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特許7195544車両用スロープロック装置及び車両用スロープロックシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】車両用スロープロック装置及び車両用スロープロックシステム
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/00 20060101AFI20221219BHJP
   A61G 3/06 20060101ALI20221219BHJP
   E05B 83/00 20140101ALI20221219BHJP
   E05B 85/26 20140101ALI20221219BHJP
   E05B 77/38 20140101ALI20221219BHJP
【FI】
B60P3/00 A
A61G3/06 711
E05B83/00 Z
E05B85/26
E05B77/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019108344
(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2020199887
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591038587
【氏名又は名称】株式会社アンセイ
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】上原 宏基
(72)【発明者】
【氏名】森 克巳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康将
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 武宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功二
(72)【発明者】
【氏名】鷹木 一樹
(72)【発明者】
【氏名】早川 大貴
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-60064(JP,A)
【文献】特開2014-227095(JP,A)
【文献】実開平4-98629(JP,U)
【文献】特開2001-115718(JP,A)
【文献】実開昭60-40666(JP,U)
【文献】特開2020-200665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/43
B60P 3/00
A61G 3/06
E05B 83/00
E05B 85/26
E05B 77/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられる基体と、前記基体に変位可能に支持され、第1方向に変位して保持位置を通過可能、かつ前記第1方向とは逆向きの第2方向に変位して前記保持位置を通過可能なスロープとの間に設けられ、前記スロープを前記保持位置に保持するための車両用スロープロック装置であって、
前記スロープは、起立する前記保持位置と、前記車体から横向きに突出する展開位置と、前記車体に重なるように横向きに延びる収容位置との間で変位可能であり、
前記車両用スロープロック装置は、
前記基体及び前記スロープの一方に固定されるストライカと、
前記基体及び前記スロープの他方に固定されるベース部材と、
軸心周りに揺動可能に前記ベース部材に支持され、外周縁からそれぞれ前記軸心の径内方向に凹むように形成された第1凹部及び第2凹部を有し、第1位置と、第2位置と、前記第1位置と前記第2位置との間に位置する中立位置とを揺動によって通過可能なラッチと、
前記ラッチを前記第1位置で固定する第1固定状態と、前記ラッチを前記第2位置で固定する第2固定状態と、前記ラッチの揺動を許容する解除状態とに切り替わるラッチ固定手段と、
前記ラッチを前記中立位置に向けて付勢する付勢部材とを備え、
前記ラッチが前記中立位置にある状態では、前記スロープが前記第1方向に変位するときに前記ストライカが前記第1凹部に進入可能、かつ、前記スロープが前記第2方向に変位するときに前記ストライカが前記第2凹部に進入可能であり、
前記第1凹部に進入した前記ストライカによって前記ラッチが前記中立位置から前記第1位置に揺動して前記ラッチ固定手段が前記解除状態から前記第1固定状態に切り替わることにより、前記第1凹部が前記ストライカを前記第1方向及び前記第2方向において当て止め、さらに、前記ラッチ固定手段が前記解除状態に切り替わることにより、前記ストライカが前記第1凹部から離脱可能となり、
前記第2凹部に進入した前記ストライカによって前記ラッチが前記中立位置から前記第2位置に揺動して前記ラッチ固定手段が前記解除状態から前記第2固定状態に切り替わることにより、前記第2凹部が前記ストライカを前記第1方向及び前記第2方向において当て止め、さらに、前記ラッチ固定手段が前記解除状態に切り替わることにより、前記ストライカが前記第2凹部から離脱可能となるように構成されていることを特徴とする車両用スロープロック装置。
【請求項2】
前記ラッチ固定手段は、前記第1位置に対応するように前記ラッチに設けられた第1被嵌合部と、
前記第2位置に対応するように前記ラッチに設けられた第2被嵌合部と、
第3位置と第4位置との間で変位可能に前記ベース部材に支持され、前記第3位置では前記第1被嵌合部又は前記第2被嵌合部に嵌合する一方、前記第4位置では前記第1被嵌合部及び前記第2被嵌合部から離間して前記ラッチの揺動を許容するラチェットとを有している請求項1記載の車両用スロープロック装置。
【請求項3】
前記第1被嵌合部及び前記第2被嵌合部は、前記外周縁からそれぞれ前記径内方向に凹むように形成され、
前記ラチェットは、前記ラッチに向かって突出するように形成され、前記第3位置で前記第1被嵌合部又は前記第2被嵌合部に嵌合する嵌合凸部を有し、前記第3位置に向けて付勢され、
前記外周縁には、前記第1被嵌合部から第2被嵌合部まで延び、前記嵌合凸部が摺接可能な摺接面が形成されている請求項2記載の車両用スロープロック装置。
【請求項4】
前記第1被嵌合部及び前記第2被嵌合部はそれぞれ、前記摺接面に接続して前記径内方向に延びる内壁面と、前記軸心の周方向において前記内壁面と対向する対向内壁面とを有し、
前記対向内壁面は、前記内壁面よりも前記軸心の径外方向に突出している請求項3記載の車両用スロープロック装置。
【請求項5】
前記ベース部材に固定され、前記スロープが前記第1方向又は前記第2方向に変位するときに前記ストライカに弾性変形しつつ当接可能な緩衝部材をさらに備えている請求項1乃至4のいずれか1項記載の車両用スロープロック装置。
【請求項6】
前記緩衝部材は、前記スロープが前記保持位置にある状態で前記ストライカに当接する部分が凹んでなる緩衝凹部を有している請求項5記載の車両用スロープロック装置。
【請求項7】
車体に設けられる基体と、
前記基体に変位可能に支持され、第1方向に変位して保持位置を通過可能、かつ前記第1方向とは逆向きの第2方向に変位して前記保持位置を通過可能なスロープと、
前記基体と前記スロープとの間に設けられ、前記スロープを前記保持位置に保持するための車両用スロープロック装置とを備えた車両用スロープロックシステムであって、
前記スロープは、起立する前記保持位置と、前記車体から横向きに突出する展開位置と、前記車体に重なるように横向きに延びる収容位置との間で変位可能であり、
前記車両用スロープロック装置は、
前記基体及び前記スロープの一方に固定されるストライカと、
前記基体及び前記スロープの他方に固定されるベース部材と、
軸心周りに揺動可能に前記ベース部材に支持され、外周縁からそれぞれ前記軸心の径内方向に凹むように形成された第1凹部及び第2凹部を有し、第1位置と、第2位置と、前記第1位置と前記第2位置との間に位置する中立位置とを揺動によって通過可能なラッチと、
前記ラッチを前記第1位置で固定する第1固定状態と、前記ラッチを前記第2位置で固定する第2固定状態と、前記ラッチの揺動を許容する解除状態とに切り替わるラッチ固定手段と、
前記ラッチを前記中立位置に向けて付勢する付勢部材とを備え、
前記ラッチが前記中立位置にある状態では、前記スロープが前記第1方向に変位するときに前記ストライカが前記第1凹部に進入可能、かつ、前記スロープが前記第2方向に変位するときに前記ストライカが前記第2凹部に進入可能であり、
前記第1凹部に進入した前記ストライカによって前記ラッチが前記中立位置から前記第1位置に揺動して前記ラッチ固定手段が前記解除状態から前記第1固定状態に切り替わることにより、前記第1凹部が前記ストライカを前記第1方向及び前記第2方向において当て止め、さらに、前記ラッチ固定手段が前記解除状態に切り替わることにより、前記ストライカが前記第1凹部から離脱可能となり、
前記第2凹部に進入した前記ストライカによって前記ラッチが前記中立位置から前記第2位置に揺動して前記ラッチ固定手段が前記解除状態から前記第2固定状態に切り替わることにより、前記第2凹部が前記ストライカを前記第1方向及び前記第2方向において当て止め、さらに、前記ラッチ固定手段が前記解除状態に切り替わることにより、前記ストライカが前記第2凹部から離脱可能となるように構成され、
前記ラッチ固定手段を前記解除状態に切り替える解除操作部をさらに備えていることを特徴とする車両用スロープロックシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用スロープロック装置及び車両用スロープロックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に従来の車両用スロープロック装置が開示されている。これらの車両用スロープロック装置は、車体に設けられる基体と、基体に変位可能に支持されたスロープとの間に設けられている。スロープは、第1方向に変位して保持位置を通過可能、かつ第1方向とは逆向きの第2方向に変位して保持位置を通過可能である。車両用スロープロック装置は、スロープを保持位置に保持するためのものである。
【0003】
より具体的には、スロープは、起立する保持位置と、車体から横向きに突出する展開位置と、車体に重なるように横向きに延びる収容位置との間で変位可能である。
【0004】
特許文献1開示の車両用スロープロック装置では、スロープに設けられたピンが直動して、基体に設けられたロック部の挿通孔にカンヌキのように挿入されることにより、スロープを保持位置に保持するようになっている。
【0005】
なお、カンヌキ式と同様の構成として、振り込み式の車両用スロープロック装置が知られている。この車両用スロープロック装置では、スロープに設けられたレバーが揺動して、レバーの先端に設けられた係合部が基体に設けられた被係合部に係合することにより、スロープを保持位置に保持するようになっている。
【0006】
特許文献2開示の車両用スロープロック装置では、スロープがスロープ板本体部と支持架台とに2分割されている。このため、この車両用スロープロック装置は、主ロック機構と部分ロック機構とからなっており、主ロック機構が支持架台を保持し、部分ロック機構がスロープ板本体部を保持することにより、スロープを保持位置に保持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-60064号公報
【文献】特開2013-141856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1開示の車両用スロープロック装置では、スロープに設けられたピンとロック部の挿通孔との位置を合わせ、次にピンを挿通孔に挿入し、最後にピンの抜け止めを行うという3段階の操作が必要であり、操作手順や操作箇所を削減することが難しい。振り込み式の車両用スロープロック装置についても同様である。
【0009】
また、特許文献2開示の車両用スロープロック装置では、スロープが保持位置から展開位置に向けて移動することを規制する主ロック機構と、スロープが保持位置から収容位置に向けて移動することを規制する部分ロック機構とが必要である。このため、この車両用スロープロック装置では、2つのロック機構を操作するための操作手順や操作箇所を削減することが難しく、また、2つのロック機構を車両内に配置するためのスペースを小さくすることが難しい。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、1つのロック機構でスロープが保持位置から展開位置と収容位置とに向けて移動することを規制でき、操作手順や操作箇所を削減できるとともに車両内の配置スペースを小さくできる車両用スロープロック装置及び車両用スロープロックシステムを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車両用スロープロック装置は、車体に設けられる基体と、前記基体に変位可能に支持され、第1方向に変位して保持位置を通過可能、かつ前記第1方向とは逆向きの第2方向に変位して前記保持位置を通過可能なスロープとの間に設けられ、前記スロープを前記保持位置に保持するための車両用スロープロック装置であって、
前記スロープは、起立する前記保持位置と、前記車体から横向きに突出する展開位置と、前記車体に重なるように横向きに延びる収容位置との間で変位可能であり、
前記車両用スロープロック装置は、
前記基体及び前記スロープの一方に固定されるストライカと、
前記基体及び前記スロープの他方に固定されるベース部材と、
軸心周りに揺動可能に前記ベース部材に支持され、外周縁からそれぞれ前記軸心の径内方向に凹むように形成された第1凹部及び第2凹部を有し、第1位置と、第2位置と、前記第1位置と前記第2位置との間に位置する中立位置とを揺動によって通過可能なラッチと、
前記ラッチを前記第1位置で固定する第1固定状態と、前記ラッチを前記第2位置で固定する第2固定状態と、前記ラッチの揺動を許容する解除状態とに切り替わるラッチ固定手段と、
前記ラッチを前記中立位置に向けて付勢する付勢部材とを備え、
前記ラッチが前記中立位置にある状態では、前記スロープが前記第1方向に変位するときに前記ストライカが前記第1凹部に進入可能、かつ、前記スロープが前記第2方向に変位するときに前記ストライカが前記第2凹部に進入可能であり、
前記第1凹部に進入した前記ストライカによって前記ラッチが前記中立位置から前記第1位置に揺動して前記ラッチ固定手段が前記解除状態から前記第1固定状態に切り替わることにより、前記第1凹部が前記ストライカを前記第1方向及び前記第2方向において当て止め、さらに、前記ラッチ固定手段が前記解除状態に切り替わることにより、前記ストライカが前記第1凹部から離脱可能となり、
前記第2凹部に進入した前記ストライカによって前記ラッチが前記中立位置から前記第2位置に揺動して前記ラッチ固定手段が前記解除状態から前記第2固定状態に切り替わることにより、前記第2凹部が前記ストライカを前記第1方向及び前記第2方向において当て止め、さらに、前記ラッチ固定手段が前記解除状態に切り替わることにより、前記ストライカが前記第2凹部から離脱可能となるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の車両用スロープロック装置では、作業者がスロープを保持位置に向けて第1方向又は第2方向に変位させるときに、1つのロック機構におけるラッチの第1凹部又は第2凹部を選択的に用い、ラッチ固定手段が第1固定状態又は第2固定状態に自動的に切り替わることで、スロープを保持位置に保持する。
【0013】
つまり、この車両用スロープロック装置では、ピンを3段階に操作したり、2つのロック機構を操作したりする必要がないとともに、1つのロック機構が嵩張らない。
【0014】
したがって、本発明の車両用スロープロック装置では、1つのロック機構でスロープが保持位置から展開位置と収容位置とに向けて移動することを規制でき、操作手順や操作箇所を削減できるとともに車両内の配置スペースを小さくできる。
【0015】
ラッチ固定手段は、第1位置に対応するようにラッチに設けられた第1被嵌合部と、第2位置に対応するようにラッチに設けられた第2被嵌合部と、第3位置と第4位置との間で変位可能にベース部材に支持され、第3位置では第1被嵌合部又は第2被嵌合部に嵌合する一方、第4位置では第1被嵌合部及び第2被嵌合部から離間してラッチの揺動を許容するラチェットとを有していることが望ましい。この場合、1つのラチェットによって、ラッチ固定手段を簡素化でき、その結果、部品点数を一層削減できる。
【0016】
第1被嵌合部及び第2被嵌合部は、外周縁からそれぞれ径内方向に凹むように形成されていることが望ましい。ラチェットは、ラッチに向かって突出するように形成され、第3位置で第1被嵌合部又は第2被嵌合部に嵌合する嵌合凸部を有し、第3位置に向けて付勢されていることが望ましい。そして、外周縁には、第1被嵌合部から第2被嵌合部まで延び、嵌合凸部が摺接可能な摺接面が形成されていることが望ましい。このような構成により、ラッチ固定手段を一層簡素化でき、その結果、部品点数をより一層削減できる。また、ラッチ固定手段を解除状態に切り替えた後、嵌合凸部が摺接面に摺接することにより、解除状態を容易に維持できる。そして、嵌合凸部が第1被嵌合部又は第2被嵌合部に対向する位置に移動すれば、第3位置に向けて付勢された嵌合凸部が自動的に第1被嵌合部又は第2被嵌合部に嵌合するので、使い勝手が良い。
【0017】
第1被嵌合部及び第2被嵌合部はそれぞれ、摺接面に接続して径内方向に延びる内壁面と、軸心の周方向において内壁面と対向する対向内壁面とを有していることが望ましい。そして、対向内壁面は、内壁面よりも軸心の径外方向に突出していることが望ましい。この場合、ラチェットの嵌合凸部が第1被嵌合部又は第2被嵌合部に嵌合するときに、対向内壁面が軸心の周方向において嵌合凸部を確実に当て止めるので、嵌合凸部が第1被嵌合部又は第2被嵌合部を通り越してしまうことを抑制できる。
【0018】
車両用スロープロック装置は、ベース部材に固定され、スロープが第1方向又は第2方向に変位するときにストライカに弾性変形しつつ当接可能な緩衝部材をさらに備えていることが望ましい。この場合、緩衝部材によって、ストライカがラッチの第1凹部又は第2凹部に進入する際の衝撃を弱めることができるので、異音の発生を抑制できる。また、スロープが保持位置にある状態で緩衝部材がストライカに弾性変形しつつ当接することによって、ストライカの第1方向及び第2方向のがたつきを抑制できる。
【0019】
緩衝部材は、スロープが保持位置にある状態でストライカに当接する部分が凹んでなる緩衝凹部を有していることが望ましい。この場合、スロープが保持位置にある状態で緩衝部材の緩衝凹部がストライカに当接することによって、ストライカの第1方向及び第2方向のがたつきを一層抑制できる。
【0020】
本発明の車両用スロープロックシステムは、車体に設けられる基体と、
前記基体に変位可能に支持され、第1方向に変位して保持位置を通過可能、かつ前記第1方向とは逆向きの第2方向に変位して前記保持位置を通過可能なスロープと、
前記基体と前記スロープとの間に設けられ、前記スロープを前記保持位置に保持するための車両用スロープロック装置とを備えた車両用スロープロックシステムであって、
前記スロープは、起立する前記保持位置と、前記車体から横向きに突出する展開位置と、前記車体に重なるように横向きに延びる収容位置との間で変位可能であり、
前記車両用スロープロック装置は、
前記基体及び前記スロープの一方に固定されるストライカと、
前記基体及び前記スロープの他方に固定されるベース部材と、
軸心周りに揺動可能に前記ベース部材に支持され、外周縁からそれぞれ前記軸心の径内方向に凹むように形成された第1凹部及び第2凹部を有し、第1位置と、第2位置と、前記第1位置と前記第2位置との間に位置する中立位置とを揺動によって通過可能なラッチと、
前記ラッチを前記第1位置で固定する第1固定状態と、前記ラッチを前記第2位置で固定する第2固定状態と、前記ラッチの揺動を許容する解除状態とに切り替わるラッチ固定手段と、
前記ラッチを前記中立位置に向けて付勢する付勢部材とを備え、
前記ラッチが前記中立位置にある状態では、前記スロープが前記第1方向に変位するときに前記ストライカが前記第1凹部に進入可能、かつ、前記スロープが前記第2方向に変位するときに前記ストライカが前記第2凹部に進入可能であり、
前記第1凹部に進入した前記ストライカによって前記ラッチが前記中立位置から前記第1位置に揺動して前記ラッチ固定手段が前記解除状態から前記第1固定状態に切り替わることにより、前記第1凹部が前記ストライカを前記第1方向及び前記第2方向において当て止め、さらに、前記ラッチ固定手段が前記解除状態に切り替わることにより、前記ストライカが前記第1凹部から離脱可能となり、
前記第2凹部に進入した前記ストライカによって前記ラッチが前記中立位置から前記第2位置に揺動して前記ラッチ固定手段が前記解除状態から前記第2固定状態に切り替わることにより、前記第2凹部が前記ストライカを前記第1方向及び前記第2方向において当て止め、さらに、前記ラッチ固定手段が前記解除状態に切り替わることにより、前記ストライカが前記第2凹部から離脱可能となるように構成され、
前記ラッチ固定手段を前記解除状態に切り替える解除操作部をさらに備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明の車両用スロープロックシステムでは、上述した車両用スロープロック装置の作用効果により、1つのロック機構でスロープが保持位置から展開位置と収容位置とに向けて移動することを規制でき、操作手順や操作箇所を削減できるとともに車両内の配置スペースを小さくできる。また、この車両用スロープロックシステムでは、解除操作部を操作することにより、保持位置に保持されたスロープを第1方向又は第2方向に容易に変位させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の車両用スロープロック装置及び車両用スロープロックシステムによれば、1つのロック機構でスロープが保持位置から展開位置と収容位置とに向けて移動することを規制でき、操作手順や操作箇所を削減できるとともに車両内の配置スペースを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施例の車両用スロープロック装置が適用される車両用スロープロックシステムの模式側面図である。
図2図2は、実施例の車両用スロープロック装置が適用される車両用スロープロックシステムの模式正面図である。
図3図3は、実施例の車両用スロープロック装置の斜視図であって、スロープを保持位置に保持する状態を示す図である。
図4図4は、実施例の車両用スロープロック装置の一部を分解して示す側面図である。
図5図5は、実施例の車両用スロープロック装置に係り、前向きに変位するストライカが中立位置にあるラッチに接近する状態を示す側面図である。
図6図6は、図5と同様の側面図であって、第1凹部に進入したストライカによってラッチが第1位置に揺動してラッチ固定手段が第1固定状態に切り替わった状態を示す図である。
図7図7は、図5と同様の側面図であって、ラッチ固定手段が解除状態に切り替わることにより、ストライカが第1凹部から離脱する状態を示す図である。
図8図8は、図5と同様の側面図であって、後向きに変位するストライカが中立位置にあるラッチに接近する状態を示す側面図である。
図9図9は、図5と同様の側面図であって、第2凹部に進入したストライカによってラッチが第2位置に揺動してラッチ固定手段が第2固定状態に切り替わった状態を示す図である。
図10図10は、図5と同様の側面図であって、ラッチ固定手段が解除状態に切り替わることにより、ストライカが第2凹部から離脱する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
(実施例)
図1及び図2に示すように、実施例の車両用スロープロック装置1(以下、単に「ロック装置1」という。)は、本発明の車両用スロープロック装置の具体的態様の一例である。ロック装置1は、基体8、スロープ5及び解除操作部6と共に、車両用スロープロックシステム9(以下、単に「ロックシステム9」という。)に備えられている。ロックシステム9は、本発明の車両用スロープロックシステムの具体的態様の一例である。
【0026】
本実施例では、ロックシステム9は、車椅子等を搬出入可能な福祉車両C1に適用されている。福祉車両C1は、本発明の「車両」の一例である。図1に示すように、基体8は、福祉車両C1の車体C2における後部開口C3側の一部を構成しており、上面8A及び後端面8Bを有している。上面8Aは後部開口C3に向かって緩やかに下り傾斜する平坦面である。後端面8Bは、上面8Aにおける後部開口C3側の端縁から下向きに略垂直に延びる平坦面である。
【0027】
以下の説明では、福祉車両C1の後部開口C3側、すなわち図1の紙面左側を後方と規定し、福祉車両C1の左側面側、すなわち図1の紙面奥側を左方と規定する。そして、図2以降の各図に示す前後、左右及び上下の各方向は、全て図1に対応させて表示する。
【0028】
<ロックシステムの全体構成>
図1及び図2に示すように、ロックシステム9において、基体8は、左右方向において互いに対向する第1壁81及び第2壁82を有している。第1壁81と第2壁82とは、基体8の上面8Aの後端縁に隣接する位置から上向きに突出し、かつ前後方向に延びている。
【0029】
本実施例では、車椅子等が福祉車両C1の後部開口C3を経由して基体8の上面8A上まで搬入され、また、福祉車両C1内の車椅子等が後部開口C3を経由して福祉車両C1の外部に搬出される場合について説明する。第1壁81と第2壁82とは、車椅子等の搬出入を行うためのゲート8Gを区画している。
【0030】
スロープ5は、略矩形平板部材である。スロープ5の左右の側面には、軸心X5を中心とする一対の揺動軸5S、5Sが設けられている。軸心X5は、基体8の上面8Aの後端縁から前方かつ上方に若干ずれた位置で左右方向に延びている。両揺動軸5S、5Sは、左右方向において互いに離間するように突出する円柱軸である。左方の揺動軸5Sは、第1壁81の下端部に揺動可能に支持されている。右方の揺動軸5Sは、第2壁82の下端部に揺動可能に支持されている。こうして、スロープ5は、基体8の第1壁81及び第2壁82によって、軸心X5周りに揺動可能に支持されている。
【0031】
図1に実線で示すスロープ5の位置P1は、保持位置である。スロープ5は、保持位置P1にある状態で、軸心X5から略垂直に起立してゲート8Gを閉鎖する。図2に示すスロープ5の位置、及び図3に示すスロープ5の位置も、保持位置P1である。
【0032】
図1に二点鎖線で示すスロープ5の位置P2は、展開位置である。スロープ5は、展開位置P2にある状態で、軸心X5から後向きに下り傾斜するように延びる。この状態で、スロープ5は、ゲート8Gを開放するとともに、基体8の後端面8Bよりも後方に片持ち梁状に突出する。そして、スロープ5に内蔵された引出し部5Pを後向きに引出すことにより、引出し部5Pの後端が接地する。これにより、ゲート8Gを経由して車椅子等を搬出入する際に、展開位置P2にあるスロープ5を利用して、車椅子等を好適に移送できる。
【0033】
図1に二点鎖線で示すスロープ5の位置P3は、収容位置である。スロープ5は、収容位置P3にある状態で、軸心X5から前向きに延びる。この状態で、スロープ5は、ゲート8Gを開放するとともに、基体8の上面8Aに重なる。これにより、手荷物等をゲート8Gを経由して搬出入する際に、収容位置P3にあるスロープ5が手荷物等の搬出入の邪魔になり難い。
【0034】
スロープ5は、展開位置P2から前向きに揺動して保持位置P1を通過し、収容位置P3に到達することが可能となっている。また、スロープ5は、収容位置P3から後向きに揺動して保持位置P1を通過し、展開位置P2に到達することが可能となっている。
【0035】
図1及び図2に示すように、ロック装置1は、基体8の第1壁81の上端部と、スロープ5の左側面における軸心X5から遠い端部との間、及び基体8の第2壁82の上端部と、スロープ5の右側面における軸心X5から遠い端部との間に、1個ずつ設けられている。
【0036】
解除操作部6は、基体8の後端面8Bに配置されており、第1壁81の下方に位置している。解除操作部6は、基体8の後端面8Bから後向きに突出する操作レバー6Aを有している。解除操作部6は、伝達ケーブル6Cを介して左右のロック装置1、1に連結されている。
【0037】
解除操作部6が操作されていない状態で、左右のロック装置1、1は、展開位置P2から前向きに揺動して保持位置P1に到達するスロープ5を保持位置P1に保持するとともに、収容位置P3から後向きに揺動して保持位置P1に到達するスロープ5を保持位置P1に保持するようになっている。ロック装置1の具体的構成については後で説明する。
【0038】
車椅子等の搬出入を行う作業者によって解除操作部6の操作レバー6Aが操作されると、その操作が伝達ケーブル6Cを介して左右のロック装置1、1に伝達される。その結果、左右のロック装置1、1がスロープ5を保持位置P1に保持しなくなるので、スロープ5は、保持位置P1から展開位置P2又は収容位置P3に揺動可能となる。
【0039】
こうして、実施例のロックシステム9では、作業者が解除操作部6を適宜操作して、スロープ5を展開位置P2、保持位置P1又は収容位置P3に揺動させることで、車椅子等の搬出入を好適に実施可能となっている。
【0040】
<ロック装置の具体的構成>
次に、ロック装置1の具体的構成について詳しく説明する。図3に示すように、左方のロック装置1と右方のロック装置1とは、同一品である。右方のロック装置1の姿勢は、左方のロック装置1を反転させた姿勢と同じである。このため、以下の説明では、主に左方のロック装置1について説明を行い、右方のロック装置1の説明については適宜省略する。図面についても、図4以降の各図において左方のロック装置1を図示し、右方のロック装置1の図示は省略する。
【0041】
左方のロック装置1を基準とした場合、スロープ5が展開位置P2から揺動して保持位置P1を通過する前向きの方向は、本発明の「第1方向」の一例となり、スロープ5が収容位置P3から揺動して保持位置P1を通過する後向きの方向は、本発明の「第2方向」の一例となる。
【0042】
右方のロック装置1を基準とした場合、上記とは逆になり、スロープ5が展開位置P2から揺動して保持位置P1を通過する前向きの方向は、本発明の「第2方向」の一例となり、スロープ5が収容位置P3から揺動して保持位置P1を通過する後向きの方向は、本発明の「第1方向」の一例となる。
【0043】
図2及び図3に示すように、左右のロック装置1、1はそれぞれ、ストライカ4を備えている。ストライカ4は、鋼製丸棒が略U字形状に折り曲げ加工等されてなる。
【0044】
左方のロック装置1のストライカ4は、スロープ5の左側面における軸心X5から遠い端部に固定されている。右方のロック装置1のストライカ4は、スロープ5の右側面における軸心X5から遠い端部に固定されている。
【0045】
図3及び図4に示すように、左右のロック装置1、1はそれぞれ、ベースプレート91、バックプレート92、ラッチ10、ラッチ固定手段20、捩じりコイルバネ19及び緩衝部材40を備えている。ベースプレート91及びバックプレート92は、本発明の「ベース部材」の一例である。捩じりコイルバネ19は、本発明の「付勢部材」の一例である。
【0046】
ベースプレート91、バックプレート92、ラッチ10、ラッチ固定手段20、捩じりコイルバネ19及び緩衝部材40の形状等についての以下の説明では、前後方向及び左右方向について、左方のロック装置1を基準とする。
【0047】
ベースプレート91及びバックプレート92はそれぞれ、肉厚の鋼板がプレス加工及び折り曲げ加工等されてなる。
【0048】
図4に示すように、ベースプレート91には、2つの取付穴91Hが形成されている。前方の取付穴91Hは、ベースプレート91の前端部を左右方向に貫通している。後方の取付穴91Hは、ベースプレート91の後端部を左右方向に貫通している。
【0049】
ベースプレート91の上端縁側、かつ前後方向の中間の位置には、ラッチ支持軸10Sの一端部が固定されている。ラッチ支持軸10Sは、左右方向に延びる軸心X10を中心とする円柱軸である。
【0050】
ベースプレート91の下端縁側、かつ前後方向において前方の取付穴91Hに近い位置には、ラチェット支持軸30Sの一端部が固定されている。ラチェット支持軸30Sは、左右方向に延びる軸心X30を中心とする円柱軸である。
【0051】
図3及び図4に示すように、バックプレート92には、2つの取付穴92Hが形成されている。前方の取付穴92Hは、バックプレート92の前端部を左右方向に貫通している。後方の取付穴92Hは、バックプレート92の後端部を左右方向に貫通している。
【0052】
バックプレート92における前端部と後端部との間には、屈曲部93A、93B及び対向部93が形成されている。屈曲部93Aは、バックプレート92の後端部から右向きに屈曲している。屈曲部93Bは、バックプレート92の前端部から右向きに屈曲している。対向部93は、屈曲部93A、93Bのそれぞれの右端部に接続している。対向部93は、前後方向及び上下方向に延びる略平板形状である。
【0053】
対向部93におけるラッチ支持軸10Sに対応する位置には、結合穴93Cが左右方向に貫通するように形成されている。対向部93におけるラチェット支持軸30Sに対応する位置には、結合穴93Dが左右方向に貫通するように形成されている。
【0054】
図3に示すように、ラッチ支持軸10Sの他端部を結合穴93Cに挿入して加締め加工を行うとともに、ラチェット支持軸30Sの他端部を結合穴93Dに挿入して加締め加工を行う。これにより、ベースプレート91とバックプレート92とが結合される。この状態で、ベースプレート91及びバックプレート92のそれぞれの前後の端部が重なり、各取付穴91Hと各取付穴92Hとが一致する。また、この状態で、バックプレート92の対向部93は、ベースプレート91に対して離間する状態でベースプレート91と対向する。
【0055】
左方のロック装置1のベースプレート91及びバックプレート92は、各取付穴91H、92Hに図示しない止めネジが挿入されて、その止めネジが第1壁81に捻じ込まれることによって、バックプレート92がベースプレート91に対して右方に位置する状態で、基体8の第1壁81に固定されている。
【0056】
右方のロック装置1のベースプレート91及びバックプレート92も同様にして、バックプレート92がベースプレート91に対して左方に位置する状態で、基体8の第2壁82に固定されている。
【0057】
図3及び図4に示すように、バックプレート92の対向部93には、バネ規制部99、台座94及びアウターチューブ保持部96が形成されている。
【0058】
バネ規制部99は、対向部93の中央を貫通する略矩形状の開口93Hの上端縁から下向きに突出する小片が左向きに屈曲されてなる。バネ規制部99は、ラッチ支持軸10Sの真下に配置されている。
【0059】
台座94は、対向部93の上端縁から上向きに突出する小片が左向きに屈曲され、さらに、その左向きに突出する部分の前後の端部が上向きに屈曲されてなる。台座94は、ラッチ支持軸10Sの真上に配置されている。
【0060】
図5図10では、バックプレート92の図示を省略しているため、バネ規制部99及び台座94も図示されていない。
【0061】
図3及び図4に示すように、アウターチューブ保持部96は、対向部93の下端縁から下向きかつ前向きに傾斜するように突出している。アウターチューブ保持部96は、図3に示すブラケット96Aを一体に有している。アウターチューブ保持部96は、ブラケット96Aによって、伝達ケーブル6Cを進退可能に収容するアウターチューブ6Tの一端を保持している。
【0062】
ラッチ10は肉厚の鋼板からなり、複数の切り欠きを有する略円盤形状である。ラッチ10は、ラッチ支持軸10Sに挿通されることにより、軸心X10周りに揺動可能にベースプレート91及びバックプレート92に支持されている。
【0063】
図4に示すように、ラッチ10には、バネ当接部18が設けられている。バネ当接部18は、ラッチ10の右面から右向きに突出する角柱である。バネ当接部18は、軸心X10の径方向において、軸心X10とラッチ10の外周縁との中間の位置に配置されている。
【0064】
捩じりコイルバネ19は、一端部19A、他端部19B及びコイル部19Cを有している。捩じりコイルバネ19は、コイル部19Cがラッチ支持軸10Sに挿通された状態で、ラッチ10とバックプレート92との間に配置されている。捩じりコイルバネ19の一端部19A及び他端部19Bは、コイル部19Cから下向きに突出している。
【0065】
捩じりコイルバネ19の一端部19Aの中間部は、バネ当接部18に後から当接可能である。捩じりコイルバネ19の一端部19Aの下端は、バネ規制部99に後から当接可能である。
【0066】
捩じりコイルバネ19の他端部19Bの中間部は、バネ当接部18に前から当接可能である。捩じりコイルバネ19の他端部19Bの下端は、バネ規制部99に前から当接可能である。
【0067】
図4に示すラッチ10の位置は、中立位置である。図5及び図8に示すラッチ10の位置も、中立位置である。
【0068】
図6に示すラッチ10の位置は、中立位置から図6の紙面の時計方向に揺動した位置であって、第1位置である。図7に示すラッチ10の位置は、第1位置から図7の紙面の時計方向に揺動した位置である。
【0069】
図9に示すラッチ10の位置は、中立位置から図9の紙面の反時計方向に揺動した位置であって、第2位置である。図10に示すラッチ10の位置は、第2位置から図10の紙面の反時計方向に揺動した位置である。
【0070】
つまり、ラッチ10は、第1位置と、第2位置と、第1位置と第2位置との間に位置する中立位置とを揺動によって通過可能である。
【0071】
ラッチ10が図4等に示す中立位置にある状態では、バネ当接部18は、ラッチ支持軸10Sの真下、かつバネ規制部99の真上に位置している。捩じりコイルバネ19は、一端部19Aがバネ当接部18及びバネ規制部99に後から当接し、他端部19Bがバネ当接部18及びバネ規制部99に前から当接することにより、ラッチ10を中立位置に保持する。
【0072】
図6及び図7に示すように、ラッチ10が中立位置から図6等の紙面の時計方向に揺動すると、バネ当接部18及び捩じりコイルバネ19の一端部19Aも、ラッチ10と共に揺動する。その一方、捩じりコイルバネ19の他端部19Bは、バネ規制部99に当接したまま変位しない。これにより、捩じりコイルバネ19は復元力を蓄えて、ラッチ10を図6等の紙面の反時計方向に、すなわち中立位置に向けて付勢する。
【0073】
図9及び図10に示すように、ラッチ10が中立位置から図9等の紙面の反時計方向に揺動すると、バネ当接部18及び捩じりコイルバネ19の他端部19Bも、ラッチ10と共に揺動する。その一方、捩じりコイルバネ19の一端部19Aは、バネ規制部99に当接したまま変位しない。これにより、捩じりコイルバネ19は復元力を蓄えて、ラッチ10を図9等の紙面の時計方向に、すなわち中立位置に向けて付勢する。
【0074】
図4に示すように、ラッチ10は、第1凹部11、第2凹部12、第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22を有している。第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22は、ラッチ固定手段20の一部を構成している。
【0075】
第1凹部11、第2凹部12、第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22は、ラッチ10の外周縁からそれぞれ軸心X10の径内方向に凹むように形成されている。
【0076】
第1被嵌合部21は、軸心X10を挟んで第1凹部11とは反対側に配置されている。つまり、第1被嵌合部21は、第1位置に対応するようにラッチ10に設けられている。
【0077】
第2被嵌合部22は、軸心X10を挟んで第2凹部12とは反対側に配置されている。つまり、第2被嵌合部22は、第2位置に対応するようにラッチ10に設けられている。
【0078】
第1凹部11及び第2凹部12は、左右方向に沿って見て、略U字形状に深く切り欠かれている。第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22は、左右方向に沿って見て、略矩形状に浅く切り欠かれている。
【0079】
左方のロック装置1では、ラッチ10が中立位置にある状態で、第1凹部11がラッチ10の後方かつ上方の部分に配置され、第2凹部12がラッチ10の前方かつ上方の部分に配置され、第1被嵌合部21がラッチ10の前方かつ下方の部分に配置され、第2被嵌合部22がラッチ10の後方かつ下方の部分に配置されている。
【0080】
図示は省略するが、右方のロック装置1では、ラッチ10が中立位置にある状態で、第1凹部11がラッチ10の前方かつ上方の部分に配置され、第2凹部12がラッチ10の後方かつ上方の部分に配置され、第1被嵌合部21がラッチ10の後方かつ下方の部分に配置され、第2被嵌合部22がラッチ10の前方かつ下方の部分に配置されている。
【0081】
ラッチ10の外周縁には、摺接面15が形成されている。摺接面15は、軸心X10を中心とする半径R1の円弧であり、第1被嵌合部21から第2被嵌合部22まで延びている。
【0082】
第1被嵌合部21は、内壁面21A及び対向内壁面21Bを有している。内壁面21Aは、摺接面15に接続して軸心X10の径内方向に延びている。対向内壁面21Bは、軸心X10の周方向において内壁面21Aと対向している。
【0083】
第2被嵌合部22は、内壁面22A及び対向内壁面22Bを有している。内壁面22Aは、摺接面15に接続して軸心X10の径内方向に延びている。対向内壁面22Bは、軸心X10の周方向において内壁面22Aと対向している。
【0084】
軸心X10から対向内壁面21B、22Bの先端までの長さL1は、摺接面15の半径R1よりも大きい。つまり、対向内壁面21B、22Bは、内壁面21A、22Aよりも軸心X10の径外方向に突出している。
【0085】
ラッチ10の外周縁には、さらに第1摺接面15A及び第2摺接面15Bが形成されている。第1摺接面15Aは、第1被嵌合部21から第2凹部12まで湾曲しながら延びている。第2摺接面15Bは、第2被嵌合部22から第1凹部11まで湾曲しながら延びている。
【0086】
ラッチ固定手段20は、上述した第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22と、ラチェット30及び捩じりコイルバネ39とを有している。ラッチ固定手段20は、以下に説明するように、図6に示す第1固定状態と、図9に示す第2固定状態と、図4図5図7図8及び図10に示す解除状態とに切り替わることが可能である。
【0087】
ラチェット30は、肉厚の鋼板からなる略レバー形状の部材である。ラチェット30は、ラチェット支持軸30Sに挿通されることにより、軸心X30周りに揺動可能にベースプレート91及びバックプレート92に支持されている。
【0088】
ラチェット30におけるラチェット支持軸30Sよりも下方かつ前方に位置する部分には、バネ係止穴30Hが貫通するように形成されている。ラチェット30は、ラチェット支持軸30Sから後方に延びた後、下向きに屈曲しており、その下端部にケーブル係止部36が形成されている。ケーブル係止部36には、伝達ケーブル6Cの一端が係止されている。
【0089】
ラチェット30は、嵌合凸部31を有している。嵌合凸部31は、ラチェット30におけるラチェット支持軸30Sよりも後方、かつケーブル係止部36よりも上方に位置する部分からラッチ10の外周縁に向かって上向きに突出するように形成されている。嵌合凸部31は、左右方向に沿って見て、第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22に整合する略矩形状である。
【0090】
捩じりコイルバネ39は、一端部39A、他端部39B及びコイル部39Cを有している。捩じりコイルバネ39は、コイル部39Cがラチェット支持軸30Sに挿通された状態で、ラチェット30とバックプレート92との間に配置されている。捩じりコイルバネ39の一端部39A及び他端部39Bは、コイル部39Cから下向きかつ前向きに突出している。
【0091】
図3に示すように、捩じりコイルバネ39の一端部39Aは、バックプレート92の屈曲部93Bに当て止っている。図4に示すように、捩じりコイルバネ39の他端部39Bは、ラチェット30のバネ係止穴30Hに係止されている。
【0092】
ラチェット30は、図6及び図9に示す第3位置と、図4図5図7図8及び図10に示す第4位置との間で揺動可能である。ラチェット30は、捩じりコイルバネ39によって、第3位置に向けて付勢されている。
【0093】
解除操作部6が操作されていない状態で、ラチェット30の嵌合凸部31がラッチ10の第1被嵌合部21に対向することにより、ラチェット30が捩じりコイルバネ39に付勢されて図6に示す第3位置に揺動し、嵌合凸部31が第1被嵌合部21に嵌合する。これにより、ラッチ固定手段20は、ラッチ10を第1位置で固定する第1固定状態に切り替わる。
【0094】
また、解除操作部6が操作されていない状態で、ラチェット30の嵌合凸部31がラッチ10の第2被嵌合部22に対向することにより、ラチェット30が捩じりコイルバネ39に付勢されて図9に示す第3位置に揺動し、嵌合凸部31が第2被嵌合部22に嵌合する。これにより、ラッチ固定手段20は、ラッチ10を第2位置で固定する第2固定状態に切り替わる。
【0095】
作業者によって解除操作部6の操作レバー6Aが操作されると、伝達ケーブル6Cの一端が下向きに変位する。これにより、ラチェット30は、捩じりコイルバネ39の付勢力に抗して図4等に示す第4位置に揺動し、嵌合凸部31が第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22から離間する。これにより、ラッチ固定手段20は、ラッチ10の揺動を許容する解除状態に切り替わる。
【0096】
ラチェット30は、図4等に示す第4位置では、ラッチ10の揺動を許容する。解除操作部6が操作されなくなっても、嵌合凸部31が第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22に対向していなければ、嵌合凸部31が摺接面15、第1摺接面15A又は第2摺接面15Bに当て止まるので、ラチェット30が図4等に示す第4位置に維持される。そして、嵌合凸部31が摺接面15、第1摺接面15A又は第2摺接面15Bに摺接することにより、ラチェット30は、ラッチ10の揺動を許容する。
【0097】
図3及び図4に示すように、緩衝部材40は、バックプレート92の台座94上に固定されている。緩衝部材40は、例えば、ゴム、エラストマ、軟質樹脂等の弾性変形し易い材料によって構成されたブロック形状の部材である。
【0098】
緩衝部材40は、緩衝凹部40Hを有している。緩衝凹部40Hは、緩衝部材40の上面におけるラッチ支持軸10Sの真上に位置する部分が下向きに凹んでなる。
【0099】
緩衝部材40の上面における緩衝凹部40Hよりも前方に位置する部分は、緩衝凹部40Hよりも高い位置から前向きに下り傾斜している。緩衝部材40の上面における緩衝凹部40Hよりも後方に位置する部分は、緩衝凹部40Hよりも高い位置から後向きに下り傾斜している。
【0100】
緩衝部材40の上面には、薄い金属板41が貼り付けられている。金属板41は、緩衝部材40の上面の凹凸に沿うように湾曲している。
【0101】
ラッチ10が図6に示す第1位置にある状態で、左右方向から見て、緩衝凹部40Hは、第1凹部11の底部と重なっている。また、ラッチ10が図9に示す第2位置にある状態で、左右方向から見て、緩衝凹部40Hは、第2凹部12の底部と重なっている。
【0102】
<スロープの揺動に伴うロック装置の動作>
次に、スロープ5の揺動に伴うロック装置1の動作について詳しく説明する。以下の説明では、主に左方のロック装置1について説明を行い、右方のロック装置1の説明については適宜省略する。
【0103】
スロープ5が図1に示す展開位置P2又は収容位置P3にある状態では、左右のロック装置1、1において、ラッチ10は中立位置にある。
【0104】
左方のロック装置1において、ラッチ10が中立位置にある状態では、スロープ5が展開位置P2から保持位置P1に向けて前向きに揺動するのに伴って、図5に示すように、前向きに変位するストライカ4が第1凹部11に進入可能である。また、この状態では、スロープ5が収容位置P3から保持位置P1に向けて後向きに揺動するのに伴って、図8に示すように、後向きに変位するストライカ4が第2凹部12に進入可能である。
【0105】
図示は省略するが、右方のロック装置1において、ラッチ10が中立位置にある状態では、前向きに変位するストライカ4が第2凹部12に進入可能、かつ、後向きに変位するストライカ4が第1凹部11に進入可能である。
【0106】
<スロープが展開位置から保持位置に向けて前向きに揺動する場合>
図5に示すように、左方のロック装置1において、前向きに変位するストライカ4が第1凹部11に進入すると、そのストライカ4に押されてラッチ10が図5に示す中立位置から図6に示す第1位置に揺動する。このため、ラッチ固定手段20が図5に示す解除状態から図6に示す第1固定状態に切り替わる。その結果、第1凹部11がストライカ4を前後から当て止める。
【0107】
この際、図3に示すように、右方のロック装置1において、第2凹部12がストライカ4を前後から当て止める。こうして、左右のロック装置1、1は、スロープ5を保持位置P1に保持する。
【0108】
左右のロック装置1、1の緩衝部材40は、前向きに変位するストライカ4に弾性変形しつつ当接して衝撃を吸収する。そして、緩衝部材40は、スロープ5が保持位置P1にある状態で緩衝凹部40Hがストライカ4に当接することによって、ストライカ4のがたつきを抑制する。金属板41は、ストライカ4と緩衝部材40との間に介在して、ストライカ4の滑りを良くする。
【0109】
スロープ5が保持位置P1に保持された状態で、作業者によって解除操作部6の操作レバー6Aが操作されると、左右のロック装置1、1において、ラッチ固定手段20が解除状態に切り替わってラッチ10の揺動を許容する。
【0110】
これにより、左方のロック装置1において、ストライカ4が第1凹部11から離脱可能となる。ストライカ4が図6に示す位置から前向きに変位する場合、図7に示すように、ラッチ10が図7の紙面の時計方向に揺動して、ストライカ4が第1凹部11から前方に離脱する。すると、ラッチ10は、捩じりコイルバネ19に付勢されて図5に示す中立位置に復帰する。また、ストライカ4が図6に示す位置から後向きに変位する場合、図5に示すように、ラッチ10が図5の紙面の反時計方向に揺動して中立位置に復帰し、ストライカ4が第1凹部11から後方に離脱する。
【0111】
図示は省略するが、この際、右方のロック装置1において、ストライカ4が第2凹部12から離脱可能となる。そして、ストライカ4が第2凹部12から離脱すると、ラッチ10が中立位置に復帰する。
【0112】
<スロープが収容位置から保持位置に向けて後向きに揺動する場合>
図8に示すように、左方のロック装置1において、後向きに変位するストライカ4が第2凹部12に進入すると、そのストライカ4に押されてラッチ10が図8に示す中立位置から図9に示す第2位置に揺動する。このため、ラッチ固定手段20が図8に示す解除状態から図9に示す第2固定状態に切り替わる。その結果、第2凹部12がストライカ4を前後から当て止める。
【0113】
図示は省略するが、この際、右方のロック装置1において、第1凹部11がストライカ4を前後から当て止める。こうして、左右のロック装置1、1は、スロープ5を保持位置P1に保持する。
【0114】
左右のロック装置1、1の緩衝部材40は、後向きに変位するストライカ4に弾性変形しつつ当接して衝撃を吸収する。そして、緩衝部材40は、スロープ5が保持位置P1にある状態で緩衝凹部40Hがストライカ4に当接することによって、ストライカ4のがたつきを抑制する。金属板41は、ストライカ4と緩衝部材40との間に介在して、ストライカ4の滑りを良くする。
【0115】
スロープ5が保持位置P1に保持された状態で、作業者によって解除操作部6の操作レバー6Aが操作されると、左右のロック装置1、1において、ラッチ固定手段20が解除状態に切り替わってラッチ10の揺動を許容する。
【0116】
これにより、左方のロック装置1において、ストライカ4が第2凹部12から離脱可能となる。ストライカ4が図9に示す位置から後向きに変位する場合、図10に示すように、ラッチ10が図10の紙面の反時計方向に揺動して、ストライカ4が第2凹部12から後方に離脱する。すると、ラッチ10は、捩じりコイルバネ19に付勢されて図8等に示す中立位置に復帰する。また、ストライカ4が図9に示す位置から前向きに変位する場合、図8に示すように、ラッチ10が図8の紙面の時計方向に揺動して中立位置に復帰し、ストライカ4が第2凹部12から前方に離脱する。
【0117】
図示は省略するが、この際、右方のロック装置1において、ストライカ4が第1凹部11から離脱可能となる。そして、ストライカ4が第1凹部11から離脱すると、ラッチ10が中立位置に復帰する。
【0118】
<作用効果>
実施例のロック装置1及びロックシステム9では、図6及び図9等に示すように、作業者がスロープ5を保持位置P1に向けて前向き又は後向きに揺動させるときに、1つのロック機構におけるラッチ10の第1凹部11又は第2凹部12を選択的に用い、ラッチ固定手段20が図6に示す第1固定状態又は図9に示す第2固定状態に自動的に切り替わることで、スロープ5を保持位置P1に保持する。
【0119】
つまり、このロック装置1では、ピンを3段階に操作したり、2つのロック機構を操作したりする必要がないとともに、1つのロック機構が嵩張らない。
【0120】
したがって、実施例のロック装置1及びロックシステム9では、1つのロック機構でスロープ5が保持位置P1から展開位置P2と収容位置P3とに向けて移動することを規制でき、操作手順や操作箇所を削減できるとともに福祉車両C1内の配置スペースを小さくできる。
【0121】
また、このロック装置1及びロックシステム9では、ラッチ10に設けられた第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22と、ベースプレート91及びバックプレート92に支持された1つのラチェット30とによって、ラッチ固定手段20を簡素化でき、その結果、部品点数を一層削減できる。
【0122】
さらに、このロック装置1及びロックシステム9では、第1被嵌合部21及び第2被嵌合部22は、ラッチ10の外周縁からそれぞれ軸心X10の径内方向に凹むように形成されている。ラチェット30は、ラッチ10に向かって突出するように形成され、第3位置で第1被嵌合部21又は第2被嵌合部22に嵌合する嵌合凸部31を有し、第3位置に向けて付勢されている。そして、ラッチ10の外周縁には、第1被嵌合部21から第2被嵌合部22まで延び、嵌合凸部31が摺接可能な摺接面15が形成されている。このような構成により、ラッチ固定手段20を一層簡素化でき、その結果、部品点数をより一層削減できる。また、ラッチ固定手段20を解除状態に切り替えた後、嵌合凸部31が摺接面15に摺接することにより、解除操作部6が操作されなくなっても、解除状態を容易に維持できる。そして、嵌合凸部31が第1被嵌合部21又は第2被嵌合部22に対向する位置に移動すれば、第3位置に向けて付勢された嵌合凸部31が自動的に第1被嵌合部21又は第2被嵌合部22に嵌合するので、使い勝手が良い。
【0123】
また、このロック装置1及びロックシステム9では、図4に示すように、軸心X10から対向内壁面21B、22Bの先端までの長さL1は、摺接面15の半径R1よりも大きい。つまり、対向内壁面21B、22Bは、内壁面21A、22Aよりも軸心X10の径外方向に突出している。この構成により、ラチェット30の嵌合凸部31が第1被嵌合部21又は第2被嵌合部22に嵌合するときに、対向内壁面21B、22Bが軸心X10の周方向において嵌合凸部31を確実に当て止めるので、嵌合凸部31が第1被嵌合部21又は第2被嵌合部22を通り越してしまうことを抑制できる。
【0124】
さらに、このロック装置1及びロックシステム9では、図6及び図9に示すように、緩衝部材40によって、ストライカ4がラッチ10の第1凹部11又は第2凹部12に進入する際の衝撃を弱めることができるので、異音の発生を抑制できる。また、スロープ5が保持位置P1にある状態で緩衝部材40がストライカ4に弾性変形しつつ当接することによって、ストライカ4の前後方向のがたつきを抑制できる。
【0125】
また、このロック装置1及びロックシステム9では、スロープ5が保持位置P1にある状態で緩衝部材40の緩衝凹部40Hがストライカ4に当接することによって、ストライカ4の前後方向のがたつきを一層抑制できる。
【0126】
さらに、このロックシステム9は、1つの解除操作部6を操作して、左右のロック装置1、1のラッチ固定手段20を解除状態に切り替えることにより、保持位置P1に保持されたスロープ5を前向き又は後向きに容易に揺動させることができる。
【0127】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0128】
実施例では、スロープ5が軸心X5を中心とする円弧状の軌跡を描いて変位するように基体8に支持されているが、この構成には限定されない。例えば、スロープは、リンク機構やガイド機構等によって、円弧とは異なる軌跡を描いて変位するように基体8に支持されていてもよい。
【0129】
実施例では、ラッチ固定手段20は、1つのラチェット30を有しているがこの構成には限定されない。例えば、ラッチ固定手段は、ラッチに1つだけ設けられた被嵌合部と、第1位置に対応するようにベース部材に設けられた第1のラチェットと、第2位置に対応するようにベース部材に設けられた第2のラチェットとを有していてもよい。
【0130】
実施例では、ラチェット30が揺動するがこの構成には限定されない。ラチェットは、例えば直動してもよい。
【0131】
実施例では、ストライカ4がスロープ5に固定され、ベース部材としてのベースプレート91及びバックプレート92が基体8に固定されているがこの構成には限定されない。ストライカが基体に固定され、ベース部材がスロープに固定されている構成も本発明に含まれる。
【0132】
実施例の左右2つのロック装置1、1のそれぞれについて、上下の向きを実施例とは逆にした構成も本発明に含まれる。
【0133】
実施例では、左右2つのロック装置1、1でスロープ5を保持位置P1に保持するがこの構成には限定されない。例えば、左方のロック装置1を無くして右方のロック装置1のみでスロープ5を保持位置P1に保持する構成や、その逆の構成も本発明に含まれる。また、スロープ5における軸心X5から遠い位置で軸心X5と平行に延びる端縁に1つのストライカ4を設け、1つのロック装置1を保持位置P1に到達したスロープ5の上方に位置するように基体8に設ける構成も本発明に含まれる。
【0134】
実施例では、解除操作部6がロック装置1とは別体であるがこの構成には限定されない。例えば、解除操作部がロック装置に一体に設けられる構成も本発明に含まれる。
【0135】
実施例のロック装置1において緩衝部材40から緩衝凹部40Hを無くした構成や、実施例のロック装置1から緩衝部材40を無くした構成も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、例えば、車椅子等を搬出入可能な福祉車両等の車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0137】
1…車両用スロープロック装置
9…車両用スロープロックシステム
C1…車両(福祉車両)
C2…車体
8…基体
P1…保持位置
P2…展開位置
P3…収容位置
5…スロープ
4…ストライカ
91、92…ベース部材(91…ベースプレート、92…バックプレート)
X10…軸心
10…ラッチ
11…第1凹部
12…第2凹部
20…ラッチ固定手段
19…付勢部材(捩じりコイルバネ)
21…第1被嵌合部
22…第2被嵌合部
30…ラチェット
31…嵌合凸部
15…摺接面
21A、22A…内壁面
21B、22B…対向内壁面
40…緩衝部材
40H…緩衝凹部
6…解除操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10