(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】電気錠
(51)【国際特許分類】
E05B 17/18 20060101AFI20221219BHJP
E05B 13/00 20060101ALI20221219BHJP
E05B 41/00 20060101ALI20221219BHJP
E05B 17/00 20060101ALI20221219BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
E05B17/18 H
E05B13/00 B
E05B41/00 E
E05B17/00 D
E05B49/00 J
(21)【出願番号】P 2018186695
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-09-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年6月1日に、株式会社WEST inxが、ミサワホーム株式会社(本社所在地 東京都新宿区西新宿二丁目4番1号)にて、本願発明に係る電気錠を販売した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000147442
【氏名又は名称】株式会社WEST inx
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】西 康雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 一徳
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-271523(JP,A)
【文献】特開平09-078904(JP,A)
【文献】特開平10-331493(JP,A)
【文献】特開2011-202485(JP,A)
【文献】特開2017-193854(JP,A)
【文献】特開2017-172291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア本体に取り付けられ、錠機構と連動して解錠状態と施錠状態を切り替える施解錠操作が可能な電気錠であって、
本体部と、前記本体部に対して着脱可能な化粧板部材を備え、
前記本体部は、外部の鍵を挿入可能な鍵穴を有する鍵部材を含んで形成されるものであり、
前記施解錠操作は、電動操作と手動操作のそれぞれで実施可能であり、
前記手動操作による前記施解錠操作では、前記鍵穴に前記鍵を挿入するものであり、
前記電動操作による前記施解錠操作は、前記本体部に前記化粧板部材を取り付けた状態で行うことが可能であり、
前記化粧板部材が前記本体部に取り付けられた状態では、前記化粧板部材が前記鍵穴の外側を覆う
ものであり、
前記本体部は、外筒部と、外筒部の内側に位置する内側部と、前記電動操作による前記施解錠操作で操作する操作ボタンをさらに有し、
前記化粧板部材は、前記鍵穴に挿入可能な挿入部を有し、
前記挿入部を前記鍵穴に挿入することで前記化粧板部材が前記本体部に取り付けられた状態となるものであり、前記化粧板部材が前記本体部に取り付けられた状態において、前記化粧板部材の外側面と、前記操作ボタンの外側面とが略同一平面上に位置するものであり、
前記挿入部を前記鍵穴から引き抜くことで前記化粧板部材が取り外された状態となるものであり、
前記外筒部は、前記内側部に対してスライド移動可能であり、
前記化粧板部材が前記本体部に取り付けられた状態で、前記外筒部をスライド移動することで、前記化粧板部材の一部が前記外筒部の内側に位置する状態と、前記化粧板部材の一部が前記外筒部の外部に位置する状態を切り替え可能であり、
前記スライド移動では、前記外筒部が前記ドア本体から離れる方向、又は、前記ドア本体に近づく方向に移動し、前記外筒部を前記ドア本体から離れる方向に移動させると前記外筒部が移動後の位置に配された状態が維持され、前記化粧板部材の一部が前記外筒部の内側に位置する状態が維持されることを特徴とする電気錠。
【請求項2】
前記鍵部材は、シリンダー錠であり、
前記挿入部を前記鍵穴に挿入した状態において、前記挿入部と前記シリンダー錠のピンが係合し、前記挿入部の抜け止めとして機能することを特徴とする請求項1に記載の電気錠。
【請求項3】
前記解錠状態と前記施錠状態のいずれであるのかを報知する施解錠報知手段を有し、
前記施解錠報知手段は、前記施解錠操作によって前記解錠状態となった状態と、前記施解錠操作によって前記施錠状態となった状態とで異なる色の光を発光するものであることを特徴とする請求項
1又は2に記載の電気錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動で施解錠が可能な電気錠に関するものであり、特に、電動のみならず手動での施解錠が可能な電気錠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部のリモコンキーを操作したり、リモコンキーを携帯したままドアに近づいたり、カードキーをドアに取り付けられたカードリーダにかざしたりすることで、ドアの施錠状態と解錠状態を切り替え可能な所謂電気錠が知られている。
【0003】
このような電気錠として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
特許文献1に開示された電気錠は、一目見て電気錠を採用した扉であることが解らないように、シリンダー錠の本体内に電気錠を形成する主要機器を内蔵して形成している。つまり、部外者に電気錠を採用していることが悟られないように、電気錠ではない通常のシリンダー錠と外観が変わらないものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気錠は、停電となった場合等、非常時において正常に動作しない場合が考えられる。
そこで、電気錠を採用する際には、上記したリモコンキーやカードキーを用いた電動による施解錠操作に加え、手動での施解錠操作が可能な構造とし、緊急時においてもドアの施解錠操作を可能とする場合がある。
つまり、鍵を差し込んで捻る動作のように、電気の供給の有無によらず実行可能な手動による施解錠操作も可能な構造とし、電動と手動のそれぞれで施解錠が可能な構造としている場合がある。
【0006】
ここで、上記したように、電気錠を採用していることを部外者に知られたくないという要求がある一方で、反対に、電気錠を採用する場合、手動による施解錠で使用する鍵穴部分を隠しておきたいという要求もある。
【0007】
具体的に説明すると、鍵穴部分が露出している場合、ピッキングやシリンダーの破壊を行う侵入窃盗犯から侵入対象として目を付けられることがある。
つまり、手動解錠が不可能な型(シリンダーを有さない型)の電気錠と、通常の鍵穴部分を有するシリンダー錠では、侵入窃盗犯による解錠手口が異なる。このため、通常のシリンダー錠付きの扉を狙う侵入窃盗犯は、手動解錠が不可能な型の電気錠が採用されている場合、その事実をもって不法侵入を諦める場合がある。
このことから、電気錠を採用する場合、主に緊急時に使用する鍵穴部分の存在を部外者に極力知られたくないという要求がある。
【0008】
そこで本発明は、電動と手動のそれぞれで施解錠が可能な電気錠において、手動による施解錠で使用する鍵穴部分を隠しておくことが可能な電気錠を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、ドア本体に取り付けられ、錠機構と連動して解錠状態と施錠状態を切り替える施解錠操作が可能な電気錠であって、
本体部と、前記本体部に対して着脱可能な化粧板部材を備え、前記本体部は、外部の鍵を挿入可能な鍵穴を有する鍵部材を含んで形成されるものであり、前記施解錠操作は、電動操作と手動操作のそれぞれで実施可能であり、前記手動操作による前記施解錠操作では、前記鍵穴に前記鍵を挿入するものであり、前記電動操作による前記施解錠操作は、前記本体部に前記化粧板部材を取り付けた状態で行うことが可能であり、前記化粧板部材が前記本体部に取り付けられた状態では、前記化粧板部材が前記鍵穴の外側を覆うものであり、前記本体部は、外筒部と、外筒部の内側に位置する内側部と、前記電動操作による前記施解錠操作で操作する操作ボタンをさらに有し、前記化粧板部材は、前記鍵穴に挿入可能な挿入部を有し、前記挿入部を前記鍵穴に挿入することで前記化粧板部材が前記本体部に取り付けられた状態となるものであり、前記化粧板部材が前記本体部に取り付けられた状態において、前記化粧板部材の外側面と、前記操作ボタンの外側面とが略同一平面上に位置するものであり、前記挿入部を前記鍵穴から引き抜くことで前記化粧板部材が取り外された状態となるものであり、前記外筒部は、前記内側部に対してスライド移動可能であり、前記化粧板部材が前記本体部に取り付けられた状態で、前記外筒部をスライド移動することで、前記化粧板部材の一部が前記外筒部の内側に位置する状態と、前記化粧板部材の一部が前記外筒部の外部に位置する状態を切り替え可能であり、前記スライド移動では、前記外筒部が前記ドア本体から離れる方向、又は、前記ドア本体に近づく方向に移動し、前記外筒部を前記ドア本体から離れる方向に移動させると前記外筒部が移動後の位置に配された状態が維持され、前記化粧板部材の一部が前記外筒部の内側に位置する状態が維持されることを特徴とする電気錠である。
【0010】
本発明の電気錠は、化粧板部材を取り付けることで、化粧板部材が鍵穴の外側を覆った状態となり、鍵穴の存在を部外者に隠すことが可能となる。つまり、部外者が一見して鍵穴の存在を確認できない状態とすることが可能であり、防犯性が高い。
また、本発明の電気錠は、化粧板部材を取り付けた状態で電動操作による施解錠操作を行うことが可能であり、施解錠操作が行われる際にも、あたかも手動解錠が不可能な型の電気錠のように見せかけることができる。
さらに、電動による施解錠を主として運用することで(通常時には電動による施解錠を使用することで)、鍵穴が即座に鍵を挿入できない状態であっても、使用者が不便さを感じることがない。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記鍵部材は、シリンダー錠であり、前記挿入部を前記鍵穴に挿入した状態において、前記挿入部と前記シリンダー錠のピンが係合し、前記挿入部の抜け止めとして機能することを特徴とする請求項1に記載の電気錠である。
【0012】
かかる構成によると、化粧板部材の意図しない脱落を防止可能であり、好ましい。また、化粧板部材を強固に取り付けるための部材を本体側に別途設ける必要がなく、構造を簡易化できるので、製造コストの削減を図ることができる。
【0013】
本発明では、前記本体部は、外筒部と、外筒部の内側に位置する内側部とを有し、前記外筒部は、前記内側部に対してスライド移動可能であり、前記化粧板部材が前記本体部に取り付けられた状態で、前記外筒部をスライド移動することで、前記化粧板部材の一部が前記外筒部の内側に位置する状態と、前記化粧板部材の一部が前記外筒部の外部に位置する状態を切り替え可能である。
【0014】
かかる構成では、化粧板部材の一部を外筒部の内側に位置させた、化粧板部材を取り外し難い状態(着脱可能であることが部外者に解りにくい状態)と、化粧板部材の一部を外筒部の外部に位置させた、化粧板部材を取り外しやすい状態を切り替え可能である。
このため、通常時には、化粧板部材が取り外し可能であることを解りにくくすることが可能であり、化粧板部材を取り外す際には、化粧板部材を取り外し易くすることができる。
【0015】
本発明では、前記本体部は、前記電動操作による前記施解錠操作で操作する操作ボタンをさらに有し、前記化粧板部材が前記本体部に取り付けられた状態において、前記化粧板部材の外側面と、前記操作ボタンの外側面とが略同一平面上に位置する。
【0016】
かかる構成では、化粧板部材の外側面と操作ボタンの外側面とが略同一平面上に位置した状態で、電気錠の外表面を形成する。このことから、化粧板部材が存在している部分が周囲より盛り上がったりせず、化粧板部材を目立ち難くすることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記解錠状態と前記施錠状態のいずれであるのかを報知する施解錠報知手段を有し、前記施解錠報知手段は、前記施解錠操作によって前記解錠状態となった状態と、前記施解錠操作によって前記施錠状態となった状態とで異なる色の光を発光するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気錠である。
【0018】
かかる構成によると、使用者が解錠状態であるのか、施錠状態であるのかを容易に識別可能となり、好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、手動による施解錠で使用する鍵穴部分を隠しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る電気錠を採用したドア構造を示す斜視図であり、(a)、(b)はそれぞれ異なる方向からみた様子を示す。
【
図2】
図1の第一錠ユニットに第一電気錠、第一サムターンが取り付けられている様子を示す斜視図であり、(a)、(b)はそれぞれ異なる方向からみた様子を示す。
【
図3】
図1の第一電気錠を示す斜視図であり、(a)は本体部に化粧板部材を取り付けた状態を示し、(b)は本体部から化粧板部材を取り外した状態を示す。
【
図6】
図3の化粧板部材を示す斜視図であり、(a)、(b)はそれぞれ異なる方向からみた様子を示す。
【
図7】
図3の第一電気錠を示すA-A断面図である。
【
図8】
図3(a)で示される第一電気錠において、外筒部材をドア本体側へスライド移動させる様子を示す図であり、(a)、(b)それぞれで左図は側面図、右図は斜視図であって、(a)、(b)の順に移動する様子を示す。
【
図9】
図1の第二電気錠を示す斜視図であり、(a)は本体部に化粧板部材を取り付けた状態を示し、(b)は本体部から化粧板部材を取り外した状態を示す。
【
図10】
図1(a)のリモコンキーを示す説明図であり、(a)はキー本体部にブレード部を収納した様子を示し、(b)はブレード部の大部分を外部に露出させる様子を示す。
【
図11】
図1の第一錠ユニットで施解錠操作が実行されたことを報知する様子を示す説明図であり、(a)は通常の状態、(b)は発光領域が発光している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る電気錠1と、この電気錠1を採用したドア構造2について、図面を参照しつつ詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、特に断りのない限り、上下方向、前後方向、左右方向は、
図1(a)で示される状態を基準として説明する。
【0022】
本実施形態の電気錠1は、開閉可能に形成される板状のドア本体3に取り付けられて使用するものである。
すなわち、この電気錠1は、主にマンション等の建屋内で専有スペースと共有スペースを区画するドアや、一戸建て等において玄関となる部分に設けられるドアに対して取り付け可能なものである。言い換えると、電気錠1は、居住空間の出入口に設けられるドア本体3に取り付けることを想定したものとなっている。
【0023】
本実施形態の電気錠1を採用したドア構造2では、
図1(a)で示されるように、ドア本体3の一主面側の部分に対し、第一電気錠4、第二電気錠5からなる2つの電気錠1と、ドアハンドル6を取り付けている。また、
図1(b)で示されるように、その反対側となる他方主面側の部分には、第一サムターン7と、第二サムターン8と、ドアハンドル6を取り付けている。
そして、2つのドアハンドル6の間にラッチ錠ユニット9を取り付けている。また、第一電気錠4と第一サムターン7の間と、第二電気錠5と第二サムターン8の間のそれぞれには、第一錠ユニット10(錠機構)と、第二錠ユニット11(錠機構)をそれぞれ取り付けている。
【0024】
加えて、本実施形態のドア構造2は、図示しない制御装置(以下、上位制御装置と称する)を有する。そして、リモコンキー12及びカードキー13により、施解錠操作が可能な構造となっている(詳しくは後述する)。
なお、この上位制御装置は、第一電気錠4、第二電気錠5から送信される信号に基づいて、第一錠ユニット10、第二錠ユニット11の動作を制御するものである。すなわち、公知のそれと同様に、CPU、記憶手段、他の機器との間で信号の送受信が可能な信号送受信手段を備えており、記憶手段に制御用のプログラムが記憶されたものとなっている。
【0025】
このドア構造2では、2つのドアハンドル6のそれぞれがラッチ錠ユニット9と連結しており、ドアハンドル6の操作に応じてラッチ錠ユニット9の本体ケースからラッチが出没する。
【0026】
また、このドア構造2では、
図2で示されるように、第一電気錠4と第一サムターン7のそれぞれが第一錠ユニット10に取り付けられている。
したがって、第一電気錠4に対して所定の操作をする(詳しくは後述する)、又は、第一サムターン7をつまんで回す操作をすることで、第一錠ユニット10の本体ケースからデッドボルト15が出没する構造となっている。
なお、付言すると、この第一錠ユニット10は、例えば、モータやソレノイドといった図示しない動力源を備えている。このことから、この動力源に通電することで、第一電気錠4に対する操作に基づき、デッドボルト15を自動で出没させる動作が可能となっている。
【0027】
同様に、第二電気錠5と第二サムターン8のそれぞれもまた、第二錠ユニット11に取り付けられている(詳細な図示を省略する、
図1参照)。
このことから、第二電気錠5に対して所定の操作をする(詳しくは後述する)、又は、第二サムターン8をつまんで回す操作をすることで、第二錠ユニット11の本体ケースからデッドボルト15が出没する構造となっている。
なお、この第二錠ユニット11もまた、第一錠ユニット10と同様に、モータやソレノイドといった図示しない動力源を備えている。このことから、この動力源に通電することで、第二電気錠5に対する操作に基づき、デッドボルト15を自動で出没させる動作が可能となっている。
【0028】
第一電気錠4は、
図3で示されるように、全体の概形が略円柱状となるように形成されている。この第一電気錠4は、本体部25と、本体部25に対して着脱自在に形成された化粧板部材26を有する。
【0029】
本体部25は、
図4で示されるように、大別して外筒部材30(外筒部)と、外筒部材の内側に位置する内側部材31(内側部)と、一部が内側部材31の内部に位置する鍵部材32と、上記したドア本体3と接触する部分を形成する土台部33とを有している。
【0030】
外筒部材30は、概形が略有底円筒状となるように形成された部材であり、土台部33側(後方側)に位置する一部分の径方向長さが短い。
つまり、外筒部材30は、前方側の大径部30aと後方側の小径部30bを有しており、大径部30aと小径部30bのそれぞれにおいて円環状に連続する側面部分が、段差を介して連続している。
【0031】
また、外筒部材30の内部には、大径部30aと小径部30bの境界となる部分の近傍に、仕切壁部30cが形成されている。
この仕切壁部30cは、外筒部材30の径方向に広がる面を有する壁状部分を形成しており、鍵部材32や他部材を挿通するための貫通孔が適宜の部分に形成されている。
【0032】
内側部材31は、概形が略短円柱状となる部分であり、前端側部分に鍵穴露出孔31aと、操作ボタン部38(操作ボタン)を有する。また、内部には、鍵部材32の一部分を配するための空間である鍵部材配置部が設けられている。
【0033】
すなわち、内側部材31の上側部分には、内部に鍵部材配置部が形成されており、後方側から鍵部材32の前方側部分を挿入可能な構造となっている。
そして、鍵穴露出孔31aは、この鍵部材配置部と外部を連通する孔であり、内側部材31の前端側部分から鍵部材配置部まで延びている。
【0034】
また、操作ボタン部38は、内側部材31の前端側部分のうち、上下方向の中心近傍から下端近傍までの部分に設けられている。
この操作ボタン部38は、半円板状の押圧板部38aを有しており、この押圧板部38aを押し込むことで、内側部材31に内部に配されたスイッチが押圧される構造となっている。
【0035】
この内側部材31は、全体が外筒部材30(大径部30a)の内部に収容可能な大きさとなっている。すなわち、内側部材31の径方向長さは、大径部30aの径方向長さよりも小さい。
【0036】
鍵部材32は、シリンダー錠であり、公知のそれと同様に、概形が略円筒状となる部材である。具体的に説明すると、鍵部材32は、外筒部分32aと内筒部分32bがあり、内筒部分32bが外筒部分32aに挿入されている(
図7参照)。
そして、外筒部分32aと内筒部分32bには、これらを連通する複数の穴が設けられ、その連通穴のそれぞれにピン32cが配されている(
図7参照)。そして、内筒部分32bには、鍵穴43が設けられている(
図7参照)。
なお、作図の都合上、一部のピン32cにのみ符号を付し、他への符号を省略する。
【0037】
このことから、鍵穴43に所定の鍵のブレード部分を挿入することで、外筒部分32aと内筒部分32bの界面とピン32cの境界が合致し、内筒部分32bが外筒部分32aに対して回転可能な状態となる。すなわち、正規の鍵のブレード部71(
図10参照)を挿通した状態においてのみ、挿通した鍵全体をそのまま捻る動作が可能となり、この動作に伴って、施解錠動作(第一錠ユニット10のデッドボルト15の出没動作)が実行される。
【0038】
ここで、内側部材31の内部に鍵部材32の一部を配した状態としたとき、鍵穴露出孔31aの奥側となる奥まった位置に鍵穴43が位置した状態となる。すなわち、本体部25を前方側からみると、
図5で示されるように、鍵穴43の開口全域が目視可能(外部に露出した状態)となる。
【0039】
土台部33は、
図4で示されるように、略有底円筒状の土台部本体33aと、土台部本体33aの外周面の前端側部分に位置するフランジ部33bとを有する。
土台部本体33aは、内部に外筒部材30の小径部30bを挿入可能な大きさとなっている。すなわち、土台部本体33aの内径は、小径部30bの外径よりも大きい。
また、土台部本体33aの底部分を形成する土台側仕切壁部33cは、土台部本体33aの径方向に広がる面を有する壁状部分を形成しており、鍵部材32や他部材を挿通するための貫通孔が適宜の部分に形成されている。
【0040】
化粧板部材26は、
図6で示されるように、略半円板状の本体板部47と、挿入部48を有している。
挿入部48は、本体板部47の一主面側である後側面からさらに後方に突出する部分であり、突出方向基端側に位置するベース部48aと、長板状部48bに区画される部分である。
【0041】
ベース部48aは、全体の概形が略円柱状の部分であり、詳細には、突出方向の基端側に位置する略円柱状の部分と、突出端側に位置する略半球形の部分とが一体となって形成されている。つまり、ベース部48aは、突出端側の部分が膨らみを有する形状であり、後方側(
図6(b)では手前側)に向かって丸みを帯びて凸となっている。
【0042】
長板状部48bは、一般的な鍵のブレード部分を模した形状となっている。すなわち、ブレード部分のような形状となるように、長方形立板状の部分の外表面に対し、溝、窪み、欠落部分が適宜形成されている。つまり、長方形立板状の部分に対し、溝、窪み、欠落部分から選択される一以上が形成されたものとなっている。
なお、これら溝、窪み、欠落部分の形成位置、数、形状、又は、溝の長さ、溝の延び方向、窪みの深さ等は、最終的に形成する長板状部48bの形状に応じて適宜変更可能となっている。つまり、長板状部48bは、ディスクシリンダー用のキーを模した形状とする場合や、ディンプルキーを模した形状とする場合等、それぞれ場合において溝、窪み、欠落部分を適宜形成して作成される。
【0043】
また、本体部25と化粧板部材26は、
図3(b)で示されるように、脱落防止部材50で連結されている。なお、
図3(b)では、作図の都合上、脱落防止部材50の中途部分を省略して示す。
脱落防止部材50は、扁平な紐状の部材であり、一端側が本体部25の前面上方側に固定されており、他端側が化粧板部材26の本体板部47における一主面側(後面側)に固定されている。
すなわち、本体板部47において、挿入部48が形成されている主面と同じ主面に、脱落防止部材50の一端が固定されている(
図6(b)参照)。
【0044】
続いて、本体部25に対して化粧板部材26を取り付ける際と、本体部25から化粧板部材26取り外す際の手順について説明する。
【0045】
本体部25に化粧板部材26を取り付ける際には、
図3(b)で示されるように、化粧板部材26が本体部25から離れた位置にある状態から、化粧板部材26の挿入部48(
図6参照)を本体部25の鍵穴43に挿入する。
【0046】
すなわち、
図7で示されるように、鍵穴露出孔31a及び鍵穴43の内部に挿入部48が入り込んだ状態とする。
詳細には、挿入部48のうち、ベース部48aの大部分が、鍵穴露出孔31aの内部に位置した状態となり、長板状部48bの大部分が鍵穴43の内部に位置した状態となる。
【0047】
ここで、長板状部48bは、正規の鍵となるリモコンキー12のブレード部71(
図10参照)と比べて長さが短く、また、形状が異なる。このことから、長板状部48bは、ブレード部分を模して形成されてはいるものの、施解錠操作に使用できない部分となっている。
【0048】
具体的に説明すると、長板状部48bとブレード部71とは、全体の大きさや、溝、窪み、欠落部分の数や形状、形成位置の少なくとも一以上が異なるように形成されている。そして、このことにより、長板状部48bは、鍵穴43に挿通しても、鍵部材32の内筒部分32bが外筒部分32aに対して回転可能な状態とならないように形成されている。
したがって、何者かが化粧板部材26を盗み取り、化粧板部材26を不正に使用して(例えば、挿入部48のみを折り取る等して)解錠操作を行おうとしても、解錠操作の実行が不可能なようになっている。
【0049】
その一方で、長板状部48bは、鍵穴43に対して挿入可能に形成されており、鍵穴43に挿入することで、長板状部48bに形成された溝、窪み、欠落部分と、鍵部材32のピン32cが係合する構造となっている。
つまり、長板状部48bを鍵穴43に挿入することで、長板状部48bの溝、窪み、欠落部分に対し、鍵部材32の複数のピン32cのうちの一部が入り込んだ状態となる。このことから、長板状部48bが鍵穴43挿入された状態で、長板状部48bに引き抜き方向へ力が働いても、長板状部48bの被係合部(溝、窪み、欠落部分)と係合する鍵部材32の係合部(ピン32c)が抜け止めとして作用する。
すなわち、長板状部48bを鍵穴43から引き抜く際には、一定以上の力で引き抜く必要があり、意図しない化粧板部材26の脱落を防止することができる。
【0050】
また、本体部25に化粧板部材26を取り付けた状態では、
図3(a)で示されるように、化粧板部材26の本体板部47と、操作ボタン部38の押圧板部38aとが上下方向に並列配置された状態となる。
そして、本体板部47と押圧板部38aがいずれも外筒部材30の内部に位置し、これらの前面同士が同一平面上(略同一平面上)に位置した状態となる。
なお、ここでいう略同一平面上とは、完全に同一平面上に位置した状態の他、数mm程度(本体板部47又は押圧板部38aの最大厚さ以下であって遠目に目立たない程度)の微細なずれを許容するものとする。
【0051】
つまり、本体板部47と押圧板部38aとがあたかも一つの円板状の部分を形成するように互いに隣接し、且つ、並列するように配されて、外筒部材30の前端側開放部分を塞ぐように位置する。そして、外筒部材30の内部において、第一電気錠4の前面部分の略全域に亘る部分を形成する。
このことから、第一電気錠4は、概形が略円柱状となる塊状の部分に見えるので、化粧板部材26が本体部25に対して着脱可能であることを目立たなくすること(部外者に解り難くすること)ができる。
【0052】
このように、本体部25に化粧板部材26を取り付けると、化粧板部材26の本体板部47が鍵穴43及び鍵穴露出孔31aの前端側開口の前方側に位置し、これらの前方側(ドア本体3を基準とした外側)を覆った状態となる。このことにより、鍵穴43、鍵穴露出孔31aが外部に露出しない状態となり、これらの存在を部外者が一見して解らない状態とすることができる。
【0053】
続いて、本体部25から化粧板部材26を取り外す際の手順について説明する。
まず、
図8(a)で示されるように、外筒部材30をドア本体3側へスライド移動させる。
すなわち、外筒部材30は、内側部材31と土台部33に対してドア本体3の厚さ方向沿ってスライド移動可能であり、ドア本体3へ近づく方向と、ドア本体3から離れる方向のそれぞれに移動可能となっている。詳細には、外筒部材30をドア本体3側へ移動させる際、大径部30aの後端側部分がフランジ部33bの前端側部分に当接するまで移動可能となっている。
【0054】
このように、外筒部材30をドア本体3側へ移動させることで、化粧板部材26の本体板部47と、操作ボタン部38の押圧板部38aが外筒部材30の外部に位置した状態となる。すなわち、これらの側面部分(両主面の間に位置する側面部分)が外部に露出した状態となる。
【0055】
このことから、化粧板部材26を取り外す際、使用者がつまむための部分(つまみ代となる部分)が外部に露出した状態となり、化粧板部材26を取り外しやすくなる。
そして、この状態から化粧板部材26をつまんで引き抜くことで、化粧板部材26が本体部25から取り外された状態となる。
【0056】
つまり、化粧板部材26を本体部25に取り付けた状態では、化粧板部材26の本体板部47を外筒部材30の内部に配することで、部外者に化粧板部材26が取り外し可能であることを解り難くすることができる。
その一方で、化粧板部材26を取り外す際には、本体板部47を外筒部材30の外部に位置させることで、使用者が本体板部47をつまみ易くなり、化粧板部材26を取り外し易くすることができる。
【0057】
ここで、この第一電気錠4は、内部にリモコンキー12からの信号を受信する受信装置が内蔵されている。
この受信装置は、リモコンキー12から送信された信号を受信する信号受信手段と、送信された信号が所定の条件に合致する信号を含んでいるか否かを判別する判別手段を有する。
また、この第一電気錠4は、制御装置(第一制御装置)が内蔵されており、所定の操作(詳しくは後述する)がされたことを条件として、上記した上位制御装置(図示しない)に情報を送信する。そして、第一電気錠4からの信号を受信した上位制御装置が第一錠ユニット10(
図1参照)に信号を送信することで、第一錠ユニット10のデッドボルト15を自動で出没させる動作が実施される。
【0058】
第二電気錠5もまた、
図9で示されるように、全体の概形が略円柱状に形成された部材であり、本体部60と、本体部60に対して着脱自在に形成された化粧板部材61を有している。
なお、第二電気錠5について以下で詳細に説明するが、上記した第一電気錠4と同様の部分については、詳細な説明を省略する。
【0059】
第二電気錠5の本体部60もまた、上記した第一電気錠4と同様に、外筒部材30と、外筒部材の内側に位置する内側部材63と、一部が内側部材63の内部に位置する鍵部材32と、土台部33を有している。
【0060】
第二電気錠5の外筒部材30もまた、内側部材63と土台部33に対してドア本体3の厚さ方向沿ってスライド移動可能に形成されている。
すなわち、本体部60に化粧板部材61を取り付けた状態において、化粧板部材61の本体板部65を外筒部材30の内部に配した状態と、本体板部65を外筒部材30の外部に配した状態を切り替え可能となっている。
【0061】
内側部材63は、上記した第一電気錠4と同様に、概形が略短円柱状となる部分であり、鍵穴露出孔63aと鍵部材配置部を有している。そして、内部に鍵部材32の一部分を配した状態で前面(外側面)側からみたとき、鍵穴43が外部に露出する構造となっている。すなわち、鍵穴露出孔63aの奥まった部分に鍵穴43が位置している。
【0062】
また、この内側部材63は、操作ボタン部38が形成されていない点において、上記した内側部材31とは異なる構造となっている。
【0063】
化粧板部材61は、本体板部65と挿入部48を有しており、本体板部65の概形が略円板状である点において、上記した化粧板部材26とは異なるものとなっている。
そして、本体部60と化粧板部材61が脱落防止部材50で連結されている。なお、作図の都合上、
図9では、脱落防止部材50の中途部分を省略して示す。
【0064】
ここで、この第二電気錠5は、内部に受信装置ではなくカードリーダが内蔵されている点において、上記した第一電気錠4とは異なる構造となっている。
【0065】
カードリーダは、カードキー13と通信可能であり、カードキー13に記憶された情報を読み取り可能なものとなっている。すなわち、第二電気錠5にカードキー13をかざすことで、内部のカードリーダがカードキー13に設けられたICチップ等から情報を取得する。
つまり、カードリーダは、カードキー13から情報(信号)を取得する情報取得手段と、カードキー13が所定の条件に合致する情報(信号)を含んでいるか(カードキー13が正規のものであるのか)否かを判別する判別手段とを有する。
【0066】
そして、第二電気錠5もまた、制御装置(第二制御装置)を備えており、所定の操作(詳しくは後述する)がされたことを条件として、上記した上位制御装置(図示しない)に信号(情報)を送信する。そして、第二電気錠5からの信号を受信した上位制御装置が第二錠ユニット11に信号を送信することで、第二錠ユニット11のデッドボルト15(
図1参照)を自動で出没させる動作が実施される。
【0067】
続いて、本実施形態のドア構造2で実施可能な施解錠操作について説明する。
なお、便宜上、
図1で示されるドア本体3において、第一電気錠4、第二電気錠5が配されている主面側を外部側、第一サムターン7、第二サムターン8が配されている主面側を室内側として説明する。
【0068】
まず、施解錠操作の説明に先立って、リモコンキー12について説明する。
リモコンキー12は、
図10で示されるように、箱状のキー本体部70と、ブレード部71とを有する。
【0069】
キー本体部70は、概形が略直方体状の部分であり、裏面側部分(
図10における正面部分)に鍵操作ボタン70aが設けられている。また、図示を省略するが、キー本体部70の側面部分には、動作確認ランプと、複数の操作ボタンが設けられている。
なお、動作確認ランプは、鍵操作ボタン70aが押下される等、リモコンキー12に対して使用者による所定の操作がなされたとき、所定の色の光を発光する部分である。
【0070】
ここで、キー本体部70は、内部に制御装置(キー側制御装置)と、所定の信号を送信する送信機を備えた構造となっている。このことから、リモコンキー12は、通常の状態において、信号(微弱な電波)を常時発信している。また、上記した鍵操作ボタン70aが押下された際、所定の信号を発信するものとなっている。
【0071】
ブレード部71は、大部分をキー本体部70から露出させた状態で(詳しくは後述する)キー本体部70側に位置する平板状部分(大部分を図示しない)と、この平板状部分からキー本体部70の外部へ向かって延びる略長方形板状の部分とを有する。
ブレード部71の略長方形板状となる部分は、通常の鍵のブレード部分と同様に、溝、窪み、欠落部分が適宜形成されている。なお、本実施形態では、ブレード部71の略長方形板状部分が、所謂ディンプルキーのブレード部分となっており、複数の窪み部分を有する。すなわち、複数の窪み部分が所定の規則に基づいて配列され、それぞれの窪み部分が所定形状及び所定の大きさとなるように形成されている。
【0072】
このブレード部71は、キー本体部70に対して回動可能に取り付けられている。そして、ブレード部71を回動させることで、ブレード部71がキー本体部70の内部に収納された状態と、ブレード部71の大部分が外部に露出した状態を切り替え可能となっている。
【0073】
すなわち、ブレード部71は、キー本体部70の表裏方向(
図10における奥行き方向)に延びる軸を回転軸とし、上記した平板状部分の一部を回動中心として回動可能となっている。
その一方、キー本体部70は、一方の側面に開口を有し、この開口部分から内部まで延びる鍵収容空間が形成されている。
したがって、ブレード部71が外部に露出した状態から、ブレード部71を回動させ、キー本体部70の側面から内部に入れ込むことにより、ブレード部71がキー本体部70に収納された状態となる。また、ブレード部71が収納された状態で、収納する際に回動させた回動方向とは逆方向に回動させることにより、ブレード部71の大部分を外部に露出した状態へ移行できる。
【0074】
このブレード部71は、停電時等の非常時にエマージェンシーキーとして使用することを想定している。すなわち、リモコンキー12は、通常時には、ブレード部71をキー本体部70の内部に収納した状態で運用し、非常時には、ブレード部71の大部分を外部に露出させて施解錠操作に使用することを想定している。
【0075】
次に、ドア本体3(
図1参照)の外部側から可能な施解錠操作について説明する。
具体的には、第一錠ユニット10の施錠状態と解錠状態を切り替える操作として、以下の第一操作(電動操作)、第二操作(電動操作)、第三操作(手動操作)がある。
【0076】
第一操作は、ドア本体3の傍で使用者がリモコンキー12を携帯した状態(衣服のポケットやカバンにリモコンキー12を入れた状態)で、第一電気錠4の操作ボタン部38を押下する操作である。
第二操作は、ドア本体3の傍で使用者がリモコンキー12の鍵操作ボタン70aを押下する操作である。
第三操作は、第一電気錠4の化粧板部材26を取り外した状態とし、リモコンキー12のブレード部71を第一電気錠4の鍵穴43に挿入して、リモコンキー12を回す(捻る)操作である。
【0077】
なお、第一操作が実施されると、第一電気錠4の受信装置が、リモコンキー12から常時送信される信号を受信する。そして、この信号が所定の条件に合致する信号を含んでいると判別され、操作ボタン部38を押下されたことを条件として、第一電気錠4の制御装置が上位制御装置に施解錠操作を実行するための信号を送信し、第一錠ユニット10の施解錠が実行される。
【0078】
また、第二操作が実施されると、リモコンキー12の鍵操作ボタン70aを押下されたことを条件として送信される信号が、第一電気錠4の受信装置に送信される。そして、この信号が所定の条件に合致する信号を含んでいると判別されたことを条件として、第一電気錠4の制御装置が上位制御装置に施解錠操作を実行するための信号を送信し、第一錠ユニット10の施解錠が実行される。
【0079】
また、第二錠ユニット11の施錠状態と解錠状態を切り替える操作として、以下の第四操作(電動操作)、第五操作(手動操作)がある。
【0080】
第四操作は、第二電気錠5にカードキー13をかざす操作である。
第五操作は、第二電気錠5の化粧板部材61を取り外した状態とし、リモコンキー12のブレード部71を第二電気錠5の鍵穴43に挿入して、リモコンキー12を回す(捻る)操作である。
【0081】
なお、第四操作が実施されると、上記したように、第二電気錠5のカードリーダによってカードキー13に記憶された情報(信号)が所定の条件に合致する情報(信号)を含んでいるか否かが判別される。そして、所定の条件に合致する情報(信号)を含んでいると判別されたことを条件として、第二電気錠5の制御装置が上記した上位制御装置(図示しない)に情報を送信し、第二錠ユニット11の施解錠が実行される。
【0082】
これに対し、ドア本体3の室内側から可能な施解錠操作は、第一サムターン7、第二サムターン8のそれぞれをつまんで捻る(つまみを回転させる)操作となっている。第一サムターン7、第二サムターン8のそれぞれをつまんで捻ることで、対応する第一錠ユニット10、第二錠ユニット11の施解錠が実行される。
【0083】
ここで、本実施形態の第一電気錠4、第二電気錠5は、電動で実施される施解錠操作(第一操作、第二操作、第四操作)が実施された際、その旨を使用者に報知する施解錠報知手段を有している。
このことにつき、以下で詳細に説明する。また、第一電気錠4の施解錠報知手段について詳細に説明し、第二電気錠5の施解錠報知手段については詳細な説明を省略する。
【0084】
第一電気錠4は、
図11で示されるように、前面部分に円環状に連続する発光領域75を備えた構造となっている。
発光領域75は、第一電気錠4の前面を形成する板状部分の縁端側、すなわち、本体板部47と押圧板部38a(第二電気錠5では本体板部65)の縁端部分に形成された透明部分である。したがって、特に限定されるものではないが、本体板部47と押圧板部38aは、透明板に対し、縁端部分以外を着色する等により、形成することができる。
なお、ここでいう「透明」とは、物質を通してその先にあるものが透けて見えることをいい、無色だけではなく、有色である場合も含む。
【0085】
また、第一電気錠4の本体部25は、LED等で形成される発光手段(図示しない)を有する。そして、発光手段が発光することで、発光領域75が発光する構造となっている。つまり、第一電気錠4は、施解錠報知手段として、発光手段と、発光領域75を有している。
【0086】
そして、上記した電動で実施される施解錠操作により、施錠状態から解錠状態に切り替わった場合と、解錠状態から施錠状態に切り替わった場合とで、発光領域75が異なる色で発光するものとなっている。
なお、本実施形態では、特に限定されるものではないが、解錠状態に移行した場合は赤色、施錠状態に移行した場合は青色で発光する。すなわち、施錠状態から解錠状態に移行した場合、所定時間(例えば、数秒間)だけ、発光領域75が赤色発光する。対して、解錠状態から施錠状態に移行した場合、所定時間(例えば、数秒間)、発光領域75が青色発光する。
【0087】
上記した実施形態では、施解錠報知手段として、電気錠1の前面縁端側が異なる色で発光する例について説明したが、本発明の施解錠報知手段は、これに限るものではない。
例えば、本体部25,60等にスピーカ等の発音手段を設け、この発音手段を施解錠報知手段としてもよい。この場合、例えば、解錠状態に移行した場合は「ピッ、ピッ」と短い音を二回発し、施錠状態に移行した場合は、「ピッ」と短い音を一回発するものとしてもよい。また、上記した発光による報知動作と、発音による報知動作を同時に実行してもよい。
【0088】
また、発光による報知動作で発光する発光色と、発音による報知動作で発音する音とは、適宜変更してよく、施錠状態への移行時と、解錠状態へ移行時のそれぞれの状態を区別できればよい。
例えば、それぞれの状態で発音回数を変更するのではく、異なる音を発してもよい。また、それぞれの状態で、発音回数と発する音のいずれもが異なるようにしてもよい。また、それぞれの状態のいずれか一方のみで報知動作を実施してもよい。
【0089】
上記した実施形態では、電気錠1が、受信装置、制御装置、カードリーダ、発光手段や発音手段(施解錠報知手段)等の電子機器を有する構造について説明した。
ここで、これらの電気錠1が機能するための電子機器は、本体部25,60が備えていても(本体部25,60に内蔵されても)よく、化粧板部材26,61の本体板部47,65が備えていても(本体板部47,65に内蔵されても)よい。また、これらのそれぞれに分けて配されていてもよい。
そして、化粧板部材26,61の本体板部47,65が、電子機器を形成する基板等の一部又は全部を備えた構造とする場合、脱落防止部材50の内部に配線部材を設けてもよい。具体的には、電子機器に電力を供給するための給電線や、本体板部47,65側の電子機器と本体部25,60側の機器とが信号を送受信するための信号線が、脱落防止部材50の内部に配されてもよい。
つまり、脱落防止部材50が、化粧板部材26,61の脱落を防止するための部材と、電気機器を動作させるための配線部材を兼ねる構造であってもよい。
【0090】
上記した実施形態のドア構造2は、室内に配置する操作盤を別途設け、操作盤を操作することで、第一錠ユニット10、第二錠ユニット11の施解錠操作を可能なものとしてもよい。また、操作盤には、それぞれの錠ユニットが施錠状態と解錠状態のいずれであるのかを報知する報知手段を設けてもよい。例えば、錠ユニットを解錠状態に移行させる解錠ボタンと、施錠状態に移行させる施錠ボタンを設け、解錠状態では解錠ボタンが光り、施錠状態では施錠ボタンが光るものとしてもよい。
【0091】
また、第一電気錠4、第二電気錠5は、第一錠ユニット10、第二錠ユニット11の双方の施解錠操作を同時に実施する連動機能を有するものであってもよい。
例えば、上記した第一操作や第二操作、又は、第一サムターン7をつまんで捻る操作を実施し、第一錠ユニット10を解錠状態から施錠状態へ移行させたとき、第二錠ユニット11もまた解錠状態から施錠状態へ移行するように形成してもよい。すなわち、第一電気錠4、又は、第一サムターン7を操作することで、第一錠ユニット10だけでなく、第二錠ユニット11の施解錠操作が実行されるものとしてもよい。同様に、第二電気錠5又は第二サムターン8を操作することで、第二錠ユニット11だけでなく、第一錠ユニット10の施解錠操作が実行されるものとしてもよい。
【0092】
また、上記した実施形態のドア構造2は、不正解錠対応機能を有するものであってもよい。
例えば、第一電気錠4、第二電気錠5の一方(第一錠ユニット10、第二錠ユニット11の一方)が解錠(不正解錠)され、所定時間内(例えば、25秒間)の間にもう一方が解錠されない場合、解錠された一方を自動で施錠状態へ移行させるものとしてもよい。
【0093】
また、上記した実施形態のドア構造2は、誤操作防止機能を有するものであってもよい。
例えば、第一電気錠4、第二電気錠5の一方(第一錠ユニット10、第二錠ユニット11の一方)が解錠状態となり、所定時間内にドア本体3が開かれない(ドア本体3が閉状態から開状態に移行しない)場合、自動で双方を施錠状態へ移行してもよい。
また、リモコンキー12は、内部に揺れや振動を検知するセンサを設け、所定時間に亘って静止状態(センサが揺れや振動を検知しない状態)が継続されたことを条件として、全ての信号(電波)の発信を停止する構造としてもよい。このような構成とすると、玄関等、ドア本体3の近くにリモコンキー12を置き忘れても、外部の部外者が不正解錠できず、好ましい。
【符号の説明】
【0094】
1 電気錠
10 第一錠ユニット(錠機構)
11 第二錠ユニット(錠機構)
25,60 本体部
26,61 化粧板部材
30 外筒部材(外筒部)
31 内側部材(内側部)
32 鍵部材
38 操作ボタン部(操作ボタン)
43 鍵穴