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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ピン固定方法及びピン固定装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20221219BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01L21/92 604A
H01L21/92 604F
H01L23/12 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021084982
(22)【出願日】2021-05-19
(65)【公開番号】P2022178283
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2022-03-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515157758
【氏名又は名称】公立大学法人 富山県立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】392008851
【氏名又は名称】ファインネクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下山 勲
(72)【発明者】
【氏名】野田 堅太郎
(72)【発明者】
【氏名】塚越 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】北島 一郎
(72)【発明者】
【氏名】松井 剛
(72)【発明者】
【氏名】野嶋 諭
(72)【発明者】
【氏名】高浪 奨
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-374061(JP,A)
【文献】特開2005-038957(JP,A)
【文献】特開昭61-051838(JP,A)
【文献】国際公開第2006/048931(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60-21/607
H01L 23/48-23/50
H01L 23/12-23/15
H01L 21/48
H05K 1/18
H05K 3/32- 3/34
H01R 43/20-43/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロサイズを有するピンを、当該ピンをそれぞれ挿入するためのマイクロサイズの貫通していない穴を有する移載元基材と対向する移載先基材の上に立てて置き、
前記穴に部分的に挿入されている前記ピンを前記移載元基材で加圧して前記ピンを前記移載先基材に押圧すると同時に又はそれと前後して固定剤を溶融することにより、溶融した固定剤を前記ピンの移載先基材側に装着して前記ピンを前記移載先基材に固定する、ピン固定方法。
【請求項2】
複数のマイクロサイズの貫通していない穴を有する移載元基材の前記穴のそれぞれに、マイクロサイズのピンが挿入され、前記ピンの一部が前記穴から突出している状態において、前記移載元基材に前記ピンを磁界、電界又は吸引により保持させて、前記移載元基材を反転して移載先基材と対向させて、
前記移載元基材への前記ピンの保持を開放することにより、前記ピンを前記移載先基材の上に立てて置き、
前記穴に部分的に挿入されている前記ピンを前記移載元基材で加圧して前記ピンを前記移載先基材に押圧すると同時に又はそれと前後して固定剤を溶融することにより、溶融した固定剤を前記ピンの移載先基材側に装着して前記ピンを前記移載先基材に固定する、ピン固定方法。
【請求項3】
前記移載先基材の上には前記固定剤が設けられている、請求項1又は2に記載のピン固定方法。
【請求項4】
前記移載元基材の前記ピンへの加圧により前記移載元基材が弾性変形し得る、請求項1又は2に記載のピン固定方法。
【請求項5】
複数のマイクロサイズの貫通していない穴を有する移載元基材の前記穴のそれぞれに、マイクロサイズのピンが挿入され、前記ピンの一部が前記穴から突出している状態において、前記移載元基材に前記ピンを磁界により保持させて、前記移載元基材を反転して移載先基材と対向させて、
前記ピンを前記移載先基材の上に立てて置き、前記穴に部分的に挿入されている前記ピンに対して前記移載元基材を押圧手段で加圧することにより前記押圧手段が弾性変形しながら、前記移載元基材の前記穴で、前記ピンが前記移載先基材に押し付けられると同時に又はそれと前後して固定剤を溶融することにより、溶融した前記固定剤を前記ピンの移載先基材側に装着して前記ピンを前記移載先基材に固定する、ピン固定方法。
【請求項6】
マイクロサイズを有するピンがそれぞれマイクロサイズの貫通していない穴に挿入された移載元基材を載置する第1のステージと、
複数の前記ピンの移載先が設けられた移載先基材を載置する第2のステージと、
前記第1のステージに載置された前記移載元基材に対して前記ピンを保持するための保持機構と、
前記第1のステージと前記第2のステージの少なくとも何れかを回転させて前記第1のステージと前記第2のステージとを対向させる回転機構と、
前記第1のステージ、前記第2のステージの何れかを上下動させる上下動機構と、
熱源と、
を備え、
前記回転機構が前記移載元基材と前記移載先基材とを対向させて前記保持機構による前記ピンの保持を開放することにより、前記ピンを前記移載元基材から前記移載先基材の上に立てて置き、
前記熱源により固定剤を溶融すると同時に又はそれと前後して前記上下動機構により前記移載元基材を介在して前記ピンを前記移載先基材に対して押圧することにより、溶融した前記固定剤を前記ピンの移載先基材側に装着して前記ピンを前記移載先基材に固定する、ピン固定装置。
【請求項7】
マイクロサイズを有するピンがそれぞれマイクロサイズの貫通していない穴に挿入された移載元基材を載置する第1のステージと、
複数の前記ピンの移載先が設けられた移載先基材を載置する第2のステージと、
前記第1のステージの前記移載元基材を載置する面と逆側に設けられた磁石と、
前記第1のステージ、前記第2のステージの何れかの一端部に対して回転軸部が取り付けられ前記第1のステージと前記第2のステージとを対向させる回転機構と、
前記第1のステージ、前記第2のステージの何れかを上下動させる上下動機構と、
熱源と、
を備え、
前記移載元基材を前記第1のステージに載置すると共に、前記移載先基材を前記第2のステージに載置した後に、前記磁石により前記移載元基材の前記穴に前記ピンをそれぞれ保持しながら前記回転機構により前記第1のステージを上下反転させて前記移載先基材の上に前記移載元基材を対向させ、前記磁石を前記第1のステージから遠ざけることにより前記移載先基材の上に前記ピンを立てて置き、
前記穴に部分的に挿入されている前記ピンを前記移載元基材でガイドしながら前記上下動機構により前記ピンを前記移載先基材に押圧すると同時に又はそれと前後して前記熱源により固定剤を溶解することにより、溶融した前記固定剤を前記ピンの移載先基材側外周に装着して前記ピンを前記移載先基材に固定する、ピン固定装置。
【請求項8】
前記移載元基材が弾性変形し得る、請求項6又は7に記載のピン固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピン固定方法、ピン固定装置及びピンが固定された基材に関する。
【背景技術】
【0002】
積層配線、3D配線などの技術として、チップを複数のダイで統合するチップレット化が検討されている。ダイの上に別のダイを載せて配線するためにはピンが必要となる。ピンの径及び長さは、例えば0.3mm以下というマイクロオーダーである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
マイクロサイズのピンは、質量が極めて小さく、溶融した固定剤のため所定の位置からのズレが生じるため、精度よく位置決めして固定することが難しい。
【0004】
そこで、本発明では、複数のマイクロサイズのピンを精度よく位置決めして固定するピン固定方法及びピン固定装置と、それにより作製されるピンが固定された基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のコンセプトは次のとおりである。
[1] マイクロサイズを有するピンを、当該ピンをそれぞれ挿入するためのマイクロサイズの穴を有する移載元基材と対向する移載先基材の上に立てて置き、
前記穴に部分的に挿入されている前記ピンを前記移載元基材で加圧して前記ピンを前記移載先基材に押圧すると同時に又はそれと前後して固定剤を溶融することにより、溶融した固定剤を前記ピンの移載先基材側に装着して前記ピンを前記移載先基材に固定する、ピン固定方法。
[2] 複数のマイクロサイズの穴を有する移載元基材の前記穴のそれぞれに、マイクロサイズのピンが挿入され、前記ピンの一部が前記穴から突出している状態において、前記移載元基材に前記ピンを磁界、電界又は吸引により保持させて、前記移載元基材を反転して移載先基材と対向させて、
前記移載元基材への前記ピンの保持を開放することにより、前記ピンを前記移載先基材の上に立てて置き、
前記穴に部分的に挿入されている前記ピンを前記移載元基材で加圧して前記ピンを前記移載先基材に押圧すると同時に又はそれと前後して固定剤を溶融することにより、溶融した固定剤を前記ピンの移載先基材側に装着して前記ピンを前記移載先基材に固定する、ピン固定方法。
[3] 前記移載先基材の上には前記固定剤が設けられている、前記[1]又は[2]に記載のピン固定方法。
[4] 前記移載元基材の前記ピンへの加圧により前記移載元基材が弾性変形し得る、前記[1]又は[2]に記載のピン固定方法。
[5] 複数のマイクロサイズの穴を有する移載元基材の前記穴のそれぞれに、マイクロサイズのピンが挿入され、前記ピンの一部が前記穴から突出している状態において、前記移載元基材に前記ピンを磁界により保持させて、前記移載元基材を反転して移載先基材と対向させて、
前記ピンを前記移載先基材の上に立てて置き、前記穴に部分的に挿入されている前記ピンに対して前記移載元基材を押圧手段で加圧することにより前記押圧手段が弾性変形しながら、前記ピンが前記移載先基材に押し付けられると同時に又はそれと前後して固定剤を溶融することにより、溶融した前記固定剤を前記ピンの移載先基材側に装着して前記ピンを前記移載先基材に固定する、ピン固定方法。
[6] マイクロサイズを有するピンがそれぞれマイクロサイズの穴に挿入された移載元基材を載置する第1のステージと、
複数の前記ピンの移載先が設けられた移載先基材を載置する第2のステージと、
前記第1のステージに載置された前記移載元基材に対して前記ピンを保持するための保持機構と、
前記第1のステージと前記第2のステージの少なくとも何れかを回転させて前記第1のステージと前記第2のステージとを対向させる回転機構と、
前記第1のステージ、前記第2のステージの何れかを上下動させる上下動機構と、
熱源と、
を備え、
前記回転機構が前記移載元基材と前記移載先基材とを対向させて前記保持機構による前記ピンの保持を開放することにより、前記ピンを前記移載元基材から前記移載先基材の上に立てて置き、
前記熱源により固定剤を溶融すると同時に又はそれと前後して前記上下動機構により前記移載元基材を介在して前記ピンを前記移載先基材に対して押圧することにより、溶融した前記固定剤を前記ピンの移載先基材側に装着して前記ピンを前記移載先基材に固定する、ピン固定装置。
[7] マイクロサイズを有するピンがそれぞれマイクロサイズの穴に挿入された移載元基材を載置する第1のステージと、
複数の前記ピンの移載先が設けられた移載先基材を載置する第2のステージと、
前記第1のステージの前記移載元基材を載置する面と逆側に設けられた磁石と、
前記第1のステージ、前記第2のステージの何れかの一端部に対して回転軸部が取り付けられ前記第1のステージと前記第2のステージとを対向させる回転機構と、
前記第1のステージ、前記第2のステージの何れかを上下動させる上下動機構と、
熱源と、
を備え、
前記移載元基材を前記第1のステージに載置すると共に、前記移載先基材を前記第2のステージに載置した後に、前記磁石により前記移載元基材の前記穴に前記ピンをそれぞれ保持しながら前記回転機構により前記第1のステージを上下反転させて前記移載先基材の上に前記移載元基材を対向させ、前記磁石を前記第1のステージから遠ざけることにより前記移載先基材の上に前記ピンを立てて置き、
前記穴に部分的に挿入されている前記ピンを前記移載元基材でガイドしながら前記上下動機構により前記ピンを前記移載先基材に押圧すると同時に又はそれと前後して前記熱源により固定剤を溶解することにより、溶融した前記固定剤を前記ピンの移載先基材側外周に装着して前記ピンを前記移載先基材に固定する、ピン固定装置。
[8] 前記移載元基材が弾性変形し得る、前記[6]又は[7]に記載のピン固定装置。
[9] 平面を有する基材と、
マイクロサイズを有して前記基材の上に設けられた複数のピンと、
前記複数のピンの前記基材側の周囲にそれぞれ設けられた固定部と、
を有する、ピンが固定された基材。
[10] 前記固定部が、半田フィレット、樹脂及び接着剤の何れかからなる、前記[9]に記載のピンが固定された基材。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複数のマイクロサイズのピンを精度よく位置決めして固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の基本的な形態としての第1の実施形態に係るピン移載方法を模式的に示す図である。
図2A図2Aは、図1に示すピン移載方法において、特に永久磁石を用いた場合の一連の工程のうち、STEP2をより具体的に示す図である。
図2B図2Bは、図1に示すピン移載方法において、特に永久磁石を用いた場合の一連の工程のうち、STEP4をより具体的に示す図である。
図2C図2Cは、図1に示すピン移載方法において、特に永久磁石を用いた場合の一連の工程のうち、STEP6をより具体的に示す図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態に係るピン移載装置を示す平面図である。
図4図4は、本発明の第2の実施形態に係るピン移載装置を示す正面図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態に係るピン移載装置を示す側面図である。
図6図6は、図3のVI-VI線に沿う断面図である。
図7図7は、図3のVII-VII線に沿う断面図である。
図8図8は、図5における操作部及びその周囲を模式的に示す斜視図である。
図9図9は、本発明の第3の実施形態に係るピン移載装置の構成図である。
図10図10は、本発明の第4の実施形態に係るピン移載装置の構成図である。
図11図11は、本発明の第5の実施形態に係るピン移載装置の構成図である。
図12図12は、本発明の第6の実施形態に係る、ピンを移載先基材に移載して固定する方法の概略を示す図である。
図13図13は、本発明の第6の実施形態によるピン固定方法で作製される、ピンが固定された基材を模式的に示す断面図である。
図14図14は、本発明の第7の実施形態に係る、ピンを移載先基材に移載して固定する方法の概略を示す図である。
図15図15は、検証に使用したパターンを模式的に示す平面図である。
図16図16は、ピンの移載からリフローを経て固定される間に使用される、アレイ体、ピン及び移載先基板を模式的に示す図である。
図17図17は、三次元画像データからの断面形状を用いてピンの高さ及び傾きの求め方を模式的に示す図である。
図18A図18Aは、第1の検証例でのピンの高さのヒストグラムである。
図18B図18Bは、第2の検証例でのピンの高さのヒストグラムである。
図18C図18Cは、第3の検証例でのピンの高さのヒストグラムである。
図19A図19Aは、第1の検証例でのピンの傾斜角のヒストグラムである。
図19B図19Bは、第2の検証例でのピンの傾斜角のヒストグラムである。
図19C図19Cは、第3の検証例でのピンの傾斜角のヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。図面には本発明の好ましい形態の一つを示すものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で発明の構成要素について変更したり一部削除したり追加した形態についても本発明の範囲に含まれる。
【0009】
[第1の実施形態]
本発明の基本的な形態として第1の実施形態を説明する。図1は、本発明の基本的な形態としての第1の実施形態に係るピン移載方法を模式的に示す図である。本発明の基本的な形態としての第1の実施形態に係るピン移載方法は、次のようなステップにより行われる。
【0010】
先ず、磁界により挙動するピン1が各挿入部2Aに挿入されたアレイ体2Bを用意する(STEP1)。アレイ体2Bは、挿入部2Aとしての穴を有しており、平面視で矩形でも円形でもよい。アレイ体2Bは金属、半導体、ガラス等の絶縁体の何れで構成してもよいが、磁性材料で構成されない方が好ましい。効率的にピン1に磁界の効果を及ぼすためである。アレイ体2Bは挿入側の穴口が上方に向けられており、各穴にピン1が挿入されている。ピン1は、例えば円柱形状である。ピン1は、例えば直径1μm以上1000μm以下、長さ1μm以上1000μm以下のマイクロサイズを有している。そのため、穴はピン1の直径に対して1.02乃至1.3倍の直径を有する。穴は、ピン1の長さに対して0.1倍以上5倍以下の深さを有する。ピン1の寸法に対して穴がこの範囲であれば、一本のピン1を一つの穴に挿入することができ、かつ、穴から不用意に抜け難くなるからである。また、穴は、アレイ体2Bの上下面に対して垂直に設けられている場合のみならず、上下面に対して傾斜していてもよい。一枚のアレイ体2Bに対して同一又は同様な形状、寸法(特に深さ)の穴が設けられている必要はなく、各場所において異なる形状、寸法の穴が設けられていてもよい。以下、ピン1が挿入されたアレイ体2Bを特に「ピン挿入済みアレイ体2」と呼ぶことにする。
【0011】
次に、第1の磁石11を、ピン挿入済みアレイ体2のピン1に作用するように配置し、ピン挿入済みアレイ体2を上下に反転させる。その際、ピン挿入済みアレイ体2のピン1に対して磁界が反転の前後で同一又は略同一となるように、第1の磁石11で生じる磁界の向きを必要に応じて調整しながら、ピン挿入済みアレイ体2を上下に反転させる。例えば、第1の磁石11として永久磁石が採用され、ピン挿入済みアレイ体2の挿入側の穴口が上方に向けられている場合、第1の磁石11がピン挿入済みアレイ体2の下方に配置される(STEP2)。ピン挿入済みアレイ体2を第1の磁石11に近づけてもよいが、第1の磁石11をピン挿入済みアレイ体2に近づけたほうが制御しやすく歩留まりが高い。
【0012】
次に、第1の磁石11と共にピン挿入済みアレイ体2を上下に反転させる(STEP3)。これにより、挿入側の穴口が下方に向けられているが、ピン挿入済みアレイ体2の上方に第1の磁石11が配置され、永久磁石による磁界の効果によりピン1が穴口から抜け出さないため脱離しない。
【0013】
これらと前後して、ピンを配列したい基材を用意する。ここで、「基材」とは、半導体製造工程における前工程により複数の半導体素子が搭載されたウェハでも、ダイシングで最小単位に切断されたダイでも、よい。ダイの代わりにチップと呼ばれることもある。一つの基材、又は一つの基材に別の基材少なくとも一つが積層された状態でも、総称して「基材」と呼ぶことにする。Siウェハなどの半導体ウェハに前工程により作製された複数の半導体素子を少なくとも一つ備えてなる基材に対して、別の同様の基材を積層して、半導体素子同士、又は一方の半導体素子に対して外部配線をするために、一又は複数のピン挿入領域を有しているものであれば、それらを一体化させて基材と呼ぶことにする。ピン挿入領域は、基材に対して上下方向、上下方向に対して傾斜した方向の何れの方向に設けられていてもよく、深さが異なる穴であってもよく、貫通、非貫通を問わない。
【0014】
なお、基材は、複数のピンの移載先としてピン挿入領域3Aが設けられた「移載先基材3」とも呼ぶことがあり、図面においては、半導体素子などの詳細は省略して示されている。複数のピンの移載先としては断面が凹部を有している場合のみならず、フラットであってもよい。そのような場合には、ピンのフラット面側には半田などの接着剤が設けられていることが好ましい。ピンの移載先のフラット面に、部分的に又は前面に接着剤が設けられていることが好ましい。これらにより、移載されたピンを立ったままとすることができる。
【0015】
次に、ピン挿入済みアレイ体2と移載先基材3とを必要に応じて対向させ、ピン挿入済みアレイ体2におけるピン1の先端が移載先基材3のピン挿入領域3Aと向かい合っている状態又はほぼ向かい合っている状態において、ピン挿入済みアレイ体2と移載先基材3との距離を小さくする。その際、ピン挿入済みアレイ体2が移載先基材3に対して近づくように移動させる場合には、第1の磁石11もピン挿入済みアレイ体2と共に移動させる(STEP4)。
【0016】
そして、移載先基材3に対してピン挿入済みアレイ体2と反対側に第2の磁石12を配置する。その際、第2の磁石12を、ピン挿入済みアレイ体2のピン1に作用するよう配置する。第2の磁石12は、第1の磁石11と同様な構成でも異なる構成でもよい。例えば、第2の磁石12として永久磁石が採用される場合には、第2の磁石12が移載先基材3の下方に配置される(STEP5)。
【0017】
さらに、第1の磁石11からの磁界が、ピン1に影響しないように制御する。第1の磁石11をピン挿入済みアレイ体2から遠ざければよい。すると、ピン挿入済みアレイ体2において、ピン1が第1の磁石11の磁界の影響を受けずに第2の磁石12の影響を受けることになり、各ピン1がアレイ体2Bから移載先基材3に移動し、各ピン1がピン挿入領域3Aに挿入される(STEP6)。
【0018】
この一連の工程により、各ピン1が、アレイ体2Bの挿入部2Aから移載先基材3のピン挿入領域3Aに移載される。この一連の工程により、複数の、特に多数のピン1を、同時に、ピン挿入領域3Aに挿入させることができる。即ち、移載先基材3としてのウェハ、チップ、ダイに設けられたピン挿入領域3Aとしての貫通穴又は非貫通穴にピン1が挿入される。よって、複数のピン1ができるだけ短時間に配置されることができる。
【0019】
この一連の工程において、移載先基材3を準備する前に、移載先基材3としてのウェハ、チップ、ダイに設けられたピン挿入領域3Aの入口の周囲に、半田などのペーストを予め設けておき、前述の一連の工程の後、移載先基材3を熱源13により昇温することによりペースト3Bが溶け、ピン1を移載先基材3に固定させることができる(STEP7)。その後、第2の磁石12を移載先基材3の裏側から遠ざける。
【0020】
ここで、第1の磁石11及び第2の磁石12が永久磁石である必要はなく、それぞれ、一又は複数の電磁石で構成されてもよい。電磁石の場合には、電磁石に流す電流を調整することにより、ピン1に影響する磁界を制御することができる。永久磁石をピン挿入済みアレイ体2から遠ざけるための時間を省略することができる。また、第1の磁石11及び第2の磁石12の何れも電磁石を採用することにより、細かな制御が可能となる。特に、ピン挿入済みアレイ体2の各挿入部2Aの形状、複数の挿入部2A同士の配置パターン、移載先基材3の各ピン挿入領域3Aの形状、複数のピン挿入領域3A同士の配置パターンによっては、電磁石の方がピン1の挙動を細かく制御することができる。
【0021】
図2A乃至図2Cは、図1に示すピン移載方法において、特に永久磁石を用いた場合の一連の工程のうち、STEP2、STEP4、STEP6をそれぞれより具体的に示す図である。
【0022】
図2Aに示すように、ピン挿入済みアレイ体2が第1のステージ14の上に載置される。第1のステージ14のピン挿入済みアレイ体2と逆側の裏面側には、第1の磁石11が第1の磁石ホルダー16によって配置されており、第1のシャフト15が第1の磁石ホルダー16に貫通して配置されている。変位機構21によって、第1の磁石ホルダー16を第1のシャフト15の長手方向に移動させることができるように構成されている。回転機構としての反転機構17が回転軸部17Aの回転と共に第1のステージ14を回転するように構成されている。回転軸部17Aに対して第1のステージ14ひいてはピン挿入済みアレイ体2の平面視中心線とずらして第1のステージ14が回転軸部17Aに取り付けられている。
【0023】
STEP2の状態から矢印αで示すように回転機構としての反転機構17の回転軸部17A回りに半回転させることにより、図2Bに示すように、ピン挿入済みアレイ体2の穴口が下を向いて第1のステージ14に対して逆側の上方に第1の磁石11が配置される。この半回転と同時に、ピン挿入済みアレイ体2の下方に移載先基材3が配置されることが好ましい。移載先基材3は第2のステージ18に載置される。第2のステージ18の移載先基材3と逆側の裏面側には、第2の磁石12が第2の磁石ホルダー19によって配置されており、第2のシャフト20が第2の磁石ホルダー19に貫通して配置されている。変位機構21により、第2の磁石ホルダー19を第2のシャフト20の長手方向に移動させることができるように構成されている。
【0024】
STEP4の状態から、第2のステージ18と第2の磁石12の距離を縮めることにより、第2の磁石12の上方にあるピン挿入済みアレイ体2のピン1に対して第2の磁石12による磁界を影響させる。これと前後して、好ましくはピン挿入済みアレイ体2のピン1に対して第2の磁石12による磁界を及ぼさせた後に、図2Cに示すように、第1の磁石ホルダー16を第1のシャフト15の長手方向に即ち上方に移動させる。これより、ピン挿入済みアレイ体2のピン1に対して第1の磁石11による磁界の影響を弱め、第2の磁石12による磁界の影響を支配的にする。すると、ピン1がアレイ体2Bから脱離して挿入先基材3のピン挿入領域3Aに挿入される。
【0025】
第1の実施形態においては、第1の磁石11及び第2の磁石12の何れも永久磁石を採用し、それらの永久磁石が第1の磁石ホルダー16、第2の磁石ホルダー19にそれぞれ保持され、それぞれ対応する第1のシャフト15、第2のシャフト20に沿って変位機構21により上下動するように構成している。
【0026】
ここで、第1の磁石11、第2の磁石12は、ピン挿入済みアレイ体2の挿入部2Aに対して磁界が生じるように、及び/又は、移載先基材3のピン挿入領域3Aの軸方向に沿って又は軸方向の成分を有するような磁界が生じるように、一又は複数の磁性体により磁気回路が形成される。
【0027】
本発明の実施形態は、基本的な形態を説明したように、第1の磁石11とピン挿入済みアレイ体2、第2の磁石12と移載先基材3との距離を変化させることができればよく、第1のステージ14、第2のステージ18をそれぞれ上下動させるようにしてもよい。
【0028】
第1の磁石11、第2の磁石12の何れか一方又は双方は、一又は複数の電磁石であってもよく、複数の電磁石により、ピン挿入済みアレイ体2の挿入部2Aに対して磁界が生じるように、及び/又は、移載先基材3のピン挿入領域3Aの軸方向に沿って又は軸方向の成分を有するような磁界が生じるように、一又は複数の磁性体により磁気回路が形成される。
【0029】
[第2の実施形態]
本発明の具体的な実施形態として第2の実施形態を説明する。図3図4図5は、それぞれ本発明の第2の実施形態に係るピン移載装置を示す平面図、正面図、側面図である。図6図3のVI-VI線に沿う断面図、図7図3のVII-VII線に沿う断面図、図8図5における操作部及びその周囲を模式的に示す斜視図である。なお、図5では構成部材の一部、例えば回転シャフト107、固定用プレート108、支柱109を省略している。説明の便宜のため左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、高さ方向をZ軸方向としている。図3乃至図7に示すピン移載装置100は、図2に示すピン移載方法の各工程を具体的に行える一つの形態である。ピン移載装置100の構造について説明する。
【0030】
ピン移載装置100は、設置面に支持される台付きのベースプレート101上に、奥行側に左右で対をなす縦フレーム102が立設され、横フレーム103が左右の縦フレーム102の上端部の前側に架け渡されて固定されている。左右で対をなすポール104が横フレーム103の内側にベースプレート101に立設される。可動プレート105が、平面視において横フレーム103と部分的に重なるように、左右で対をなすポール104にそれぞれ軸受け部106を介在して取り付けられており、ポール104の長手方向に沿って上下動させることができる。回転シャフト107が左右で対をなすポール104の左右ほぼ中間に設けられる。固定用プレート108を支持するための左右で対をなす支柱109がベースプレート101に立設されており、回転シャフト107の下端部が固定用プレート108の左右中間に回転可能に支持され、回転シャフト107の上端部寄りで可動プレート105に対して軸受け部を介しさらに横フレーム103に対して摺動可能に又は非接触で経由して延びて設けられ、回転シャフト107の上端部にはハンドル110が装着されている。これにより、ハンドル110を平面視で時計まわり及び反時計まわりに回転することにより、回転シャフト107が回転し可動プレート105が上下動する。このように、回転シャフト107、可動プレート105、軸受け部により構成される上下動機構は、アーム112の対を上下動させて、第1のステージ114が上下動し、第1のステージ114と第2のステージ130との上下方向の距離を調整することができる。
【0031】
可動プレート105の中間部には、ブラケット111を介在して、左右で対をなすアーム112が前に向けて水平に取り付けられている。対をなすアーム112の前端部には回転機構としての反転機構113が取り付けられている。反転機構113の一部をなす保持部113Bの左右両側がアーム112の前端部に固定されている。反転機構113の一部をなす回転軸部113Aが左右方向に延びて軸受け113Cにより回転自在に保持部113Bに支持されている。回転軸部113Aの左右中間部において受容部113Dが固定されており、受容部113Dに対して第1のステージ114が締結部品113Eで固定されている。左右で対をなす第1のシャフト115の上端部が第1のステージ114に固定されている。第1のステージ114は、左右で対をなす第1のシャフト115の間に、第1の磁石ホルダー116が上下動自在に取り付けられている。
【0032】
第1の磁石ホルダー116は、左右の第1のシャフト115を貫通したプレート116Aと、プレート116A上面に第1の磁石としての永久磁石117を内蔵するケース116Bとで構成されている。ケース116B内にはプレート116Aに立設された支持部116Cが設けられ、支持部116Cにより永久磁石117が固定されている。プレート116Aには回転シャフト118がケース116Bの左右何れかの外側に軸受け部を介在して貫通している。左右で対をなす第1のシャフト115の下方先端には第1の連結バー120が架け渡されて取り付けられている。回転レバー121が回転シャフト118の第1の連結バー120よりも下端部に取り付けられ、回転レバー121を回転させることにより、回転シャフト118が回転して第1の磁石ホルダー116を上下動させることができる。ストッパー122が第1の連結バー120に当たると、第1の磁石ホルダー116の下降が制限され、第1の磁石ホルダー116がネジで第1のシャフト115に締結されて固定される。
【0033】
第1のステージ114には、ピン挿入済みアレイ体123を載置して固定するための第1の固定具124が取り付けられている。なお、図6に示されているように、第1のステージ114の略中央部は貫通しており、この貫通した領域114Aにケース116Bの上端部を挿入することができる。
【0034】
左右で対をなすアーム112の左右外側には、側面視で一端部125Aと他端部125Bとで略L字状をなす操作部125が回転軸部113Aの左右それぞれに取り付けられ、各操作部125を回転させることにより、回転軸部113Aが回転する。操作部125の奥行側において各アーム112の左右外側に支持部126が突出するように設けられており、一方の支持部126Aには上方に向けてストッパー127が立設され、他方の支持部126Bには下方に向けてストッパー127が立設されている。L字状の操作部125の一端部125Aが180度回転してストッパー127に当接するように、L字状の向きを調整してアーム112に取り付けられている。その際、左右で対をなすL字状の操作部125は、図5及び図8に示すように、一端部125Aが左側では奥行に延びており右側では手前に延びているが、左右何れも他端部125Bが下方に延びているように、取り付けられる。L字状の操作部125において、ストッパー127と当接しない他端部125Bには、左右外方向に向けて係合ピン128が取り付けられている。係合ピン128は、一端が可動プレート105に対して下方に延びるアタッチメント105aに固定された引っ張りバネ129の他端が取り付けられる。各操作部125は、係合ピン128により回転軸部113Aに対して引っ張りバネ129に抗して回転される。操作部125は図5に示されている状態では、左側のアーム112Bの下部にスライドプレート111Aが取り外し可能に固定されている。スライドプレート111Aが有する長孔に締結具111Cが挿入されて締め付けられており、操作部125の一端部125Aがストッパー127とスライドプレート111Aで上下に挟まれており、第1のステージ114、第1のシャフト115及び第1の磁石ホルダー116の自重によるモーメントによる回転を抑制している。操作部125を操作する際には、左側のアーム112Bとスライドプレート111Aとの締結具111C(図5参照)を緩め、図8に示す矢印の奥行方向、すなわち、可動プレート105側にスライドさせ、操作部125を引っ張りバネ129に抗して図8に示す側から見て反時計回りに回転させる。引っ張りバネ129の代わりに、エアシリンダー、油圧シリンダー、直動機構などの機械要素、電気モーターなどを用いてもよい。
【0035】
このように、第1のステージ114が回転軸部113Aを図5において時計回りに180度回転させることにより、第1のステージ114に載置されるピン挿入済みアレイ体123の穴口が上方から下向きに移行する。その際、右側のスライドプレート111Bを手前にスライドさせて右側の操作部125の一端部125Aをスライドプレート111Bとストッパー127によって上下で挟んで、スライドプレート111Bが有する長孔に締結具111C(図5参照)により締め付けて、操作部125が回転しないようにする。この状態において第1のステージ114の真下に第2のステージ130が配置されるように、第2のステージ130を支持する複数本のステージ脚131がベースプレート101に立設される。第2のステージ130についても第1のステージ114と同様に、前後で対をなす第2のシャフト132の上端部が第2のステージ130に固定されている。前後で対をなす第2のシャフト132の間には、第2の磁石ホルダー133が上下動自在に取り付けられている。
【0036】
第2の磁石ホルダー133は、前後の第2のシャフト132を貫通したプレート133Aと、プレート133A上面に第2の磁石としての永久磁石134を内蔵するケース133Bとで構成されている。ケース133B内にはプレート133Aに立設された支持部(図示せず)が設けられ、この支持部により永久磁石134が固定されている。左右で対をなす第2のシャフト132の下方先端には第2の連結バー135が取り付けられている。プレート133Aを上下動させることにより、永久磁石134を上下動させることができる。
【0037】
第2のステージ130には、移載先基材136を載置して固定するための第2の固定具137が取り付けられている。第2のステージ130についても、第1のステージ114と同様、略中央部は貫通しており、この貫通した領域にケース133Bの上端部を挿入することができる。第2のステージ130には左右方向、前後方向に位置決めのための位置決めユニット138が設けられている。
【0038】
本発明の第2の実施形態に係るピン移載装置100は、第1のステージ114、第2のステージ130、第1の磁石としての永久磁石117、第2の磁石としての永久磁石134及び反転機構113の回転軸部113A、保持部113B、軸受け113C、受容部113D、締結部品113Eの各構成部品を備え、永久磁石117が第1のステージ114の下側に第1のシャフト115及び第1の磁石ホルダー116を介在して上下動可能に設けられ、第1のステージ114が受容部113Dを介在して回転軸部113Aに固定され、回転軸部113Aを半回転させることにより、第1のステージ114と共に永久磁石117が反転される。永久磁石134が第2のステージ130の下側に第2のシャフト132を介在して上下動可能に設けられる。
【0039】
ピン移載装置100はこのような構成を有することにより、次のようにして、ピン挿入済みアレイ体123から移載先基材136に、多数のピンをほぼ同時に移載することができる。
【0040】
先ず、ピン挿入済みアレイ体123を準備し、第1のステージ114に永久磁石117とは逆側の面に配置する。回転レバー121を回転操作することにより第1の磁石ホルダー116を第1のステージ114に近づけて、永久磁石117による磁界をピン挿入済みアレイ体123に及ぼす。
【0041】
それと前後して、移載先基材136を準備し、第2のステージ130の永久磁石134と逆側の面である上面側に移載先基材136のピン挿入領域を上にして配置する。
【0042】
そして、操作部125を引っ張りバネ129に抗して180度回して回転軸部113Aを半回転させることにより、第1のステージ114と永久磁石117とが上下に逆になり、ピン挿入済みアレイ体123が移載先基材136に対向する。
【0043】
その後、ハンドル110を回転させることにより、可動プレート105と共に第1のステージ114を下げ、ピン挿入済みアレイ体123を降下させる。
【0044】
そして、第2の磁石ホルダー133を第2のシャフト132に沿って上昇させて永久磁石134による磁界をピン挿入済みアレイ体123のピンに及ぼした後に、回転レバー121を回転操作することにより第1の磁石ホルダー116を上昇させることで、第1のステージ114から永久磁石117を遠ざけることにより、ピン挿入済みアレイ体123のピンに対して永久磁石117による磁界を弱め、永久磁石134による磁界によりピン挿入済みアレイ体123から移載先基材136のピン挿入領域にピンを移載させることができる。
【0045】
ピン移載装置100においては、回転軸部113Aが左右のアーム112に軸受け113Cにより回転可能に支持されており、左右のアーム112よりも中間よりで受容部113Dが回転軸部113Aに締結部品113Eにより固定され、受容部113Dに第1のステージ114の一端部が固定されている。このように、第1のステージ114が回転軸部113Aの軸線に対して第1のステージ114の平面視中心線とずらして取り付けられている。よって、第1のステージ114を回転軸部113Aにより半回転することにより、第1のステージ114が第2のステージ130と対向し得るように、第1のステージ114と第2のステージ130との位置関係を設定することができる。したがって、第1のステージ114にピン挿入済みアレイ体123をセットし、第2のステージ130に移載先基材136をセットすることにより、簡易に、ピン挿入済みアレイ体123と移載先基材136を対向させることができる。
【0046】
また、第1のステージ114が第2のステージ130と対向する状態において、第1のステージ114が第2のステージ130の上方に配置されるため、第1のステージ114を第2のステージ130に向けて下降させ、第2のステージ130上の移載先基材136に対して第1のステージ114に保持されたピン挿入済みアレイ体123を移動させることができる。ピン挿入済みアレイ体123が、平面視において移載先基材136よりも小さい場合、特に、ピン移載の制御がしやすく、歩留まりがよい。
【0047】
以上説明したように、ピン移載装置100によれば、ピン挿入済みアレイ体123と移載先基材136とをそれぞれ準備し、ピン挿入済みアレイ体123の裏側に配置された永久磁石117と共にピン挿入済みアレイ体123を回転機構としての反転機構113でもって反転させることによりピン挿入済みアレイ体123と移載先基材136とを対向させ、移載先基材136を挟んでピン挿入済みアレイ体123と逆側に永久磁石134を配置させ、ピン挿入済みアレイ体123の挿入部に挿入されているピンに対して、永久磁石117による磁界を弱め、永久磁石134による磁界の影響を強めることにより、移載先基材136へ当該ピンを移載することができる。
【0048】
ピン移載装置100では、第1のステージ114及び永久磁石117を上下反転させるようにしている。本発明の実施形態では、これに限定されることなく、第1のステージを固定し、第2のステージと対応する永久磁石を上下反転させるようにしてもよい。その際には、第2のステージに反転機構を取り付ければよく、第1のステージに反転機構を取り付けた場合に対応させて必要により変更すればよい。この場合においても、第2のステージが回転軸部の軸線に対して第1のステージ114の平面視中心線とずらして取り付けられることが好ましい。第2のステージを回転軸部により半回転することにより、第2のステージが第1のステージと対向し得るからである。
【0049】
ピン移載装置100では、第1のステージ114が第2のステージ130と対向する状態において、第1のステージ114が第2のステージ130の上方に配置されるが、上下を逆にしてもよい。ピン移載装置100では、永久磁石117,134を採用しているが、一又は複数の電磁石に回路で電流を制御して流すことにより磁界を制御してもよい。また、永久磁石と電磁石を併用してもよい。
【0050】
[第3の実施形態]
図9は、本発明の第3の実施形態としてのピン移載装置の構成図を示す図である。ピン移載装置は、メカニカルな構造としては図2乃至図8を参照して説明したように各種の形態を採用することができる。図2乃至図8を参照して説明した以外に、回転機構としては、回転軸部113Aをモーターに接続することによりモーターで回転してもよく、その際、モーターと回転軸部113Aとの間にギアを介在させてもよい。また、直線的な動きを回転又は反転の動きに変換する機構を採用してもよい。ピン移載装置は、システム的には、図9のように構成することができる。ピン移載装置200において、第1の磁石、第2の磁石の少なくとも何れかに一又は複数の電磁石201を採用した場合に、その電磁石201に流す電流を制御するための回路202と、ピン挿入済みアレイ体203から移載先基材204に対してピンが移載されたかどうかを検出するための検査部205とを備える。
【0051】
検査部205は、ピンがアレイ体に対して残留しているか又はアレイ体から脱離した割合を求める。検査部205としては複数の方法が考えられ、アレイ体に対して電気的な計測を行い、導電率、誘電率を含む電気的なパラメータから、ピンの残留又は脱離の割合を算出することができる。また、ピン挿入済みアレイ体203としてのアレイ体の材料にもよるが、アレイ体に赤外線などの電磁波を照射することによりその透過波、反射波の何れか又は双方を検出し、その検出結果からピンの残留又は脱離の割合を算出することができる。
【0052】
第1乃至第3の実施形態では、例えば図2に示すように、ピン移載装置が、ピン1が配置されたアレイ体2Bを載置する第1のステージ14と、ピン1の移載先が設けられた移載先基材3を載置する第2のステージ18と、第1のステージ14に載置されたアレイ体2Bに対するピン1を保持するための保持機構としての第1の磁石11と、第1のステージ14と第2のステージ18の少なくとも何れかを回転させて第1のステージ14と第2のステージ18とを対向させる回転機構としての反転機構17と、を備え、回転機構としての反転機構17がアレイ体2Bと移載先基材3とを対向させて保持機構としての第1の磁石11によるピン1の保持を開放することにより、ピン1をアレイ体2Bから移載先基材3に移載する。
【0053】
第1のステージ14に対してアレイ体2Bと逆側に第1の磁石11が備えられ、第1の磁石11によりピン1に磁界を及ぼすことにより、ピン1をアレイ体2Bに保持させており、ピン1の磁界による保持を開放することにより、ピン1の自重によりピン1を落下させて、移載先基材3の移載先にピンを移すようにしてもよい。もちろん、前述したように、第2の磁石12による磁界をピン1に作用させて、移載先基材3の移載先にピンを移すようにしてもよい。
【0054】
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係るピン移載装置について説明する。図10は、第4の実施形態に係るピン移載装置の要部を示す図である。ピン1をアレイ体2Bに保持させる保持機構のバリエーションは次の通りである。第1のステージ14に保持機構としての吸引機構50を取り付け、吸引機構50によりピンを吸引することにより、ピン1をアレイ体2Bに保持させるように構成される。吸引機構50は、吸着ホルダー51、制御ユニット52、接続管としてのホース53、54及び真空ポンプ55などで構成される。図10に示すように、第1のステージ14には吸着ホルダー51が取り付けられており、吸着ホルダー51はピン1が挿入されたアレイ体2Bの受け部51aを備えており、吸着ホルダー51の貫通穴51bにつながるように受け部51aと逆側に空圧継手51cが設けられている。吸着ホルダー51には、貫通穴51bとアレイ体2Bの挿入部2Aのピン1よりも直径の小さな穴とつながる部屋51dが設けられている。吸着ホルダー51の空圧継手51cは制御ユニット52に接続管としてのホース53により接続されており、制御ユニット52は接続管としてのホース54により真空ポンプ55に接続されている。
【0055】
第1のステージ14は受け部51aを上方に向けた状態で、ピン1が挿入されたアレイ体2Bがセットされ、制御ユニット52を制御することにより部屋51d内を真空ポンプ55で排気することによりピン1がアレイ体2Bに吸着されている。この状態で、第1のステージ14を図示しない回転機構により反転させる、その際、ピン1はアレイ体2Bに保持されている。その後、第2、第3の実施形態と同様、必要により第2のステージ(図示しない)上の移載先基材3をアレイ体2Bに対向させた後に第1のステージ14と第2のステージとの距離を小さくし、制御ユニット52を制御することにより部屋51d内を真空ポンプ55で排気することを中止し、ピン1のアレイ体2Bへの真空保持を開放させてピン1の自重により落下させ移載先基材3の移載先にピンを移す。もちろん、前述した第1乃至第3の実施形態のように、第2の磁石による磁界をピン1に作用させて、移載先基材3の移載先にピンを移すようにしてもよい。
【0056】
[第5の実施形態]
第5の実施形態に係るピン移載装置について説明する。図11は、第5の実施形態に係るピン移載装置の要部を示す図である。ピン1をアレイ体2Bに保持させる保持機構のバリエーションは次の通りである。保持機構60が電極63の対を備えており、その電極63の対によりピン1に電界を及ぼすことにより構成されている。すなわち、電極63付きのベースプレート61が第1のステージ14に取り付けられ、電極63の対にはガラスなどの絶縁体62がカバーされており、シリコンなどで構成されたアレイ体64が絶縁体62に取り付けられている。アレイ体64の一の挿入部65に向けて、電極63aと電極63bの対が配置されている。一本のピン1が一の挿入部65に挿入され、一本のピン1に対して、電極63aと電極63bの何れか一方が+極、他方が-極となって、一本一本のピン1に電界を及ぼすことにより、ピン1のうち、+極の電極63aに対向する部分は負に帯電し、-極の電極63bに対向する部分は正に帯電することにより、電極36の対により、ピン1をアレイ体64に保持させている。ここで、隣り合う電極63は一つの電極で兼用されている。
【0057】
ピン1が挿入されたアレイ体64が第1のステージ14にセットされる。その際、電極63による電界によりピン1がアレイ体64に保持されている。その際、この状態で、第1のステージ14を図示しない回転機構により反転させる、その際、ピン1はアレイ体64に保持されている。その後、必要により第2のステージ(図示しない)上の移載先基材3をアレイ体64に対向させ、第1のステージ14と第2のステージとの距離を小さくして、電極63への印加電圧を制御することなどにより、ピン1のアレイ体64への静電保持を開放させ、ピン1の自重により落下させて、移載先基材3の移載先にピンを移す。もちろん、前述したように、前述した第1乃至第3の実施形態のように、第2の磁石による磁界をピン1に作用させて、移載先基材3の移載先にピンを移すようにしてもよい。
【0058】
第1乃至第3の実施形態において説明した回転機構、変位機構などは、第4の実施形態及び第5の実施形態において適宜用いられてよいことは説明するまでもない。
【0059】
アレイ体にピンを挿入する方法は、アレイ体の表面に多数のピンを投入して、アレイ体に縦振動、横振動などの振動を与えながらアレイ体を大きく揺動させてアレイ体の挿入部にピンを挿入させる第1の方法、アレイ体の底面側に磁石を配置してそれによる磁界によりアレイ体の挿入部にピンを挿入させる第2の方法、第1の方法と第2の方法の併用などがあるが、特に限定されるものではない。
【0060】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態として、ピンを移載先基材に移載して固定する方法について具体的に説明する。図12は、本発明の第6の実施形態に係る、ピンを移載先基材に移載して固定する方法の概略を示す図である。ピンを移載先基材に移載する方法については第1の実施形態及び第2の実施形態で説明したように、ピン1をアレイ体2Bに保持する機構が磁界の場合を例にとって説明する。第1の実施形態及び第2の実施形態において詳細に説明したように、次のステップにより行われる。図12では、移載先基材は図1とは異なり凹凸が可及的に少ない平面の平板である場合を例に示している。
【0061】
先ず、磁界により挙動するピン1が各挿入部2Aに挿入されたアレイ体2Bを用意する(STEP1)。アレイ体2Bは、移載元基材として、ピン挿入部2Aとしてのマイクロサイズの穴を有しており、平面視で矩形でも円形でもよい。アレイ体2Bは金属、半導体、ガラス等の絶縁体の何れで構成してもよいが、磁性材料で構成されない方が好ましい。効率的にピン1に磁界の効果を及ぼすためである。アレイ体2Bは挿入側の穴口が上方に向けられており、各穴にピン1が挿入されている。ピン1は、例えば円柱形状である。ピン1は、例えば直径1μm以上1000μm以下、長さ1μm以上1000μm以下のマイクロサイズを有している。そのため、穴はピン1の直径に対して1.02乃至1.3倍の直径を有する。穴は、ピン1の長さに対して0.5倍以上0.95倍以下の深さを有する有底穴である。ピン1の寸法に対して穴がこの範囲であれば、一本のピン1を一つの穴に挿入することができ、かつ、後述するように、ピン1を穴に挿入して移載先基材に押圧することができるからである。穴がアレイ体2Bの上下面に対して垂直に設けられている場合に限定されないこと、アレイ体2Bに対して同一又は同様な形状、寸法(特に深さ)の穴が設けられている必要がないことは、図1の場合と同様である。
【0062】
次に、第1の磁石11を、ピン1が移載元基材の穴に部分的に挿入されているピン挿入済みアレイ体2のピン1に作用するように配置し、ピン挿入済みアレイ体2を上下に反転させる。その際、ピン挿入済みアレイ体2のピン1に対して磁界が反転の前後で同一又は略同一となるように、第1の磁石11で生じる磁界の向きを必要に応じて調整しながら、ピン挿入済みアレイ体2を上下に反転させる。第1の磁石11として永久磁石が採用され、ピン挿入済みアレイ体2の挿入側の穴口が上方に向けられている場合、第1の磁石11がピン挿入済みアレイ体2の下方に配置される(STEP2)。図示するように、第1の磁石11をピン挿入済みアレイ体2に近づけたほうが制御しやすく歩留まりが高い。
【0063】
次に、第1の磁石11と共にピン挿入済みアレイ体2を上下に反転させる(STEP3)。これにより、挿入側の穴口が下方に向けられているが、ピン挿入済みアレイ体2の上方に第1の磁石11が配置され、永久磁石による磁界の効果によりピン1が穴口から抜け出さないため脱離しない。
【0064】
これらと前後して、ピンを配列したい基材を用意する。ここで、「基材」とは、半導体製造工程における前工程により複数の半導体素子が搭載されたウェハでも、ダイシングで最小単位に切断されたダイでも、よい。ダイの代わりにチップと呼ばれることもある。一つの基材、又は一つの基材に別の基材少なくとも一つが積層された状態でも、総称して「基材」と呼ぶことにする。Siウェハなどの半導体ウェハに前工程により作製された複数の半導体素子を少なくとも一つ備えてなる基材に対して、別の同様の基材を積層して、半導体素子同士、又は一方の半導体素子に対して外部配線をするために、一又は複数のピン挿入領域を有しているものであれば、それらを一体化させて基材と呼ぶことにする。ここで、基材は、ピン1を立てて設けられる領域(ピン移載先領域3C)が設けられている。
【0065】
なお、基材は、複数のピンの移載先としてピン移載先領域3Cが設けられた「移載先基材3」とも呼ぶことがあり、図面においては、半導体素子などの詳細は省略して示されている。複数のピンの移載先としては断面が凹部を有している場合のみならず、フラットであってもよい。そのような場合には、ピンのフラット面側には半田などの接着剤が設けられていることが好ましい。ピンの移載先のフラット面に、部分的に又は全面に接着剤が設けられていることが好ましい。これらにより、移載されたピンを立ったままとすることができる。
【0066】
次に、ピン挿入済みアレイ体2と移載先基材3とを対向させ、ピン挿入済みアレイ体2におけるピン1の先端が移載先基材3のピン移載先領域3Cと向かい合っている状態又はほぼ向かい合っている状態において、ピン挿入済みアレイ体2と移載先基材3との距離を小さくする。その際、ピン挿入済みアレイ体2が移載先基材3に対して近づくように移動させる場合には、第1の磁石11もピン挿入済みアレイ体2と共に移動させる(STEP4)。このとき、ピン1の下端が移載先基材3の上に立てて置かれてもよい。
【0067】
次に、第1の磁石11からの磁界が、ピン1に影響しないように制御する。第1の磁石11をピン挿入済みアレイ体2から遠ざければよい。すると、ピン挿入済みアレイ体2において、ピン1が第1の磁石11の磁界の影響を受けずに、各ピン1がアレイ体2Bから移載先基材3に移動し、各ピン1がピン移載先領域3Cに立てて置かれる(STEP5)。
【0068】
この一連の工程により、マイクロサイズを有する各ピン1が、移載元基材としてのアレイ体2Bの挿入部2Aから、移載元基材と対向する移載先基材3のピン移載先領域3C上に立てて置かれて移載される。この一連の工程により、複数の、特に多数のピン1を、同時に、ピン移載先領域3Cに立てて設けることができる。即ち、移載先基材3としてのウェハ、チップ、ダイに設けられたピン移載先領域3Cとして例えば金属パッドにピン1が立てて設けられる。この状態では、アレイ体2Bの挿入部2Aにピン1の少なくとも上部が部分的に挿入されている状態で、移載先基材3のピン移載先領域3Cに接して立てて設けられる。よって、複数のピン1ができるだけ短時間に配置されることができる。
【0069】
この一連の工程において、移載先基材3を準備する前に、移載先基材3としてのウェハ、チップ、ダイに設けられたピン移載先領域3Cに、半田などの固定剤をペースト3Bとして予め設けておき(STEP4参照)、前述の一連の工程の後、移載先基材3をその下に配置されている熱源13により昇温することによりペースト3Bが溶ける。この状態、即ち、そのペースト3Bの溶融状態と同時に又は前後して、移載元基材としてのアレイ体2Bは、各穴2Cにピン1の少なくとも上部が部分的に挿入されてピン1を介在してガイドしながら移載先基材3に押圧する(STEP6)。すると、溶融した半田などの固定剤からなるペースト3Bが溶融しても、ピン1の位置が可及的にずれることなく、溶融したペースト3Bがピン1の移載先基材側に装着し、加熱を止めて必要により冷却して、固定剤が固化することによりピン1を移載先基材3に固定することができる。ピン1とピン移載先領域3Cとの間において溶けた固定剤は、その間から周囲に広がり、ピン1の移載先基材側に装着されることが考えられるが、ピン1と移載先基材との間に部分的に残存してもよい。その後、アレイ体2Bと移載先基材3との距離を相対的に長くするように、例えばアレイ体2Bを上方に移動する。ここで、移載元基材としてのアレイ体2Bが少なくとも挿入部2Aの穴の深さ方向に弾性変形し得る場合には、移載元基材のピン1への加圧により移載元基材が弾性変形し、ピン1の長さのバラつきによる誤差を吸収することができる。「移載元基材が弾性変形し得る」とは、ピン1の長さのバラつきによる誤差を吸収するという意味に解釈されなければならない。ここでの弾性には柔軟性の意味を含む。
【0070】
このように、先ず、マイクロサイズを有するピン1を、当該ピン1をそれぞれ挿入するためのマイクロサイズの穴を有する移載元基材としてのアレイ体2Bと対向する移載先基材3の上に立てて置く。次に、穴に部分的に挿入されているピン1を移載元基材3でガイドしながら加圧してピン1を移載先基材3に押圧すると同時に又はそれと前後して固定剤としてのペースト3Bを溶融する。これにより、溶融した固定剤がピン1の移載先基材側に装着され、ピン1の位置ずれを可及的に防止し、固定剤が空冷などの冷却により固化してピン1が移載先基材3に固定される。
【0071】
また、第6の実施形態によるピン固定方法によれば、ピン1の位置ずれだけでなく、ピン1の高さ及び傾きを既定の範囲内とすることができる。例えば、直径0.3mm,高さ0.43mmのピン1において、直径0.33mm、深さ0.35mmの穴を有するアレイ体2Bでガイドして移載先基材3に押圧することにより、ピン1の位置ずれを0.034mm以内とし、ピン1同士の高さずれを0.0098mm以内とし、ピン1の傾きを水平から3°以内とすることができる。
【0072】
図12のSTEP4からSTEP5の間において、必要に応じて、移載先基材3に対してピン挿入済みアレイ体2と反対側に第2の磁石(図12に示さず。図1のSTEP5を参照)を配置する。その際、第2の磁石を、ピン挿入済みアレイ体2のピン1に作用するよう配置する。第2の磁石は、第1の磁石と同様な構成でも異なる構成でもよい。例えば、第2の磁石12として永久磁石が採用される場合には、第2の磁石12が移載先基材3の下方に配置される。その後、第2の磁石を移載先基材3の裏側から遠ざけ、ペーストを溶融してもよい。
【0073】
ここで、ピン1をアレイ体2Bで保持させる機構は、第1の磁石11の永久磁石や電磁石による磁界、吸引機構50、電極による電界による保持機構60の何れかでもよい。すなわち、本発明の第6の実施形態に係るピン固定方法は、先ず、複数のマイクロサイズの穴を有する移載元基材としてのアレイ体2Bの穴のそれぞれに、マイクロサイズのピン1を挿入し、ピン1の一部が穴から突出している状態において、移載元基材にピン1を磁界、電界又は吸引により保持させて、移載元基材を反転して移載先基材3と対向させる。次に、移載元基材へのピン1の保持を開放することにより、ピン1を移載先基材3の上に立てて置く。そして、穴に部分的に挿入されているピン1を移載元基材でガイドしながら加圧してピン1を移載先基材3に押圧すると同時に又はそれと前後して固定剤を溶融する。これにより、溶融した固定剤がピン1の移載先基材3側に装着され、ピン1の位置ずれを可及的に防止し、固定剤が空冷などの冷却により固化してピン1が移載先基材3に固定される。
【0074】
また、このようなピン固定方法を実施に際して使用されるピン固定装置は、ピン移載装置において第2の磁石12を用いないで構成することができる。即ち、ピン固定装置は、マイクロサイズを有するピンがそれぞれマイクロサイズの穴に挿入された移載元基材を載置する第1のステージと、複数のピンの移載先が設けられた移載先基材を載置する第2のステージと、第1のステージに載置された移載元基材に対してピンを保持するための保持機構と、第1のステージと第2のステージの少なくとも何れかを回転させて第1のステージと第2のステージとを対向させる回転機構と、第1のステージ、第2のステージの何れかを上下動させる上下動機構と、熱源とを備える。回転機構が移載元基材と移載先基材とを対向させて保持機構によるピンの保持を開放することにより、ピンを移載元基材から移載先基材の上に立てて置く。次に、熱源により固定剤を溶融すると同時に又はそれと前後して上下動機構により移載元基材を介在してピンを移載先基材に対して押圧することにより、溶融した固定剤をピンの移載先基材側に装着する。これにより、ピンが移載先基材に固定される。
【0075】
特に、保持機構として磁石を採用した構成においては、ピン固定装置は、マイクロサイズを有するピンがそれぞれマイクロサイズの穴に挿入された移載元基材を載置する第1のステージと、複数のピンの移載先が設けられた移載先基材を載置する第2のステージと、第1のステージの移載元基材を載置する面と逆側に設けられた磁石と、第1のステージ、第2のステージの何れかの一端部に対して回転軸部が取り付けられ第1のステージと第2のステージとを対向させる回転機構と、第1のステージ、第2のステージの何れかを上下動させる上下動機構と、熱源とを備える。先ず、移載元基材を第1のステージに載置すると共に、移載先基材を第2のステージに載置した後に、磁石により移載元基材の穴にピンをそれぞれ保持しながら回転機構により第1のステージを上下反転させて移載先基材の上に移載元基材を対向させ、移載先基材と移載元基材との距離を短くし、磁石を第1のステージから遠ざけることにより移載先基材の上にピンを立てて置く。次に、穴に部分的に挿入されているピンをアレイ体でガイドしながら上下動機構により加圧してピンを移載先基材に押圧すると同時に又はそれと前後して熱源により固定剤を溶解することにより、溶融した固定剤をピンの移載先基材側外周に装着する。これにより、ピンが前記移載先基材に固定される。
【0076】
図13は、本発明の第6の実施形態によるピン固定方法で作製される、ピンが固定された基材を模式的に示す断面図である。図13に示すように、ピンが固定された基材70は、平面71aを有する基材71と、マイクロサイズを有して基材71の上に設けられた複数のピン72と、複数のピン72の基材側の周囲にそれぞれ設けられた固定部73と、を有する。ピン72は、例えば直径1μm以上1000μm以下、長さ1μm以上1000μm以下のマイクロサイズを有している。基材71は、半導体製造工程における前工程により複数の半導体素子が搭載されたウェハでも、ダイシングで最小単位に切断されたダイでも、よい。ダイの代わりにチップと呼ばれることもある。一つの基材、又は一つの基材に別の基材少なくとも一つが積層された状態でも、総称して「基材」と呼ぶことにする。また、基材71は、図示しない一又は複数の配線部を有しており、当該配線部上にピン72が立てて設けられる。
【0077】
固定部73は、半田、熱硬化性樹脂、接着剤の何れかからなる。固定部73が半田からなる場合、図12に示すプロセスにより、ペースト3Bが溶けることで半田フィレットとして形成される。固定部73が熱硬化性樹脂や接着剤の場合には、半田のようにペースト3Bのように設けてもよいし、移載先基材3のピン移載先領域3Cが設けられている区域の左右前後から溶融したものを流し込むことにより、形成してもよい。固定部73が非導電性の場合には、図13に示すようにピン72の基材71側のみに基材71が部分的に露出するように設けられてもよいし、ピン72同士の隙間に設けられてもよい。
【0078】
図12のSTEP3において、ピン挿入済みアレイ体2を反転させた状態において、アレイ体2Bの穴から下に突出しているピン1の下部に対して、親水性の液体を塗布しておくことにより、溶融した固定剤がピン1の上部まで上ってこないようにすることができる。
【0079】
[第7の実施形態]
第6の実施形態では、磁石11と移載元基材としてのアレイ体2Bとの間には空間を有する場合であるが、図12のSTEP3の状態において、アレイ体2Bの裏面(上面)と磁石11との間の隙間がなく、アレイ体2Bの裏面(上面)を磁石11で押圧するようにしてもよい。図14は、本発明の第7の実施形態に係る、ピンを移載先基材に移載して固定する方法の概略を示す図である。複数のマイクロサイズの穴を有する移載元基材の穴のそれぞれに、マイクロサイズのピン1が挿入され、ピン1の一部が穴から突出している状態において、移載元基材にピン1を磁界により保持させて、移載元基材を反転して移載先基材3と対向させて、ピン1を移載先基材3の上に立てて置く。STEP1乃至STEP3の工程は、図13に示す場合と同様であるが、少なくともSTEP4の段階においてアレイ体2Bと磁石11との間の隙間がない。穴に部分的に挿入されているピン1に対して移載元基材を押圧手段で加圧することにより押圧手段が弾性変形しながら、ピンが移載先基材に押し付けられると同時に又はそれと前後して固定剤を溶融することにより、溶融した固定剤を前記ピンの移載先基材3側に装着してピン1を移載先基材3に固定する(STEP5)。STEP5でのFは磁石11を加圧する力を意味する。ここで、押圧手段とは、第2実施形態のようにハンドル110の回転により可動プレート105と共に第1のステージ114が下がることによるものであっても、磁石11そのものであってアレイ体2Bを移載先基材3側に押圧するものでもよいし、磁石11とアレイ体2Bとの間に挿入されたものであってアレイ体2Bを移載先基材3側に押圧するものであればよい。その際の押圧手段については各種のものが採用される。このような押圧手段として、磁石11そのもの、又は上述の挿入されたものが、上下方向の力に弾性変形することにより、ピン1の長さのバラつきによる誤差を吸収することができる。「押圧手段が弾性変形」するとは、ピン1の長さのバラつきによる誤差を吸収するという意味に解釈されなければならない。磁石11の下面が剛体ではなく弾性を有していればよい。ここでの弾性には柔軟性の意味を含む。また、アレイ体2Bが少なくとも挿入部2Aの穴の深さ方向に弾性変形し得る場合には、移載元基材のピン1への加圧により移載元基材が弾性変形し、ピン1の長さのバラつきによる誤差を吸収することができる。「移載元基材が弾性変形し得る」とは、ピン1の長さのバラつきによる誤差を吸収するという意味に解釈されなければならない。ここでの弾性には柔軟性の意味を含む。
【0080】
[検証例]
本発明の第6の実施形態に係るピン固定方法について検証した。図15は、検証に使用したパターンを模式的に平面図である。検証に使用したピン配列パターンは、図15に示すように、平面視で、中央部に縦5個×横5個の合計25個の配列パターンP1を有して、その中央部を取り囲むように縦13個、横13個の方形状の配列パターンP2、その外側に、縦15個、横15個の方形状の配列パターンP3を有する。図16は、ピンの移載からリフローを経て固定される間に使用される、アレイ体2B、ピン1及び移載先基材3を模式的に示す図である。図16に示すように、アレイ体2Bは、直径0.33mm、深さ0.35mmの円筒状の穴2Cを有する。ピン1は、直径0.3mm、高さ0.43mmの円柱形状を有する。検証の際には、第2の実施形態で説明したピン移載装置100を用いた。
【0081】
何れの検証例においても次のようにピンを移載した。その際、図3乃至図8に示すピン移載装置をピン固定装置として用いた。第6の実施形態で説明したように、先ず、ピン1をアレイ体2Bに整列し、移載元基材(ピン配列済みアレイ体2)とし第1のステージ114にセットした。移載先基材3として半田ペーストを均一に塗布した銅板を使用して第2のステージ130にセットした。反転機構113により、ピン配列済みアレイ体2を永久磁石117と反転し、ピン配列済みアレイ体2を移載先基材3の上方に配置した。そして、ハンドル110の回転により、ピン配列済みアレイ体2を移載先基材3に近づけ、ハンドル110の回転を止めて、アレイ体2Bから移載先基材3にピン1を立てて置くことにより移載した。なお、移載先基材3の下側に永久磁石117を近づけるなどしてピン1に磁界を及ぼすことはしなかった。
【0082】
ピン1の移載後、ピン1を固定するために、第1の検証例では、ピン1の上部をアレイ体2Bの穴に挿入した状態で、ハンドル110を回転させてアレイ体2Bがピン1を介在して移載先基材3に押圧しつつ、移載先基材3の下側からバーナーの熱源13により、半田ペーストを溶かした。その後、ハンドル110を逆に回転させて、アレイ体2Bを移載先基材3から遠ざけて、反転機構113により反転させて元の状態に戻した。
【0083】
第2の検証例では、ピンの移載後ピンを固定するために、ピン1の上部をアレイ体2Bの穴に挿入した状態のまま、移載先基材3の下側からバーナーの熱源13により、半田ペーストを溶かした。その後、ハンドル110を逆に回転させて、アレイ体2Bを移載先基材3から遠ざけて、反転機構113により反転させて元の状態に戻した。つまり、第2の検証例では、半田ペーストを溶かすと同時に又はその前後において、ハンドル110を回転しておらずアレイ体2Bがピン1を介在して移載先基材3に押圧していない。
【0084】
第3の検証例では、ピンの移載後のピンの固定方法として、アレイ体2Bを移載先基材3から遠ざけて、反転機構113により反転させて元の状態に戻し、その後、移載先基材3の下側からバーナーの熱源13により、半田ペーストを溶かした。つまり、第3の検証例では、半田ペーストを溶かすと同時に又はその前後において、アレイ体2Bによりピン1がガイドされておらず、かつ、ハンドル110を回転しておらず、アレイ体2Bがピン1を介在して移載先基材3に押圧していない。
【0085】
第1乃至第3の検証例について、先ず、ピンの位置ずれを測定した。ピンの移載先基材を上方から撮影し、その画像データをCADデータ上で読み込んで、縦13個、横13個の方形状の配列パターン、その外側の縦15個、横15個の方形状の配列パターンの部分を用いて、縦横の両端の中心を通るように線を引いてそこからのズレを測定した。
【0086】
ピンの位置ズレについては、第1の検証例では最大レンジで0.034mmのズレであり、第2の検証例では最大レンジ0.059mmのズレであり、第3の検証例では最大レンジで0.238mmのズレであった。第3の検証例での値は測定できるところでの値であり、これ以上の位置ズレをしていた。
【0087】
第1の検証例、第2の検証例でのピンの位置ズレが、第3の検証例のそれよりも一桁小さいことから、第1の検証例、第2の検証例のように、アレイ体2Bの穴2Cをピン1のガイドとして用いること、さらに好ましくは、アレイ体2Bを移載先基材3にピン1を介在して加圧して押し当てることが有効であることが分かった。
【0088】
第1乃至第3の検証例の結果について、中央部に5×5の合計25個の配列パターンを用いてレーザー顕微鏡により三次元画像データを取得し、そのデータから断面形状を観察し、ピンの高さとピンの傾きを測定した。
【0089】
図17は、三次元画像データからの断面形状を用いてピンの高さ及び傾きの求め方を模式的に示す図である。ピンの高さについては、図17に示すように、断面波形Waveから、基準となる面(銅板)の断面を基準面Base Lineとして、そこから0.3mmの直径のピンの対応する隣り合う部分(二点鎖線)を取り出して線L1、L2を引き、基準面Base Lineから線L1、L2の長さをそれぞれのピンの高さとして測定した。ピンの傾きについては、同じ断面波形Waveから基準面Base Lineを基準としたときの0.3mmの直径のピンの対応する部分(二点鎖線)を取り出して線L1、L2を引き、基準面Base Lineに対する線L1、L2のなす角をそれぞれのピンの傾きとして測定した。
【0090】
【表1】
【0091】
表1は、第1乃至第3の検証例についてピンの高さとピンの傾きの測定結果をまとめたテーブルである。n数の単位は個であり、最大値、平均値、最小値、標準偏差、レンジの単位は、ピンの高さではμm、ピンの傾斜角では°(度)である。ピンの高さ、ピンの傾斜角の何れについても、第3の検証例、第2の検証例、第1の検証例になるに従い、標準偏差、変動係数、レンジの何れについても小さくなった。
【0092】
図18Aは第1の検証例でのピンの高さのヒストグラムであり、図18Bは第2の検証例でのピンの高さのヒストグラムであり、図18Cは第3の検証例でのピンの高さのヒストグラムである。ピンの高さのヒストグラムを比較すると、第3の検証例、第2の検証例、第1の検証例になるに従い、分散が小さくなっていることが分かった。
【0093】
図19Aは第1の検証例でのピンの傾きのヒストグラムであり、図19Bは第2の検証例でのピンの傾きのヒストグラムであり、図19Cは第3の検証例でのピンの傾きのヒストグラムである。ピンの傾きのヒストグラムを比較すると、第3の検証例、第2の検証例、第1の検証例になるに従い、分散が小さくなっていることが分かった。
【0094】
第1の検証例と第3の検証例についてのピンの高さに関して、F検定を行った。F値は8.016であった。99%信頼区間で有意差有りとの結果を得た。
【0095】
第1の検証例と第3の検証例についてのピンの傾斜角に関して、F検定を行った。F値は2.536であった。95%信頼区間で有意差有りとの結果を得た。
【0096】
以上の検証結果から、半田を加熱すると同時に又はそれと前後してピンをアレイ体によりガイドして、アレイ体の穴にピンの上部を挿入して、ピンを介在してアレイ体により移載先基材に押し当てておくことが有効であることが分かった。
【符号の説明】
【0097】
1 ピン
2 ピン挿入済みアレイ体
2A 挿入部
2B アレイ体
2C 穴
3 移載先基材
3A ピン挿入領域
3B ペースト
3C ピン移載領域
11 第1の磁石
12 第2の磁石
13 熱源
14 第1のステージ
16 第1の磁石ホルダー
15 第1のシャフト
17A 回転軸部
17 反転機構
18 第2のステージ
19 第2の磁石ホルダー
20 第2のシャフト
21 変位機構
50 保持機構としての吸引機構
51 吸着ホルダー
52 制御ユニット
53,54 接続管としてのホース
55 真空ポンプ
51a 受け部
51b 貫通穴
51c 空圧継手
51d 部屋
60 保持機構
61 ベースプレート
62 絶縁体
63,63a,63b 電極
64 アレイ体
65 挿入部
70 ピンが固定された基材
71 基材
72 ピン
73 固定部
100 ピン移載装置
101 ベースプレート
102 縦フレーム
103 横フレーム
104 ポール
105 可動プレート
105a アタッチメント
106 軸受け部
107 回転シャフト
108 固定用プレート
109 支柱
110 ハンドル
111 ブラケット
111A,111B スライドプレート
111C,111D 締結具
112(112A,112B) アーム
113 回転機構としての反転機構
113A 回転軸部
113B 保持部
113C 軸受け
113D 受容部
113D 締結部品
114 第1のステージ
115 第1のシャフト
116 第1の磁石ホルダー
116A プレート
116B ケース
116C 支持部
117 永久磁石
118 回転シャフト
120 第1の連結バー
121 回転レバー
122 ストッパー
123 ピン挿入済みアレイ体
124 第1の固定具
125 操作部
125A 操作部の一端部
125B 操作部の他端部
126,126A,126B 支持部
127 ストッパー
128 係合ピン
129 引っ張りバネ
130 第2のステージ
131 ステージ脚
132 第2のシャフト
133 第2の磁石ホルダー
133A プレート
133B ケース
134 永久磁石
135 第2の連結バー
136 移載先基材
137 第2の固定具
138 位置決めユニット

図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C