(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】酸性液の再生装置および再生方法
(51)【国際特許分類】
C25D 11/04 20060101AFI20221219BHJP
B01J 39/05 20170101ALI20221219BHJP
B01J 45/00 20060101ALI20221219BHJP
B01J 47/02 20170101ALI20221219BHJP
B01J 49/05 20170101ALI20221219BHJP
B01J 49/06 20170101ALI20221219BHJP
B01J 49/50 20170101ALI20221219BHJP
B01J 49/53 20170101ALI20221219BHJP
C02F 1/42 20060101ALI20221219BHJP
C25D 21/18 20060101ALI20221219BHJP
C25D 21/22 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C25D11/04 G
B01J39/05
B01J45/00
B01J47/02
B01J49/05
B01J49/06
B01J49/50
B01J49/53
C02F1/42 E
C25D21/18 C
C25D21/18 Q
C25D21/22 B
C25D21/22 L
(21)【出願番号】P 2020530141
(86)(22)【出願日】2019-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2019026616
(87)【国際公開番号】W WO2020013070
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2018131695
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】518042615
【氏名又は名称】伸栄化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鉢木 義信
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 厚生
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-061414(JP,A)
【文献】特開2009-185338(JP,A)
【文献】特開2014-173152(JP,A)
【文献】特開平1-200992(JP,A)
【文献】特開2013-158707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 11/04
B01J 39/05
B01J 45/00
B01J 47/02
B01J 49/05
B01J 49/06
B01J 49/50
B01J 49/53
C02F 1/42
C25D 21/18
C25D 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸を含有する酸性液を再生するための装置であって、
硫酸およびアルミニウムイオンを含有する第一酸性液からアルミニウムイオンを吸着する吸着剤を収容している吸着塔を有し、前記第一酸性液からアルミニウムイオンを吸着、除去して前記第一酸性液を、前記第一酸性液からアルミニウムイオンが除去された第二酸性液に再生するための酸性液再生装置と、
前記吸着剤が吸着しているアルミニウムイオンを水素イオンに置き換えて前記吸着剤を再生するための吸着剤再生装置と、を有し、
前記吸着剤は、アミノリン酸基を有するキレート樹脂で構成されており、
前記吸着剤再生装置は、前記水素イオンの供給源となる第三酸性液を前記吸着塔に供給するための酸性液供給装置を有し、
前記酸性液供給装置は、前記酸性液再生装置が再生した前記第二酸性液の一部を前記第三酸性液として前記吸着塔に供給するように構成されている、酸性液の再生装置。
【請求項2】
前記吸着剤再生装置は、前記吸着剤が吸着しているアルミニウムイオンをアルカリ由来の陽イオンに置き換えるアルカリ性液を前記吸着塔に供給するためのアルカリ性液供給装置をさらに有する、請求項1に記載の酸性液の再生装置。
【請求項3】
前記アルカリ性液が供給された前記吸着塔から排出されるアルカリ性の廃液を収容するための収容槽と、
前記収容槽中の前記廃液を、前記第一酸性液および前記第二酸性液の一方または両方で中和するための中和装置と、
前記中和装置で前記中和によって析出する析出物を分取するための固液分離装置と、をさらに有する、請求項2に記載の酸性液の再生装置。
【請求項4】
前記中和装置は、前記第一酸性液で前記廃液を中和するための装置である、請求項3に記載の酸性液の再生装置。
【請求項5】
前記第一酸性液を収容するとともに前記第一酸性液中にアルミニウムイオンを生成させる処理槽に前記第二酸性液の一部を供給して前記処理槽中の前記第一酸性液の組成を調整するための組成調整装置をさらに有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の酸性液の再生装置。
【請求項6】
前記処理槽は、アルマイトの浴槽であり、前記第一酸性液は、前記浴槽の浴液である、請求項5に記載の酸性液の再生装置。
【請求項7】
硫酸を含有する酸性液を再生する方法であって、
硫酸およびアルミニウムイオンを含有する第一酸性液を吸着剤に接触させて前記第一酸性液中のアルミニウムイオンを前記吸着剤に吸着させ、前記第一酸性液を、前記第一酸性液からアルミニウムイオンが除去された第二酸性液に再生する酸性液再生工程と、
第三酸性液を前記吸着剤に接触させて、前記吸着剤が吸着しているアルミニウムイオンを水素イオンに置き換えて前記吸着剤を再生する吸着剤再生工程と、を含み、
前記吸着剤に、アミノリン酸基を有するキレート樹脂を用い、
前記第二酸性液の一部を前記第三酸性液として用いる、
酸性液の再生方法。
【請求項8】
前記吸着剤再生工程は、
アルミニウムイオンを吸着した前記吸着剤にアルカリ性液を接触させて、前記吸着剤が吸着しているアルミニウムイオンを前記アルカリ性液由来の陽イオンに置き換える陽イオン置換工程と、
前記陽イオンを有する前記吸着剤に前記第三酸性液を接触させて、前記吸着剤が有する前記陽イオンを水素イオンに置き換える水素イオン置換工程と、を含む、請求項7に記載の酸性液の再生方法。
【請求項9】
前記陽イオン置換工程で生じるアルカリ性の廃液を、前記第一酸性液および前記第二酸性液の一方または両方を用いて中和して、前記廃液に含まれている水酸化アルミニウムを析出させる中和工程と、
前記アルカリ性の廃液の中和により前記廃液から析出した水酸化アルミニウムを前記廃液から分離する固液分離工程と、をさらに含む、請求項8に記載の酸性液の再生方法。
【請求項10】
前記中和工程において、前記第一酸性液を用いて前記アルカリ性の廃液を中和する、請求項9に記載の酸性液の再生方法。
【請求項11】
前記第一酸性液に前記第二酸性液の一部を添加して前記第一酸性液の組成を調整する組成調整工程をさらに含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の酸性液の再生方法。
【請求項12】
前記第一酸性液に、アルマイトの浴槽の浴液を用いる、請求項11に記載の酸性液の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性液の再生装置および再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルマイト(アルミニウムの陽極酸化処理)は、硫酸浴中で行われる。アルマイトの進行に伴い、硫酸浴中の浴液にはアルミニウムイオンが溶出する。浴液中のアルミニウムイオン濃度が高まると、アルマイトに悪影響を及ぼすことが知られている。したがって、アルマイトでは、浴液中のアルミニウムイオンの濃度を適切に制御することが重要である。
【0003】
上記浴液のアルミニウムイオンの濃度を制御する技術には、イオン交換膜による方法およびイオン交換樹脂のカラムを用いる方法(クロマト分離法)が知られている。
【0004】
イオン交換膜による方法では、硫酸浴の浴液を流す流路に面して配置された正または負のイオン用のイオン交換膜の背面に陰極または陽極を配置する。そして、上記流路における浴液中の金属イオンおよびその対となる陰イオンを、上記イオン交換膜を介して上記陰極または陽極に引き寄せ、上記浴液から取り除く。陰イオンは酸として回収される。このように処理された浴液は、アルミニウムを含んでいないので、当該浴液を硫酸浴に戻すことにより、硫酸浴の浴液中のアルミニウムイオン濃度を下げることができる。
【0005】
クロマト分離法では、イオン交換樹脂が充填されたカラムに、硫酸浴の浴液を間欠的に供給し、水で展開させる。アルミニウムイオンは、硫酸アルミニウムとして先に溶出し、硫酸は、後から溶出する。回収された硫酸は、より高い濃度の硫酸で濃度を調整した後、浴液に戻される。こうして、浴液中のアルミニウムイオンの濃度が下げられる。
【0006】
また、上記の技術には、荷電している分離膜を用いて、アルミニウムイオンを含有する硫酸水溶液を圧力により透析させ、硫酸を濃縮する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
上記の従来技術によれば、上記浴液からの硫酸またはアルミニウムイオンの分離によって、浴液は再生される。このように、浴液を再生する技術には、様々な技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】日本国公開特許公報「特開2010-260009号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
浴液から硫酸またはアルミニウムイオンを分離する分離剤は、通常、使用とともにその分離能力が低下するが再生可能であり、このような再生によって当該分離能力を回復させることが可能である。アルマイトでは、このような分離剤の再生および廃水処理も、製品の価格を決める要素として小さくない。このため、アルマイトでは、浴液などの酸性液について、アルマイトのみならず分離剤の再生および廃水の処理まで含めても、効率よく安価に酸性液を再生する技術が望まれている。
【0010】
本発明の一態様は、吸着剤の再生を含む酸性液の再生における酸性液の使用量を低減可能な技術を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る酸性液の再生装置は、硫酸を含有する酸性液を再生するための装置であって、硫酸およびアルミニウムイオンを含有する第一酸性液からアルミニウムイオンを吸着する吸着剤を収容している吸着塔を有し、前記第一酸性液からアルミニウムイオンを吸着、除去して前記第一酸性液を、前記第一酸性液からアルミニウムイオンが除去された第二酸性液に再生するための酸性液再生装置と、前記吸着剤が吸着しているアルミニウムイオンを水素イオンに置き換えて前記吸着剤を再生するための吸着剤再生装置と、を有する。前記吸着剤は、アミノリン酸基を有するキレート樹脂で構成されており、前記吸着剤再生装置は、前記水素イオンの供給源となる第三酸性液を前記吸着塔に供給するための酸性液供給装置を有し、前記酸性液供給装置は、前記酸性液再生装置が再生した前記第二酸性液の一部を前記第三酸性液として前記吸着塔に供給するように構成されている。
【0012】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る酸性液の再生方法は、硫酸を含有する酸性液を再生する方法であって、硫酸およびアルミニウムイオンを含有する第一酸性液を吸着剤に接触させて前記第一酸性液中のアルミニウムイオンを前記吸着剤に吸着させ、前記第一酸性液を、前記第一酸性液からアルミニウムイオンが除去された第二酸性液に再生する酸性液再生工程と、第三酸性液を前記吸着剤に接触させて、前記吸着剤が吸着しているアルミニウムイオンを水素イオンに置き換えて前記吸着剤を再生する吸着剤再生工程と、を含む。前記吸着剤に、アミノリン酸基を有するキレート樹脂を用い、前記第二酸性液の一部を前記第三酸性液として用いる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、吸着剤の再生を含む酸性液の再生における酸性液の使用量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る酸性液の再生装置の構成の一例を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態における酸性液の再生方法の一例の概要を示す図である。
【
図3】本発明の第二の実施形態における酸性液の再生装置の一例の要部の構成を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の第三の実施形態における酸性液の再生装置の一例の要部の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第一の実施形態>
以下、本発明の第一の実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る酸性液の再生装置の構成の一例を模式的に示す図である。
【0016】
[酸性液の再生装置の構成]
本実施形態に係る再生装置は、アルマイトの浴液を再生するための装置である。上記再生装置は、
図1に示されるように、吸着塔11と、H型変換用硫酸槽(以下、単に「硫酸槽」とも言う)12と、アルカリ槽13と、収容槽14と、固液分離装置15とを有している。
【0017】
吸着塔11は、浴液からアルミニウムイオンを吸着する吸着剤を収容している。吸着剤の形態は、例えば粒子であり、吸着剤は、吸着塔11内に充填されている。それにより、吸着塔11には、通液性を有する固定床が吸着剤によって構成されている。吸着剤については、後に説明する。
【0018】
吸着塔11の入口側には、流路31を介してアルマイトの浴槽20が接続されている。浴槽20は、浴液を収容している。浴液は、硫酸と、アルマイトで生じるアルミニウムイオンとを含有している。
【0019】
吸着塔11の出口側には、流路32を介して硫酸槽12が接続されている。硫酸槽12は、後述する吸着塔11から回収される硫酸の一部を収容するための槽であり、収容する硫酸を吸着塔11に供給可能に、流路36を介して吸着塔11の入口側と接続されている。このように、本実施形態の再生装置は、後述する吸着剤の再生の初期に吸着塔11から排出される硫酸の一部を、流路36を介して吸着塔11に供給可能に構成されている。
【0020】
また、吸着塔11は、その出口側において、流路33を介して浴槽20と接続されている。
【0021】
アルカリ槽13は、アルカリ性液、例えば水酸化ナトリウム水溶液、を収容するための槽である。アルカリ槽13は、流路34を介して吸着塔11の入口側に接続されている。
【0022】
収容槽14は、流路35を介して吸着塔11の出口側に接続されている。収容槽14は、吸着塔11から排出された液を収容するための槽である。収容槽14は、収容する流体を撹拌するための不図示の攪拌装置を有している。また、収容槽14は、流路38を介して浴槽20と接続されている。このように、本実施形態の再生装置は、浴槽20中の浴液を収容槽14に直接供給可能に構成されている。
【0023】
固液分離装置15は、収容槽14中の液体から析出した固体と当該液体とを分離するための装置である。固液分離装置15は、収容槽14中の流体が供給されるように、流路39を介して収容槽14と接続されている。
【0024】
流路31~36、38および39のそれぞれは、通常、管で構成されており、適宜に配置された不図示のポンプおよび弁を含んでいる。このように、流路31~36、38および39のそれぞれは、流路中の流体を所望の送り先へ送ることが可能に構成されている。また、上記再生装置は、流量計、pHセンサ、温度計など各種検出装置を適宜に含んでおり、当該検出装置の検出値に応じて所望の流量で流体を送ることが可能に構成されている。
【0025】
[吸着剤]
吸着剤は、Hイオン型のアミノリン酸基を有するキレート樹脂で構成されている。吸着剤は、一種でもそれ以上でもよい。なお、Hイオン型とは、アミノリン酸基のリン酸基における陽イオンが水素イオンであることを意味している。
【0026】
吸着剤の形態は、通液可能な固定床を構築可能な範囲において、いかなる形態であってもよい。たとえば、吸着剤は、吸着塔に充填される粒子の形態であってもよいし、吸着塔に収容可能な、連続気泡を有する多孔質体であってもよい。
【0027】
キレート樹脂は、樹脂とアミノリン酸基とを有する。樹脂は、アミノリン酸基を有することが可能であり、かつ吸着剤の形態に要する性状を有する範囲において適宜に選ぶことが可能である。樹脂の例には、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂が含まれる。
【0028】
アミノリン酸基は、アミノ基とリン酸基とを含む官能基である。アミノリン酸基は、多価金属イオンを捕捉する性質を有しており、このような性質を発現する範囲において、炭化水素基などの他の基をさらに含んでいてもよい。アミノリン酸基の例には、-CH2NHCH2PO(OH)2が含まれる。
【0029】
アミノリン酸基は、硫酸を含有する酸性液からアルミニウムイオンを吸着するのに使用可能な範囲において、樹脂に化学的に結合していてもよいし、物理的に担持されていてもよい。たとえば、アミノリン酸基は、樹脂を構成するモノマーが有する置換基の一種であってもよいし、樹脂中の特定の官能基と置き換えられることにより樹脂に結合していてもよい。あるいは、アミノリン酸基は、例えば粒子状の樹脂製の担体を被覆する被覆層に含有されることで当該担体に物理的に担持されていてもよい。
【0030】
アミノリン酸基の含有量は、キレート樹脂の所望の総交換容量に応じて適宜に決めることが可能である。総交換容量は、樹脂1リットル当たりのアルミニウムイオンの交換容量で表される。総交換容量は、酸性液から多量のアルミニウムイオンを吸着可能にする観点から、高いほどよく、キレート樹脂におけるアミノリン酸基の含有量、あるいは、アミノリン酸基の種類に応じて適宜に決められる。総交換容量を高める観点から、キレート樹脂は、アミノリン酸基を有するモノマーの重合体であることが好ましい。
【0031】
キレート樹脂は、合成品であってもよいし、市販品であってもよい。合成品は、公知の方法によって得られ、例えば、アミノリン酸基を有するスチレン系モノマーをラジカル重合反応させることにより得られる。市販品の例には、商標名:ピュロライト(ピュロライト(株)製)、商標名:ユニセレック(ユニチカ(株)製)、商標名:レバチット(ランクセス(株)製)および商標名:エポラス(ミヨシ油脂(株)製)が含まれる。
【0032】
より具体的には、キレート樹脂は、下記構造式で表される。このキレート樹脂は、リン酸基がH型である。このようなH型のアミノリン酸型キレート樹脂の例には、ユニチカ(株)製のユニセレックUR-3300S(商品名)が含まれる。
【0033】
【0034】
[酸性液の再生方法]
本実施形態の再生装置を用いて酸性液である浴液を再生する方法を以下に説明する。
【0035】
(浴液の組成)
浴液は、硫酸およびアルミニウムイオンを含有している。浴液は、前述したようにアルマイトの浴液であり、アルマイトの浴液として好適な組成を有している。たとえば、浴液中の成分は、本実施形態の効果が得られる範囲において、硫酸およびアルミニウムイオン以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0036】
浴液中の硫酸の濃度は、低すぎるとアルマイトが十分に実行されないことがある。また、浴液中のアルミニウムイオンの濃度は、高すぎるとアルマイトに悪影響を及ぼすことがある。このような観点から、浴液中の硫酸の濃度は、140g/L以上であることが好ましく、150g/L以上であることがより好ましい。また、上記の観点から、浴液中の硫酸の濃度は、230g/L以下であることが好ましく、220g/L以下であることがより好ましい。
【0037】
また、上記の観点から、浴液中のアルミニウムイオンの濃度は、3g/L以上であることが好ましく、5g/L以上であることがより好ましい。また、上記の観点から、浴液中のアルミニウムイオンの濃度は、15g/L以下であることが好ましく、12g/L以下であることがより好ましい。
【0038】
以下の実施形態において、浴液の組成は、例えば、200g/Lの硫酸、10g/Lのアルミニウムイオン、および残分としての水、とする。浴液の組成は、例えば硫酸の追加または浴液の抜き取りによって、所望の範囲に制御することができる。
【0039】
(再生方法の概要)
図2は、本実施形態における酸性液の再生方法の一例の概要を示す図である。本実施形態の再生方法では、浴槽20中の浴液は、吸着塔11に供給され、吸着塔11から排出された硫酸(以下、「回収硫酸」とも言う)の少なくとも一部が浴槽20に戻される。回収硫酸は、浴液の、吸着塔11通過後の液であり、浴液中のアルミニウムイオンが吸着剤によって吸着され、除去された液である。回収硫酸は、アルミニウムイオンを実質的に含有していないか、またはそのアルミニウムイオン含有量が低減されている。
【0040】
吸着剤には、前述したHイオン型のアミノリン酸基を有するキレート樹脂が用いられている。吸着塔11中の吸着剤がアルミニウムイオンを飽和状態まで吸着すると、吸着剤の再生が行われる。たとえば、吸着塔11から排出される回収硫酸中のアルミニウムイオン濃度が、浴液中のそれと実質的に同じになったことを検出することにより、上記の飽和状態と判断することができる。
【0041】
吸着剤の再生(吸着剤からのアルミニウムの脱離)には、水酸化ナトリウム水溶液が吸着塔11に供給される。吸着塔11に水酸化ナトリウム水溶液が供給された場合の廃液である脱離廃液は、収容槽14に導入され、酸で中和される。このため、収容槽14は、中和槽とも言うことができる。
【0042】
脱離廃液は、吸着剤(キレート樹脂)から脱離したアルミニウムイオンを含有するアルカリ性の液である。脱離廃液中において、アルミニウムは、水酸化アルミニウムとして含有(溶解)されている。脱離廃液の中和には、浴槽20中の浴液の一部が用いられる。脱離廃液の中和により水酸化アルミニウムが廃液から析出する。中和による水酸化アルミニウムの析出物は、例えば不図示の固液分離によって分離される。
【0043】
(浴液の再生)
以下、
図1に基づいて、浴液の再生について説明する。まず、浴槽20の浴液は、流路31を通って吸着塔11に供給される。浴液が供給される前の吸着塔11は、通常、キレート樹脂をHイオン型に変換または維持するための硫酸(浴液の硫酸の濃度よりも低い濃度の硫酸)で浸されている。なお、浴液中の硫酸は、硫酸イオンの観点から、浴液中の硫酸アルミニウムと区別するために、遊離硫酸とも言われる。
【0044】
吸着塔11では、浴液は、固定床を通りながら吸着剤と接触する。浴液中のアルミニウムイオンは、吸着剤であるキレート樹脂におけるアミノリン酸基のリン酸基の水素と置き換わる。このように、キレート樹脂は、アルミニウムイオンを捕捉し、水素イオンを放出する。浴液中のアルミニウムイオンと対になっていた硫酸イオンと、キレート樹脂から放出された水素イオンとが、吸着塔11から排出されて硫酸となり、また浴液中の硫酸とともに前述の回収硫酸となる。
【0045】
このように、本実施形態では、流路31および吸着塔11は、浴液からアルミニウムイオンを吸着する吸着剤を収容している吸着塔11を含み、浴液からアルミニウムイオンを吸着、除去して浴液を、浴液からアルミニウムイオンが除去された硫酸(回収硫酸)に再生するための酸性液再生装置を構成している。そして、処理すべき酸性液にアルマイトの浴槽の浴液を用い、浴液を吸着剤に接触させて浴液中のアルミニウムイオンを吸着剤に吸着させる。そして、浴液を、浴液からアルミニウムイオンが除去された回収硫酸に再生する。
【0046】
浴液の通液開始時に吸着塔11から排出される回収硫酸の濃度は、吸着塔11に当初収容されていたHイオン型に変換または維持するための硫酸が排出されるため、浴液の硫酸の濃度よりも低い。
【0047】
浴液に比べて硫酸濃度の低い通液初期の回収硫酸は、流路32を通って硫酸槽12に収容される。初期の回収硫酸は、吸着塔11の使用開始時に供給された浴液を再生した液であるため、硫酸の濃度が浴液のそれよりも低いことがあるが、アルミニウムイオンが実質的に除去されている。初期の回収硫酸における硫酸濃度は、通液に伴い高まっていく。
【0048】
なお、「初期の回収硫酸」とは、新規または再生した吸着剤による浴液の処理を開始した時に吸着塔11から排出される回収硫酸のうち、硫酸の濃度が浴液のそれ以下であり、かつアルミニウムイオンが実質的に含有されていない回収硫酸を言う。初期の回収硫酸は、後述する吸着剤の再生において、適当な流量で吸着塔11に供給される。硫酸槽12における初期の回収硫酸の収容量は、後述の吸着剤の再生に使用するのに十分な量であればよい。硫酸槽12に収容する所期の回収硫酸の量は、後述する吸着剤の再生において、吸着塔11内のキレート樹脂をHイオン型に変換するに必要な量であればよい。硫酸槽12中の回収硫酸の濃度は、吸着剤の再生に適用するのに適当な濃度に調整されてもよい。たとえば、硫酸槽12中の回収硫酸の濃度が所期の濃度よりも高い場合には、当該回収硫酸は、吸着剤の再生での使用に際して希釈して用いられてもよい。
【0049】
初期の回収硫酸以外の回収硫酸は、吸着塔11から流路33を通して浴槽20に供給される。このような浴槽20への回収硫酸の供給によって、浴液の硫酸濃度が高められ、またアルミニウムイオンの濃度が相対的に下げられ、その結果、浴液は、所望の組成に制御される。このように、本実施形態では、吸着塔11および流路33は、浴液中にアルミニウムイオンを生成させる浴槽20に回収硫酸の一部を供給して浴槽20中の浴液の組成を調整するための組成調整装置を構成している。そして、本実施形態では、浴液に回収硫酸の一部を添加して浴液の組成を調整している。
【0050】
(吸着剤の再生)
吸着剤におけるアルミニウムイオンの吸着が進行すると、例えば当該吸着が実質的に飽和に至る。当該吸着が実質的な飽和に至ると、吸着塔11から排出される回収硫酸中のアルミニウムイオン濃度が増加する。回収硫酸中のアルミニウム濃度が浴液中のそれと同程度になれば、吸着塔11への浴液の供給を停止し、吸着剤の再生を実行する。
【0051】
まず、浴液を吸着塔11から抜き出し、吸着塔11内(樹脂)を水洗した後、アルカリ槽13から、流路34を介して水酸化ナトリウム水溶液を吸着塔11に供給する。これにより、吸着塔11中の吸着剤は、水酸化ナトリウム水溶液と接触し、キレート樹脂のリン酸基が捕捉していたアルミニウムイオンは、ナトリウムイオンに置き換えられる。このようにして、アルミニウムイオンを吸着した吸着剤にアルカリ性液である水酸化ナトリウム水溶液を接触させることにより、吸着剤が吸着しているアルミニウムイオンは、アルカリ性液由来の陽イオンであるナトリウムイオンに置き換えられる。なお、本実施形態において、アルカリ槽13および流路34は、吸着剤が吸着しているアルミニウムイオンをアルカリ由来の陽イオンに置き換えるアルカリ性液を吸着塔11に供給するためのアルカリ性液供給装置を構成している。
【0052】
キレート樹脂から脱離したアルミニウムイオンは、水酸化アルミニウムとして吸着塔11から排出される。吸着塔11から排出される脱離廃液は、水酸化アルミニウムを含有するアルカリ性の液である。水酸化アルミニウムは、アルカリ性では水に溶けており、脱離廃液は、液体として、流路35を通って収容槽14に収容される。このように、収容槽14は、水酸化ナトリウム水溶液が供給された吸着塔11から排出されるアルカリ性の廃液(脱離廃液)を収容するための槽となっている。
【0053】
次いで、吸着塔11内(樹脂)を水洗した後、硫酸槽12から、流路36を介して硫酸を吸着塔11に供給する。硫酸槽12は初期の回収硫酸を収容しており、吸着塔11には、初期の回収硫酸が供給される。これにより、吸着塔11中の吸着剤は硫酸と接触し、キレート樹脂のリン酸基が捕捉していたナトリウムイオンは、水素イオンに置き換えられる。このようにして、本実施形態の再生方法では、ナトリウムイオンを有する吸着剤に硫酸を接触させて、吸着剤が有するナトリウムイオンを水素イオンに置き換える。こうして、硫酸と吸着剤との接触により、吸着剤が吸着しているアルミニウムイオンは、ナトリウムイオンへの置換を介して水素イオンに置き換えられ、吸着剤が再生する。
【0054】
なお、本実施形態の再生装置では、硫酸槽12および流路36は、水素イオンの供給源となる硫酸を吸着塔11に供給するための酸性液供給装置を構成している。この装置は、前述の酸性液再生装置が再生した回収硫酸の一部(初期の回収硫酸)を水素イオン置き換え用の硫酸として吸着塔11に供給可能に構成されている。また、前述のアルカリ性液供給装置および酸性液供給装置、すなわち、硫酸槽12、アルカリ槽13、および流路34、36は、吸着剤が吸着しているアルミニウムイオンを水素イオンに置き換えて吸着剤を再生するための吸着剤再生装置を構成している、とも言える。
【0055】
初期の回収硫酸の供給によって吸着塔11から排出される廃液(以下「置換廃液」とも言う)は、主にナトリウムイオンおよび硫酸イオンを含有し、実質的には中性である。キレート樹脂における水素イオンの置換の終点は、置換廃液のpHが低下することによって決定することができる。置換廃液も、流路35を通って収容槽14に収容される。
【0056】
(廃液の処理)
収容槽14には、水酸化アルミニウムを含有するアルカリ性の脱離廃液と、硫酸ナトリウムを含有する中性の置換廃液とが収容される。これにより、収容槽14中の廃液は、アルカリ性であり、このため、当該廃液中のアルミニウムイオンは、水酸化アルミニウムになる。
【0057】
そして、収容槽14中のアルカリ性の廃液を、浴液を用いて中和して、前記アルカリ性の廃液に含まれている水酸化アルミニウムを析出させる。たとえば、浴液は、浴槽20から流路38を通って収容槽14に供給される。収容槽14に供給された浴液は、収容槽14中の廃液の中和に用いられる。本実施形態の再生装置では、浴槽20および流路38は、収容槽14中のアルカリ性の廃液を、浴液で中和するための中和装置を構成している。
【0058】
浴液には10g/Lのアルミニウムイオンが含まれており、このアルミニウムイオンも、廃液の中和の際、アルカリ性の廃液中では水酸化アルミニウムとなる。このように、廃液の中和に浴液を用いることにより、廃液中の水酸化アルミニウムの含有量が増える。また、廃液の中和に浴液を用いることにより、浴液中のアルミニウムイオンの含有量が減る。
【0059】
収容槽14中の廃液への浴液の供給により、当該廃液が中性に中和される。中性に中和されることにより、収容槽14中の廃液からは水酸化アルミニウムが析出する。このようにして、キレート樹脂におけるアルミニウムイオンからナトリウムイオンへの置き換えで生じたアルカリ性の廃液を、浴液を用いて中和して、このアルカリ性の廃液に含まれている水酸化アルミニウムを析出させる。
【0060】
収容槽14での中和によって発生したスラリーは、流路39を通って固液分離装置15に供給される。固液分離装置15は、スラリーから固体である水酸化アルミニウムを分取する。このようにして、本実施形態の再生方法では、収容槽14で中和された廃液から析出した水酸化アルミニウムを当該廃液から分離する。固液分離装置15は、上記の中和装置で中和によって析出する析出物を分取するための装置である。固液分離装置15で分離された水酸化アルミニウムは、外部に搬出される。
【0061】
スラリーの液相には、濃縮または希釈などの適当な処理が必要に応じて施される。たとえば、濃縮液は、硫酸ナトリウムを高い濃度で有しており、外部に搬出される。濃縮による蒸留水および上記希釈液は、環境基準を満たすことを条件として、排水として外部に放出される。
【0062】
[硫酸およびアルミニウムにおける量の収支についての説明]
本実施形態では、浴液は、200g/Lの硫酸と、10g/Lのアルミニウムイオンを含有している。また、吸着剤には、アミノリン酸基を有するキレート樹脂が用いられている。キレート樹脂は、200g/Lと高い濃度で硫酸を含有する酸性液から、当該酸性液中のアルミニウムイオンを吸着、除去し、水素イオンを放出する。したがって、浴液中のアルミニウムイオンに対する陰イオンとなっていた硫酸イオンは、放出された水素イオンを受け取って硫酸となる。
【0063】
よって、本実施形態では、浴液中の200g/Lの硫酸は、遊離硫酸として吸着塔11の出口からそのまま排出されると言える。加えて、吸着塔11の出口からは、吸着剤が吸着除去したアルミニウムイオンに対応する硫酸イオンと当量の硫酸が吸着塔11から排出されると言える。よって、200g/L以上の量(200g/Lの硫酸に加えて10g/Lのアルミニウムイオンに匹敵する量)の回収硫酸が、浴液の再生によって得られる。
【0064】
200g/Lの硫酸を浴槽20に戻し、アルミニウムイオン由来の硫酸を吸着剤(キレート樹脂)の再生に用いるとすると、理論的には、浴液の再生および吸着剤の再生に新たな硫酸の追加は不要となる。実際には、キレート樹脂における陽イオンの変換効率、あるいはアルミニウム以外の金属が浴液へ溶出すること、等の要因に応じて、多少の硫酸が追加される。
【0065】
硫酸は、比較的安価であることから、アルマイトでは、アルミニウムイオンの濃度が高くなって不要となった浴液は、全量、中和処理して廃液として処理されている。この場合、新液として追加すべき硫酸が多量に必要となる。しかしながら、本実施形態では、浴液および吸着剤の再生に要する硫酸は、上記の多少の量でよい。このため、本実施形態によれば、浴液を全量廃棄する場合に比べて、硫酸の使用量が格段に少なくなる。また、浴液を全量廃棄する場合に比べて、廃棄する浴液の中和に要するアルカリの量が格段に少なくなる。
【0066】
また、本実施形態では、吸着剤の再生において、キレート樹脂のリン酸基が捕捉している陽イオンを、アルミニウムイオンからナトリウムイオンに一旦置き換え、次いでナトリウムイオンから水素イオンに置き換えている。アルマイトの廃液は、酸性であることから、その廃液処理では、通常、アルカリは必須であり、本実施形態では、このようなアルカリを吸着剤の再生に利用して、キレート樹脂の陽イオンが効率よく交換される。
【0067】
また、本実施形態では、アルカリの使用量は、キレート樹脂の陽イオンの交換に要する量である。よって、本実施形態によれば、キレート樹脂の再生(陽イオンの交換)にアルカリを利用する場合でも、浴液を全量廃棄する場合に比べて、アルカリの使用量が格段に少なくなる。
【0068】
さらに、本実施形態では、キレート樹脂からアルミニウムイオンを脱離させた後のアルカリ性の廃液の中和処理に、浴液を用いることが可能である。よって、本実施形態では、アルミニウムなどの金属のイオンを比較的高い濃度で含有している浴液の一部を廃液処理に有効活用することができる。
【0069】
そして、収容槽14中の廃液を浴液によって中和することにより、浴液中のアルミニウムイオンも水酸化アルミニウムとして廃液中に析出する。よって、本実施形態では、上記廃液の中和に浴液を利用することにより、廃液からより多量のアルミニウムを回収することが可能となる。したがって、廃液中の成分がより濃縮されることによる、廃液処理に係るコストの削減が実現可能となる。
【0070】
[本実施形態の作用効果]
以上の説明から明らかなように、本発明の第一の態様における酸性液(硫酸)の再生装置は、硫酸およびアルミニウムイオンを含有する浴液(第一酸性液)からアルミニウムイオンを吸着する吸着剤を収容している吸着塔11を有し、浴液からアルミニウムイオンを吸着、除去して浴液を、浴液からアルミニウムイオンが除去された回収硫酸(第二酸性液)に再生するための酸性液再生装置と、吸着剤が吸着しているアルミニウムイオンを水素イオンに置き換えて吸着剤を再生するための吸着剤再生装置と、を有する。吸着剤は、アミノリン酸基を有するキレート樹脂で構成されており、吸着剤再生装置は、水素イオンの供給源となる水素置換用硫酸(第三酸性液)を吸着塔11に供給するための酸性液供給装置を有する。そして、酸性液供給装置は、酸性液再生装置が再生した回収硫酸の一部(初期の回収硫酸)を水素置換用硫酸として吸着塔11に供給するように構成されている。
【0071】
第一の態様の再生装置では、浴液の処理に用いられる吸着剤の再生に用いる酸に、回収硫酸が用いられる。よって、第一の態様の再生装置は、吸着剤の再生に要する硫酸の量を削減することが可能である。したがって、第一の態様の再生装置では、吸着剤の再生を含む硫酸の再生における硫酸の使用量を低減させることができる。
【0072】
本発明の第二の態様における硫酸の再生装置では、吸着剤再生装置は、吸着剤が吸着しているアルミニウムイオンをナトリウムイオン(アルカリ由来の陽イオン)に置き換える水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性液)を吸着塔11に供給するためのアルカリ性液供給装置をさらに有する。第二の態様の再生装置では、吸着剤が吸着したアルミニウムイオンがナトリウムイオンへの置き換えによって容易に脱離する。よって、第二の態様の再生装置は、吸着剤の再生を高い効率で行う観点からより一層効果的である。
【0073】
本発明の第三の態様における硫酸の再生装置は、水酸化ナトリウム水溶液が供給された吸着塔11から排出される脱離廃液(アルカリ性の廃液)を収容するための収容槽14と、収容槽14中の脱離廃液を、浴液で中和するための中和装置と、中和装置で中和によって析出する析出物を分取するための固液分離装置15とをさらに有する。第三の態様の再生装置は、吸着剤の再生で生成する廃水から、脱離させたアルミニウムイオンを固体の水酸化アルミニウムとして除去することが可能であり、水酸化アルミニウムの析出のための中和に、浴液を利用することができる。よって、第三の態様の再生装置は、上記廃水の処理まで要する硫酸の使用量を低減させることができる。
【0074】
本発明の第四の態様における硫酸の再生装置では、中和装置は、浴液で脱離廃液を中和する装置である。第四の態様の再生装置では、廃水処理の中和において、浴液中のアルミニウムイオンが廃水に供給される。よって、第四の態様の再生装置は、廃水中の水酸化アルミニウムの濃度を高める観点からより一層効果的である。
【0075】
本発明の第五の態様における硫酸の再生装置は、浴液を収容するとともに浴液中にアルミニウムイオンを生成させる浴槽20(処理槽)に回収硫酸の一部を供給して浴槽20中の浴液の組成を調整するための組成調整装置をさらに有する。第五の態様の再生装置では、浴液における組成が、浴液から回収した回収硫酸の供給によって調整される。よって、第四の態様の再生装置は、浴液の組成を所望の範囲に維持する観点からより一層効果的である。
【0076】
本発明の第六の態様における硫酸の再生装置では、処理槽は、アルマイトの浴槽20であり、第一酸性液は、浴槽20の浴液である。第六の態様の再生装置では、浴液の再生を含むアルマイトにおいて、硫酸の使用量を低減させることが可能となる。よって、第六の態様の再生装置は、アルマイト全体のコストを低減させることが可能である。
【0077】
本発明の第七の態様における硫酸の再生方法は、浴液を吸着剤に接触させて浴液中のアルミニウムイオンを吸着剤に吸着させ、浴液を、浴液からアルミニウムイオンが除去された回収硫酸に再生する酸性液再生工程と、水素置換用硫酸を吸着剤に接触させて、吸着剤が吸着しているアルミニウムイオンを水素イオンに置き換えて吸着剤を再生する吸着剤再生工程と、を含む。そして、吸着剤に、アミノリン酸基を有するキレート樹脂を用い、回収硫酸の一部を水素置換用硫酸として用いる。第七の態様の再生方法は、前述の第一の態様の再生装置と同様の効果を奏する。
【0078】
本発明の第八の態様における硫酸の再生方法では、吸着剤再生工程は、アルミニウムイオンを吸着した吸着剤に水酸化ナトリウム水溶液を接触させて、吸着剤が吸着しているアルミニウムイオンをナトリウムイオンに置き換える陽イオン置換工程と、ナトリウムイオンを有する吸着剤に水素置換用硫酸を接触させて、吸着剤が有するナトリウムイオンを水素イオンに置き換える水素イオン置換工程とを含む。第八の態様の再生方法は、前述の第二の態様の再生装置と同様の効果を奏する。
【0079】
本発明の第九の態様における硫酸の再生方法は、陽イオン置換工程で生じるアルカリ性の廃液を、浴液を用いて中和して、当該廃液に含まれている水酸化アルミニウムを析出させる中和工程と、上記アルカリ性の廃液の中和により当該廃液から析出した水酸化アルミニウムを当該廃液から分離する固液分離工程と、をさらに含む。第九の態様の再生方法は、前述の第三の態様の再生装置と同様の効果を奏する。
【0080】
本発明の第十の態様における硫酸の再生方法では、中和工程において、浴液を用いて脱離廃液を中和する。第十の態様の再生方法は、前述の第四の態様の再生装置と同様の効果を奏する。
【0081】
本発明の第十一の態様における硫酸の再生方法は、浴液に回収硫酸の一部を添加して浴液の組成を調整する組成調整工程をさらに含む。第十一の態様の再生方法は、前述の第五の態様の再生装置と同様の効果を奏する。
【0082】
本発明の第十二の態様における硫酸の再生方法では、第一酸性液に、アルマイトの浴槽の浴液を用いる。第十二の態様の再生方法は、前述の第六の態様の再生装置と同様の効果を奏する。
【0083】
[本実施形態の変形例]
前述の実施形態における種々の条件、例えば、浴液の組成、水酸化ナトリウム水溶液の濃度、吸着剤の再生における水酸化ナトリウム水溶液の使用量および回収硫酸の使用量、中和工程における廃液のpHの範囲、ならびに、中和工程における回収硫酸および浴液の使用量は、前述した実施形態における所期の目的を達成できる範囲において、適宜に決めることができ、前述した数値等に限定されない。
【0084】
また、本発明に係る再生装置は、前述した効果が得られる範囲において、前述した構成、装置以外の他の構成をさらに有していてもよい。たとえば、本発明に係る再生装置は、並列に配置される二本以上の吸着塔11を有していてもよい。このような構成は、浴液の再生と吸着剤の再生とを再生装置において同時に実行することが可能となる観点から好ましい。
【0085】
また、例えば、本発明に係る再生装置は、再生装置が有する各種装置を、少なくとも本発明に係る再生方法における各種工程を実行するように制御可能な制御装置をさらに有していてもよい。このような制御装置は、事業所における廃液処理施設を制御するための公知の制御装置を利用して実現することが可能である。上記制御装置を有する再生装置は、本発明に係る再生方法を自動で実施可能となる。
【0086】
また、本発明に係る再生方法は、連続して実行してもよいし、間欠的に実行してもよい。たとえば、浴液中のアルミニウムイオンの濃度が許容される数値範囲を超える場合に前述の浴液の再生を行い、許容される数値範囲に収まる場合には前述の浴液の再生を行わなくてもよい。
【0087】
また、前述した実施形態では、硫酸槽12中の硫酸は、初期の回収硫酸のみを収容しているが、初期の回収硫酸と新規の硫酸との両方を含んでいてもよい。
【0088】
また、前述の実施形態では、陽イオン置換工程で生じるアルカリ性の廃液の中和用の酸液として浴液を用いているが、当該酸液として浴液を回収硫酸と併用してもよいし、あるいは、当該酸液として回収硫酸のみを使用してもよい。
【0089】
また、本発明に係る再生方法における吸着剤の再生は、キレート樹脂におけるアルミニウムイオンの吸着量が飽和する前に行われてもよい。たとえば、吸着剤の再生は、当該吸着量が飽和しない範囲において、アルマイトの一定の処理時間ごとに行ってもよい。
【0090】
また、アルカリ槽13が収容するアルカリ液は、キレート樹脂が捕捉しているアルミニウムイオンを置き換え可能な陽イオンを有しているアルカリの液であればよい。アルカリ液の例には、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムが含まれる。
【0091】
吸着剤で再生されるべき第一酸性液は、吸着剤によってアルミニウムイオンを吸着し第一酸性液から除去可能な範囲において、硫酸およびアルミニウムイオン以外の他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分の例には、第一酸性液の利用に伴い発生するアルミニウム以外の金属のイオン、リン酸、硝酸および蓚酸が含まれる。第一酸性液の利用に伴い発生する金属イオンの金属の例には、銅およびマグネシウムが含まれる。第一酸性液における他の成分の含有量は、吸着剤によってアルミニウムイオンを吸着し第一酸性液から除去可能な範囲において、適宜に決めることができる。アルミニウムイオン以外の金属のイオンは、キレート樹脂に捕捉されるものであってもよいし、捕捉されないものであってもよい。
【0092】
このような第一酸性液の例には、アルミニウム製品の化学研磨における浴液(化学研磨液)、化学研磨後の洗浄廃液、および、化学研磨液の再生に係る二次廃液、が含まれる。化学研磨は、例えば、アルミニウム製品の表面の微細な凸部を溶解して鏡面様の表面をもたらす。以下、化学研磨液およびそれに係る洗浄廃液からの酸性液の再生を第二の実施形態として説明し、化学研磨液の再生に係る二次廃液からの酸性液の再生を第三の実施形態として説明する。
【0093】
<第二の実施形態>
[化学研磨]
化学研磨液には、リン酸および硝酸を含有する水溶液であるリン酸・硝酸系化学研磨液と、リン酸および硫酸を含有する水溶液であるリン酸・硫酸系化学研磨液とが知られている。これらの化学研磨液およびその洗浄廃液は、通常、アルミニウム製品から溶出したアルミニウムイオンを、リン酸アルミニウムおよび硝酸アルミニウム、または、リン酸アルミニウムおよび硫酸アルミニウム、として含有する。
【0094】
本発明を化学研磨液の再生に適用する場合、前述の実施形態における回収硫酸に代えて、リン酸および硝酸を含有する水溶液、あるいは、リン酸および硫酸を含有する水溶液、が回収される。
【0095】
上記化学研磨液は、本発明に係る酸性液の再生技術が硫酸を含有する場合のアルミニウムイオンの回収に有利であることから、リン酸・硫酸系化学研磨液であることが好ましい。リン酸・硫酸系化学研磨液におけるリン酸および硫酸の割合は、それぞれ、化学研磨が実施可能な範囲から適宜に決めることができる。このような観点から、リン酸・硫酸系化学研磨液におけるリン酸の割合は、20~95質量%であることが好ましく、30~90質量%であることがより好ましい。また、リン酸・硫酸系化学研磨液における硫酸の割合は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、また70質量%以下であることが好ましい。
【0096】
回収された化学研磨液は、前述の実施形態における回収硫酸と同様に、元の用途、すなわち化学研磨液として再利用される。上記洗浄廃液は、必要に応じて水分を濃縮して化学研磨液として再利用される。
【0097】
[再生装置]
図3は、化学研磨液およびそれに係る洗浄廃液の再生装置の一例の要部の構成を模式的に示す図である。前述の実施形態の再生装置と同じ構成については同じ符号を付し、その説明は繰り返さない。当該再生装置は、
図3に示されるように、浴槽40、洗浄槽41、吸着塔11および濃縮装置42を有する。浴槽40は、流路51を介して吸着塔11の入口側と接続されている。洗浄槽41は、流路52を介して吸着塔11の入口側と接続されている。濃縮装置42は、流路53を介して吸着塔11の出口側と接続されており、流路54を介して浴槽40と接続されている。
【0098】
浴槽40は、化学研磨のための浴槽であり、化学研磨液を収容している。洗浄槽41は、浴槽40で化学研磨されたアルミニウム製品を水洗するための槽である。当該アルミニウム製品には化学研磨液が付着している。当該アルミニウム製品を洗浄槽41に収容することにより、図中の破線の矢印で示すように、浴槽40中の、アルミニウム製品に付着した化学研磨液が洗浄槽41に収容される。濃縮装置42は、被処理液中の水を留去させて被処理液を濃縮するための装置である。以下、リン酸・硫酸系化学研磨液の再生を例に、化学研磨液およびそれに係る洗浄廃液の再生を説明する。
【0099】
[酸性液の再生]
浴槽40では、アルミニウム製品の化学研磨に伴い、アルミニウムイオンを含有するリン酸・硫酸系化学研磨液が生成する。洗浄槽41では、アルミニウムイオンを含有するリン酸・硫酸系化学研磨液が付着したアルミニウム製品を水洗することにより、アルミニウムイオン、を含有する洗浄廃液が生成する。
【0100】
浴槽40中のリン酸・硫酸系化学研磨液は、必要に応じて水で希釈されて、流路51を通って吸着塔11に供給される。洗浄槽41中の洗浄廃液は、流路52を通って吸着塔11に供給される。このように吸着塔11には、リン酸、硫酸およびアルミニウムイオンを含有する酸性液が供給され、前述したようにキレート樹脂によって当該酸性液からアルミニウムイオンが吸着され、除去される。
【0101】
アルミニウムイオンが除去された酸性液は、流路53を通って濃縮装置42に供給される。濃縮装置42は、供給された酸性液から水を留去させて濃縮する。この濃縮により、所望の濃度のリン酸および硫酸を含有する酸性液が生成する。このようにして再生された酸性液は、化学研磨液またはその原料として、流路54を通って浴槽40に供給され、再利用される。吸着塔11におけるキレート樹脂の再生は、前述した第一の実施形態と同様に行われる。
【0102】
[まとめ]
このように本実施形態によれば、アルミニウム製品のためのリン酸・硫酸系化学研磨液およびそれに係る洗浄廃液を容易に再生することができる。また、本実施形態によれば、当該リン酸・硫酸系化学研磨液およびそれに係る洗浄廃液の再生における酸性液の使用量を低減させることが可能である。
【0103】
なお、本実施形態における再生装置は、リン酸・硝酸系化学研磨液およびそれに係る洗浄廃液中のアルミニウムイオンの除去にも利用することが可能である。よって、リン酸・硝酸系化学研磨液を用いる化学研磨に本実施形態における再生装置を適用してもよい。
【0104】
<第三の実施形態>
[二次廃液]
化学研磨液の再生に係る二次廃液は、化学研磨液を再生させた吸着剤の再生によって生じた廃液である。たとえば、当該二次廃液は、アルミニウムイオンを含有するリン酸・硝酸系化学研磨液またはそれに係る洗浄廃液を処理したイオン交換樹脂に接触させた硫酸水溶液である。
【0105】
[再生装置]
図4は、リン酸・硝酸系化学研磨液およびそれに係る洗浄廃液の再生装置の一例の要部の構成を模式的に示す図である。前述の実施形態の再生装置と同じ構成については同じ符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0106】
当該再生装置は、
図4に示されるように、浴槽40、洗浄槽41、吸着塔45、濃縮装置42、吸着塔11および硫酸槽12を有する。浴槽40は、リン酸・硝酸系化学研磨液を収容する以外は、第三の実施形態のそれと同様に構成されている。なお、リン酸・硝酸系化学研磨液は、一例として、3~5質量%の硝酸を含有するリン酸水溶液である。吸着塔45は、通液性の固定床を有しており、当該固定床は、イオン交換樹脂の粒子を吸着塔45に充填することによって構成されている。イオン交換樹脂は、強酸性陽イオン交換樹脂であり、例えば、スルホン酸基などのリン酸よりも強い酸性の官能基を有する樹脂である。
【0107】
浴槽40は、流路61を介して吸着塔45の入口側に接続されている。洗浄槽41は、流路62を介して吸着塔45の入口側に接続されている。濃縮装置42は、流路63を介して吸着塔45の出口側と接続されている。吸着塔11の入口側は、流路64を介して吸着塔45の出口側と接続されている。硫酸槽12は、流路65を介して吸着塔45の入口側に接続されている。
【0108】
[酸性液の再生]
浴槽40中におけるアルミニウムイオンを含有するリン酸・硝酸系化学研磨液は、必要に応じて水で希釈されて、流路61を通って吸着塔45に供給される。洗浄槽41中における、アルミニウムイオン、リン酸および硝酸を含有する洗浄廃液は、流路62を通って吸着塔45に供給される。
【0109】
吸着塔45に供給されたリン酸、硝酸およびアルミニウムイオンを含有する酸性液は、吸着塔45に収容されているイオン交換樹脂の粒子と接触する。当該酸性液中のアルミニウムイオンは、イオン交換樹脂における強酸性の官能基の水素イオンと置き換えられる。こうして当該酸性液中のアルミニウムイオンは、イオン交換樹脂に吸着され、当該酸性液から除去される。
【0110】
アルミニウムイオンが除去された酸性液は、流路63を通って濃縮装置42に供給され、濃縮装置42によって所望の濃度のリン酸を含有するように濃縮され、化学研磨液に再利用される。
【0111】
吸着塔45におけるイオン交換樹脂のアルミニウムイオンの吸着が飽和に達すると、アルミニウムを含有する酸性液の吸着塔45への供給が停止され、硫酸槽12から、流路65を通ってH型変換用の硫酸水溶液が吸着塔45に供給される。吸着塔45においてイオン交換樹脂が硫酸水溶液と接触することにより、イオン交換樹脂が吸着していたアルミニウムイオンは、硫酸水溶液中の水素イオンと置き換えられる。こうして、イオン交換樹脂はH型のイオン交換樹脂に再生する。イオン交換樹脂から脱離したアルミニウムイオンは、硫酸水溶液とともに吸着塔45から排出される。吸着塔45から排出される液は、アルミニウムイオン、および、イオン交換樹脂の再生に用いられなかった硫酸、を含有しており、二次廃液に該当する。
【0112】
当該二次廃液は、流路64を通って吸着塔11に供給される。二次廃液中のアルミニウムイオンは、吸着塔11中のキレート樹脂に吸着され、当該二次廃液から除去される。アルミニウムイオンが除去された二次廃液は、回収硫酸として流路32を通って硫酸槽12に供給され、前述したように、吸着塔45におけるイオン交換樹脂の再生に再利用される。吸着塔11におけるキレート樹脂の再生は、前述した第一の実施形態と同様に行われる。
【0113】
[まとめ]
このように本実施形態によれば、アルミニウム製品のためのリン酸・硝酸系化学研磨液に係る二次廃液を容易に再生することができる。また、本実施形態によれば、当該二次廃液の再生における酸性液の使用量を低減させることが可能である。
【0114】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、硫酸を含有する酸性液からアルミニウムイオンを吸着、除去することにより当該酸性液を再生させる技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0116】
11、45 吸着塔
12 硫酸槽
13 アルカリ槽
14 収容槽
15 固液分離装置
20、40 浴槽
31~36、38、39、51~54、61~65 流路
41 洗浄槽
42 濃縮装置