(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】コネクタおよびコネクタの接続方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/08 20060101AFI20221219BHJP
H01R 13/641 20060101ALI20221219BHJP
H01R 13/631 20060101ALI20221219BHJP
H01R 13/64 20060101ALI20221219BHJP
H01R 24/38 20110101ALI20221219BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20221219BHJP
H01R 13/639 20060101ALN20221219BHJP
【FI】
H01R13/08
H01R13/641
H01R13/631
H01R13/64
H01R24/38
H01R43/00 Z
H01R13/639
(21)【出願番号】P 2017236478
(22)【出願日】2017-12-08
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2017177150
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145530
【氏名又は名称】株式会社潤工社
(72)【発明者】
【氏名】安本 博美
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-120871(JP,A)
【文献】特開平06-140107(JP,A)
【文献】特開2005-071994(JP,A)
【文献】実開昭59-101376(JP,U)
【文献】特開2004-079425(JP,A)
【文献】特開平08-045609(JP,A)
【文献】特開平10-334983(JP,A)
【文献】実開昭58-049893(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0029522(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0255721(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/08
H01R 13/641
H01R 13/631
H01R 13/64
H01R 24/38
H01R 43/00
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に他のコネクタと接続される接続部、他端にケーブルと接続されるケーブル接続部、を備えたコネクタであって、
前記接続部は、
第一の方向に延伸する1本のピンからなる内部導体を有する電気接続部と、
前記電気接続部の外部に形成され、前記他のコネクタとの接続時に前記他のコネクタとの相対的位置を固定する物理接続部とを備え、
前記電気接続部は、前記物理接続部に対して、前記第一の方向に移動可能に構成され
、
前記物理接続部は、螺刻部を有しており、前記他のコネクタに対し、前記物理接続部を第一の向きに回転させることにより、螺合可能に構成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記コネクタは、前記接続部の先端から前記ピンの先端までの距離が第一の距離となる第一の状態から、前記接続部の先端から前記ピンの先端までの距離が前記第一の距離より小さな第二の距離となる第二の状態に遷移可能であることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ピンは、ピン本体部と、前記ピン本体部の前記先端側に形成され前記ピン本体部より径が小さくなるピン先端部とを有しており、
前記第一の距離と前記第二の距離の差は、前記ピン先端部の前記第一の方向における長さよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第一の距離と前記第二の距離の差は、前記ピンの前記第一の方向における長さよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第一の状態を保持する第一ロック機構をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第二の状態を保持する第二ロック機構をさらに備えるであることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記第一の状態および/または前記第二の状態にあることを示す状態表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項8】
物理接続部、並びに、1本のピンからなる内部導体および、前記内部導体と電気的に絶縁され前記内部導体と同軸かつ前記内部導体の周囲に形成された外部導体を含む電気接続部、を含む第一のコネクタを準備するコネクタ準備工程と、
前記第一のコネクタに接続可能な第二のコネクタを有する装置を準備する装置準備工程と、
前記第一のコネクタの前記物理接続部により前記第一のコネクタを
、前記物理接続部が有する螺刻部により、第一の向きに回転させることによって、前記第二のコネクタ
と螺合によって接続する第一の接続工程と、
前記第一の接続工程において前記第一のコネクタおよび前記第二のコネクタが物理的に接続された状態から、前記第一のコネクタの前記電気接続部を前記第二のコネクタの電気接続部に電気的に接続する第二の接続工程とを含むことを特徴とするコネクタの接続方法。
【請求項9】
前記第一の接続工程は、前記第一のコネクタと前記第二のコネクタを同軸上に配置する同軸配置工程をさらに備えることを特徴とする、請求項9に記載のコネクタの接続方法。
【請求項10】
前記コネクタ準備工程で準備された第一のコネクタの前記電気接続部は、前記第一の接続工程では、前記第二のコネクタと電気接続されない第一の位置に配置されており、かつ前記第二の接続工程において前記第二のコネクタと電気接続されることを特徴とする、請求項9または10に記載のコネクタの接続方法。
【請求項11】
一端に他のコネクタと接続される接続部、他端にケーブルと接続されるケーブル接続部、を備えたコネクタであって、
前記接続部は、1本のピンからなる内部導体および、前記内部導体と電気的に絶縁され前記内部導体と同軸かつ前記内部導体の周囲に形成された外部導体を含む電気接続部と、
前記電気接続部の外部に同軸かつ前記電気接続部の周囲に形成され、前記他のコネクタとの接続時に前記他のコネクタとの相対的位置を固定する物理接続部を備え、
前記電気接続部は、前記物理接続部に対して、前記第一の方向に移動可能に構成され
、
前記物理接続部は、螺刻部を有しており、前記他のコネクタに対し、前記物理接続部を第一の向きに回転させることにより、螺合可能に構成されていることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよびコネクタの接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に広く知られているコネクタ(例えば、SMAコネクタ)として、オス側コネクタ(プラグ)とメス側コネクタ(ソケット)とを互いに螺合することで接続可能な螺合タイプのコネクタが存在する。
図12示すように、このコネクタ100は、オス側コネクタ101とメス側コネクタ110とを備えており、メス側コネクタ110の端部111の外周面にはネジ山111aが形成されるとともに、オス側コネクタ101の回転可能な六角ナット状のカップリングナット102の内周面にも、メス側コネクタ110のネジ山111aに対応するネジ山102aが形成されている。このカップリングナット102は図示されないCリングを介して回転可能に設けられている。これらのオス側/メス側コネクタ101、110は、接続の際、メス側コネクタ110のピン穴112にオス側コネクタ101のピン103が挿入されるように互いを接続させ、その後、カップリングナット102を締め上げることで、オス/メス側コネクタ101、110のそれぞれのネジ山102a、111aが互いに螺合し、両コネクタ101、110が接続される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のコネクタでは、コネクタの接続時、あるいは取り外し時にオス側コネクタのピンの破損・損傷が発生することがあった。
【0004】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、広く一般的なメス側コネクタをそのまま利用可能な構成でありながら、破損・損傷の発生を抑制可能なコネクタおよびコネクタの接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のコネクタは、 一端に他のコネクタと接続される接続部、他端にケーブルと接続されるケーブル接続部、を備えたコネクタであって、前記接続部は、第一の方向に延伸するピンを含む内部導体を有する電気接続部と、前記電気接続部の外部に形成され、前記他のコネクタとの接続時に前記他のコネクタとの相対的位置を固定する物理接続部とを備え、前記電気接続部は、前記物理接続部に対して、前記第一の方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0006】
また、前記コネクタは、前記接続部の先端から前記ピンの先端までの距離が第一の距離となる第一の状態から、前記接続部の先端から前記ピンの先端までの距離が前記第一の距離より小さな第二の距離となる第二の状態に遷移可能であることを特徴とする。
【0007】
さらには、前記ピンは、ピン本体部と、前記ピン本体部の前記先端側に形成され前記ピン本体部より径が小さくなるピン先端部とを有しており、前記第一の距離と前記第二の距離の差は、前記ピン先端部の前記第一の方向における長さよりも大きいことを特徴とする。
【0008】
また、前記第一の距離と前記第二の距離の差は、前記ピンの前記第一の方向における長さよりも大きいことを特徴とする。さらには、前記コネクタは、前記第一の状態を保持する第一ロック機構をさらに備えることを特徴とする。また、前記コネクタは、前記第二の状態を保持する第二ロック機構をさらに備えるであることを特徴とする。
【0009】
さらには、前記物理接続部は、螺刻部を有しており、前記他のコネクタに対し、前記物理接続部を第一の向きに回転させることにより、螺合可能に構成されていることを特徴とする。また、前記第一の状態および/または前記第二の状態にあることを示す状態表示手段をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
さらには、本発明のコネクタの接続方法は、物理接続部、並びに、ピンを有する内部導体および、前記内部導体と電気的に絶縁され前記内部導体と同軸かつ前記内部導体の周囲に形成された外部導体を含む電気接続部、を含む第一のコネクタを準備するコネクタ準備工程と、前記第一のコネクタに接続可能な第二のコネクタを有する装置を準備する装置準備工程と、前記第一のコネクタの前記物理接続部により前記第一のコネクタを前記第二のコネクタに接続する第一の接続工程と、前記第一の接続工程において前記第一のコネクタおよび前記第二のコネクタが物理的に接続された状態から、前記第一のコネクタの前記電気接続部を前記第二のコネクタの電気接続部に電気的に接続する第二の接続工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
また、第一の接続工程は、前記第一のコネクタと前記第二のコネクタを同軸上に配置する同軸配置工程をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
さらには、前記コネクタ準備工程で準備された第一のコネクタの前記電気接続部は、前記第一の接続工程では、前記第二のコネクタと電気接続されない第一の位置に配置されており、かつ前記第二の接続工程において前記第二のコネクタと電気接続されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の原理(要点)を説明するための概略断面図である。
【
図2】本発明の原理(要点)を説明するための概略断面図である。
【
図3】本発明の原理(要点)を説明するための概略断面図である。
【
図4】本発明の原理(要点)を説明するための概略断面図である。
【
図5】本願発明の接続方法を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態にかかるコネクタを示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態にかかるコネクタを示す側面図である。
【
図8】本発明の実施形態にかかるコネクタの接続状態を説明するための図であり、オス側コネクタとメス側コネクタの接続前の状態を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態にかかるコネクタの接続状態を説明するための図であり、オス側コネクタとメス側コネクタの第一接続状態を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態にかかるコネクタの接続状態を説明するための図であり、オス側コネクタとメス側コネクタの第二接続状態を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態にかかるコネクタを含む機器の一例を示す概略図である。
【
図12】従来技術のコネクタを示す図であり、一般的な螺合タイプのコネクタを説明するための部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の成立に必須であるとは限らない。以下、図面を用いて、これらの実施形態について説明する。尚、以下の実施形態のコネクタは、例えば、送/受信部や演算部を含む機器本体とケーブルを接続するため等に使用される。
【0015】
まず、本発明の理解を容易にするため、本発明の原理(要点)について簡単に説明する。
図1は、本発明の原理(要点)を説明するための概略断面図である。なお、この
図1(a)および(b)では、同じ構成は同じ番号および同じハッチングを付して説明する。同図に示すコネクタ10は、一端(同図の右端)において他のコネクタ(図示せず)と接続される接続部11、他端(同図の左端)においてケーブル(図示せず)と接続されるケーブル接続部12を備えている。接続部11は、第一の方向(同図の左右方向)に延伸するピン13を含む内部導体を有する電気接続部14と、この電気接続部14の外部(同図において径方向の外側)に形成され、他のコネクタとの接続時に他のコネクタとの相対的位置を固定する物理接続部15とを備えている。
電気接続部14は他のコネクタのピン穴に挿入されるピン13を含む。この挿入により、本発明のコネクタのピン13と他の(接続先の)コネクタのピン穴との間で、電流や電気信号を伝送可能に接続することができる。ピンは1本であることに限定されず、複数のピンを含んでいても良い。
物理接続部は他のコネクタに対して、本発明のコネクタの相対的位置を固定可能なものであれば良く、溶接、接着、クランプ、嵌め込みなど各種固定方法を適用可能である。ただし、他のコネクタがもともと備える固定方法に適合するものを選択することが好ましく、たとえば螺合による固定が、汎用性、固定強度、固定作業性の観点から好適である。なお、物理接続が電気接続の機能を含む場合を排除するものではなく、例えば他のコネクタとのグランド接続の経路や、あるいは、ピン13で伝送される信号と異なる第二の信号経路としての機能を含んでいても良い。
【0016】
また、同図(a)から(b)に示すように、電気接続部14は、物理接続部15に対して、第一の方向(同図の左右方向)に移動可能に構成されている。以上の構成により、コネクタ10を他のコネクタと接続する際、コネクタ10の物理接続部15を他のコネクタと接続し、他のコネクタとの相対的位置を固定した後、電気接続部14を他のコネクタ側の第一の方向に移動させ、他のコネクタとの電気的な接続を行うことができる。従来のコネクタにおいては、コネクタと他のコネクタとの接続の際、物理的な接続のための位置合わせと、電気的な接続のための位置合わせとが同時に行われるため、コネクタと他のコネクタとの位置関係を適切な位置に調整するより前や、あるいは調整する際に、ピンが他のコネクタのピン穴以外の部位に接触し損傷することがあった。
これに対して、本発明のコネクタは、コネクタ10と他のコネクタとが、適切な位置関係に固定された状態とした上で電気接続部14を他のコネクタと接続することができるため、コネクタの接続時、ピン13を含む内部導体を有する電気接続部14の破損・損傷の発生を抑制可能である。適切な位置関係の一例としては、ピン13の軸が他のコネクタのピン穴の入口の範囲内を通過する関係であれば好ましく、ピン13の軸とピン穴の軸が重なりあう関係であることがさらに好ましい。また、ピンとの先端と、他のコネクタのピン穴の選択との間の距離が確保された状態であれば良い。
【0017】
また、コネクタの取り外し時には、まず他のコネクタとの相対的位置が固定された状態で電気接続部14を他のコネクタとは反対側の第二の方向(同図の左方向)に移動させ、他のコネクタと電気接続部14との接続を解除する。その後、他のコネクタからコネクタの物理接続部15の接続を解除する。これにより、コネクタ10と他のコネクタとの相対的位置が固定された状態で電気接続部14を他のコネクタから接続解除することができ、コネクタの取り外し時、ピン13を含む内部導体を有する電気接続部14の破損・損傷の発生を抑制可能である。
【0018】
さらには、コネクタ10は、同図(a)に示すように、物理接続部15の先端15aから前記ピン13の先端までの距離が第一の距離L1となる第一の状態から、同図(b)に示すように前記接続部11の先端11aから前記ピン13の先端までの距離が前記第一の距離より小さな第二の距離L2となる第二の状態に遷移可能であればよい。これにより、上述したように、コネクタを他のコネクタに接続または取り外す際、電気接続部14の破損・損傷の発生を抑制可能である。
尚、同図においては、電気接続部14が、物理接続部15およびケーブル接続部12に対して移動する例を示したが、
図2に示すように、物理接続部15が、電気接続部14およびケーブル接続部12に対して移動する形としてもよく、あるいはこれらの組み合わせでもよい。
【0019】
また、
図3に示すように、ピン13は、その側面に他のコネクタとの電気的な接点を含むピン本体部13aと、このピン本体部13aの先端側(同図の右端側)に形成され前記ピン本体部より径が小さくなるピン先端部13bとを有していてもよい。同図にはピン先端部13bがテーパ状に径が小さくなっている構造を示しているが、この他に、段階的に径が小さくなっているものや、たとえば、半球状のように断面が曲線で構成される形状であってもよい。ピン先端部13bは、ピン13の軸方向における長さL3aを有している。このような構成において、上述した第一の距離L1と前記第二の距離L2の差(L1-L2)は、前記ピン先端部13bのピン13の軸方向における長さL3aよりも大きければよい。これにより、ピン本体13aより細く、強度の確保が難しいピン先端部13bの損傷を回避できる。
また、ピン13はピン支持部13c上に立設されていても良い。ピン支持部13cはピン本体部13aと同じ径の導電性部材の周囲に例えば樹脂などを含む絶縁性材料が形成されたものでよい。あるいは、ピン本体部13aより大径の導電性部材として構成され、その周囲に空気層を含む絶縁層が形成されていてもよい。すなわち、ピン支持部13cは、ピン13に比べ、軸に垂直方向の応力に対して高い強度を有している。このような構成において、上述した第一の距離L1と前記第二の距離L2の差(L1-L2)は、前記ピン本体部13aとピン先端部13bの前記第一の方向における合計長さL3bよりも大きいことが、さらに好ましい。これにより、ピン支持部13cに比べ強度の確保が難しいピン本体部13aの損傷も回避できる。
【0020】
図4は、コネクタ10の第一の状態および/または第二の状態を保持するためのロック機構を例示的に示す図であり、(a)、(b)は電気接続部14および物理接続部15にそれぞれ設けられたねじ山16、ねじ溝17の螺合によって軸方向の保持位置をロック可能な構成であり、(c)はレバー18の開閉動作により軸方向の保持位置をロック可能な構成であり、(d)はリング状の係止部材19を用いて状態をロック可能な構成を示す。ここでは軸方向において第一の状態および第二の状態をいずれもロックする構成を示したが、これらは第一または第二のいずれかの状態をロックできる構成でもよい。
ここで、第一の状態および/または第二の状態を保持するためのロック機構とは、輸送時、取付時、および/または使用時において発生する振動や、外部からの応力においては、状態の遷移が発生しない程度に固定可能な手段であれば良い。あるいは、状態の遷移のために、所定値以上の外部応力および/または特定の操作を必要とする程度に固定可能な手段であっても良い。
【0021】
なお、電気接続部14を第一の状態および/または第二の状態に遷移可能な構成として、同図(a)、(b)に示すように、回転体の螺合によって構成してもよい。このような構成においては、軸方向の外部応力が電気接続部14あるいは物理接続部15に加わったとしても、状態の遷移には軸を中心とした回転運動への変換が必要となるため、状態を保持することができる。また、電気接続部14と物理接続部15との相対的な位置関係を無段階に制御できる点、電気接続部14と他のコネクタの対応する接続部との接触圧力の調整が可能な点などにおいて優れる。例えば電気接続部14がピン13の周囲に外部導体を備えており、外部導体のコンタクト面が軸に対して垂直成分を含む場合などに好適である。なお、同図(a)、(b)においては、電気接続部14または物理接続部15の少なくとも一方が螺刻を含む構成が例示されるが、これに限定されず、電気接続部14または物理接続部15のいずれかに一方に対して移動可能に構成された螺刻を含む状態遷移手段を別に設け、この状態遷移手段の移動に伴う形で他方を移動させる構成としてもよい。
なお、後述する同図(c)、(d)を含め、ケーブル接続部12は、電気接続部14および/または物理接続部15に対して回転自在に構成されていることが好ましい。
また同図(c)、(d)に示すように、あらかじめ定められた位置において、電気接続部14と物理接続部15との相対位置を固定する保持機構としてもよい。同図(c)はレバー18を用いた構成の例を示す。同図(c)は電気接続部14が物理接続部15に対して相対的に後退した状態をあらわしており、レバー18のつまみ部18aを矢印で示すように図の左側に倒す動作により、電気接続部15が相対的に前進した状態に遷移させることができる。レバー18は、第一の状態および第二の状態にてロック可能に構成されていると良い。ロックの手段は公知の方法を用いればよい。例えばロック機構が弾性変形可能な部材を有し、ロック機構内の弾性体にかかる圧縮(または引っ張り)応力は、第一の状態および/または第二の状態における該応力が、その他の状態における該応力より小さくなるように構成すれば良い。同図(d)はリング状の係止部材19と、該係止部材19が出入り可能な複数の凹部を用いて、状態をロックする機構を示すものである。所定の値より大きな軸方向の外部応力を加えることで係止部材を弾性変形させ、元の凹部と異なる凹部に係合させることにより、他の状態に遷移させるとともにその状態にロックすることができる。係止部材19は必ずしも完全なリング状でなくてもよく、一部が欠けたCリングが好ましい。あるいは1つ以上のピンで構成されていいてもよい。また、係止部材の弾性変形に限定されず、弾性部材を含んでいてもよい。例えばばねを含んでいても良く、ばねにより付勢されたピンの先端が凹部に出入りする構成としても良い。
【0022】
また、同図に符合Mで示すように、第一の状態および/または前記第二の状態にあることを示す状態表示手段を設けてもよい。(a)、(b)はねじの螺合によって軸方向へ移動可能な構成であるが、第一および/または第二の方向への移動が規制される際、電気接続部または物理接続部に外観から目視で確認される凹部やラインの状態表示が設けられておいてもよい。また、(c)はレバーの開閉動作によって軸方向へ移動可能な構成であるが、第一および/または第二の方向への移動が規制される際、電気接続部または物理接続部に外観から目視で確認される凹部やラインの状態表示が設けられておいてもよい。さらには、(d)は軸方向において並列配置されたリング状の係止部材19によって軸方向へ移動可能な構成であるが、第一および/または第二の方向への移動が規制される際、電気接続部または物理接続部に外観から目視で確認される凹部やラインの状態表示が設けられておいてもよい。これらの構成により、コネクタが第一の状態または前記第二の状態にあることを目視で容易に確認でき、オペレーターの誤操作を回避でき、電気接続が正しくなされているか、を接続後であっても、外観から容易に判断することができ、ひいてはコネクタの破損・損傷の発生をさらに抑制可能である。
【0023】
図5は、本発明の接続方法を示すフローチャートである。まず、物理接続部、並びに、ピンを有する内部導体および、前記内部導体と電気的に絶縁され前記内部導体と同軸かつ前記内部導体の周囲に形成された外部導体を含む電気接続部、を含む第一のコネクタを準備する(工程S1)。次いで、第一のコネクタに接続可能な第二のコネクタを有する装置を準備する(工程S2)。次いで、第一のコネクタの前記物理接続部により前記第一のコネクタを前記第二のコネクタに接続する(工程S3)。最後に、前記第一の接続工程において前記第一のコネクタおよび前記第二のコネクタが物理的に接続された状態から、前記第一のコネクタの前記電気接続部を前記第二のコネクタの電気接続部に電気的に接続する(工程S4)。ここで、工程S1において準備された第一のコネクタに対しては、工程S3において第二のコネクタと物理的に接続をしても電気的に接続しない位置にピンが位置している状態(以下、「初期状態」という)を確認する状態確認工程が含まれることが好ましい。この状態確認工程は、第1のコネクタに状態表示手段(上述した凹部やライン、レバーの位置など)を目視で確認することがさらに好ましい。また、第一のコネクタの初期状態をロックするロック工程をさらに含まれることが好ましい。これにより、目視で確認した状態の第一のコネクタの状態を確実に維持し、第二のコネクタとの物理接続を行うことができる。また、第一および第二のコネクタの物理的接続時に電気的接続が併せて行われることがなくなり、物理的接続時の第一および第二の相対的な位置が固定される前に電気的接続を行う際のピンの破損・損傷を低減できる。
また、この状態確認工程において所望としない状態に第一のコネクタがある場合には、第一のコネクタを初期状態に復帰させる初期状態復帰工程が含まれることが好ましい。これにより、所望の初期状態を確実に準備することができる。
また、工程S1においては、準備された第一のコネクタのピンが所望の位置において事前に曲がり、折れ、潰れによる破損・損傷がすでに発生していないかを確認するピン状態確認工程が含まれることが好ましい。このようなすでに破損・損傷が発生している第一のコネクタを用いて第二のコネクタと物理的・電気的接続を行うことは、接続不良のリスクが極めて高いことに加え、第二のコネクタの破損・損傷を引き起こす原因となる。このため、上記の確認工程を行うことにより、事前の接続不良のリスクを回避できるとともに、第二のコネクタの破損・損傷を回避することができる。
さらには、工程S2においては、準備された第二のコネクタに、工程S1において準備された第一のコネクタのピンに対応するピン穴が形成されていることを確認するピン穴確認工程が含まれることが好ましい。また、このピン穴が第一のコネクタのピンと接続可能な位置に配置されていることを確認するピン穴位置確認工程が含まれていることが好ましい。
また、工程S3においては、第一および第二のコネクタを同軸上で物理的に接続するよう互いに位置合わせをする位置調整工程が含まれることが好ましい。さらには第一および第二のコネクタが物理的に接続されたことにより、両コネクタの相対位置が固定されるように接続されていることを確認する物理的接続状態確認工程が含まれることが好ましい。これにより、工程S4において第一および第二のコネクタを電気的に接続する際の相互の位置関係のガタつきやずれのリスクが低減し、電気接続時およびこの電気接続の解除時に確実にピンをピン穴に抜き差しすることができ、ピンの破損・損傷を低減できる。
さらには、工程S3においては、第一および第二のコネクタが物理的接続された状態で第一のコネクタが初期状態を維持していることを確認する状態確認工程がさらに含まれることが好ましい。この状態確認工程は、上述したS1時の状態確認工程と同じ確認方法が好ましい。これにより、第一および第二のコネクタの物理的接続時に電気的接続が併せて行われることがなくなり、物理的接続時の第一および第二の相対的な位置が固定される前に電気的接続を行う際のピンの破損・損傷を低減できる。
さらには工程S4においては、物理的接続がなされている第一および第二のコネクタの物理的接続部を同軸上で互いに接続する位置調整工程がさらに含まれることが好ましい。また、工程S4においては、電気的接続が行われた状態で第一のコネクタが物理的接続部と電気的接続部の相対的な位置を固定するロック工程をさらに含むことがこのましい。
また、本発明の製造方法により、機器内の接続および/または機器間の接続を行うことにより、接続信頼性に優れた機器やシステムを製造することができる。
【0024】
図6および
図7は、本発明のコネクタの構成を示す図であり、
図6はコネクタ(オス側コネクタ)の斜視図、
図7はコネクタ(オス側コネクタ)の側面図であり、部分的に断面を示している。
【0025】
図6および
図7に示すように、本実施形態のコネクタ10は、ピンを備えるオス側コネクタ20である。オス側コネクタ20は、ケーブル接続部50の端部に設けられており、ケーブル接続部50の中心導体から伸びるピン21と、このピン21を支持するピン支持部材22とを有している。また、ピン21は、ピン支持部材22からL4の長さで突出している。
またコネクタ20は、ピン支持部22の外周に設けられ、ケーブル接続部50に接続され、金めっき処理が施されたステンレス鋼製のスリーブ23を有している。またコネクタ20は、スリーブ23の外周に設けられ、ケーブル接続部50に接続されたステンレス鋼製のシェル24を有している。またコネクタ20は、シェル24の外周に設けられ、ベリリウム銅で構成されたCリング25を介してシェル24に回転可能に取り付けられ、パッシベート処理が施されたステンレス鋼製のカップリングナット26を有している。またコネクタ20は、カップリングナット26よりもケーブル接続部50側において、ベリリウム銅で構成されたCリング27を介してシェル24に回転可能に取り付けられ、パッシベート処理が施されたステンレス鋼製のカップリングロック28を有している。
【0026】
上記のカップリングナット26の先端部(
図7の左端部)の内周面には、後述するメス側コネクタ30と螺合するための螺旋状のねじ溝26aが形成されている。またカップリングナット26のケーブル接続部側の後端部(同図の右端部)の外周面には、カップリングロック28と螺合するための螺旋状のねじ山26bが形成されている。またカップリングロック28の先端部(同図の左端部)の内周面には、上述したカップリングナット26と螺合するためのねじ溝28aが形成されている。
【0027】
これらのカップリングナット26とカップリングロック28はいずれも長手方向に並列した状態でそれぞれCリング25、27を介してシェル24に回転可能に取り付けられている。カップリングロック28のねじ溝26aは、カップリングナット26のねじ山と螺合している。
【0028】
シェル24の先端部(同図の左端部)には、外側に向かって伸びる係止部24aが円周にそって形成されている。また、カップリングナット26のケーブル接続部50側の端部(同図の右端部)の内周面には、Cリング25を係止するリング溝26dが円周に沿って形成されている。カップリングナット26の内部には、このリング溝26dから先端部側(同図の左端部側)に向かって、カップリングナット26の長手方向の中央付近まで伸び、上述した係止部24aが長手方向に移動可能な空間が形成されている。
【0029】
上記の空間は長手方向に長さL5の長さを有している。これにより、カップリングロック28をカップリングナット26に螺合することで、Cリング27を介してシェル24が先端部側(同図の左端部側)に押し込まれ、L5の長さ分、スリーブ23、ピン支持部材22、およびピン21が先端部側(同図の左端部側)に移動する。
上記の長さL4と長さL5は、L4<L5なっている。
【0030】
また、カップリングナット26の内周面の先端部側(同図の左端部側)寄りの中心付近に、内側に向かって伸び、円周に沿って形成され、スリーブ23と隙間D1の長さ分空けて支持するストッパー26cが形成されている。また上述したカップリングナット26は、Cリング25を介してシェル24に設けられており、このCリング25とシェル24の間には隙間D2が存在し、隙間D2>隙間D1になっている。
【0031】
以上の構成により、ピン21の位置は、カップリングロック28によって調整される。カップリングロック28を時計方向(同図の奥行き方向)に回転し、移動可能な長さL5に対しコネクタ10の先端側(同図の左側)に移動することにより、カップリングロック28の移動に伴い、Cリング25、シェル24、スリーブ23、ピン支持部材22を介してピン21がメス側コネクタ30側に移動する。また、移動可能な長さL5の最もメス側コネクタ30側(同図の右側)に移動すると、オス側コネクタ20のピンがメス側コネクタのピン穴に挿入可能な位置に移動する。
【0032】
次に、
図8~
図10を用いて、上記のオス側コネクタ20とメス側コネクタ30の接続方法について説明する。
図8~
図10にはそれぞれ図(a)に側面図、図(b)に側断面図が記載されている。なお、この
図8~
図10においては、
図6および
図7で図示したものと同じ構成は同じ番号を付して説明する。
【0033】
まず、
図8に示すように、オス側コネクタ20とメス側コネクタ30を準備する。この際、ピン21の位置は、カップリングロック28が反時計方向(同図の奥行き方向)に回転されており、移動可能な長さL5のうち最もメス側コネクタ30と反対側(同図の左側)に移動している。
【0034】
次に、
図9に示すように、オス側コネクタ20をメス側コネクタ30に近づけ、オス側コネクタ10のカップリングナット26のねじ溝26aとメス側コネクタ30のねじ山34とを螺合させる(第一接続)。この際、上述したようにピン21が長手方向に移動可能な距離L5は、ピン支持部22から突出したピンの長さL4よりも大きく(L4<L5)であるため、第一の接続状態においては、ピンはメス側コネクタ30のピン穴31には接続されない。この第一の接続によりオス側コネクタ20のカップリングナット26のねじ溝26aとメス側コネクタ30のねじ山33が螺合しており、従来のコネクタの課題であるカップリングナットの螺合によるガタつきは解消される。
【0035】
次に、
図10を用いて、ピン21をピン穴31に接続するための第二の接続について説明する。第二の接続では、上述した第一の接続状態から、オス側コネクタ20のカップリングロック28を時計方向(同図の手前方向)に回す。これにより、ピン21の位置は、移動可能な長さL5に対しメス側コネクタ30側(同図の右側)に移動し、Cリング25、シェル24、スリーブ23、ピン支持部22を介してメス側コネクタ30側に移動する。また、移動可能な長さL5の最もメス側コネクタ30側(同図の左側)に移動すると、オス側コネクタ20のピンがメス側コネクタのピン穴に挿入可能な位置に移動し、ピン21とピン穴31が接続される。
【0036】
この第二の接続により、カップリングロック28はカップリングナット26に螺合し、互いにガタつきがない状態を保つことができる。これにより、上述した第一の接続によるカップリングナット26とメス側コネクタ30との螺合によるガタつきの解消と併せて、カップリングナット26を介してカップリングロック28もメス側コネクタと軸ずれが解消された状態で接続されている。
【0037】
また、上述したように、スリーブ23とカップリングロック26のストッパー26cとの隙間D1と、Cリング25とシェル24間に形成された隙間D2は、D2>D1の関係を有しており、上記のカップリングロック28もメス側コネクタと軸ずれが解消された状態において、軸ずれの原因となる隙間D2によるガタつきはD1以下に抑え込まれ、軸ずれをさらに解消できる。
【0038】
図11は、本発明のコネクタを含む、および/または、本発明のコネクタ接続方法を含む製造方法で製造された機器を示す概略図である。第一の機器90は、第二の機器60とケーブル80を介して接続される。ケーブル80は、少なくともその一端に本発明のコネクタ10を備え、このコネクタ10は機器60およびまたは機器90が備える他のコネクタ70に接続される。なお、コネクタ10をピン穴を有するコネクタ、コネクタ70を本発明のコネクタとしても良い。
一例において、機器90は第一の演算ユニットであり、機器60は第二の演算ユニットであり、これらを含むコンピューターシステムを構成する。他の例において、機器90は演算ユニットであり機器60はセンサーまたはアクチュエータである。また他の例において機器90は増幅器であり、機器60はアンテナである。また他の例において、機器90は測定装置であり、機器60は被測定物である。
これらの機器やシステムにおいては、本発明のコネクタを含むため、および/または、本発明のコネクタ接続方法を含む製法で製造されているため、高い接続信頼性や、損傷リスクの小さな挿抜作業性が実現される。