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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】デバイスの製造方法、および、デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20221219BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G01N1/10 C
G01N37/00 101
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019048933
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020148739
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-11-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「がん転移メカニズム解明にむけた人工超空間の創製」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】安井 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】馬場 嘉信
(72)【発明者】
【氏名】池田 宗和
(72)【発明者】
【氏名】新井 正雄
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/158832(WO,A1)
【文献】特開2017-067496(JP,A)
【文献】特表2012-520687(JP,A)
【文献】特表2012-504243(JP,A)
【文献】特開2013-181887(JP,A)
【文献】特開2007-155398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
G01N 37/00
G01N 33/48-33/52,33/58-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノワイヤを形成したデバイスの製造方法であって、
デバイスは、
ナノワイヤを形成したナノワイヤ形成面を含む第1部材と、
蓋部材として機能する第2部材と、
加熱圧着により第1部材および第2部材に接合する機能を有する均質な材料からなり、且つ、貫通溝を有する第3部材と、
を含み、
製造方法は、
第1部材のナノワイヤ形成面と第2部材の第1面との間に第3部材が位置するように積層する積層工程と、
第1部材と第3部材、および、第2部材と第3部材を加熱圧着により接合することで、第1部材のナノワイヤ形成面と、第2部材の第1面と、第3部材の貫通溝の壁面とで、流路を形成する接合工程と、
を含み、
第2部材の第1面の流路を形成する部分が、非平面領域を含み、
流路内に、第1部材に形成されたナノワイヤと第2部材に形成された非平面領域が配置され
第3部材を形成する材料が、第1部材および第2部材を形成する材料と異なる、
デバイスの製造方法。
【請求項2】
ナノワイヤを形成したデバイスの製造方法であって、
デバイスは、
ナノワイヤを形成したナノワイヤ形成面を含む第1部材と、
蓋部材として機能する第2部材と、
加熱圧着により第1部材および第2部材に接合する機能を有する均質な材料からなり、且つ、貫通溝を有する第3部材と、
を含み、
製造方法は、
第1部材のナノワイヤ形成面と第2部材の第1面との間に第3部材が位置するように積層する積層工程と、
第1部材と第3部材、および、第2部材と第3部材を加熱圧着により接合することで、第1部材のナノワイヤ形成面と、第2部材の第1面と、第3部材の貫通溝の壁面とで、流路を形成する接合工程と、
を含み、
第2部材の第1面の流路を形成する部分が、非平面領域を含み、
流路内に、第1部材に形成されたナノワイヤと第2部材に形成された非平面領域が配置され、
第3部材が熱可塑性樹脂で形成され、第3部材の融点が、第1部材および第2部材を形成する材料の融点より低い、
デバイスの製造方法。
【請求項3】
第3部材を形成する材料が、第1部材および第2部材を形成する材料と異なる、
請求項2に記載のデバイスの製造方法。
【請求項4】
第2部材の第1面の流路を形成しない部分が、略平面状である、
請求項1~3の何れか一項に記載のデバイスの製造方法。
【請求項5】
第2部材が、
サンプル液投入孔と、
サンプル液回収孔と、
を含み、
サンプル液投入孔の一端が、第2部材の第1面の流路を形成する部分に第1開口部を有し、
サンプル液回収孔の一端が、第2部材の第1面の流路を形成する部分に第2開口部を有する、
請求項1~4の何れか一項に記載のデバイスの製造方法。
【請求項6】
ナノワイヤを形成したデバイスであって、デバイスは、
ナノワイヤを形成したナノワイヤ形成面を含む第1部材と、
蓋部材として機能する第2部材と、
貫通溝を有する第3部材と、
を含み、
第1部材のナノワイヤ形成面と第2部材の第1面との間に第3部材が位置するように積層され、
第1部材のナノワイヤ形成面と、第2部材の第1面と、第3部材の貫通溝の壁面とで、流路が形成され、
第2部材の第1面の流路を形成する部分が、非平面領域を含み、
流路内に、第1部材に形成されたナノワイヤと第2部材に形成された非平面領域が配置され
第3部材を形成する材料が、加熱圧着により第1部材および第2部材に接合する機能を有する均質な材料からなり、且つ、第1部材および第2部材を形成する材料と異なる、
デバイス。
【請求項7】
ナノワイヤを形成したデバイスであって、デバイスは、
ナノワイヤを形成したナノワイヤ形成面を含む第1部材と、
蓋部材として機能する第2部材と、
貫通溝を有する第3部材と、
を含み、
第1部材のナノワイヤ形成面と第2部材の第1面との間に第3部材が位置するように積層され、
第1部材のナノワイヤ形成面と、第2部材の第1面と、第3部材の貫通溝の壁面とで、流路が形成され、
第2部材の第1面の流路を形成する部分が、非平面領域を含み、
流路内に、第1部材に形成されたナノワイヤと第2部材に形成された非平面領域が配置され、
第3部材が熱可塑性樹脂で形成され、第3部材の融点が、第1部材および第2部材を形成する材料の融点より低い、
デバイス。
【請求項8】
第3部材を形成する材料が、加熱圧着により第1部材および第2部材に接合する機能を有する均質な材料からなり、且つ、第1部材および第2部材を形成する材料と異なる、
請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
第2部材の第1面の流路を形成しない部分が、略平面状である、
請求項6~8の何れか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
第2部材が、
サンプル液投入孔と、
サンプル液回収孔と、
を含み、
サンプル液投入孔の一端が、第2部材の第1面の流路を形成する部分に第1開口部を有し、
サンプル液回収孔の一端が、第2部材の第1面の流路を形成する部分に第2開口部を有する、
請求項6~9の何れか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願における開示は、デバイスの製造方法、および、デバイスに関する。特に、ナノワイヤを形成したデバイスの効率的な製造方法、および、当該製造方法により形成したデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノワイヤを形成したデバイスを用い、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、核酸、細胞外小胞、細胞、ウイルス、菌等のサンプルを捕捉したり、分析することが知られている。
【0003】
ナノワイヤを形成したデバイスの例としては、基板に流路を形成し、ナノワイヤの一方の端部が流路内に埋め込まれたデバイスが知られている(特許文献1参照)。細胞外小胞体、細菌、核酸等のサンプルは所定の電荷を有する。そのため、特許文献1に記載のデバイスは、ナノワイヤ表面の電荷を調整することで、サンプルをナノワイヤに吸着することができる。
【0004】
また、ナノワイヤを形成したデバイスの製造方法としては、ナノワイヤを形成した基板に、流路を形成したPDMS基板を被せる方法が知られている。更に、当該流路にヘリングボーン構造(herringbone structure)を設けることで、流路内を流れるサンプル液に乱流を発生させ、サンプル液とナノワイヤの接触頻度を高められることも知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/137427号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Takao Yasui et. al.,“Unveiling massive numbers of cancer-related urinary-microRNA candidates via nanowires”, SCIENCE ADVANCES,15 Dec 2017:Vol.3,no.12,e1701133、DOI:10.1126/sciadv.1701133
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載された発明では、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて基板に流路を設けている。ところで、流路内に流すサンプル液の単位時間当たりの送液量を変更することがある。しかしながら、流路のサンプル液の流れ方向の断面積(以下、流路のサンプル液の流れ方向の断面積のことを、単に「断面積」と記載することがある。)を変えずに単位時間当たりの送液量を単に多くするのみでは、ナノワイヤに対する圧力が大きくなる。そのため、特許文献1に記載のデバイスを用いて単位時間当たりのサンプル液の送液量を変えるためには、断面積を変えた複数のデバイスを準備する必要がある。ところで、特許文献1に記載のデバイスは、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて基板に流路を形成している。したがって、特許文献1に記載のデバイスを用いた場合、デバイスを作製する際に、(1)幅の異なるフォトマスクを用いる、及び/又は、(2)エッチングの深さを調整する、ことで断面積が異なるデバイスを複数準備する必要がある。そのため、製造工程が煩雑化し、コストが上昇するという問題がある。
【0008】
一方、非特許文献1に記載のデバイスの流路は、ナノワイヤを形成した基板とは別の部材であるPDMS基板に形成されている。流路付きPDMS基板は、鋳型の形状を未硬化のPDMSに転写し、PDMSを硬化することで形成できる。そのため、非特許文献1に記載のデバイスの場合、流路を形成するための鋳型構造の形状(大きさ)を変えることで流路部分の断面積を調整できる。つまり、流路を形成するためには、大きさが異なる複数の鋳型を準備しなければならない。そのため、製造工程が煩雑化し、コストが上昇するという問題がある。
【0009】
ところで、非特許文献1に記載の流路には、流路内を流れるサンプル液に乱流を発生するためのヘリングボーン構造が形成されている。当該ヘリングボーン構造を形成するためには、鋳型にヘリングボーン構造に対応する鋳型構造を形成する必要がある。そのため、非特許文献1に記載の流路付きPDMS基板を作製する際には、流路部分を形成する鋳型構造およびヘリングボーン構造を形成する鋳型構造を、単一の鋳型に形成する必要がある。そのため、流路の断面積は同じでもヘリングボーン構造を変えたい場合、或いは、ヘリングボーン構造は同じでも流路の断面積を変えたい場合、換言すると、流路の断面積およびヘリングボーン構造の何れか一方を変えたい場合であっても、新たに鋳型を作製しなければならないという問題がある。そのため、製造工程が煩雑化し、コストが上昇するという問題がある。
【0010】
本出願における開示は、上記問題点を解決するためになされたものであり、鋭意研究を行ったところ、(1)ナノワイヤを形成した第1部材と、蓋部材として機能する第2部材とを、(2)加熱圧着による接合機能を有する均質な材料からなり、且つ、貫通溝が形成された第3部材で接合し、(3)貫通溝の壁面と、第1部材のナノワイヤ形成面と、第2部材の第1面とで流路が形成される構造とすると、(4)所望の厚さの第3部材を用いる、および/または、第3部材に形成する貫通溝の幅を調整することで、流路の断面積を簡単に調整できること、(5)そして、第3部材を加熱圧着による接合層として機能させるとともに、流路の構成要素である側壁としても機能させることで、流路の断面積を調整する第3部材と、蓋部材として機能する第2部材とを別部材にできること、(6)その結果、断面積またはヘリングボーン構造等の乱流を発生する構造(以下、「非平面領域」と記載することがある。)の一方のみを変更する場合は、第2部材または第3部材の一方の部材のみを変更すればよいことから、本出願で開示する製造方法により、上記課題が解決できることを見出した。
【0011】
すなわち、本出願における開示の目的は、加熱圧着により接合機能を有する均質な材料を第3部材として用い、ナノワイヤを形成したデバイスの新たな製造方法、および、該製造方法により製造したデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願における開示は、以下に示す、加熱圧着により接合できる接合材料を用いるナノワイヤを形成したデバイスの製造方法、および、ナノワイヤを形成したデバイスに関する。
【0013】
(1)ナノワイヤを形成したデバイスの製造方法であって、
デバイスは、
ナノワイヤを形成したナノワイヤ形成面を含む第1部材と、
蓋部材として機能する第2部材と、
加熱圧着により第1部材および第2部材に接合する機能を有する均質な材料からなり、且つ、貫通溝を有する第3部材と、
を含み、
製造方法は、
第1部材のナノワイヤ形成面と第2部材の第1面との間に第3部材が位置するように積層する積層工程と、
第1部材と第3部材、および、第2部材と第3部材を加熱圧着により接合することで、第1部材のナノワイヤ形成面と、第2部材の第1面と、第3部材の貫通溝の壁面とで、流路を形成する接合工程と、
を含み、
第2部材の第1面の流路を形成する部分が、非平面領域を含み、
流路内に、第1部材に形成されたナノワイヤと第2部材に形成された非平面領域が配置されている、
デバイスの製造方法。
(2)第3部材を形成する材料が、第1部材および第2部材を形成する材料と異なる、
上記(1)に記載のデバイスの製造方法。
(3)第3部材が熱可塑性樹脂で形成され、第3部材の融点が、第1部材および第2部材を形成する材料の融点より低い、
上記(1)または(2)に記載のデバイスの製造方法。
(4)第2部材の第1面の流路を形成しない部分が、略平面状である、
上記(1)~(3)の何れか一つに記載のデバイスの製造方法。
(5)第2部材が、
サンプル液投入孔と、
サンプル液回収孔と、
を含み、
サンプル液投入孔の一端が、第2部材の第1面の流路を形成する部分に第1開口部を有し、
サンプル液回収孔の一端が、第2部材の第1面の流路を形成する部分に第2開口部を有する、
上記(1)~(4)の何れか一つに記載のデバイスの製造方法。
(6)ナノワイヤを形成したデバイスであって、デバイスは、
ナノワイヤを形成したナノワイヤ形成面を含む第1部材と、
蓋部材として機能する第2部材と、
加熱圧着により第1部材および第2部材に接合する機能を有する均質な材料からなり、且つ、貫通溝を有する第3部材と、
を含み、
第1部材のナノワイヤ形成面と第2部材の第1面との間に第3部材が位置するように積層され、第1部材と第3部材、および、第2部材と第3部材とが接合され、
第1部材のナノワイヤ形成面と、第2部材の第1面と、第3部材の貫通溝の壁面とで、流路が形成され、
第2部材の第1面の流路を形成する部分が、非平面領域を含み、
流路内に、第1部材に形成されたナノワイヤと第2部材に形成された非平面領域が配置されている、
デバイス。
(7)第3部材を形成する材料が、第1部材および第2部材を形成する材料と異なる、
上記(6)に記載のデバイス。
(8)第3部材が熱可塑性樹脂で形成され、第3部材の融点が、第1部材および第2部材を形成する材料の融点より低い、
上記(6)または(7)に記載のデバイス。
(9)第2部材の第1面の流路を形成しない部分が、略平面状である、
上記(6)~(8)の何れか一つに記載のデバイス。
(10)第2部材が、
サンプル液投入孔と、
サンプル液回収孔と、
を含み、
サンプル液投入孔の一端が、第2部材の第1面の流路を形成する部分に第1開口部を有し、
サンプル液回収孔の一端が、第2部材の第1面の流路を形成する部分に第2開口部を有する、
上記(6)~(9)の何れか一つに記載のデバイス。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るデバイスは、第1部材と第2部材との間に、加熱圧着による接合機能を有する均質な材料からなり、且つ貫通溝を有する第3部材を配置し、加熱圧着処理を行うことで、第3部材の貫通溝の壁面、第1部材のナノワイヤ形成面、および、第2部材の第1面とで強固な流路を形成できる。したがって、製造方法の利便性が向上するとともに、高強度で液漏れのない流路ができ、流路の断面積または非平面領域の一方のみを変更する場合の利便性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1Aはデバイス1の概略を示す分解斜視図、図1Bはデバイスを構成する第1部材乃至第3部材を積層した時の、図1AのX-X’方向の断面図である。
図2図2は、第1部材2のナノワイヤ形成面21にナノワイヤ5を形成する工程の一例を説明するための図である。
図3図3は、非特許文献2に記載のデバイスの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、ナノワイヤを形成したデバイス(以下、単に「デバイス」と記載することがある。)1の各実施形態について、詳しく説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一または類似の符号が付されている。そして、同一または類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。
【0017】
(デバイス1の実施形態、デバイス1の製造方法の実施形態)
図1Aおよび図1Bを参照して、デバイス1の実施形態、および、デバイス1の製造方法の実施形態について説明する。図1Aはデバイス1の概略を示す分解斜視図、図1Bはデバイスを構成する第1部材乃至第3部材を積層した時の、図1AのX-X’方向の断面図である。デバイス1は、ナノワイヤ5が形成された第1部材2と、蓋部材として機能する第2部材3と、第1部材2と第2部材3との間に配置され、流路を形成する貫通溝41を有し、加熱圧着による接合機能を有する均質な材料からなる第3部材4と、を含んでいる。ナノワイヤ5は、第1部材2のナノワイヤ形成面21に形成されている。なお、非平面領域35およびナノワイヤ5は、流路を形成する部分に形成されていればよい。
【0018】
第2部材3は、第3部材4と接合する側の面である第1面31と、第1面31の反対側の面である第2面32を有している。そして、第3部材4には、第1部材2のナノワイヤ形成面21に接合する接合第1面43と第2部材3の第1面31に接合する接合第2面44を有し、接合第1面43から接合第2面44の方向に第3部材4を貫通する貫通溝41が形成されている。したがって、第1部材2、第3部材4、および、第2部材3の順に積層した時に、第1部材2のナノワイヤ形成面21と、第2部材3の第1面31と、貫通溝41の周囲の壁面42とで、流路6が形成される。
【0019】
デバイス1は、必要に応じて、サンプル液投入孔33、サンプル液回収孔34を含んでいてもよい。サンプル液投入孔33は、第2部材3の第2面32から第1面31に貫通するように形成され、サンプル液投入孔33の一端は、第2部材3の第1面31の流路6を形成する部分に第1開口部331を有してる。また、サンプル液回収孔34は、第2部材3の第2面32から第1面31に貫通するように形成され、サンプル液回収孔34の一端は、第2部材3の第1面31の流路6を形成する部分に第2開口部341を有する。なお、図1Aは、サンプル液投入孔33、および、サンプル液回収孔34は、第2部材3に形成した例を示している。代替的に、図示は省略するが、第3部材4の貫通溝41の一部を延伸し、第1部材2と第2部材3との間に挟まれる第3部材4の第3面45に、サンプル液投入孔、または、サンプル液回収孔が開口するように形成してもよい。また、第3部材4の第3面45とは反対側の面に、サンプル液投入孔、または、サンプル液回収孔が開口するように形成してもよい。
【0020】
図2は、第1部材2のナノワイヤ形成面21にナノワイヤ5を形成する工程の一例を説明するための図である。なお、図2は、図1AのX-X’方向の断面図を表している。
(1)第1部材2
第1部材2は、ナノワイヤ5が成長でき、後述する第3部材4と加熱圧着により接合できる材料であれば、特に制限はない。ナノワイヤ5は、第1部材2の一つの面(ナノワイヤ形成面21)に形成されていれば、形成方法に特に制限はない。
【0021】
第1部材2は、一部又は全部が、有機材料で形成されていてもよい。第1部材は、高分子材料で形成されていてもよい。高分子材料は、天然樹脂であってもよく、合成樹脂であってもよく、それらの混合物であってもよい。合成樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)、熱硬化性ポリイミド(PI)であってもよい。
【0022】
熱可塑性樹脂は、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリウレタン(PUR)、アクリル樹脂(PMMA)などの汎用プラスチックであってもよく;ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、などエンジニアリングプラスチックであってもよく;熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)などのスーパーエンジニアリングプラスチックであってもよい。
【0023】
(2)ナノワイヤ5の形成
ナノワイヤ5は、公知の方法で成長させればよい。具体的には、硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO32・6H2O)、ヘキサメチレンテトラミン(C6124)を脱イオン水に溶解した前駆体溶液に、加熱した第1部材2を浸漬させることで、ZnOナノワイヤ5を成長させることができる。
【0024】
ナノワイヤ5の直径は、硝酸亜鉛六水和物の濃度調整、ヘキサメチレンテトラミンの濃度調整、等により調整できる。
【0025】
第2部材3は、蓋部材として機能する。また、第2部材3の第1面31の流路6を構成する部分の少なくとも一部には、流路6を流れるサンプル液に乱流を発生させ、ナノワイヤ5にサンプルを接触し易くするための非平面領域35が形成されている。図1Bに示す例では、第2部材3の第1面31から第2部材3の内部方向に形成した凹部で非平面領域35を形成しているが、非平面領域35は、表面を非平面とすることでサンプル液の流れに乱流を発生できれば特に制限はない。例えば、第1面31から流路6内に突出する凸部で形成してもよいし、凹部と凸部を組み合わせて形成してもよい。また、非平面領域35の形状は、非特許文献2に記載のへリングボーン構造としてもよいし、その他の構造としてもよい。
【0026】
第2部材3の第1面31への非平面領域35の形成方法は、第1面31を非平面にできれば特に制限はない。例えば、鋳型による転写、エッチング、切削、めっき等による付加等の方法から適宜選択すればよい。また、サンプル液投入孔33およびサンプル液回収孔34を形成する場合は、非平面領域35の形成前後に、ドリル等で孔を形成すればよい。或いは、エッチングにより非平面領域35を形成する場合には、サンプル液投入孔33およびサンプル液回収孔34以外の部分をレジストで保護し、エッチングによりサンプル液投入孔33およびサンプル液回収孔34を形成してもよい。なお、第1面31の流路を形成しない部分は、略平面状であることが望ましい。流路6を形成する部分以外の第1面31を略平面とすることで、後述する第3部材4と接合し易くなる。
【0027】
第2部材3は、後述する第3部材4と加熱圧着により接合できる材料で形成されていれば良い。
【0028】
ところで、図3に示すように、非特許文献2に記載のデバイスは、鋳型を転写することで形成したカバー部材9と、第1部材2のナノワイヤ形成面21とで、流路6aを形成している。したがって、鋳型を転写後の非平面領域35aは、凹部形状のカバー部材9の底面部分9aに位置することになる。そのため、形成した非平面領域35aに、追加の処理を施したい場合、凹部形状のカバー部材9の壁部分9bが邪魔になり、追加の処理が難しいという問題がある。その結果、非平面領域35の形状は、鋳型の形状に依存するという問題がある。
【0029】
一方、本出願で開示するデバイス1は、蓋部材として機能する第2部材3と流路6の断面積を規定する第3部材4を別部材としている。したがって、第2部材3自体に流路6を形成する必要がないことから、第1面31を略平面状にできる。そのため、フォトリソグラフィの繰り返し実施や、めっき等による所望の材料の付加等が容易になる。したがって、非平面領域35を形成する際に、エッチングを繰り返す、めっき等による材料の付加を繰り返す、或いは、エッチングおよびめっきを組み合わせる等の処理により、例えば、3次元網目構造を有する非表面領域35の形成も可能である。したがって、本出願で開示するデバイスは、製造工程の利便性が向上し、製造工程を簡略化することで製造コストが下がるという効果に加え、非平面領域35の設計の自由度が大幅に向上するという、複合的な効果を奏する。
【0030】
第3部材4は、第1部材2および第2部材3と加熱圧着により接合する機能を有する均質な材料からなり、且つ、貫通溝41を形成できる材料で形成されている。例えば、第3部材4は、熱による軟化する公知の接合剤層等からなっている。より具体的には、アクリルの熱可塑性樹脂が挙げられる。また、この接合剤は、接着力が約10N/cm程度となる材料が望ましい。当該材料を用いることで、第3部材4の貫通溝41の壁面42、第1部材2のナノワイヤ形成面21、および、第2部材3の第1面21とで、液漏れのない強固な流路6を形成できる。第1部材2、および、第2部材3にも熱可塑性樹脂を用いる場合は、第3部材4の熱可塑性樹脂の融点が、第1部材2、および、第2部材3の融点より低い材料から選択すればよい。なお、アクリルシートは複数の膜厚(60μm、100μmなど)が市販されており、流路の高さの調整が容易である。
【0031】
なお、図1に示す例では、貫通溝41を一つ形成した例が記載されている。代替的に、貫通溝41を2以上形成してもよい。貫通溝41を2以上形成する場合は、第1部材2、第3部材4、および、第2部材3を積層した際に、貫通溝41が位置する部分にナノワイヤ5が配置できるように調整すればよい。
【0032】
デバイス1は、以下の手順により製造することができる。
(1)ナノワイヤ形成面21にナノワイヤ5を形成した第1部材を準備する。第1面31に非平面領域35を形成した第2部材3を準備する。貫通溝41を形成した第3部材4を準備する(構成部材準備工程)。
(2)第1部材2のナノワイヤ形成面21と、第2部材3の第1面31との間に、第3部材4が位置するように積層する(積層工程)。より具体的には、第1部材2のナノワイヤ形成面21と第3部材4の接合第1面43を直に接触させ、かつ、ナノワイヤ5と非平面領域35が、貫通溝41内に配置されるようにする。また、第2部材3の第1面31と第3部材4の接合第2面44を直に接触させる。
(3)第3部材4を形成する材料である熱可塑性樹脂の融点付近の温度に加熱し、圧力を加えることで、第1部材2のナノワイヤ形成面21と第3部材4の接合第1面43を直に接合させ、第2部材3の第1面31と第3部材4の接合第2面44を直に接合させる(接合工程)。たとえば、第3部材4にアクリルシートを用いる場合、150℃、10分、1MPaなどが良い。以上の手順により、デバイス1を製造できる。
【0033】
(デバイス1の使用方法)
デバイス1は、従来のナノワイヤを形成したデバイスと同様、サンプル液中のサンプルの捕捉、分離、分析等に用いることができる。例えば、細胞外小胞の分析をする場合は、シリンジポンプ等を用いて細胞外小胞を含有するサンプル液(培養液、血清・尿等の体液など)をサンプル液投入孔33から送液し、サンプル回収孔34から細胞外小胞を分離後の溶液を回収する。そして、サンプル液を流し終わった後は、ナノワイヤに吸着した細胞外小胞の破砕液をサンプル投入孔33から送液し、細胞外小胞破砕液をサンプル回収孔34から回収する。そして、回収した細胞外小胞破砕液に含まれるmiRNA等の分析を行えばよい。
【0034】
以下に、実施形態のより詳しい一例を掲げ、本出願で開示する実施形態を具体的に説明するが、本出願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。
【0035】
〔デバイスの作製〕
以下の手順により、デバイス1を作製することができる。
<第1部材2の作製>
ポリイミド樹脂製の基板(第1部材2)の表面にナノワイヤを成長する。
【0036】
<第2部材3の作製>
ポリイミド樹脂製の基板(第2部材3)の表面に、リソグラフィー技術よりパターンを形成し、エッチング法によりポリイミド樹脂に非平面領域を形成する。
【0037】
<第3部材4の作製>
第3部材4として、膜厚100μmのアクリルシートを用いる。なお、貫通溝の幅は、例えば、約2mm、長さは20mmとなるように形成すれば良い。
【0038】
<加熱圧着による接合>
第1部材のナノワイヤ形成面と、第2部材の第1面(非平面領域の形成面)との間に、第3部材が位置するように積層する。より具体的には、第1部材2のナノワイヤ形成面21と第3部材4の接合第1面43を直に接触させ、かつ、ナノワイヤ5と非平面領域35が、貫通溝41内に配置されるようにする。次いで、ホットプレス装置を用い、150℃、10分、1MPaの条件で加熱圧着することで、第1部材、第3部材、第2部材を接合する。次いで、貫通溝を一つ含むように切断する。以上によりデバイス1を作製することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本出願で開示するデバイスは、製造方法の利便性が向上し、安価で大量生産が可能である。したがって、医療機関、大学、企業、研究機関等において、サンプルの分析に有用である。
【符号の説明】
【0040】
1…デバイス、2…第1部材、3…第2部材、4…第3部材、5…ナノワイヤ、6、6a…流路、9…カバー部材、9a…カバー部材の底面部分、9b…カバー部材の壁部分、21…ナノワイヤ形成面、31…第1面、32…第2面、33…サンプル液投入孔、34…サンプル液回収孔、35、35a…非平面領域、41…貫通溝、42…貫通溝の壁面、43…接合第1面、44…接合第2面、45…第3面、331…第1開口部、341…第2開口部
図1
図2
図3