(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】足裏感触提示装置、足裏感触提示方法及び仮想現実システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20221219BHJP
A63F 13/28 20140101ALI20221219BHJP
A63F 13/211 20140101ALI20221219BHJP
A63F 13/212 20140101ALI20221219BHJP
【FI】
G06F3/01 560
A63F13/28
A63F13/211
A63F13/212
(21)【出願番号】P 2018198812
(22)【出願日】2018-10-22
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】特許業務法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 諒
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 達也
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 司
(72)【発明者】
【氏名】高松 淳
(72)【発明者】
【氏名】中村 匠
(72)【発明者】
【氏名】片山 寛基
(72)【発明者】
【氏名】パッタラポーン・ツラタン
【審査官】星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-223334(JP,A)
【文献】特開2013-240853(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181584(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0290390(US,A1)
【文献】特開2017-023610(JP,A)
【文献】国際公開第03/055345(WO,A1)
【文献】小林 優人 Masato KOBAYASHI,第23回日本バーチャルリアリティ学会大会 [online] The 23<SP>rd</SP> Annual Conference of the Virtual Reality Society of Japan,日本,2018年09月18日
【文献】菊池 武士 Takehito KIKUCHI,足底面圧力による傾斜感提示のための基礎的検討,第18回 日本バーチャルリアリティ学会大会論文集 [CD-ROM] 第18回日本バーチャルリアリティ学会大会 論文集 VRSJ 2013 KNOWLEDGE CAPITAL The 18th Annual Conference of the Virtual Reality Society of Japan The 18th Annual Conference of the Virtual Reality Society of Japan,日本,2013年09月26日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
A63F 13/28
A63F 13/211
A63F 13/212
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対して仮想現実空間内の接地面の足裏感触を再現する足裏感触提示装置であって、
仮想現実空間におけるユーザの足の状態を検出する状態検出手段と、
ユーザの足裏側に収容空間を形成
し、かつ垂直方向に区切られた領域に複数積層された柔軟性袋体と
、該袋体に収容される充填材を有し前記感触を再現する感触提示手段と、
ユーザの足裏に前記感触提示手段を装着する足裏装着手段と、
前記状態検出手段が検出した足の状態データと、仮想現実空間内の接地面の状態データとから得られる足裏感触データに応じて、前記収容空間内の圧力を制御する圧力制御手段、を備え、
ユーザの足裏と前記袋体とにおける直接的又は間接的な接触状態下で、前記足裏感触データに応じて、前記圧力制御手段が、仮想現実空間内の接地面の状態、及び、ユーザの足の状態に合わせ、前記収容空間内の圧力を変化させることを特徴とする足裏感触提示装置。
【請求項2】
前記状態検出手段は、加速度センサを用いて、足の接地面に当接する前の状態を検出することを特徴とする請求項1に記載の足裏感触提示装置。
【請求項3】
前記足裏感触提示装置は、少なくともアッパー部とソール部を備えた靴型の形状を呈し、
前記袋体は、前記ソール部に設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の足裏感触提示装置。
【請求項4】
前記袋体は、ユーザの足裏側において、垂直方向に区切られた領域に複数積層された少なくとも1層の領域内で、水平方向に複数設けられ、又は、水平方向に区切られた領域に設けられたことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の足裏感触提示装置。
【請求項5】
前記袋体は、ユーザの足裏側において、水平方向に、足指部及び足踵部の2つの領域に設けられたことを特徴とする請求項
4に記載の足裏感触提示装置。
【請求項6】
前記袋体は、ユーザの足裏側において、水平方向に、足指部、足踵部、土踏まず部、外側縦アーチ部、内側縦アーチ部の5つの領域に設けられたことを特徴とする請求項
4に記載の足裏感触提示装置。
【請求項7】
前記感触提示手段には、前記袋体又は前記ユーザの足の少なくとも何れかを振動させる振動モジュールが設けられたことを特徴とする請求項1~
6の何れかに記載の足裏感触提示装置。
【請求項8】
前記充填材は、流動可能な粒状充填材であることを特徴とする請求項1~
7の何れかに記載の足裏感触提示装置。
【請求項9】
前記袋体とユーザの足が間接的に接触する場合には、前記袋体とユーザの足の間に設けられる部材の素材は、薄板状エラストマー材料であることを特徴とする請求項1~
8の何れかに記載の足裏感触提示装置。
【請求項10】
ユーザに対して仮想現実空間内の接地面の足裏感触を再現する足裏感触提示方法であって、
仮想現実空間におけるユーザの足の状態を検出する状態検出ステップと、
ユーザの足裏と
、ユーザの足裏側に収容空間を形成し、かつ垂直方向に区切られた領域に複数積層された柔軟性袋体とにおける直接的又は間接的な接触状態下で、前記足の状態データと、仮想現実空間内の接地面の状態データとから得られる足裏感触データに応じて、前記収容空間内の圧力を制御する圧力制御ステップ、
を備えたことを特徴とする足裏感触提示方法。
【請求項11】
ユーザに対して仮想現実空間内の接地面の足裏感触を再現する仮想現実システムであって、
仮想現実空間におけるユーザの足の状態を検出する状態検出手段と、
ユーザの足裏側に収容空間を形成
し、かつ垂直方向に区切られた領域に複数積層された柔軟性袋体と該袋体に収容される充填材を有し前記感触を再現する感触提示手段と、
ユーザの足裏に前記感触提示手段を装着する足裏装着手段と、
前記状態検出手段において検出した足の状態データを受信し、該状態データを仮想現実サービス提供サーバへ送信し、かつ、仮想現実サービス提供サーバから足裏感触データを受信するデータ送受信手段と、
前記足裏感触データに応じて前記収容空間内の圧力を制御する圧力制御手段と、
ユーザが仮想現実空間内を視覚的に認識し得る映像提示手段と、
ユーザが仮想現実空間内を聴覚的に認識し得る音声提示手段と、
前記データ送受信手段、前記映像提示手段、及び前記音声提示手段と有線又は無線で接続された仮想現実サービス提供サーバと、を備え、
ユーザの足裏と前記袋体とにおける直接的又は間接的な接触状態下で、前記足裏感触データを元に、前記圧力制御手段が、仮想現実空間内の接地面の状態、及び、ユーザの足の状態に合わせ、前記収容空間内の圧力を変化させると共に、
前記映像提示手段及び前記音声提示手段により、前記仮想現実空間内を視覚的及び聴覚的に再現することを特徴とする仮想現実システム。
【請求項12】
請求項
10の足裏感触提示方法の各ステップを、コンピュータに実行させるための足裏感触提示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力制御による充填材料の状態変化現象を利用した仮想現実用の靴型デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
仮想現実世界の情報をユーザに提示する方法として、映像や音声、手への感覚提示などが提案されてきた。これにより、ユーザは視覚や聴覚だけではなく、触覚についても、目の前にある物体があたかも存在するかのような感触を味わうことができるようになっている。
このような人への感覚提示技術は、仮想現実を用いたゲーム等だけではなく、例えば、テーマパークにおける体感型のアトラクションや、医療施設や介護施設などにおけるリハビリテーション等、様々な分野で必要とされている。
そのため、更なる没入感を向上させるために足へ感覚提示を行うことが求められている。
【0003】
足への感覚提示を行う技術としては、株式会社Cerevo(登録商標)製の“Taclim Shoes”が知られている(非特許文献1を参照)。これは、VR(virtual reality;仮想現実)空間内の地面の感触をフィードバックするVRシューズであり、靴に取り付けられた3つの振動モジュールを用いて感覚提示を行うものである。
“Taclim Shoes”によれば、砂漠や草原、水辺といった空間内の地面の感触を再現できるため、VRの世界をより深く体感することが可能となっている。
しかしながら、上記非特許文献1の“Taclim Shoes”では、振動を用いた感覚提示を行うため、表現できる感覚の幅が狭いという問題がある。例えば、床面の反発力の表現や、砂利と床の相互作用といった複雑な環境再現は困難である。
【0004】
一方、内部に収容空間が形成された柔軟性を有する袋体と、上記収容空間に収容された多数の粒状体と、上記収容空間に負圧を作用させる吸引手段とを備えたハンド装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。これは、所謂ジャミング転移現象を用いることで、各粒状体を1つの塊体にして対象物を把持するものであり、これによれば、対象物の形状や大きさが変わっても1つのハンド装置で把持することができ、しかも、対象物に傷をつけることなく把持することが可能である。
しかしながら、ジャミング転移現象を利用したハンド装置は、あくまでも物体を把持するためのものであり、ヒトの足への感覚提示を行うものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
【文献】Taclim VRの世界へさらなる没入をもたらすVR触感フィードバックシステム(https://taclim.cerevo.com/ja/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した“Taclim Shoes”では、振動による感覚提示を行うが、振動パターンは限られているため、表現できる感覚の幅が狭いという問題がある。
そこで、本発明者らは、ジャミング転移現象に注目した。これは粉体の密度変化が流動特性へ影響を与える現象である。この現象を利用することで、粉体の流動特性を任意に変化させることが可能である。
しかしながら、ジャミング転移現象を利用した技術は、物体を把持するハンド装置においては用いられてきたものの、足への感覚提示を行うことには用いられていないのが現状である。
かかる状況に鑑みて、本発明は、ジャミング転移現象を利用して、空間内の接地面の感触を環境変化に合わせて再現する足裏感触提示装置、足裏感触提示方法及び仮想現実システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明の足裏感触提示装置は、ユーザに対して仮想現実空間内の接地面の足裏感触を再現する足裏感触提示装置であって、仮想現実空間におけるユーザの足の状態を検出する状態検出手段と、ユーザの足裏側に収容空間を形成する1つ以上の柔軟性袋体と該袋体に収容される充填材を有し感触を再現する感触提示手段と、ユーザの足裏に感触提示手段を装着する足裏装着手段と、状態検出手段が検出した足の状態データと、仮想現実空間内の接地面の状態データとから得られる足裏感触データに応じて、収容空間内の圧力を制御する圧力制御手段を備え、ユーザの足裏と袋体とにおける直接的又は間接的な接触状態下で、足裏感触データに応じて、圧力制御手段が、仮想現実空間内の接地面の状態、及び、ユーザの足の状態に合わせ、収容空間内の圧力を変化させる。
【0009】
袋体の収容空間に充填材を収容し、圧力制御手段により収容空間内の圧力を変化させることで、袋体の硬度、密度、体積を変更し、感覚提示を行う。これにより、仮想現実空間内の接地面の感触をリアルに再現することが可能である。
ここで接地面とは、土、砂地、アスファルトなどの地面だけではなく、沼地、マット、草原、雲のように様々な硬度や弾力性を有するもの、坂道や壁面のように傾斜のあるものも含む趣旨で用いている。
また、接地面の足裏感触とは、厳密な意味で足裏が接地面に接触する感触だけを指すのではなく、少なくとも足裏が接地面に接触する感触を含むものであればよい。すなわち、例えば、ユーザが泥濘にはまった状態を再現する場合であれば、足の側部や足背部、更には足首より上の下肢全体に対しても泥濘にはまった感触が得られるような構成としてもよい。
ここで、状態検出手段において検出するユーザの足の状態とは、ユーザの足の位置、向き、速度、加速度等のことである。また、圧力制御手段において、圧力を制御する対象物は、空気などの気体が好適であるが、気体に限られず、例えば、水、油、及びそれらの混合液体などの液体でもよい。圧力制御手段は、収容空間内のこれらの対象物の圧力を制御する。
【0010】
本発明の足裏感触提示装置において、状態検出手段は、加速度センサを用いて、足の接地面に当接する前の状態を検出することが好ましい。
足の接地面に当接する前の状態を検出することにより、ユーザの足が接地面に当接する前に、既に接地面の感触が再現された状態を作出することができる。したがって、ユーザの動きに遅れることなく、感覚提示を行うことが可能である。
【0011】
本発明の足裏感触提示装置は、少なくともアッパー部とソール部を備えた靴型の形状を呈し、袋体は、ソール部に設けられたことが好ましい。
靴型形状とされることにより、誰でも簡単に装着でき、利便性が向上する。また、袋体がソール部に設けられることにより、足裏の感覚提示を効果的に行うことができる。なお、充填材はその種類によって様々な感触を有することから、多様な感覚提示を行うために、ソール部は脱着自在としてもよい。また、これとは逆に、足裏感触提示装置の耐久性及び安定性を高めるために、ソール部を足裏感触提示装置から取り外しできない構成としてもよい。更に、多様な感覚提示を行いつつ、耐久性及び安定性を高めるために、袋体につき充填材の入れ替えが容易な構成としてもよい。
【0012】
本発明の足裏感触提示装置において、袋体は、ユーザの足裏側において、水平方向に複数設けられ、又は、水平方向に区切られた領域に設けられたことでもよい。
例えば、足指部と足踵部に独立した袋体が設けられていると、袋体毎に異なる圧力とすることも可能であるため、多様な感覚提示が可能となる。
【0013】
本発明の足裏感触提示装置において、袋体は、ユーザの足裏側において、垂直方向に区切られた領域に複数積層されたことでもよい。
袋体が上下に積層されることにより、より複雑な環境の再現が可能となる。
【0014】
本発明の足裏感触提示装置において、袋体は、ユーザの足裏側において、垂直方向に区切られた領域に複数積層された少なくとも1層の領域内で、水平方向に複数設けられ、又は、水平方向に区切られた領域に設けられたことでもよい。
水平方向だけではなく、上下にも複数の袋体が積層されることにより、よりリアルな感覚提示が可能となる。また、袋体毎に異なる充填材を充填することにより、さらに複雑な感覚提示が可能となる。
【0015】
本発明の足裏感触提示装置において、袋体は、ユーザの足裏側において、水平方向に、足指部及び足踵部の2つの領域に設けられたことでもよいし、足指部、足踵部、土踏まず部、外側縦アーチ部、内側縦アーチ部の5つの領域に設けられたことでもよい。
感覚提示を行う領域を細かく区切ることにより、より複雑な環境を再現することが可能である。例えば、袋体が足指部及び足踵部の2つの領域に設けられた場合には、足指部の圧力を高くし、足踵部の圧力を低くすることで上り坂を表現することが可能である。
また、足指部、足踵部、土踏まず部、外側縦アーチ部、内側縦アーチ部の5つの領域に設けられた場合、各領域の圧力をランダムに設定することで凸凹道を表現するといったことも可能である。
【0016】
本発明の足裏感触提示装置において、感触提示手段には、袋体又はユーザの足の少なくとも何れかを振動させる振動モジュールが設けられたことでもよい。
振動モジュールが設けられることにより、表現の幅が拡がり多様な感覚提示が可能となる。袋体を振動させる振動モジュールが設けられる場合には、袋体に当接して設けられることが好ましい。また、ユーザの足を直接振動させる振動モジュールが設けられる場合には、例えば、足指部、足踵部、足背部等に設けられる構成が考えられる。
【0017】
本発明の足裏感触提示装置において、袋体内部の充填材にはクッションビーズやスポンジ、棉などを用いることが可能であるが、中でも充填材は、流動可能な枕ビーズや発泡スチロールビーズである事が好ましい。
流動可能な粒状充填材が用いられることにより、接地面の感触をより正確に再現することが可能となる。
なお、充填材は、1つの袋体の中に複数種類の材料を充填する構成でもよい。
【0018】
本発明の足裏感触提示装置において、袋体とユーザの足が間接的に接触する場合には、袋体とユーザの足の間に設けられる部材の素材は、薄板状エラストマー材料であることが好ましい。
薄板状エラストマー材料が用いられることにより、内部空間内の圧力を一定に保つと共に、充填材から得られる感触を損ねることなく、接地面の感触をより正確に再現することが可能となる。
【0019】
本発明の足裏感触提示方法は、ユーザに対して仮想現実空間内の接地面の足裏感触を再現する足裏感触提示方法であって、下記ステップを備える。
1)仮想現実空間におけるユーザの足の状態を検出する状態検出ステップ、
2)ユーザの足裏と袋体とにおける直接的又は間接的な接触状態下で、足の状態データと、仮想現実空間内の接地面の状態データとから得られる足裏感触データに応じて、収容空間内の圧力を制御する圧力制御ステップ。
【0020】
本発明の仮想現実システムは、ユーザに対して仮想現実空間内の接地面の足裏感触を再現する仮想現実システムであって、仮想現実空間におけるユーザの足の状態を検出する状態検出手段と、ユーザの足裏側に収容空間を形成する1つ以上の柔軟性袋体と該袋体に収容される充填材を有し感触を再現する感触提示手段と、ユーザの足裏に感触提示手段を装着する足裏装着手段と、状態検出手段において検出した足の状態データを受信し、該状態データを仮想現実サービス提供サーバへ送信し、かつ、仮想現実サービス提供サーバから足裏感触データを受信するデータ送受信手段と、足裏感触データに応じて収容空間内の圧力を制御する圧力制御手段と、ユーザが仮想現実空間内を視覚的に認識し得る映像提示手段と、ユーザが仮想現実空間内を聴覚的に認識し得る音声提示手段と、データ送受信手段、映像提示手段、及び音声提示手段と有線又は無線で接続された仮想現実サービス提供サーバとを備え、感触提示手段は、少なくとも、内部に収容空間が形成された柔軟性を有する1つ以上の袋体と、収容空間に収容された充填材とを備え、ユーザの足裏と袋体とにおける直接的又は間接的な接触状態下で、足裏感触データを元に、圧力制御手段が、仮想現実空間内の接地面の状態、及び、ユーザの足の状態に合わせ、収容空間内の圧力を変化させると共に、映像提示手段及び音声提示手段により、仮想現実空間内を視覚的及び聴覚的に再現する。
【0021】
本発明の足裏感触提示プログラムは、上記の足裏感触提示方法の各ステップを、コンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の足裏感触提示装置、足裏感触提示方法及び仮想現実システムによれば、空間内の接地面の感触を環境変化に合わせて再現することができるといった効果がある。また、従来技術とは異なり、袋体の状態を直接変化させることから、より効果的に砂漠などの環境を提示することが可能であり、従来技術での振動による感覚提示では実現できない仮想現実環境への没入感向上を実現できるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例1の仮想現実システムの機能ブロック図
【
図2】実施例1の仮想現実システムのシステム構成図
【
図3】実施例1の仮想現実システムの概略イメージ図
【
図5】足状態のセンシングに基づく空気圧制御フロー図
【
図6】足状態のセンシングに基づかない空気圧制御フロー図
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0025】
図1は、実施例1の仮想現実システムの機能ブロック図を示している。
図1に示すように、仮想現実システム1は、足裏感触提示装置101、仮想現実サービス提供サーバ108、映像提示手段109及び音声提示手段110から成り、足裏感触提示装置101には、足裏装着手段102、状態検出手段103、感触提示手段104、データ送受信手段106及び圧力制御手段107が設けられている。
足裏感触提示装置101は、状態検出手段103から得られた状態データをデータ送受信手段106により仮想現実サービス提供サーバ108へ送信し、更に仮想現実サービス提供サーバ108において作製された仮想現実空間に関する足裏感触データを受信し、圧力制御手段107により、感触提示手段104における圧力を制御し、足裏への感覚提示を行うものである。
また、仮想現実サービス提供サーバ108において作製された仮想現実空間に関するデータの内、映像データは映像提示手段109に送信され、音声データは音声提示手段110へと送信される。
【0026】
図2は、実施例1の仮想現実システムのシステム構成図を示している。
図2に示すように、仮想現実システム1は、靴型デバイス2、機器制御装置5、仮想現実サービス提供サーバ8、ディスプレイ9及びスピーカ10から成る。靴型デバイス2には、加速度センサ3及びソール部4が設けられ、機器制御装置5には、データ送受信部6、空気圧制御装置7及びユーザ入力操作部50が設けられている。
加速度センサ3は、ユーザ(図示せず)の足の状態をセンシングするためのものである。また、ソール部4は、充填材を収容した袋体から成り、空気圧制御装置7とチューブ70で接続されている。ユーザ入力操作部50は、ユーザにより靴型デバイスや仮想現実システムのモード設定やオンオフ等の操作を行うためのものであり、例えば、タッチパネル式の操作表示部が用いられる。
【0027】
図3は、実施例1の仮想現実システムの概略イメージ図を示している。
図3に示すように、ユーザ11は、靴型デバイス2、機器制御装置5、ディスプレイ9及びスピーカ10を装着している。具体的には、一対の靴型デバイス2を足に装着し、目にはゴーグル状の仮想現実用のディスプレイ9を装着し、耳にはスピーカ10としてヘッドフォンを装着している。また、腰には機器制御装置5が取り付けられている。かかる構成は、これに限られるものではなく、例えば、ディスプレイ9及びスピーカ10は、一体型のヘッドマウントディスプレイを使用するものでもよいし、据え置き型のスピーカ10を使用するものでもよい。
【0028】
ここでは図示していないが、
図2に示すように、靴型デバイス2と機器制御装置5はチューブ70で接続されており、機器制御装置5に設けられた空気圧制御装置7によって靴型デバイス2のソール部4の空気圧を制御することが可能である。
通信手段12は、無線による通信を行うものであり、
図3における機器同士の通信は、全て無線による通信手段12によって行われている。すなわち、仮想現実サービス提供サーバ8と機器制御装置5、仮想現実サービス提供サーバ8とディスプレイ9、仮想現実サービス提供サーバ8とスピーカ10、及び、靴型デバイス2と機器制御装置5の通信は全て無線通信により行われている。かかる構成とは異なり、例えば、靴型デバイス2と機器制御装置5の通信を有線で行うといった構成でもよい。
【0029】
ここで、足裏感触提示装置の構造について説明する。
図4は、実施例1の足裏感触提示装置の模式図であり、靴型デバイスにつき(1)は底面図、(2)は正面図を示している。なお、
図4では左足用のデバイスを例に説明を行う。
図4(2)に示すように、靴型デバイス21は、アッパー部20及びソール部41から成り、アッパー部20の底にはインソール部14が設けられている。また、ソール部41は、軟質のシリコン製の袋体(41a,41b)から成り、袋体41aの収容空間内には充填材13aが、袋体41bの収容空間内には充填材13bが設けられている。袋体41aは爪先側に設けられ、袋体41bは踵側に設けられている。空気圧制御装置71は、T字状の分岐を有する1本のチューブ71aを用いて袋体(41a,41b)と接続されている。
【0030】
ユーザ11が靴型デバイス21を足に装着した状態で、空気圧制御装置71の制御により、袋体(41a,41b)の収容空間内の空気圧が変化すると、ユーザ11は、あたかも接地面の感触が変化したかのような感覚を味わうことができる。ソール部41が2つの袋体(41a,41b)に分けられていることにより、例えば、収容する充填材(13a,13b)の種類を異なるものとし、空気圧を変化させた際の感触を異なるものとすることが可能である。
なお、インソール部14の材質としてはシリコンが用いられており、袋体(41a,41b)の感触を妨げることがなく、内部の空気圧力を一定に保つ構造となっている。
【0031】
(充填材の性質評価試験)
袋体の内部に充填する充填材は、用いる材質によって硬度、体積、重量又は密度が異なり、再現する感触に合わせて、使用する充填材を適宜選択することが可能である。
そこで、どの材質がどのような性質を有するのかについて、硬度、体積、重量又は密度につき測定試験を行った。また、5人の被験者による感覚実験も行った。なお、以下の実験は全て、温度25.2℃、湿度38%の環境下で行った。
【0032】
(硬度の測定について)
硬度の測定は、後述する5種類の充填材と、袋体である試験用バルーン、硬度計、コンプレッサー及びテスト用試験片を用いて行った。
測定方法としては、まず、テスト用試験片を用いて校正を行った。試験用バルーンに充填材を充填し、コンプレッサーで試験用バルーンを圧縮した。試験用バルーンの中心部に対して硬度計を用いて計測した。計測は同じ場所で10回繰り返し行った。計10回の計測結果の平均を硬度とした。
下記表1は、充填材毎の硬度の測定結果を示している。数値の単位は全てショアAである。表1において、発泡スチロールAは、ポリスチレン製で直径1mmの球状の充填材であり、発泡スチロールBは、ポリスチレン製で直径3mmの球状の充填材である。棉は、ポリエステル製の棉状の充填材である。枕ビーズCは、ポリエチレン製で外径が4.45mm、内径が4.40mm、長さが6mmの中空の円筒形状の充填材である。枕ビーズDは、ポリエチレン製で外径が7.56mm、内径が7.48mm、長さが6mmの中空の円筒形状の充填材である。
上記充填材の材質及び形状は以下の試験項目においても同様である。
【0033】
【0034】
上記表1に示すように、発泡スチロールAを充填材とした場合、1回目はショアA22.6、2回目はショアA16.7、3回目はショアA15.1、4回目はショアA15.8、5回目はショアA25.1、6回目はショアA21.0、7回目はショアA20.1、8回目はショアA19.3、9回目はショアA20.6、10回目はショアA18.4、計10回の平均はショアA19.5であった。
発泡スチロールBを充填材とした場合、1回目はショアA13.7、2回目はショアA17.2、3回目はショアA18.6、4回目はショアA19.8、5回目はショアA15.9、6回目はショアA22.4、7回目はショアA16.2、8回目はショアA18.0、9回目はショアA13.8、10回目はショアA15.4、計10回の平均はショアA17.1であった。
【0035】
棉を充填材とした場合、1回目はショアA16.8、2回目はショアA15.9、3回目はショアA30.3、4回目はショアA27.6、5回目はショアA33.7、6回目はショアA33.9、7回目はショアA34.3、8回目はショアA32.1、9回目はショアA37.5、10回目はショアA21.0、計10回の平均はショアA28.3であった。
枕ビーズCを充填材とした場合、1回目はショアA12.5、2回目はショアA5.5、3回目はショアA4.8、4回目はショアA28.7、5回目はショアA15.4、6回目はショアA1.2、7回目はショアA12.2、8回目はショアA8.2、9回目はショアA9.3、10回目はショアA10.2、計10回の平均はショアA10.8であった。
枕ビーズDを充填材とした場合、1回目はショアA26.3、2回目はショアA18.8、3回目はショアA7.2、4回目はショアA41.7、5回目はショアA24.2、6回目はショアA41.5、7回目はショアA46.9、8回目はショアA32.0、9回目はショアA32.2、10回目はショアA38.7、計10回の平均はショアA31.0であった。
【0036】
(重量の測定について)
重量の測定は、硬度の測定に用いた5種類の充填材を含む計7種類の充填材と、試験用バルーン及び重量計を用いて行った。
測定方法としては、充填材を充填したバルーンを重量計で1回ずつ計測することで行った。
下記表2は、充填材毎の重量の測定結果を示している。表3において、ゴムチューブは、直径11mmの中空の円筒形状である。スポンジは、ポリウレタン製で一辺が15~25mmの直方体形状のものである。上記充填材の材質及び形状は以下の試験項目においても同様である。なお、表中には示していないが、試験用バルーンの重量は8.4gである。
【0037】
【0038】
上記表2に示すように、発泡スチロールAを充填材とした場合、充填材を含むバルーンの重量は23.7gであり、全体の重量からバルーンの重量を減じた充填材の重量は15.3g、密度は0.08g/cm3であった。
発泡スチロールBを充填材とした場合、充填材を含むバルーンの重量は15.1gであり、全体の重量からバルーンの重量を減じた充填材の重量は6.7g、密度は0.05g/cm3であった。
棉を充填材とした場合、充填材を含むバルーンの重量は31.3gであり、全体の重量からバルーンの重量を減じた充填材の重量は22.9g、密度は0.09g/cm3であった。
【0039】
枕ビーズCを充填材とした場合、充填材を含むバルーンの重量は44.0gであり、全体の重量からバルーンの重量を減じた充填材の重量は35.6g、密度は0.16g/cm3であった。
枕ビーズDを充填材とした場合、充填材を含むバルーンの重量は52.9gであり、全体の重量からバルーンの重量を減じた充填材の重量は44.5g、密度は0.20g/cm3であった。
ゴムチューブを充填材とした場合、充填材を含むバルーンの重量は106.3gであり、全体の重量からバルーンの重量を減じた充填材の重量は97.9g、密度は0.38g/cm3であった。
スポンジを充填材とした場合、充填材を含むバルーンの重量は38.1gであり、全体の重量からバルーンの重量を減じた充填材の重量は29.7g、密度は0.13g/cm3であった。
【0040】
(圧縮による体積変化の測定について)
圧縮による体積変化の測定は、重量の測定に用いた7種類の充填材と、バケツ、水、試験用バルーン、重量計、錘、桶及びコンプレッサーを用いて行った。なお、桶はバケツの径よりも大きい桶を使用した。
測定方法としては、充填材を充填した圧縮前のバルーンの体積と、圧縮時のバルーンの体積減少量を測定し、それらを元に圧縮後のバルーンの体積及び収縮率を算出した。
圧縮前のバルーンの体積測定の具体的な手順については、まず、水の入っていない桶の上にバケツを置き、バケツに試験バルーンと繋がった錘のみを入れ、バケツから溢れる基準水面まで水を入れた。水を張ったバケツに圧縮前の状態の試験バルーンを入れ、バケツから桶にこぼれた水の体積を圧縮前のバルーンの体積とした。
圧縮時の体積減少量測定の具体的な手順については、まず、水の入っていない桶の上にバケツを置き、バケツに錘とコンプレッサーに繋がった圧縮前の状態の試験用バルーンを入れた。コンプレッサーで試験用バルーンの空気を圧縮した後、バケツから溢れる基準水面まで水を入れた。空気の圧縮を停止し、試験用バルーン圧縮前の状態に戻した。バケツから桶にこぼれた水の体積を圧縮時の体積減少量とした。
下記表3は、充填材毎の圧縮による体積変化の測定結果を示している。
【0041】
【0042】
上記表3に示すように、発泡スチロールAを充填材とした場合、圧縮前体積は184.0cm3、体積減少量は35.0cm3、圧縮後体積は149.0cm3、収縮率は0.19であった。
発泡スチロールBを充填材とした場合、圧縮前体積は131.6cm3、体積減少量は68.4cm3、圧縮後体積は63.2cm3、収縮率は0.52であった。
棉を充填材とした場合、圧縮前体積は263.1cm3、体積減少量は109.7cm3、圧縮後体積は153.4cm3、収縮率は0.42であった。
【0043】
枕ビーズCを充填材とした場合、圧縮前体積は216.7cm3、体積減少量は17.3cm3、圧縮後体積は199.4cm3、収縮率は0.08であった。
枕ビーズDを充填材とした場合、圧縮前体積は219.4cm3、体積減少量は112.2cm3、圧縮後体積は107.2cm3、収縮率は0.51であった。
ゴムチューブを充填材とした場合、圧縮前体積は260.1cm3、体積減少量は91.1cm3、圧縮後体積は169.0cm3、収縮率は0.35であった。
スポンジを充填材とした場合、圧縮前体積は236.2cm3、体積減少量は88.3cm3、圧縮後体積は147.9cm3、収縮率は0.37であった。
【0044】
(感覚実験について)
20代前半の男女5人を被験者とする感覚実験を行った。実験方法としては、まず、5人の被験者は、靴型デバイス2を片方だけ履き、視界を遮り平らな木板の上で足踏みをした。足踏み中に空気圧制御装置7を用いてソール部4の硬度変化を行った。状態変化時の感覚を5段階評価で取得した。発泡スチロールA、発泡スチロールB、棉、枕ビーズC、枕ビーズDの計5種類の充填材につき実験を行った。
評価項目は、「土」、「布」、「ゴム」、「柔らかい」及び「変化がある」である。ここで、「土」、「布」及び「ゴム」とは、圧縮後の感覚が各項目の素材の感覚に類似しているかどうかの評価であり、例えば「土」の場合には、“非常に土の感触に類似している”のであれば、最も良い“5”と評価し、“全く土の感触には類似していない”のであれば、最も悪い“1”と評価することになる。また、「柔らかい」の項目は、圧縮前の感覚に関する評価であり、例えば、“非常に柔らかい”といえる場合には、“5”と評価することになる。「変化がある」の項目は、圧縮後の感覚に関する評価であり、“非常に変化した”といえる場合には、“5”と評価することになる。
下記表4は感覚実験における5段階評価結果を示している。また、表4の結果は5人の評価結果の平均値につき小数第一位を四捨五入したものである。
【0045】
【0046】
上記表4に示すように、発泡スチロールAを充填材とした場合、「土」の項目については“1”、「布」の項目については“1”、「ゴム」の項目については“1”、「柔らかい」の項目は“2”、「変化がある」の項目は“1”という評価であった。
発泡スチロールBを充填材とした場合、「土」の項目については“1”、「布」の項目については“2”、「ゴム」の項目については“1”、「柔らかい」の項目は“1”、「変化がある」の項目は“1”という評価であった。
棉を充填材とした場合、「土」の項目については“1”、「布」の項目については“4”、「ゴム」の項目については“1”、「柔らかい」の項目は“5”、「変化がある」の項目は“4”という評価であった。
【0047】
枕ビーズCを充填材とした場合、「土」の項目については“4”、「布」の項目については“2”、「ゴム」の項目については“1”、「柔らかい」の項目は“5”、「変化がある」の項目は“5”という評価であった。
枕ビーズDを充填材とした場合、「土」の項目については“3”、「布」の項目については“2”、「ゴム」の項目については“3”、「柔らかい」の項目は“2”、「変化がある」の項目は“2”という評価であった。
【0048】
感覚実験においては、5段階評価だけではなく、文章での回答も得られた。下記表5は感覚実験における被験者による回答結果を示している。なお、項目によっては“回答なし”の項目もある。
【0049】
【0050】
上記表5に示すように、発泡スチロールAを充填材とした場合、事前の予想では、“砂”であった。これに対して、被験者の回答は、圧縮前感覚は“もっちり”、“分離している”、“板”、圧縮後感覚は“回答なし”、変化の度合いは“変化少ない”であった。
発泡スチロールBを充填材とした場合、事前の予想では、“砂”であった。これに対して、被験者の回答は、圧縮前感覚は“良く言えば絨毯、悪く言えば変化なし”、圧縮後感覚は“塑性があまりでない”、変化の度合いは“変化少ない”であった。
棉を充填材とした場合、事前の予想では、“雲”であった。これに対して、被験者の回答は、圧縮前感覚は“マット”、“服(薄い布)の上”、“布団の上”、“薄い布団”、“自然ではない”、圧縮後感覚は“回答なし”、変化の度合いは“変化はあるが、戻りが遅い”であった。
【0051】
枕ビーズCを充填材とした場合、事前の予想では、“草原”であった。これに対して、被験者の回答は、圧縮前感覚は“柔らかい土”、“舗装されていない道”、“ぬかるみ”、“森の土”、“雪の映像を見れば雪と感じる可能性有り”、“田んぼ”、“ドロ”、“沼”、“映像があると感じ方が変わる可能性有り”、“マット”、圧縮後感覚は“マットの上(実際の地面)”、“真っ直ぐな道”、“普通の床”、変化の度合いは“回答なし”であった。
枕ビーズDを充填材とした場合、事前の予想では、“草原”であった。これに対して、被験者の回答は、圧縮前感覚は“ジャリッとする”、“マット”、“硬めの絨毯”、“陸上競技場のゴムのトラック”、圧縮後感覚は“あまり変わらない(充填率が大きい)”、変化の度合いは“回答なし”であった。
【0052】
(実験のまとめ)
以上より、空気圧の変化による大きな感触の変化を表現したいというような場合には、感覚実験において明らかになったように、枕ビーズC又は棉を充填材として用いることが適切であることが分かった。
これに対して、大きな変化を必要としない場合には、発泡スチロールA又は発泡スチロールBを充填材として用いることが適切であることが分かった。
また、中程度の変化が求められる場合には、枕ビーズDを充填材として用いることが適切であることが分かった。
【0053】
次に、上述した仮想現実システムを稼動する場合のフローについて説明する。実施例1の仮想現実システムでは、足の動きに合わせて、ソール部4の空気圧を変化させる場合と、足の動きによらずに、ソール部4の空気圧を変化させる場合が存在する。
例えば、足を一歩前に踏み出した場合に接地する地面の状態に合わせてソール部4の空気圧を変化させることもできるが、例えば、波が押し寄せてきた場合のように、ユーザ自身が足を動かさない場合でも、足における感触が変化する場合が存在するからである。
【0054】
図5は、足状態のセンシングに基づく空気圧制御フロー図を示している。
図5に示すように、まず、靴型デバイス2において、加速度センサ3を用いてユーザの足の位置、向き、速度及び加速度等をセンシングする(ステップS01)。センシングされたデータを靴型デバイス2から送信し(ステップS02)、機器制御装置5において受信する(ステップS03)。さらに、センシングされたデータを機器制御装置5から送信し(ステップS04)、仮想現実サービス提供サーバ8において受信する(ステップS05)。センシングされたデータに基づき、仮想現実サービス提供サーバ8において、仮想現実空間を作製する(ステップS06)。
【0055】
作製された仮想現実空間の内、足裏感触に関するデータを仮想現実サービス提供サーバ8から送信し(ステップS07)、機器制御装置5において受信する(ステップS08)。足裏感触に関するデータに応じて、空気圧制御装置7において空気圧の制御を行う(ステップS09)。空気圧制御装置7における空気圧の制御により、空気圧制御装置7とチューブ70で繋がれたソール部4の空気圧が変化し、足裏感触を再現する(ステップS10)。
作製された仮想現実空間の内、映像に関するデータを仮想現実サービス提供サーバ8から送信し(ステップS11)、ディスプレイ9において受信する(ステップS12)。仮想現実サービス提供サーバ8から受信した映像に関するデータに応じて、ディスプレイ9上に映像を表示する(ステップS13)。
作製された仮想現実空間の内、音声に関するデータを仮想現実サービス提供サーバ8から送信し(ステップS14)、スピーカ10において受信する(ステップS15)。仮想現実サービス提供サーバ8から受信した音声に関するデータに応じて、スピーカ10において音声を再生する(ステップS16)。
なお、足裏感触に関するデータの送信(ステップS07)、映像に関するデータの送信(ステップS11)及び音声に関するデータの送信(ステップS14)については、順番はこの限りではなく前後してもよいし、同時に送信されるものでもよい。
【0056】
次に、足の動きによらずに、ソール部4の空気圧を変化させる場合について説明する。
図6は、足状態のセンシングに基づかない空気圧制御フロー図を示している。
図6に示すように、まず、仮想現実サービス提供サーバ8において、仮想現実空間を作製する(ステップS101)。
作製された仮想現実空間の内、足裏感触に関するデータを仮想現実サービス提供サーバ8から送信し(ステップS102)、機器制御装置5において受信する(ステップS103)。足裏感触に関するデータに応じて、空気圧制御装置7において空気圧の制御を行う(ステップS104)。空気圧制御装置7における空気圧の制御により、空気圧制御装置7とチューブ70で繋がれたソール部4の空気圧が変化し、足裏感触を再現する(ステップS105)。
作製された仮想現実空間の内、映像に関するデータを仮想現実サービス提供サーバ8から送信し(ステップS106)、ディスプレイ9において受信する(ステップS107)。仮想現実サービス提供サーバ8から受信した映像に関するデータに応じて、ディスプレイ9上に映像を表示する(ステップS108)。
【0057】
作製された仮想現実空間の内、音声に関するデータを仮想現実サービス提供サーバ8から送信し(ステップS109)、スピーカ10において受信する(ステップS110)。仮想現実サービス提供サーバ8から受信した音声に関するデータに応じて、スピーカ10において音声を再生する(ステップS111)。
なお、ここでも足裏感触に関するデータの送信(ステップS102)、映像に関するデータの送信(ステップS106)及び音声に関するデータの送信(ステップS109)については、順番はこの限りではなく前後してもよいし、同時に送信されるものでもよい。
【実施例2】
【0058】
図7は、実施例2の足裏感触提示装置の模式図であり、靴型デバイスにつき(1)は底面図、(2)は正面図を示している。
図7(2)に示すように、靴型デバイス22は、アッパー部20及びソール部42から成る。また、ソール部42は、軟質のシリコン製の袋体(42a,42b)から成り、袋体42aの収容空間内には充填材13cが、袋体42bの収容空間内には充填材13dが設けられている。袋体42aは爪先側に設けられ、袋体42bは踵側に設けられている。空気圧制御装置72は、2本のチューブ(72a,72b)を用いてそれぞれ袋体(42a,42b)と接続されている。
実施例1における靴型デバイス21と同様に、ユーザ11が靴型デバイス22を足に装着した状態で、空気圧制御装置72の制御により、袋体(42a,42b)の収容空間内の空気圧が変化すると、ユーザ11は、あたかも接地面の感触が変化したかのような感覚を味わうことができる。
【0059】
しかしながら、実施例1とは異なり、袋体42aはチューブ72aにより、袋体42aはチューブ72bにより、それぞれ独立して空気圧制御装置72と接続されているため、空気圧制御装置72において、袋体(42a,42b)の収容空間内の空気圧を個別に制御することが可能となっている。したがって、例えば、袋体42aの収容空間内の空気圧を袋体42bの収容空間内の空気圧よりも高くするといったことが可能である。これにより、より複雑な環境をよりリアルに再現することが可能となっている。また、さらに収容する充填材(13c,13d)の種類を異なるものとすれば、より複雑な環境の再現が可能である。
【実施例3】
【0060】
図8は、実施例3の足裏感触提示装置の模式図であり、靴型デバイスにつき(1)は底面図、(2)は正面図を示している。
図8(2)に示すように、靴型デバイス23は、アッパー部20及びソール部43から成る。また、ソール部43は、軟質のシリコン製の袋体(43a,43b)から成り、袋体43aの収容空間内には充填材13eが、袋体43bの収容空間内には充填材13fが設けられている。実施例1又は2とは異なり、実施例3における袋体(43a,43b)は、水平方向ではなく垂直方向に重ねられるように、上下2層に設けられている。
空気圧制御装置73は、2本のチューブ(73a,73b)を用いてそれぞれ袋体(43a,43b)と接続されている。
実施例2における靴型デバイス22と同様に、ユーザ11が靴型デバイス23を足に装着した状態で、空気圧制御装置73の制御により、袋体(43a,43b)の収容空間内の空気圧が変化すると、ユーザ11は、あたかも接地面の感触が変化したかのような感覚を味わうことができる。
【0061】
しかしながら、実施例2とは異なり、袋体43aと袋体43bは上下2層に積層されているため、足全体の感触を複雑に再現することが可能である。例えば、袋体43aの収容空間内の空気圧を袋体43bの収容空間内の空気圧よりも高くしたり、袋体43aの収容空間内の空気圧を袋体43bの収容空間内の空気圧よりも低くしたりというように、2種類の袋体(43a,43b)の空気圧を微調整することで、より複雑な環境の再現が可能となっている。
【0062】
(その他の実施例)
(1)実施例1又は2における爪先側の袋体(41a,42a)及び踵側の袋体(41b,42b)だけではなく、土踏まず部にも充填材を有する袋体を設ける構成でもよい。
(2)足指部、足踵部、土踏まず部、外側縦アーチ部、内側縦アーチ部の5つの袋体を設ける構成でもよい。
(3)実施例3に示す袋体(43a,43b)を足指部及び足踵部に分けそれぞれを袋体とする構成でもよい。
(4)靴型デバイス2に、更に振動モジュールが設けられる構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、仮想現実を用いたゲーム、体感型のアトラクション、さらにはリハビリテーション装置にも利用可能である。また、本発明の足裏感触提示装置のソール部を椅子に組み込み、VRと組み合わせることでVRコンテンツと連動した仮想現実環境へのより一層の没入感を提供することにも有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 仮想現実システム
2,21~23 靴型デバイス
3 加速度センサ
4,41~43 ソール部
5 機器制御装置
6 データ送受信部
7,71~73 空気圧制御装置
8,108 仮想現実サービス提供サーバ
9 ディスプレイ
10 スピーカ
11 ユーザ
12 通信手段
13a~13f 充填材
14 インソール部
20 アッパー部
41a,41b,42a,42b,43a,43b 袋体
50 ユーザ入力操作部
70,71a,72a,72b,73a,73b, チューブ
101 足裏感触提示装置
102 足裏装着手段
103 状態検出手段
104 感触提示手段
106 データ送受信手段
107 圧力制御手段
109 映像提示手段
110 音声提示手段