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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】電力制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/18 20060101AFI20221216BHJP
   H02H 5/04 20060101ALI20221216BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221216BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
H02H7/18
H02H5/04 170
H02J7/00 S
H02J3/32
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022555715
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2022019814
【審査請求日】2022-09-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペイジ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】田畠 和順
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-009909(JP,A)
【文献】特開2017-158268(JP,A)
【文献】国際公開第2014/049892(WO,A1)
【文献】特開2005-020848(JP,A)
【文献】国際公開第2007/122672(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 7/18
H02H 5/04
H02J 7/00
H02J 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出力端子対を介して入力された直流電力をエネルギーとして蓄積し、蓄積されているエネルギーを前記入出力端子対を介して直流電力として出力するように構成されたエネルギー蓄積システムと、
交流電力系統と前記エネルギー蓄積システムの前記入出力端子対との間に接続された電力変換器とを備え、
前記エネルギー蓄積システムは、前記入出力端子対の一方と前記入出力端子対の他方との間に互いに並列に接続された複数の蓄電回路を含み、
前記蓄電回路は、
複数の蓄電ユニットと、
前記蓄電ユニットに対応して設けられ、前記蓄電ユニットと前記電力変換器との間に接続される保護回路とを含み、
前記保護回路は、対応する前記蓄電ユニットに異常が発生した場合に当該蓄電ユニットと前記電力変換器との電気的接続を遮断するように構成されており
前記複数の蓄電ユニットは、互いに直列接続された第1蓄電ユニットおよび第2蓄電ユニットで構成されており、
前記第1蓄電ユニットの一端に接続された前記保護回路は、前記電力変換器の正側直流端子に接続され、前記第1蓄電ユニットの他端は、前記電力変換器の中性点に接続され、
前記第2蓄電ユニットの一端は、前記電力変換器の前記中性点に接続され、前記第2蓄電ユニットの他端に接続された前記保護回路は、前記電力変換器の負側直流端子に接続される、電力制御システム。
【請求項2】
入出力端子対を介して入力された直流電力をエネルギーとして蓄積し、蓄積されているエネルギーを前記入出力端子対を介して直流電力として出力するように構成されたエネルギー蓄積システムと、
交流電力系統と前記エネルギー蓄積システムの前記入出力端子対との間に接続された電力変換器とを備え、
前記エネルギー蓄積システムは、前記入出力端子対の一方と前記入出力端子対の他方との間に互いに並列に接続された複数の蓄電回路を含み、
前記蓄電回路は、
複数の蓄電ユニットと、
前記蓄電ユニットに対応して設けられ、前記蓄電ユニットと前記電力変換器との間に接続される保護回路とを含み、
前記保護回路は、対応する前記蓄電ユニットに異常が発生した場合に当該蓄電ユニットと前記電力変換器との電気的接続を遮断するように構成されており、
記複数の蓄電ユニットは、互いに直列接続された第1蓄電ユニットおよび第2蓄電ユニットで構成されており、
前記第1蓄電ユニットの一端に接続された前記保護回路は、前記電力変換器の正側直流端子に接続され、前記第1蓄電ユニットの他端に接続された前記保護回路は、前記電力変換器の中性点に接続され、
前記第2蓄電ユニットの一端に接続された前記保護回路は、前記電力変換器の前記中性点に接続され、前記第2蓄電ユニットの他端に接続された前記保護回路は、前記電力変換器の負側直流端子に接続される、電力制御システム。
【請求項3】
入出力端子対を介して入力された直流電力をエネルギーとして蓄積し、蓄積されているエネルギーを前記入出力端子対を介して直流電力として出力するように構成されたエネルギー蓄積システムと、
交流電力系統と前記エネルギー蓄積システムの前記入出力端子対との間に接続された電力変換器とを備え、
前記エネルギー蓄積システムは、前記入出力端子対の一方と前記入出力端子対の他方との間に互いに並列に接続された複数の蓄電回路を含み、
前記蓄電回路は、
複数の蓄電ユニットと、
前記蓄電ユニットに対応して設けられ、前記蓄電ユニットと前記電力変換器との間に接続される保護回路とを含み、
前記保護回路は、対応する前記蓄電ユニットに異常が発生した場合に当該蓄電ユニットと前記電力変換器との電気的接続を遮断するように構成されており、
前記複数の蓄電ユニットは、互いに直列接続された第1蓄電ユニット群および第2蓄電ユニット群を含み、
前記第1蓄電ユニット群および前記第2蓄電ユニット群の各々は、互いに並列に接続された2以上の蓄電ユニットを含み、
前記第1蓄電ユニット群の一端に接続された前記保護回路は、前記電力変換器の正側直流端子に接続され、前記第1蓄電ユニット群の他端は、前記電力変換器の中性点に接続され、
前記第2蓄電ユニット群の一端は、前記電力変換器の前記中性点に接続され、前記第2蓄電ユニット群の他端に接続された前記保護回路は、前記電力変換器の負側直流端子に接続される、電力制御システム。
【請求項4】
入出力端子対を介して入力された直流電力をエネルギーとして蓄積し、蓄積されているエネルギーを前記入出力端子対を介して直流電力として出力するように構成されたエネルギー蓄積システムと、
交流電力系統と前記エネルギー蓄積システムの前記入出力端子対との間に接続された電力変換器とを備え、
前記エネルギー蓄積システムは、前記入出力端子対の一方と前記入出力端子対の他方との間に互いに並列に接続された複数の蓄電回路を含み、
前記蓄電回路は、
複数の蓄電ユニットと、
前記蓄電ユニットに対応して設けられ、前記蓄電ユニットと前記電力変換器との間に接続される保護回路とを含み、
前記保護回路は、対応する前記蓄電ユニットに異常が発生した場合に当該蓄電ユニットと前記電力変換器との電気的接続を遮断するように構成されており、
記複数の蓄電ユニットは、互いに直列接続された第1蓄電ユニット群および第2蓄電ユニット群を含み、
前記第1蓄電ユニット群および前記第2蓄電ユニット群の各々は、互いに並列に接続された2以上の蓄電ユニットを含み、
前記第1蓄電ユニット群の一端に接続された前記保護回路は、前記電力変換器の正側直流端子に接続され、前記第1蓄電ユニット群の他端に接続された前記保護回路は、前記電力変換器の中性点に接続され、
前記第2蓄電ユニット群の一端に接続された前記保護回路は、前記電力変換器の前記中性点に接続され、前記第2蓄電ユニット群の他端に接続された前記保護回路は、前記電力変換器の負側直流端子に接続される、電力制御システム。
【請求項5】
前記2以上の蓄電ユニットの数は、前記蓄電ユニットに異常が発生した場合に前記電力変換器から切り離すことが許容される前記蓄電ユニットの数と同じである、請求項3または請求項4に記載の電力制御システム。
【請求項6】
前記複数の蓄電回路の各々に含まれる前記複数の蓄電ユニットの状態を監視する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、各前記蓄電ユニットのうちの1の蓄電ユニットの異常を検出した場合に、前記1の蓄電ユニットに対応する前記保護回路に対して、前記1の蓄電ユニットと前記電力変換器との電気的接続を遮断するための指令情報を送信する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電力制御システム。
【請求項7】
前記蓄電ユニットは、
複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子について、当該蓄電素子の状態を示す状態信号を取得する信号通信部とを含み、
前記信号通信部は、各前記蓄電素子の状態信号に基づいて、各前記蓄電素子の状態を代表する代表値を算出し、前記代表値を前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、前記代表値に基づいて前記蓄電ユニットの異常の有無を検出する、請求項6に記載の電力制御システム。
【請求項8】
前記保護回路は、互いに直列接続されたヒューズおよび開閉器で構成されている、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電力制御システム。
【請求項9】
前記ヒューズは、閾値以上の電流が流れた場合に溶断され、
前記閾値は、
前記ヒューズに接続された蓄電ユニットで事故が発生した場合に、他の健全な複数の蓄電ユニットから前記ヒューズに流れる事故電流の電流値以下であり、かつ、
前記入出力端子対の一方と前記電力変換器とを接続する第1母線で事故が発生した場合に前記蓄電ユニットから前記ヒューズに流れる事故電流の電流値よりも大きい、請求項8に記載の電力制御システム。
【請求項10】
前記保護回路は、閾値以上の電流が流れた場合に溶断するヒューズを含み、
前記閾値は、
前記ヒューズに接続された蓄電ユニットで事故が発生した場合に、他の健全な複数の蓄電ユニットから前記ヒューズに流れる事故電流の電流値以下であり、
前記入出力端子対の一方と前記電力変換器とを接続する第1母線で事故が発生した場合に前記蓄電ユニットから前記ヒューズに流れる事故電流の電流値よりも大きい、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電力制御システム。
【請求項11】
前記第1母線に設けられる第1母線用保護回路と、
前記エネルギー蓄積システムの前記入出力端子対の他方と前記電力変換器とを接続する第2母線に設けられる第2母線用保護回路とをさらに備え、
前記第1母線用保護回路および前記第2母線用保護回路の各々は、前記ヒューズを含む、請求項9に記載の電力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交流系統の周波数を安定化するための設備では、直流側に設けられた大容量キャパシタの放電エネルギーが、電力変換器によって交流電力に変換されることにより交流系統に放出される。一方、交流系統の交流電力は、電力変換器によって直流電力に変換されることにより充電エネルギーとして大容量キャパシタに吸収される。大容量キャパシタは、例えば、スーパーキャパシタ、ウルトラキャパシタとも称される電気二重層キャパシタ(EDLC:Electrical Double Layer Capacitor)である。
【0003】
また、BESS(Battery Energy Storage System)と称される二次電池電力貯蔵システムにおいても、上記設備と同様の機能を実現できる。具体的には、直流側の蓄電池の放電エネルギーが電力変換器を介して交流系統に放出され、交流系統の交流電力が電力変換器を介して充電エネルギーとして蓄電池に吸収される。
【0004】
電力変換器を介して直流側の蓄電装置を交流系統に連系し、蓄積された直流エネルギーを利用することにより、電力系統の周波数安定化、負荷平準化等が期待される。このように、蓄電池などに電力変換器を組み合わせたシステムとして、例えば、国際公開第2009/136641号(特許文献1)には、逆変換動作と順変換動作ができる電力変換器と、電気二重層キャパシタおよび鉛蓄電池などの直流充電部とを有する系統安定化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2009/136641号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の再生可能エネルギー電源の増加等に伴う系統要求の高度化により、大出力の電力変換装置が求められる傾向にある。大出力の電力変換装置を実現するために、電力変換装置に大容量のエネルギー蓄積システム(ESS:Energy Storage System)を組み合わせたシステム構成が考えられる。ESSの大容量化は多数の蓄電素子を直並列することにより実現される。そのため、蓄電素子の増大に伴って、ESS内で事故等の異常が発生した際に蓄電素子を適切に保護しつつ、電力変換器の運転を継続する構成が求められている。
【0007】
本開示のある局面における目的は、エネルギー蓄積システム内の蓄電素子を保護しつつ、電力変換器の運転を継続することが可能な電力制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施の形態に従う電力制御システムは、入出力端子対を介して入力された直流電力をエネルギーとして蓄積し、蓄積されているエネルギーを入出力端子対を介して直流電力として出力するように構成されたエネルギー蓄積システムと、交流電力系統とエネルギー蓄積システムの入出力端子対との間に接続された電力変換器とを備える。エネルギー蓄積システムは、入出力端子対の一方と入出力端子対の他方との間に互いに並列に接続された複数の蓄電回路を含む。蓄電回路は、1以上の蓄電ユニットと、蓄電ユニットに対応して設けられ、蓄電ユニットと電力変換器との間に接続される保護回路とを含む。保護回路は、対応する蓄電ユニットに異常が発生した場合に当該蓄電ユニットと電力変換器との電気的接続を遮断するように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る電力制御システムによると、エネルギー蓄積システム内の蓄電素子を保護しつつ、電力変換器の運転を継続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電力制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施の形態1に従う電力制御システムの構成を示すブロック図である。
図4】蓄電ユニットの構成の一例を示すブロック図である。
図5】保護回路の構成の一例を示すブロック図である。
図6】エネルギー蓄積システムにおける事故電流の経路を説明するための図である。
図7】実施の形態1の変形例1に従う電力制御システムの構成を示すブロック図である。
図8】実施の形態1の変形例2に従う電力制御システムの構成を示すブロック図である。
図9】実施の形態1の変形例3に従う電力制御システムの構成を示すブロック図である。
図10】実施の形態2に従う電力制御システムの構成を示すブロック図である。
図11】実施の形態2に従う電力制御システムの構成を示すブロック図である。
図12】実施の形態2の変形例に従う電力制御システムの構成を示すブロック図である。
図13】その他の実施の形態に従う電力制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0012】
[各実施の形態の基礎となる構成]
<電力制御システムの構成>
図1は、電力制御システム10の構成を示すブロック図である。図1では、自励式変換器として構成される電力変換器20の直流側に2つの接続用端子が設けられている。電力変換器20は、直流電力を電圧が異なる直流電力に双方向に変換できる変換器であり、絶縁型でも非絶縁型でもよく、その構成は特に限定されない。なお、電力変換器20の交流側は3相交流系統に接続されているため、u相、v相、w相用の3つの接続用端子が設けられている。図1では簡単のため1相分の交流端子のみが示されている。
【0013】
図1を参照して、電力制御システム10は、電力変換器20と、エネルギー蓄積システム(ESS:Energy Storage System)21と、制御装置22と、変圧器23と、交流電圧検出器24と、交流電流検出器25と、直流電圧検出器26と、遮断器55とを含む。
【0014】
エネルギー蓄積システム21は、入出力端子対(すなわち、正極端子29Pおよび負極端子29N)を介して入力された直流電力をエネルギーとして蓄積し、蓄積されているエネルギーを入出力端子対を介して直流電力として出力するように構成される。エネルギー蓄積システム21に蓄積されたエネルギーは、交流電力系統の周波数安定化および負荷平準化のために活用され、さらに、予備力として活用される。
【0015】
より詳細には、エネルギー蓄積システム21は、正極端子29Pと負極端子29Nとの間に直列および並列に接続された複数の蓄電素子を含む。各蓄電素子は、たとえば、電気二重層キャパシタ(EDLC:Electrical Double Layer Capacitor)などの大容量キャパシタであってもよいし、蓄電池であってもよい。図1では、1個の蓄電素子が象徴的に示されている。
【0016】
電力変換器20は、交流電力系統15とエネルギー蓄積システム21の入出力端子対との間に接続される。具体的には、電力変換器20の直流端子対(すなわち、正側直流端子28Pおよび負側直流端子28N)はエネルギー蓄積システム21の入出力端子対(すなわち、正極端子29Pおよび負極端子29N)にそれぞれ接続される。したがって、電力変換器20の定格直流電圧とエネルギー蓄積システム21の定格電圧とは等しい。また、電力変換器20の各相の交流端子は、交流電力系統15の対応する相の電力線に接続される。
【0017】
電力変換器20は、交流を直流に変換する順変換、および直流を交流に変換する逆変換を行なう。具体的には、電力変換器20は、交流電力系統15の交流電力を直流電力に変換し、当該直流電力を充電エネルギーとしてエネルギー蓄積システム21に吸収させる。逆に、電力変換器20は、エネルギー蓄積システム21の直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力を放電エネルギーとして交流電力系統15に放出する。
【0018】
電力変換器20は、スイッチング素子として用いられる複数の自己消弧型半導体素子を含む。自己消弧型半導体素子として、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、GCT(Gate Commutated Turn-off)サイリスタなどが用いられる。自己消弧型半導体素子には還流ダイオードが逆並列に接続される。電力変換器20は、2レベル/3レベルさらに多レベル方式、MMC(Modular Multilevel Converter)方式、変圧器多重方式、リアクトル並列方式、およびそれらの組み合わせのいずれであってもよい。
【0019】
変圧器23は、交流電力系統15と電力変換器20との間に接続される。変圧器23は、電力変換器20から出力される交流電力を昇圧して交流電力系統15に出力する。図1では、簡単のために単相変圧器で表しているが、実際の3相変圧器の結線には、Δ-Y結線、Δ-Δ結線、またはΔ-Δ-Y結線などが用いられる。電力変換器20がMMC方式など高電圧の交流電圧を出力可能な構成の場合には、変圧器23に代えて連系リアクトルを設けてもよい。
【0020】
交流電圧検出器24は、交流電力系統15への連系点17の交流電圧Vacを検出する。交流電圧検出器24として、例えば、電圧変成器が用いられる。
【0021】
交流電流検出器25は、連系点17と変圧器23との間を流れる交流電流Iacを検出する。交流電流検出器25として、例えば、電流変成器が用いられる。
【0022】
直流電圧検出器26は、エネルギー蓄積システム21の入出端子対(すなわち、正極端子29Pおよび負極端子29N)の間の直流電圧Vdcを検出する。
【0023】
制御装置22は、検出された交流電圧Vac、交流電流Iac、および直流電圧Vdcに基づいて、電力変換器20の動作を制御するための制御信号(例えば、パルス幅変調(Pulse Width Modulation)信号)PSを生成する。制御装置22は、電力変換器20の動作を制御することによって、エネルギー蓄積システム21の充放電を制御する。また、制御装置22は、通常時において、以下のような制御を実行する。
【0024】
制御装置22は、交流電圧Vacから求められた交流電力系統15の基本波周波数に基づいて、検出した基本波周波数を定格値に近付けるための自動周波数調整を行なう。制御装置22は、エネルギー蓄積システム21の直流電圧Vdcの検出値を直流電圧目標値に近付けるための自動DC電圧調整を行なう。この場合、交流電力系統15に有効電力を放出した場合には電圧目標値は減少し、交流電力系統15から有効電力を吸収した場合には電圧目標値は増加する。これらの自動周波数調整および自動DC電圧調整によって有効電力目標値Prefが設定される。
【0025】
制御装置22は、交流電圧Vacの検出値に基づいて、交流電圧Vacの検出値を定格値に近付けるための自動AC電圧調整を行う。さらに、制御装置22は、交流電圧Vacおよび交流電流Iacの各検出値から算出された無効電力測定値に基づいて、無効電力測定値を目標値に近付けるための自動無効電力調整を行う。これらの自動AC電圧調整および自動無効電力調整によって無効電力目標値Qrefが設定される。
【0026】
制御装置22は、三相の交流電流Iacの検出値を変数変換することにより、有効電流成分および無効電流成分を計算する。同様に、制御装置22は、三相の交流電圧Vacの検出値を変数変換することにより、有効電圧成分および無効電圧成分を計算する。制御装置22は、算出した有効電流成分、無効電流成分、有効電圧成分、および無効電圧成分に基づいて、有効電力目標値Prefおよび無効電力目標値Qrefが得られるように、電力変換器20の各相の電圧指令値Vrefを生成する。
【0027】
制御装置22は、電圧指令値Vrefとキャリア信号とを比較することによってPWM信号PSを生成する。生成されたPWM信号PSは、電力変換器20を構成する自己消弧型半導体素子の制御電極に供給される。
【0028】
遮断器55は、交流電力系統15と電力変換器20との間に接続される。図1の例では、遮断器55は、連系点17と変圧器23との間に接続される。
【0029】
<制御装置のハードウェア構成>
図2は、制御装置22のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2には、コンピュータによって制御装置22を構成する例が示される。
【0030】
図2を参照して、制御装置22は、1つ以上の入力変換器70と、1つ以上のサンプルホールド回路71と、マルチプレクサ(MUX:multiplexer)72と、A/D(Analog to Digital)変換器73とを含む。また、制御装置22は、1つ以上のCPU(Central Processing Unit)74と、RAM(Random Access Memory)75と、ROM(Read Only Memory)76とを含む。さらに、制御装置22は、1つ以上の入出力インターフェイス77と、補助記憶装置78と、上記の構成要素間を相互に接続するバス79とを含む。
【0031】
入力変換器70は、入力チャンネルごとに補助変成器を有する。各補助変成器は、図1の各電気量検出器による検出信号を、後続する信号処理に適した電圧レベルの信号に変換する。
【0032】
サンプルホールド回路71は、入力変換器70ごとに設けられる。サンプルホールド回路71は、対応の入力変換器70から受けた電気量を表す信号を規定のサンプリング周波数でサンプリングして保持する。
【0033】
マルチプレクサ72は、複数のサンプルホールド回路71に保持された信号を順次選択する。A/D変換器73は、マルチプレクサ72によって選択された信号をデジタル値に変換する。なお、複数のA/D変換器73を設けることによって、複数の入力チャンネルの検出信号に対して並列的にA/D変換を実行するようにしてもよい。
【0034】
CPU74は、制御装置22の全体を制御し、プログラムに従って演算処理を実行する。揮発性メモリとしてのRAM75および不揮発性メモリとしてのROM76は、CPU74の主記憶として用いられる。ROM76は、プログラムおよび信号処理用の設定値などを収納する。補助記憶装置78は、ROM76に比べて大容量の不揮発性メモリであり、プログラムおよび電気量検出値のデータなどを格納する。
【0035】
入出力インターフェイス77は、CPU74および外部装置の間で通信する際のインターフェイス回路である。
【0036】
なお、制御装置22の少なくとも一部をFPGA(Field Programmable Gate Array)および、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の回路を用いて構成してもよい。制御装置22の少なくとも一部は、アナログ回路によって構成することもできる。
【0037】
実施の形態1.
実施の形態1の電力制御システム10では、制御装置22がエネルギー蓄積システム21内において事故等により異常が検出された蓄電ユニットをエネルギー蓄積システム21および電力変換器20から切り離す構成について説明する。
【0038】
<エネルギー蓄積システムの構成>
図3は、実施の形態1に従う電力制御システムの構成を示すブロック図である。図3を参照して、電力制御システム10Aのエネルギー蓄積システム21Aは、図1のエネルギー蓄積システム21に対応するが、便宜上“A”との符号を付記している。これは、以下の図においても同様である。
【0039】
需要の変動に合わせて電力を供給可能とするグリッドフォーミング制御を実現するためには、高出力な有効電力の入出力を高速に実施する必要がある。また、これを実現可能なレベルの大容量のエネルギー蓄積システムを構成するためには、多数の蓄電素子を直並列に接続する必要がある。このような多数の蓄電素子を有する大容量のエネルギー蓄積システムに含まれる蓄電ユニットにおいて事故が発生した場合に、電力変換器20からエネルギー蓄積システム全体が切り離されると、電力変換器20の運転時と停止時の出力差分が大きくなり、交流電力系統への影響が大きくなる。そこで、エネルギー蓄積システム21Aでは、蓄電ユニット内で事故が発生した場合には、当該蓄電ユニット40のみを電力変換器20から切り離すように構成される。
【0040】
エネルギー蓄積システム21Aは、正極端子29Pと負極端子29Nとの間に互いに並列に接続された複数の蓄電回路50_1A,50_2A,50_3A(以下、「蓄電回路50」とも総称する。)を含む。蓄電回路50は、保護回路30u,30d(以下、「保護回路30」とも総称する。)と、蓄電ユニット40u,40d(以下、「蓄電ユニット40」とも総称する。)とを含む。図1では図解を容易にするために、各蓄電ユニット40および制御装置22間の信号線と、制御装置22および保護回路30間の信号線とは、一部まとめて記載されているが、実際には蓄電ユニット40ごとおよび保護回路30ごとに設けられている。
【0041】
保護回路30は、蓄電ユニット40に対応して設けられ、蓄電ユニット40と電力変換器20との間に接続される。具体的には、エネルギー蓄積システム21Aにおいては、蓄電ユニット40uに対応して保護回路30uが設けられ、蓄電ユニット40dに対応して保護回路30dが設けられている。
【0042】
保護回路30u,30dおよび蓄電ユニット40u,40dは互いに直列接続されている。具体的には、蓄電ユニット40uの一端(例えば、上端)には保護回路30uが接続され、蓄電ユニット40uの他端(例えば、下端)には中性線81(あるいは端子29C)および蓄電ユニット40dが接続される。蓄電ユニット40dの上端には中性線81および蓄電ユニット40uが接続され、蓄電ユニット40dの下端には保護回路30dが接続される。保護回路30uの上端は、正極端子29Pおよび正極母線80Pを介して電力変換器20の正側直流端子28Pに接続される。保護回路30dの下端は、負極端子29Nおよび負極母線80Nを介して電力変換器20の負側直流端子28Nに接続される。
【0043】
エネルギー蓄積システム21Aの正極端子29Pと電力変換器20の正側直流端子28Pとは、正極母線80Pを介して接続される。エネルギー蓄積システム21Aの負極端子29Nと電力変換器20の負側直流端子28Nとは、負極母線80Nを介して接続される。エネルギー蓄積システム21Aの端子29Cと電力変換器20の中性点28Cとは、中性線81を介して接続される。
【0044】
制御装置22は、蓄電ユニット40の状態を示す状態情報を蓄電ユニット40から受信し、複数の蓄電回路50の各々に含まれる蓄電ユニット40の状態を監視する。状態情報は、蓄電ユニット40に含まれる蓄電素子の電圧値および温度等を含む。
【0045】
図4は、蓄電ユニット40の構成の一例を示すブロック図である。図4を参照して、蓄電ユニット40は、複数の蓄電素子41と、信号通信部43とを含む。複数の蓄電素子41は、互いに直列接続されている。
【0046】
信号通信部43は、複数の蓄電素子41について、当該蓄電素子41の状態を示す状態信号を取得する。具体的には、信号通信部43は、各蓄電素子41の状態を検出する検出器(図示しない)から状態信号を受信する。状態信号は、蓄電素子41の電圧を示す信号、蓄電素子41の温度を示す信号を含む。
【0047】
信号通信部43は、各蓄電素子41の状態信号に基づいて、各蓄電素子41の状態を代表する状態代表値を算出する。例えば、信号通信部43は、各蓄電素子41の電圧を示す信号に基づいて、各蓄電素子41の電圧平均値または最大電圧値を状態代表値として算出する。また、信号通信部43は、各蓄電素子41の温度を示す信号に基づいて、各蓄電素子41の最大温度を状態代表値として算出する。
【0048】
信号通信部43は、算出した状態代表値を制御装置22に送信する。制御装置22は、状態代表値に基づいて蓄電ユニット40の異常の有無を検出する。状態代表値が各蓄電素子41の電圧平均値である場合について説明する。制御装置22は、当該電圧平均値が規定電圧値以上である場合に蓄電ユニット40に異常が発生したと判断する(すなわち、蓄電ユニット40の異常を検出する)。状態代表値が各蓄電素子41の最大電圧値である場合についても同様である。
【0049】
次に、状態代表値が各蓄電素子41の最大温度である場合について説明する。制御装置22は、当該最大温度が規定温度以上である場合に蓄電ユニット40に異常が発生したと判断する。典型的には、制御装置22は、エネルギー蓄積システム21A内の蓄電ユニット40において事故(例えば、地絡事故等)が発生したと判断する。
【0050】
図4の構成によると、信号通信部43によって各蓄電素子41の状態の代表値が算出され、当該代表値が制御装置22へ送信される。そのため、蓄電ユニット40から制御装置22へ送信される信号数が低減される。また、各蓄電素子41から制御装置22へ直接信号が送信される場合と比較して信号線を低減することもできる。これにより、システム全体の規模を小さくすることができる。
【0051】
再び、図3を参照して、保護回路30は、対応する蓄電ユニット40に異常が発生した場合に当該蓄電ユニット40と電力変換器20との電気的接続を遮断するように構成されている。
【0052】
図5は、保護回路30の構成の一例を示すブロック図である。図5を参照して、保護回路30は、開閉器31と、ヒューズ33とを含む。開閉器31とヒューズ33とは互いに直列接続されている。開閉器31は、例えば、遮断器、断路器である。ヒューズ33は、閾値以上の電流が流れた場合に溶断される。
【0053】
制御装置22は、各蓄電ユニット40のうちの1の蓄電ユニット40(例えば、蓄電ユニット40u)の異常を検出した場合、異常が検出された蓄電ユニット40において事故が発生したと判断する。この場合、蓄電ユニット40に大きな事故電流が流れ込むため、当該蓄電ユニット40を電力変換器20から切り離す必要がある。したがって、制御装置22は、当該蓄電ユニット40に対応する保護回路30(例えば、保護回路30u)に対して、当該蓄電ユニット40と電力変換器20との電気的接続を遮断するための指令情報(例えば、開放指令情報)を送信する。具体的には、指令情報は、保護回路30の開閉器31に対して出力される。開閉器31は、当該指令情報に従って開放される。これにより、蓄電ユニット40uと電力変換器20との電気的接続は遮断される。
【0054】
保護回路30は開閉器31およびヒューズ33を組み合わせることにより構成される。当該構成を有する保護回路30は、保護回路が開閉器31のみで構成されている場合と比較して以下のような利点がある。
【0055】
例えば、蓄電素子として電気二重層キャパシタ等の内部抵抗が小さい素子を適用する場合、短絡電流の立ち上がりが早く波高値も大きい。また、事故電流ループの抵抗値、インダクタンス値および静電容量値によるが、事故電流波形が直流性となり得る(すなわち、零点を形成しない波形となり得る)。このような事故電流を開閉器31で高速に遮断しようとすると、遮断電流定格の大きい直流遮断器が必要となり、保護回路の規模が大きくなる。しかし、保護回路30には開閉器31に加えてヒューズ33が設けられているため、事故発生時において、ヒューズ33によって事故電流を高速に遮断しつつ、開閉器31によって事故回路を確実に切り離すことができる。また、遮断電流定格の大きい直流遮断器を使用する必要がないため、保護回路30の規模を小さくでき、開閉器31のコストを低減することもできる。
【0056】
再び、図3を参照して、例えば、蓄電ユニット40uにおいて事故が発生した場合を想定する。制御装置22は、蓄電ユニット40uの異常を検出して、保護回路30uに開放指令を出力する。これにより、保護回路30uの開閉器31は、蓄電ユニット40uと電力変換器20との電気的接続を遮断する。残りの健全な各蓄電ユニット40(例えば、蓄電回路50_1の蓄電ユニット40d、および蓄電回路50_2,50_3の各蓄電ユニット40)は電力変換器20と電気的に接続された状態である。そのため、電力制御システム10A(例えば、電力変換器20)は運転を継続することができる。
【0057】
なお、上記の場合では、蓄電回路50_1における蓄電ユニット40uのみが電気的に遮断され、蓄電ユニット40dは電力変換器20と接続された状態である。そのため、エネルギー蓄積システム21Aにおいて、中性線81よりも上側の蓄電容量と、中性線81よりも下側の蓄電容量とがアンバランスになる。
【0058】
そこで、電力変換器20の制御の容易化のため、上側の蓄電容量と下側の蓄電容量とのバランスを取るために、中性線81と負極端子29Nとの間に接続された各蓄電ユニット40dのうちの1の蓄電ユニット40dと電力変換器20との電気的接続をさらに遮断してもよい。例えば、制御装置22は、蓄電回路50_1の蓄電ユニット40dに対応して設けられた保護回路30dに開放指令を送信することによって、当該蓄電ユニット40dを電力変換器20およびエネルギー蓄積システム21Aから切り離してもよい。なお、制御装置22は、蓄電回路50_2または蓄電回路50_3の保護回路30dに開放指令を送信してもよい。これにより、上側の蓄電容量と下側の蓄電容量とをバランスさせることができる。
【0059】
上記のエネルギー蓄積システム21Aによると、内部の蓄電ユニット40において事故が発生した場合でも、エネルギー蓄積システム21A全体を電力変換器20から長時間切り離す必要はなく、健全な蓄電ユニット40を用いて電力変換器20の運転を継続することができ、電力制御システム全体の信頼性および稼働率が向上する。
【0060】
(変形例1)
上述した図5のエネルギー蓄積システム21Aによると、事故が発生した蓄電ユニット40をエネルギー蓄積システム21Aから切り離すことができるものの、図6に示すように、蓄電ユニット40自体においては事故電流が流れ続けて、蓄電ユニット40内の素子等が過電流などにより破壊される場合がある。
【0061】
図6は、エネルギー蓄積システム21Aにおける事故電流の経路を説明するための図である。図6では、図面の容易化のため、制御装置22および各信号線等は図示していない。図6を参照して、蓄電回路50_3の蓄電ユニット40uで地絡事故が発生したとする。この場合、蓄電ユニット40u、グランド、中性線81、蓄電ユニット40uの順の経路で事故電流が継続して流れる。そのため、蓄電ユニット40u自体が過電流により破壊されてしまう可能性がある。そこで、実施の形態1の変形例1では、事故が発生した蓄電ユニット40自体の破壊を防止する構成について説明する。
【0062】
図7は、実施の形態1の変形例1に従う電力制御システムの構成を示すブロック図である。図7を参照して、電力制御システム10Bのエネルギー蓄積システム21Bは、正極端子29Pと負極端子29Nとの間に互いに並列に接続された複数の蓄電回路50_1B,50_2B,50_3B(以下、「蓄電回路50B」とも総称する。)を含む。蓄電回路50Bは、図3の蓄電回路50Aに保護回路30uc,30dcを追加した構成である。
【0063】
エネルギー蓄積システム21Bにおいては、蓄電ユニット40uに対応して保護回路30u,30ucが設けられ、蓄電ユニット40dに対応して保護回路30d,30dcが設けられている。
【0064】
保護回路30ucは、蓄電ユニット40uと中性線81との間に接続される。具体的には、保護回路30ucの上端は、蓄電ユニット40uに接続される。保護回路30ucの下端は、端子29Cおよび中性線81を介して電力変換器20の中性点28Cに接続される。保護回路30dcは、蓄電ユニット40dと中性線81との間に接続される。具体的には、保護回路30dcの上端は、端子29Cおよび中性線81を介して電力変換器20の中性点28Cに接続される。保護回路30udの下端は、蓄電ユニット40dに接続される。
【0065】
例えば、蓄電ユニット40uにおいて事故が発生した場合を想定する。制御装置22は、蓄電ユニット40uの異常を検出して、対応する保護回路30uおよび保護回路30ucに開放指令を出力する。これにより、保護回路30u,30ucの各開閉器31が開放され、蓄電ユニット40uと中性線81との電気的接続が遮断される。したがって、図6で説明したような事故電流の経路を遮断することができる。
【0066】
なお、上述したように、中性線81よりも上側の蓄電容量と、中性線81よりも下側の蓄電容量とのバランスを取るために、制御装置22は、保護回路30dc,30dに開放指令を送信して、当該蓄電ユニット40dをエネルギー蓄積システム21Bから切り離してもよい。
【0067】
エネルギー蓄積システム21Bによると、蓄電ユニット40において地絡事故が発生した場合の事故電流、あるいは蓄電ユニット40と中性線81との間で短絡事故が発生した場合の事故電流を遮断できる。そのため、エネルギー蓄積システム21Aの利点に加えて、蓄電ユニット40自体の破壊を防ぐことができる。
【0068】
(変形例2)
図8は、実施の形態1の変形例2に従う電力制御システムの構成を示すブロック図である。図8を参照して、電力制御システム10Cのエネルギー蓄積システム21Cは、正極端子29Pと負極端子29Nとの間に互いに並列に接続された複数の蓄電回路50_1C,50_2C(以下、「蓄電回路50C」とも総称する。)を含む。蓄電回路50Cは、蓄電ユニット40u_1,40u_2を含む第1蓄電ユニット群と、蓄電ユニット40d_1,40d_2を含む第2蓄電ユニット群と、保護回路30u,30dとを含む。第1蓄電ユニット群と、第2蓄電ユニット群と、保護回路30u,30dとは互いに直列接続されている。
【0069】
蓄電ユニット40u_1および蓄電ユニット40u_2は互いに並列接続され、蓄電ユニット40d_1および蓄電ユニット40d_2は互いに並列接続される。第1蓄電ユニット群(すなわち、蓄電ユニット40u_1,40u_2)の上端は、保護回路30uに接続される。第1蓄電ユニット群の下端は、端子29Cおよび中性線81を介して電力変換器20の中性点28Cに接続される。第2蓄電ユニット群(すなわち、蓄電ユニット40d_1,40d_2)の上端は、端子29Cおよび中性線81を介して中性点28Cに接続される。第2蓄電ユニット群の下端は、保護回路30dに接続される。
【0070】
エネルギー蓄積システム21Cにおいては、第1蓄電ユニット群(すなわち、蓄電ユニット40u_1,40u_2)に対応して保護回路30uが設けられ、第2蓄電ユニット群(すなわち、蓄電ユニット40d_1,40d_2)に対応して保護回路30dが設けられている。すなわち、蓄電ユニット群を構成する2つの蓄電ユニット40に対して1つの保護回路30が設けられている。
【0071】
例えば、蓄電ユニット40u_1において事故が発生した場合を想定する。制御装置22は、蓄電ユニット40u_1の異常を検出して、対応する保護回路30uに開放指令を出力する。これにより、保護回路30uの開閉器31は、蓄電ユニット40u_1,40u_2と電力変換器20との電気的接続を遮断する。
【0072】
エネルギー蓄積システム21Cによると、複数の蓄電ユニット40に対して1つの保護回路30が設けられている。そのため、エネルギー蓄積システム21Aよりも、保護回路30の数を低減できる。そのため、システム全体としての規模を低減し、コストを削減することができる。
【0073】
(変形例3)
変形例3の構成は、変形例2と変形例1とを組み合わせた構成に対応する。
【0074】
図9は、実施の形態1の変形例3に従う電力制御システムの構成を示すブロック図である。図9を参照して、電力制御システム10Dのエネルギー蓄積システム21Dは、正極端子29Pと負極端子29Nとの間に互いに並列に接続された複数の蓄電回路50_1D,50_2D(以下、「蓄電回路50D」とも総称する。)を含む。蓄電回路50Dは、図8の蓄電回路50Cに保護回路30uc,30dcを追加した構成である。
【0075】
エネルギー蓄積システム21Dにおいては、蓄電ユニット40u_1,40u_2に対応して保護回路30u,30ucが設けられ、蓄電ユニット40d_1,40d_2に対応して保護回路30d,30dcが設けられている。
【0076】
保護回路30ucは、蓄電ユニット40u_1,40u_2と中性線81との間に接続される。具体的には、保護回路30ucの上端は、第1蓄電ユニット(すなわち、蓄電ユニット40u_1,40u_2)が接続される。保護回路30ucの下端は、端子29Cおよび中性線81を介して中性点28Cに接続される。保護回路30dcは、第2蓄電ユニット群(すなわち、蓄電ユニット40d_1,40d_2)と中性線81との間に接続される。具体的には、保護回路30dcの上端は、端子29Cおよび中性線81を介して中性点28Cに接続される。保護回路30udの下端は、第2蓄電ユニット群に接続される。
【0077】
例えば、蓄電ユニット40u_1において事故が発生した場合を想定する。制御装置22は、蓄電ユニット40u_1の異常を検出して、対応する保護回路30uおよび保護回路30ucに開放指令を出力する。これにより、保護回路30u,30ucの各開閉器31が開放され、蓄電ユニット40u_1,40u_2と中性線81との電気的接続が遮断される。
【0078】
エネルギー蓄積システム21Dは、エネルギー蓄積システム21Bおよび21Cの利点を有する。
【0079】
(変形例4)
上記のように、エネルギー蓄積システム21を大容量化するためには、蓄電ユニット40の数を増大させることが一般的である。電力制御システムにおいて要求されるエネルギー蓄積システム21の容量を確保するために必要な蓄電ユニット数をN(ただし、Nは2以上の整数)とする。このとき、蓄電ユニット40に異常が発生した場合であってもシステムの要求を満たすために、蓄電ユニット40の冗長数をMとして、エネルギー蓄積システム21の全体の蓄電ユニット数を“N+M”とすることが考えられる。
【0080】
変形例4に従うエネルギー蓄積システム21では、1つの保護回路30に接続される蓄電ユニット40の数を“M”とする。例えば、M=1の場合には、1つの保護回路30に1つの蓄電ユニット40が接続される。これは、図3の蓄電回路50Aおよび図7の蓄電回路50Bに示す構成に相当する。具体的には、蓄電回路50Aでは、1つの保護回路30uに1つの蓄電ユニット40uが接続される。蓄電回路50Bでは、保護回路30u,30ucの各々に1つの蓄電ユニット40uが接続される。
【0081】
例えば、M=2の場合には、1つの保護回路30に2つの蓄電ユニット40が接続される。これは、図8の蓄電回路50Cおよび図9の蓄電回路50Dに示す構成に相当する。具体的には、蓄電回路50Cでは、1つの保護回路30uに2つの蓄電ユニット40u_1,40u_2が接続される。蓄電回路50Dでは、保護回路30u,30ucの各々に2つの蓄電ユニット40u_1,40u_2が接続される。
【0082】
冗長数Mは、例えば、蓄電素子の故障率等から定量的に計算されてもよいし、電力制御システムの設計思想に応じて任意に増加させてもよい。冗長数Mに応じて保護回路30の数を設定することによって、ある蓄電ユニット40の異常発生時にエネルギー蓄積システム21から切り離される蓄電ユニット数は“M”となる。すなわち、冗長数Mは、ある蓄電ユニット40に異常が発生した場合に電力変換器20から切り離すことが許容される蓄電ユニット数と同じ数に設定される。そのため、エネルギー蓄積システム21はシステムから要求される蓄電ユニット数Nを確保でき、システム全体で必要とされる保護回路30の数を合理化できる。
【0083】
したがって、ある蓄電ユニット40の異常発生時においても、エネルギー蓄積システム21の容量要求を満たすことができるとともに、保護回路30の規模およびコストを低減できる。
【0084】
実施の形態2.
実施の形態1では、蓄電ユニット40の異常が検出された場合、制御装置22は、対応する保護回路30に開放指令を送信して、蓄電ユニット40を切り離す構成について説明した。実施の形態2では、保護回路30に少なくともヒューズ33を含んでおり、かつ、母線事故時にはヒューズ33が溶断されず、蓄電ユニット40の事故時にヒューズ33が溶断される構成について説明する。
【0085】
図10および図11は、実施の形態2に従う電力制御システムの構成を示すブロック図である。図10では、母線(例えば、正極母線80P)で事故が発生した場合の事故電流の経路が示されている。図11では、蓄電ユニット40内で事故が発生した場合の事故電流の経路が示されている。
【0086】
図10を参照して、電力制御システム10Eのエネルギー蓄積システム21Eは、制御装置22が各保護回路30および各蓄電ユニット40と信号線で接続されていない点で、実施の形態1の各エネルギー蓄積システム21と異なる。
【0087】
エネルギー蓄積システム21Eは、正極端子29Pと負極端子29Nとの間に互いに並列に接続された複数の蓄電回路50_1E,50_2E,50_3E(以下、「蓄電回路50E」とも総称する。)を含む。蓄電回路50Eは、保護回路30ux,30dxと、蓄電ユニット40u,40dとを含む。保護回路30ux,30dxは、図5のヒューズ33のみで構成されている点で、保護回路30u,30dとは異なる。
【0088】
エネルギー蓄積システムに関連する事故は、主に、電力変換器20および蓄電回路50間を接続する母線(例えば、正極母線80Pまたは負極母線80N)で発生する母線事故と、蓄電ユニット40内で発生する蓄電ユニット事故とが存在する。
【0089】
図10に示すように、正極母線80Pにおいて事故が発生した場合、各蓄電ユニット40から正極母線80Pの事故点に向かって事故電流が流れる。この場合、保護回路30uxに流れる電流は、保護回路30uxに接続されている蓄電ユニット40から供給される電流である。
【0090】
一方、図11に示すように、蓄電回路50_1Eの蓄電ユニット40uで事故が発生した場合、他の健全な蓄電ユニット40(例えば、蓄電回路50_2E,50_3Eの蓄電ユニット40)から、蓄電ユニット40uの事故点に向かって事故電流が流れる。この場合、当該事故が発生した蓄電ユニット40uに接続された保護回路30uxには、他の健全な蓄電ユニット40からの合計電流が流れる。
【0091】
したがって、蓄電ユニット40uで事故が発生した場合に当該蓄電ユニット40uに接続された保護回路30uxに流れる電流は、母線事故が発生した場合に当該保護回路30uxに流れる電流よりも大きいことが理解される。
【0092】
そこで、実施の形態2では、蓄電ユニット40uで事故が発生した場合にはヒューズ33が溶断されるが、母線事故が発生した場合にはヒューズ33が溶断されないように、ヒューズ33が溶断される電流の閾値Thを設定する。
【0093】
具体的には、閾値Thは、母線(例えば、正極母線80P)で事故が発生した場合に、ヒューズ33に接続された蓄電ユニット40(例えば、蓄電回路50_1Eの蓄電ユニット40u)からヒューズ33に流れる事故電流の電流値よりも大きい値に設定される。これにより、母線事故が発生した場合であっても蓄電ユニット40に接続されたヒューズ33は溶断されない。母線事故時には母線が故障しているため、いずれにしても電力制御システムの運用継続が不可能である。したがって、母線事故時にも電力変換器20が破壊されないような機器設計としておけば、ヒューズ33が溶断されなくてもシステム運用に大きな影響を与えない。また、ヒューズ33が溶断されないため、母線のみを復旧すればよく、各ヒューズ33の交換が不要となる。
【0094】
さらに、閾値Thは、ヒューズ33に接続された蓄電ユニット40(例えば、蓄電回路50_1Eの蓄電ユニット40u)で事故が発生した場合に、他の健全な複数の蓄電ユニット40(例えば、蓄電回路50_2E,50_3Eの蓄電ユニット40u)からヒューズ33に流れる事故電流の電流値以下に設定される。これにより、事故が発生した蓄電ユニット40に接続されたヒューズ33は溶断されるため、当該蓄電ユニット40を電力変換器20およびエネルギー蓄積システム21Eから切り離すことができる。なお、この場合、健全な蓄電ユニット40に接続されたヒューズ33には、母線事故時の電流と同程度の電流しか流れないため、当該ヒューズ33は溶断されない。すなわち、健全な蓄電ユニット40は、電力変換器20およびエネルギー蓄積システム21Eから切り離されない。
【0095】
実施の形態2によると、蓄電ユニット事故時において、事故が発生した蓄電ユニット40がエネルギー蓄積システム21Eから高速かつ自発的に切り離されるため、システムへの影響を最小限に抑えることができる。また、母線事故時の復旧時にヒューズを交換する必要がない。
【0096】
(変形例)
図12は、実施の形態2の変形例に従う電力制御システムの構成を示すブロック図である。図12を参照して、電力制御システム10Fは、図11の電力制御システム10Eに、母線用保護回路35P,35Nを追加した構成を有する。
【0097】
母線用保護回路35Pは正極母線80Pに設けられ、母線用保護回路35Nは負極母線80Nに設けられる。母線用保護回路35P,35Nは、ヒューズ33のみで構成されていてもよいし、開閉器31のみで構成されていてもよいし、ヒューズ33と開閉器31との組み合わせで構成されていてもよい。母線用保護回路35P,35Nが開閉器31を含む場合、母線事故時に、制御装置22から開閉器31に開放指令が出力される。例えば、制御装置22は、母線に設けられた電流検出器(図示しない)により検出された電流値を受信し、当該電流値が規定値以上である場合(すなわち、母線の過電流を検出した場合)に、開閉器31に開放指令を出力する。
【0098】
母線事故時に、母線用保護回路35P,35Nの動作により過電流を遮断しても電力制御システムの運転継続はできない。しかし、母線用保護回路35P,35Nが動作しない場合には過電流が遮断できないため、当該過電流に耐え得る電力変換器20の機器設計が必要となる。そこで、本変形例では、母線事故時には母線用保護回路35P,35Nによって過電流を遮断する。これにより、電力変換器20の過大設計を防止できる。
【0099】
なお、図12のように母線用保護回路35P,35Nが配置されている場合、蓄電回路50E間の接続線において発生した事故を保護することはできない。しかし、通常、当該接続線は物理的に短いため、事故が発生する確率は、電力変換器20からエネルギー蓄積システム21Eまでの区間の母線(すなわち、正極母線80Pおよび負極母線80N)で発生する可能性が高いため、母線に保護回路を設けることで合理的な保護が可能となる。設置条件等の制約により、蓄電回路50E間の接続線が長くなる場合には、当該接続線に保護回路を設けてもよい。
【0100】
その他の実施の形態.
(1)上述した実施の形態では、中性線81を有する構成について説明したが、中性線81を有さない構成であってもよい。
【0101】
図13は、その他の実施の形態に従う電力制御システム10Gの構成を示すブロック図である。図13を参照して、電力制御システム10Gのエネルギー蓄積システム21Gは、正極端子29Pと負極端子29Nとの間に互いに並列に接続された複数の蓄電回路50_1G,50_2G,50_3G(以下、「蓄電回路50G」とも総称する。)を含む。蓄電回路50Gは、保護回路30u,30dと、蓄電ユニット40とを含む。エネルギー蓄積システム21Gにおいては、蓄電ユニット40に対応して保護回路30u,30dが設けられる。
【0102】
例えば、蓄電回路50_1Gの蓄電ユニット40において事故が発生した場合を想定する。制御装置22は、蓄電ユニット40の異常を検出して、保護回路30u,30dに開放指令を出力する。これにより、蓄電回路50_1Gの蓄電ユニット40はエネルギー蓄積システム21Gおよび電力変換器20から切り離される。
【0103】
なお、図8の構成のように、1つの保護回路30に対して、互いに並列接続された複数の蓄電ユニット40を設ける構成であってもよい。
【0104】
(2)上述した実施の形態1および2を組み合わせた構成であってもよい。具体的には、実施の形態1の保護回路30のヒューズ33に、実施の形態2で説明したような閾値Thを有するヒューズ33を採用する構成であってもよい。
【0105】
(3)上述の実施の形態として例示した構成は、本開示の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。また、上述した実施の形態において、他の実施の形態で説明した処理および構成を適宜採用して実施する場合であってもよい。
【0106】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
10,10A~10G 電力制御システム、15 交流電力系統、17 連系点、20 電力変換器、21,21A~21E,21G エネルギー蓄積システム、22 制御装置、23 変圧器、24 交流電圧検出器、25 交流電流検出器、26 直流電圧検出器、28C 中性点、28N 負側直流端子、28P 正側直流端子、29C 端子、29N 負極端子、29P 正極端子、30 保護回路、31 開閉器、33 ヒューズ、35N,35P 母線用保護回路、40 蓄電ユニット、41 蓄電素子、43 信号通信部、50 蓄電回路、55 遮断器、70 入力変換器、71 サンプルホールド回路、72 マルチプレクサ、73 A/D変換器、75 RAM、76 ROM、77 入出力インターフェイス、78 補助記憶装置、79 バス、80N 負極母線、80P 正極母線、81 中性線。
【要約】
電力制御システム(10A)は、エネルギー蓄積システム(21A)と、交流電力系統(15)とエネルギー蓄積システム(21A)との間に接続された電力変換器(20)とを備える。エネルギー蓄積システム(21A)は、互いに並列に接続された複数の蓄電回路(50_1A~50_3A)を含む。蓄電回路(50_1A)は、1以上の蓄電ユニット(40u)と、蓄電ユニット(40u)と電力変換器(20)との間に接続される保護回路(30u)とを含む。保護回路(30u)は、対応する蓄電ユニット(40u)に異常が発生した場合に当該蓄電ユニット(40u)と電力変換器(20)との電気的接続を遮断するように構成されている。
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