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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20221219BHJP
   F04C 18/02 20060101ALI20221219BHJP
   F04C 29/06 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
F04B39/00 102U
F04C18/02 311A
F04C29/06 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019063111
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020159350
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】391050248
【氏名又は名称】株式会社メック
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】藤井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】名取 正象
(72)【発明者】
【氏名】松本 和也
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-515041(JP,A)
【文献】特開2012-057563(JP,A)
【文献】特開平10-009172(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第1998-0067324(KR,U)
【文献】特開2017-180217(JP,A)
【文献】特開2018-173116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04B 39/12
F04C 18/02
H02K 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧縮を行う圧縮機構と、
前記圧縮機構を駆動させるモータ機構と、
前記モータ機構の駆動制御を行うインバータと、
筒状をなし、内部に少なくとも前記モータ機構を収容するモータハウジングと、
内部に前記インバータを収容するインバータケースと、
前記モータハウジングと前記インバータケースとを締結する複数の締結具とを備え、
前記インバータケースは、筒状をなす周壁と、前記周壁の一端を閉塞する底壁とを有し、
前記底壁は、前記インバータを収容する空間側に位置するとともに前記周壁との境界付近において一様に平らである蓋内面を有し、
前記締結具は、前記周壁を貫通しつつ前記モータハウジングの一端に挿通され、
前記蓋内面には、前記周壁からそれぞれ離間して複数のリブが形成されているとともに、前記複数のリブによって囲まれた格子が形成され、
前記格子の一部は、前記複数の締結具からそれぞれ等しく離れた共通の位置にあり、
前記格子は複数が連なって形成され、前記複数の格子の形状はそれぞれ同じであり、
前記底壁は、前記インバータを収容する空間とは逆側に位置する蓋外面を有し、
前記蓋外面には、複数の追加リブが形成されているとともに、前記複数の追加リブによって囲まれるとともに複数が連なって並ぶ追加格子が形成され、
前記複数の格子及び前記複数の追加格子は、それぞれ同じ正四角形状であり、
前記複数の格子と前記複数の追加格子とは、一方が囲う領域の中心に他方の角が位置するように、配置され、
前記蓋内面において、前記格子を形成しない前記複数のリブは前記周壁からそれぞれ離間しつつ前記複数の締結具間で直線状に延び、前記蓋外面において、前記追加格子を形成しない前記複数の追加リブは前記複数の締結具間で直線状に延びていることを特徴とする電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の電動圧縮機が開示されている。この電動圧縮機は、圧縮機構と、モータ機構と、インバータと、モータハウジングと、インバータケースとを備えている。
【0003】
圧縮機構は流体としての冷媒の圧縮を行う。モータ機構は圧縮機構を駆動させる。インバータはモータ機構の駆動制御を行う。モータハウジングは、筒状をなし、内部にモータ機構を収容している。インバータケースは、内部にインバータを収容している。モータハウジングとインバータケースとは複数のボルトによって締結されている。インバータケースは、モータハウジングの一端と当接するインバータボックスと、インバータボックスとともにインバータを収容する空間を形成するインバータカバーとを有している。
【0004】
インバータボックスは、モータハウジングの周縁から立設する筒状の第1周壁を有している。インバータカバーは、第1周壁の端面に当接する筒状の第2周壁と、第2周壁から径内方向に延びる円板状をなす第2底壁とを有している。第2底壁は、空間側に位置する蓋内面と、蓋内面とは逆側に位置する蓋外面とを有している。インバータカバーの蓋内面には、インバータ側に向かって突出する複数のリブが設けられている。各リブは、第2周壁に設けられるボスに繋がっている。
【0005】
この電動圧縮機では、各リブによってインバータカバーの底壁の剛性を上げ、インバータの作動によって生じる底壁の振動を抑制している。特に、各リブは、第2周壁のボスに繋がることにより底壁の高い剛性を確保し、これによって振動の抑制を図っている。このため、この電動圧縮機では、インバータカバーを鋳造によって製造することを実現しつつ、騒音の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-177826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の従来の電動圧縮機では、各リブが第2周壁のボスに繋がっていることにより、各リブがインバータカバーとインバータボックスとを締結するボルトとも繋がっている。このため、モータハウジング側の圧縮機構やモータ機構の振動がそれらのボルトを通じてインバータカバーに伝達し易い。
【0008】
また、この電動圧縮機では、インバータカバーにおいて、あるボルトを通じてリブに伝達した振動が他のボルトからそのリブに伝達した振動と共振し、振動が増幅されるおそれもある。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、騒音抑制効果が高い電動圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電動圧縮機は、流体の圧縮を行う圧縮機構と、
前記圧縮機構を駆動させるモータ機構と、
前記モータ機構の駆動制御を行うインバータと、
筒状をなし、内部に少なくとも前記モータ機構を収容するモータハウジングと、
内部に前記インバータを収容するインバータケースと、
前記モータハウジングと前記インバータケースとを締結する複数の締結具とを備え、
前記インバータケースは、筒状をなす周壁と、前記周壁の一端を閉塞する底壁とを有し、
前記底壁は、前記インバータを収容する空間側に位置するとともに前記周壁との境界付近において一様に平らである蓋内面を有し、
前記締結具は、前記周壁を貫通しつつ前記モータハウジングの一端に挿通され、
前記蓋内面には、前記周壁からそれぞれ離間して複数のリブが形成されているとともに、前記複数のリブによって囲まれた格子が形成され、
前記格子の一部は、前記複数の締結具からそれぞれ等しく離れた共通の位置にあり、
前記格子は複数が連なって形成され、前記複数の格子の形状はそれぞれ同じであり、
前記底壁は、前記インバータを収容する空間とは逆側に位置する蓋外面を有し、
前記蓋外面には、複数の追加リブが形成されているとともに、前記複数の追加リブによって囲まれるとともに複数が連なって並ぶ追加格子が形成され、
前記複数の格子及び前記複数の追加格子は、それぞれ同じ正四角形状であり、
前記複数の格子と前記複数の追加格子とは、一方が囲う領域の中心に他方の角が位置するように、配置され、
前記蓋内面において、前記格子を形成しない前記複数のリブは前記周壁からそれぞれ離間しつつ前記複数の締結具間で直線状に延び、前記蓋外面において、前記追加格子を形成しない前記複数の追加リブは前記複数の締結具間で直線状に延びていることを特徴とする。
【0011】
本発明の電動圧縮機では、インバータケースは、周壁を貫通する各締結具によってハウジングに締結されるため、インバータケースには、作動時に各締結具を通じてモータハウジングの振動が底壁へと伝達し易い。ここで、この電動圧縮機では、底壁の蓋内面に、周壁からそれぞれ離間した複数のリブによって囲まれた格子が形成されている。また、これらの格子は複数の締結具からそれぞれ等しく離れた共通の位置にある。
【0012】
こうして、この電動圧縮機では、作動時にモータハウジングの振動によって、インバータケースでは、リブが存在せず平らである周壁付近が振動し易くなる。このため、モータハウジングの振動を周壁付近で吸収することができる。これにより、モータハウジングの振動が底壁の中央部位に伝達することを抑制でき、作動時に底壁の中央部位が振動することを抑制できる。ここで、底壁において、振動により騒音が発生しやすいのはそれぞれの締結具から等しく離れた共通の位置にある中央部位であるため、周壁付近を積極的に振動させる一方、格子を設けることで剛性を高くして中央部位での振動を抑制すれば、作動時にモータハウジングの振動がインバータケースに伝達しても騒音は発生し難い。
【0013】
格子は複数が連なって形成され、複数の格子の形状はそれぞれ同じである。この場合、中央部位での剛性が一様に高くなり、振動が伝達しても特定の箇所が大きく変形しがたく、結果として中央部位での振動を抑制しやすい。
【0014】
底壁は、インバータを収容する空間とは逆側に位置する蓋外面を有する。蓋外面には、複数の追加リブが形成されているとともに、複数の追加リブによって囲まれるとともに複数が連なって並ぶ追加格子が形成されている。複数の格子及び複数の追加格子は、それぞれ同じ正四角形状である。また、複数の格子と複数の追加格子とは、一方が囲う領域の中心に他方の角が位置するように、配置されている。この場合、中央部位での剛性が更に高まり、かつ一様となるので、振動が伝達しても特定の箇所が大きく変形し難く、結果として中央部位での振動を抑制しやすい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電動圧縮機は、高い騒音抑制効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例1の電動圧縮機の縦断面図である。
図2図2は、実施例1の電動圧縮機に係り、インバータカバーの蓋内面を示す底面図である。
図3図3は、実施例1の電動圧縮機に係り、インバータカバーの蓋外面を示す平面図である。
図4図4は、実施例1の電動圧縮機に係り、インバータカバーの蓋外面から蓋内面を透視した平面図である。
図5図5は、実施例1の電動圧縮機に係り、インバータカバーの第2底壁の断面図である。
図6図6は、参考例1の電動圧縮機に係り、インバータカバーの蓋内面を示す底面図である。
図7図7は、参考例2の電動圧縮機に係り、インバータカバーの蓋内面を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施例1を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
(実施例1)
実施例1の電動圧縮機は、図1に示すように、ハウジング10と、モータ機構9と、スクロール式の圧縮機構11と、インバータ13とを備えている。ハウジング10は、フロントハウジング1と、モータハウジング3と、インバータボックス5と、インバータカバー7とを有している。
【0019】
以下の説明では、図1の紙面左側に位置するフロントハウジング1側を電動圧縮機の前側と規定し、図1の紙面右側に位置するインバータカバー7側を電動圧縮機の後側と規定する。また、図1の紙面上側を電動圧縮機の上側と規定し、図1の紙面下側を電動圧縮機の下側と規定する。そして、図2以降の各図に示す前後方向及び上下方向は全て、図1に対応させて表示する。なお、実施例1における前後方向は一例である。電動圧縮機は、搭載される車両等に対応して、その前後方向が適宜変更される。
【0020】
図1に示すように、フロントハウジング1とモータハウジング3とは互いに突き合わされ、複数本のボルト18によって相互に締結されている。モータハウジング3は、フロントハウジング1側に開口を有する有底の円筒状をしている。モータハウジング3内には、軸支部材15が設けられているとともに、軸支部材15の前方に固定スクロール17が設けられている。フロントハウジング1とモータハウジング3とは、固定スクロール17及び軸支部材15を互いに当接させた状態で収納している。
【0021】
モータハウジング3の後方側の底壁3aの内面中央には円筒状の軸支部3bが前方に向けて突設されている。一方、軸支部材15は、筒状の本体部15aと、本体部15aの前端の開口縁から外側に張り出す鍔部15bとからなる。本体部15aの中央には軸孔15cが貫通して形成されている。鍔部15bはモータハウジング3の内周面に固定されている。鍔部15bの前面側には、後述する可動スクロール19の自転を規制して、公転のみ可能とする自転阻止ピン21aが前方に向けて突設されている。
【0022】
軸孔15cには前後方向に延びる回転軸23が挿通されている。軸支部材15と軸支部3bとには、回転軸23の各端部がラジアル軸受25、27を介して回転可能に支持されている。ラジアル軸受25の後方にはシール材29が設けられ、シール材29は軸支部材15と回転軸23との間を封止している。
【0023】
回転軸23の前端には、回転軸23の中心軸線Oから偏心した位置に円柱状の偏心ピン23aが突出して形成されている。偏心ピン23aには、ブッシュ31が嵌合して支持されている。ブッシュ31の外周面の略半周部分には、外側へ扇状に広がるバランスウェイト31aが一体に形成されている。
【0024】
固定スクロール17は、径方向に延びる円板状をなす固定基板17aと、固定基板17aの外周側で後方に向かって円筒状に延びるシェル17bと、シェル17bの内側で固定基板17aから後方に向かって渦巻き状に延びる固定渦巻壁17cとからなる。
【0025】
一方、ブッシュ31と固定スクロール17との間にはラジアル軸受33を介して可動スクロール19が設けられている。可動スクロール19は、径方向に延びる円板状をなす可動基板19aと、可動基板19aから前方に向かって渦巻き状に延びる可動渦巻壁19bとからなる。可動渦巻壁19bは固定渦巻壁17cに噛み合わされている。
【0026】
可動基板19aの後面には、自転阻止ピン21aの先端部を遊嵌状態で受ける自転阻止孔21bが凹設されている。自転阻止孔21bには円筒状のリング21cが遊嵌されている。自転阻止ピン21aがリング21cの内周面を摺動及び転動することにより、可動スクロール19は自転を規制されて中心軸線O周りで公転のみ可能となっている。固定基板17a、固定渦巻壁17c、可動基板19a及び可動渦巻壁19bによって圧縮室35が区画されている。
【0027】
モータハウジング3内には、軸支部材15より後方にモータ室37が形成されている。モータ室37は吸入室を兼ねている。モータ室37内には、ステータ39がモータハウジング3の内周面に固定して設けられている。ステータ39の内側には、回転軸23に固定されたロータ41が設けられている。ステータ39への通電によってロータ41及び回転軸23が一体に回転すると、その駆動力が偏心ピン23a及びブッシュ31を介して可動スクロール19に伝達され、可動スクロール19が公転するようになっている。
【0028】
モータハウジング3の周壁3cには、外部とモータ室37とを連通させる吸入口3dが貫設されている。吸入口3dは、配管によって図示しない蒸発器と接続されている。蒸発器は、配管によって膨張弁及び凝縮器と接続されている。蒸発器における低圧かつ低温の冷媒は、吸入口3dからモータ室37内に導入され、軸支部材15に形成された図示しない吸入通路を経て圧縮室35に供給されるようになっている。
【0029】
固定基板17aとフロントハウジング1との間には吐出室43が形成されている。固定基板17aの中央には吐出ポート17dが貫通して形成され、吐出ポート17dは圧縮室35と吐出室43とを連通している。固定基板17aには、吐出室43内において、吐出ポート17dを開閉するための図示しない吐出弁と、この吐出弁の開度を規制するリテーナ45とが設けられている。
【0030】
フロントハウジング1には、外部と吐出室43とを連通させる吐出口1aが貫設されている。吐出口1aは、図示しない凝縮器に配管によって接続されている。吐出室43に導入された冷媒は、吐出口1aを介して凝縮器に排出される。
【0031】
モータ室37、回転軸23、ブッシュ31、ラジアル軸受33、可動スクロール19、固定スクロール17、吐出室43、吐出弁、リテーナ45等によって冷媒の圧縮を行なう圧縮機構11が構成されている。圧縮機構11は吐出室43に設けられるオイルセパレータも含み得る。ロータ41、ステータ39及び回転軸23によって圧縮機構11を駆動させるモータ機構9が構成されている。フロントハウジング1、モータハウジング3、圧縮機構11、モータ機構9及びボルト18によって圧縮機本体20が構成されている。
【0032】
インバータボックス5は圧縮機本体20のモータハウジング3にインバータカバー7とともにガスケット47を介して複数本のボルト49a~49dによって締結されている。インバータボックス5及びインバータカバー7は、内部の空間30a内にインバータ13を収容するインバータケース30を構成している。インバータボックス5とインバータカバー7との接合面においても図示しないガスケットが設けられている。
【0033】
インバータボックス5は、円筒状をしており、モータハウジング3の周縁から立設する第1周壁5aを有している。インバータカバー7は、第1周壁5aの後端面に当接する円筒状の第2周壁7aと、第2周壁7aの後端を閉塞する第2底壁7bとを有している。ボルト49a~49dはインバータボックス5の第1周壁5aとインバータカバー7の第2周壁7aとを挿通し、モータハウジング3の周壁3cにも挿通されている。ボルト49a~49dが締結具に相当する。なお、図2~4に示すように、ボルト49e~49gはインバータカバー7とインバータボックス5とだけを締結している。
【0034】
図1に示すように、モータハウジング3の底壁3a、インバータボックス5の第1周壁5a並びにインバータカバー7の第2周壁7a及び第2底壁7bが空間30aを形成している。インバータ13は基板51に設けられたスイッチング素子等の半導体素子53等からなる。基板51はモータハウジング3の底壁3aに固定されている。
【0035】
インバータカバー7の第2底壁7bは、空間30a側に位置する蓋内面8aと、蓋内面8とは逆側に位置する蓋外面8bとを有している。蓋内面8aは第2周壁7aとの境界付近において一様に平らである。図1に示すインバータ13は、図示しない引出口に挿通される図示しないリード線によって外部のコントローラと接続され、モータ機構9の駆動制御を行う。
【0036】
図2に示すように、蓋内面8aには、各ボルト49a~49gからそれぞれ離間して複数本のリブ55が形成されている。各リブ55は、電動圧縮機が車両に搭載された状態において、上下方向に直線状に延びる縦リブ55aと、左右方向に直線状に延びる横リブ55bとからなる。ボルト49aとボルト49bとの間、ボルト49bとボルト49cとの間、ボルト49cとボルト49dとの間、ボルト49dとボルト49eとの間、ボルト49eとボルト49fとの間、ボルト49fとボルト49gとの間及びボルト49gとボルト49aとの間には、2本以上の縦リブ55a又は横リブ55bが設けられている。
【0037】
また、蓋内面8aには、縦リブ55a及び横リブ55bによって囲まれることにより、正四角形状の格子55cが複数個形成されている。各格子55c内は蓋内面8aと面一とされている。隣り合う格子55c同士は縦リブ55a及び横リブ55bを共通にしており、各格子55cは複数が連なって形成されている。各格子55cの形状はそれぞれ同じである。縦リブ55a及び横リブ55bは第2周壁7a近くまで延びているが、第2周壁7aには連続していない。このため、各格子55cは、各ボルト49a~49gからそれぞれ等しく離れた位置にある。
【0038】
図3に示すように、蓋外面8bには、各ボルト49a~49gからそれぞれ離間して複数本の追加リブ57が形成されている。各追加リブ57は、電動圧縮機が車両に搭載された状態において、上下方向に延びる縦追加リブ57aと、左右方向に延びる横追加リブ57bとからなる。ボルト49aとボルト49bとの間、ボルト49bとボルト49cとの間、ボルト49cとボルト49dとの間、ボルト49dとボルト49eとの間、ボルト49eとボルト49fとの間、ボルト49fとボルト49gとの間及びボルト49gとボルト49aとの間には、2本以上の縦追加リブ57a又は横追加リブ57bが設けられている。
【0039】
また、蓋外面8bには、縦追加リブ57a及び横追加リブ57bによって囲まれることにより、正四角形状の追加格子57cが複数個形成されている。各追加格子57cは蓋外面8bと面一とされている。隣り合う追加格子57c同士は縦追加リブ57a及び横追加リブ57bを共通にしており、各追加格子57cは複数が連なって形成されている。各追加格子57cの形状はそれぞれ同じである。縦追加リブ57a及び横追加リブ57bは第2周壁7a近くまで延びているが、第2周壁7aには連続していない。このため、各追加格子57cのうちの一部も、各ボルト49a~49gからそれぞれ等しく離れた共通の位置にある。
【0040】
図4に示すように、各格子55cと各追加格子57cとはずれている。つまり、図5に示すように、縦リブ55aと縦追加リブ57aとは前後で一致しておらず、横リブ55bと横追加リブ57bとも前後で一致していない。各格子55cと各追加格子57cとは、一方が囲う領域の中心に他方の角が位置するように、配置されている。
【0041】
以上のように構成された電動圧縮機は、蒸発器、膨張弁及び凝縮器とともに車両用空調装置の冷凍回路を構成する。この電動圧縮機は、次のように作動する。すなわち、車両の運転者が車両用空調装置に対する操作を行うと、インバータ13がモータ機構9を制御し、ロータ41及び回転軸23を回転させる。そうすると、偏心ピン23aが固定スクロール17の軸心周りに旋回される。このとき、可動スクロール19は、自転阻止ピン21aがリング21cの内周面に沿って摺動及び転動することにより、その自転が阻止されて中心軸線O周りで公転のみが許容される。そして、可動スクロール19の公転によって圧縮室35が両スクロール17、19の外周側から中心側へと容積を減少しながら移動される。このため、蒸発器から吸入口3dを介してモータ室37に供給された冷媒が圧縮室35内へと吸入されて圧縮される。吐出圧力まで圧縮された冷媒は、吐出ポート17dから吐出室43に吐出され、吐出口1aを介して凝縮器へ排出される。こうして、車両用空調装置の空調が行われる。
【0042】
この際、この電動圧縮機では、圧縮機構11やモータ機構9に振動が生じる。そして、インバータケース30は、ボルト49a~49dがインバータボックス5の第1周壁5a及びインバータカバー7の第2周壁7aを貫通し、さらにモータハウジング3にされるため、インバータケース30には、作動時に各ボルト49a~49dを通じてモータハウジング3の振動が底壁へと伝達し易い。ここで、この電動圧縮機では、第2底壁7bの蓋内面8aに、第2周壁7aからそれぞれ離間した複数のリブ55によって囲まれた格子55cが形成されている。また、これらの格子55cの一部は複数のボルト49a~49dからそれぞれ等しく離れた共通の位置にある。
【0043】
こうして、この電動圧縮機では、作動時にモータハウジング3の振動によって、インバータケース30では、リブ55が存在せず平らである第2周壁7a付近が振動し易くなる。このため、モータハウジング3の振動を第2周壁7a付近で吸収することができる。これにより、モータハウジング3の振動が第2底壁7bの中央部位に伝達することを抑制でき、作動時に第2底壁7bの中央部位が振動することを抑制できる。ここで、第2底壁7bにおいて、振動により騒音が発生しやすいのはそれぞれのボルト49a~49dから等しく離れた共通の位置にある中央部位であるため、第2周壁7a付近を積極的に振動させる一方、格子55cを設けることで中央部位の剛性を高めて振動を抑制すれば、作動時にモータハウジング3の振動がインバータケース30に伝達しても騒音は発生し難い。
【0044】
特に、格子55cは複数が連なって形成され、複数の格子55cの形状はそれぞれ同じであるため、中央部位での剛性は一様に高まり、振動が伝達しても特定の箇所が大きく変形しがたく、結果として中央部位での振動を抑制しやすい。
【0045】
また、第2底壁7bは、インバータ13を収容する空間30aとは逆側に位置する蓋外面8bを有し、蓋外面8bに追加格子57cが形成されている。このため、中央部位での剛性が更に高まり、かつ一様となるので、振動が伝達しても特定の箇所が大きく変形し難く、結果として中央部位での振動を抑制しやすい。
【0046】
したがって、この電動圧縮機は、高い騒音抑制効果を発揮できる。また、各リブ55によって囲まれた格子55cや各追加リブ57によって囲まれた追加格子57cは、全体をリブにするよりも電動圧縮機の軽量化に寄与する。さらに、この電動圧縮機では、各リブ55及び各追加リブ57によってインバータカバー7を鋳造する際の離型性が向上し、金型の耐久性の向上も実現することができる。
【0047】
参考例1
参考例1の電動圧縮機は、図6に示すように、インバータカバー12が実施例1とは異なる。このインバータカバー12は、複数本のボルト61a~61fによって図示しないインバータボックスとともにモータハウジングに締結されている。インバータカバー12に形成されたリブ59は、屈曲しており、リブ59間に正六角形状の格子59cが複数個形成されている。各リブ59は第2周壁12a近くまで延びているが、第2周壁12aには連続していない。他の構成は実施例1と同様である。
【0049】
参考例2
参考例2の電動圧縮機は、図7に示すように、インバータカバー14が実施例1とは異なる。このインバータカバー14も、複数本のボルト63a~63fによって図示しないインバータボックスとともにモータハウジングに締結されている。インバータカバー14に形成されたリブ65は、水平方向に直線状に延びる横リブ65aと、図中で右に傾斜して直線状に延びる右傾斜リブ65bと、図中で左に傾斜して直線状に延びる左傾斜リブ65cとからなる。横リブ65aと右傾斜リブ65bと左傾斜リブ65cとの間に二等辺三角形状の格子65dが複数個形成されている。各リブ65は第2周壁14a近くまで延びているが、第2周壁14aには連続していない。他の構成は実施例1と同様である。
【0051】
以上において、本発明を実施例1に即して説明したが、本発明は上記実施例1に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0052】
例えば、上記実施例1では、圧縮機構11がスクロール式であるが、本発明の電動圧縮機では、斜板式、ベーン式等、他の形式の圧縮機構を採用することも可能である。
【0053】
また、上記実施例1では、インバータケース30をインバータボックス5とインバータカバー7との2部品で構成したが、本発明の電動圧縮機では、単一の部品からなるインバータケースで空間30aを形成してもよい。
【0054】
また、上記実施例1では、インバータ13の基板51をモータハウジング3の後方側の底壁3aに固定したが、本発明の電動圧縮機では、一端が閉塞されつつ底壁3aに接合された有底筒状のインバータボックス5の底壁に固定してもよい。有底筒状のインバータボックス5にはインバータカバー7が接合されることで、モータハウジング3に依存せず独立した筐体が形成される。
【0055】
また、上記実施例1において、インバータボックス5およびインバータカバー7はモータハウジング3と同径の円筒状であってもよい。この場合、インバータボックス5とインバータカバー7を挿通するボルトは全てモータハウジングへと締結される。そして、格子55c(59c、65d)の一部は、駆動軸23の軸線上に位置する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は車両等の空調装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
11…圧縮機構
9…モータ機構
13…インバータ
3…モータハウジング
30…インバータケース
49a~49d…締結具(ボルト)
7a…周壁(第2周壁)
7b…底壁(第2底壁)
30a…空間
8a…蓋内面
55、59、65…リブ
55c、59c、65d…格子
8b…蓋外面
57…追加リブ
57c…追加格子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7