(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 9/04 20060101AFI20221219BHJP
A46D 1/05 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A46B9/04
A46D1/05
(21)【出願番号】P 2019513584
(86)(22)【出願日】2018-04-11
(86)【国際出願番号】 JP2018015293
(87)【国際公開番号】W WO2018193947
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2017082416
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520173222
【氏名又は名称】株式会社西尾
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】西尾 秀俊
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-158643(JP,A)
【文献】特開2016-043188(JP,A)
【文献】特開2000-014451(JP,A)
【文献】特開2016-152902(JP,A)
【文献】特開2012-075725(JP,A)
【文献】特開2011-024839(JP,A)
【文献】特開2003-061750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 9/04
A46D 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の柄と、
前記柄の先端に形成される植毛面を有する植毛部と、
前記植毛面に植毛された多数本の毛で構成された毛束を複数備えて構成されるブラシ部と、を有し、前記ブラシ部によって歯を清掃する歯ブラシであって、
前記植毛部は、前記植毛面を前記毛束の先端部側から見た形状が長軸方向と短軸方向とを有する楕円形状に形成されており、
前記ブラシ部は、前記毛束として、
前記楕円の短軸方向の中央で前記長軸方向に沿って配置される複数の中央部毛束と、
前記短軸方向における前記複数の中央部毛束の両外側に配置される複数の側部毛束と、を含み、
少なくとも前記中央部毛束は、前記楕円の前記長軸方向の両側から中央に近づくに連れて次第に高くなるように山型に傾斜して形成され、
前記複数の側部毛束は、前記短軸方向において前記中央部毛束に近い側の第1領域に前記長軸方向に沿って整列配置された複数の第1側部毛束と、前記短軸方向において前記中央部毛束に遠い側の第2領域に前記長軸方向に沿って整列配置された複数の第2側部毛束と、を含み、
前記第2側部毛束のそれぞれは、前記短軸方向に見た側面視において、当該第2側部毛束の中心が直近の2つの前記第1側部毛束の間隙にあり、かつ当該第2側部毛束の少なくとも一部が直近の2つの前記第1側部毛束と重なっており、
前記第1側部毛束のそれぞれは、前記短軸方向に見た側面視において、当該第1側部毛束の中心が直近の2つの前記中央部毛束の間隙にあり、かつ当該第1側部毛束の少なくとも一部が直近の2つの前記中央部毛束と重なっており、
前記第一側部毛束の高さは、隣接する前記第二側部毛束の高さよりも高く、
前記中央部毛束の高さは、隣接する前記側部毛束の高さよりも高く、
前記複数の中央部毛束の
毛先を結んで形成される山型の中央部稜線の傾斜角と、前記複数の第1側部毛束の
毛先を結んで形成される山型の第1側部稜線の傾斜角と、前記複数の第2側部毛束の
毛先を結んで形成される第2側部稜線の傾斜角とは、同一である
ことを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記植毛部は、前記柄の長手方向を前記長軸方向とする楕円形状である
ことを特徴とする
請求項1に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柄の先端に植毛したブラシ部により歯に付着した歯垢などの汚れを除去するための歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシは一般に、把持しやすいように長手に形成される柄と当該柄の先端の植毛部に植毛されるブラシ部から構成される。柄を把持しつつ動かすことで、柄の先に形成されるブラシ部の先端が歯に当たり、歯に付着した歯垢などの汚れを除去する。
【0003】
最近は、歯の表面に存する汚れのみならず、歯と歯の間(歯間)や、歯と歯茎の境目や、歯の溝の部分などに存する汚れをいかに効率よく取り除くかが問題となっている。そこで、ブラシ部を歯間などに効率よく入り込ませるように、ブラシ部の構成を工夫した歯ブラシがある。例えば、特許文献1に記載の歯ブラシは、側面からブラシ部を見た場合、ブラシ部が全体的に山型になるように形成されている。すなわち、ブラシ部の中央付近になるにつれてブラシ部の高さが次第に高くなるようにカットされている。これにより、ブラシ部の表面が平面状にカットされている場合に比べて、ブラシ部の山型の頂点部分が歯間や歯と歯茎の隙間(いわゆる歯周ポケット)や歯の溝などに入り込みやすくなる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の歯ブラシのように、ブラシ部の先端を全体的に山型に形成したとしても、歯の表面及び歯間の溝や歯と歯茎の隙間の溝の歯垢を効果的に清掃することができない場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、短時間かつ軽い力でのブラッシングで、歯間や歯と歯茎の隙間や溝及び歯や歯茎の表面をより効果的に清掃することのできる歯ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、その一態様として、長尺の柄(11)と、柄(11)の先端に形成される植毛面(12a)を有する植毛部(12)と、植毛面(12a)に植毛された多数本の毛で構成された毛束(22,23a,23b)を複数備えて構成されるブラシ部(20)と、を有し、ブラシ部(20)によって歯を清掃する歯ブラシ(1)において、植毛部(12)は、植毛面(12a)を毛束(22,23a,23b)の先端部(22T,23aT,23bT)側から見た形状が長軸方向(P)と短軸方向(Q)とを有する楕円形状に形成されており、ブラシ部(20)は、毛束(22,23a,23b)として、楕円の短軸方向(Q)の中央で長軸方向(P)に沿って配置される複数の中央部毛束(22)と、短軸方向(Q)における複数の中央部毛束(22)の両外側に配置される複数の側部毛束(23a,23b)と、を含み、少なくとも中央部毛束(22)は、楕円の長軸方向(P)の両側から中央に近づくに連れて次第に高くなるように山型に傾斜して形成されることを特徴とする。また、この場合、植毛部(12)は、柄(11)の長手方向を長軸方向(P)とする楕円形状であってもよい。
【0008】
また、本発明は、他の一態様として、長尺の柄(11)と、柄(11)の先端に形成される植毛面(12a)を有する植毛部(12)と、植毛面(12a)に植毛された多数本の毛で構成された毛束(21,22,23a,23b)を複数備えて構成されるブラシ部(20)と、を有し、ブラシ部(20)によって歯を清掃する歯ブラシ(1-2)において、植毛部(12)は、植毛面(12a)を毛束(21,22,23a,23b)の先端部(21T,22T,23aT,23bT)側から見た形状が長軸方向(P)と短軸方向(Q)とを有する楕円形状に形成されており、ブラシ部(20)は、毛束(21,22,23a,23b)として、楕円の長軸方向(P)および短軸方向(Q)の中央に位置し複数の毛束(21,22,23a,23b)のうち最も高い頂部毛束(21)と、長軸方向(P)に沿って頂部毛束(21)の両側に配置される複数の中央部毛束(22)と、短軸方向(Q)における中央部毛束(22)の両側に配置される複数の側部毛束(23a,23b)と、を含み、少なくとも複数の中央部毛束(22)は、長軸方向(P)の両端から頂部毛束(21)に近づくに連れて次第に高くなるように山型に傾斜して形成され、頂部毛束(21)の先端部(21T)は、複数の中央部毛束(22)の先端部(22T)を結んで形成される稜線(R)の交点(X)よりも高い位置にあることを特徴とする。また、この場合も、植毛部(12)は、柄(11)の長手方向を長軸方向(P)とする楕円形状であってもよい。
【0009】
本発明にかかる上記構成の歯ブラシでは、植毛部は、植毛面を毛束の先端部側から見た形状が長軸方向と短軸方向とを有する楕円形状に形成されていることで、楕円の外周に沿ってブラシ部の毛(毛束)が湾曲線状に配列されるようになる。これにより、植毛部を長方形状に形成した場合などと比較して、ブラシ部による歯のブラッシングを行う際に、植毛部(柄の先端部)の角部やブラシ部の外周側の毛束などが口腔内の各部(歯や歯茎や頬の内面など)に対して不必要に干渉することを抑えることができる。したがって、ブラシ部を軽い力で動かすだけでスムーズかつ効率的なブラシングを行うことができるようになる。また、楕円の外周に沿ってブラシ部の毛(毛束)が湾曲線状に配列されることで、複雑な凹凸形状を有する歯の上面や側面あるいは歯の隙間に対して歯ブラシのストロークによりブラシ部の毛(毛束)の先端を効果的に接触(摺動)させることができるので、歯の溝や隙間の汚れをより効率良く除去することができる。さらに、植毛部を円形状(真円形状)に形成した場合と比較して、柄の長手方向、すなわち歯ブラシのストローク方向に沿うブラシ部の距離(長さ寸法)を長く確保することが可能となるので、その分、歯に対するブラシ部の接触領域(接触面積)を大きくすることができる。したがって、歯の汚れの除去をより効率的に行うことができる。本発明の歯ブラシは、植毛部を上記の楕円形状に形成したことで、上記複数の効果を合わせて奏することが可能となり、歯の溝や隙間の汚れを効率良く除去することができる歯ブラシを実現できる。
【0010】
また、本発明にかかる歯ブラシでは、ブラシ部の毛束の少なくとも一部を上記楕円の長軸方向の中央に近づくに連れて次第に高くなるように山型に形成していることで、ブラシ部で最も高い位置にある中央部毛束の先が、周囲の毛束に干渉されることなく、歯と歯茎の隙間や溝などの深い位置まで入り込むことができ、且つ深い位置に入り込んだ中央部毛束を周囲に配設される複数の側部毛束が支持するため、深い位置の汚れを確実に掻き落とすことが可能となる。
【0011】
また、植毛部を楕円形状とし、中央部毛束の両側(短軸方向の両側)に側部毛束を配設したことで、中央部毛束が入り込む部分の周囲にある歯や歯茎の表面に、複数の側部毛束が均一に当接する。また、側部毛束も中央に近づくに連れて高くなるように山型に形成されていれば、より外周側にある低い側部毛束が歯に当接するとき、中央側にある高い側部毛束はより奥にある歯に当接することができるため、側部毛束間で干渉することがない。これにより、隙間や溝の周囲にある歯や歯茎の表面を側部毛束によって効果的に清掃することができる。
【0012】
また、本発明にかかる上記構成の歯ブラシ(1,1-2)において、側部毛束(23)は、短軸方向(Q)において、中央部毛束(22)に近い側に配置された第一側部毛束(23a)と、中央部毛束(22)から遠い側に配置された第二側部毛束(23b)とを含んでよい。さらにこの場合、第一側部毛束(23a)の高さは、隣接する第二側部毛束(23b)の高さよりも高いことが望ましい。このような構成を採用することで、植毛部の中央から楕円の短軸方向の両側にいくにつれて次第に毛(毛束)の高さが低くなるようにブラシ部の形状が形成される。したがって、側部毛束のうち高い位置にある第一側部毛束(23a)の先が、周囲の毛束に干渉されることなく、歯(T)と歯茎(M)の隙間(MG)や溝(TU)などの深い位置まで入り込むことができるため、深い位置の汚れをも掻き落とすことが可能となる。
【0013】
また、本発明にかかる歯ブラシでは、上記の頂部毛束(21)を備える場合、この頂部毛束(21)を、周囲にある中央部毛束(22)や側部毛束(23)よりも高く構成するとよい。これにより、山型(ピラミッド型)に傾斜した中央部毛束(22)及び側部毛束(23)が歯間や歯と歯茎の隙間に隣接する歯(T)の表面を清掃している状態において、頂部毛束(21)の先端部(21T)が歯(T)の表面にある溝(TU)や、歯間(TG)や、歯(T)と歯茎(M)の隙間(MG)の奥深くに入り込む。これにより、短時間かつ軽い力でのブラッシングで、歯の溝や歯間や歯と歯茎の隙間をより効果的に清掃することができる。
【0014】
また、本発明にかかる歯ブラシでは、頂部毛束(21)を除いた中央部毛束(22)と側部毛束(23)とを山型(ピラミッド型)に傾斜させた形状としていることで、これら中央部毛束(22)と側部毛束(23)によって、通常の(従来の)先端が平面状の歯ブラシと比較して、歯の表面及び歯の隙間や溝などを効果的に洗浄することができるものである。また、頂部毛束(21)の先端部(21T)を複数の中央部毛束(22)の先端部(22T)を結んで形成される稜線(R)の交点(X)よりも高い位置とすれば、当該頂部毛束(21)の先端部(21T)で、歯の溝や歯間や歯と歯茎の隙間などの深い位置の汚れをも掻き落とすことが可能となる。したがって、これらの効果によって、短時間かつ軽い力でのブラッシングで、歯間や歯と歯茎の隙間を含めた口腔内全体の汚れを効果的に落とすことができる歯ブラシとなる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる歯ブラシによれば、植毛部は、植毛面を毛束の先端部側から見た形状が長軸方向と短軸方向とを有する楕円形状に形成されていることで、上記の複数の効果を奏することができるので、短時間かつ軽い力でのブラッシングで、歯間や歯と歯茎の隙間や溝及び歯や歯茎の表面をより効果的に清掃することのできる歯ブラシとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一実施形態にかかる歯ブラシの全体図である。
【
図2】第一実施形態の歯ブラシのブラシ部の拡大図であり、
図2Aが平面図、
図2Bが側面図、
図2Cが正面図である。
【
図3】歯の隙間を清掃している状態を示す図であり、歯を上方から見た図である。
【
図4】歯と歯茎の隙間を清掃している状態を示す図であり、歯と歯茎を側方から見た図である。
【
図5】第二実施形態にかかる歯ブラシのブラシ部の拡大図であり、
図5Aが平面図、
図5Bが側面図、
図5Cが正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の第一実施形態にかかる歯ブラシ1の全体図である。
図1に示す歯ブラシ1は、長尺の柄11(11A,11B)と、柄11の先端に形成される植毛面12aを有する植毛部12とを備える歯ブラシ本体10、及び、植毛面12aに植毛された多数本の毛で構成された後述する毛束(中央部毛束22及び側部毛束23a,23b)を備えて構成されるブラシ部20を有する。
【0018】
柄11は、使用者が把持する把持部11Aと、把持部11Aよりも幅が狭く構成されることにより弾力性を有するネック部11Bを有する。この構成により、使用者は、把持部11Aを握って柄11の先端にあるブラシ部20を動かすことで、歯T(
図3及び
図4参照)を清掃する。なお、歯ブラシ1の柄11は、ポリプロピレンなどの比較的に硬質の合成樹脂材料からなり、ブラシ部20の毛束(後述する中央部毛束22、第一側部毛束23a、第二側部毛束23b)を構成する毛は、ナイロンなど比較的に軟質の合成樹脂材料からなる。
【0019】
歯ブラシ1の植毛部12は、その植毛面12a(上面)を毛束22,23a,23bの先端部(上端部)22T,23aT,23bT側(
図1の紙面手前側)から見た形状が柄11の長手方向を長軸方向Pとする楕円形状に形成されている。また、歯ブラシ1の植毛部12及びブラシ部20は、口腔内に入り込みやすく且つ小回りを利くようにするため、一例として、楕円の長軸方向の長さ寸法を約2cm程度の大きさにするのが好ましい。
【0020】
歯ブラシ1のブラシ部20を具体的に説明する。
図2は、ブラシ部20の拡大図であり、
図2Aが平面図、
図2Bが側面図、
図2Cが正面図である。
図2に示すように、ブラシ部20を形成する毛束は、植毛部12(植毛面12a)に配置される場所によって、中央部毛束22、側部毛束23a,23b(第一側部毛束23a、第二側部毛束23b)に分類される。すなわち、ブラシ部20は、植毛部12の短軸方向Qの中央領域ACで長軸方向Pに沿って配置(配列)される複数の中央部毛束22と、中央部毛束22の短軸方向Qの両側に隣接する領域AS1,AS2に配置される複数の側部毛束23a,23bとから構成される。次に、中央部毛束22及び側部毛束23a,23bの構成を具体的に説明する。
【0021】
中央部毛束22は、
図2Aに示すように、複数の毛束から構成され、領域ACで長軸方向Pに沿って(直線状に)並んで配置される。本実施形態では、中央部毛束22が8束、配設された例を示す。複数の中央部毛束22は、長軸方向Pの中央に近づくに連れて次第に高くなるように山型(ピラミッド型)に傾斜して形成される。具体的には、
図2Bに示すように、中央部毛束22の柄11側の4束は先端部に近づくに連れて直線的に高くなっていき、先端部側の4束は先端部に近づくに連れて直線的に低くなっていくように傾斜して形成される。また、
図2B及び
図2Cに示すように、中央部毛束22の高さは、隣接する側部毛束23a,23bよりも高く構成される。
【0022】
複数の側部毛束23a,23bは、
図2Aに示すように、中央部毛束22の両外側の領域AS1,AS2において、中央部毛束22に隣接して配置される。さらにこれら複数の側部毛束23a,23bは、短軸方向Qにおいて、中央部毛束22に近い側(植毛面12aの内側)の領域AS1に配置された第一側部毛束23aと、中央部毛束22から遠い側(植毛面12aの外側)の領域AS2に配置された第二側部毛束23bとを含む。
【0023】
本実施形態では、第一側部毛束23aは、中央部毛束22の両側それぞれに7束ずつ配列され、第二側部毛束23bは、第一側部毛束23aの外側それぞれに4束ずつ配列された例を示す。具体的には、第一側部毛束23aは、
図2Bに示すように、長軸方向Pの中央の1束が一番高くなっており、柄11側の3束は柄11の先端部に近づくに連れて直線的に高くなっていき、柄11の先端部側の3束は柄11の先端部に近づくに連れて直線的に低くなっていくように傾斜して形成されている。また、第二側部毛束23bは、柄11側の2束は先端部に近づくに連れて直線的に高くなっていき、柄11の先端部側の2束は柄11の先端部に近づくに連れて直線的に低くなっていくように傾斜して形成されている。
【0024】
図2Bに示すように、山型に傾斜する中央部毛束22の先端部22Tを結んだ線の傾斜角θ1と、第一側部毛束23aの先端部23aTを結んだ線の傾斜角θ2と、第二側部毛束23bの先端部23bTを結んだ線の傾斜角θ3とは、いずれも同一である。また、中央部毛束22の硬さは、側部毛束23a,23bよりも硬く構成されている。また、これに関連して、中央部毛束22の毛量を、側部毛束23a,23bの毛量よりも多くしてもよい。これにより、ブラシ部20の剛性を高く保つことができる。なお、本実施形態では中央部毛束22は長軸方向Pに沿って1列に配置されているが、必ずしも1列に限るものではなく、複数列でもよい。また、側部毛束23a,23b(第一側部毛束23a、第二側部毛束23b)の束の数も本実施形態で示すものに限るものではない。
【0025】
図3及び
図4は、歯ブラシ1の使用状態を示す図で、歯Tと歯Tの隙間(歯間)TGや歯Tと歯茎Mの隙間MGを清掃している状態を示す図であり、
図3は、複数の歯Tを上方から見た図、
図4は、歯Tと歯茎Mを側方から見た図である。本実施形態の歯ブラシ1は、
図3及び
図4に示すように、ブラシ部20を歯Tの表面TSや歯Tと歯茎Mの間に当てて小刻みに動かすことで、歯Tや歯Tと歯茎Mの隙間MGを清掃する。
【0026】
このとき、楕円形状の植毛面12aに中央部毛束22と側部毛束23a,23bを配列していることで、複雑な凹凸形状を有する歯Tの上面や側面あるいは歯Tの隙間TGに対して歯ブラシ1のストロークによりブラシ部20の毛(毛束22,23a,23b)の先端部22T、23aT,23bTを効果的に接触(摺動)させることができるので、歯Tの溝TUや隙間TGの汚れをより効率良く除去することができる。また、中央部毛束22と側部毛束23a,23bを山型(ピラミッド型)に傾斜させた形状としていることで、山型の先端が歯Tの表面TSだけでなく、歯Tの溝TUや、歯間TGや歯Tと歯茎Mの隙間MGなどに入り込みやすくなり、歯Tの溝TUや歯間TGや歯Tと歯茎Mの隙間MGなどの深い位置の汚れを掻き落とすことが可能となる。また、植毛面12aを楕円形状にしたうえで、中央部毛束22や側部毛束23a,23bを山型に形成していることで、山型の先端に位置する中央部毛束22や側部毛束23a,23bのみならず、当該先端に隣接する中央部毛束22や側部毛束23a,23bが順次、歯Tの溝TUや、歯間TGや歯Tと歯茎Mの隙間MGなどに入り込みやすくなる。したがって、これらの相乗効果によって、短時間かつ軽い力でのブラッシングで、歯間TGや歯Tと歯茎Mの隙間MGを含めた口腔内全体の汚れを効果的に落とすことができる。
【0027】
また、歯ブラシ1の植毛面12aを楕円形状にしたうえで、中央部毛束22を、両側の側部毛束23a,23bよりも高く構成したことで、山型(ピラミッド型)に傾斜した中央部毛束22の先端部21T及び側部毛束23a,23bの先端部22aT,22bTが歯Tの溝TUや、歯間TGや、歯Tと歯茎Mの隙間MGの奥深くに入り込む。これにより、短時間かつ軽い力でのブラッシングで、歯Tの溝TUや歯間TGや歯Tと歯茎Mの隙間MGに入り込んだ汚れを掻き落とすことが可能となる。
【0028】
また、前述のように、山型に傾斜した中央部毛束22の傾斜角θ1と側部毛束23a,23bの傾斜角θ2,θ3を同一に構成しているため、中央部毛束22の先端部21Tが歯Tと歯茎Mの隙間MGや溝TUの深部に入り込んだとき、中央部毛束22の短軸方向Qに隣接する側部毛束23a,23bが、当該中央部毛束22と同様の角度で、深部に隣接する部分の歯Tや歯茎Mに入り込んで当接する。このように、歯Tと歯茎Mの隙間MGや溝TU、それと隣接する歯Tと歯茎Mの部分を中央部毛束22と側部毛束23a,23bとが効果的に清掃することによって、短時間かつ軽い力でのブラッシングで、歯間や歯と歯茎の隙間を含めた口腔内全体の汚れを効果的に落とすことができる歯ブラシとなる。
【0029】
また、
図3に示すように、本実施形態の歯ブラシ1は、植毛部12の長軸方向Pの長さ寸法L1が歯Tの2本分の幅寸法L2と同程度の寸法に設定されている。これにより、2本ずつの歯Tを順番に磨いていくことが簡単に行えるので、歯間TGや歯Tと歯茎Mの隙間MGを一箇所ずつ漏れなく清掃することができ、より短時間での効果的な清掃が可能となる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の歯ブラシ1では、長尺の柄11と、柄11の先端部に形成される植毛面12aを有する植毛部12と、植毛面12aに植毛された多数本の毛で構成された毛束22,23a,23bを複数備えて構成されるブラシ部20と、を有する。そして、ブラシ部20によって歯を清掃する歯ブラシ1において、植毛部12は、その植毛面12aを毛束22,23a,23bの先端部22T,23aT,23bT側から見た形状が柄11の長手方向を長軸方向Pとする楕円形状に形成されている。また、ブラシ部20は、毛束22,23a,23bとして、楕円の短軸方向Qの中央領域ACで長軸方向Pに沿って配置される複数の中央部毛束22と、複数の中央部毛束22の両外側の領域AS1,AS2に配置される複数の側部毛束23a,23bと、を含む。そして、中央部毛束22及び側部毛束23a,23bは、楕円の長軸方向Pの両側から中央に近づくに連れて次第に高くなるように山型に傾斜して形成されている。
【0031】
本実施形態の歯ブラシ1では、植毛部12は、その植毛面12aを毛束22,23a,23bの先端部22T,23aT,23bT側から見た形状が柄11の長手方向を長軸方向Pとする楕円形状に形成されていることで、楕円の外周12bに沿ってブラシ部20の毛(毛束)が湾曲線状に配列されるようになる。これにより、植毛部12を長方形状に形成した場合などと比較して、ブラシ部20による歯のブラッシングを行う際に、植毛部12(柄11の先端部)の角部やブラシ部20の外周側の毛束などが口腔内の各部(歯や歯茎や頬の内面など)に対して不必要に干渉することを抑えることができるので、ブラシ部20を軽い力で動かすだけでスムーズかつ効率的なブラシングを行うことができるようになる。
【0032】
また、楕円の外周に沿ってブラシ部20の毛(毛束)が湾曲線状に配列されることで、複雑な凹凸形状を有する歯の上面や側面あるいは歯の隙間に対して歯ブラシ1のストロークによりブラシ部20の毛(毛束)の先端部を効果的に接触(摺動)させることができるので、歯の溝や隙間の汚れを効率良く除去することができる。
【0033】
さらに、植毛部12の外周12bを円形状(真円形状)に形成した場合と比較して、柄11の長手方向、すなわち歯ブラシ1のストローク方向に沿うブラシ部20の距離(長さ寸法)を長く確保することが可能となるので、その分、歯に対するブラシ部20の接触領域(接触面積)を大きくすることができる。したがって、歯の汚れの除去をより効率的に行うことができる。このように、本実施形態の歯ブラシ1は、植毛部12の外周12bを上記の楕円形状に形成したことで、上記複数の効果を合わせて奏することが可能な歯ブラシを実現できる。
【0034】
また、中央部毛束22及び側部毛束23a,23bの先端部(上端部)を山型(ピラミッド型)に構成したことで、複数の中央部毛束22や複数の側部毛束23a,23bのうち最も高い位置にある中央部毛束22の先が、周囲の毛束に干渉されることなく、歯Tと歯茎Mの隙間MGや溝TUなどの深い位置まで入り込むことができるため、深い位置の汚れをも掻き落とすことが可能となる。また、複数の中央部毛束22は山型になるように形成されているため、最も高い位置にある中央部毛束22に隣接し2番目に高い位置にある中央部毛束22も、最も高い位置にある中央部毛束22に続いて隙間MGや溝TUに入り込みやすくなる。これは、同じく山型に形成されている複数の側部毛束23a,23bも同様である。
【0035】
また、歯ブラシ1の中央部毛束22を、周囲にある側部毛束23a,23bよりも高く構成していることで、中央部毛束22が歯Tと歯茎Mの隙間MGや溝TUの最深部に入り込んだとき、中央部毛束22に続いて、中央部毛束22よりも低い高さの側部毛束23a,23bが最深部に隣接する部分の歯Tや歯茎Mに無理なく入り込む。
【0036】
さらに、山型に傾斜した中央部毛束22の傾斜角θ1と側部毛束23a,23bの傾斜角θ2,θ3とを同一に構成したことで、中央部毛束22が歯Tと歯茎Mの隙間MGや溝TUの深部に入り込んだとき、中央部毛束22の短軸方向Qに隣接する側部毛束23a,23bが、当該中央部毛束22と同様の角度で、前記深部に隣接する部分の歯Tや歯茎Mに入り込んで当接する。このように、歯Tと歯茎Mの隙間MGや溝TU、それと隣接する歯Tと歯茎Mの部分を中央部毛束22と側部毛束23a,23bとが効果的に清掃することによって、短時間かつ軽い力でのブラッシングで、歯間や歯と歯茎の隙間を含めた口腔内全体の汚れを効果的に落とすことができる歯ブラシとなる。
【0037】
また、上記構成の歯ブラシ1において、中央部毛束22の硬さを側部毛束23a,23bよりも硬く構成してもよい。このように、植毛部12の中央に近づくに従って段階的に長く高くなる毛束21,22の硬さを、植毛部12の中央に近づくに従って段階的に硬くしていくと、ブラシ部20の剛性を高く保つことができる。このため、歯間TGや歯Tと歯茎Mの隙間MGや溝TUの深部に入り込む際の中央部毛束22の清掃性能を高く維持することができる。
【0038】
また、上記構成の歯ブラシ1において、中央部毛束22の毛量を、側部毛束23a,23bの毛量よりも多くしてもよい。中央部毛束22の毛量を多くすることにより、側部毛束23a,23bよりも長い中央部毛束22の剛性を向上させることができる。このため、歯間TGや歯Tと歯茎Mの隙間MGや溝TUの深部に入り込む際の中央部毛束22の清掃性能を高く維持することができる。
【0039】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態の説明及び対応する図面においては、第一実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。
図5は、第二実施形態の歯ブラシ1-2のブラシ部20の拡大図であり、
図5Aが平面図、
図5Bが正面図、
図5Cが側面図である。
【0040】
本実施形態の歯ブラシ1-2の植毛部12(植毛面12a)の形状は、第一実施形態の歯ブラシ1の植毛部12と同様の楕円形状である。そして、
図5に示すように、歯ブラシ1-2のブラシ部20を形成する毛束は、植毛部12(植毛面12a)に配置される場所によって、頂部毛束21、中央部毛束22、側部毛束23a,23b(第一側部毛束23a,第二側部毛束23b)に分類される。すなわち、ブラシ部20は、植毛部12の中央に位置する頂部毛束21と、長軸方向Pで頂部毛束21と並んで配置される複数の中央部毛束22と、短軸方向Qで中央部毛束22に隣接して配置される複数の側部毛束23a,23bとから構成される。以下、これら各毛束21,22,23それぞれを具体的に説明する。
【0041】
まず、頂部毛束21の構成を説明する。頂部毛束21は、植毛部12(植毛面12a)の中央に位置する。ここで、植毛部12の中央とは、植毛部12(植毛面12a)を
図5Aに示す平面視で見た場合における、植毛部12の楕円形状の中心である長軸方向Pの中央且つ短軸方向Qの中央である。頂部毛束21は、毛束21,22,23のうち、先端部21Tの高さが最も高くなるように形成される。具体的な高さは、頂部毛束21の先端部21Tが、中央部毛束22の先端部22Tを結んで形成される稜線Rの交点Xよりも高い位置にある(
図5B参照)。このため、頂部毛束21の先端部21Tは、中央部毛束22や側部毛束23a,23bから突出している。
【0042】
また、
図5B及び
図5Cに示すように、頂部毛束21の先端部21Tは、錐状(円錐状)に尖って形成される。また、頂部毛束21の硬さは、中央部毛束22及び側部毛束23a,23bよりも硬く構成すると剛性が高まるため好ましい。具体的には、頂部毛束21の材質を中央部毛束22及び側部毛束23a,23bよりも硬くしたり、頂部毛束21を構成するブラシ毛の太さを中央部毛束22及び側部毛束23a,23bの太さよりも太くしたりするとよい。また、頂部毛束21の毛量(毛束の太さ)は、中央部毛束22又は側部毛束23a,23bの毛量よりも多く(毛束の太さを太く)すると、毛束としての剛性が高まるため好ましい。
【0043】
次に、中央部毛束22及び側部毛束23a,23bについて説明する。
図5Aに示すように、中央部毛束22は複数の毛束から構成され、短軸方向Qにおける植毛部12の中央領域ACに位置する。また、側部毛束23a,23bは、複数の毛束から構成され、短軸方向Qにおける植毛部12の中央領域ACの両側に隣接する側部領域AS1,AS2に位置する。さらに、この側部毛束23a,23bは、短軸方向Qにおいて、中央部毛束22に近い側(内側)の領域AS1に配置された第一側部毛束23aと、中央部毛束22から遠い側(外側)の領域AS2に配置された第二側部毛束23bとを含む。
【0044】
中央部毛束22は、頂部毛束21を挟むように長軸方向Pの両側に並んで配置される。また、第一側部毛束23aは、中央領域ACの外側の第一側部領域AS1にて、長軸方向Pに並んで配置され、第二側部毛束23bは、第一側部領域AS1の外側の第二側部領域AS2にて、長軸方向Pに並んで配置される。なお、本実施形態では、中央部毛束22、第一側部毛束23a、第二側部毛束23bは長軸方向Pに沿っていずれも1列で配置されているが、これらは必ずしも1列に限るものではなく、2列以上でもよい。
【0045】
中央部毛束22、第一側部毛束23a、第二側部毛束23bはそれぞれ、
図5Bに示すように、ブラシ部20の側方から見て、植毛部12の中央(長軸方向Pの中央)に近づくに連れて次第に高くなるように山型(ピラミッド型)に傾斜して形成される。さらに、
図5Cに示すように、中央部毛束22の高さは、植毛部12の短軸方向Qに隣接する第一側部毛束23aよりも高く形成され、かつ、第一側部毛束23aの高さは、同じく短軸方向Qに隣接する第二側部毛束23bよりも高く形成される。
【0046】
本実施形態の歯ブラシ1-2では、頂部毛束21を、周囲にある中央部毛束22や側部毛束23a,23bよりも高く構成したことで、先端部が山型(ピラミッド型)に傾斜した中央部毛束22及び側部毛束23a,23bが歯間TGや歯Tと歯茎Mの隙間MGに隣接する歯Tの表面TSを清掃している状態において、頂部毛束21の先端部21Tが歯Tの溝TUや、歯間TGや、歯Tと歯茎Mの隙間MGの奥深くに入り込む。これにより、短時間かつ軽い力でのブラッシングで、歯Tの溝TUや歯間TGや歯Tと歯茎Mの隙間MGに入り込んだ汚れを掻き落とすことが可能となる。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態の歯ブラシ1(1-2)では、植毛部12は、柄11の長手方向を長軸方向Pとする楕円形状であるが、本発明の歯ブラシの植毛部の楕円形状は、その長軸方向が柄の長手方向と一致するものには限られず、長軸方向と柄の長手方向が互いに異なる方向であってもよい。