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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】電気手術器具および電気手術システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20221219BHJP
   A61B 18/18 20060101ALI20221219BHJP
   A61B 18/08 20060101ALI20221219BHJP
   A61B 1/018 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B18/18 100
A61B18/08
A61B1/018 515
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019566926
(86)(22)【出願日】2018-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018067992
(87)【国際公開番号】W WO2019007981
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】1710701.2
(32)【優先日】2017-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,ルイス
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-255051(JP,A)
【文献】特開2004-283925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0098759(US,A1)
【文献】特表2006-513798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物組織に高周波(RF)エネルギー及び/またはマイクロ波EMエネルギーを印加するための電気手術器具であって、前記電気手術器具が、
前記RF EMエネルギー及び/または前記マイクロ波EMエネルギーを伝送するための同軸ケーブルと、
前記RF EMエネルギー及び/または前記マイクロ波EMエネルギーを受信して、治療部位の前記生物組織内にそれを送達させるために、前記同軸ケーブルの遠位端に接続される器具先端部と、
前記同軸ケーブルを運搬するための管腔を画定する細長い軸であって、前記器具先端部が前記細長い軸の遠位端から突出している、前記細長い軸と、
前記器具先端部を回転させるための制御機構であって、前記制御機構が、
形状記憶効果材料から形成されるアクチュエータと、
前記アクチュエータに接続して、エネルギーを供給して、前記形状記憶効果材料の温度変化を引き起こす、エネルギー送達構造と、を備え、
前記アクチュエータが、前記形状記憶効果材料が限界温度に達することに反応して、その近位端と遠位端の間にトルクを呈示するように構成され
前記アクチュエータの前記近位端が前記細長い軸に取り付けられて、前記アクチュエータの前記遠位端が前記器具先端部に取り付けられる、電気手術器具。
【請求項2】
前記形状記憶効果材料が螺旋構造を備える、請求項1に記載の電気手術器具
【請求項3】
前記形状記憶効果材料が、限界温度に達している前記形状記憶効果材料の温度で、ほどけるように構成される、請求項2に記載の電気手術器具
【請求項4】
前記形状記憶効果材料が、一対の協働する螺旋構造を備える、請求項1に記載の電気手術器具
【請求項5】
エネルギー送出構造に接続された電源を含む、請求項1に記載の電気手術器具
【請求項6】
前記エネルギー送達構造が、電流を前記アクチュエータに通すための導電要素を備える、請求項1に記載の電気手術器具
【請求項7】
前記エネルギー送達構造が、前記アクチュエータに熱的に接続するヒーターを備える、請求項1に記載の電気手術器具
【請求項8】
前記アクチュエータから熱エネルギーを抽出するように構成した、冷却剤送達構造を含む、請求項1に記載の電気手術器具
【請求項9】
前記冷却剤送達構造が、前記アクチュエータに熱的に接続する冷却回路を備える、請求項8に記載の電気手術器具
【請求項10】
前記冷却剤送達構造が、選択的に作動可能である、請求項8に記載の電気手術器具
【請求項11】
前記形状記憶効果材料が形状記憶合金である、請求項1に記載の電気手術器具
【請求項12】
前記形状記憶効果材料がニチノールである、請求項1に記載の電気手術器具
【請求項13】
前記形状記憶効果材料が、2方向の回転制御を提供する、2方向の形状記憶効果を示す、請求項1に記載の電気手術器具
【請求項14】
前記形状記憶効果材料が、前記細長い軸の遠位部周囲にスリーブを形成する、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項15】
前記細長い軸の外面の周囲に巻かれた螺旋構造を備える、請求項14に記載の電気手術器具。
【請求項16】
前記細長い軸と前記アクチュエータの間の相対回転を阻止するように構成される、前記細長い軸と前記アクチュエータの近位端の間の接続の係合機構を含む、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項17】
前記係合機構が、前記細長い軸及び前記アクチュエータの協働する相互係合可能な要素を含む、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項18】
前記器具先端部と前記アクチュエータの間の相対回転を阻止するように構成される、前記器具先端部と前記アクチュエータの遠位端の間の接続の係合機能を含む、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項19】
前記係合機構が、前記細長い軸及び前記アクチュエータの協働する相互係合可能な要素を含む、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項20】
前記アクチュエータの前記近位端が、溶接によって前記細長い軸に取り付けられる、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項21】
電気手術システムであって、前記電気手術システムが、
高周波(RF)電磁エネルギー(EM)及び/またはマイクロ波EMエネルギーを発生させるためのジェネレータと、
前記ジェネレータに接続した、請求項1に記載の電気手術器具と、
中を通って延在する器具チャネルを備える操作可能な器具コードを有する、外科用スコープ装置と、を含み、
前記電気手術器具が、前記器具チャネルを通過するように必要な大きさにされる、前記電気手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波(RF)エネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーを生体組織に印加するように構成される、電気手術器具を制御するための装置に関する。特に、本発明は、電気手術器具の遠位先端部を回転させるための制御機構または作動機構に関する。作動機構は、治療部位に対して器具の配向が遠隔制御されるのを可能にできる。
【背景技術】
【0002】
電気手術器具は、生体組織を切除する、または血液を凝固させるなどの目的のために、高周波及び/またはマイクロ波エネルギーを生体組織に供給するために使用される器具である。高周波及び/またはマイクロ波エネルギーは、伝送線(例えば、同軸ケーブル、導波路、マイクロストリップ線など)を用いて、電気手術器具に供給される。
【0003】
同軸ケーブルを使用して、器具チャネルの遠位端で、電気手術器具に外科用スコープ装置の器具チャネルに沿って、マイクロ波及び/または高周波エネルギーを供給することは公知である。このような同軸給電ケーブルは一般的に、中実または可撓性円筒状内部導体と、内部導体周囲の管状誘電体材料層と、誘電体材料周囲の管状外部導体と、を備える。誘電体及び/または外部導体は、多層構造であり得る。
【0004】
電気接続は通常、導体(例えば、ワイヤまたはフォイルの一部)を内部及び外部導体に及び対応する導体要素にはんだ付けすることにより、同軸給電ケーブルの内部/外部導体と器具先端の対応する導体素子の間に形成される。したがって、高周波エネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーは、同軸給電ケーブルから、生体組織内への給電のための器具先端部へ伝達されることができる。
【0005】
電気手術器具は、例えば、胃腸(GI)管の組織のほんの一部を切断または切除するために、内視鏡と連動して使用されている。これに関連して、電気手術器具は、内視鏡の器具チャネルを通過し、その結果、器具先端部は、それがGI管と接触できる、内視鏡の遠位端から突出する。
【0006】
場合によっては、治療部位に対して特定の方法で器具先端部を配向するために、器具先端部を回転させることが望ましい。回転は、器具の残りの部分に対して先端部を回転させることによって(例えば、器具の遠位端に適切な回転力を適用することによって)実行され得る。器具先端部と同軸給電ケーブルの間の回転可能な接続を提供することができる、いくつかの例で、それは、器具先端部が回転するとき、器具先端部と同軸給電ケーブルの間の電気接続を維持する。国際特許出願第WO2016/059228号は、このような接続の例を開示している。機械式作動機構は、同軸給電ケーブルに対する器具先端部の回転を調節するように提供されることができる。
【0007】
器具先端部を回転させる他の機構も、公知である。いくつかの電気手術器具で、同軸給電ケーブルは可撓軸内に含まれて、器具先端部は可撓軸の遠位端から突出する。ユーザが可撓軸を回転させるとき、器具先端も回転するように、器具先端部は可撓軸に強固に接続している。これにより、ユーザは可撓軸の近位端を回転させることによって、器具先端部の回転を制御できる。しかしな、このような方法は、器具先端部の位置の良好な制御を提供しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
最も概括的には、本発明は、電気手術器具の回転を遂行するために、特に、外科用スコープ装置の器具チャネルの遠位端の器具先端部の回転を制御するために、アクチュエータに形状記憶効果(SME)材料(例えば、ニチノールなどの形状記憶合金)の使用を提案する。例えば、アクチュエータは、それが外科用スコープ装置(例えば、内視鏡、気管支鏡、腹腔鏡、胃内視鏡など)の器具チャネルに沿って運ばれるので、器具の構成要素を包む可撓軸に対して、電気手術器具の先端部を回転させるための制御機構の一部でもよい。
【0009】
それが温度変化を経験した場合に、器具先端部を回転させる形でその形状がで変わるように、アクチュエータのSME材料を構成できる。温度変化を制御することによって(例えば、SME材料に対するエネルギーの供給及び/または除去による)、器具先端部の相対回転は、正確に制御されることができる。
【0010】
SMEの温度変化は、材料を加熱するために供給されたエネルギーによって生じ得る。エネルギーは、例えば、電流を材料に通すことと、ジュール効果を介してそれを加熱させることと、によって直接供給されることができる。あるいは、SME材料は、SME材料と熱的接触するヒーターを使用して、加熱させることができる。電気手術装置は、外科用スコープ装置(例えば、内視鏡)の器具チャネルを通して供給されるように構成されることができ、その結果、それは低侵襲の外科的処置を行うために使用できる。
【0011】
本発明の電気手術器具は、可動制御ワイヤの代わりに電流を使用して、器具先端部の回転を調整する。これは、電気手術器具の可動部分の数を減らし、それは、器具の信頼度、及び器具先端部が回転できる精度を増加させることができる。特に、制御ワイヤと器具の他の部分の間の摩擦が、がたがたとスティックスリップにそれを動かすので、可動制御ワイヤを使用して、円滑かつ正確な制御を得ることは困難であり得ると、発明者は理解している。いくつかの屈曲が外科用スコープ装置の器具チャネルにあるとき(例えば、外科用スコープ装置が消化管であるので)、この作用は特に顕著であり得る。
【0012】
本発明によれば、外科用スコープ装置の器具チャネルの遠位端に位置する器具先端部を回転させるための制御機構が提供されており、前記制御機構は、形状記憶効果材料から形成されるアクチュエータと、アクチュエータに接続して、エネルギーを供給して、形状記憶効果材料の温度変化を引き起こす、エネルギー送出構造と、を備え、そこで、アクチュエータは、形状記憶効果材料が限界温度に達することに反応して、その近位端と遠位端の間にトルクを呈示するように構成される。したがって本発明は、その温度が特定の閾値を超えるとき、形状記憶効果材料の性質を利用して、最初の形状に戻る。元の形状への復帰が、器具先端部とその周囲の間にトルクを付与するために使用できる、回転またはねじる運動を含むように、アクチュエータは成形される。
【0013】
形状記憶効果材料は、変形するとき、それが転移温度を超えて加熱されるとき、その最初の(すなわち、変形前の)形状に戻る材料である。形状記憶効果材料が加熱されるとき、器具先端部の回転が生じるために、形状記憶効果材料の形状は、それを電気手術器具に取り付ける前のその製造の間、適当な方法(例えば、ねじること、及び加熱処理すること)で操作することができる。次に、アクチュエータが加熱されるとき、それは変形して(例えば、ねじりを戻す)、器具先端部を回転させる。
【0014】
場合によっては、形状記憶効果材料は、2方向の形状記憶効果を示すことができる。2方向の形状記憶効果を示す材料は、それら熱的に循環させることにより、2つの所定の形状の間を繰り返し循環できるように、操作できる。このような2方向の形状記憶効果材料の使用は、器具先端部の回転が、材料の温度を制御することにより、時計回り及び反時計回りの方向に調節されるのを可能にする。好適な形状記憶効果材料は、これらに限定されないが、形状記憶合金(例えば、ニッケルチタン(NiTi)、鉄系及び銅系SME合金)を含んで、形状記憶効果ポリマーを成形する。いくつかの好ましい実施形態で、アクチュエータは、NiTiから製造されており、それは、45%のTi及び55%のNiから形成される。NiTiの利点は、それが転移温度を上回って加熱されるとき(NiTiの転移温度は約40℃である)、大きな力及びトルク、ならびに大きい変形を生じるために使用できる。
【0015】
一例で、形状記憶効果材料は、螺旋構造を備えることができ、それは、有用なトルクを印加するために、効果的な物理的形状を提供できる。螺旋構造は、巻いたワイヤまたはシートまたは材料でもよい。形状記憶効果材料は、出発形状よりきつく巻かれていない、最初の形状を有する(限界温度を超えて)。したがって、形状記憶効果材料は、限界温度に達している形状記憶効果材料の温度で、ほどけるように構成されることができる。限界温度は、例えば、治療部位などでエネルギーの供給を通して起きる、体温または熱によって引き起こされる、偶然の回転を回避するように選択されることができる。例えば、限界温度は40℃以上でもよい。
【0016】
一例で、形状記憶効果材料は、一対の協働する螺旋構造を含むことができる。この構造は、多くのトルクを印加することができて、破損に強い。
【0017】
制御機構は、エネルギー送出構造に接続された電源を含むことができる。任意の好適な種類のエネルギーを、アクチュエータの温度に影響を及ぼすために使用できる。例えば、エネルギー送達構造は、電流をアクチュエータに通すための導電要素(例えば、ケーブル)を備えることができる。エネルギー送達構造は、完全な電流路を提供するために、アクチュエータの各先端から移動する一対の導電要素を提供できる。この例の電源は、直流電流源などでもよい。電源は、所望のエネルギー量をアクチュエータに供給するために制御可能でもよい。電源は、エネルギーを連続的に、またはパルス化された方法で供給できる。
【0018】
制御機構は、アクチュエータの温度を検出するように構成した、温度センサを備えることができる。温度センサから出る出力は、電源の動作を制御するためのフィードバックとして使用できる。
【0019】
他の例で、エネルギー送達構造は、熱的にアクチュエータに接続しているヒーターを含むことができる。ヒーターは、抵抗加熱器(例えば、直流電源に接続している)でもよい。
【0020】
制御機構は、アクチュエータから熱エネルギーを抽出するように構成した、冷却剤送達構造を含むことができる。これは、アクチュエータの温度のより精密な制御を可能にすることができ、器具先端部の位置に更なる精度を付与する。冷却剤送達構造は、アクチュエータと熱連通する(例えば、熱交換器などを介して)冷却回路を備えることができる。冷却剤送達構造は、選択的に作動可能でもよく、すなわち、必要な場合にだけ、冷却効果が切り替えられることが可能である。あるいは、冷却効果は常に存在してもよく、その場合、アクチュエータを加熱するためのエネルギーが、形状記憶効果材料の温度を制御する可調方法で送達される。
【0021】
別の態様では、本発明は、高周波(RF)電磁エネルギー(EM)及び/またはマイクロ波EMエネルギーを生体組織に印加するための、電気手術器具を提供し、前記器具は、RF EMエネルギー及び/またはマイクロ波EMエネルギーを伝えるための同軸ケーブルと、RF EMエネルギー及び/またはマイクロ波EMエネルギーを受信して、治療部位の生体組織内にそれを送達するために、同軸ケーブルの遠位端に接続される器具先端部と、同軸ケーブルを運搬するための管腔を画定する細長い軸であって、器具先端部が可撓軸の遠位端から突出している、細長い軸と、上で画定される構造のいずれかを有する制御機構と、を備えており、アクチュエータの近位端が軸に取り付けられて、アクチュエータの遠位端が器具先端部に取り付けられる。
【0022】
形状記憶効果材料は、軸の遠位部周囲にスリーブ(例えば、螺旋スリーブ)を形成できる。軸は、適切な可撓性材料から作成した中空管を含むことができる。同軸ケーブルは、電気手術器具の任意の配線及び流体導管と共に、軸内に含有されることができ、軸の遠位端で器具先端部に接続できる。軸は、外科用スコープ装置(例えば、内視鏡、気管支鏡、胃内視鏡など)の器具(または、作業)チャネルの全長を通して挿入可能でもよい。
【0023】
同軸ケーブルは、内部導体、内部導体と同軸の外部導体、及び内部導体及び外部導体を分離する第1の誘電体材料を含む。同軸給電ケーブルは、外部導体を保護し、かつそれを絶縁するために、外側保護シースを含むこともできる。いくつかの例で、内部導体は導電材料から作成した中空管から形成されることができて、ワイヤ及び/または流体導管は、内部導体を通して供給されることができる(例えば、流体を器具先端部に送達するために)。
【0024】
器具先端部は、同軸給電ケーブルの内部及び外部導体に電気的に接続した1つ以上の電極を含むことができ、その結果、それは、RF EM及び/またはマイクロ波EMエネルギーを生体組織に供給できる。多くの異なる器具先端部の構成が、可能である。例えば、器具先端部は、第2の誘電体材料によって空間的に第2電極から分離される、第1電極を備える、バイポーラ放出構造を含むことができる。第1及び第2電極はそれぞれ、高周波エネルギーを伝送するための作動電極及び戻り電極として、またはマイクロ波エネルギーを放射するためのアンテナとして、作用するように配置され得る。
【0025】
いくつかの実施形態で、アクチュエータは、可撓軸に第1端で固定されて、器具先端部に第2端で固定されることができる。このように、器具先端部は、アクチュエータが加熱されるとき、可撓軸の遠位端に対してアクチュエータによって回転できる。アクチュエータは、いかなる適切な固定手段(例えば、接着剤、機械的締結具及び/または溶接)を使用して、可撓軸及び器具先端部に固定できる。
【0026】
一例にて、器具は、軸とアクチュエータの近位端の間の接続の係合機能を含むことができる。係合機能は、軸とアクチュエータの間の相対回転を阻止するように構成されることができる。例えば係合機能は、軸及びアクチュエータで協働する相互係合可能な素子を含むことができる。
【0027】
同様に、器具先端部とアクチュエータの間の相対回転を阻止するように構成される、器具先端部とアクチュエータの遠位端の間の接続の係合機能(例えば、協働する相互係合可能な素子)があり得る。
【0028】
軸は、可撓軸が回転するのを防ぐために、電気手術器具の近位端でそれ自体を固定できる。可撓軸がねじられる可能性がある可撓軸の代わりに、これは、アクチュエータが加熱されるとき、アクチュエータによって生成される任意のトルクを器具先端部に送信するのを確実にする。そのうえ、軸はねじれる動作を阻止する材料から作成されて、アクチュエータによって生成される任意のトルクが器具先端部に送信されるのを更に確実にすることができる。
【0029】
器具先端部(例えば、流体導管、ワイヤ)に取り付けられる同軸ケーブル及び他の任意の構造は、器具先端部が回転するとき、器具軸内で回転するのを可能にされ得る。これは、同軸給電ケーブルと器具先端部の間の境界面での応力の蓄積を防ぎ、それは、同軸給電ケーブルと器具先端部の間の接続を妨害できる。
【0030】
別の態様では、本発明は、電気手術システムを提供する。高周波(RF)電磁エネルギー(EM)及び/またはマイクロ波EMエネルギーを発生させるためのジェネレータと、ジェネレータに接続した、上で画定される特徴のいずれかを有する電気手術器具と、それを通って延在する器具チャネルを備える操作可能な器具コードを有する、外科用スコープ装置と、を含み、そこで、電気手術器具は、器具チャネルを通過するように必要な大きさにされる。
【0031】
本明細書で「近位」及び「遠位」という用語は、それぞれ治療領域から遠い及びそれに近い構造(例えば、電気手術器具、同軸給電ケーブルなど)を意味する。したがって、使用中、構造の近位端はユーザによって手が届くが、遠位端は治療部位(すなわち、患者)に近い。
【0032】
「導電性」という用語は、文脈で明らかにそうではなことを記載する場合を除いて、電気伝導性を意味するために本明細書で使用される。
【0033】
下で使用する「長手方向」という用語は、同軸伝送線の軸に平行な器具チャネルに沿った方向を指す。「横方向」という用語は、長手方向に対して垂直である方向を意味する。「内部」という用語は、器具チャネルの中心(例えば、軸)に半径方向に近いことを意味する。「外部」という用語は、器具チャネルの中心(軸)から半径方向に遠いことを意味する。
【0034】
「電気手術」という用語は、手術中に使用されて、マイクロ波電磁(EM)エネルギー及び/または高周波EMエネルギーを利用する、器具、装置またはツールに関連して使用する。本明細書で、マイクロ波EMエネルギーは、300MHz~100GHzの範囲(好ましくは、1GHz~60GHzの範囲)で安定した一定の周波数を有する、電磁エネルギーを意味し得る。マイクロ波EMエネルギーの好適なスポット周波数は、915MHz、2.45GHz、5.8GHz、14.5GHz、24GHzを含む。5.8GHzが好ましくてもよい。本明細書で、高周波EMエネルギーは、10kHz~300MHzの範囲の安定した一定の周波数を有する、電磁エネルギーを意味し得る。
【0035】
本発明の例を添付の図面を参照して以下に論じる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明が使用され得る、電気手術システムの概略図である。
図2】本発明の実施形態である、電気手術器具の概略図である。
図3】本発明の電気手術器具で使用できる、アクチュエータの概略図である。
図4A図3のアクチュエータの遠位端の概略図である。
図4B図3のアクチュエータの近位端の概略図である。
図5】本発明による電気手術器具の可撓軸の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
更なるオプション及び初期設定
図1は、本発明の実施形態である、電気手術システム100の概略図である。前記システムは、器具先端部からの高周波(RF)エネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーを使用して、生体組織(例えば、腫瘍、病変または筋腫)を治療するように構成される。システム100は、RFエネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーを制御可能に供給するための、ジェネレータ102を備える。この目的のための適切なジェネレータは、国際特許出願第WO2012/076844号に記載されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。ジェネレータ102は、インターフェースケーブル104によってインターフェースジョイント106に接続される。インターフェースジョイント106は、流体送達装置108(例えば、シリンジ)から流体供給107を受け入れるためにも接続され得る。必要であれば、インターフェースジョイント106は、トリガ110を摺動させることによって操作可能である、器具移動機構を収容できる。インターフェースジョイント106の機能は、ジェネレータ102、流体送達装置108及び器具制御機構からの入力を、インターフェースジョイント106の遠位端から延在する1つの可撓軸112内に必要とされ得る任意の他の入力と結合することである。
【0038】
可撓軸112は、内視鏡114の器具(作業)導管の全長を通して挿入できる。可撓軸112は、内視鏡114の器具導管を通過し、内視鏡の管の遠位端で突出する(例えば、患者の内部で)ように形成される、遠位先端部118を有する。遠位末アセンブリは、生体組織内にRF EMエネルギー及び/またはマイクロ波EMエネルギーを送達するための作動先端部と、流体を送達するための格納可能な皮下注射針と、を含む。
【0039】
遠位アセンブリ118の構造は、作業チャネルを通過するのに好適な最大外径を有するように配置され得る。通常、外科用スコープ装置(例えば、内視鏡)の作業チャネルの直径は、4.0mm未満(例えば、2.8mm、3.2mm、3.7mm、3.8mmのうちの任意の1つ)である。可撓軸の長さ112は、1.2m以上(例えば、2m以上)であり得る。他の例で、器具先端部118は、作業チャネルを通過して軸が挿入された後(そして、器具コードが患者内に導入される前)、可撓軸112の遠位端に載置され得る。あるいは可撓軸112は、その近位接続を行う前に、遠位端から作業チャネルに挿入されることができる。これらの配置で、遠位端アセンブリ118は、外科用スコープ装置114の作業チャネルより大きい寸法を有するのが可能になる。
【0040】
上述のシステムは、器具を患者内に導入する1つの方法である。他の技術も可能である。例えば、器具は、カテーテルを使用しても挿入され得る。
【0041】
本発明は、RFエネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーを生体組織に印加するための器具を提供し、そこで、器具先端部118は、可撓軸112に対して回転できる。器具先端部118の回転は、形状記憶効果(SME)材料から形成されて、器具先端部118の近くの可撓軸112上に位置する、アクチュエータ(図示せず)により可能になる。以下に詳細に説明するように、加熱されるとき、それが、器具先端部118を可撓軸112に対して回転させるような形状に変わるように、アクチュエータは構成される。アクチュエータは、電流をそれに通すことによって、またはアクチュエータに熱的に接続しているヒーターを使用して、直接加熱され得る。制御した方法でアクチュエータを加熱するために、システム100は、ケーブル122を介してインターフェースジョイント106と接続する電源120を更に含む。電源120は、電流をアクチュエータに流す及び/またはアクチュエータに熱的に接続するヒーターを作動させるために使用できる。電源120により供給される電流を制御することによって、器具シャフト112に対して器具先端部118の回転角度を正確に調節するために、アクチュエータの温度変化を制御できる。
【0042】
電源120が図1の別の構成要素として示されるが、それは、ジェネレータ内に組み込まれることができる(例えば、そこからの直流出力として、またはスコープ装置114の一部として(例えば、その上に取り付けられる、またはその上に一体化して形成される))と理解され得る。
【0043】
図2は、本発明の実施形態である制御機構を備える、電気手術器具200の概略図を示す。電気手術器具200は、軸202(例えば、上述の軸112に対応する)を含み、それは、外科用スコープ装置の器具チャネル内に適合するために必要な大きさにされ得る、細長い管状構造である。軸202は、その長さの全部または一部に沿った可撓性材料でもよく、その結果、それが所定の位置で操作されるので、それは器具チャネルの形状または構成に適応することができる。
【0044】
高周波数及び/またはマイクロ波エネルギーを生体組織に供給するように構成される、器具先端部204は、軸202の遠位端から突出する。好適な先端構造は、国際特許出願第WO2014/006369号に開示されているが、本発明は、先端構造のいかなる細部によっても制限される必要はない。
【0045】
器具先端部204は、同軸給電ケーブル208に電気的に接続しており、それは、器具先端部204にRF EMエネルギー及び/またはマイクロ波EMエネルギー(例えば、ジェネレータ102から)を伝送されるように構成される。同軸給電ケーブル208は、可撓軸202により形成される管腔205内で長手方向に延在する。同軸ケーブル208は内部導体210を備え、それは第1の誘電体材料214によって外部導体212から分離される。同軸給電ケーブル208は、マイクロ波エネルギーで低損失でもよい。チョーク(図示せず)は、器具先端部204から反射するマイクロ波エネルギーの逆伝搬を阻害し、そうして装置に沿った逆加熱を制限するために、同軸給電ケーブル208に提供されることができる。
【0046】
電気手術器具200の他の要素(図示せず)も、電気手術器具200の特定の構成に応じて、軸202の管腔205内に含有され得る。例えば、流体導管(例えば、流体供給源107)、制御ワイヤ(例えば、トリガ110機構)、及び電気配線(例えば、器具先端部の近くに位置する1つ以上のセンサ用)は、可撓軸202内に含有されることができる。いくつかの実施形態で、可撓軸202は多腔構造を含むことができ、そこで、電気手術器具200の異なる素子は、多腔構造の対応する管腔内に含有される。内部導体210自体は中空でもよく、その結果、それは、器具先端部204へ及びそれから器具または他の材料(例えば、生理食塩水などの液体)を運ぶための輸送チャネルとして使用してよい。
【0047】
電気手術器具200は、軸202の遠位端に位置する、SME材料(例えば、ニチロール、NiTi)から作成されるアクチュエータ216を更に含む。この例で、アクチュエータ216は、可撓軸202に第1端部218で固定されて、器具先端部204に第2端部220で固定される。アクチュエータ218は、任意の好適な手段(例えば、接着剤、機械的締結具または溶接)を使用して、その端に固定できる。図2に示される例で、アクチュエータ216は、可撓軸202の遠位部周囲に巻きつけたSME材料から作成されるワイヤであり、すなわち、可撓軸202は、アクチュエータ216のコイルを通過する。説明の便宜上、アクチュエータ216が可撓軸202の外側に巻かれて示され、一方で可撓軸202及び同軸給電ケーブル208は断面図で表された。実際には、可撓軸202の内部が見えるわけではない。この実施形態でアクチュエータは軸202の外側に巻かれるが、他の例で、それは、軸202内に載置されることができる(例えば、軸202の内面に第1端部で固定される)。
【0048】
遠位部は、軸202の遠位端から20cm以下(好ましくは、10cm)の距離だけ延在することができる。したがって、アクチュエータは、外科用スコープ装置の器具チャネル内で大きな曲がりを受けない、軸部分に位置できる。
【0049】
その温度が増加するように、アクチュエータは配置されて、それは、矢印222により示されるように、器具先端部204に可撓軸に対して回転するように変形する。図2の例で、その温度が増加するとき、アクチュエータ216のコイルは、ほどけるように構成される。アクチュエータ216がその第1端部218で可撓軸202に対する固定したまま保持されるので、コイルをほどくことは、器具先端部204を可撓軸202に対して回転させる。この作用を得るために、アクチュエータは、最初にその転移温度を超える温度で、第1の「ほどけた」構成に形成される。転移温度以下の温度に冷却した後、アクチュエータは、それが器具先端部及び軸に載置されることができる、第2の「巻いた」構成に変形する。アクチュエータの温度が転移温度まで上昇する際、それは、第1形状に戻って変形し、それにより、器具先端部を回転させる。
【0050】
可撓軸202は、それが回転するのを防ぐために、電気手術器具の近位端(例えば、インターフェースジョイント106)に固定したまま保持されることができる。これによって、アクチュエータの変形による、可撓軸202のいかなる不必要な回転またはねじれを生じさせないことを確実にする。そのうえ、可撓軸202は、その長さに沿ってねじれるのを妨げる、または防ぐ構造を含むことができる。このような構造により、先端部の回転が、アクチュエータによって付与されるトルクに最少の抵抗を示すので、アクチュエータ216の変形が、軸に対して器具先端部を回転させるために優先して作用することが確実になり得る。
【0051】
可撓軸202は、半径方向の内側ポリマー層と半径方向の外側ポリマー層の間に載置される、編組ワイヤ(例えば、ステンレス鋼)スリーブを有する編組管から形成されることができる。器具先端部204への高周波数及び/またはマイクロ波エネルギーの供給を、編組ワイヤが干渉するのを回避するために、器具先端部204に隣接する可撓軸202の遠位部(例えば、アクチュエータが巻かれる遠位部)は、ポリマー層だけから(すなわち、内部の編組紐なしで)作成されてもよい。
【0052】
アクチュエータ216の温度変化を生じさせるために、電流は、それに通して流されることができる。図2に示す例で、第1ワイヤ224は、アクチュエータ216の第1端部218に接続しており、第2ワイヤ226は、アクチュエータ216の第2端部220に接続している。電源(例えば、電源120)は、ワイヤ224及び226に接続して、直流電流をアクチュエータ216に流すことができ、それは、アクチュエータ216を、ジュール効果を介して加熱させ得る。この例では、第1ワイヤ224は軸202の外面に沿って伸びて、第2ワイヤ226が管腔205内に配置されている。他の配線構成も可能である。例えば、両方のワイヤは、可撓軸202の内部を通り抜けて、その遠位端で可撓軸202を出て、アクチュエータ216の端部に接続できる。
【0053】
アクチュエータ216の温度は、アクチュエータ216上に、またはその近くに位置する温度センサ(図示せず)を使用して監視され得る。アクチュエータ216は、例えば、適切な絶縁コーティング(例えば、パリレンなど)によって電気的に絶縁されることができる。
【0054】
あるいは、ヒーター(図示せず)は、アクチュエータ216の温度を上昇させるために使用できる。ヒーターはアクチュエータ216に直接載置されることができる、または、それはアクチュエータ216の近くに載置されることができ、その場合、熱リンクがヒーターとアクチュエータの間に提供される。ヒーターは、電流がそれに通されるとき、熱を生じる抵抗チップでもよい。低電流が、アクチュエータ216に電流を直接通すことと比較して、アクチュエータ216の温度に所望の温度変化を生じさせるために必要であるということが、ヒーターを使用する利点であり得る(例えば、SME材料が低い抵抗率を有し得るので)。
【0055】
同軸給電ケーブル208及び器具先端部に接続している他の任意の構成要素は、器具先端部204の回転を容易にするために、可撓軸202内部で自由に回転できてもよい。同軸給電ケーブル208が、その回転を防ぐように電気手術器具200の近位端に固定される場合、器具先端部204が回転するとき、それがねじられ得るように、同軸給電ケーブル208を構成できる。液密封止228は、流体が可撓軸202に入る、またはそれから出るのを防ぐために、可撓軸202の遠位端に提供されることができる。液密封止228は、器具先端部204が突出して、可撓軸202に対して器具先端部204の回転を可能にする、通路を有することができる。通路は、液密封止を同軸給電ケーブル208及び/または器具先端部204に形成するように、成形されることが可能である。他の通路は、封止228(例えば、ワイヤ226用)に提供されてもよい。器具先端部204が、例えば、可撓軸202に対する器具先端部204の長手方向及び/または横方向の動きを防ぐことによって、回転するとき、封止228は、可撓軸202に対して固定した器具先端部204の位置を保持するために役立つことができる。
【0056】
他の実施形態で、器具先端部204が回転するとき、同軸給電ケーブル208の回転及び/またはねじれを生じさせないことが望ましい場合がある。これは、同軸給電ケーブル208と器具先端部204の間の可撓性のある及び/または回転可能な接続を提供することにより可能になり得る。回転可能な接続は、器具先端部204が回転する間、同軸給電ケーブル208と器具先端部204の間の電気接続を維持するように配置される。
【0057】
所定の転移温度に達するとき、アクチュエータ216は、変形するように構成されることができる。例えば、NiTiから作成したアクチュエータは、約40℃の転移温度で変形するように構成されることができる。アクチュエータ216の温度を制御することにより、可撓軸202に対する器具先端部204の回転を調整できる。例えば、アクチュエータ216は、電流パルスを適用することにより(アクチュエータにまたはヒーターに直接)加熱されることができて、その結果、アクチュエータの温度は制御された方法で増大できる。あるいは、直流を印加できる。温度センサを使用してアクチュエータ216の温度を監視することによって、電流は、アクチュエータ216を転移温度まで加熱するために、印加されることができ、そこで、アクチュエータは変形し始めて、器具先端部204を可撓軸202に対して回転させる。器具先端部204の回転を停止させるために、アクチュエータ216の温度は、転移温度以下に低下するのが可能になる(例えば、電流の印加を停止させることによって)。第1の「ほどけた」構成に戻る場合、2つ以上の360度回転により器具先端部を回転させることができるように、アクチュエータを構成できる。
【0058】
アクチュエータのSME材料は、1方向の形状記憶効果を示すことができる。したがって、アクチュエータは、単回使用の製品でもよい、またはその次の使用のために、第2の「巻いた」構成に手動で再設定できる。
【0059】
しかし、いくつかの実施形態で、アクチュエータは「2方向」のSME材料により形成されることができる。2方向のSME効果を示す材料は、それら熱的に循環させることにより、2つの所定の形状の間を繰り返し循環できるように、操作される。したがって、アクチュエータ216がこのような材料を使用して製造されるとき、アクチュエータ216を加熱することは、一方向への器具先端部204の回転に生じさせることができ、一方でアクチュエータ216の冷却を可能にすることが、反対方向への器具先端部204の回転を生じさせる。
【0060】
場合によっては、アクチュエータ216の温度制御の精度を改善するために、使用中、アクチュエータ216を積極的に冷却するための機構を備える器具200を提供することも望ましくてもよい。例えば、器具200は冷却回路(図示せず)を含むことができ、そこで、冷却剤(例えば水、食塩水など)を、アクチュエータに選択的に適用することができる。一例で、アクチュエータは、冷却液が選択的に循環できる熱交換器と、熱連通してもよい。あるいは、冷却液は、熱交換器と接続して連続的に循環でき、それによって、冷却回路により提供される冷却力と印加電流により提供される火力の間のバランスは、アクチュエータの温度を正確に制御するために、調整可能であり得る。このような調整力は、自動的に実施されることができる(例えば、PID制御などを使用して)。
【0061】
他の例で、冷却機構は、温度を低下させるために、直接アクチュエータ上に冷却剤を噴霧するように構成した、ノズルを含むことができる。
【0062】
アクチュエータ216の異なる形状及び構成は、可能である。例えば、アクチュエータは、図2で示すワイヤの代わりに、可撓軸の遠位部が含まれるSME材料から作成されるスリーブでもよい。あるいは、アクチュエータは、SME材料から作成される、2つ以上の協働コイルから形成されることができる。このように、個々の各コイル上のトルク荷重は低減されることができる。これは、アクチュエータによって器具先端部に印加されることができるトルクの総量を増加させる、及びコイルのうちの1つの破損の危険性を低下させるのに役立つことができる。
【0063】
図3は、本発明による電気手術器具で使用できる、アクチュエータ300の概略図を示す。アクチュエータ300は、SME材料(好ましくは、NiTi)から作成した2つの協働する螺旋(第1螺旋302及び第2螺旋304)から形成される。アクチュエータ300が転移温度を超えて上がるとき、螺旋をほどくことにより、アクチュエータ300は、540度(すなわち1.5回転)で器具先端部を回転させるために使用できる。
【0064】
2つの螺旋302及び304は、ほぼ矩形の断面を有するワイヤから形成される。2つの螺旋302及び304は、アクチュエータ300の遠位端306で接合されており、その結果、2つの螺旋は遠位端306で電気的に接続される。第1螺旋302は、アクチュエータ300の近位端309で第1電気端子308を有し、第2螺旋304は、近位端309で第2電気端子310を有する。したがって、第1螺旋302及び第2螺旋304は連続する電流路を形成して、電流は、アクチュエータ300を通して供給されて、第1電気端子308及び第2電気端子310を使用して、それを加熱できる。アクチュエータ300は、単一材料から一体化して形成されることができる。
【0065】
協働する螺旋302及び304は、電気手術器具の可撓軸が通過できる、スリーブを形成する。コネクタ312は、アクチュエータ300を器具先端部に取り付けるために、アクチュエータ300の遠位端で形成される。コネクタ312は、一連の超音波溶接機構を含むことができ、それは、器具先端部をコネクタ312に超音波で溶接するために使用できる。図3で示す例で、超音波溶接機構は、アクチュエータ300と器具先端部の間の強い接続を提供するために、器具先端部の補完的な超音波溶接構造(例えば、穴に適合する突起)を受容するように構成される、一連の穴である。類似の超音波溶接機構は、アクチュエータの近位端309で螺旋302及び304に提供されており、それは、アクチュエータ300が、可撓軸の補完的な超音波溶接機構を介して、その近位端309で可撓軸に溶接されるのを可能にする。補完的な超音波溶接機構の使用は、トルクが、アクチュエータ300から器具先端部まで効率的に伝導されるのを可能にすることができて、アクチュエータ300が、可撓軸及び/または器具先端部に対して滑るのを防ぐことができる。有利には、アクチュエータ300の超音波溶接機構は、製造工程の一部としてアクチュエータを熱処理するとき、所定の位置にアクチュエータを保持するためにも使用できる。
【0066】
図4A及び図4Bは、アクチュエータ300の遠位端306及び近位端309それぞれの詳細な図を示す。図4Aでわかるように、2つの螺旋302及び304は、コネクタ312と一体化して形成されており、それは、それらを機械的かつ電気的に接続する。コネクタ312は、上述のとおり、超音波溶接機構として役立つ、一連の穴402を含む。図4Bに示すように、アクチュエータの近位端309の電気端子308及び310は、その内部に形成される穴404を有して、それは、上述のとおり、超音波溶接機構として使用できる。螺旋302及び304はそれぞれ、電気端子310及び308の近位縁から約10mmで始まることができる。
【0067】
図5は、本発明による電気手術器具の可撓軸500の概略断面図を示す。同軸給電ケーブル、及び可撓軸500内に含有され得る任意の他の構成要素は、図5に示されていない。複数の固定突起部502は、可撓軸500の外面に配置されている。固定突起部502は、アクチュエータ(図示せず)の近位端の補完的な係合機能(例えば、穴404)によって係合するように構成されており、その結果、アクチュエータ及び可撓軸は、互いに対して回転可能に係止される。固定突起部502は、可撓軸500と同じ材料から形成されることができて、可撓軸500と一体化して形成されることができる。固定突起部は、超音波溶接機能であり得て、その結果、それらは、2つの構成要素の間に強い結合を提供するために、可撓軸500をアクチュエータに超音波溶接するために使用できる。類似の固定突起部を、器具先端部にも提供することができて、その結果、それは、アクチュエータに対して回転可能に固定されることができ、そうして、トルクは、アクチュエータから器具先端部まで効率的に伝導されることができる。
【0068】
本発明の電気手術器具で使用するアクチュエータの機械的要件がどのくらいかを推定し得ることを示す、例示の計算をここで設定する。
【0069】
実験で、発明者は、ケーブルが170度反転する(すなわち、ケーブルが170度の角度で曲げられる)とき、器具ケーブル(例えば、高周波及び/またはマイクロ波エネルギーを伝達するための同軸給電ケーブル)を180度回転させるために、約56×10-3Nmのトルクを提供する必要があることがわかった。電気手術器具が内視鏡の器具チャネルを通り抜けるために、発明者は、電気手術器具の可撓軸の遠位部周囲に配置されるアクチュエータの最大外径として、3.10mmを選んだ。発明者は、可撓軸に対して、器具先端部の540度の回転範囲を選んだ。したがって、アクチュエータの設計について発明者により設定される要件は、以下のとおりだった。
【0070】
トルク:56×10-3Nm
器具先端部の回転範囲:540度
アクチュエータの最大外形:3.10mm
以下の式は、アクチュエータの種々のプロパティを計算するために使用できる。そこで、使用する記号を表1でまとめる。
【0071】
【数1】
【0072】
【数2】
【0073】
【数3】
【0074】
【数4】
【0075】
【数5】
【0076】
【数6】
【0077】
【表1】
【0078】
式(1)及び式(2)を使用して、円形断面を有するワイヤから形成される螺旋コイルを記述することができ、一方で、式(3)及び式(4)を使用して、矩形断面を有するワイヤから形成される螺旋コイルを記述することができる。(5)及び(6)の与えられる値は、この計算用に発明者によって使用されたNiTi(「ニチノール」)に関するものである。コイルのトルク要件は、2つの協働する螺旋コイルを使用して半減され得る。したがって、2つの協働コイルのうちの1つのトルク要件は、M=28×10-3Nmである。
【0079】
電気手術器具の可撓軸の中で外径は、2.66mmでもよい。アクチュエータのコイルが可撓軸と同軸で、最大外径が3.10mmである場合、厚みtは、t=0.22mmとして取られ得る。発明者は、ばね設計の一般的な方法のように、(6)の値の75%を使用した。bを得るために、式(4)を変形する。
【0080】
【数7】
【0081】
前述の値を使用して、b=5.18mmを得た。したがって、螺旋状ワイヤの断面は、t=0.22mm及びb=5.18mmによって得られる。次の計算は、どれくらいのばねの回転数が、540度に必要な回転(T=1.5回転)に適応するために必要なのかを決定することを含有する。螺旋ワイヤは、2.66mmの可撓軸の直径に適合しなければならず、そこで、D=2.66mm+0.22mm=2.88mmである。螺旋ワイヤがほどけている状態で作動する場合(すなわち、加熱されるとき、それはほどける)、ほどけるにつれて、その直径は増大する。1.5回転の全たわみに対応するのに必要なコイルの巻き数を得るために、式(3)を変形して、以下を得た。
【0082】
【数8】
【0083】
前述の値を使用して、(8)よりNt≒13がわかった。それから、1.5回転の全たわみでの直径の増加を計算できる。以下の式を使用して、全たわみでの螺旋コイルの内径を概算する。
【0084】
【数9】
【0085】
この式の逆数を、螺旋コイルがほどける場合に使用する。
【0086】
【数10】
【0087】
以下のパラメータID=2.66mm、Nt=13mm及びT=1.5を使用して、式(10)からID=2.97mmを得て、これにより、螺旋コイルの外径ODが3.41mmであることがわかった。
【0088】
上で計算した寸法は、立体の体積V=2.9182×10-7-3を計算するために、協働する螺旋構造を有するアクチュエータのCADモデル(図3に示すような)を作成するために使用した。ニチノールの密度は、6450kg/mである。これにより、アクチュエータの質量が1.88gだとわかる。ニチノールの比熱容量は、c=837.36J/kg/Kである。ニチノールの転移温度は40℃なので、室温を起点として、θ=19℃の温度変化は、アクチュエータを転移温度に近づけるのに必要である。アクチュエータの温度を変化させるのに必要な総エネルギーは、(11)によって得られる。
【0089】
【数11】
【0090】
式(11)及び上述の量を使用して、H=29.91ジュールの総エネルギーを必要とする。CADモデルは、螺旋コイルのそれぞれの長さ(200.2mm)を算出するためにも使用した。ニチノールの抵抗率は、pnitinol=9.72×10-7Ωmである。したがって、アクチュエータの電気抵抗(両方の螺旋コイルの長さを考慮に入れる)は、約0.34Ωである。電力方程式(12)を使用して、
【0091】
【数12】
【0092】
電力I=9.38Aは、周期1秒でアクチュエータを通過して、所望の温度上昇を生じさせることができる。あるいは、必要な電力は、より短い期間でより高い振幅電流パルスにより供給されることができ、例えば、29.91ジュールは、100ミリ秒当たり299.1Wの電力を有するパルスとして送達されることができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5