(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】複合体
(51)【国際特許分類】
C07D 213/54 20060101AFI20221219BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20221219BHJP
C07K 14/765 20060101ALI20221219BHJP
C07K 14/77 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C07D213/54
A61K47/64
C07K14/765
C07K14/77
(21)【出願番号】P 2018054389
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2021-03-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 「研究題目名:エラスチン架橋アミノ酸誘導体の効率的な化学合成方法の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】臼杵 豊展
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-005962(JP,A)
【文献】特開平07-079794(JP,A)
【文献】特表2003-503737(JP,A)
【文献】特開2015-178957(JP,A)
【文献】Connective Tissue Research,1980年,7 (4),263-267
【文献】日本胸部疾患学会雑誌,1989年,27 (12),1502-1508
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デスモシンが、前記デスモシンのピリジン環の4位の側鎖末端において、連結基を介してタンパク質に結合している、複合体であって、
当該複合体が下記一般式(1)に示される、複合体。
【化1】
(上記一般式(1)中、L1は連結基であり、P1-は、キャリアタンパク質であるP1由来の1価の基であり、nは平均値であり、0より大きく100以下の数である。連結基L1は、-CO(CH
2)
x-、-(-CH
2-CH
2-O-)
z-、または、下記式に示される基、あるいは、下記式40および41に記載の化合物ならびにトリアジン系の縮合剤からなる群から選択される縮合剤由来の基である。xは1以上10以下の整数である。zは1以上30以下の数である。)
【化2】
(上記式中、*は結合手を示す。)
【化3】
【請求項2】
当該複合体が下記一般式(3)に示される、請求項1に記載の複合体。
【化4】
(上記一般式(3)中、P2-NH-は、キャリアタンパク質であるP2-NH
2由来の1価の基であり、mは平均値であり、0より大きく100以下の数であり、yは2以上15以下の整数である。)
【請求項3】
前記キャリアタンパク質が、牛血清アルブミン、スカシガイヘモ
シアニンおよびオブアルブミンからなる群から選択される1種である、請求項1または2に記載の複合体。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか1項に記載の複合体を製造する方法であって、
デスモシンの4位の側鎖に、反応性基が選択的に導入されたデスモシン類誘導体を準備する工程と、
前記デスモシン類誘導体とタンパク質またはその誘導体とを接触させて、前記複合体を形成する工程と、
を含む、複合体の製造方法。
【請求項5】
前記デスモシン類誘導体が下記一般式(4)に示される化合物である、請求項4に記載の複合体の製造方法。
【化5】
(上記一般式(4)中、yは2以上15以下の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)は、肺気腫と慢性気管支炎が合併した症状の総称であり、気流閉塞を特徴とする疾患である。この気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変(肺胞壁の破壊)が様々な割合で複合的に作用することで起こる。
【0003】
COPD患者の痰・血液・尿を加水分解処理し、高速液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(Liquid Chromatography-Tandem Mass Spectrometry:LC-MS/MS)で分析すると、肺胞の伸縮を司る弾性線維エラスチンの架橋アミノ酸であり下記式に示されるデスモシンおよびその異性体であり下記式に示されるイソデスモシンが観測される。健常者と比べて、COPD患者におけるそれらの存在量が異なることから、デスモシン類はCOPDのバイオマーカーとして有望視されている。
【0004】
【0005】
一方、デスモシン類の定量法として、HPLCを用いた定量法の他に、酵素免疫測定法等の免疫化学的な手法が考えられるが、デスモシン類は、ハプテンであり、それ自体は免疫原性を有さない。そこで、非特許文献1において、デスモシン類とキャリアタンパク質との結合が検討されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Verplanke, A. J W.他4名、「Experience with an Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay for the Quantitation of Urinary Desmosine」, Tokai J. Exp. Clin. Med., 1988年, 13, p.159-163
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、非特許文献1においては、デスモシンとタンパク質を結合しようとした際に、デスモシンが4個のアミノ基とカルボキシ基を有しているため、デスモシンがタンパク質に多点で結合した種々の結合体が生じてしまい、抗体を安定的に作製できなかった。
【0008】
そこで、本発明は、デスモシン類の簡便な定量法に用いることができる物質を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、
デスモシンが、前記デスモシンのピリジン環の4位の側鎖末端において、直接または連結基を介してタンパク質に結合している、複合体が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、デスモシン類の簡便な定量法に用いることができる物質を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を具体例に基づいて説明する。複数の実施形態に記載の態様を組み合わせて用いることもできる。
【0012】
本実施形態において、複合体は、デスモシンが直接または連結基を介してタンパク質に結合した構造を有する。具体的には、本実施形態における複合体は、デスモシンが、デスモシンのピリジン環の4位の側鎖において、たとえばピリジン環の4位の側鎖末端において、直接または連結基を介してタンパク質に結合しているものである。
【0013】
本実施形態の複合体は、デスモシンが、デスモシンのピリジン環の4位の側鎖末端においてタンパク質に結合した構造であるため、デスモシン類がタンパク質に安定的に固定化されており、デスモシン類の簡便な定量法に用いることができる。たとえば、本実施形態における複合体を用いることにより、酵素免疫測定法等の免疫化学的な方法によるデスモシン類の検出または定量が可能となる。また、本実施形態における複合体を用いることにより、たとえば、抗デスモシン抗体を得ることも可能となる。
複合体を用いた抗体の製造および抗体を用いるデスモシン類の分析を安定的におこなう観点から、デスモシン1分子中のタンパク質との結合部位の数は、好ましくは1つである。
【0014】
複合体において、デスモシンのタンパク質との結合部位として、たとえばアミノ基およびカルボキシル基からなる群から選択される1種が挙げられる。
好ましくは、デスモシンは、デスモシンのピリジン環の4位の側鎖末端のアミノ基においてタンパク質に結合している。
【0015】
また、複合体中のタンパク質(以下、「キャリアタンパク質」ともよぶ。)の具体例として、牛血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA)、スカシガイヘモシアニン(Keyhole Limpet Hemocyanin:KLH)、オブアルブミン(Ovalbumin:OVA)、チログロブリン、フィブリノーゲンからなる群から選択される1種が挙げられる。複合体を安定的に形成する観点から、キャリアタンパク質は、好ましくはBSA、KLHおよびOVAからなる群から選択される1種であり、より好ましくはBSAおよびKLHからからなる群から選択される1種である。
【0016】
本実施形態における複合体は、好ましくはデスモシンとキャリアタンパク質P1とが直接または連結基を介して結合してなる。このとき、複合体は、たとえば下記一般式(1)または(2)に示される。
【0017】
【0018】
【0019】
上記一般式(1)および(2)中、P1-は、キャリアタンパク質であるP1由来の1価の基であり、nは平均値であり、0より大きく100以下の数である。
また、上記一般式(1)中、L1は単結合または連結基である。上記一般式(2)中、L2は単結合または連結基である。
【0020】
一般式(1)において、L1が連結基であるとき、連結基L1は、具体的には2価の基である。また、連結基L1の具体例として、-CO(CH2)x-L2-、-CO(CH2)x-、-(-CH2-CH2-O-)z-、または、下記式に示される基が挙げられる。上記連結基の具体例において、xは1以上の整数である。デスモシンとタンパク質との間に適度な空間を得る観点から、xは好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、また、好ましくは10以下であり、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、さらにより好ましくは5以下である。また、上記連結基の具体例において、zは1以上30以下の数である。
【0021】
【0022】
(上記式中、*は結合手を示す。)
【0023】
連結基L1は、縮合剤由来の構造を含んでいてもよい。縮合剤の例として、下記式40および41に記載の化合物が挙げられ、これらのいずれかを用いることができる。
【0024】
【0025】
また、他の縮合剤の具体例として、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルフォリニウムクロリドn-ハイドレート(DMT-MM)等のトリアジン系の縮合剤;ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)等のカルボジイミド系の縮合剤が挙げられる。
【0026】
また、連結基L1は、スペーサーとして機能する構造を含んでいてもよい。スペーサーの具体例として、アルキル鎖、エチレングリコール鎖が挙げられる。
【0027】
また、一般式(2)において、L2が連結基であるとき、連結基L2は、具体的には2価の基である。また、連結基L2の具体例として、ペプチド鎖が挙げられる。
【0028】
一般式(1)および(2)において、P1-は、キャリアタンパク質であるP1由来の1価の基である。P1-の具体例として、P1中のアミノ基由来の基、P1中のカルボキシル基由来の基が挙げられる。複合体の製造容易性を高める観点から、P1-は、好ましくはP1中のアミノ基由来の基、または、P1中のカルボキシル基由来の基であり、より好ましくはP1中のアミノ基由来の基である。
【0029】
一般式(1)および(2)において、nは、1つの複合体中に導入されているデスモシンの数を示し、平均値である。複合体中のデスモシンの固定化密度を高める観点から、nは0より大きい数であり、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、さらにより好ましくは4以上である。
また、複合体の製造安定性を高める観点から、nは、たとえば100以下であり、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下、さらにより好ましくは10以下である。
【0030】
また、本実施形態における複合体は、デスモシン類の側鎖末端のアミノ基と、キャリアタンパク質中のアミノ基とが結合する構造であってもよい。このとき、複合体は、たとえば下記一般式(3)に示される。
【0031】
【0032】
(上記一般式(3)中、P2-NH-は、キャリアタンパク質であるP2-NH2由来の1価の基であり、mは平均値であり、0より大きく100以下の数であり、yは2以上15以下の整数である。)
【0033】
一般式(3)において、キャリアタンパク質P2-NH2は、リシン残基またはN末端に存在するアミノ基において、デスモシンと結合している。
【0034】
一般式(3)において、mは、1つの複合体中に導入されているデスモシンの数を示し、平均値である。複合体中のデスモシンの固定化密度を高める観点から、mは0より大きい数であり、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、さらにより好ましくは4以上である。
また、複合体の製造安定性を高める観点から、mは、たとえば100以下であり、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下、さらにより好ましくは10以下である。
【0035】
また、一般式(3)において、yは、キャリアタンパク質とデスモシンとの間に適度な空間を得る観点から、たとえば2以上であり、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、また、たとえば15以下であり、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下、さらにより好ましくは6以下である。
【0036】
次に、本実施形態における複合体の製造方法を説明する。
本実施形態において、複合体の製造方法は、たとえば、デスモシン類の側鎖末端のアミノ基とタンパク質とを直接または連結基を介して結合させて、複合体を得る工程を含む。
さらに具体的には、複合体の製造方法は、以下の工程を含む。
(工程1)デスモシンの4位の側鎖に、反応性基が選択的に導入されたデスモシン類誘導体を準備する工程
(工程2)デスモシン類誘導体とタンパク質またはその誘導体とを接触させて、複合体を形成する工程
【0037】
工程1においては、デスモシン類誘導体を準備する。デスモシン類誘導体を合成する場合、たとえば、特開2015-178957号公報に記載の方法を用いて得ることができる。
ここで、デスモシンの4位の側鎖においてタンパク質と選択的に結合させる観点から、デスモシン類誘導体は、好ましくは、デスモシンの4位の側鎖に、反応性基が選択的に導入された化合物である。
反応性基の具体例として、マレイミド基が挙げられる。複合体を安定的に得る観点から、反応性基は、好ましくはマレイミド基である。
たとえば、デスモシンの4位側鎖のアミノ基に反応性基が選択的に導入されたデスモシン誘導体の例として、下記一般式(4)に示される化合物が挙げられる。
【0038】
【0039】
(上記一般式(4)中、yは、前述した一般式(3)におけるyと同じである。)
一般式(4)において、yの好ましい範囲は、一般式(3)において前述した範囲と同じである。
【0040】
また、デスモシンの4位の側鎖に反応性基が選択的に導入されたデスモシン類誘導体は、たとえば、デスモシンの4位の側鎖の所定の基を前述した縮合剤と反応させることにより得ることもできる。また、デスモシンの4位の側鎖に、前述したスペーサーを介して反応性基が結合していてもよい。
【0041】
工程2においては、デスモシン類とタンパク質またはその誘導体とを接触させて、タンパク質にデスモシン類を導入することにより、複合体を得る。
タンパク質誘導体の例として、たとえば、タンパク質に、工程1で得られるデスモシン類誘導体における反応性基と反応する基が導入されたものが挙げられる。
たとえば、デスモシン類誘導体における反応性基がマレイミド基である場合、タンパク質中の1級アミノ基をチオール化し、このチオール基とマレイミド基とを反応させて複合体を形成してもよい。1級アミノ基のチオール化の例として、タンパク質と、2-イミノチオラン塩酸塩(Traut's試薬)との反応が挙げられる。
【0042】
なお、固定化の際には、必要に応じて、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、p-ニトロフェノール、ペンタフルオロフェノール等の活性エステル類を併用してもよい。
【0043】
以上の手順により、複合体が得られる。得られた複合体においては、デスモシン類がタンパク質に、デスモシンのピリジン環の4位の側鎖末端において選択的に固定化されているため、デスモシン類の検出や定量に好ましく用いることができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. デスモシンが、前記デスモシンのピリジン環の4位の側鎖末端において、直接または連結基を介してタンパク質に結合している、複合体。
2. 前記デスモシンが、前記4位の側鎖末端のアミノ基において前記タンパク質に結合している、1.に記載の複合体。
3. 前記タンパク質が、牛血清アルブミン、スカシガイヘモシアニン、オブアルブミン、チログロブリン、フィブリノーゲンからなる群から選択される1種である、1.または2.に記載の複合体。
4. 当該複合体が下記一般式(1)に示される、1.乃至3.いずれか1つに記載の複合体。
(上記一般式(1)中、L1は単結合または連結基であり、P1-は、キャリアタンパク質であるP1由来の1価の基であり、nは平均値であり、0より大きく100以下の数である。)
5. 当該複合体が下記一般式(2)に示される、4.に記載の複合体。
(上記一般式(2)中、P1-およびnは、ぞれぞれ、前記一般式(1)におけるP1-およびnと同じであり、L2は単結合または連結基である。)
6. 当該複合体が下記一般式(3)に示される、1.乃至5.いずれか1つに記載の複合体。
(上記一般式(3)中、P2-NH-は、キャリアタンパク質であるP2-NH
2由来の1価の基であり、mは平均値であり、0より大きく100以下の数であり、yは2以上15以下の整数である。)
7. 前記キャリアタンパク質が、牛血清アルブミン、スカシガイヘモ
シアニンおよびオブアルブミンからなる群から選択される1種である、4.乃至6.いずれか1つに記載の複合体。
【実施例】
【0045】
以下において、非水系反応は、とくに記載のない場合、いずれも、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで撹拌しながらおこなった。t-ブタノール(tBuOH)は、CaH2を用いた蒸留により乾燥し、活性モレキュラーシーブ上に保存した。DMFはMgSO4を用いた蒸留により乾燥し、活性モレキュラーシーブ上に保存した。トリエチルアミン(Et3N)、ジイソプロピルエチルアミン(iPr2NEt)およびBF3・OEt2は、CaH2上で乾燥した。ジクロロメタン(CH2Cl2)、メタノール(MeOH)、アセトニトリル(MeCN)、ジエチルエーテル(Et2O)、テトラヒドロフラン(THF)、エタノール(EtOH)等の他の溶媒については、市販品を用い、活性モレキュラーシーブ上に保存した。PBS(pH7.4)は、PBSタブレットを200mLの2回蒸留水に溶解して調製した。PBS(pH8.4)は、46mgのNaH2PO4 2H2Oおよび674mgのNa2HPO4を100mLの2回蒸留水に溶解して調製した。ホウ酸緩衝液(pH8.0)は、87mgのB(OH)3および57mgのNa2B4O710H2Oを10mLの2回蒸留水に溶解して調製した。すべての試薬は、とくに記載のない場合、市販品をさらに精製することなく用いた。N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)およびトリフェニルホスフィン(PPh3)はトルエンを用いて再結晶化した。高光学純度(>99.5%)のアミノ酸保護体、出発物質であるヨードアミノ酸(化合物9および化合物32)ならびにアルキン(化合物8)は渡辺化学工業社より購入した。薄層クロマトグラフィー(TLC)分析は、Merck社製、シリカゲル60 F254プレートを用いておこなった。カラムクロマトグラフィーは、関東化学製、酸性のシリカゲル60(球状、40~50μm)または中性のシリカゲル60N(球状、40~50μm)を用いておこなった。脱塩には、Zebaスピン脱塩カラム(Thermo Fisher Scientific社製、7K MWCO、10mL)またはNAP 5 columns(GEヘルスケア社製)を用いた。インキュベーションおよび濃縮は、バイオクロマト社製のSmart Evaporatorを用いておこなった。
【0046】
UVスペクトルは、JASCO V-730BIO紫外/可視分光光度計(日本分光社製)により測定した。旋光度は、JASCO P-2200デジタル旋光計(日本分光社製)を用い、ナトリウムランプ(λ=589nm)D線にて測定し、本明細書中以下のように表記する:[α]D
T(c g/100mL、溶媒)。スピン脱塩カラムは、Sorvall Legend XTR 遠心分離機(Thermo Fisher Scientific社製)にて使用した。1Hおよび13C核磁気共鳴(NMR)スペクトルは日本電子社製JNM-EXC 300分光計(300MHz)または日本電子社製JNM-ECA 500分光計(500MHz)により測定した。1H NMRのデータは、本明細書中以下のように表記する:化学シフト(δ、ppm)、積分値、分裂(s:一重線、d:二重線、t:三重線、q:四重線、m:多重線)、カップリング定数J(Hz)、帰属。13C NMRのデータは、本明細書中化学シフト(δ、ppm)にて表記する。マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間質量分析(MALDI-TOFMS)スペクトルは、島津製作所社製AXIMA performance装置により測定し、本明細書中、質量電荷比(m/z)で示す。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)スペクトルは、日本分光社製JMS-T100LC装置により測定し、本明細書中、質量電荷比(m/z)で示す。
【0047】
ピリジニウム化合物のNMRにおける炭素の番号付けは、以下のマレイミド活性化デスモシン(化合物2)に対応する。
【0048】
【0049】
(合成例1)
(2S)-2-[(Benzyloxycarbonyl)amino]-3-hydroxypropanoic acid(化合物12)の合成
【0050】
【0051】
クロロギ酸ベンジル(50wt%溶液, トルエン中, 0.42 mL, 2.82 mmol, 1.48 eq)を、飽和NaHCO3 (7.6 mg, 0.25M)水溶液中のL-セリン(化合物11)溶液(200 mg, 1.96 mmol, 1.0 eq)に加えた。混合物を室温にて4時間激しく撹拌し、水層をエーテルで抽出した。水溶液を1M HClにて酸性化して酢酸エチルにて抽出し、有機層をNa2SO4上で乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/MeOH = 20:1)にて精製することにより、生成物である化合物12を無色固体(249.6 mg, 1.03 mmol, <69%)として得た; Rf 0.1 (hexane/EtOAc = 2:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.36 (5H, m, Bn), 5.11 (2H, s, CH2Ph), 4.28 (1H, t, J = 4.2 Hz, CH), 3.88 (2H, m, CH2)。
【0052】
(合成例2)
(S)-tert-Butyl 2-(((benzyloxy)carbonyl)amino)-3-hydroxypropanoate(化合物13)の合成
【0053】
【0054】
Z-L-セリン(化合物12)(997.3 mg, 4.18 mmol, 1.0 eq)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(0.95 mg, 4.18 mmol, 1.0 eq)および炭酸カリウム(3.8 g, 27.2 mmol, 6.5 eq)をMeCN(13 mL)中で室温にて5時間激しく撹拌した。これに2-ブロモ-2-メチルプロパン(5.0 mL, 42.6 mmol, 10.2 eq)を加え、反応混合物を50℃まで加温し、急速に撹拌した。反応混合物は、2~3時間後に非常に高粘度となった。これにさらにMeCN(5 mL)を加えて撹拌を促進し、得られた反応混合物を24時間撹拌した。その後、反応混合物を室温まで冷却し、大部分のMeCNをロータリーエバポレーターにより除去した。そして、反応混合物をEtOAcおよび水の間で分割した。水層をEtOAcにて抽出した。EtOAc層を飽和食塩水にて洗浄し、Na2SO4上での乾燥、濾過および濃縮をおこなった。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 40:1)で精製し、生成物である化合物13を無色固体(926.3 mg, 3.13 mmol, 75%)として得た; Rf 0.51 (hexane/EtOAc = 1:1); [α]D
20 -16.8 (c 1.1, EtOH); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.36 (5H, m, Bn), 5.63 (1H, m, NH), 5.13 (2H, s, CH2Ph), 4.32 (1H, m, CH), 3.94 (2H, d, J = 3.6 Hz, CH2), 1.48 (9H, s, tBu)。
【0055】
(合成例3)
(S)-tert-Butyl 2-(((benzyloxy)carbonyl)amino)-3-iodopropanoate(化合物14)の合成
【0056】
【0057】
トリフェニルホスフィン(1.55 g, 6.26 mmol, 2.0 eq)およびイミダゾール(405.1 mg, 6.26 mmol, 2.0 eq)を、窒素雰囲気下、0℃にて撹拌しながらCH2Cl2(9 mL)中に溶解した。ヨウ素粉末(1.51 g, 6.26 mmol, 2.0 eq)を加えた後、混合物を室温まで温め、10分間撹拌したのち、0℃まで冷却した。冷却した溶液に、(S)-tert-butyl 2-(((benzyloxy)carbonyl)amino)-3-hydroxypropanoate(化合物13)(878.6 mg, 3.13 mmol, 1.0 eq)のCH2Cl2(8 mL)溶液を加えた。1時間0℃にて撹拌後、反応混合物を減圧濃縮した。残渣を中性シリカゲルのショートカラムにて濾過し、hexane/Et2O = 1/1にて溶出し、ろ液を濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 10:1)で精製し、化合物14を黄色固体として得た。これをペンタンから再結晶化して無色結晶(993.3 mg, 2.45 mmol, 78%)を得た; Rf 0.68 (hexane/EtOAc = 2:1); [α]D
22 -8.1 (c 1.05, EtOH); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.36 (5H, m, Bn), 5.60 (1H, m, NH), 5.13 (2H, s, CH2Ph), 4.41 (1H, m, CH), 3.59 (2H, d, J = 3.6 Hz, CH2), 1.50 (9H, s, tBu)。
【0058】
(合成例4)
Bromo(trimethylsilyl)acetylene(化合物16)の合成
【0059】
【0060】
トリメチルシリルアセチレン(化合物15)(10.8 mL, 75.0 mmol, 1.0 eq)のアセトン(250 mL)溶液にN-ブロモスクシンイミド(NBS)(14.7g, 82.5 mmol, 1.1 eq)およびAgNO3(1.28 g, 7.5 mmol, 0.1 eq)を室温にて加えた。室温にて2時間撹拌後、反応混合物を氷水で反応停止し、ペンタンで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥、氷浴を用いて濃縮した。これを蒸留して精製し、化合物16を無色液体(4.77 g, 26.9 mmol, 36%)として得た; 1HNMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.19 (9H, s, TMS)。
【0061】
(合成例5)
(S)-tert-Butyl 2-(((benzyloxy)carbonyl)amino)-5-trimethylsilyl-4-pentynoate(化合物17)の合成
【0062】
【0063】
CuCN(492.8 mg, 5.50 mmol, 1.0 eq)およびLiCl(466.5 mg, 11.0 mmol, 2.0 eq)を1つのフラスコ中で減圧下150℃にて2時間加熱し一緒に乾燥した。CuCNおよびLiClを乾燥している間に、亜鉛粉末(2.23 g, 34.1 mmol, 6.2 eq)を、ヒートガンを用いて5分間かけて減圧加熱により乾燥した。亜鉛粉末の入ったフラスコにDMF(2.7 mL)およびTMSCl(216 μL, 0.31 mmol)を室温にて加えた。30分間室温にて撹拌した後、この分散液にゆっくりとtert-Butyl 16-(S)-((benzyloxycarbonyl)amino)-15-iodopropanoate(化合物14)(2.23 g, 5.50 mmol, 1.0 eq)のDMF(2.7 mL, 0.55 mLにて洗浄 × 2)溶液を加えた。TLCにより化合物14-Znの生成を確認した後、DMF(10 mL)中にCuCNおよびLiClを含み、-20℃に冷却した別のフラスコに、化合物14-Znの溶液を30分かけて加えた。-20℃にて15分間撹拌後、新たに調製した(2-ブロモエチニル)トリメチルシラン(1.58 mL, 11.0 mmol, 2.0 eq)のDMF(1.67 mL)溶液を反応混合物に5分かけて滴下した。得られた混合物を室温までゆっくりと温め、17時間撹拌を続けた。混合物をEtOAcで希釈し、飽和NH4Cl溶液にて反応停止した。そして、水層をEtOAcで抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 40:1)で精製して化合物17を黄色固体(1.00 g, 2.66 mmol, 49%)として得た; Rf 0.57 (hexane/EtOAc = 4:1); [α]D
25 +183.3 (c 0.10, CHCl3); IR (ATR, cm-1) 2962, 1730, 1506, 1456, 1349, 1251, 1530, 1220, 1159, 1049, 846, 759, 698; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.36 (5H, m, Bn), 5.60 (1H, d, J = 8.2 Hz, NH), 5.13 (2H, s, CH2Ph), 4.41 (1H, m, CH), 2.78 (2H, m, CH2), 1.50 (9H, s, tBu), 0.13 (9H, s, TMS); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 169.2, 155.5, 136.3, 128.6, 128.2, 128.1, 100.7, 88.2, 82.5, 67.0, 52.8, 28.0, 24.4, 0.1。
【0064】
(合成例6)
(S)-tert-Butyl 2-(((benzyloxy)carbonyl)amino)-4-pentynoate(化合物8)の合成
【0065】
【0066】
化合物17(1.37 g, 3.70 mmol, 1.0 eq)のTHF(46.2 mL)およびEtOH(1.08 mL, 18.5 mmol, 5.0 eq)溶液を0℃に冷却し、これにテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)(THF中1.0 M溶液; 1.85 mL, 1.85 mmol, 0.5 eq)を加えた。0℃にて1.5時間撹拌後、反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NH4Cl溶液にて反応停止した。そして、水層をEtOAcで抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 10:1)により精製し、化合物8を黄色固体(1.06 g, 3.49 mmol, 96%)として得た; Rf 0.42 (hexane/EtOAc = 4/1); [α]D
25 +78.7 (c 0.10, CHCl3); IR (ATR, cm-1) 3355, 3299, 1722, 1691, 1533, 1342, 1292, 1264, 1158, 1059, 996, 647; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.36 (5H, m, Bn), 5.60 (1H, d, J = 7.6 Hz, NH), 5.13 (2H, s, CH2Ph), 4.41 (1H, m, CH), 2.74 (2H, m, CH2), 2.00 (1H, t, J = 2.7 Hz, CH) 1.50 (9H, s, tBu); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ169.4, 165.4, 155.5, 136.1, 128.6, 128.0, 100.7, 82.7, 71.5, 67.0, 52.6, 28.0, 22.9; ESI-HRMS (m/z) calcd for C17H21N1NaO4 [M+Na]+ 326.1368, found 326.1343。
【0067】
(合成例7)
4-Methyl L-aspartate hydrochloride(化合物19)の合成
【0068】
【0069】
L-アスパラギン酸(化合物18)(4.95 g, 37.55 mmol, 1.0 eq)をメタノール(24.5 mL, 16.05 eq)に加え、-10℃に冷却した。塩化チオニル(3.66 mL, 1.34 eq)を混合物に滴下し、冷却槽を除去して溶液をゆっくりと室温まで加温した。25分間置いた後、冷却したジエチルエーテルを混合物に冷却および振とうしながら加え、生成物を白色固体として沈澱させた。この白色固体を直ちに濾過し、氷冷したジエチルエーテルで洗浄し、収集した。L-aspartic acid methyl ester hydrochloride(化合物19)を無色固体(6.60 g, 35.95 mmol, 97%)として得た; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 4.32 (1H, t, J = 5.1 Hz, CH), 3.76 (3H, s, Me), 3.07-3.01 (2H, m, CH2)。
【0070】
(合成例8)
(S)-20-((tert-Butoxycarbonyl)amino)-18-methoxy-21-oxobutanoic acid(化合物20)の合成
【0071】
【0072】
L-aspartic acid methyl ester hydrochloride(化合物19)(1.90 g, 10.4 mmol, 1.0 eq)のジオキサン(38.3 mL)溶液を撹拌し、0℃にて、これにNa2CO3(0.5 M, 41.4 mL, 2.0 eq)水溶液を加え、次いでBoc2O(2.62 mL, 11.4 mmol, 1.1 eq)を加えた。反応混合物を室温にて18時間撹拌した後、濃縮した。得られた溶液に1M HClを加えて0℃にてpH3.0に酸性化し、EtOAcにて抽出した。有機層を合わせて水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH/CH2Cl2, 1/5)で精製し、化合物20を黄色油状物(2.27 g, 9.18 mmol, 91%)として得た; Rf 0.64 (MeOH/CH2Cl2 = 1:5); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 5.56 (1H, d, J = 8.64 Hz, NH), 4.62 (1H, m, H20), 3.72 (3H, s, OCH3), 3.04 (1H, dd, J = 17.2, 4.5 Hz, H19), 2.85 (1H, dd, J = 17.4, 4.9 Hz, H19), 1.43 (9H, s, tBu)。
【0073】
(合成例9)
(S)-21-tert-Butyl 18-methyl-20-((tert-butoxycarbonyl)amino)oxobutanedioate(化合物21)の合成
【0074】
【0075】
化合物20(1.16 mg, 4.69 mmol, 1.0 eq)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(1.06 mg, 4.69 mmol, 1.0 eq)および炭酸カリウム(4.22 g, 30.5 mmol, 6.5 eq)の化合物をMeCN(15.6 mL)中、室温中で5時間激しく撹拌した。2-ブロモ-2-メチルプロパン(5.37 mL, 47.8 mmol, 10.2 eq)を加え、反応混合物を50℃に温めて急速に撹拌した。反応混合物は2~3時間後に非常に高粘度となった。これにさらにMeCN(7 mL)を加えて撹拌を促進し、得られた反応混合物を24時間撹拌した。その後、反応混合物を室温まで冷却し、大部分のMeCNをロータリーエバポレーターにより除去した。そして、反応混合物をEtOAcおよび水の間で分割した。水層をEtOAcにて抽出した。EtOAc層を飽和食塩水にて洗浄し、Na2SO4上での乾燥、濾過および濃縮をおこなった。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 8:1)で精製し、生成物である化合物21を無色固体(1.14 g, 3.76 mmol, 80%)として得た; Rf 0.58 (hexane/EtOAc = 2:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ5.43 (1H, d, J = 8.8 Hz, NH), 4.48-4.42 (1H, m, H20), 3.69 (3H, s, OCH3), 2.95 (1H, dd, J = 16.6, 4.6 Hz, H19), 2.76 (1H, dd, J = 16.6, 5.0 Hz, H19), 1.45 (9H, s, tBu), 14.8 (9H, s, tBu)。
【0076】
(合成例10)
(S)-21-tert-Butyl 20-((tert-butoxycarbonyl)amino)-18-oxobutanoic acid(化合物22)の合成
【0077】
【0078】
化合物12(500.7 mg, 1.65 mmol, 1.0 eq)のMeOH(0.75 mL)溶液に、2M NaOH(0.85 mL)を加えた。室温にて3時間撹拌後、MeOHを減圧下で除去し、残った水層をエーテルで洗浄した。そして、水層に3M HClを加えてpH2に酸性化し、EtOAcにより抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 3/1)で精製して化合物22(437 mg, 1.51 mmol, 92%)を無色固体として得た; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ5.40 (1H, d, NH), 4.47-4.43 (1H, m, H20), 3.00 (2H, dd, J = 18.5, 4.6 Hz, H19), 2.84 (2H, dd, J = 17.2, 5.02 Hz, H19), 1.48 (9H, s, tBu), 1.45 (9H, s, tBu)。
【0079】
(合成例11)
(S)-21-tert-Butyl 20-((tert-butoxycarbonyl)amino)-18-hydroxybutanoate(化合物23)の合成
【0080】
【0081】
化合物22(1.33 mg, 4.60 mmol, 1.0 eq)のTHF(95.8 mL)溶液を-15℃に冷却し、そこへN-メチルモルホリン(556 μL, 5.06 mmol, 1.1 eq)およびEtOCOCl(481.3 μL, 5.06 mmol, 1.1 eq)を加えた。-15℃で1時間撹拌した後、沈澱したN-メチルモルホリン塩酸塩を濾過して除去し、THF(73.2 mL)にて洗浄した。ろ液を0℃に冷却してこれにNaBH4(257 mg, 6.89 mmol, 1.5 eq)を加え、次いで水を滴下した。0℃にて0.5時間撹拌後、反応混合物に飽和NH4Cl溶液を加えて反応停止した。そして、水層をEtOAcで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 3/1)で精製してアルコールである化合物23を白色固体(1.24 mg, 4.50 mmol, 98%)として得た; Rf 0.30 (hexane/EtOAc = 2:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 5.34 (1H, d, J = 6.6 Hz, NH), 4.38-4.31 (1H, m, H20), 3.71-3.63 (2H, m, H19), 2.19-2.04 (1H, m, H18), 1.67-1.58 (1H, m, H19), 1.47 (9H, s, tBu), 1.44 (9H, s, tBu)。
【0082】
(合成例12)
(S)-21-tert-Butyl 20-((tert-butoxycarbonyl)amino)-18-iodobutanoate(化合物9)の合成
【0083】
【0084】
トリフェニルホスフィン(2.51 g, 9.0 mmol, 2.0 eq)およびイミダゾール(653.0 mg, 9.0 mmol, 2.0 eq)を、窒素雰囲気下、20℃で撹拌しながら、CH2Cl2(14.2 mL)に溶解した。ヨウ素粉末(2.43 g, 9.0 mmol, 2.0 eq)を加えた後、混合物を室温まで温め、10分間撹拌したのち、0℃まで冷却した。この冷却溶液に、化合物23すなわち(S)-21-tert-butyl 20-((tert-butoxycarbonyl)amino)-18-hydroxybutanoate(1.32 g, 4.5 mmol, 1.0 eq)のCH2Cl2(15 mL)溶液を加えた。0℃にて1時間撹拌後、反応混合物を減圧濃縮した。残渣を中性シリカゲルのショートカラムに通し、hexane/Et2O = 1/1にて溶出し、ろ液を濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 10:1)で精製し、化合物9を白色固体(1.69 mg, 4.38 mmol, 92%)として得た; Rf 0.68 (hexane/EtOAc = 2:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ 5.06 (1H, s, NH), 4.22-4.17 (1H, m, H20), 3.20-3.14 (2H, m, H19), 2.44-2.32 (1H, m, H18), 2.21-2.09 (1H, m, H19), 1.45 (9H, s, tBu), 1.48 (9H, s, tBu)。
【0085】
(合成例13)
1-Benzyl-5-methyl-2-(S)-[(tert-butoxycarbonyl)-amino]-pentanedioate(化合物25)の合成
【0086】
【0087】
トリエチルアミン(0.185 mL, 1.33 mmol, 1.5 eq)を、2-(S)-[(tert-butoxycarbonyl)amino]-pentanedionic acid 1-benzyl ester(化合物24)(300.0 mg, 0.889 mmol, 1.0 eq)のCH2Cl2(4.03 mL)溶液に添加した。混合物を0℃に冷却し、その後、DMAP(10.9 mg, 88.9 μmol, 0.1 eq)およびMeOCOCl(82.3 μL, 1.07 mmol, 1.2 eq)を順次添加した。この溶液を室温まで温め、1時間撹拌した。反応混合物をCH2Cl2で希釈し、1M NaHCO3水溶液で洗浄した。水層をCH2Cl2で抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 4:1)にて精製し、1-benzyl-5-methyl-2-(S)-[(tert-butoxycarbonyl)-amino]-pentanedioate(化合物25)を無色固体(272.2 mg, 77.5 μmol, 87%)として得た; Rf 0.68 (hexane/EtOAc = 1:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.40-7.32 (5H, m, Bn), 5.17 (2H, dd, J = 13.2, 12.3 Hz, Bn), 5.10 (1H, m, NH), 4.37 (1H, m, CH), 3.67 (3H, s, CO2CH3), 2.48-2.30 (2H, m, CH2), 2.27-2.12 (1H, m, CHCH2CH2), 2.01-1.89 (1H, m, CHCH2CH2), 1.42 (9H, s, Boc)。
【0088】
(合成例14)
2-(S)-[(tert-Butoxycarbonyl)-amino]-pentanedioic acid 1-tert-butyl ester 5-methyl ester(化合物26)の合成
【0089】
【0090】
1-benzyl-5-methyl-2-(S)-[(tert-butoxycarbonyl)-amino]-pentanedioate(化合物25)(303.5 mg, 0.864 mmol, 1.0 eq)のMeOH(1.4 mL)溶液を、10% Pd/C(9.19 mg, 8.64 μmol, 1.0 mol%)にて処理し、室温中、バルーン圧にて接触水素化した。室温中で3時間撹拌後、中性シリカゲルおよびセライトに通し、MeOHで溶出して不溶物を濾別した。そして、ろ液を減圧濃縮した。ろ液の濃縮物から5-methyl-2-(S)-[(tert-butoxycarbonyl)-amino]-pentanedioate(化合物25')(229.9 mg, 0.864 mmol, quant)を無色固体として得た; Rf 0.18 (hexane/EtOAc = 1:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ5.10 (1H, m, NH), 4.37 (1H, m, CH), 3.66 (3H, s, CO2CH3), 2.50-2.44 (2H, m, CH2), 2.04-2.02 (1H, m, CHCH2CH2), 2.04-2.00 (1H, m, CHCH2CH2), 1.45 (9H, s, tBu)。
【0091】
5-Methyl-2-(S)-[(tert-butoxycarbonyl)-amino]-pentanedioate(化合物25')(8.13 g, 31.5 mmol, 1.0 eq)のtBuOH(21 mL)溶液に、(Boc)2O(8.68 ml, 37.8 mmol, 1.2 eq)のtBuOH(42 mL)溶液およびDMAP(384.8 mg, 3.15 μmol, 0.1 eq)を添加した。反応混合物を3時間撹拌した。ショートカラムに通した後、シリカゲルクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 5:1)にて精製し、2-(S)-[(tert-butoxycarbonyl)-amino]-pentanedioic acid 1-tert-butyl ester 5-methyl ester(化合物26)を無色油状物(5.9 g, 18.6 mmol, 63%)として得た; Rf 0.43 (hexane/EtOAc = 2:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 5.10 (1H, m, NH), 4.12 (1H, dd, J = 9.6, 4.8 Hz, CH), 3.67 (3H, s, CO2CH3), 2.57-2.45 (1H, m, CHCH2CH2), 2.44-2.36 (1H, m, CH2), 2.27-2.15 (1H, m, CHCH2CH2), 1.50 (9H, s, tBu), 1.45 (9H, s, tBu)。
【0092】
(合成例15)
1-tert-Butyl-5-methyl-2-(S)-[bis-(tert-butoxycarbonyl)-amino]-pentanedioate(化合物27)の合成
【0093】
【0094】
まず、DMAP(9.58 mg, 78.4 μmol, 0.2 eq)および2-(S)-[(tert-butoxycarbonyl)-amino]-pentanedioic acid 1-tert-butyl ester 5-methyl ester(化合物26)(124.4 g, 0.392 mmol, 1.0 eq)をMeCN(1.23 mL)に溶解した溶液に加えた。この混合物に、(Boc)2O(0.36 ml, 1.57 mmol, 4.0 eq)のMeCN(258 μL)溶液を室温にて加え、20時間撹拌した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 8:1)にて精製し、1-tert-butyl-5-methyl-2-(S)-[bis-(tert-butoxycarbonyl)-amino]-pentanedioate(化合物27)を無色油状物(153 mg, 0.366 mmol, 94%)として得た; Rf 0.50 (hexane/EtOAc = 4:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 4.97 (1H, dd, J = 9.6, 4.8 Hz, CH), 3.67 (3H, s, CO2CH3), 2.57-2.45 (1H, m, CHCH2CH2), 2.44-2.36 (2H, m, CH2), 2.27-2.15 (1H, m, CHCH2CH2), 1.50 (18H, s, tBu), 1.45 (9H, s, tBu)。
【0095】
(合成例16)
(S)-2-[Bis-(tert-butoxycarbonylamino)]-4-(formylbutanoic acid)-tert-butyl ester(化合物28)の合成
【0096】
【0097】
水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H, ヘキサン中 1M溶液, 1.68 mL, 1.68 mmol, 1.4 eq)を、-78℃に冷却した1-tert-butyl-5-methyl-2-(S)-[bis-(tert-butoxycarbonyl)-amino]-pentanedioate(化合物27)(502.2 mg, 1.20 mmol, 1.0 eq)のEt2O(12 mL)溶液に、3分かけて滴下した。反応混合物を5分間撹拌し、水で反応停止した後、室温まで温めた。得られた白色濃厚液をセライトパウダーで濾過し、Et2Oで洗浄した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 4:1)で精製して(S)-2-[bis-(tert-butoxycarbonylamino)]-4-(formylbutanoic acid)-tert-butyl ester(化合物28)を無色油状物(417.2 mg, 1.08 mmol, 90%)として得た; Rf 0.38 (hexane/EtOAc = 4:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 9.77 (1H, s, CHO), 4.92 (1H, dd, J = 9.4, 5.0 Hz, CH), 2.69-2.44 (3H, m, CHCH2CH2), 2.24-2.13 (1H, m, CHCH2CH2), 1.50 (18H, s, tBu), 1.45 (9H, s, tBu)。
【0098】
(合成例17)
Benzyl-2-(S)-[bis-(tert-butoxycarbonyl)-amino]-5-hexenoat(化合物29)の合成
【0099】
【0100】
nBuLi(ヘキサン中 2.65M溶液, 0.215 mL, 0.569 mmol, 2.0 eq)を、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(223.9 mg, 0.67 mmol, 2.2 eq)のTHF(3.45 mL)分散液に、-78℃にて滴下した。混合物を0℃で1時間撹拌した後、得られたオレンジ色のイリド液に、 (S)-2-[bis-(tert-butoxycarbonylamino)]-4-(formylbutanoic acid)-tert-butyl ester(化合物28)(110.4 g, 0.285 mmol, 1.0 eq)のTHF(1.3 mL)液を-78℃にて添加した。0℃にて0.5時間撹拌後、反応混合物に飽和NH4Cl溶液を加えて反応停止した。混合物を水で希釈し、水層をEtOAcで抽出した。有機層を合わせてNa2SO4上で乾燥し、減圧濃縮した。ショートカラムの後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 20:1)にて精製し、benzyl-2-(S)-[bis-(tert-butoxycarbonyl)-amino]-5-hexenoate(化合物29)を無色油状物(65.9 mg, 0.171 mmol, 60%)として得た; Rf 0.65 (hexane/EtOAc = 4:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 5.82-5.79 (1H, tt, J = 6.47 Hz, CH2=CH), 5.08-4.89 (2H, m, CH=CH2), 4.92 (1H, dd, J = 9.4, 5.0 Hz, CH), 2.29-2.20 (1H, m, CHCH2CH2), 2.17-2.10 (2H, m, CHCH2CH2), 2.09-1.96 (1H, m, CHCH2CH2), 1.50 (18H, s, tBu), 1.45 (9H, s, tBu)。
【0101】
(合成例18)
tert-Butyl-2-(S)-[bis-(tert-butoxycarbonyl)-amino]-6-hydroxyhexanoate(化合物30)の合成
【0102】
【0103】
Benzyl-2-(S)-[bis-(tert-butoxycarbonyl)-amino]-5-hexenoate(化合物29)(135.9 mg, 0.35 mmol, 1.0 eq)のTHF(1.57 mL)液を0℃に冷却し、NaBH4(17.4 mg, 0.46 mmol, 1.3 eq)を加えた。10分間撹拌後、BF3・Et2O(58.1 μL, 0.459 mmol, 1.3 eq)をこの溶液に加えた。混合物を室温まで温めた後、21時間撹拌した。その後、溶液を0℃まで冷却し、そして1N NaOH(0.523 mL, 0.523 mmol, 1.5 eq)および30% H2O2(0.43 mL)を順次添加した。0℃にて1.5時間撹拌した後、反応混合物を水で希釈した。水層をEtOAcにて抽出した。有機層を合わせてNa2SO4上で乾燥し、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 2:1)にて精製し、tert-butyl-2-(S)-[bis-(tert-butoxycarbonyl)-amino]-6-hydroxyhexanoate(化合物30)を無色油状物(77.7 mg, 0.193 mmol, 55%)として得た; Rf 0.18 (hexane/EtOAc = 4:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 4.73 (1H, dd, J = 9.6, 5.1 Hz, CH), 3.64 (2H, t, J = 6.6 Hz, CH2O), 2.19-2.12 (1H, m, CHCH2), 1.97-1.89 (1H, m, CHCH2), 1.69-1.51 (4H, m, CHCH2CH2CH2), 1.50 (18H, s, tBu), 1.45 (9H, s, tBu)。
【0104】
(合成例19)
tert-Butyl-2-(S)-[bis-(tert-butoxycarbonyl)-amino]-6-iodohexanoate(化合物32)の合成
【0105】
【0106】
トリフェニルホスフィン(54.2 mg, 0.562 mmol, 2.0 eq)およびイミダゾール(16.5 mg, 0.562 mmol, 2.4 eq)を、窒素雰囲気下、0℃にて撹拌しながらCH2Cl2(0.1849 mL)に溶解した。ヨウ素粉末(52.4 mg, 0.562 mmol, 2.0 eq)を添加した後、混合物を室温まで温め、10分間撹拌したのち、0℃に冷却した。tert-butyl-2-(S)-[bis-(tert-butoxycarbonyl)-amino]-6-hydroxyhexanoate(化合物30)(113.4 mg, 0.281 mmol, 1.0 eq)のCH2Cl2(0.4622 mL)溶液を冷却した溶液に加えた。0℃にて1時間撹拌した後、反応混合物を減圧濃縮した。残渣を中性シリカゲルのショートカラムで濾過し、hexane/Et2O = 1/1で溶出し、ろ液を濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 40:1)にて精製し、化合物32を無色油状物(45.2 mg, 0.025 mmol, 85%)として得た:Rf 0.70 (hexane/EtOAc = 4:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 4.73 (1H, dd, J = 9.6, 5.1 Hz, CH), 3.18 (2H, t, J = 7.0 Hz, CH2I), 2.10-1.97 (1H, m, CHCH2), 1.94-1.75 (5H, m, CHCH2, CHCH2CH2CH2), 1.50 (18H, s, tBu), 1.45 (9H, s, tBu)。
【0107】
(合成例20)
(S)-tert-Butyl-16-(((benzyloxy)carbonyl)amino)-13-(3,5-dibromopyridin-1-yl)pent-14-ynoate(化合物34)の合成
【0108】
【0109】
3,5-ジブロモ-4-ヨードピリジン(化合物10)(300.0 mg, 827 μmol, 1.0 eq)、(S)-tert-butyl 2-(((benzyloxy)carbonyl)amino)-4-pentynoate(化合物8)(377.1 mg, 1.24 μmol, 1.5 eq)、Pd2dba3(75.7 mg, 82.7 μmol, 10 mol%)、P(2-furyl)3(76.8 mg, 331 μmol, 40 mol%)およびCuI(63.0 mg, 331 μmol, 40 mol%)のDMF(41.3 mL)溶液を、凍結脱気(freeze/pump/thaw techniques)により脱気した。iPr2NEt(8.3 mL)を得られた溶液に加えた。40℃で17時間撹拌した後、反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NH4Cl溶液で反応停止した。その後、水層をEtOAcで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 10:1)にて精製し、化合物34(309.7 mg, 575 μmol, 70%)を得た; Rf 0.34 (hexane/EtOAc = 4:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.62 (2H, s, H2/6), 7.33 (5H, m, Bn), 5.76 (1H, d, J = 7.8 Hz, NH), 5.13 (2H, s, CH2Ph), 4.55 (1H, m, H16), 3.26-3.02 (2H, m, H15), 1.46 (9H, s, tBu)。
【0110】
(合成例21)
((20S,20'S)-tert-Butyl-18,18'-(4-((S)-17-(tert-butyloxy)-16-(((benzyloxy)carbonyl)amino)-17-oxopent-13-ynyl)pyridine-3,5-diyl)bis-20-(tert-butoxycarbonylamino)butanoate(化合物7)の合成
【0111】
【0112】
亜鉛末(182.2 mg, 2.79 mmol)を、窒素雰囲気にした1.5mLのマイクロチューブ内に配置した。ドライDMF(84 μL)およびトリメチルシリルクロリド(56.3 μL, 0.44 mmol)を添加し、得られた混合物を室温にて15分間激しく撹拌した。撹拌を停止し、溶液をマイクロシリンジで取り出した。残った固体を、減圧下、ドライヤーを用いて乾燥した。活性化した亜鉛を室温に冷却し、(S)-21-tert-butyl 20-((tert-butoxycarbonyl)amino)-18-iodobutanoate(化合物9)(178.9 mg, 0.465 mmol, 5.0 eq)のドライDMF溶液(141 μLおよび94 μLのDMFでリンス)を活性化亜鉛に加えた。反応混合物を室温にて1時間撹拌し、その時以後、TLC分析(hexane/EtOAc = 5/1)にて出発物質が残っていないことを確認した。撹拌を停止し、遠心分離機を用いて亜鉛末を沈澱させた。105μLのDMFの入ったマイクロシリンジで溶液を活性化亜鉛から取り除き、氷冷したPd-PEPPSI-IPr(12.6 mg, 20 mol%)および化合物34(50.6 mg, 0.094 mmol, 1.0 eq)の入った10mLフラスコに加えた。60℃まで昇温したスターラーに移したのち、1.5時間撹拌を続け、反応混合物をEtOAcにて希釈し、飽和NH4Cl溶液で反応停止した。その後、水層をEtOAcで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、減圧濃縮して粗生成物を黄色油状物として得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー((hexane/EtOAc = 2:1 → 1:1)にて精製し、純粋な化合物7(45.5 mg, 50.8 μmol, 54%)を褐色油状物として得た; Rf 0.56 (hexane/EtOAc = 5:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.29 (2H, s, H2/6), 7.33 (5H, m, Bn), 5.55 (1H, m, NH16), 5.20-5.03 (3H, m, H16/20/20'), 4.55 (2H, m, NH21/21'), 4.34 (2H, m, CH2Ph), 3.26-3.02 (2H, m, H15), 2.73 (4H, m, H18/18'), 2.12-1.84 (4H, m, H19/19'), 1.48 (18H, s, Boc), 1.46 (27H, s, tBu); ESI-HRMS (m/z) calcd for C48H70N4NaO12 [M+Na]+ 917.4889, found 917.4858。
【0113】
(合成例22)
3,5-Bis-{20,20'-(tert-butoxycarbonyl)-20,20'-(S)-[(tert-butoxycarbonyl)-amino]-propyl}-4-{16-(tert-butoxycarbonyl)-16-(S)-amino]-buthyl}-pyridine(化合物6)の合成
【0114】
【0115】
化合物7(11.0 mg, 12.2 μmol, 1.0 eq)のMeOH(0.534 mL)溶液を10% Pd/C(13.07 mg, 12.2 μmol, 100.0 mol%)で処理し、室温中、バルーン圧にて接触水素化した。室温にて4時間撹拌した後、反応混合物を減圧濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 0/1 → CH2Cl2/MeOH =20/1)にて精製し、化合物6(5.3 mg, 6.93 μmol, 56%)を黄色油状物として得た; Rf 0.56 (hexane/EtOAc = 5:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.07 (2H, s, H2/6), 3.93 (3H, m, H16/20/20'), 2.65 (6H, m, H13/18/18'), 2.00-1.55 (8H, m, H14/15/19/19'), 1.48 (18H, s, Boc), 1.46 (27H, s, tBu); ESI-HRMS (m/z) calcd for C48H68N4NaO10 [M+Na]+ 787.4833, found 787.4809。
【0116】
(合成例23)
N-Succinimidyl 4-maleimidobutyrate(化合物41)の合成
【0117】
【0118】
4-アミノ酪酸(化合物38)(200 mg, 2.04 mmol, 1.0 eq)を、無水マレイン酸(化合物39)(10 mg, 2.04 mmol, 1.0 eq)のDMF(2 mL)溶液に加え、混合物を2時間撹拌した。得られた溶液を氷浴中で冷却し、N-ヒドロキシスクシンイミド(288.7 mg, 2.51 mmol, 1.23 eq)およびDCC(883.7 mg, 4.28 mmol, 2.1 eq)を順次加えた。5分後、氷浴を除去し、溶液を一晩激しく撹拌した。形成された白色沈澱を濾別し、DMFで洗浄し、ろ液を氷上に注いだ。水層をCH2Cl2で抽出した。CH2Cl2層をNa2SO4上で乾燥し、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、生成物として化合物41を無色固体(157.1 mg, 0.56 mmol, 28%)として得た; Rf 0.23 (hexane/EtOAc = 1:1) ; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ6.71 (2H, s, CH=CH), 3.65(2H, t, J = 7.0 Hz, NCH2), 2.83(4H, s, COCH2CO), 2.65(2H, t, J = 7.7 Hz, CH2CO), 2.05(2H, m, CH2)。
【0119】
(合成例24)
3,5-bis-{20,20'-(tert-butoxycarbonyl)-20,20'-(S)-[(tert-butoxycarbonyl)-amino]-propyl}-4-{16-(tert-butoxycarbonyl)-16-(S)-[(25-maleimido-22-oxobuthyl)-amino]-buthyl}-pyridine(化合物5)の合成
【0120】
【0121】
化合物6(5.3 mg, 6.93 μmol, 1.0 eq)のDMF(100 μL)溶液に、化合物41(2.04 mg, 7.27 mmol, 1.05 eq)およびNMM(0.5 μL)を加えた。反応混合物を4時間撹拌した後、氷水中に注いだ。溶液をpH3に酸性化し、CH2Cl2で3回抽出した。有機層を合わせて水および飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、生成物である化合物5を無色油状物(5.2 mg, 5.59 mmol, 81%)として得た; Rf 0.14 (hexane/EtOAc = 1:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.19 (2H, s, H2/6), 6.75 (2H, s, H27/28), 6.65 (1H, m. NH16) 5.45 (2H, m, NH20/20'), 4.50 (1H, m, H16), 4.26 (2H, m, H20/20'), 3.60 (2H, m, H25), 2.62 (8H, m, H13/18/18'/23), 2.00-1.55 (10H, m, H14/15/19/19'/24), 1.48 (18H, s, Boc), 1.46 (27H, s, tBu); ESI-HRMS (m/z) calcd for C48H76N5O13 [M+H]+ 930.5440, found 930.5390。
【0122】
(合成例25)
3,5-bis-{20,20'-(tert-butoxycarbonyl)-20,20'-(S)-[(tert-butoxycarbonyl)-amino]-propyl}-4-{16-(tert-butoxycarbonyl)-16-(S)-[(25-maleimido-22-oxobuthyl)-amino]-buthyl}-1-{11-(tert-butoxycarbonyl)-1-(S)-[bis-(tert-tutoxycarbonyl)-amino]-pentyl}-pyridinium(化合物43)の合成
【0123】
【0124】
化合物5(6.1 mg, 6.55 μmol, 1.0 eq)および化合物32(6.73 mg, 13.1 μmol, 2.0 eq)の混合物をCH3NO2(0.18 mL)中、70℃にて8時間加熱した。反応混合物を減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane/EtOAC = 1:1 → CH2Cl2/MeOH = 10:1)にて精製し、化合物43(5.9 mg, 4.08 μmol, 62%)を黄色油状物として得た; Rf 0.50 (CH2Cl2/MeOH = 10:1); IR (ATR, cm-1) 3036, 1709, 1593, 1367, 1248, 1155, 733, 477, 464, 453; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.91 (2H, s, H2/6), 6.75 (2H, s, H27/28), 6.65 (1H, m. NH16) 5.65 (2H, d, J = 8.2 Hz, NH20/20'), 4.77 (1H, m, H11), 4.65 (2H, m, H7), 4.52 (1H, m, H16), 4.16 (2H, m, H20/20'), 3.57 (2H, m, H25), 3.00-2.85 (6H, m, H13/18/18'), 2.77 (2H, m, H23), 2.25 (2H, t, J = 7.2 Hz, H8), 2.20-1.98 (10H, m, H10/14/15/19/19'), 1.97-1.75 (4H, m, H9/24), 1.50 (27H, s, Boc), 1.40 (27H, s, tBu); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ171.1, 170.8, 169.5, 152.5, 141.6, 140.7, 134.2, 83.1, 82.7, 82.4, 81.4, 80.0, 58.2, 36.9, 33.0, 32.7, 31.1, 28.3, 28.0, 27.9, 26.5, 23.1; ESI-HRMS (m/z) calcd for C68H111N6O19 [M]+ 1315.7904, found 1315.7874。
【0125】
(合成例26)
4-(16-(S)-[(25-maleimido-22-oxobuthyl)-amino]-16-carboxy-buthyl)-1-(11)-(S)-amino-11-carboxy-pentyl)-3,5-bis-(20,20'-(S)-amino-20,20'-carboxy-propyl)-pyridinium(化合物2)の合成
【0126】
【0127】
TFAおよび蒸留水の混合物(1.25 mL, TFA/water = 95:5)を化合物43((8.0mg, 5.54 μmol, 1.0 eq)に室温で加え、2時間撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーターにて除去した。C18シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.1% TFA in distilled water→0.1% TFA in distilled water/MeOH=9:1)にて精製し、化合物2を無色油状物(4.4 mg, 5.54 μmol, quant)として得た; Rf 0.4 [MeOH (0.1% TFA)/H2O (0.1% TFA) = 1:9]; 1H NMR (300 MHz, D2O) δ8.55 (2H, s, H2/6), 6.80 (2H, s, H27/28), 4.50 (2H, t. J = 6.4 Hz, H7) 4.37 (1H, m, H16), 4.02 (2H, t, J = 5.6 Hz, H20/20'), 3.89 (1H, t, J = 4.8 Hz, H11), 3.51 (2H, t, J = 6.4 Hz, H25), 3.05 (2H, m, H13), 2.93 (4H, m, H18/18'), 2.32 (2H, t, J = 6.4 Hz, H23), 2.22 (4H, m, H19/19'), 2.03 (2H,m, H8), 1.99-1.80 (6H, m, H10/15/24), 1.61 (2H, m, H14), 1.55-1.34 (2H, m, H9). ESI-HRMS (m/z) calcd for C32H47N6O11 [M]+ 691.3303, found 691.3319。
【0128】
(合成例27)
Thiolated BSA(化合物3)の合成
【0129】
【0130】
BSA(10.2 mg, 0.15 μmol, 1.0 eq)およびtraut's試薬(0.8 mg, 6.0 μmol, 40 eq)のPBS(pH 8.4)(1 mL、10mM EDTAを含む。)中の混合物を32℃にて2時間インキュベートした。この溶液を、プレパックゲル脱塩カラムに適用し、1mMのEDTAを含むPBSにて各種を溶出した。タンパク質を含む画分をプールし、スルフヒドリル基濃度をエルマン分析により測定した。
【0131】
(実施例1)
Desmosine BSA conjugate(化合物1)の合成
【0132】
【0133】
化合物2(2.2 mg, 2.70 μmol)をチオール化BSA(化合物3)のPBS(1 mM EDTAを含む。)溶液(0.5 mL)に溶解し、室温にて2時間撹拌した。NAP 5カラムを用いて反応混合物を精製し、未反応物を除去した。試料が完全に分離床に入った後、PBSにて溶出し、初めの1.3mLを回収した。
得られた複合体をMALDI-TOFMSにて分析したところ、BSA1分子あたり、平均5分子の化合物2が導入されていた。
【0134】
(合成例28)
Thiolated KLH(化合物3')の合成
【0135】
【0136】
KLH(10.2 mg)およびtraut's試薬(0.8 mg, 6.0 μmol)のPBS(pH 8.4)(1 mL、10mM EDTAを含む。)中の混合物を32℃にて2時間インキュベートした。この溶液を、プレパックゲル脱塩カラムに適用し、1mMのEDTAを含むPBSにて各種を溶出した。タンパク質を含む画分をプールした。
【0137】
(実施例2)
Desmosine KLH conjugate(化合物1')の合成
【0138】
【0139】
化合物2(2.2 mg, 2.70 μmol)を、チオール化KLH(化合物3')溶液(0.5 mL, 1 mM EDTAを含むPBS)に溶解し、室温にて2時間撹拌した。NAP 5カラムを用いて反応混合物を精製し、未反応物を除去した。試料が完全に分離床に入った後、PBSにて溶出し、初めの1.3mLを回収した。
得られた複合体をMALDI-TOFMSにて分析したが、KLHの分子量が大きく、結合数を求めることができなかったため、上記式ではXと示す。
【0140】
本明細書において、以下の略記を用いた。
Me:メチル
Et:エチル
iPr:イソプロピル
Ac:アセチル
Boc:t-ブトキシカルボニル
Cbz:ベンジルオキシカルボニル
tBu:t-ブチル
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
THF:テトラヒドロフラン
NMM:N-メチルモルホリン
TMSCl:クロロトリメチルシラン
PEPPSI(商標):Pd-pyridine-enhanced precatalyst preparation stabilization and initiation
PBS:Phosphate Buffered Saline
rt:室温
h:時間