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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】油分回収装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20221219BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C10G1/10 ZAB
C08J11/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019072445
(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公開番号】P2020169292
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】519124866
【氏名又は名称】株式会社グローバルアライアンスパートナー
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸一
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-170608(JP,A)
【文献】特公昭51-030115(JP,B1)
【文献】米国特許第05947721(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/10
C08J 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを加熱することで蒸発する蒸発成分から軽質分を主とする蒸発成分を分離し、冷却して液体状の油分として回収する油分回収装置において、
原料としてのプラスチックを収容する原料収容部と、
前記原料収容部に熱風を供給するバーナー装置と、
前記原料収容部の上方に配置され蒸発成分から軽質分を主とする蒸発成分を分離して上方に通過させるための透孔を有し蒸発成分の上昇抵抗となるものを蒸発成分が上昇する筒内に配置した分離装置と、を備え、
前記バーナー装置から前記原料収容部に供給される熱風は前記分離装置に分岐して供給され、前記分離装置へ分岐される熱風の供給量を前記原料収容部に配設された排気ダクトの排気量を調節することで制御するようにしたことを特徴とする油分回収装置。
【請求項2】
前記蒸発成分の上昇抵抗となるものとは、表裏に連通する透孔を有する分離プレートであることを特徴とする請求項1に記載の油分回収装置。
【請求項3】
熱風は前記原料収容部から分岐されて前記分離装置に供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の油分回収装置。
【請求項4】
前記原料収容部はプラスチックを収容する容器と、同容器を包囲する筐体を備え、前記バーナー装置の熱風は前記容器の外側の前記筐体内に供給され、前記排気ダクトは前記筐体に配設されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の油分回収装置。
【請求項5】
排気ダクトの排気量の調節はダクト内の風量を調節するダンパーで行うことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の油分回収装置。
【請求項6】
前記バーナー装置から前記分離装置に供給される熱風は前記分離装置内部の内筒外周に形成された空間に収容されることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の油分回収装置。
【請求項7】
前記調節機構による前記分離装置へ分岐される熱風の供給量の調節は前記分離装置の加熱状態を検出する検出手段の結果に基づいて行われるようにしたことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の油分回収装置。
【請求項8】
前記検出手段は前記分離装置内部の内筒内部の温度を検出することを特徴とする請求項7に記載の油分回収装置。
【請求項9】
前記分離装置は軽質分を主とする蒸発成分と重質分を主とする蒸発成分の2つに分離することを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の油分回収装置。
【請求項10】
前記分離装置の下流側には気体状態の軽質分を冷却して液体とする冷却機構が配設されていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の油分回収装置。
【請求項11】
前記原料収容部と前記バーナー装置と前記分離装置と前記冷却機構は台車上に配設されていることを特徴とする請求項9に記載の油分回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチックを加熱することで蒸発する蒸発成分から軽質分を主とする蒸発成分を分離し、冷却して液体状の油分として回収する油分回収装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からプラスチックを加熱し、熱分解することで蒸発する蒸発成分から軽質分を主とする蒸発成分を分離し、冷却して液体状の油分として回収する油分回収装置に関する技術がある。そのような油分回収装置の一例として特許文献1を挙げる。特許文献1は図28図30とその説明にあるように、熱分解槽218と、蒸留装置198と、回収容器219~222とを備える装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-291288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のこの種の油分回収装置は非常に大型化している。例えば上記特許文献1でも熱分解槽218と蒸留装置198とはそれぞれ別個に加熱する構造であり、加熱のための設備が別個に必要となる。また、回収容器219~222も分別領域毎に多数必要とされ設置場所も必要となる。そのため、油分回収装置の構成において共有化して小型化したいという要請があった。また、従来装置では別個に加熱することからコストがかかりすぎていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、手段1として、プラスチックを加熱することで蒸発する蒸発成分から軽質分を主とする蒸発成分を分離し、冷却して液体状の油分として回収する油分回収装置において、原料としてのプラスチックを収容する原料収容部と、前記原料収容部器に熱風を供給するバーナー装置と、前記原料収容部の上方に配置された蒸発成分から軽質分を主とする蒸発成分を分離する分離装置と、を備え、前記バーナー装置から原料収容部に供給される熱風は前記分離装置に分岐して供給され、前記分離装置へ分岐される熱風の供給量を前記原料収容部に配設された排気ダクトの排気量を調節することで制御するようにした。
原料収容部の排気ダクトの排気量を多くすると分離装置側に分岐される熱風量が減るため分離装置の温度が下がることとなり、逆に排気量を少なくすると分離装置側に分岐される熱風が増えて分離装置の温度が上がることとなる。
これによって、原料収容部と分離装置という異なる加熱制御が必要な機構を1つのバーナー装置によって加熱することが可能となる。
【0006】
「プラスチック」とは、常温で個体であって加熱することで溶融する性質のプラスチックである。例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の熱可塑性プラスチックがよい。これらは単独でも混合されていてもよい。廃プラスチックを原料とした場合にはプラスチック以外の物質が混在していることが多いが、加熱して一旦蒸発させるため、純粋にプラスチックだけが原料収容部内に収容される必要はない。プラスチックに異物が多少混在していても構わない。
「蒸発成分」は加熱することでプラスチックが沸点に達したり、あるいは熱分解されたりして蒸発したプラスチック由来の気体成分である。蒸発はプラスチックが溶融して発生する場合だけでなく昇華して発生する場合も含む。
「軽質分」は、主として熱分解された常温(18℃~30℃程度)で液体の状態で存在できるプラスチック由来の物質群であり、分離装置の下流側に蒸気として上昇していく成分である。温度が十分ではない段階では軽質分の成分が一部重質分側に存在する場合もある。分離装置内の温度設定によって軽質分を構成する物質群の構成も変化することとなる。
「軽質分を主とする蒸発成分」とあるのは、蒸発成分を軽質分とそれ以外の部分とを明確にわけることができないことと、軽質分の定義が一義的ではなく、温度帯によってある分解精製物が軽質分側に含まれる場合も重質分側に含まれる場合もあるからである。そのため、ある温度に設定した分離装置内において蒸発成分から分離されてそれ以上上昇できない部分を残渣として重質分とする。
「原料収容部」は、個体状態のプラスチックを収容するための少なくとも底と壁を備えた容器、例えば大型の釜状の金属製部材を備えることがよい。容器を筐体で囲んだ二重構造がよいが、そうでなくともよい。バーナー装置は容器の外側から容器を加熱することがよい。
「バーナー装置」は、原料収容部と分離装置の両方に熱風を供給する機構部分である。熱源のための燃料はガス、石油、石炭、電気等一般に入手できれば特に種類は問わない。バーナー装置は送風機構を有することが熱風を効率よく原料収容部と分離装置に送るためによい。送風機構としては羽根をモータ装置で回転させて風を起こすファン装置がよい。
「分離装置」は、蒸発成分から軽質分を主とする蒸発成分を分離するための機能を有した機構部分である。
「熱風の供給量を原料収容部に配設された排気ダクトの排気量を調節することで制御する」としているのは、熱風を原料収容部と分離装置に無駄なく供給するためである。
【0007】
また、手段2として、熱風は前記原料収容部から分岐されて前記分離装置に供給されるようにした。
バーナー装置から熱風を分岐させるのは構造が複雑化してしまうが、このように容器から分岐させれば熱風を分岐させる際の抵抗が減り、構造も簡単となる。
また、手段3として、前記原料収容部はプラスチックを収容する容器と、同容器を包囲する筐体を備え、前記バーナー装置の熱風は前記容器の外側の前記筐体内に供給され、前記排気ダクトは前記筐体に配設されているようにした。
このように加熱されるプラスチックを直接加熱せずに容器の外側の筐体内に供給されて加熱は容器の壁面を介在させることとなる。これによって、むらのない均等な加熱が実現される。筐体内は密閉されていることがよい。更に、攪拌機構を有することがよい。
また、手段4として、排気ダクトの排気量の調節はダクト内の風量を調節するダンパーで行うようにした。
ダンパーは空気調和設備において、ダクト内に取り付けてダクトの断面方向の面積を変更することで風量を調節する装置である。ダンパーはダクトに容易に配設でき排気ダクトの排気量を直接的に調節できる。また、排気量の微調節が簡単に可能となる。
【0008】
また、手段5として、前記バーナー装置から前記分離装置に供給される熱風は前記分離装置内部の内筒外周に形成された空間に収容されるようにした。
つまり、直接蒸発成分を加熱するのではなく、内筒内を上昇する蒸発成分の筒の外周を間接的に加熱するようにした。これによって蒸発成分が熱で変性してしまったり、燃えてしまったりすることが防止される。
【0009】
また、手段6として前記調節機構による前記分離装置へ分岐される熱風の供給量の調節は前記分離装置の加熱状態を検出する検出手段の結果に基づいて行われるようにした。
これによって、分離装置の加熱状態を検出手段で検出することで適宜最適な分離装置への熱風の供給量を決定することができる。検出手段としては、特に温度を直接測定できる温度センサがよいが、加熱状態を検出できる検出手段、例えば熱センサや圧力センサであってもよい。
また、手段7として、前記検出手段は前記分離装置内部の内筒内部の温度を検出すようにした。
実際に蒸発成分がさらされている温度により近い温度を検出することができ、予定された成分の軽質分を取得するためによい。
【0010】
また、手段8として、前記分離装置は軽質分を主とする蒸発成分と重質分を主とする蒸発成分の2つに分離するようにした。
いくつもの分別を行うと分離装置が大型化してしまうが、蒸発成分を2つに分離するだけであれば油分回収装置の設備の小型化に寄与できることとなる。
また、手段9として、前記分離装置の下流側には気体状態の軽質分を冷却して液体とする冷却機構が配設されているようにした。
冷却機構によって軽質分を強制的に冷却することで自然な放熱を待つことなく液体状の油分を得ることができ、回収効率がアップする。
また、手段10として、前記原料収容部と前記バーナー装置と前記分離装置と前記冷却機構は台車上に配設されているようにした。
これによって、油分回収装置を任意の設置場所に移動させることが簡単になる。また、必要であれば原料収容部、バーナー装置、分離装置、冷却機構は任意に選択される1つ以上の機構を台車上に配設させないように構成することも可能である。また、他の設備、例えば、制御盤やバーナー装置の燃料(例えばプロパンボンベ)、冷却水用のポンプ等を一緒に搭載してもよい。
上述した手段1~手段9の各発明は、任意に組み合わせることができる。手段1~手段9の各発明の任意の構成要素を抽出し、他の構成要素と組み合わせてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原料収容部と分離装置という異なる加熱制御が必要な機構を1つのバーナー装置によって加熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の油分回収装置の正面図。
図2】同じ実施形態の油分回収装置の蒸留部側の側面図。
図3】同じ実施形態の油分回収装置の蒸留部の概要を説明する模式図。
図4】リアクターの縦断面図。
図5】(a)は1の分離プレートの平面図と側面図、(b第2分離プレートの平面図と側面図。
図6】同じ実施形態の油分回収装置の冷却部の概要を説明する模式図。
図7】同じ実施形態の油分回収装置の排気ダクトに配設されたダンパーを説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態である油分回収装置について図面に基づいて説明する。まず、図1図3に基づいて具体的な油分回収装置1の構造概要について説明する。尚、油分回収装置1の構造に直接関係のない部材については図示を簡略化あるいは省略する。
油分回収装置1は台車2の上に設置された蒸留部3と冷却部4とから構成されている。台車2は長方形形状の本体プレート5を備え、本体プレート5裏面に配置された複数のキャスター6によって移動可能とされている。本体プレート5の一側には押引するための把手7が配設されている。本体プレート5の裏面には4つの(複数の)ストッパーとなる伸縮脚8が配設されており、伸縮脚8を伸張させることで台車2の固定が可能となっている。
まず、蒸留部3側の説明をする。
台車2の本体プレート5上に載置された加熱分解炉9は外周が円筒形状に構成されたステンレス製の筐体10を備えている。筐体10にはプラスチック原料を収容する収容空間を有する原料収容容としてのステンレス製のポット11が嵌め込まれている。ポット11は外周が円筒形状に構成されており、筐体10の外周と同心になるように配置されている。ポット11は筐体10内部においてポット11周囲に筐体10の側壁面との間に空間を有した二重構造とされている。
図1に示すように、筐体10の前面には筐体10の周方向に沿って延出される熱風導入路12が形成されている。熱風導入路12の外側開口部位置にはバーナー装置としてのバーナーユニット13が装着されている。バーナーユニット13はバーナー部14とファン装置15から構成されている。バーナー部14へは図示しないプロパンボンベからガスが供給されてバーナーが燃焼する。バーナーの炎はファン装置15によって加圧されて特定方向(ここでは熱風導入路12を通り筐体10内部の壁面に沿った方向)に熱風として供給される。
図2に示すように、筐体10の背面には排気ダクト16が形成されている。排気ダクト16は筐体10内外に連通して筐体10内の熱風の供給を受けて加圧された空気をダクト口から排出する。排気ダクト16の途中にはダンパー装置17が配設されている。図2図7に示すように、排気ダクト16の途中にはダンパー装置17が配設されており排気ダクト16からの排気量が調節可能とされている。ダンパー装置17は排気ダクト16に交差するように配置された回動軸17aと、回動軸17aに固着された平面視で半月形状となる二枚の隔壁17bを備えている。図7に示すように、ハンドル18を仮想線の矢印のように揺動させることで回動軸17aを回動させ、隔壁17bの位相を実線の矢印のように変化させる。このハンドル18操作によって排気ダクト16の断面積を変化させて風量を調節するものである。隔壁17bの壁面が排気ダクト16の風の進行方向に正対した状態において風の通過量は最も遮断され、その状態から隔壁17bを傾斜させるほど通過量が増加していく。
【0014】
ポット11の上部寄り略1/3程度の部分は筐体10の天井部10aから上方に突出して配置されている。ポット11上面は平板に構成された天蓋部19によって封塞されている。天蓋部19中央には攪拌用モータ装置20が配設されている。攪拌用モータ装置20のロッド21はポット11内に進出させられており、ロッド21先端には複数の攪拌用羽根22が固着されている。攪拌用羽根22はポット11の底面に略沿ったカーブに構成されており、駆動時に攪拌用羽根22はポット11に接することがないように回転する。図1に示すように、攪拌用モータ装置20と後述する水タンク44との間には送水パイプ66と排水パイプ67が配設され後述するポンプ装置45によって冷却水が循環するようになっている。冷却水を循環させて冷却することで攪拌用モータ装置20内の図示しないガスケットが熱膨脹して筐体10の密閉性を阻害することが防止されている。
天蓋部19の攪拌用モータ装置20を挟む位置にはポット11内部に連通する2つのパイプ23、24が配設されている。第1のパイプ23は図示しないホッパを設置したり、あるいは原料タンクから原料を送るための図示しないパイプ等を接続するための燃料投入口となる。
第2のパイプ24の上部位置には分離装置としてのリアクター25が配設されている。図3及び図4に示すように、リアクター25は加熱されたポット11(加熱分解炉9)から蒸発するプラスチック原料由来の、主として熱分解された蒸発成分が上昇する位置に設けられた機構である。リアクター25は次のような目的で設置される。
1)加熱分解炉9で加熱された蒸発成分をリアクター25で加熱して温度低下させないことで、より多くの「冷却して液体状の油分として回収できる軽質分」を得るため
2)1)のように加熱することで「冷却して液体状の油分となりにくい部分(重質分)」も下流に流れやすくなるが、それら重質分を極力下流に流さないようにすること
である。つまり、リアクター25はポット11から蒸発する蒸発成分のうち、常温で液体状態となる比較的低分子の軽質分を効率よく回収するための機構である。
【0015】
リアクター25は第2のパイプ24と直列に接続された第2のパイプ24よりも大径に構成された横断面円形のリアクター本体筒26を備えている。ステンレス製のリアクター本体筒26の外周にはステンレス製のリアクターカバー27が配設されている。リアクターカバー27は腹巻き状にリアクター本体筒26を包囲する部材である。図4に示すように、リアクターカバー27はリアクター本体筒26と隙間を有した状態で重複状に、つまり二重構造となるように配設された外壁27aと、外壁27aとリアクター本体筒26との隙間の上下位置を封塞する封塞部27bとからなり、リアクター本体筒26との間に空間を有する構造とされている。加熱分解炉9の筐体10からリアクターカバー27へは分岐ダクト28が連結され、バーナーユニット13からの熱風が加熱分解炉9を経由してリアクターカバー27内の空間に供給される。リアクターカバー27の背面には排気ダクト29が形成されており、リアクターカバー27内に供給された加熱された空気は排気ダクト29のダクト口から排出される。
【0016】
リアクター25のリアクター本体筒26内部には銅製の二枚の分離プレート31、32が配設されている。図5(a)(b)に示すように、分離プレート31、32は平面視において円形で中央から周囲にかけて緩やかに下がった笠形状の銅製の板部材である。分離プレート31、32にはそれぞれ表裏に連通する複数の透孔33が形成されている。中央の透孔33は図4に示すようにリアクター本体筒26内に吊り下げる際のロッド34が挿通される孔となり、他の孔は蒸気が上昇する際に透過する孔となる。上側に配置される第1の分離プレート31の透孔33は中心位置を含めて計16個が中心から放射状に放射対称となるように配置されている。下側に配置される第2の分離プレート32の透孔33は第1の分離プレート31の透孔33と同じ位置に同じ大きさの16個が形成されるとともに、その外側に更に同じ大きさの8個の透孔33が中心から放射状に放射対称となるように配置されている。
図4に示すように、分離プレート31、32は中央位置の透孔33にロッド34が挿通され、ロッド34の図示しない雄ネジに対してナット35によって所定の間隔となるように固定されている。ロッド34はアーム35によってリアクター本体筒26内に支持される。第1の分離プレート31の透孔33と第2の分離プレート32の透孔33とは上下方向において重ならないように配置されている。
リアクター25の下流側には蒸気配送パイプ36が接続されている。蒸気配送パイプ36はリアクター25から上昇する軽質分を主とする蒸発成分を周囲の空気で冷却しつつ斜め下方の冷却部4に誘導する。
【0017】
次に、冷却部4側の説明をする。
図1に示すように、台車2に設置されたフレーム41の上部にはコンデンサー装置42が配設されている。コンデンサー装置42は軽質分を主とする蒸発成分を冷却して液体状の油分とする機能を有する。コンデンサー装置42の下方には液体状の油分を回収する油回収タンク43が配設されている。フレーム41の外方には水タンク44とポンプ装置45が配設されている。水タンク44とコンデンサー装置42の間には送水パイプ46と排水パイプ47が配設されポンプ装置45によって冷却水が循環する(図1では送水パイプ46と排水パイプ47は仮想線で示している)。水タンク44の上部位置にはスクラバー装置48が配設されている。スクラバー装置48はコンデンサー装置42と排出パイプ49で接続され、コンデンサー装置42内にポンプ装置45によって吸引されて内部に溜まった煤塵やガスを除去するための機能を有する。スクラバー装置48は湿式であり水タンク44からポンプ装置45によって供給された水によって煤塵やガスを濾過する。
コンデンサー装置42についてより詳しく説明する。図6に示すように、コンデンサー装置42は筐体51と筐体51内に収容された冷却水タンク52を備える。
図1に示すように筐体51には蒸気配送パイプ36が接続されており、蒸留部3側から送られる軽質分を主とする蒸発成分が収容される。冷却水タンク52には送水パイプ46と排水パイプ47が接続され冷却水が循環し冷却水タンク52周囲の蒸発成分を冷却して液体状の油分とする。
筐体51底部から下方に向かって排油パイプ54が延出されている。排油パイプ54は分岐して下方に向かうドレーン部55と上方にクランク状に屈曲するサイフォン部56から構成されている。サイフォン部56の最上部は筐体51の最下部よりも上位置にある。サイフォン部56先端は油回収タンク43に接続されている。筐体51内の液体化しなかった残渣はスクラバー装置48に送られる。
【0018】
次に、油分回収装置1の電気的構成について図3に基づいて説明する。排気ダクト16においてダンパー装置17の手前側(加熱分解炉9側)には第1の温度センサー57が配設されている。リアクター本体筒26には第2の温度センサー58が配設されている。ポット11内には第3の温度センサー59が配設されている。第1~第3の温度センサー57~59は台車2上に設置された制御盤53に接続されており、制御盤53に併設された表示部より検出した温度をリアルタイムに目視することができる。また、制御盤53にはバーナーユニット13のメインスイッチ、攪拌用モータ装置20の入り切りスイッチ、ポンプ装置45の入り切りスイッチ等が配設されており、温度情報に基づいて作業者がスイッチを入り切りすることが可能となっている。
【0019】
以上のような油分回収装置1の構成において、例えば次のように操作することでプラスチックから油分を回収することができる。
作業者は第1のパイプ23を介して原料プラスチックを投入しバーナーユニット13のメインスイッチをオンとし、攪拌用モータ装置20をオンとする。また、ダンパー17は閉じておく。
時間の経過とともに温度が上昇すると(およそ100℃以上)徐々に原料プラスチックが溶け出す。更に温度が上昇すると原料プラスチックの熱分解されるようになる(およそ200℃以上)。そして第2の温度センサー58の温度が求める温度(例えば400℃)になったことを確認するとそれ以上リアクター25温度が上昇しないようにするためにダンパー17を開いてリアクター25方向に供給される熱風を減少させる。第2の温度センサー58の温度を確認しながらダンパー装置17の開閉度を調節する。例えば温度が高すぎると判断した場合には隔壁17bを開放する方向にハンドル18を操作する。すると排気ダクト16から熱風が排気されて相対的に分岐ダクト28に供給される分が減少するためリアクター25の温度が下がることとなる。温度が低いと判断した場合にこの逆の操作をする。
一方、第3の温度センサー59の情報に基づいて加熱分解炉9自体の温度が上昇しすぎていると判断したら、バーナーユニット13自体を一旦停止させる。このように第1~第3の温度センサー57~59の温度上方に基づいてバーナーユニット13のスイッチの入り切りとダンパー装置17の開閉によって発生する蒸発成分から軽質分を主とする蒸発成分を分離する作業が行われる。
【0020】
一方、リアクター25に達した蒸発成分は、分離プレート31、32に接触するため分子量の大きな相対的に重いあるいは沸点の低目の生成物は気体状態から液体状態へと相転移しリアクター25より上方には進むことができなくなる。そのため、リアクター25より下流側に進んだ蒸発成分が軽質分として冷却部4に搬出される。
作業者はバーナーユニット13のメインスイッチをオンするのと同時にポンプ装置45をオンとし、コンデンサー装置42の冷却操作を開始し、スクラバー装置48を稼動させる。蒸発成分のうちの軽質分はコンデンサー装置42で冷却されて液体状態となって油分として油タンク43に回収される。
【0021】
以上、本実施の形態のように構成することにより、次のような効果が奏されることとなる。
(1)1つの加熱手段(バーナー装置)で加熱分解炉9とリアクター25の2つを加熱するようにしているため、装置全体が大型化せず、コンパクトで、コストも低減できる。
(2)油分回収装置1全体として小型化できるため、台車2に主要機構をすべて搭載して運搬することが可能となる。
(3)原料プラスチックに直接熱風が当たらない二重構造での間接的加熱であるため、原料プラスチックが焦げることがなく、原料プラスチックが劣化しにくい。また、ポット11の周囲を均等に熱風が回るため、原料プラスチックがある部分だけが強く加熱されてしまうような不具合も生じにくく、まんべんなく全体を加熱することができる。
(4)リアクター25は蒸発成分を軽質分と重質分とに分けるだけなので上下方向に長大化することなく、また、2つの成分だけを分別し細かにいくつもの分別域にわける必要がない。つまり温度のしきい値を1つとすることができるためダンパー装置17の開閉だけで冷却して液体状の油分となる成分を簡単に分別することができる
(5)リアクター25内部はロッド34に吊り下げられた二枚の分離プレート31、32だけであるため、取り出しやすくまた洗浄も容易である。
(6)ダンパー装置17は風量を微妙な量で調整できるためわずかな温度変化にも容易にに対応することができる。
(7)サイフォン部56の最上部はタンク52の最下部よりも上位置にあるため、油分が油タンク43に回収される際に外気が排油パイプ54内に侵入してもサイフォン部56の最上部で留まり、コンデンサー装置42内に侵入してしまうことがなく爆発の恐れがなくなる。
【0022】
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・油分回収装置1を構成する例えば加熱分解炉9、リアクター25、コンデンサー装置42等の蒸留部3と冷却部4の具体的構成については上記は一例であって、他の形態でそれらを構成するようにしてもよい。
・材質を上記以外で構成してもよい。
・台車2の上にプロパンボンベを設置してもよい。バーナー装置の熱源として他の燃料を使用してもよい。
・リアクター25の内部構成として上記では、分離プレート31、32であったが、これは一例であって、効率的に軽質分を分別できるのであれば、上記以外の構成でもよい。例えば分離プレートは1枚でもよく、また3枚以上でもよい。透孔33の形状や数や配置も上記は一例であり、上記に限定されるものではない。分離プレートのような板状以外の蒸発成分の上昇抵抗となるものを配置するようにしてもよい。
・第1~第3の温度センサー57~59の位置は上記に限定されるものではない。
・制御盤は作業者がスイッチをいれていたが、温度センサー57~59の値に基づいてフィードバック制御するようにしてもよい。加熱分解炉9とリアクター25の温度をそれぞれ間接的に取得するようにしてもよい。
・上記ではバーナーユニット13の熱風は加熱分解炉9から分岐してリアクター25に供給させたが、もっと手前側、例えば熱風導入路12やバーナーユニット13から供給するようにしてもよい。
・上記では台車2に主要機構を載置した比較的小型の油分回収装置を例に挙げたが、大型の地上設置型の油分回収装置に適用してもよい。
【0023】
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成には限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材としてもよいし、その部材の部分としてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1…油分回収装置、9…原料収容部としての加熱分解炉、13…バーナー装置としてのバーナーユニット、16…排気ダクト、25…分離装置としてのリアクター。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7