保護、タンディッシュカバースラグ、連続測温、結晶器プリメルトスラグを採用する鋳造の保護、液面の自動的な制御、結晶器の電磁撹拌、二次冷却帯の水の動的な制御、及び終段の電磁撹拌を行い、恒温定引張速度で、連続鋳造スラブを得る。ただし、不活性ガスはアルゴンガスであるのが好ましい。
【0035】
ステップS4における連続鋳造は、タンディッシュにより加熱措置を誘導し、連続鋳造過程全体では恒温定引張速度を実現するものである。
本発明の具体的な実施例において、ステップS4のタンディッシュ不活性ガス保護はアルゴンガスを用いてガス保護を行い、
タンディッシュカバースラグはタンディッシュ被覆剤であり、主成分は、酸化マグネシウム、シリカ及び酸化ケイ素を含み、タンディッシュ被覆剤は、主として、断熱保温、鋼における浮上している介在物の吸着、及び空気を遮断することで溶鋼の二次酸化の防止に用いられる。
【0036】
本発明の具体的な実施例において、ステップS4において恒温定引張速度は、具体的には、温度が1500~1600℃(例えば、1510℃、1520℃、1530℃、1540℃、1550℃、1560℃、1570℃、1580℃、1590℃)であり、引張速度が0.2~0.28m/min(例えば、0.21m/min、0.22m/min、0.23m/min、0.24m/min、0.25m/min、0.26m/min、0.27m/min)である。
本発明の具体的な実施例において、ステップS4で得られた連続鋳造スラブの中心収縮孔は、1.0級以下であり、
連続鋳造スラブの表面に横割れ、スラグピット、重皮等の欠陥が許さず、連続鋳造スラブの内部介在物のレベルは、A系介在物≦1.5級、B系介在物≦1.0級、C系介在物≦0.5級、D系介在物≦1.0級である。
ガス保護炉エレクトロスラグ再溶融であるステップS5は、
ステップS4で得られた前記連続鋳造スラブをエレクトロスラグ炉に入れ、エレクトロスラグ炉にガス保護装置が設けられ、ガス保護装置から保護ガスを充填し、そしてスラグ材を加え、スラグ化した後にパイロット、溶製、補縮を行い、純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼を得る。
【0037】
エレクトロスラグ再溶融は、二次精錬技術であり、溶鋼の二次精錬と方向性凝固を結合した総合冶金鋳造プロセスである。その原理は、電流が液状スラグ池のスラグを介して熱を抵抗し、金属電極を溶融し、溶融された金属が溶滴に集め、滴下する時にスラグ層を貫通して金属溶融池に入り、そして水冷結晶器において鋼塊に結晶凝固する。
本発明の具体的な実施例において、エレクトロスラグ再溶融過程において、液体金属がスラグ池に覆われることにより、再酸化を回避し、同時に、水冷結晶器内に溶融し精錬し凝固することにより、鋼に対する耐火材量の汚染を途絶し、鋼塊が凝固する前に、その上端に保温と補縮の役割を果たして鋼塊の緻密性を保証する金属溶融池及びスラグ池がある。
【0038】
また、本発明では、保護性ガスとしてアルゴンガスを選択し、同時に装置上に対応する補助装置(出願番号201320698946.0の「ガス保護エレクトロスラグ炉の二層煙カバー」を採用する)を追加し、ガス保護の効果を補強し、焼損しやすい合金元素の過度焼損を効果的に回避し、それを比較的に狭い範囲内に制御させるとともに、内生介在物の発生を回避する。
【0039】
本発明の具体的な実施例において、ステップS5においてエレクトロスラグ再溶融の時に添加されたスラグ材は二元スラグ系であり、二元スラグ系はCa系化合物とAl系化合物で構成される。
【0040】
好ましくは、二元スラグ系は、CaF2及びAl2O3スラグ系であり、CaF2とAl2O3との質量比は7:3である。
より好ましくは、ステップS5におけるエレクトロスラグ再溶融の電源の周波数は10~12Hz(例えば、10Hz、10.5Hz、11Hz、11.5Hz、12Hz)である。電源周波数は、鋳塊の結晶品質に対して影響を与え、低周波が鋳塊の結晶阻止に有利であるが、鋳塊中の酸素含有量を向上させるので、エレクトロスラグ再溶融過程において電源の周波数を厳密に制御する必要がある。
【0041】
本発明の具体的な実施例において、ステップS5において溶製の溶融速度は12~15kg/min(例えば、12.5kg/min、13kg/min、13.5kg/min、14kg/min、14.5kg/min)である。ただし、溶製過程において溶融速度の安定を維持するために、実際の使用状況に応じて、自動的で段階的に調圧する必要がある。本発明の具体的な実施例において、ステップS5において充填された保護ガスはアルゴンガス又は窒素ガスである。
【0042】
好ましくは、保護ガスはアルゴンガスである。
以下の実施例及び比較例に用いられたスクラップにおける不純物は、質量%で、As≦0.04%、Sn≦0.03%、Pb≦0.002%、Sb≦0.005%、Cu≦0.20%、Ti≦0.0005%、を含み、同時にスクラップは、放射≦0.15μSv/h又は放射性≦0.1Bq/gを更に満たす。
【0043】
実施例1
本実施例は、化学組成が、質量%で、C:0.17%、Si≦0.3%、Mn:0.6%、P≦0.01%、S≦0.006%、Cr:1.6%、Mo:0.30%、Ni:1.5%、Al:0.03%、を含み、残部がFeおよび不可避的不純物である純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼を提供する。
本実施例は、あるA鍛造工場が純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼の製錬方法を採用して風力発電歯車用鋼を製造することであり、具体的な製錬方法は、以下のステップS1~ステップS5を含む。
【0044】
一次製錬であるステップS1は、
溶銑は1780m3の大高炉溶銑を採用して焼き嵌め、且つ溶銑に占めるSの割合は、質量%で、0.003%以下になるように脱硫し、そして脱硫処理後の溶銑と良質スクラップとを8:2の質量比(原料に占める溶銑の割合は、質量%で、80%であり、残部が良質スクラップである)に応じて転炉に入れて一次製錬を行い、一次製錬溶鋼を得る。
【0045】
精錬であるステップS2は、
ステップS1で得られた前記一次製錬溶鋼が充填されたレードルを精錬炉に吊り下げ、そしてプリメルトタイプ精錬スラグを添加して精錬し、レードル精錬により溶鋼の成分を微調整して制御し、精製溶鋼を得て、精製溶鋼における介在物のレベルは、A細≦1.5級、A太≦0.5級、B細≦1.0級、B太≦0.5級、C細=0級、C太=0級、D細≦1.0級、D太≦1.0級、DS≦1.0級に達するようにする。
【0046】
真空脱ガスであるステップS3は、
ステップS2で得られた精製溶鋼に対してRH真空脱ガス処理を行い、質量%で、溶鋼に占める水素の割合は、1.0ppm未満であり、溶鋼に占める酸素の割合は、5.0ppm以下である。
【0047】
連続鋳造であるステップS4は、
ステップS3に真空脱ガスされた溶鋼のレードルを連続鋳造レードルに吊り下げ、スラグ検出、ロングノズル不活性ガス保護及び浸漬ノズル保護、タンディッシュガス保護、タンディッシュカバースラグ、連続測温、結晶器プリメルトスラグを採用する鋳造の保護、液面の自動的な制御、結晶器の電磁撹拌、二次冷却帯の水の動的な制御、及び終段の電磁撹拌を行い、温度が1550℃、引張速度が0.24m/minの恒温定引張速度で、中心収縮孔が1.0級以下の連続鋳造スラブを得る。
【0048】
ガス保護炉エレクトロスラグ再溶融であるステップS5は、
ステップS4で得られた連続鋳造スラブを出願番号201320698946.0の「ガス保護エレクトロスラグ炉の二層煙カバー」が設けられるエレクトロスラグ炉に入れ、アルゴンガスを充填し、そして10Hzの周波数で二元スラグ系(CaF2とAl2O3との質量比は7:3である)を添加し、スラグ化した後にパイロット、14kg/minの溶融速度で溶製、補縮を行い、純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼を得る。
【0049】
性能テスト:
あるA鍛造工場は本実施例における製錬方法を採用して製造された鋼を風力発電歯車箱の生産に用い、且つそれに対して探傷試験を行い、その結果、検出量が1000件である時、探傷平底孔0.8FBHを満たす数が997件、即ち探傷平底孔0.8FBHを満たす合格率が99.7%であることを示す。
【0050】
本実施例により製造された鋼の円形断面を、直径方向に沿ってそれぞれ8個の点を取り、それぞれ1#、2#、3#、4#、5#、6#、7#、8#とマークし、そしてASPEX走査を行い、その結果、
図1に示すように、本実施例により製造された鋼における最大介在物のサイズが比較的に小さく、且つ比較例1より遥かに小さい。
本実施例により製造された鋼を1000倍の顕微鏡で観察した結果、
図2に示すように、本実施例により製造された鋼における介在物はより細かく且つ分散していた。
本実施例により製造された鋼に対して酸洗低倍組織比較を行い、その結果、
図4に示すように、本実施例により製造された鋼の低倍組織はより緻密である。
【0051】
実施例2
本実施例は、化学組成が、質量%で、C:0.15%、Si≦0.4%、Mn:0.5%、P≦0.012%、S≦0.006%、Cr:1.5%、Mo:0.28%、Ni:1.4%、Al:0.02%、を含み、残部がFeおよび不可避的不純物である純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼を提供する。
【0052】
本実施例は、あるB鍛造工場が純度、信頼性を向上させる風力発電歯車用鋼の製錬方法を採用して風力発電歯車用鋼を製造することであり、本実施例の製錬方法におけるステップS1において添加された原料である脱硫処理後の溶銑と良質スクラップとを9:1の質量比(原料に占める溶銑の割合は、質量%で、90%であり、残部が良質スクラップである)に応じて転炉に入れて一次製錬を行い、一次製錬溶鋼を得る。他のステップは実施例1と同様であり、ここで説明を省略する。
【0053】
性能テスト:
あるB鍛造工場は本実施例における製錬方法を採用して製造された鋼を風力発電歯車箱の生産に用い、且つそれに対して探傷試験を行い、その結果、検出量が1000件である時、探傷平底孔0.8FBHを満たす数が1000件、即ち探傷平底孔0.8FBHを満たす合格率が100%であることを示す。
【0054】
比較例1
本比較例は、あるA鍛造工場が実施例1と同じ原料を採用し、従来技術における「電気炉製錬+ダイカスト」の製錬プロセスを採用して製造された風力発電歯車用鋼を提供し、具体的な製錬プロセスはここで説明を省略する。
【0055】
本比較例により製造された風力発電歯車用鋼は、化学組成が、質量%で、C:0.16%、Si≦0.25%、Mn:0.7%、P≦0.015%、S≦0.010%、Cr:1.5%、Mo:0.27%、Ni:1.52%、Al:0.035%、を含み、残部がFeおよび不可避的不純物である。
【0056】
性能テスト:
あるA鍛造工場は本比較例における製錬方法を採用して製造された鋼を風力発電歯車箱の生産に用い、且つそれに対して探傷試験を行い、その結果、検出量が1000件である時、探傷平底孔0.8FBHを満たす数が876件、即ち探傷平底孔0.8FBHを満たす合格率が87.6%であることを示す。
【0057】
本比較例により製造された鋼の円形断面を、直径方向に沿ってそれぞれ8個の点を取り、それぞれ1#、2#、3#、4#、5#、6#、7#、8#とマークし、そしてASPEX走査を行い、その結果、
図1に示すように、本比較例により製造された鋼における最大介在物のサイズが比較的に大きい。
【0058】
本比較例により製造された鋼を1000倍の顕微鏡で観察した結果、
図3に示すように、本比較例により製造された鋼における介在物は、実施例1により製造された鋼における介在物に比べて非常に大きい。
【0059】
本比較例により製造された鋼に対して酸洗低倍組織比較を行い、その結果、
図5に示すように、本比較例により製造された鋼の低倍組織は、実施例1により製造された鋼の低倍組織に比べて粗雑である。
【0060】
比較例2
本比較例は、あるB鍛造工場が実施例2と同じ原料を採用し、従来技術における「電気炉製錬+ダイカスト」の製錬プロセスを採用して製造された風力発電歯車用鋼を提供し、具体的な製錬プロセスはここで説明を省略する。
【0061】
本比較例により製造された風力発電歯車用鋼は、化学組成が、質量%で、C:0.16%、Si≦0.25%、Mn:0.65%、P≦0.015%、S≦0.010%、Cr:1.5%、Mo:0.29%、Ni:1.50%、Al:0.035%、を含み、残部がFeおよび不可避的不純物である。
【0062】
性能テスト:
あるB鍛造工場は本比較例における製錬方法を採用して製造された鋼を風力発電歯車箱の生産に用い、且つそれに対して探傷試験を行い、その結果、検出量が1000件である時、探傷平底孔0.8FBHを満たす数が883件、即ち探傷平底孔0.8FBHを満たす合格率が88.3%であることを示す。
【0063】
要するに、本発明における製錬方法により製造された鋼材料は風力発電歯車に用いられる場合、使用後の探傷検出が優れ、プロセス変更前の従来技術における「電気炉製錬+ダイカスト」の製錬プロセスに比べて、探傷合格率が顕著に向上させる一方、生産効率も向上させた。ASPEX走査により、従来技術における「電気炉製錬+ダイカスト」の製錬プロセスに比べて、本発明の製錬方法により製造された鋼材料における大粒介在物が顕著に減少し、高倍率顕微鏡で観察すると、従来技術における「電気炉製錬+ダイカスト」の製錬プロセスに比べて、本発明により製造された鋼材料における介在物がより細かく且つ分散し、酸洗低倍組織の比較により、従来技術における「電気炉製錬+ダイカスト」の製錬プロセスに比べて、本発明により製造された鋼材料の低倍組織はより緻密である。
【0064】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明の精神および原則内で行われたいかなる修正、同等置換、改善などは、いずれも本発明の請求項の保護範囲内にある。
【要約】
本発明は、純度、信頼性を向上させる風発電歯車用鋼を提供する。
化学組成が、質量%で、C:0.15~0.19%、Si≦0.4%、Mn:0.5~0.7%、P≦0.012%、S≦0.006%、Cr:1.5~1.8%、Mo:0.28~0.35%、Ni:1.4~1.7%、Al:0.02~0.04%、を含み、残部がFeおよび不可避的不純物である。製錬方法は、原料を転炉に入れて一次製錬を行い、精錬炉に移して精錬し、真空脱ガスした後に連続鋳造し、ガス保護炉に移してエレクトロスラグ再溶融を行う。本発明の連続鋳造で得た純粋なエレクトロスラグマスターバッチは、エレクトロスラグ再溶融工程を経て、材料の純度をさらに向上させた。製造された鋼材料は風力発電歯車に用いられ、探傷合格率が顕著に向上させ、且つ鋼材料における大粒介在物が顕著に減少し、介在物がより細かく且つ分散する。