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  • 特許-繊維混合合成樹脂バインダ 図1
  • 特許-繊維混合合成樹脂バインダ 図2
  • 特許-繊維混合合成樹脂バインダ 図3
  • 特許-繊維混合合成樹脂バインダ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】繊維混合合成樹脂バインダ
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/30 20060101AFI20221219BHJP
   E01C 11/24 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
E01C7/30
E01C11/24
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017128918
(22)【出願日】2017-06-30
(65)【公開番号】P2019011611
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】505113849
【氏名又は名称】株式会社 ライジングサン
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼森 省三
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-023502(JP,A)
【文献】特開2014-025324(JP,A)
【文献】特開平09-088002(JP,A)
【文献】特開2017-115485(JP,A)
【文献】特開2004-083715(JP,A)
【文献】特許第5180572(JP,B2)
【文献】特開2004-067917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 7/30
E01C 11/24
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
バインダは、主剤と硬化剤の2液からなるエポキシ系合成樹脂である請求項1または2記載の繊維混合合成樹脂バインダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、珪砂や栗石、あるいは発泡材などの骨材をポーラスな状態で接合するための合成樹脂バインダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からビニルエステル系の合成樹脂を用いたバインダは公知である。そして、このビニルエステル系のバインダを用いて珪砂や粒度が小さい栗石などを接着して一体とし、例えば透水性を有する板状の材料や舗装材として利用することが知られている。
【0003】
しかしながら、このような構成では、栗石などのように比較的粒度が大きい素材を接着して一体とする場合にはそれぞれの被接着物の間には隙間を確保することができるが、粒度が小さい珪砂のような素材に利用する場合には、図4に示すように非接着物の間に合成樹脂の薄膜が形成されるため、優れた透水性を確保することができないという問題がある。
【0004】
粒度が小さい非接着物を接着してポーラスな状態を得ることができれば、軽量で透水性が高く、かつ吸音性の高い板状体や舗装材などを達成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-83715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1はビニルエステル系のバインダにセラミックファイバやカーボンファイバなどを混合したバインダが開示されている。しかしながら、この特許文献1では液むらがなく短繊維を均等に混合することを目的とするものであって、接着後の骨材がポーラスをポーラスな状態とすることは基本的に考慮していない。
【0007】
本発明は、特に特許文献1に記載した発明をさらに改良するもので、特定の繊維をバインダに予め混合することによって、骨材間に薄膜が生じることがなく、かつバインダの接着力を低下させることがない繊維混合合成樹脂バインダを提供することを目的とするものである。また、このバインダを用いて得た透水性が高い舗装材料を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために本発明では、2液混合型のビニルエステル系合成樹脂のうち、主剤には予め撚糸した高捲縮糸と、予め高捲縮糸とは逆方向に撚糸したアラミド系糸との混合糸を有する繊維混合合成樹脂バインダを骨材の接着剤として用いることとした。主剤に混合した糸のうち、高捲縮糸は捲縮性が高いので撚糸されたものは常態においてコイル状を維持しようとする。一方、アラミド系糸はその素材自体の靱性が高く、撚糸してコイル状を得た場合であっても元の状態、すなわち直線状に復元しようとする。これらの2種類の糸をそれぞれ別方向に撚糸してそれぞれが逆コイル状とすることによって、両者を混合した場合でも互いに絡み合うことがない。そして、これら2種類の糸を混合して液体である主剤に投入した場合には高捲縮糸は骨材表面に定着しようとし、一方のアラミド系糸は復元方向に戻ろうとする。このため、硬化剤を混合して硬化が開始されたバインダにおいてその粘性のために骨材間に薄膜が生じる場合には、アラミド系糸の復元性のために薄膜を破壊することになり、骨材間には隔壁状に硬化した薄膜は存在しなくなり、その結果としてポーラスな状態を得ることができる。
【0009】
これらの混紡糸にさらにパルプ系繊維を加えた手段では、パルプ系繊維がバインダに均等に混ざるために硬化後のバインダは当該繊維によって強固に結合することになり、高い接着強度を実現することができる。また、バインダとして主剤と硬化剤の2液からなるエポキシ系合成樹脂を採用することによって、極めて強い接着性を達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバインダは、混合された繊維が合成樹脂の硬化する前に骨材間に薄膜が形成されて硬化することを阻害するため、骨材間に薄膜が存在することを防止することができる。したがって、接着が完了した後の骨材間には隙間が生じ、ポーラスな状態が実現する。このため、硬化後の骨材からなる板状体などは優れた透水性を確保することができるので、例えば道路や歩道の舗装や通水性が求められる場所に有効に適用することができる。また、骨材の粒度によっては高い吸音性を確保することができるので、騒音対策が必要な個所に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明で利用する2種類の混合糸を示す模式図。
図2】バインダが硬化する前の状態を示す模式図。
図3】本発明のバインダで骨材を接着した状態を示す模式図。
図4】多量のバインダを用いて骨材を接着した状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。まず、本発明の繊維混合合成樹脂バインダでは、バインダとしてエポキシ系樹脂を採用する。この合成樹脂は、主剤と硬化剤との2液混合樹脂からなり、主剤に硬化剤を投入して撹拌することによって硬化が開始される。この点については、公知のエポキシ系樹脂と同じである。本発明において採用する合成樹脂バインダは、2液を混合することによって硬化が開始する混合型のビニルエステル系の素材であれば広く採用することが可能である。
【0013】
次に、骨材については特に限定するものではなく、接着後の製造物の用途に応じて採用する。例えば粒度が0.2~2mm程度の砂粒や珪砂を選択することがある。このように、本発明における骨材はバインダが硬化した後の用途に応じて広く利用することができ、舗装材として用いる場合には上記のように珪砂やさらに粒度が大きい栗石などを採用し、低発泡スチロールなどの材料を選択した場合にはクッション性が高い舗装路に利用することができる。また、ステンレスなどの金属粒を骨材として用いることも排除するものではない。
【0014】
ところで、本発明では合成樹脂バインダの主剤に対して予め繊維を混合することが重要である。本発明において採用する繊維は、複数種類の繊維を混合したものである。混合する繊維は、1つは高捲縮糸1と、アラミド系の糸2、及びパルプ系の繊維4である。高捲縮糸1は一例として2.5mmの長さ、アラミド系の糸2は1.5mmの長さ、パルプ系繊維4は1mm前後のものを採用する。そして、バインダの主剤に対して高捲縮糸1とアラミド系糸2を投入し、前練りを行ってこれらの糸を均一に撹拌する。続いてパルプ系繊維を投入してさらに均一に撹拌した後に、バインダの硬化剤を投入して硬化を開始する。なお、骨材3については予め骨材3を容器に投入してバインダを流し込んでもよいし、容器に収容したバインダに骨材3を投入してもいずれでもよい。本実施形態で予定しているエポキシ系のバインダは、硬化剤を投入すれば外気温雰囲気が常温の場合には約3時間で硬化が完了する。このように、本発明のバインダは予め繊維を混合して主剤に投入した状態では硬化が開始することがないので、作業現場まではこの状態で搬入し、作業直前に硬化剤を投入して現場における作業を開始することができる。
【0015】
本発明では、その目的はバインダが硬化した後に骨材3の間隙に薄膜が生じないポーラスな状態とするものであるから、骨材に対するバインダの量が多すぎた場合には図4に示すように骨材間の間隙をバインダが充填してしまう結果となるので、これを避けるためのバインダの量は、骨材の粒単位の表面に対して硬化後のバインダが薄くコーティングされる程度が好ましい。例えば、本発明における混合比としては主剤及び硬化剤の合計量に対して10~20質量%が通常であるが、対象とする骨材によってはこの範囲を外れる配合量であっても、多すぎて骨材がバインダに埋没してポーラス状が達成できないのでなければ、適宜変更することができる。
【0016】
上記した各糸については、それぞれ高捲縮糸あるいはアラミド系糸に属する糸であれば公知の繊維を広く採用することが可能である。仮撚は比較的強撚で行い、撚糸方向が高捲縮糸1とアラミド系糸2では図1に示すように撚糸方向を逆にした撚糸を行う。そして、これらを上記したように適宜長さに切断して混ぜ合わせる。ここで、高捲縮糸1とアラミド系糸2は撚糸方向が逆であるために、両者を混合した場合でも強く絡み合うことはない。そして、高捲縮糸1はコイル状を維持しようとするが、アラミド系糸2はその素材が強靭であるからコイル状が解かれて直線状に戻る方向に動作する。そうすると、2種類の混合糸は主剤中で一方がパイプ状の高捲縮糸1、他方が直線状に戻った状態のアラミド系糸2からなる混合糸になり、特にアラミド系糸2の復元性をより活用することができる。このように、合成樹脂バインダの主剤に投入する繊維を得る。なお、さらにその後に投入するパルプ系の繊維4はパルプを解繊した状態のウエブとして得る。
【0017】
本発明の繊維混合合成樹脂バインダは、骨材に適用した場合には硬化前はバインダに粘性があるので骨材の表面をコーティングするように被覆される。そして、混合糸は液体状のバインダ中で解ける方向に動作するが、アラミド系糸2は靱性が高いので直線方向の形状に戻ろうとする。そうすると、バインダを骨材に対して投入した直後は図2のように混合糸およびパルプ系の繊維は骨材の表面にまとわりついた状態であるが、アラミド系糸2の靱性が高いので直線方向に復元する力が働く。これによって、骨材3の間隙に生成した薄膜5がアラミド系糸2の直線方向への復元によって破壊され、表面張力によっていったん生じた薄膜5部分のバインダは骨材3表面に取り込まれることになる。そして、硬化が完了すれば骨材3表面にはひげ状のアラミド系糸2の先端部分が残存した状態で図3に示すようにポーラス状に空隙が形成される。これによって、一連の硬化作業が完成する。なお、本発明では骨材間に薄膜5が形成されることを回避するものであって、骨材3表面にひげ状の部分が発生することについては透水性を阻害するものではない。
【0018】
ところで、バインダに含まれる3種類の繊維の量であるが、高捲縮糸が20~50質量%に対応してアラミド系糸が50~20質量%、残部がパルプ系繊維の範囲で調整するが、対象となる骨材の材質や粒度によって適宜変更することがある。
【0019】
なお、本発明によって完成した接着物は透水性のみならず吸音性にも優れているので、例えばトンネルの壁面および天井面に適用した場合には有効な騒音対策とすることも可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 高捲縮糸
2 アラミド系糸
3 骨材
4 パルプ系繊維
5 バインダの薄膜
図1
図2
図3
図4