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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/10 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
E03D9/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018148993
(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公開番号】P2020023835
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤野 翔太
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 正道
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 元太
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-040114(JP,A)
【文献】特開2017-020568(JP,A)
【文献】特開平07-298546(JP,A)
【文献】特開平03-177643(JP,A)
【文献】実開平05-011765(JP,U)
【文献】特開平08-141864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00-9/16
H02K 7/00-7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器装置であって、
汚物を受けるボウル部と、
このボウル部から汚物を排出するための排出経路と、
上記ボウル部及び上記排出経路の中に貯留された溜水中に配置され、回転駆動される回転部材と、
この回転部材から、上記排出経路の壁面を貫通して溜水外に延びるシャフトと、
このシャフトを回転駆動するための電動モータと、
上記シャフトと上記電動モータを着脱可能に接続するカップリングと、
上記電動モータによる駆動を制御する制御装置と、
を有し、
上記カップリングは上記シャフトの上端に取り付けられた第1継手部と、上記電動モータの下端に取り付けられ、上記第1継手部の上端に当接して接続される第2継手部と、を備え、
上記第1継手部及び上記第2継手部は夫々磁性部材を備え、これらの磁性部材の間に作用する磁力により、上記シャフトと上記電動モータが溜水外で接続されることを特徴とする便器装置。
【請求項2】
さらに、上記シャフトの中心軸線を取り囲むように配置されたメカニカルシールを有し、このメカニカルシールにより、上記シャフトが上記壁面を貫通する貫通部への溜水の侵入が阻止される請求項1記載の便器装置。
【請求項3】
上記第1継手部及び上記第2継手部に夫々備えられた磁性部材はマグネットであり、これらのマグネットは、上記シャフトの中心軸線を中心とする円周上に夫々配置されると共に、N極とS極が上記円周上に交互に配列されている請求項1又は2に記載の便器装置。
【請求項4】
上記カップリングはスペーサ部を備え、このスペーサ部により、上記第1継手部に備えられた磁性部材と、上記第2継手部に備えられた磁性部材の間に所定の隙間が形成される請求項1乃至3の何れか1項に記載の便器装置。
【請求項5】
上記スペーサ部は、上記第1継手部及び上記第2継手部に夫々設けられた滑り軸受から構成され、これらの滑り軸受は、上記第1継手部に備えられた磁性部材と上記第2継手部に備えられた磁性部材の間に作用する磁力によって互いに当接される請求項4記載の便器装置。
【請求項6】
上記制御装置は、上記カップリングにおける脱調を検知する脱調検知回路を備え、上記制御装置は、上記脱調検知回路によって脱調が検知されると上記電動モータの回転数を低下させる請求項5記載の便器装置。
【請求項7】
上記電動モータ及び上記制御装置は一体化された駆動ユニットを構成し、この駆動ユニットは、上記カップリングの上記第1継手部と上記第2継手部を切り離すことにより取り外し可能である請求項1乃至6の何れか1項に記載の便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-40114号公報(特許文献1)には、水洗ポータブルトイレ装置が記載されている。この水洗ポータブルトイレ装置においては、便器本体のボウル部に連通する粉砕室内に、粉砕手段として機能する回転部材が配置されており、この回転部材を回転させることにより汚物を粉砕して、排水管から排出している。また、回転部材と、これを回転駆動する電動モータの間は、マグネットの磁力によって結合されており、電動モータは非接触で回転部材を回転駆動している。即ち、粉砕室の内部に配置された回転部材には動作部側マグネットが取り付けられており、この動作部側マグネットを、粉砕室の外部に配置された電動モータに取り付けられた駆動部側マグネットによって駆動することにより、回転部材を回転させている。
【0003】
この特許文献1記載の水洗ポータブルトイレ装置によれば、粉砕室の内部に配置された回転部材を、粉砕室の外部に配置された電動モータによって非接触で駆動しているので、回転部材を駆動するために粉砕室の壁面を貫通して延びる部材を設ける必要がなく、粉砕室の水密性を容易に確保することができる。さらに、特許文献1記載の水洗ポータブルトイレ装置によれば、磁気的に結合されている回転部材と電動モータの間を容易に着脱することができるので、トイレ装置のボウル部や粉砕室から、電動モータ等を取り外して容易に再利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-40114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の水洗ポータブルトイレ装置においては、電動モータから回転部材に伝達される駆動力を正確に設定することが困難であるという問題がある。即ち、電動モータから回転部材に伝達される駆動力は、粉砕室の壁面を挟んで対向するように配置された動作部側マグネットと駆動部側マグネットの間の距離に強く依存する。ところが、動作部側マグネットと駆動部側マグネットは、粉砕室の壁面の両側に配置されているため、これらの間の距離を正確に設定することが困難な場合がある。動作部側マグネットと駆動部側マグネットの距離が離れすぎている場合には、回転部材に十分な駆動力を伝達することができず、汚物を十分に粉砕できないという問題がある。これらのマグネットの距離が近すぎると、マグネット間の吸着力が強くなり動作部側マグネットと駆動部側マグネットとを着脱することが困難になる問題がある。また、マグネットの距離が近すぎると、回転部材に異物が引っかかった場合等に、回転部材が空回りせず、電動モータに過剰な負荷がかかり、故障の原因となる。
【0006】
従って、本発明は、回転部材と電動モータを着脱可能に結合すると共に、電動モータから回転部材に伝達される適正な駆動力を設定することができる便器装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、便器装置であって、汚物を受けるボウル部と、このボウル部から汚物を排出するための排出経路と、ボウル部及び排出経路の中に貯留された溜水中に配置され、回転駆動される回転部材と、この回転部材から、排出経路の壁面を貫通して溜水外に延びるシャフトと、このシャフトを回転駆動するための電動モータと、シャフトと電動モータを着脱可能に接続するカップリングと、電動モータによる駆動を制御する制御装置と、を有し、カップリングはシャフトに取り付けられた第1継手部と、電動モータに取り付けられた第2継手部と、を備え、第1継手部及び第2継手部は夫々磁性部材を備え、これらの磁性部材の間に作用する磁力により、シャフトと電動モータが溜水外で接続されることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、ボウル部及び排出経路内の溜水中に配置された回転部材から、壁面を貫通してシャフトが延びており、このシャフトが、制御装置によって制御された電動モータによって回転駆動される。シャフトと電動モータは、第1継手部と第2継手部から構成されたカップリングによって着脱可能に接続される。第1継手部及び第2継手部には夫々磁性部材が備えられており、シャフトと電動モータは、これらの磁性部材の間に作用する磁力により、溜水外で接続される。
【0009】
このように構成された本発明によれば、シャフトと電動モータが、カップリングの第1継手部及び第2継手部に夫々備えられた磁性部材によって接続されるので、シャフトと電動モータを容易に着脱することができる。また、第1継手部と第2継手部が壁面等を介することなく、溜水外で磁力により接続されるので、第1、第2継手部に夫々備えられた磁性部材の間の距離を容易に設定することができ、伝達される駆動力を適正に設定することができる。さらに、第1継手部と第2継手部が壁面等を介することなく磁力により接続されるので、弱い磁力であっても十分な動力を伝達することができ、カップリングを小型化することができる。また、第1、第2継手部に夫々備えられた磁性部材が溜水外に夫々配置されているので、溜水に浸かることによる磁性部材の錆びの発生を防止することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、さらに、シャフトの中心軸線を取り囲むように配置されたメカニカルシールを有し、このメカニカルシールにより、シャフトが壁面を貫通する貫通部への溜水の侵入が阻止される。
【0011】
このように構成された本発明によれば、メカニカルシールにより、シャフトの貫通部への溜水の侵入が阻止されるので、貫通部から壁面外への溜水の漏れを確実に防止することができる。また、溜水の漏れがメカニカルシールにより阻止されるので、シールが摩耗した場合でも水密性を確保することが可能であり、長期間に亘って溜水の漏れを確実に防止することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、第1継手部及び第2継手部に夫々備えられた磁性部材はマグネットであり、これらのマグネットは、シャフトの中心軸線を中心とする円周上に夫々配置されると共に、N極とS極が円周上に交互に配列されている。
【0013】
このように構成された本発明によれば、磁性部材であるマグネットが、N極とS極を円周上に交互に配列することにより構成されているので、電動モータの回転力を第1継手部と第2継手部の間に作用する磁力によってシャフトに伝達することができる。また、電動モータの回転力が磁力によってシャフトに伝達されるので、所定値以上のトルクが作用した場合には電動モータが空回りして、電動モータ等が過負荷により損傷されるのを防止することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、カップリングはスペーサ部を備え、このスペーサ部により、第1継手部に備えられた磁性部材と、第2継手部に備えられた磁性部材の間に所定の隙間が形成される。
【0015】
このように構成された本発明によれば、第1継手部の磁性部材と第2継手部の磁性部材の間の隙間がスペーサ部により規定されるので、第1継手部の磁性部材と第2継手部の磁性部材の間の距離を正確に設定することができ、伝達される駆動力を適正に設定することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、スペーサ部は、第1継手部及び第2継手部に夫々設けられた滑り軸受から構成され、これらの滑り軸受は、第1継手部に設けられた磁性部材と第2継手部に設けられた磁性部材の間に作用する磁力によって互いに当接される。
【0017】
このように構成された本発明によれば、スペーサ部が第1継手部及び第2継手部に夫々設けられた滑り軸受から構成されているので、電動モータに過大な負荷がかかった場合には、第1継手部と第2継手部の間が容易に滑り、第1、第2継手部が損傷されるのを防止することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、制御装置は、カップリングにおける脱調を検知する脱調検知回路を備え、制御装置は、脱調検知回路によって脱調が検知されると電動モータの回転数を低下させる。
【0019】
このように構成された本発明によれば、脱調検知回路によって脱調が検知された場合に電動モータの回転数が低下されるので、第1継手部と第2継手部を容易に接続状態に復帰させることができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、電動モータ及び制御装置は一体化された駆動ユニットを構成し、この駆動ユニットは、カップリングの第1継手部と第2継手部を切り離すことにより取り外し可能である。
【0021】
このように構成された本発明によれば、第1継手部と第2継手部を切り離すことにより、駆動ユニットを取り外すことができるので、電動モータ及び制御装置を容易に再利用することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の便器装置によれば、回転部材と電動モータを着脱可能に結合すると共に、電動モータから回転部材に伝達される適正な駆動力を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態の水洗ポータブルトイレ装置の外観を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態の水洗ポータブルトイレ装置の側面断面図である。
図3】本発明の一実施形態の水洗ポータブルトイレ装置における、ボウル部を含む便器ユニットを示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態の水洗ポータブルトイレ装置における、スカート部を含む外郭ユニットを示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態の水洗ポータブルトイレ装置における、ボウル部の後方側に取り付けられている電気系ユニットを示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態の水洗ポータブルトイレ装置における、カップリングによる電動モータとシャフトの接続部の構造を示す断面図である。
図7】本発明の一実施形態の水洗ポータブルトイレ装置における、カップリングの第1継手部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
まず、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態による便器装置である水洗ポータブルトイレ装置1を説明する。図1は、本実施形態の水洗ポータブルトイレ装置の外観を示す斜視図である。図2は、本実施形態の水洗ポータブルトイレ装置の側面断面図である。
【0025】
図1に示すように、本発明の一実施形態による水洗ポータブルトイレ装置1は、汚物を受けるボウル部2と、このボウル部2の周囲に設けられたスカート部4と、ボウル部2の上面に載置される局部洗浄装置(図示せず)を覆う蓋部(図示せず)と、を有する。また、スカート部4の背面側から、水洗ポータブルトイレ装置1に洗浄水を供給するための給水管4aと、溜水及び汚物を排出するための排水管4bが延びている。さらに、図2に示すように、ボウル部2の後方には電気系ユニット8が収容されており、この電気系ユニット8には、ボウル部2に洗浄水を供給するための電磁弁装置10と、溜水を攪拌して汚物を粉砕するための粉砕用の電動モータ12と、粉砕された汚物及び溜水を圧送するための圧送用の電動モータ14と、が備えられている。
【0026】
このように構成された水洗ポータブルトイレ装置1においては、水道から供給された洗浄水が、電磁弁装置10を介して供給され、ボウル部2が洗浄される。さらに、粉砕用の電動モータ12を駆動することにより、溜水が攪拌されて汚物が粉砕され、圧送用の電動モータ14を駆動することにより、粉砕された汚物及び溜水が排水管4bから排出されるようになっている。
【0027】
次に、図3乃至図5を参照して、本発明の一実施形態による水洗ポータブルトイレ装置1の組み立て構造を説明する。
図3は、水洗ポータブルトイレ装置1における、ボウル部2を含む便器ユニットを示す斜視図である。図4は、水洗ポータブルトイレ装置1における、スカート部4を含む外郭ユニットを示す斜視図である。図5は、水洗ポータブルトイレ装置1において、ボウル部2の後方側に取り付けられている電気系ユニット8を示す斜視図である。
【0028】
図3乃至図5に示すように、本実施形態の水洗ポータブルトイレ装置1は、便器ユニット16(図3)と、外郭ユニット18(図4)と、電気系ユニット8(図5)に分解可能に構成されている。即ち、便器ユニット16の下部後方に電気系ユニット8を取り付けた状態で、これを外郭ユニット18の上面の開口に落とし込むことにより、水洗ポータブルトイレ装置1が組み立てられている。
【0029】
このように、水洗ポータブルトイレ装置1を分解可能に構成することにより、使用により汚れが付着しやすい便器ユニット16のみを交換して、外郭ユニット18及び電気系ユニット8を再利用することが可能になる。即ち、或るユーザが水洗ポータブルトイレ装置1の使用期間を終えた後、便器ユニット16のみを新品に交換して、次のユーザに水洗ポータブルトイレ装置1を提供することができる。これにより、介護用途等に、レンタルで水洗ポータブルトイレ装置1をユーザに提供することを可能にしている。
【0030】
図3に示すように、便器ユニット16は、汚物を受けるボウル部2を有し、その下流側下方に連通するように、汚物を粉砕する粉砕室20、及び粉砕された汚物を圧送するためのポンプ室22が設けられている。また、便器ユニット16には、ボウル部2に洗浄水を供給するための給水管4a、及びポンプ室22で加圧された洗浄水等を排出するための排水管4bが接続されている。
【0031】
図4に示すように、外郭ユニット18は、スカート部4と、このスカート部4の上面を覆う蓋部(図示せず)と、を有する。スカート部4の上端は開口しており、便器ユニット16を外郭ユニット18に取り付ける際は、便器ユニット16のボウル部2をスカート部4の内側に挿入し、ボウル部2周囲のフランジをスカート部4の上端に載置して固定する。
【0032】
図5に示すように、電気系ユニット8は、逆L字形のフレーム24に、電磁弁装置10、粉砕用の電動モータ12、及び圧送用の電動モータ14を取り付けることにより、一体のユニットを構成している。
【0033】
電磁弁装置10は、逆L字形のフレーム24の屈曲部に取り付けられており、上水道から供給された洗浄水のボウル部2への供給/停止を行うボウル洗浄用バルブ26を備えている。また、電磁弁装置10の上端部には、電磁弁装置10に内蔵されたボウル洗浄用バルブ26、及び粉砕用の電動モータ12、圧送用の電動モータ14等を制御するための制御装置30が内蔵されている。さらに、制御装置30には、粉砕用、圧送用の電動モータの空回りを検知する脱調検知回路30aが備えられている。これら制御装置30及び脱調検知回路30aは、具体的には、マイクロプロセッサ、メモリ、インターフェイス回路及びこれらを作動させるプログラム等から構成されている。制御装置30及び脱調検知回路30aの作用については後述する。
【0034】
また、ボウル洗浄用バルブ26は、流入口26a及び流出口26bを備えている。ボウル洗浄用バルブ26が開弁されると、流入口26aから流入した水道水が、流出口26bから流出し、流出した水道水は、洗浄水として吐水口2a(図2)から吐出され、ボウル部2を洗浄する。
【0035】
粉砕用の電動モータ12は、フレーム24の水平部の先端に、その出力軸が下方を向くように取り付けられている。また、電気系ユニット8が便器ユニット16に取り付けられると、電動モータ12の出力軸は便器ユニット16の粉砕室20内に配置されたパルセータ32(図2)と連結される。これにより、粉砕用の電動モータ12によって、パルセータ32が回転駆動可能となる。
【0036】
圧送用の電動モータ14は、フレーム24の鉛直部の下端に、その出力軸が水平方向に向くように取り付けられている。また、電気系ユニット8が便器ユニット16に取り付けられると、電動モータ14の出力軸は便器ユニット16のポンプ室22内に配置されたインペラ34(図2)と連結される。これにより、圧送用の電動モータ14によって、インペラ34が回転駆動可能となる。
このように、粉砕用、圧送用の電動モータ及び制御装置30を一体化した電気系ユニット8は、駆動ユニットを構成する。
【0037】
次に、図2及び図5を参照して、電気系ユニット8及び便器ユニット16の詳細な構成を説明する。
図2に示すように、便器ユニット16は、汚物を受けるボウル部2と、このボウル部2の底部から鉛直下方に延びる壺部3と、この壺部3の下端から水平方向に、後方(水洗ポータブルトイレ装置1の奥側)に向けて延びる粉砕室20と、を備えている。
【0038】
さらに、粉砕室20の底面にはフィルタ部36が設けられ、このフィルタ部36の下流側には水平な通路38が接続されている。フィルタ部36は、粉砕室20の底面の中間部に複数の小穴を設けることにより形成され、十分に粉砕されていない大きな汚物等が下流側の通路38に流出するのを阻止するように構成されている。水平な通路38は、フィルタ部36の下側から水平方向に、後方に向けて延びる流路であり、その下流端は、ポンプ室22に連通されている。このように、ボウル部2よりも下流側に設けられた壺部3、粉砕室20、通路38、及びポンプ室22は、汚物の排出経路を構成する。
【0039】
また、粉砕室20後端の天井面には、回転部材であるパルセータ32が配置されており、このパルセータ32は、シャフト32aによって回転駆動されるように構成されている。パルセータ32は、粉砕室20内の溜水を攪拌するための羽根が設けられた円板状の部材であり、概ね水平方向に向けられている。シャフト32aを中心にパルセータ32を回転させることにより、粉砕室20内の溜水が攪拌され、汚物を粉砕することができる。パルセータ32のシャフト32aは、パルセータ32の中心から概ね鉛直上方に延びるように設けられ、粉砕室20の天井面を構成する壁面を貫通して、粉砕室20内の溜水から外側に延びている。
【0040】
さらに、シャフト32aの上端にはパルセータ用のカップリング40が設けられ、このカップリング40により、シャフト32aと粉砕用の電動モータ12が着脱可能に接続される。パルセータ32のカップリング40は、シャフト32aに取り付けられる第1継手部40aと、電動モータ12の出力軸に取り付けられる第2継手部40bから構成され、これらは溜水外の大気中で接続されている。
【0041】
一方、通路38の下流端に設けられたポンプ室22内には、回転部材であるインペラ34がシャフト34aを中心に回転可能に配置されている。ポンプ室22は概ね円筒形の空間であり、ポンプ室22の中心軸線は、通路38の中心軸線と概ね整合するように水平方向に向けられている。インペラ34は、渦巻き状の複数の羽根を有する円形の部材であり、ポンプ室22内でシャフト34aにより回転駆動されるように構成されている。また、インペラ34の中心軸線は、通路38の中心軸線と概ね整合するように水平方向に向けられている。ポンプ室22内でインペラ34が回転駆動されると、通路38からポンプ室22に流入した溜水及び粉砕された汚物が加圧され、ポンプ室22から排水管4bへ排出される。
【0042】
インペラ34のシャフト34aは、インペラ34の中心から後方へ向けて概ね水平方向に延び、ポンプ室22の側壁面を貫通してポンプ室22の外部へ延びている。シャフト34aの後端には、ポンプ用のカップリング42が設けられ、このカップリング42により、シャフト34aと圧送用の電動モータ14が着脱可能に接続される。インペラ34のカップリング42は、シャフト34aに取り付けられる第1継手部42aと、電動モータ14の出力軸に取り付けられる第2継手部42bから構成され、これらは溜水外の大気中で接続されている。
【0043】
次に、図6及び図7を参照して、本実施形態におけるカップリングによる接続部の構造を説明する。
図6は、カップリングによる電動モータとシャフトの接続部の構造を示す断面図である。また、図7は、カップリングの第1継手部の平面図である。なお、以下では、パルセータ32用のシャフト32aと、粉砕用の電動モータ12の出力軸との接続部の構造を説明するが、この接続部の構造は、インペラ34用のシャフト34aと、圧送用の電動モータ14の出力軸との接続部の構造と同一である。
【0044】
図6に示すように、接続部の便器ユニット16側には、粉砕室20の水密性を確保するためのメカニカルシール44と、パルセータ32を駆動するシャフト32aと、このシャフト32aを回転可能に支持するベアリング46と、シャフト32aの上端に取り付けられた第1継手部40aが設けられている。
【0045】
まず、シャフト32aの下端にはパルセータ32が固定されており、パルセータ32は、粉砕室20の天井面とほぼ平行に向けられている。シャフト32aは円板状のパルセータ32の中心に固定され、これを回転駆動するように構成されている。
【0046】
また、粉砕室20の天井面には、上方に向けて突出した円形断面の凹部20aが設けられており、この凹部20aの中央をシャフト32aが貫通して延びている。凹部20aの中にはメカニカルシール44が配置されている。メカニカルシール44は、シャフト32aの中心軸線を取り囲むように配置されており、粉砕室20の壁面をシャフト32aが貫通して延びる貫通部20bへの溜水の侵入を阻止している。
【0047】
ベアリング46は、凹部20aに設けられた開口に配置された玉軸受けであり、シャフト32aを概ね鉛直方向に向けて回転可能に支持している。ベアリング46の外周にはフランジ部が形成され、このフランジ部が凹部20aの開口の縁と係合することにより、ベアリング46が天井面(凹部20a)に位置決めされている。また、シャフト32aの中間部には段部が設けられ、この段部がベアリング46のインナーレースと係合することにより、シャフト32aがベアリング46に対して位置決めされている。
【0048】
図6に示すように、メカニカルシール44は、リング状の第1摺動部48と、この第1摺動部48に対向して配置される第2摺動部50と、弾性チューブ52と、弾性チューブ52を収容する外装リング54と、コイルばね56と、から構成されている。
【0049】
第1摺動部48は、シャフト32aの周囲を取り囲むように、パルセータ32の背面側(上側)に埋め込まれたリング状の部材である。この第1摺動部48の上端面は第2摺動部50の下端面に当接するように配置され、パルセータ32が回転されると、第1摺動部48と第2摺動部50の摺動面が水密性を保持した状態で摺動し、摺動面からシャフト32a側への溜水の侵入を阻止している。また、パルセータ32の背面側には、第1摺動部48を受け入れるための溝が形成され、この溝の表面と第1摺動部48の間にはガスケット48aが配置されて、水密性が確保されている。
【0050】
第2摺動部50は、第1摺動部48と対向するように配置されたリング状の部材であり、コイルばね56の付勢力により、第1摺動部48側へ押されている。
弾性チューブ52は、弾性部材で形成され、コイルばね56の内側に嵌め込まれた筒状の部材である。この弾性チューブ52の中間部には、内側に突出した湾曲部が形成されており、この湾曲部が変形することにより、弾性チューブ52は軸方向に伸縮可能に構成されている。さらに、弾性チューブ52の上端及び下端には、外方に向けて突出したフランジ部が形成されており、このフランジ部とコイルばね56の上下端が夫々係合することにより、弾性チューブ52を伸長させる方向に付勢力が作用している。
【0051】
外装リング54は、上端が閉塞された二重筒状の部材であり、金属製の薄板を曲げることにより形成されている。外装リング54の内側の筒の周囲には、弾性チューブ52及び第2摺動部50が摺動可能に嵌め込まれている。また、弾性チューブ52の外周に配置されたコイルばね56により、弾性チューブ52の下側に配置された第2摺動部50が、第1摺動部48へ向けて下方に付勢されている。また、外装リング54の外側の筒は、弾性チューブ52及びコイルばね56を包囲するように形成されている。この外装リング54の外側の筒は、粉砕室20の凹部20aの中に嵌め込まれており、外装リング54と凹部20aの間にガスケット54aを配置することにより、粉砕室20の壁面とメカニカルシール44との間の水密性が確保されている。
【0052】
このように構成されることにより、コイルばね56の付勢力によって、第2摺動部50の下端面は第1摺動部48の上端面側に押され、第1摺動部48の上端面と第2摺動部50の下端面の間の水密性が確保される。また、長期間の使用により、第1摺動部48又は第2摺動部50の摺動面(第1摺動部48の上端面、第2摺動部50の下端面)が摩耗した場合でも、コイルばね56の付勢力により、第1摺動部48と第2摺動部50の水密性を確保することができる。
【0053】
一方、シャフト32aの上端に取り付けられた第1継手部40aは、円板状の部材であり、その上面が第2継手部40bの下端面と対向している。図7に示すように、この第1継手部40aの上面には、ドーナツ板状の磁性部材であるマグネット58aと、スペーサ部である円筒状の滑り軸受60bが同心円上に取り付けられている。
【0054】
マグネット58aは、ドーナツ型の薄板から形成された永久磁石であり、シャフト32aの中心軸線を中心とする円周上に配置されている。また、マグネット58aは、第1継手部40aの上面に形成された溝の中に埋め込まれており、マグネット58aの上面と第1継手部40aの上面が同一平面上に位置している。さらに、マグネット58aの上面は、N極とS極が円周上に交互に配列されており、各N極、S極は、中心角90度の円弧状に構成されている。
なお、本実施形態において、マグネット58aは、第1継手部40aの上面に形成された溝の中に埋め込まれているが、この形態に限られるものではなく、マグネットが第1継手部に固定された形態であれば良い。例えば、第1継手部の上面に溝を形成せず、上面に対してヨーク(図示せず)を介してピン部材(図示せず)によりマグネットを固定する形態であっても良い。この形態によれば、溝を形成する形態に比べて、マグネットに大きな寸法公差を許容することができる。
【0055】
なお、本実施形態においては、マグネット58aは、N極とS極が交互に着磁された一体のドーナツ型の平板として構成されているが、中心角90度の4枚の円弧状の薄板によりマグネット58aを構成することもできる。この場合には、各円弧状の薄板の片面をN極、反対側の面をS極とし、表面側にN極とS極が交互に配列されるように、マグネット58aを構成することができる。また、本実施形態においては、第1継手部40aの上面側にN極とS極が夫々2つ配置されているが、N極とS極を夫々3つ以上配置することもできる。また、スキュー着磁によりマグネット58aを構成することもできる。
【0056】
滑り軸受60aは、円筒形に形成された部材であり、マグネット58aの内側に、シャフト32aの中心軸線を中心とする円周上に取り付けられている。また、滑り軸受60aは、第1継手部40aの上面から、第2継手部40bに向けて上方に突出するように設けられている。
【0057】
一方、図6に示すように、粉砕用の電動モータ12の先端(下端)に取り付けられた第2継手部40bも、第1継手部40aと同様の構成を有する。即ち、第1継手部40aと対向している第2継手部40bの下面には、ドーナツ板状の磁性部材であるマグネット58bと、円筒状の滑り軸受60bが同心円上に取り付けられている。さらに、マグネット58bの下面は、N極とS極が円周上に交互に配列されており、各N極、S極は、中心角90度の円弧状に構成されている。また、マグネット58bの内側には、滑り軸受60bが第1継手部40aに向けて下方に突出するように設けられている。
なお、本実施形態において、マグネット58bは、第2継手部40bの下面に形成された溝の中に埋め込まれているが、この形態に限られるものではなく、マグネットが第2継手部に固定された形態であれば良い。例えば、第2継手部の下面に溝を形成せず、下面に対してヨーク(図示せず)を介してピン部材(図示せず)によりマグネットを固定する形態であっても良い。この形態によれば、溝を形成する形態に比べて、マグネットに大きな寸法公差を許容することができる。
【0058】
ここで、第1、第2継手部が接続された状態においては、第1継手部40aのマグネット58aのN極と第2継手部40bのマグネット58bのS極、第1継手部40aのS極と第2継手部40bのN極が夫々対向する。このため、第1継手部40aと第2継手部40bの各マグネットの間には、互いに引きつけ合う磁力が作用する。一方、第1、第2継手部には、夫々滑り軸受が突出するように設けられているため、第1継手部40aのマグネット58aと第2継手部40bのマグネット58bが互いに直接接触することはなく、各滑り軸受の高さによって規定される所定の隙間が形成される。これにより、第1継手部40aと第2継手部40bを接続した状態において、両者の間の距離を正確に設定することができ、それらの間に作用する磁力を正確に規定することが可能になる。
【0059】
本実施形態においては、各滑り軸受により、各マグネットの間に6mmの間隔が維持されている。好ましくは、各マグネットの間の間隔を2mm~20mmに設定するのが良い。また、本実施形態においては、第1継手部40aの滑り軸受60aと第2継手部40bの滑り軸受60bは同一の高さに形成されているが、各滑り軸受の高さは異なっていても良く、或いは、第1、第2継手部の一方のみに滑り軸受が形成されていても良い。
【0060】
また、第1、第2継手部の各マグネットは、N極とS極が円周上に交互に配列されているため、各マグネットの間に働く磁力は、N極とS極が対向した状態を維持するように作用する。このため、第2継手部40bが取り付けられた粉砕用の電動モータ12の回転トルクが、磁力により第1継手部40aに伝達される。
【0061】
さらに、第1継手部40aの滑り軸受60aの端面と、第2継手部40bの滑り軸受60bの端面は、各マグネットの磁力により互いに押しつけ合っている。しかしながら、各滑り軸受の端面は平滑に形成されているため、各滑り軸受の間に作用する摩擦力は比較的小さく、第1、第2継手部の間で伝達しようとするトルクが過大になると、各滑り軸受の間の滑りが許容される。
【0062】
以上、粉砕用の電動モータ12に取り付けられた第1継手部40aと、パルセータ32のシャフト32aに取り付けられた第2継手部40bの間の接続構造を説明したが、上記のように、この接続構造は、圧送用の電動モータ14とインペラ34の間の接続構造と同一である。即ち、インペラ34のシャフト34aは、ポンプ室22の壁面を貫通して延び、シャフト34aが壁面を貫通する貫通部への溜水の侵入が、メカニカルシール62(図2)によって阻止され、水密性が確保されている。また、インペラ34のシャフト34aに取り付けられた第1継手部42a、及び圧送用の電動モータ14の出力軸に取り付けられた第2継手部42bも、第1継手部40a及び第2継手部40bと同一の構造を備えている。これにより、インペラ34のシャフト34aと圧送用の電動モータ14の出力軸も、マグネットの磁力により溜水外で接続される。
【0063】
次に、本発明の一実施形態による水洗ポータブルトイレ装置1の組み立て手順を説明する。
上述したように、本実施形態の水洗ポータブルトイレ装置1は、ユーザが新品の便器ユニット16を購入し、外郭ユニット18及び電気系ユニット8をレンタルとすることにより、安価でユーザに提供することができる。また、新規購入された便器ユニット16と、レンタルされた外郭ユニット18及び電気系ユニット8を、ユーザの居室で、現場で組み立て可能に構成されている。
【0064】
まず、電気系ユニット8が便器ユニット16に取り付けられる。この際、便器ユニット16に設けられているパルセータ32に結合された第1継手部40a、及びインペラ34に結合された第1継手部42aが、電気系ユニット8に設けられている第2継手部40b、42bと夫々接続される。また、上述したように、第1継手部40aと第2継手部40bは、これらに設けられたマグネット58a、58bに作用する磁力により接続されるため、これらを互いに近づけるだけで極めて容易に、自動的に結合される。また、パルセータ32用の第1継手部40aと第2継手部40bが結合される位置に電気系ユニット8を配置すると、インペラ34用の第1継手部42aと第2継手部42bも近接されるので、これらインペラ34用の継手部も、同時に、極めて容易に結合される。
【0065】
また、第1継手部40aと第2継手部40bは、ドーナツ板状のマグネット58a、58bの磁力により接続されるため、パルセータ32のシャフト32aの中心軸線と、粉砕用の電動モータ12の出力軸の中心軸線が整合する位置で吸着力が最も大きくなる。このため、シャフト32aの中心軸線と電動モータ12の出力軸の中心軸線を容易に整合させることができる。また、同時に、インペラ34用の継手部も容易に中心軸線を整合させることができる。さらに、第1継手部40aと第2継手部40bは、その滑り軸受60a、60bにおいて接触するため、それらの間に滑りが許容される。このため、シャフト32aの中心軸線と電動モータ12の出力軸の中心軸線が僅かにずれている場合でも、シャフト32aを回転駆動することが可能になる。また、インペラ34用の継手部についても中心軸線の僅かなずれが許容される。
【0066】
さらに、第1継手部40aに設けられたマグネット58aと、第2継手部40bに設けられたマグネット58bの間の間隔は、滑り軸受60a、60bの寸法によって規定されるため、極めて正確に規定することができる。これにより、マグネット58aと58bの間の吸着力が不足して、十分な駆動力を伝達できなくなったり、吸着力が強すぎて電気系ユニット8の取り外しが困難になったりするのを防止することができる。
【0067】
このようにして、便器ユニット16に電気系ユニット8を取り付けた後、組み立てられた電気系ユニット8及び便器ユニット16を、外郭ユニット18の上面開口部に挿入し、ボウル部2の縁をスカート部4の上端に載せる。この状態で電気系ユニット8及び便器ユニット16を外郭ユニット18に固定する。また、外郭ユニット18の背面側は背面カバー4cが取り外し可能となっているため、背面カバー4cを取り外して、電気系ユニット8のボウル洗浄用バルブ26に、給水用の配管等を接続する。さらに、便器ユニット16から延びる排水管4bを外郭ユニット18の外へ引き出して、背面カバー4cを取り付けることにより、組み立てが完了する。
【0068】
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態による水洗ポータブルトイレ装置1の作用を説明する。
まず、ユーザが水洗ポータブルトイレ装置1の使用を終えた後、洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、電気系ユニット8に内蔵された制御装置30が、電磁弁装置10のボウル洗浄用バルブ26に信号を送り、これを開弁させる。これにより、水道から給水管4aを介して供給された洗浄水がボウル部2の吐水口2aから吐出され、ボウル部2の表面が洗浄される。この洗浄により、ボウル部2内の汚物が壺部3及びその下流の粉砕室20内に落ちると共に、ボウル部2内の溜水の水位が所定水位まで上昇する。
【0069】
ボウル部2内の水位が所定水位になると、制御装置30はボウル洗浄用バルブ26に制御信号を送り、これを閉弁させる。次に、制御装置30は粉砕用の電動モータ12に制御信号を送り、これを作動させる。電動モータ12の作動によりパルセータ32が回転すると、粉砕室20の溜水が汚物と共に攪拌され、溜水中の汚物が粉砕される。
【0070】
ここで、パルセータ32の回転中に一時的に過大な負荷が作用した場合には、磁力により接続されているカップリング40の第1継手部40aと第2継手部40bの間で滑りが生じ、これらの間に相対的な回転が発生する。このように、カップリング40によって伝達すべきトルクが所定のトルクを超えると、第1継手部40aと第2継手部40bが相対的に回転するので、粉砕用の電動モータ12やシャフト34aに過剰な負荷がかかり、損傷されるのを防止することができる。
【0071】
また、滑りの発生により、第1継手部40aの回転が第2継手部40bの回転に同期しなくなり、脱調が発生すると、制御装置30に備えられた脱調検知回路30aがこれを検知する。即ち、カップリング40の第1継手部40aと第2継手部40bの間で脱調が発生すると、電動モータ12に作用する負荷が急激に変動し、電動モータ12に流れる電流が大きく変化する。脱調検知回路30aは、電動モータ12に流れる電流に基づいて脱調を検知し、脱調が検知されると、制御装置30は電動モータ12の回転数を低下させる。電動モータ12の回転数を低下させることにより、第2継手部40bの回転数が第1継手部40aの回転数に近くなるので、第1、第2継手部は再び同期して回転するようになる。
【0072】
制御装置30は、粉砕用の電動モータ12を所定時間作動させた後、これを停止させ、今度は、圧送用の電動モータ14を作動させる。圧送用の電動モータ14の作動によりインペラ34が回転すると、ボウル部2、壺部3、粉砕室20、通路38、及びポンプ室22内の溜水及び粉砕された汚物が、排水管4bを通って排出される。なお、粉砕室20内の汚物は十分に粉砕されているためフィルタ部36の小穴を通ってポンプ室22に流入して、圧送される。また、粉砕されずに残った大きな異物等が存在する場合には、異物のポンプ室22への流入がフィルタ部36によって阻止され、粉砕室20内における不具合の発生を未然に防止することができる。
【0073】
また、圧送用の電動モータ14の作動中にインペラ34に過剰な負荷が作用した場合にも、カップリング42の第1継手部42aと第2継手部42bの間で滑りが発生するため、電動モータ14やシャフト34aに過剰な負荷がかかり、損傷されるのを防止することができる。また、圧送用の電動モータ14のカップリング42における脱調も、制御装置30の脱調検知回路30aによって検知され、脱調が検知された場合には、制御装置30は電動モータ14の回転数を低下させる。
【0074】
制御装置30は、圧送用の電動モータ14を所定時間作動させ、溜水及び汚物を排出した後、これを停止させると共に、ボウル洗浄用バルブ26に信号を送り、これを開弁させる。これにより、ボウル部2の吐水口2aから洗浄水が吐出され、ボウル部2内の溜水の水位が上昇する。溜水が所定水位まで上昇すると、制御装置30はボウル洗浄用バルブ26を閉弁させ、1回の便器洗浄処理を終了する。
【0075】
本発明の一実施形態の水洗ポータブルトイレ装置1によれば、シャフト32aと粉砕用の電動モータ12が、カップリング40の第1継手部40a及び第2継手部40bに夫々備えられた磁性部材であるマグネット58a、58bによって接続される(図6)ので、シャフト32aと電動モータ12を容易に着脱することができる。また、第1継手部40aと第2継手部40bが壁面等を介することなく、溜水外で磁力により接続される(図2)ので、第1、第2継手部に夫々備えられたマグネットの間の距離を容易に設定することができ、伝達される駆動力を適正に設定することができる。さらに、第1継手部40aと第2継手部40bが壁面等を介することなく磁力により接続されるので、弱い磁力であっても十分な動力を伝達することができ、カップリング40を小型化することができる。また、第1、第2継手部に夫々備えられたマグネット58a、58bが溜水外に夫々配置されているので、溜水に浸かることによるマグネット58a、58bの錆びの発生を防止することができる。
なお、圧送用の電動モータ14とインペラ34の間に設けられたカップリング42においても同様の効果を奏する。
【0076】
また、本実施形態の水洗ポータブルトイレ装置1によれば、メカニカルシール44により、シャフト32aの貫通部への溜水の侵入が阻止される(図6)ので、溜水の漏れを確実に防止することができる。また、溜水の漏れがメカニカルシール44により阻止されるので、シール(第1摺動部48、第2摺動部50)が摩耗した場合でも水密性を確保することが可能であり、長期間に亘って溜水の漏れを確実に防止することができる。
【0077】
さらに、本実施形態の水洗ポータブルトイレ装置1によれば、磁性部材であるマグネット58a、58bが、N極とS極を円周上に交互に配列することにより構成されている(図7)ので、電動モータ12の回転力を第1継手部40aと第2継手部40bの間に作用する磁力によってシャフト32aに伝達することができる。また、電動モータ12の回転力が磁力によってシャフト32aに伝達されるので、所定値以上のトルクが作用した場合には電動モータ12が空回りして、電動モータ12等が過負荷により損傷されるのを防止することができる。
【0078】
また、本実施形態の水洗ポータブルトイレ装置1によれば、第1継手部40aのマグネット58aと第2継手部40bのマグネット58bの間の隙間がスペーサ部である滑り軸受60a、60bにより規定される(図6)ので、第1継手部40aのマグネット58aと第2継手部40bのマグネット58bの間の距離を正確に設定することができ、伝達される駆動力を適正に設定することができる。
【0079】
さらに、本実施形態の水洗ポータブルトイレ装置1によれば、スペーサ部が第1継手部40a及び第2継手部40bに夫々設けられた滑り軸受60a、60bから構成されている(図6)ので、電動モータ12に過大な負荷がかかった場合には、第1継手部40aと第2継手部40bの間が容易に滑り、第1、第2継手部が損傷されるのを防止することができる。
【0080】
また、本実施形態の水洗ポータブルトイレ装置1によれば、脱調検知回路30aによって脱調が検知された場合に電動モータ12の回転数が低下されるので、第1継手部40aと第2継手部40bを容易に接続状態に復帰させることができる。
【0081】
さらに、本実施形態の水洗ポータブルトイレ装置1によれば、第1継手部40aと第2継手部40bを切り離すことにより、駆動ユニットである電気系ユニット8(図5)を取り外すことができるので、電動モータ12、14及び制御装置30を容易に再利用することができる。
【0082】
なお、上記では、粉砕用の電動モータ12とパルセータ32の間に設けられたカップリング40に本発明を適用した場合の効果を説明したが、圧送用の電動モータ14とインペラ34の間に設けられたカップリング42においても同様の効果を奏する。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、居室等で使用され、居室内で移動可能に構成された水洗ポータブルトイレ装置に本発明を適用していたが、本発明は、ポータブルトイレばかりでなく、トイレ室等に据え付ける便器装置等、一般的な便器装置に適用することができる。さらに、上述した実施形態においては、パルセータ32及びインペラ34が夫々カップリング40、42を介して駆動されていたが、回転部材としてパルセータ又はインペラの何れか一方のみを備えた便器装置に本発明を適用することもできる。
【0084】
また、上述した実施形態においては、カップリングの第1継手部及び第2継手部の双方に、磁性部材として永久磁石であるマグネットを取り付け、これらの磁力によってカップリングを接続していた。これに対し、変形例として、第1継手部、第2継手部の何れか一方に永久磁石を取り付け、他方を着磁されていない磁性部材として、これらの間に作用する磁力によってカップリングを接続することもできる。
【符号の説明】
【0085】
1 水洗ポータブルトイレ装置(便器装置)
2 ボウル部
2a 吐水口
3 壺部
4 スカート部
4a 給水管
4b 排水管
4c 背面カバー
8 電気系ユニット(駆動ユニット)
10 電磁弁装置
12 粉砕用の電動モータ
14 圧送用の電動モータ
16 便器ユニット
18 外郭ユニット
20 粉砕室
20a 凹部
20b 貫通部
22 ポンプ室
24 フレーム
26 ボウル洗浄用バルブ
26a 流入口
26b 流出口
30 制御装置
30a 脱調検知回路
32 パルセータ(回転部材)
32a シャフト
34 インペラ(回転部材)
34a シャフト
36 フィルタ部
38 通路
40 カップリング
40a 第1継手部
40b 第2継手部
42 カップリング
42a 第1継手部
42b 第2継手部
44 メカニカルシール
46 ベアリング
48 第1摺動部
48a ガスケット
48a ガスケット
50 第2摺動部
52 弾性チューブ
54 外装リング
54a ガスケット
56 コイルばね
58a マグネット(磁性部材)
58b マグネット(磁性部材)
60a 滑り軸受(スペーサ部)
60b 滑り軸受(スペーサ部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7