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特許7195512液体タンクの在庫量の計測方法及び装置並びに監視システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】液体タンクの在庫量の計測方法及び装置並びに監視システム
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/80 20220101AFI20221219BHJP
   B67D 7/08 20100101ALI20221219BHJP
【FI】
G01F23/80
B67D7/08 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018192614
(22)【出願日】2018-10-11
(65)【公開番号】P2020060472
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】593140956
【氏名又は名称】タマダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505026686
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀大学
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】玉田 善明
(72)【発明者】
【氏名】保科 架風
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02282182(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/00-23/80
G01F 25/20
B67D 7/00- 7/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク(2)内に設置されて当該タンク内の液体の在庫量を検出する液面計(4)と、当該タンクからの前記液体の出庫量を計測する液量計(5)とを備えた液体タンクの在庫量の計測方法であって、
所定の時間間隔(p)毎に受信した前記液面計の検出データと、当該時間間隔内の前記液量計が計測した出庫量とを記憶し、当該記憶した所定期間のデータから液面計の検出誤差の変動周期を検出し、当該検出した周期に基づいて前記期間を小区間(s)に分割し、各小区間毎の較正関数を繋いで較正関数を求めて前記タンク内の液体の真の在庫量と前記液面計が検出した検出在庫量との関係を推測し、当該推測した関係に基づいて前記液面計の検出データを補正して前記タンクの在庫量を演算する、液体タンク内の在庫量の計測方法。
【請求項2】
タンク(2)内に設置されて当該タンク内の液体の液面を検出する液面計(4)と、検出した液面と前記タンクの形状・寸法とを基にして検出在庫量を演算する演算手段(15)と、当該タンクからの前記液体の出庫量を計測する液量計(5)とを備えた液体タンクの在庫量の計測装置であって、
所定の時間間隔(p)毎に前記演算手段が演算した検出在庫量xtと偏差補正手段(32)によって補正された後の補正在庫量Xとを記憶する記憶手段(34)と、
当該記憶手段に記憶されている所定期間のデータから液面計の検出誤差の変動周期を検出して当該周期に基づいて前記期間を小区間(s)に区画する小区間設定手段(38)と、
区画された小区間(s)のデータから得られる較正関数を繋いで補正演算のための較正関数を得る学習手段(37)と、
当該学習手段が求めた較正関数で新たに取得した検出在庫量を補正して前記補正在庫量を求める偏差補正手段(32)とを備えている、
液体タンクの在庫量の計測装置。
【請求項3】
前記記憶手段(34)に記憶された検出在庫量と前記液量計が計測した出庫量から算出した計算在庫量との差の極値を求めて前記小区間設定手段に当該小区間の幅又は区画数を設定する小区間演算手段(38)を備えている、請求項2記載の液体タンクの在庫量の計測装置。
【請求項4】
タンク(2)内に設置されて当該タンク内の液体の液面を検出する液面計(4)と、検出した液面と前記タンクの形状・寸法とを基にして検出在庫量を演算する演算手段(15)と、当該タンクからの前記液体の出庫量を計測する液量計(5)とを備えた液体タンクの在庫量の監視システムであって、
所定の時間間隔(p)毎に前記液面計の検出値又は前記演算手段が演算した在庫量及び前記液量計が対応する時間間隔(p)内に計量した出庫量とをインターネット(6)を介して管理コンピュータ(3)に送信する送信器(16)を備え、前記管理コンピュータは、請求項2又は3記載の計測装置と、時間軸を横軸にして前記記憶手段に記憶した複数日分の補正在庫量をグラフ表示する表示手段(36)とを備えている、地下タンクの監視システム。
【請求項5】
前記送信器が、前記液量計の計測データを当該液量計に接続されたPOS端末の入力端(14)から取得する、請求項4記載の地下タンクの監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体を貯蔵するタンクに設けられている液面計の検出値に基づく在庫量の計測方法及び装置並びに監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガソリンや灯油などとして流通する石油類は、元売業者からガソリンスタンドと通称される一般給油所や大規模消費者である自家給油所に供給されている。給油所では、ガソリンや灯油を地下に埋設したタンクに貯蔵している。各タンクにはタンク内の在庫量(貯蔵量)を計測する液面計が設けられ、地上やタンクの管理室に設置したモニタによって液面計の検出値を基にして演算した在庫量を知ることができる。
【0003】
危険物施設として地下に埋設されたタンクや配管は、設置を終了した時点から漏洩を確認することが困難になる。タンクからの漏洩の有無は、3年又は1年に1回、法的に定められている検査によって判断している。
【0004】
地下タンクの漏洩は、3年又は1年に1回の法的に定められている検査によって判断されるが、これは検査を行なった時点での漏洩の有無を判断しており、次回の検査まで漏洩がないことを保証している訳ではない。よってその間の漏洩の有無は危険物施設の所有者が日々の液面計のデータ及び給油機の液量計からの販売データを記録することで確認している。
【0005】
給油機に設けられている液量計は、給油機毎に予め計測しており、誤差は±0.5%以内としている。従って、液量計の計測値はほぼ正確であると推定できる。タンクの在庫量は、タンクの形状に応じて液面の位置と在庫量との関係を理論的に求め、求めた演算式で液面計の検出値から在庫量を演算している。
【0006】
しかし、地下タンクでは、液面計の検出値から演算した在庫量と真の在庫量との間にタンク毎のばらつきがある。地下タンクは、埋め戻した後の地盤の沈下や地下水の状況、土圧のかかり方などにより、タンクの変形や傾きが生じ、その結果、液面計の検出値と真の在庫量との関係に偏差ないし誤差が生じる。
【0007】
タンクには、タンクローリーから液体が供給される。通常、タンクローリーからの石油類の入庫は、2kL(キロリットル)単位で行われるが、運搬中の蒸発もあるので一定せず、蒸発量を計測することは困難である。従って、タンクローリーからの給油量を基にして液面計の検出値と在庫量との関係式を補正することもできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、タンクの漏洩の有無は、危険物施設の所有者が日々の液面計のデータ及び液量計のデータを記録することで確認している。例えば一般給油所では、地下タンク内の液体の量を毎日液面計で計測している。当日の在庫量は、前日の在庫量に入庫量(タンクローリーからの受入量)と出庫量(販売量)とを足し引きした量(以下、「計算在庫量」と言う。)となるが、実際には、液面計の計測精度及び地下タンクの変形などの影響で、個々のタンク毎に計算在庫量に固有の誤差が発生する。
【0009】
そのため、液面計の検出値から求めた在庫量(以下、「検出在庫量」と言う。)と計算在庫量とを比較してもタンクの漏洩等を発見するのが困難で、各種の誤差を含んだ計測値に基づいて漏洩を検出するには相当の熟練を必要とし、微量の誤差を速やかに検出することは極めて困難であった。
【0010】
この発明は、発明者らの新たな知見に基づいて、タンクに設置されている液面計の誤差を推定することを可能にすることにより、液面計の検出値からタンクの在庫量をより正確に推定できる手段を提供するもので、タンク及び当該タンクに接続された配管からのより正確かつ速やかな漏洩検出を可能にすると共に、個々のタンクの在庫量をより正確に計測できるようにすることで、定常時及び非常時におけるタンクの稼働状態の監視をより速やかにかつ正確に行うことができるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、地下に埋設した石油タンクに設置した液面計の誤差が短い時間間隔pで細かく変動するとともに全体としてある上限と下限との間で周期的に変動しているという新たな知見に基づいてなされたものである。この発明では、過去の液面計4と当該タンクからの出庫量を計測する液量計5の計測データに基づいて液面計が検出した在庫量から真の在庫量を近似的に求める較正関数を各タンク毎に求めて真の在庫量を推定する。
【0012】
この発明の液体タンク内の在庫量の計測方法は、タンク2内に設置されて当該タンク内の液体の在庫量を検出する液面計4と、タンク2からの液体の出庫量を計測する液量計5とを備えた液体タンクの在庫量の計測方法である。
【0013】
この発明の方法では、所定の時間間隔p毎に受信した液面計4の検出データと、当該時間間隔内の液量計5が計測した出庫量とを記憶し、記憶した所定期間のデータからタンク2内の液体の真の在庫量と液面計4が検出した検出在庫量との関係を推測し、当該推測した関係に基づいて液面計4の検出データを補正して前記タンクの在庫量とする。
【0014】
この発明の方法を実施する好ましい装置は、所定の時間間隔p毎に演算手段15が演算した検出在庫量xtと偏差補正手段32によって補正された後の補正在庫量Xとを記憶する記憶手段34と、当該記憶手段に記憶されているデータから較正関数を求めるのに用いるデータの区間を小区間sに区画する小区間設定手段38と、区画された小区間のデータから得られる較正関数を繋いで補正演算のための較正関数を得る学習手段37と、当該学習手段が求めた較正関数で新たに取得した検出在庫量を補正して補正在庫量を求める偏差補正手段32とを備えている。
【0015】
また、この発明の地下タンクの監視システムは、管理コンピュータ3と、所定の時間間隔p毎に液面計4の検出値又は演算手段15が演算した検出在庫量及び液量計5が対応する時間間隔p内に計量した出庫量とをインターネット6を介して管理コンピュータ3に送信する送信器16を備え、この発明の在庫量の計測装置と、時間軸を横軸にして前記記憶手段に記憶した複数日分の補正在庫量をグラフ表示する表示手段36とが管理コンピュータ3に設けられているというものである。
【0016】
小区間設定手段38に設定する小区間sの幅又は数は、記憶した所定区間のデータから液面計の検出誤差の変動周期を検出し、検出した周期と求めようとする較正関数の次数とに基づいて分割する小区間sの幅を求めて自動的に設定することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明により、地下タンクの本体からの漏洩のみでなく、地下タンクに接続された埋設配管からの漏洩も正確に検知ができる。また、液量計や液面計などの計測機器の誤差や不具合も速やかに検出でき、定常時及び非常時におけるタンクの稼働状態を監視することができる。
【0018】
またこの発明は、液面計や液量計及びそれらに繋がる配線など、既存の設備を使用してデータを収集することができるので、低コストで導入でき、運用コストも安価である。
【0019】
またこの発明の監視システムによれば、複数のタンクについて、液面計の検出在庫量から求めた補正在庫量、液量計による出庫量、必要な場合にはタンクローリーからの入庫量が速やかに管理コンピュータに自動送信されて結果が表示されるから、熟練したアナリストが常時監視する体制を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】液面計による検出在庫量の偏差が周期的に変動する例を示したグラフ
図2】この発明の監視システムを備えた一般給油所のブロック図
図3】この発明の方法で補正した補正在庫量のグラフ(b)と補正前の検出在庫量のグラフ(a)
図4】4個の地下タンクについて、在庫量を横軸にして液面計の検出在庫量の誤差を計測したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。本願の発明者らが地下に埋設した石油タンクの在庫量と出庫量との変化を詳細に計測したところ、液面計が検出した在庫量の誤差が、図1に示すように、計測毎に細かく変化するとともに全体としてある上限と下限との間で周期的に変動していることを見出した。図1の横軸は時間の経過、左縦軸は在庫量(破線)、右縦軸は液面計の検出値と理論値との誤差(実線)で、5分毎に計測した3日分データを示している。
【0022】
この知見に基づいて、本願発明者らは、液面計が検出した在庫量(検出在庫量)と真の在庫量との関係をAIの手法で学習させて検出在庫量の誤差を補正できるのではないかという着想を得、本願発明を完成させた。
【0023】
この発明では、過去の計測値に基づいて検出在庫量から真の在庫量を求める較正関数を各地下タンク毎に求める。本実施形態では、複雑な関数形を近似する機械学習法のノンパラメトリック回帰分析の3次スプライン回帰を適用して較正関数を求めた。
【0024】
すなわち、xを検出在庫量、検出時点t=2,・・・,Tに対して、
f(xt=f(xt-1)+受入量at-出庫量bt
をみたす関数f(xt)に近い関数(較正関数)を3次スプライン回帰によって求めて検出在庫量と真の在庫量の偏差を補正し、補正した在庫量を監視することで、地下タンクの健全性を管理する。
【0025】
複雑な曲線構造を持つ現象に対応する較正関数を見つけるのは難しい。しかし、本願発明者らが見出した検出在庫量の変化と出庫量から演算した在庫量(計算在庫量)の変化との間の偏差の周期性を加え、較正関数を求めるのに使用する所定区間のデータ群を複数の小区間sで区切ることで複雑な構造をモデル化し、各小区間毎に実測データに当てはまる多項式を見つけ、例えば隣接する小区間の境界を移動させて各小区間毎に求めた多項式の端を繋ぐことで、複雑な構造の実測データから適切な較正関数を求めることができた。
【0026】
較正関数を求めるのに用いるデータを収集した区間をそのデータ量に応じて区切ることによりm-1個の小区間sを設定し、これらの小区間の境界となるm個の節をt1・・・tmとして、3次スプライン回帰による較正関数
【0027】
【数1】
の係数w0、w1、w2、w3、wj+3(j=1・・・m)を求めて、検出在庫量xを補正して真の在庫量とするのである。
【0028】
上記の在庫量の補正演算は、液面計の検出値から真の在庫量を表示する過程のどの段階ででも行うことができる。以下、一般給油所が備える地下タンク2の健全性を管理コンピュータ3で監視する例を示した図2以下を参照して、この発明の実施例を説明する。図2は、一般給油所を模式的に示した図で、建屋1が建っている敷地の下にタンク2が埋設されている。タンク2には、石油類(例えばガソリン)が貯蔵されており、その液面の位置は、液面計4で検出されている。タンク2は、入庫口21と出庫口22とを備えている。タンク2内の石油類は、入庫口21を通してタンクローリー23から受け入れられ、出庫口22から埋設配管24を通って給油機25から消費者(通常は自動車)に供給される。給油機25には、給油ノズル26から流出した石油類の量を計量する液量計5が設けられている。図には1個のタンク2と1個の給油機25のみを示しているが、通常はタンク2及び給油機25は、複数設けられている。
【0029】
液面計4は、検出した石油類の液面の位置を電気信号に変換して信号線7により建屋1内に設置したモニタ11に送っている。図のモニタ11は、従来構造のモニタで、液面の位置からタンク内の石油類の在庫量を演算してディスプレイ12に表示する。この演算は、タンクの内法寸法と液面の位置との関係を理論的に求めた演算式による演算である。
【0030】
給油機25に設けた液量計5は、給油が行われたときに計測した出庫量を電気信号に変換してPOS端末13に送っている。POS端末13は、受信した計量信号に基づいて価格を演算し、金銭の授受を行って販売データを図示してないPOSシステムのコンピュータに送る。POS端末13は、給油機25に内蔵されている場合と、建屋1内に設置されている場合とがある。POS端末の入力端14とモニタ11内に設けた送信器16とは、分岐信号線8で接続されており、液量計5からPOS端末13に送られた計量信号は、分岐信号線8により、送信器16に送られている。
【0031】
なお、送信器16が液量計5の検出値をPOS端末の入力端14から取得しているのは、POS端末13で処理されたデータから取得すると、給油所の売上金額などのデータも含まれるおそれがあり、一方、液量計5から直接データを取る方法では、多数の新たな配線などが必要になるからである。
【0032】
一般的なモニタ11は、ディスプレイ12と、液面計4の検出値から在庫量を理論的に求めた演算式で演算する演算手段15と、この演算手段15の演算結果をディスプレイ12に表示する表示手段と、演算結果が所定の量以下になったときに警告を表示する警告手段とを備えている。実施例のモニタ11は、送信器16を更に備えている。
【0033】
送信器16は、予め設定した短い時間間隔(例えば3~30分間隔、好ましくは3~10分)毎にモニタの演算手段15が演算した在庫量を管理会社9に設置した管理コンピュータ3に送信する。送信器16はまた、分岐信号線8から入力された計量信号を所定データ量(例えば1kバイト程度)で区切って、区切り毎のタイミングで区切り信号をインターネットを介して管理コンピュータ3に送信する。
【0034】
管理コンピュータ3には、受信器31、偏差補正手段32、入庫量演算手段33、記憶手段34及びWebページの作成・送信手段35、表示手段36、学習手段37及び小区間設定手段38を備えている。
【0035】
受信器31は、モニタの送信器16から所定の時間間隔pで送信されたデータを受信する。記憶手段34は、各時間毎に受信した検出在庫量xtと、偏差補正手段32によって補正された後の補正在庫量Xとを記憶する。
【0036】
小区間設定手段38には、求めようとする較正関数の次数に応じた小区間sが設定される。自動で小区間sを設定するときは、過去の所定区間の平準化した検出在庫量と計算在庫量との差が極値をとる周期を検出して対応する小区間sを演算する小区間演算手段39が設けられる。学習手段37は、前述した機械学習の手法により、較正関数f(xt)を求める。
【0037】
偏差補正手段32は、学習手段37が求めた較正関数により、新たに受信した検出在庫量xtを補正して補正在庫量Xtを求める。新たな検出在庫量及び補正在庫量及び計量データは、記憶手段34に順次記憶される。
【0038】
表示手段36は、横軸を時間軸として、記憶されている補正在庫量Xtのグラフを管理コンピュータ3のモニタに表示する。Webページの作成・送信手段35は、当該グラフのWebページを作成して図示しないWebサーバーにアップロードする。給油所の担当者は、閲覧権限を与えられたブラウザ17でWebページを閲覧することができる。
【0039】
図3(a)は、検出在庫量-計算在庫量(補正前)のグラフ、図3(b)は、検出在庫量-計算在庫量(補正後)のグラフであり、得られた較正関数を使用した補正により、実在庫量と計算在庫の差の標準偏差が54%低減している。補正前のグラフ(a)では、本来の誤差が液面計の表示ズレの誤差により紛れてしまい漏洩などのタンク異常の判断が難しい。これに対して、補正後のグラフ(b)では、液量計の検定によるタンクバックの存在などの液面誤差以外の誤差が残るが、液面計の検出在庫量の偏差が取り除かれるためそれらの誤差が明確になり、タンク異常の判断がしやすくなる。
【0040】
管理会社9の監視担当者ないしアナリストは、管理会社9のディスプレイに表示されたデータに基づいて、計測器4、5の異常動作や地下タンク2や埋設配管24からの漏洩などを速やかに検出することができ、地震などに伴うタンクの変形なども数日分のデータを解析することで検出できるようになる。
【0041】
なお、誤差の変化の周期と小区間sに分割する際の分割幅及び得られる較正関数には関連があり、周期の1.5倍の小区間で分割すると2次の較正関数が得られる。また、開始時及び終了時のデータは、短い間隔で計測したデータの平均を取ることで短い周期での誤差を補正できる。
【0042】
なお、既存のモニタ11を使用しないときは、送信器16が、液面計4の検出値を直接送信し、液面計の検出値から在庫量を演算する演算手段15や演算結果が所定の量以下になったときに警告を生成する警告手段は管理コンピュータ3側に設けることができる。また、モニタ11の演算手段15にこの発明の記憶手段34、小区間設定手段38及び学習手段37を設けて検出在庫量の補正を行うこともできる。
【0043】
計測データをタンクの製造元のブラウザにも送ることにより、送られたデータを基に、タンクについての専門知識を有するアナリストが出庫状態、液漏れなどの異変のチェックを行うことができる。熟練したアナリストが数日分(例えば3日分)の計測データのチェックを行うことで、異常発生時には迅速な対応が可能になる。入出庫が行われない夜間のみのデータを切り出すことで、漏洩の監視がより容易になる。また、各タンク毎の偏差データを表示することで、個々のタンクの製造上の問題点を発見することもできる。
【0044】
図4(a)、(b)、(c)、(d)は、異なる4個の地下タンクについて、この発明の方法で検出した液面計の検出在庫量の偏差がどのように変化するかをタンク内の在庫量を横軸にして示したグラフである。
【0045】
図4(a)のタンクでは、在庫量が増加すると増減量はプラス、在庫量が減少すると増減量はマイナスの傾向があり、液面計とタンクの寸法違い(タンクの寸法のほうが小さい)があると推測される。
【0046】
図4(b)のタンクでは、在庫量が増加すると増減量はマイナスとなり、在庫量が減少すると増減量はプラスの傾向がある。これは、液面計とタンクの寸法違い(タンクの寸法のほうが大きい)と推測される。
【0047】
図4(c)のタンクでは、在庫量が全容量の半分あたりで増減量の傾向が反転しており、液面計の設置位置のズレが原因と推測される。
【0048】
図4(d)のタンクでは、誤差の反転傾向が複数個所で見られ、液面計のタンクテーブルの違いが原因と推測される。
【符号の説明】
【0049】
2 タンク
3 管理コンピュータ
4 液面計
5 液量計
6 インターネット
13 POS端末
14 入力端
16 送信器
32 偏差補正手段
33 入庫量演算手段
34 記憶手段
36 表示手段
37 学習手段
38 小区間設定手段
39 小区間演算手段
図1
図2
図3
図4