(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】コンクリート柱の亀裂に伴う鉄筋腐食の評価試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20221219BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20221219BHJP
G01N 3/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G01N17/00
G01N33/38
G01N3/00 M
(21)【出願番号】P 2021125239
(22)【出願日】2021-07-30
(62)【分割の表示】P 2017101385の分割
【原出願日】2017-05-23
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094617
【氏名又は名称】神崎 正浩
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 憲一
(72)【発明者】
【氏名】市場 幹之
(72)【発明者】
【氏名】青野 文泰
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-038243(JP,A)
【文献】特開昭61-279657(JP,A)
【文献】実開昭60-051451(JP,U)
【文献】特開2014-092416(JP,A)
【文献】特開2006-233569(JP,A)
【文献】特開2016-031276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00-17/04
G01N 3/00
G01N 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート柱から少なくとも1本の鉄筋を含むコンクリート片を供試体(試験片)として切り出す切出工程と、
切り出した供試体(試験片)において、所定の亀裂(ひび割れ)を発生させる予定面以外の部分を封止材により封止する封止工程と、
供試体(試験片)
の両端位置を固定した状態で架台に設置し、供試体(試験片)の裏面における中央の1点箇所を押圧する押付治具を用いて、封止材により封止した部分以外の面に亀裂を発生させる亀裂導入工程と、
供試体(試験片)の亀裂幅の観察を実施しつつ、供試体(試験片)を所定期間暴露する暴露工程と、
暴露後の供試体(試験片)を解体し、コンクリート材の中性化の進展度及び鉄筋の腐食状況を確認する解体確認工程
とを具備し、
架台の押付治具は、片側フランジ面の幅方向に設けた一対のガイド片と、一対のガイド片に沿って、片側フランジ面から離れる方向に移動可能な押し当て部材とを備え、片側フランジ面にネジ孔を設け、ボルトの軸部をこのネジ孔に捩じ込んで軸部の先端を押し当て部材に当接させて、押し当て部材を片側フランジ面から離れる方向に移動させるものであり、
亀裂導入工程は、架台側から供試体(試験片)の裏面に向けてねじ込まれたボルトの回転ピッチにより、押付治具を供試体(試験片)の表面に発生する亀裂幅を制御しつつ実行するものであることを特徴とする、コンクリート柱の亀裂に伴う鉄筋腐食の評価試験方法。
【請求項2】
暴露工程は、コンクリート柱が現地に設置される外的環境と同一条件下で実施される請求項1に記載のコンクリート柱の亀裂に伴う鉄筋腐食の評価試験方法。
【請求項3】
解体確認工程は、亀裂導入工程により供試体(試験片)に亀裂を発生させた後の、供試体(試験片)の内部の鉄筋の経時的な腐食度を測定する請求項1に記載のコンクリート柱の亀裂に伴う鉄筋腐食の評価試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば配電設備等におけるコンクリート柱の亀裂(ひび割れ)の幅と鉄筋の腐食度との相関関係を解明するためのコンクリート柱の亀裂に伴う鉄筋腐食の評価試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コンクリート柱に亀裂が発生して内部の鉄筋が露出すると、鉄筋は腐食し錆びてしまい、コンクリート柱自体の性能に悪影響を与えてしまう危険性がある。
【0003】
そこで、コンクリート柱の亀裂(ひび割れ)の幅と鉄筋の腐食度との相関関係を解明するために、従来では、例えば、長さ14m等の実構造物であるコンクリート柱自体を、重機を使って建てて設計荷重を掛けて亀裂(ひび割れ)を導入させ、このまま所定期間暴露し、その後、解体することで、亀裂の幅と鉄筋の腐食状況の確認を行っていた。
【0004】
また、従来では、特許文献1に開示されているように、セラミックス、コンクリート、岩石等のような脆性材料の試験片に、予亀裂を導入し、且つ、その予亀裂の長さを制御できる予亀裂導入装置及び予亀裂導入方法が提案されている。
【0005】
即ち、この予亀裂導入装置は、試験片に引張力を負荷する引張力負荷手段と、試験片に引張力の作用方向と直交する方向に圧縮荷重を負荷することにより試験片に予亀裂を導入する予亀裂導入冶具とを有し、試験片に予亀裂を導入するに際しては、予亀裂導入手段により圧縮荷重を負荷した状態で、引張力負荷手段により試験片に引張力を負荷して予亀裂を導入するものとされ、引張力負荷手段は、倍力用ギヤ群が収容されたハウジングと、引張方向に進退する引張用ロッドを収容したロッドケースと、引張力創生用のハンドルとを有する引張力発生手段を備えたものを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した様に、従来においては、重量性のあるコンクリート柱の実構造物自体をそのままの形で暴露して解体していることから、重機を使用する等の大掛かりな工事が要求され、しかも、作業を実施すると、費やされる時間と労力が極めて大きいものとなる。
【0008】
このため、コンクリート柱の亀裂幅の進展状況と、これによる内部の鉄筋の腐食状況の関係を明らかにする簡易な試験方法の確立が、不可欠なものとなっていた。
【0009】
また、上記した特許文献1の場合、予亀裂導入装置は、倍力用ギヤ群が収容されたハウジングと、引張方向に進退する引張用ロッドを収容したロッドケースと、引張力創生用のハンドルとを有する引張力負荷手段によるため、構成が非常に複雑で、高価なものとなる。
【0010】
しかも、特許文献1の予亀裂導入装置は、小さな試験片が圧縮力受容部材やハンドル及びロッドケース等により囲まれ障害となるため、試験片をそのまま予亀裂導入冶具にセットした状態で暴露試験を行うことは困難である。
【0011】
また、上記した特許文献1の場合、予亀裂の長さや深さ等を制御することを発明の課題や目的としているが、亀裂幅を制御することに関しては何等開示されていない。
【0012】
即ち、荷重負荷の掛かり方(作用面積や作用位置等)により、亀裂幅の発生の態様が様々異なるものとなる。従って、評価試験の効率を向上させるためには、亀裂幅をミクロン単位で精度よく制御できるようにすることが必要不可欠であった。
【0013】
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、安価で簡易な評価試験が可能となる小型の簡易試験片による試験方法が確立され、また、荷重負荷による亀裂幅をミクロン単位で精度よく制御可能にすることで、評価試験の効率を飛躍的に向上させることができるコンクリート柱亀裂に伴う鉄筋腐食の評価試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るコンクリート柱の亀裂に伴う鉄筋腐食の評価試験方法は、コンクリート柱から少なくとも1本の鉄筋を含むコンクリート片を供試体(試験片)として切り出す切出工程と、
切り出した供試体(試験片)において、所定の亀裂(ひび割れ)を発生させる予定面以外の部分を封止材により封止する封止工程と、
供試体(試験片)の両端位置を固定した状態で架台に設置し、供試体(試験片)の裏面における中央の1点箇所を押圧する押付治具を用いて、封止材により封止した部分以外の面に亀裂を発生させる亀裂導入工程と、
供試体(試験片)の亀裂幅の観察を実施しつつ、供試体(試験片)を所定期間暴露する暴露工程と、
暴露後の供試体(試験片)を解体し、コンクリート材の中性化の進展度及び鉄筋の腐食状況を確認する解体確認工程とを具備し、
架台の押付治具は、片側フランジ面の幅方向に設けた一対のガイド片と、一対のガイド片に沿って、片側フランジ面から離れる方向に移動可能な押し当て部材とを備え、片側フランジ面にネジ孔を設け、ボルトの軸部をこのネジ孔に捩じ込んで軸部の先端を押し当て部材に当接させて、押し当て部材を片側フランジ面から離れる方向に移動させるものであり、
亀裂導入工程は、架台側から供試体(試験片)の裏面に向けてねじ込まれたボルトの回転ピッチにより、押付治具を供試体(試験片)の表面に発生する亀裂幅を制御しつつ実行するものであることで、上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るコンクリート柱亀裂に伴う鉄筋腐食の評価試験方法により、安価で簡易な評価試験が可能となる小型の簡易試験片による試験方法が確立され、評価試験の効率を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】コンクリート片(供試体)を評価試験用の架台に取付けた状態の概略を示す斜視図である。
【
図2】同じくコンクリート片(供試体)を評価試験用の架台に取付けた状態の概略を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図4】評価試験用の架台の組立状態を示す斜視図である。
【
図5】鉄筋コンクリート柱のコンクリート片(供試体)切出から、所定の亀裂を発生させる面以外を封止材により封止するまでの工程を示す斜視図である。
【
図6】コンクリート片(供試体)を評価試験用の架台に取付ける状態の概略を示す斜視図である。
【
図7】コンクリート片(供試体)を評価試験用の架台に取付けた状態の概略を示す側面図である。
【
図8】評価試験用の架台に取付けたコンクリート片(供試体)に、ボルトを介しての3点曲げ荷重による亀裂の導入状態の概略を示す側面図である。
【
図9】評価試験の作業手順を説明するブロック図である。
【
図10】3点曲げのイメージを示すもので、(a)は荷重を加える前の説明図、(b)は荷重を加えた後の説明図である。
【
図11】コンクリート片(供試体)の亀裂の発生範囲の概略を示すもので、(a)は3点曲げ、(b)は4点曲げ、(c)は片持ち3点曲げの説明図である。
【
図12】押付治具の具体例を示すもので、(a)は押付治具が面状に接する場合の正面図及び側面図、(b)は押付治具が線状に接する場合の正面図及び側面図である。
【
図13】同じく押付治具の具体例を示すもので、押付治具が面状あるいは線状に接する場合の正面図及び側面図である。
【
図14】押付治具の形状の比較例を示すもので、(a)は締付治具が円柱の場合の正面図及び側面図、(b)は締付治具が扁平な矩形の場合の正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。
【0018】
<実施の形態>
本発明で用いるコンクリート柱亀裂に伴う鉄筋腐食の評価試験装置(以下に本装置と称する)は、コンクリート柱から切り出したコンクリート片の少なくとも1本の鉄筋を含む供試体(試験片)Pを設置して、その両端位置を固定する架台1により構成されている。この架台1は、供試体(試験片)Pの中間部分に過重負荷を付与する押付治具3を備えている。
【0019】
そして、本装置は、架台1側から供試体(試験片)Pの裏面に向けてねじ込まれて押付治具3を供試体(試験片)Pの裏面を押し付けるボルトBを備えており、ボルトBの一般的なピッチとなる1mm~2.5mmの回転ピッチ(ボルトの1回転による前進距離)により、供試体(試験片)Pの表面に発生する亀裂幅を制御している。
【0020】
<本装置の構成>
次に、本装置の具体的な構成について、
図1、
図2、
図3、
図4に基づき詳述する。
【0021】
架台1は、中央ウエブWの両端にフランジFを備えているH型鋼により構成されている。片側フランジF面の長さ方向における両端部には、供試体(試験片)Pの両端部を挟み込むようにして固定する挟持部材2を配置している。
【0022】
挟持部材2は、例えば、L字型板状のアングル材等により構成された支持当て部材2Aと、支持当て部材2Aを片側フランジF面に固定するためのボルトBとナットNとからなる。
【0023】
挟持部材2の使用においては、先ず、供試体(試験片)Pの端部を片側フランジF面と支持当て部材2Aにより挟み込み、片側フランジF面と支持当て部材2Aがそれぞれ備えている一対の孔HにボルトBの軸部を貫通させ、片側フランジF面から突出している軸部にナットNを宛がって締め付けるものである。
【0024】
片側フランジF面の略中央部には、供試体(試験片)Pを押圧して亀裂Cを発生させる押付治具3を配置している。
【0025】
架台1の中央には、片側フランジF面の幅方向に沿って対向設置した略台形形板状の一対のガイド片3Aと、一対のガイド片3Aそれぞれの中央に縦溝となって形成された相対向するガイド溝3Bに跨るようにして横架され、ガイド溝3Bに沿って片側フランジF面から離れる方向に移動可能とした押付治具3を備えている。
【0026】
本実施形態の押付治具3は、供試体(試験片)Pの裏面中央に対し幅方向に沿って均一に当接させるための例えば円柱状の押し当てロッド3Dと、押し当てロッド3Dの後方に溶接された、後述するボルトB先端が後面に当接する矩形板状の押し当て部材3Cと、により形成されている。
【0027】
尚、本実施形態では、押し当てロッド3Dは押し当て部材3Cの片面に溶接されて一体となっているが、押し当てロッド3Dと押し当て部材3Cとが別体となっていても良い。
【0028】
そして、押付治具3は、押し当て部材3Cを押圧して片側フランジF面から離れる方向に移動させるよう片側フランジF下面とウエブWとの間に形成された開口部3Eにおいて片側フランジFの中央に形成されたボルト孔3F(
図3参照)に軸部B1が捩じ込められるボルトBを設けている。
【0029】
このように、押付治具3は、片側フランジF面にボルト孔にボルトBの軸部B1を捩じ込んで軸部B1の先端を押し当て部材3Cに当接させて、押し当てロッド3Dを片側フランジF面から離れる方向に移動させるものである。
【0030】
また、本発明に係るコンクリート柱亀裂に伴う鉄筋腐食の評価試験方法は、
図9に示すように、鉄筋コンクリート柱Kから少なくとも1本の鉄筋Qを含むコンクリート片を供試体Pとして切り出す切出工程(S1)と、切り出した供試体(試験片)Pにおいて、所定の亀裂(ひび割れ)Cを発生させる面以外の部分を封止材Vにより封止する封止工程(S2)と、供試体(試験片)Pを架台1に設置し、封止材Vにより封止した部分以外の面に亀裂Cを発生させる亀裂導入工程(S3)と、供試体(試験片)Pの亀裂Cの幅(
図8参照)の観察を実施しつつ、供試体(試験片)Pを所定期間暴露する暴露工程(S4)と、暴露後の供試体(試験片)Pを解体し、コンクリート材の中性化の進展度及び鉄筋の腐食状況を確認する解体確認工程(S5)と、からなる。
【0031】
ここで、コンクリート材の中性化とは、本来アルカリ性を有するコンクリートが外部環境の影響として、例えば大気中の炭酸ガスや酸性雨等の影響を受けてアルカリ性を消失してゆく現象であり、この中性化により内部の鉄筋の不動態皮膜が破壊されて活性化し鉄筋の腐食が進行する。
【0032】
次に、上記した架台1を使用しての鉄筋腐食の評価試験の手順について詳述する。
【0033】
<切出工程>
切出工程S1において、
図5に示すように、円筒状の鉄筋コンクリート柱Kの一部を、所定の長さの円環状に切り出し、この切り出した円環状部分を、1本の鉄筋Qが略中心にくるように円筒軸方向に沿うように切り出して、断面が略台形となる棒状のコンクリート片の供試体(試験片)Pにする。
【0034】
これにより、供試体(試験片)Pの裏面R3が、円筒状の鉄筋コンクリート柱Kの内周面に相当し、供試体(試験片)Pの表面R0が、円筒状の鉄筋コンクリート柱Kの外周面に相当する。
【0035】
<封止工程>
封止工程S2において、
図5に示すように、切出工程S1により切り出された供試体(試験片)Pに亀裂C(ひび割れ)を発生させる表面以外の、略台形状の上下端面R1、長方形状の左右側面R2、円筒状の鉄筋コンクリート柱Kの内周面に相当する裏面R3それぞれに、耐候性を有する封止材Vとしてエポキシ樹脂を塗布する。
【0036】
<亀裂導入工程>
亀裂導入工程S3において、
図1、
図2、
図6に示すように、円筒状の鉄筋コンクリート柱Kの内周面に相当する供試体(試験片)Pの裏面R3が、架台1側の片側フランジF面に位置するようにして、供試体(試験片)Pを架台1に沿うように設置し、供試体(試験片)Pの両端部分を、挟持部材2の支持当て部材2Aと片側フランジF面により挟み込んで固定する。
【0037】
そして、
図7、
図8に示すように、供試体(試験片)Pの裏面R3の略中央部分に、押付治具3の押し当てロッド3Dを宛がい、ウエブWにおける開口部3E側から片側フランジFのボルト孔3FにボルトBの軸部B1を捩じ込んでボルトBの軸部B1の先端で押し当て部材3Cを片側フランジF面から離れる方向に移動させて押し当てロッド3Dを供試体(試験片)Pの裏面R3に押し付けるようにして荷重を掛け、円筒状の鉄筋コンクリート柱Kの外周面に相当する供試体(試験片)Pの表面R0の略中央部分に亀裂Cを発生させる。
【0038】
ここでの曲げ荷重の加え方について、
図10を参照して説明する。
【0039】
亀裂導入工程S3において、上記切出工程S1及び封止工程S2で得られた供試体(試験片)Pの架台1に固定された両端部分と、手前方向に垂直に荷重を加える供試体(試験片)P中央の裏面R3部分との3点曲げ荷重により、供試体(試験片)Pの表面R0が膨張(表面に沿っての引張り)し且つ裏面R3が圧縮される曲げ応力が付与されて、表面R0部分に亀裂C(ひび割れ)が導入される。
【0040】
<暴露工程>
暴露工程S4では、鉄筋コンクリート柱Kが現地に設置される外的環境と同一条件下で、亀裂Cの幅の進展度の観察を実施する。この場合、水平置きでは雨の影響が大きくなるため、架台1を実構造物と同様の縦置きとする。
【0041】
<解体確認工程>
解体確認工程S5では、上記亀裂導入工程S3により供試体(試験片)Pの表面に亀裂Cを発生させた後の、供試体(試験片)Pの内部の鉄筋Qの経時的な腐食度を測定する。このように、暴露工程S4後の解体による鉄筋腐食の評価を行うことで、実構造物の鉄筋コンクリート柱Kに亀裂Cが生じた後の鉄筋Qおよびコンクリート材の劣化状態や劣化速度の想定値を得ることができる。
【0042】
<亀裂幅の検証>
ここで、試験条件を一定とするため高さ方向の亀裂の発生位置を供試体(試験片)P毎に揃える必要がある。
図11(a)に示すように、3点曲げは荷重負荷位置の反対面の試験体の厚さの範囲内にひびが発生した。
【0043】
また、
図11(b)に示すように、4点曲げは荷重負荷位置の反対面の2か所の荷重負荷幅から更に試験体の厚さ分外れた広い範囲でひびが発生した。
【0044】
更に、
図11(c)に示すように、3点曲げで端部を荷重負荷位置とした片持ち3点曲げの場合は、支点となる中央の固定位置から端部の荷重負荷位置の広い範囲でひびが発生した。
【0045】
これにより、供試体(試験片)の表面に発生する荷重負荷による亀裂幅をミクロン単位で精度よく制御可能にするには、3点曲げによる方式が有効であることが判明した。
【0046】
<荷重負荷の方法>
上記したように、本実施形態における荷重負荷の方法は、ボルトBの回転による変位(ピッチ)を利用する方式としている。即ち、亀裂幅を0.01mm単位で制御するためには、ストロークを0.1mm単位で制御する必要があることが判明してボルト方式としている。
【0047】
また、ボルトBおよび押付治具3の材質はクロム(Cr)含有量が17%以上のステンレスとする。アルカリ性のコンクリートには接しているものの、試験の結果、クロム(Cr)含有量が17%未満の鋼材は屋外環境での長期使用で発錆が著しく、ボルトBが固着し試験途中での亀裂幅の調整が不可能である。
【0048】
<押付治具の態様>
図12(a)に示すように、押付治具3が面状に接する場合、押付治具3の試験体長手方向幅LAは、試験体厚みの10%以上~60%以下であることが必要である。10%以下で押付部のコンクリート表面で割れが発生し、60%を超えると亀裂の発生位置のバラツキが試験体厚みを超える。
【0049】
図12(b)に示すように、押付治具3が円柱で線状に接する場合、円柱の直径は5mm以上を要する。5mm未満で押付部のコンクリート表面で割れが発生する。
【0050】
図13に示すように、押付治具3が面状あるいは線状に接する場合、押付治具3の試験体幅方向幅WAは試験体幅WBに比較して試験体厚さの40%以上狭くならない。即ち、試験体幅方向幅WAが試験体幅WBに比較して試験体厚さの40%以上狭くなると押付治具3の端部のコンクリート表面で割れ発生する。
【0051】
<治具形状の比較>
図14(a)に示すように、押付治具3がボルトB面あるいは面状に接する場合、押付治具3の試験体幅方向幅WAは試験体幅WBに比較して試験体厚さの40%%以上狭くならない。
【0052】
図14(b)に示すように、試験体幅方向幅WAが試験体幅WBに比較して試験体厚さの40%以上狭くなると押付治具3の端部や押付面のコンクリート表面で割れが発生する。
【0053】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、鉄筋コンクリート柱Kの亀裂C(ひび割れ)の幅と鉄筋Qの腐食度との相関関係を解明することのできる手法として、種々の作業現場において、幅広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0055】
S1…切出工程
S2…封止工程
S3…亀裂導入工程
S4…暴露工程
S5…解体確認工程
K…鉄筋コンクリート柱
W…ウエブ
F…フランジ
P…供試体(コンクリート片)
R0…表面
R1…上下端面
R2…左右側面
R3…裏面
Q…鉄筋
C…亀裂(ひび割れ)
V…封止材
B…ボルト
B1…軸部
N…ナット
H…孔
1…架台
2…挟持部材
2A…支持当て部材
3…押付治具
3A…ガイド片
3B…ガイド溝
3C…押し当て部材
3D…押し当てロッド
3E…開口部
3F…ボルト孔