(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】固定具
(51)【国際特許分類】
F16B 5/06 20060101AFI20221219BHJP
F16B 5/07 20060101ALI20221219BHJP
H01R 4/64 20060101ALI20221219BHJP
H01R 12/52 20110101ALI20221219BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
F16B5/06 D
F16B5/06 R
F16B5/07 L
H01R4/64 A
H01R12/52
H05K1/14 G
(21)【出願番号】P 2018209793
(22)【出願日】2018-11-07
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石黒 允昌
(72)【発明者】
【氏名】中村 達哉
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-111311(JP,A)
【文献】特開2009-272237(JP,A)
【文献】実開平02-076205(JP,U)
【文献】実開昭48-102466(JP,U)
【文献】特許第4503155(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/06
F16B 5/07
H01R 4/64
H01R 12/52
H05K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に表面実装されて、第2部材を保持することにより、前記第1部材及び前記第2部材のいずれか一方を他方に対して固定可能に構成された固定具であって、
基部、スペーサー部、接触部及び抜止部を有し、
前記基部は、前記固定具が前記第1部材に表面実装される際に前記第1部材にはんだ付けされる接合面を有し、
前記スペーサー部は、前記基部と前記接触部との間に設けられて、前記基部と前記接触部との間に空隙を確保するように構成され、
前記接触部は、前記接合面とは反対方向に向けられる接触面を有し、前記固定具が前記第2部材を保持する際に前記接触面で前記第2部材に接触するように構成され、
前記抜止部は、前記第2部材を挟んで前記接触面とは反対側の箇所で前記第2部材に引っ掛かって前記第2部材が前記接触面から離れる方向へ変位するのを抑制可能に構成され
、
前記基部、前記スペーサー部、前記接触部及び前記抜止部は、金属の薄板によって一体成形されており、前記第1部材と前記第2部材とを電気的に接続可能に構成され、
前記薄板は、互いに平行な曲率中心を有する第1の折り曲げ箇所、第2の折り曲げ箇所及び第3の折り曲げ箇所で折り曲げられており、
前記スペーサー部は、前記第1の折り曲げ箇所と前記第2の折り曲げ箇所との間にある前記薄板によって構成され、
前記基部は、前記第1の折り曲げ箇所を挟んで前記スペーサー部とは反対側にある前記薄板によって構成され、
前記接触部は、前記第2の折り曲げ箇所と前記第3の折り曲げ箇所との間にある前記薄板によって構成されて、前記空隙を挟んで前記基部と対向する位置に配置され、
前記抜止部は、前記第3の折り曲げ箇所を挟んで前記接触部とは反対側にある前記薄板によって構成され、
前記基部には、前記基部から前記接触部に向かって突出する突出片が設けられ、
前記突出片は、突出方向先端部で前記接触部にあらかじめ接触するように構成されるか、前記接触部が前記基部側へ変位した際に前記接触部に接触するように構成されている
固定具。
【請求項2】
請求項
1に記載の固定具であって、
前記抜止部は、ガイド面及び凸部を有し、
前記ガイド面は、前記第2部材が前記ガイド面に接触する第1位置から前記接触面に接触する第2位置へと押し込まれる際に、前記第2部材から作用する力を受けて、前記第2部材に対して相対的に摺動しながら初期位置から待避位置へと揺動することにより、前記第2部材が前記第2位置へ変位するのを許容するように構成され、
前記凸部は、前記第2部材が前記第2位置にある時点又は前記第2位置から前記第1位置へと変位する途中の時点で前記第2部材に引っ掛かることにより、前記第2部材が前記第1位置へ変位するのを抑制するように構成され、
前記ガイド面が前記初期位置と前記待避位置との間で揺動する際には、前記スペーサー部から前記接触部を経て前記抜止部に至る範囲が、弾性変形しつつ揺動するように構成されている
固定具。
【請求項3】
請求項
2に記載の固定具であって、
前記突出片は、前記ガイド面が前記初期位置と前記待避位置との間で揺動する際、前記スペーサー部から前記接触部を経て前記抜止部に至る範囲が揺動すると、前記接触部に対して相対的に摺動しながら、弾性変形しつつ前記接触部の変位を妨げない位置へと変位するように構成されている
固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の電子回路基板に対して第2の電子回路基板を固定する際に、2つの回路基板の間にスペーサーを介在させて、2つの電子回路基板の間に空隙を確保する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスペーサーは、ねじを使って固定するように構成されているため、その取り付け作業に手間がかかる、という問題がある。
本開示の一局面においては、2つの部材間に空隙を確保して一方の部材に対して他方の部材を固定可能で、固定作業にかかる手間を低減可能な固定具を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、第1部材に表面実装されて、第2部材を保持することにより、第1部材及び第2部材のいずれか一方を他方に対して固定可能に構成された固定具であって、基部、スペーサー部、接触部及び抜止部を有する。基部は、固定具が第1部材に表面実装される際に第1部材にはんだ付けされる接合面を有する。スペーサー部は、基部と接触部との間に設けられて、基部と接触部との間に空隙を確保するように構成される。接触部は、接合面とは反対方向に向けられる接触面を有し、固定具が第2部材を保持する際に接触面で第2部材に接触するように構成される。抜止部は、第2部材を挟んで接触面とは反対側の箇所で第2部材に引っ掛かって第2部材が接触面から離れる方向へ変位するのを抑制可能に構成されている。
【0006】
このように構成された固定具によれば、固定具は第1部材に表面実装される。そのため、固定具を第1部材に取り付ける工程については自動化を図ることができ、当該工程に要する手間を低減することができる。また、固定具に第2部材を保持させる工程では、第2部材を接触部の接触面に接触させ、第2部材を挟んで接触面とは反対側の箇所で抜止部を第2部材に引っ掛ければ、第2部材が接触面から離れる方向へ変位するのを抑制できる。この状態で基部と接触部との間には、スペーサー部によって空隙が確保される。したがって、スペーサー及びねじを使って2つの部材間に空隙を確保する技術に比べ、2つの部材間に空隙を確保して一方の部材に対して他方の部材を固定する作業にかかる手間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1Aは実施形態の固定具の使用状態の一例を示す平面図である。
図1Bは
図1A中にIB-IB線で示した切断面における断面図である。
【
図2】
図2Aは実施形態の固定具を右前上方から見た斜視図である。
図2Bは実施形態の固定具を左後下方から見た斜視図である。
【
図3】
図3Aは実施形態の固定具の平面図である。
図3Bは実施形態の固定具の正面図である。
図3Cは実施形態の固定具の右側面図である。
図3Dは実施形態の固定具の背面図である。
図3Eは実施形態の固定具の底面図である。
【
図4】
図4Aは第2部材が第1位置にある状態を示す説明図である。
図4Bは第2部材が第1位置から第2位置へ変位する途中の状態を示す説明図である。
図4Cは第2部材が第2位置にある状態を示す説明図である。
図4Dは第2部材が第2位置から第1位置へ変位する途中で第1位置への変位が抑制されている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、上述の固定具について、例示的な実施形態を挙げて説明する。
本実施形態においては、図中に併記した前後左右上下の各方向を利用して説明を行う。これらの各方向は、固定具の正面図(
図3B参照。)に表れる箇所が向けられる方向を前、背面図(
図3D参照。)に表れる箇所が向けられる方向を後、左側面図(図示略。左側面図は右側面図と対象に表れる。)に表れる箇所が向けられる方向を左、右側面図(
図3C参照。)に表れる箇所が向けられる方向を右、平面図(
図3A参照。)に表れる箇所が向けられる方向を上、底面図(
図3E参照。)に表れる箇所が向けられる方向を下、と規定した相対的な方向である。
【0009】
ただし、これらの各方向は、固定具を構成する各部の相対的な位置を簡潔に説明するために規定した方向にすぎない。したがって、例えば固定具の使用時等に、固定具がどのような方向に向けられるかは不定である。
【0010】
[固定具の構成]
図1A及び
図1Bに示すように、固定具1は、第1部材51(本実施形態の場合は第1の電子回路基板。)に表面実装されて、第2部材52(本実施形態の場合は第2の電子回路基板。)を保持することにより、第1部材51及び第2部材52のいずれか一方(本実施形態の場合は第2部材52。)を他方(本実施形態の場合は第1部材51。)に対して固定可能に構成されている。固定具1は、
図2A、
図2B、
図3A、
図3B、
図3C、
図3D及び
図3Eに示すように、基部11、スペーサー部13、接触部15、抜止部17及び突出片19を有する。
【0011】
上記基部11、スペーサー部13、接触部15、抜止部17及び突出片19は、金属の薄板によって一体成形されている。固定具1を構成する薄板には、プレス加工が施されることにより、
図3Cに示すように、互いに平行な曲率中心を有する第1の折り曲げ箇所21、第2の折り曲げ箇所22、第3の折り曲げ箇所23、第4の折り曲げ箇所24、第5の折り曲げ箇所25、第6の折り曲げ箇所26及び第7の折り曲げ箇所27が設けられている。また、第5の折り曲げ箇所25には、凸部29が設けられている。
【0012】
基部11は、第1の折り曲げ箇所21を挟んでスペーサー部13とは反対側にある部分であり、当該部分では、薄板の板厚方向が図中でいう上下方向に向けられている。基部11の下面は、固定具1が第1部材51に表面実装される際に第1部材51にはんだ付けされる接合面11Aとなっている。
【0013】
スペーサー部13は、第1の折り曲げ箇所21と第2の折り曲げ箇所22との間にある部分であり、当該部分では、薄板の板厚方向が図中でいう前後方向に向けられている。スペーサー部13は、基部11と接触部15との間に設けられて、基部11と接触部15との間に空隙を確保している。
【0014】
接触部15は、第2の折り曲げ箇所22と第3の折り曲げ箇所23との間にある部分であり、当該部分では、薄板の板厚方向が図中でいう上下方向に向けられている。接触部15は、空隙を挟んで基部11と対向する位置に配置されている。接触部15は、接合面11Aとは反対方向に向けられる接触面15Aを有する。接触部15は、固定具1が第2部材52を保持する際に、接触面15Aで第2部材52に接触する。また、固定具1を自動実装機で第1部材51上に配置する際、上記接触面15Aは自動実装機の吸引ノズルで吸着される吸着面としても利用される。
【0015】
抜止部17は、第3の折り曲げ箇所23を挟んで接触部15とは反対側にある薄板によって構成されている。より詳しくは、抜止部17は、第1部分171、第2部分172、第3部分173及び上述の凸部29を有する。第1部分171は、第3の折り曲げ箇所23と第4の折り曲げ箇所24との間にある部分である。第2部分172は、第4の折り曲げ箇所24と第5の折り曲げ箇所25との間にある部分である。第2部分172の上面は、ガイド面17Aとなっている。ガイド面17Aの詳細については後述する。第3部分173は、第5の折り曲げ箇所25を挟んで第2部分172とは反対側にある部分である。
【0016】
抜止部17は、第2部材52を挟んで接触面15Aとは反対側の箇所で、上記第3部分173を第2部材52に接触させて、第2部材52に引っ掛かるように構成されている。これにより、抜止部17は、接触部15との間に第2部材52を保持した際に、第2部材52が接触面15Aから離れる方向へ変位するのを抑制可能に構成されている。
【0017】
突出片19は、第6の折り曲げ箇所26を挟んで基部11とは反対側にある薄板によって構成されている。第7の折り曲げ箇所27は、突出片19に含まれる。突出片19は、突出方向先端部で接触部15にあらかじめ接触するように構成される。これにより、第2部材52側から接触部15へ力が作用した際に、その力をスペーサー部13及び突出片19の双方で受けることができ、スペーサー部13が座屈するのを抑制することができる。なお、突出片19は、接触部15にあらかじめ接触していてもよいが、接触部15が基部11側へ変位した際に接触部15に接触するように構成されていてもよい。
【0018】
基部11及びスペーサー部13において、突出片19が切り起こされた箇所に対応する位置には、孔31が形成されている。そのため、この孔31を利用して、第1部材51上に実装された電子部品を跨ぐように固定具1を実装することも可能である。これにより、電子部品の実装領域と固定具1の実装領域をオーバーラップさせることができ、これらの部品の実装密度を向上させることができる。
【0019】
以上のように構成される固定具1は、例えば、
図1A及び
図1Bに示すように、2つの固定具1が第1部材51に表面実装されて、2つの固定具1で第2部材52を保持することができる。本実施形態の場合、第1部材51の上面51Aには第1コネクタ61が実装され、第2部材52の下面52Bには第2コネクタ62が実装されている。第1コネクタ61及び第2コネクタ62は互いに接続され、これにより、第1部材51の電子回路と第2部材52の電子回路が接続されている。固定具1は、第1部材51の上面51A、第2部材52の下面52B及び第2部材52の上面52Aの3箇所それぞれにおいて、グラウンド電位を持つべき箇所に接触し、これら3箇所を電気的に接続している。このとき、第1部材51と第2部材52との間では、スペーサー部13と突出片19の双方が導通経路となるので、単一の導通経路しか構成されない場合に比べ、インピーダンスの上昇を抑制する効果を高めることができる。
【0020】
第2部材52を2つの固定具1間に取り付ける際には、第2部材52を図中でいう下方へと変位させて、第2部材52を2つの固定具1間に押し込む。このとき、第2部材52の端部は、抜止部17のガイド面17Aに接触する。第2部材52がガイド面17Aに接触する第1位置(
図4A参照。)から接触面15Aに接触する第2位置(
図4C参照。)へと押し込まれる際、ガイド面17Aは、第2部材52から作用する力を受けて、第2部材52に対して相対的に摺動しながら初期位置(
図4A参照。)から待避位置(
図4B中に実線で示す位置。)へと揺動することにより、第2部材52が第2位置へ変位するのを許容する。
【0021】
ガイド面17Aが初期位置と待避位置との間で揺動する際には、
図4Bに示すように、スペーサー部13から接触部15を経て抜止部17に至る範囲が、弾性変形しつつ揺動する。これにより、抜止部17だけが弾性変形する場合に比べ、揺動する部分のばね長を長くすることができ、第2部材52からガイド面17Aへ過大な力を加えなくても、抜止部17を容易に待避位置へと変位させることができる。
【0022】
また、突出片19は、ガイド面17Aが初期位置と待避位置との間で揺動する際、スペーサー部13から接触部15を経て抜止部17に至る範囲が揺動すると、接触部15に対して相対的に摺動しながら、弾性変形しつつ接触部15の変位を妨げない位置(
図4B中に実線で示す位置。)へと変位する。したがって、突出片19が接触部15の変位を妨げることはない。
【0023】
なお、何らかの事情で第2部材52から抜止部17のガイド面17Aに過大な力が加わった際に、抜止片17が
図4B中で時計回り方向へ大きく揺動するようなことがあっても、その場合は、抜止片17の揺動に伴って、突出片19が
図4B中で反時計回り方向へ揺動する。そして、抜止片17及び突出片19が、
図4B中に仮想線で示す位置に達すると、突出片19の上端がスペーサー部13と接触部15との境界付近に当接し、抜止片17と突出片19が互いの揺動を阻止し合う状態になる。これにより、抜止片17が、
図4B中に仮想線で示す位置から更に時計回り方向へ揺動するのを抑制することができる。
【0024】
第2部材52が第2位置(
図4C参照。)に配置されると、突出片19は、接触部15を
図4C中でいう下方から支持する支持体として機能する。そのため、例えば、第2部材52を下方へと押し込む力が発生した場合でも、スペーサー部13と突出片19の双方によって接触部15を支持することができる。したがって、スペーサー部13のみに過大な負荷がかかるのを抑制でき、スペーサー部13や突出片19が変形するのを抑制することができる。
【0025】
一方、例えば、第2部材52に予期しない何らかの外力が加わって、第2部材52が2つの固定具1間から上方へ引き抜かれそうになった場合は、第2部材52が第2位置(
図4C参照。)から第1位置(
図4A参照。)へと変位する途中の時点で、
図4Dに示すように、凸部29が第2部材52に引っ掛かることにより、第2部材52が第1位置へ変位するのを抑制する。このとき、スペーサー部13から接触部15を経て抜止部17に至る範囲には、凸部29を上方へと持ち上げようとする力が作用する。ただし、そのような向きに作用する力には、ガイド面17Aを初期位置から待避位置へと変位させる向きに作用する分力が含まれていないか、含まれていても僅かである。そのため、凸部29が第2部材52に引っ掛かる状態は維持され、第2部材52が2つの固定具1間から外れるのを抑制することができる。
【0026】
さらに一方、メンテナンス作業時等に、第2部材52を2つの固定具1間から取り外す際には、作業者が固定具1の上端に力を加えて、ガイド面17Aを初期位置から待避位置へ変位させれば、第2部材52を2つの固定具1間から取り外すことができる。このとき、作業者が固定具1の上端に加える力は、第2部材52を2つの固定具1間に取り付ける場合と同等な弱い力でよいので、作業者は容易に第2部材52を2つの固定具1間から取り外すことができる。
【0027】
[効果]
以上説明したような固定具1によれば、固定具1が第1部材51に表面実装されるので、固定具1を第1部材51に取り付ける工程については自動化を図ることができ、人手による作業を削減し、当該工程に要する手間を低減することができる。また、固定具1に第2部材52を保持させる工程では、第2部材52を接触部15の接触面15Aに接触させ、第2部材52を挟んで接触面15Aとは反対側の箇所で抜止部17を第2部材52に引っ掛ければ、第2部材52が接触面15Aから離れる方向へ変位するのを抑制できる。この状態で基部11と接触部15との間には、スペーサー部13によって空隙が確保される。したがって、当該工程が人手による作業であっても、スペーサー及びねじを使って2つの部材間に空隙を確保するような技術に比べ、2つの部材間に空隙を確保して一方の部材に対して他方の部材を固定する作業にかかる手間を低減することができる。また、固定具1に第2部材52を保持させる工程についても自動化の余地があるので、当該工程も自動化すれば、更に人手による作業を削減し、当該工程に要する手間を低減することができる。
【0028】
また、本実施形態の場合、固定具1を通じて、第1部材51の上面51A、第2部材52の下面52B及び第2部材52の上面にある3箇所を電気的に接続することができる。したがって、単一の固定具1で、上述の3箇所に対応したグラウンド対策を施すことができる。
【0029】
また、本実施形態の場合、ガイド面17Aを初期位置から待避位置へと変位させる際には、スペーサー部13から接触部15を経て抜止部17に至る範囲が揺動するので、容易にガイド面17Aを待避位置へと待避させることができ、その一方、第2部材52が図中でいう上方へ変位する際には、スペーサー部13から接触部15を経て抜止部17に至る範囲が揺動しにくいので、第2部材52が固定具1から外れるのを抑制することができる。
【0030】
[他の実施形態]
以上、本開示の固定具について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものにすぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
【0031】
例えば、上記実施形態では、2つの固定具1を第1部材51に表面実装して、それら2つの固定具1間に第2部材52を保持する例を示したが、第2部材52の大きさや形状によっては、3つ以上の固定具1を第1部材51に表面実装して、それら3つ以上の固定具1で第2部材52を保持するように構成してもよい。
【0032】
あるいは、1つの固定具1を第1部材51に表面実装して、その固定具1が上記固定具1以外の部材と協働して第2部材52を保持するように構成してもよい。例えば、上述の実施形態であれば、第1コネクタ61及び第2コネクタ62が設けられているので、第1コネクタ61と第2コネクタ62との接続箇所と1つの固定具1との間で第2部材52を保持するように構成してもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、第1部材51に表面実装された固定具1で第2部材52を保持する旨を説明したが、固定具1が表面実装された第1部材51を第2部材52に対して取り付ける場合にも上記固定具1を使用することができる。例えば、電子回路基板をパネルに沿った箇所に配置したい場合には、電子回路基板に固定具1を表面実装し、その固定具1をパネルに設けられた取付孔に挿し込んでパネルを保持することにより、電子回路基板をパネルに対して取り付けることができる。すなわち、第1部材51及び第2部材52は、いずれか一方が他方に対して保持されていればよい。
【0034】
以上の他、上記実施形態における一つの構成要素によって実現していた機能を、複数の構成要素によって実現するように構成してもよい。また、複数の構成要素によって実現していた機能を一つの構成要素によって実現するように構成してもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。
【0035】
[補足]
なお、以上説明した例示的な実施形態から明らかなように、本開示の固定具は、更に以下に挙げるような構成を備えていてもよい。
【0036】
本開示の一態様では、基部、スペーサー部、接触部及び抜止部は、金属の薄板によって一体成形されており、第1部材と第2部材とを電気的に接続可能に構成されていてもよい。
【0037】
本開示の一態様では、薄板は、互いに平行な曲率中心を有する第1の折り曲げ箇所、第2の折り曲げ箇所及び第3の折り曲げ箇所で折り曲げられていてもよい。スペーサー部は、第1の折り曲げ箇所と第2の折り曲げ箇所との間にある薄板によって構成されてもよい。基部は、第1の折り曲げ箇所を挟んでスペーサー部とは反対側にある薄板によって構成されてもよい。接触部は、第2の折り曲げ箇所と第3の折り曲げ箇所との間にある薄板によって構成されて、空隙を挟んで基部と対向する位置に配置されてもよい。抜止部は、第3の折り曲げ箇所を挟んで接触部とは反対側にある薄板によって構成されてもよい。基部には、基部から接触部に向かって突出する突出片が設けられてもよい。突出片は、突出方向先端部で接触部にあらかじめ接触するように構成されるか、接触部が基部側へ変位した際に接触部に接触するように構成されていてもよい。
【0038】
本開示の一態様では、抜止部は、ガイド面及び凸部を有してもよい。ガイド面は、第2部材がガイド面に接触する第1位置から接触面に接触する第2位置へと押し込まれる際に、第2部材から作用する力を受けて、第2部材に対して相対的に摺動しながら初期位置から待避位置へと揺動することにより、第2部材が第2位置へ変位するのを許容するように構成されてもよい。凸部は、第2部材が第2位置にある時点又は第2位置から第1位置へと変位する途中の時点で第2部材に引っ掛かることにより、第2部材が第1位置へ変位するのを抑制するように構成されてもよい。ガイド面が初期位置と待避位置との間で揺動する際には、スペーサー部から接触部を経て抜止部に至る範囲が、弾性変形しつつ揺動するように構成されていてもよい。
【0039】
本開示の一態様では、突出片は、ガイド面が初期位置と待避位置との間で揺動する際、スペーサー部から接触部を経て抜止部に至る範囲が揺動すると、接触部に対して相対的に摺動しながら、弾性変形しつつ接触部の変位を妨げない位置へと変位するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…固定具、11…基部、11A…接合面、13…スペーサー部、15…接触部、15A…接触面、17…抜止部、17A…ガイド面、19…突出片、21…第1の折り曲げ箇所、22…第2の折り曲げ箇所、23…第3の折り曲げ箇所、24…第4の折り曲げ箇所、25…第5の折り曲げ箇所、26…第6の折り曲げ箇所、27…第7の折り曲げ箇所、29…凸部、31…孔、31…取付孔、51…第1部材、52…第2部材、61…第1コネクタ、62…第2コネクタ、171…第1部分、172…第2部分、173…第3部分。