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特許7195663建設機械の施工表示方法、建設機械の表示制御システムおよび建設機械の表示制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】建設機械の施工表示方法、建設機械の表示制御システムおよび建設機械の表示制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
E02F9/26 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021169789
(22)【出願日】2021-10-15
【審査請求日】2022-03-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518239994
【氏名又は名称】TOTALMASTERS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】玉里 芳直
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-328022(JP,A)
【文献】特開2019-157409(JP,A)
【文献】特開2021-161842(JP,A)
【文献】特開2020-003484(JP,A)
【文献】特開2020-016147(JP,A)
【文献】特開2019-101697(JP,A)
【文献】特開2016-212469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の可動作業具を用いて行う施工に関する表示を、前記建設機械に搭載されて用いられる表示パネルまたは前記建設機械に接続されて用いられる表示パネルで行う施工表示方法であって、
少なくとも建設施工現場の施工計画図面を含む施工管理データを記憶保持する管理システムから、前記建設機械について計測された当該建設機械の作業位置に基づいた前記施工計画図面を含む前記施工管理データを取得して、前記建設機械の施工対象となる地点における施工計画面の表示を前記表示パネルで行うとともに、前記建設機械の前記可動作業具について計測された当該可動作業具の施工位置の位置情報の表示を前記表示パネルで行い、
前記建設機械の前記作業位置もしくは前記建設施工現場に対する施工の施工内容が変化して新たに施工計画図面が必要となったときには、前記作業位置の変化もしくは前記施工内容の変化に伴ってさらに必要となる前記施工管理データを、前記管理システムから取得する
建設機械の施工表示方法。
【請求項2】
前記施工計画図面は、測量データを基に作成された3D設計データである
請求項1に記載の建設機械の施工表示方法。
【請求項3】
前記施工管理データは、前記作業位置を含む施工現場に設定された座標系に関するローカライゼーションデータを含む
請求項1または2に記載の建設機械の施工表示方法。
【請求項4】
前記施工計画面の表示と併せて、当該施工計画面に付帯し前記可動作業具による施工の基準をガイドするガイド表示を前記表示パネルで行う
請求項1に記載の建設機械の施工表示方法。
【請求項5】
前記ガイド表示は、前記施工計画面の基準をガイドする仮想丁張である
請求項4に記載の建設機械の施工表示方法。
【請求項6】
前記ガイド表示は、前記作業位置における前記施工の作業限界表示である
請求項4に記載の建設機械の施工表示方法。
【請求項7】
前記作業限界表示は、架空線に対する空中限界、もしくは、道路や建築物に対する側方限界、埋設物に対する埋設物限界である
請求項6に記載の建設機械の施工表示方法。
【請求項8】
建設機械の可動作業具を用いて行う施工に関する表示を、前記建設機械に搭載されて用いられる表示パネルまたは前記建設機械に接続されて用いられる表示パネルで行う建設機械の表示制御システムであって、
建設機械に搭載されて用いられ制御部を備え、
前記制御部は、
前記建設機械の前記可動作業具の作業位置を計測する計測処理部と、
少なくとも建設施工現場の施工計画図面を含む施工管理データを記憶保持する管理システムから、前記建設機械について計測された当該建設機械の作業位置に基づいた前記施工計画図面を含む前記施工管理データを取得する施工データ管理部と、
前記計測処理部で計測された作業位置並びに前記施工データ管理部が取得した前記施工管理データに基づき、前記建設機械の施工対象となる地点における施工計画面の表示を前記表示パネルで行うとともに、前記建設機械の前記可動作業具について計測された当該可動作業具の施工位置の位置情報の表示を前記表示パネルで行う表示処理部とを有し、
前記建設機械の前記作業位置もしくは前記建設施工現場に対する施工の施工内容が変化して新たに施工計画図面が必要となったとき、前記作業位置の変化もしくは前記施工内容の変化に伴ってさらに必要となる前記施工管理データを、前記管理システムから取得する
建設機械の表示制御システム。
【請求項9】
建設機械に搭載されるコンピュータを、
前記建設機械の可動作業具の作業位置を計測する計測処理部と、
少なくとも建設施工現場の施工計画図面を含む施工管理データを記憶保持する管理システムから、前記建設機械について計測された当該建設機械の作業位置に基づいた前記施工計画図面を含む前記施工管理データを取得する施工データ管理部と、
前記計測処理部で計測された作業位置並びに前記施工データ管理部が取得した前記施工管理データに基づき、前記建設機械の施工対象となる地点における施工計画面の表示を前記建設機械に搭載されて用いられる表示パネルまたは前記建設機械に接続されて用いられる表示パネルで行うとともに、前記建設機械の前記可動作業具について計測された当該可動作業具の施工位置の位置情報の表示を前記表示パネルで行う表示処理部と
として機能させ、
前記建設機械の前記作業位置もしくは前記建設施工現場に対する施工の施工内容が変化して新たに施工計画図面が必要となったとき、前記作業位置の変化もしくは前記施工内容の変化に伴ってさらに必要となる前記施工管理データを、前記管理システムから取得する
建設機械の表示制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マシンガイダンス機能を有する建設機械で用いられる表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設施工現場で用いられる油圧ショベルやブルドーザ等の建設機械としては、いわゆるマシンガイダンス機能を有するものが知られている。その場合に、施工で必要となる設計図あるいは予想される最終結果の三次元データ(目標データ)が予め記録され、施工対象物と目標データとを重畳させて表示する、といったことが行われる(例えば、特許文献1参照)。あるいは、建設機械に取り付けられるアタッチメントの作業部位と事前に設定された目標施工面との相対的な関係を表示する、といったことが行われる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-352224号公報
【文献】国際公開第2019/031509号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の一般的なマシンガイダンス機能は、専ら施工図面等が事前に格納され、それとの比較で建設機械の可動作業具(例えば、バックホーのバケット)の位置を提示している。これに対して、実際の運用時において、施工図面は、施工位置あるいは施工内容に応じて、自動的に取得し得ることが望ましい。また、その他の施工管理データも取得し、提示あるいは利用し得ることが望ましい。
【0005】
また、マシンガイダンス機能を利用するオペレータ(操縦者)は、建設機械とその可動作業具を操縦する傍ら、表示パネル(モニタ)を参照し、施工面に対する可動作業具の相対位置を認識して、建設機械とその可動作業具を操縦している。つまり、実際の施工面には何らガイド情報が無い状態で、表示パネル上の情報によってのみ、ガイドに従った操縦をしている。そのため、実際に見ているものと、別途参照しているものが異なることによる、認知上の隔たりの困難を伴うおそれがある。このことから、ガイダンス表示については、認知上の隔たりを補完する、表示上の工夫が望まれる。特に、実際の施工において従来使われていたガイド情報に相当するものを、表示パネルに表示することで、表示内容の平易で円滑な理解を促し、マシンガイドシステムへの親和性を高めることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
建設機械の可動作業具を用いて行う施工に関する表示を行う施工表示方法であって、
前記可動作業具の作業位置を計測して特定した前記作業位置と、前記施工に関する施工管理情報とを、前記建設機械に搭載されて用いられ、または前記建設機械に接続されて用いられる表示パネルに表示し、
前記作業位置もしくは前記施工の施工内容が変化したときには、前記作業位置の変化もしくは前記施工内容の変化に伴ってさらに必要となる前記施工管理情報を、施工情報管理システムから適宜取得する
建設機械の施工表示方法が提供される。
【0007】
また、本発明の他の一態様によれば、
建設機械に搭載されて用いられ、前記建設機械の可動作業具とその施工位置に関する表示を行う制御部を備え、
前記制御部は、
前記建設機械の前記可動作業具の作業位置を計測する計測処理部と、
前記建設機械の施工データを管理する施工データ管理部と、
前記可動作業具の前記作業位置および前記施工データに基づき、前記建設機械の可動作業具とその施工位置に関する表示を表示パネルにおいて行う表示処理部とを有し、
前記作業位置もしくは前記施工の施工内容が変化したとき、前記作業位置の変化もしくは前記施工内容の変化に伴ってさらに必要となる前記施工管理情報を、制御部とネットワークを介して接続された施工情報管理システムから適宜取得する
建設機械の表示制御システムが提供される。
【0008】
また、本発明の他の一態様によれば、
建設機械に搭載されるコンピュータを、
前記建設機械の前記可動作業具の作業位置を計測する計測処理部と、
前記建設機械の施工データを管理する施工データ管理部と、
前記可動作業具の前記作業位置および前記施工データに基づき、前記建設機械の可動作業具とその施工位置に関する表示を表示パネルにおいて行う表示処理部
として機能させ、
前記作業位置もしくは前記施工の施工内容が変化したとき、前記作業位置の変化もしくは前記施工内容の変化に伴ってさらに必要となる前記施工管理情報を、前記コンピュータとネットワークを介して接続された施工情報管理システムから適宜取得する
建設機械の表示制御プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マシンガイダンス機能の利便性向上が図れ、これにより施工管理の便益性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態において用いられる建設機械の一例であるバックホーの概略構成例を模式的に示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る建設機械の制御システムの構成例を模式的に示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る施工管理データの取得処理の手順の一例を示すフロー図である。
図4】本発明の一実施形態に係る施工管理データの取得処理の手順の一例を示すフロー図である。
図5】本発明の一実施形態における施工データの管理の概要を示す説明図である。
図6】本発明の一実施形態において施工内容によって取得データを変更する具体例を示す説明図である。
図7】本発明の一実施形態において作業位置に応じて取得データを変更する具体例を示す説明図である。
図8】本発明の一実施形態において施工位置によって適宜取得する管理データの例を示す説明図である。
図9】本発明の一実施形態における表示データ出力の基本形の例を示す説明図である。
図10】本発明の一実施形態における表示データ出力の丁張表示の例を示す説明図である。
図11】本発明の一実施形態における表示データ出力の作業限界表示の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
<実施形態の概要>
まず、本発明の一実施形態の概要について説明する。
【0013】
本実施形態においては、建設機械の位置と姿勢を認識することで、目標の施工位置に対する施工作業を効率化する(マシンガイダンス)。
【0014】
本実施形態において、建設機械の操縦席の表示パネル(モニタ)には、可動作業具と施工箇所とが表示される。建設機械のオペレータ(操縦者)は、その表示を参考として、建設機械を操縦して施工する。
【0015】
本実施形態において、施工箇所を示す施工図面(設計データ)を含む施工管理データは、施工位置あるいは施工内容に応じて、自動で取得する。
【0016】
本実施形態においては、実際の施工において従来使われていたガイド情報に相当するものの例として丁張等に相当する表示を表示パネル(モニタ)上に行うことで、建設機械のオペレータ(操縦者)に対して、表示内容の平易で円滑な理解を促す。
【0017】
<実施形態の詳細>
まず、本実施形態の詳細について説明する。
【0018】
(建設機械)
ここで、本実施形態において用いられる建設機械について説明する。建設機械は、建設施工現場で用いられるもので、代表的な例として油圧ショベルやブルドーザ等といった土木用途の建設機械が挙げられる。ただし、建設機械がこれらに限定されることはなく、トラックやローダ等の運搬機械、クレーン等の荷役機械、基礎工事用機械、せん孔機械、トンネル工事用機械、圧砕機等のコンクリート機械、舗装機械、道路維持用機械等といった他の種類のものであっても構わない。
【0019】
以下の説明では、建設機械がバックホーとも呼ばれる油圧ショベルである場合を例に挙げる。
図1は、バックホーの概略構成例を模式的に示す説明図である。
【0020】
図例のように、バックホー1は、操縦席10を含む上部回旋体(機体本体)11と、駆動作業具であるブーム12、アーム13およびバケット14と、走行装置としての下部移動体15と、を備えている。このような構成のバックホー1は、下部移動体15を備えることで、建設施工現場において移動(自走)することが可能である。そして、上部回旋体11、ブーム12、アーム13およびバケット14をそれぞれ動作させることで、建設施工現場の地表面に対して掘削等の施工を行うようになっている。したがって、バックホー1において、上部回旋体11、ブーム12、アーム13およびバケット14は、それぞれが個別に動作し得る「可動部」として機能することになる。また、これらのうち、特にバケット14は、建設施工現場の地表面に対する施工を直接的に行う「可動作業具」として機能することになる。その場合に、バケット14の剣先位置が、そのバケット14による施工箇所に相当することになる。
【0021】
上部回旋体11の背部には、全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System、以下「GNSS」と略す。)の受信機(アンテナ)16が取り付けられており、これによりバックホー1の位置を測位し得るようになっている。
【0022】
また、上部回旋体11の操縦席10には、操縦者が操作するコントローラ(ただし不図示)や、操縦者に対する情報出力を行うモニタ(ただし不図示)等、が設けられている。
【0023】
可動部である上部回旋体11、ブーム12、アーム13およびバケット14のそれぞれには、角度センサ21,22,23,24が装着されている。ただし、バケット用の角度センサ24は、より具体的には、バケット14を間接的に駆動させるアイドラアーム14cに装着されていることが好ましい。バケット14の剣先近傍に角度センサ24が装着されていると、建設施工現場の地表面に対する施工の際に角度センサ24が邪魔になったり、当該角度センサ24の破損を招いたりするおそれがあるからである。
【0024】
角度センサ21,22,23,24は、例えば、三軸加速度センサと三軸ジャイロセンサからなる慣性計測装置(Inertial Measurement Unit、以下「IMU」と略す。)の角度センサとしての機能を利用したものであり、少なくとも三次元空間内で各可動部が動作したときの角度(すなわち動作角度)を検出し得るように構成されたものである。なお、角度センサ21,22,23,24は、各可動部の動作角度を検出可能であれば、必ずしもIMUである必要はなく、他の種類のセンサを用いて構成されていてもよい。
【0025】
このような構成のバックホー1においては、上部回旋体11にGNSS受信機16が取り付けられているので、これにより建設施工現場でのバックホー1の位置を計測することができる。さらに、可動部である上部回旋体11、ブーム12、アーム13およびバケット14のそれぞれに角度センサ21,22,23,24が装着されているので、各可動部の大きさ(サイズデータ)を特定することで、そのサイズデータと各角度センサ21,22,23,24の検出結果とから、上部回旋体11に対するバケット14の剣先位置を計測することができる。
【0026】
したがって、これらの計測結果から建設施工現場内におけるバケット14の剣先位置をモニタリングすることができるので、そのモニタリング結果に基づいて、稼働中のバックホー1に対する制御を行うことが可能となる。具体的には、例えば、バケット14の剣先位置のモニタリング結果と、建設施工現場の施工目標データ(設計データ)とを、操縦席10の表示パネルにて出力し、バックホー1の操縦者に必要な施工量(掘削量等)をガイダンス(いわゆるマシンガイダンス)することが実現可能となる。
【0027】
つまり、本実施形態において、バックホー1は、マシンガイダンス機能に対応している。そして、マシンガイダンスを行うために、造成設計面と現在施工面とをオペレータに表示して、正確簡便なマシン操作を支援する。さらには、マシンガイダンスのために、建設施工現場の造成設計面についての三次元(3D)設計面データと、可動作業具の施工位置(剣先位置、刃先位置)と、が与えられるようになっている。
【0028】
(システム構成)
次に、以上のようなバックホー1におけるマシンガイダンス機能に対する制御を行う制御システムの構成例について説明する。
図2は、本実施形態に係る制御システムの構成例を模式的に示すブロック図である。
【0029】
図例のように、制御システムは、パーソナルコンピュータ(以下「PC」と略す。)31と、そのPC31と接続するモニタ32と、を備えている。また、PC31は、無線通信を介して接続するインターネット等の広域ネットワーク33を通じて、コンピュータ装置としての機能を有する管理システム34と通信を行うことが可能となっている。
【0030】
PC31は、コンピュータとしてのハードウエア資源を備えており、所定プログラムを実行することで、そのプログラム(ソフトウエア)とハードウエア資源とが協働して、各種の機能や処理動作等を実現するように構成されている。PC31が実現する機能や処理動作等としては種々のものがあるが、その一例として、マシンガイダンスを制御する機能がある。なお、PC31は、一般的な構成の汎用PCを用いることが考えられるが、これに限定されることは無く、例えば、いわゆるシングルボードコンピュータを用いて構成されていてもよい。また、PC31は、バックホー1に搭載されて用いられるものであることが考えられるが、これに限定されることは無く、バックホー1とは遠隔配置されたものであってもよい。
【0031】
モニタ32は、例えば液晶表示パネルによって構成されたもので、PC31からに指示に従いつつ、バックホー1の操縦者等に対して各種の情報出力を行うためのものである。このようなモニタ32は、バックホー1の操縦席10にて利用されるものであるが、これに限定されることは無く、バックホー1から離れた箇所で利用可能なものものであっても構わない。また、モニタ32については、各種の情報出力を行うのみならず、例えばタッチパネル等によって各種の情報入力にも対応し得ることが好ましい。
【0032】
管理システム34は、バックホー1とは遠隔配置されたもので、PC31によるマシンガイダンス制御に必要となる各種情報を記憶保持する、いわゆるクラウドサーバとしての機能を有するものである。管理システム34が記憶保持する情報には、例えば、バックホー1が用いられる建設施工現場の施工目標データ(設計データ)や、その建設施工現場を管理する現場管理データ等が含まれており、PC31からの要求に応じて適宜提供されるようになっている。
【0033】
(PC機能構成)
ここで、上述したPC31において実現される機能構成について説明する。
PC31は、所定プログラムを実行することで、計測処理部31a、施工データ管理部31bおよび表示処理部31cとして機能するようになっている。
【0034】
計測処理部31aは、バックホー1の稼動時に得られる各角度センサ21,22,23,24の検出結果と、GNSS受信機16で得られる位置検出結果とに基づいて、各角度センサ21,22,23,24が装着された可動部(すなわち、上部回旋体11、ブーム12、アーム13およびバケット14のそれぞれ)の動作状態を認識する機能である。可動部の動作状態とは、バックホー1の稼動時における各可動部の位置または姿勢の少なくとも一方の状態のことをいう。このような動作状態を計測処理部32aが認識することで、PC31では、その認識結果に基づいて建設施工現場内におけるバケット14の剣先位置をモニタリングできるようになる。
【0035】
施工データ管理部31bは、管理システム34にアクセスしてマシンガイダンス制御に必要となる各種情報の提供を要求し、その要求に応じて管理システム34からの情報提供があると、提供された情報の受け取りを行う機能である。
【0036】
表示処理部31cは、計測処理部31aによる処理および施工データ管理部31bによる処理に基づいて、モニタ32による表示出力の内容を制御する機能である。つまり、表示処理部31cは、バックホー1におけるマシンガイダンスの内容を制御する機能である。
【0037】
以上に説明した計測処理部31a、施工データ管理部31bおよび表示処理部31cとしての各機能は、PC31が所定プログラムを実行することによって実現される。その場合に、各機能を実現する所定プログラムは、PC31にインストール可能なものであれば、当該PC31で読み取り可能な記録媒体(例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等)に格納されて提供されるものであってもよいし、インターネットや専用回線等のネットワークを通じて外部から提供されるものであってもよい。
【0038】
(マシンガイダンス制御の手順)
次に、上述した構成の制御システムにおいて、PC31における計測処理部31a、施工データ管理部31bおよび表示処理部31cが、マシンガイダンス制御を行う場合の手順、すなわち本実施形態に係る表示方法の手順について説明する。
【0039】
PC31が行うマシンガイダンス制御には、施工データ管理部31bが行う施工管理データの取得処理と、表示処理部31cが行う表示データの出力処理と、が含まれる。以下、これらの処理の手順について、順に説明する。
【0040】
(施工管理データの取得処理の手順)
図3は、本実施形態に係る施工管理データの取得処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0041】
図3に示すように、施工管理データの取得処理に際しては、まず、バックホー1の現在地および建設施工現場に対する施工を行う日時に基づき、現場管理データを管理システム34から取得する(S101)。そして、当該現場の当該日時における工程、および、現作業位置に基づいた施工計画図面、および、ローカライゼーションデータを、管理システム34から取得する(S102)。
【0042】
その後、バックホー1の作業位置が変わり新たに施工計画図面が必要となった場合であるか否かを判断し(S103)、必要となった場合であれば、再び上述したステップ(S102)を行う。また、新たな施工計画図面が必要でなければ、次いで、作業工程を終え新たに施工計画図面が必要となった場合であるか否かを判断し(S104)、必要となった場合であれば、再び上述したステップ(S102)を行う。そして、新たな施工計画図面が必要でない場合は、当日の作業を終了する場合であるか否かを判断し(S105)、終了すると判断するまで、上述の各ステップ(S103,S104)を繰り返す。
【0043】
(表示データの出力処理の手順)
図4は、本実施形態に係る表示データの出力処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0044】
図4に示すように、表示データの出力処理に際しては、まず、バックホー1の施工対象となる当該地点における施工計画面の表示をモニタ32に行わせる(S201)。さらに、これと併せて、施工計画面に付帯し可動作業具による施工の基準をガイドする仮想的な丁張等の表示をモニタ32に行わせる(S202)。
【0045】
その一方で、バックホー1については計測処理部31aが施工位置のモニタリングを行っているので、計測処理部31aからの可動作業具とその位置情報について、その表示をモニタ32に行わせる(S203)。これにより、モニタ32には、施工計画面および仮想丁張等の表示に加えて、バックホー1が有するバケット14の剣先位置についても表示されることになる。
【0046】
その後、施工計画図面が変更となった場合であるか否かを判断し(S204)、変更となった場合であれば、再び上述した各ステップ(S201~S203)を行う。そして、施工計画図面の変更がない場合は、当日の作業を終了する場合であるか否かを判断し(S205)、終了すると判断するまで、上述の各ステップ(S203,S204)を繰り返す。
【0047】
(施工管理データの取得の具体例)
次に、上述した手順の施工管理データの取得処理(S101~S105)について、具体例を挙げてさらに詳しく説明する。
【0048】
図5は、本実施形態における施工データの管理の概要を示す説明図である。
図5に示すように、管理システム34においては、ドローン41で測量した地表面の点群データに基づき、3D設計ツール42で施工計画図面データ43a.43b,…を用途別に作成して管理する。また、座標データを管理する。さらには、現場、管理者、作業者、作業機械、工事日程、ローカライゼーションデータ等を含んで構成される現場管理データを管理する。
【0049】
そして、バックホー1の側では、必要に応じて、管理システム34からの施工管理データの取得を行う。具体的には、バックホー1の作業位置に応じて、該当箇所のデータを取得する。また、バックホー1による施工内容により、該当データを取得する。
【0050】
(施工内容によって取得データを変更する具体例)
図6は、本実施形態において施工内容によって取得データを変更する具体例を示す説明図である。
図6は、護岸工事の例を示している。
図6(a)は、護岸工事において、工程1として行う表土剥ぎのためデータである。工程1では、施工後の経年変化による陥没等を防ぐために草根を多く含む表土を除去する。表土剥ぎをしない道路部も表示している。道路等の下になってしまう田畑等の良質な土を別の田畑や公園に転用するために表土を取り除くこともある。現場によって意味合いが違うことがある。
図6(b)は、護岸工事において、工程2として行う仮設工事のためデータである。工程2では、本設工事のための資材搬入等のための通路をつくる。完了時には撤去するか本設の下地になる。工程1で表示していた道路は、工程2では不要なので非表示としている。後述する工程3も同様である。
図6(c)は、護岸工事において、工程3として行う本設工事のためデータである。工程3では、折れ曲がっていた川を緩やかなカーブにし、護岸とその上に堤防道路を造る。このように、工程の進捗管理に基づいて、必要な施工計画図面を取得する。
【0051】
(作業位置に応じて取得データを変更する具体例)
図7は、本実施形態において作業位置に応じて取得データを変更する具体例を示す説明図である。
図7に示すように、同一施工計画でありながら、建設機械の移動位置に応じて、局所範囲の図面(建設機械が作業するのに必要十分な範囲の図面)を、適宜取得して、表示する。
図例は、離れたところの図面を例示しているが、連続範囲の図面から、機械の移動に伴って、適宜局所範囲を追加的に取得するのでもよい。
【0052】
(施工位置によって適宜取得する管理データの例)
図8は、本実施形態において施工位置によって適宜取得する管理データの例を示す説明図である。
図8に示すように、施工管理データの取得に際しては、バックホー1の作業位置に応じて、ローカライゼーションデータを取得する。ローカライゼーションデータの取得は、以下に説明する手順で行う。
【0053】
(1)現場毎施工者毎に、それぞれの利便性の元に、個別座標系が設定され得る。
(2)ローカル座標系の基準点と、当該点の測量座標とを最小誤差で変換する変換形式(例えば、ヘルマート(Helmert)変換とそのパラメータ)を予め求め、現場管理情報(ローカライゼーションデータ)として管理しておく。
(3)施工位置に応じて、対応するローカライゼーションデータを適宜取得する。
(4)施工時は、機械に搭載したGNSS受信機により緯度経度高度を取得し、平成14年国土交通省告示第9号で定義されている平面直角座標系の座標に変換した上で、例えば上記ローカライゼーションデータのヘルマート変換パラメータに基づき、当該現場のローカル座標にヘルマート変換して使用する。
【0054】
(表示データの出力の具体例)
次に、上述した手順の表示データの出力処理(S201~S204)について、具体例を挙げてさらに詳しく説明する。
【0055】
図9は、本実施形態における表示データ出力の基本形の例を示す説明図である。
表示データの出力処理により、バックホー1のモニタ32には、図9に示すような画像が表示される。図例の表示画像は、マシンガイダンスを行う際の基本形となるもので、施工対象地点における施工計画面とバケット14の剣先位置との位置関係についてのオペレータビュー画像51と、当該位置関係についてのサイドビュー画像52と、当該位置関係についての俯瞰ビュー画像53と、施工計画面に対するバケット中央からの垂直距離を示す距離インジケータ画像54(×印のところが0mに相当)と、施工計画面に対する垂直距離、バケット中央および両端の数値を示す数値画像55と、を有して構成されている。
【0056】
バックホー1のオペレータは、このようなモニタ32による表示画像を見て、施工計画面とバケット14の剣先位置との距離を認識し、当該バケット14の操作を行うことになる。
【0057】
本実施形態においては、モニタ32からの表示データ出力にあたり、上述した基本形となる画像表示に加えて、以下に説明するような補助表示を行う。
【0058】
補助表示としては、例えば、上述した仮想丁張の表示がある。
図10は、本実施形態における表示データ出力の仮想丁張表示の例を示す説明図である。
具体的には、本実施形態においては、図10に示すように、基本形となる画像表示に加えて、補助表示の一つとして、仮想丁張56の表示を行う。
【0059】
仮想丁張56の表示は、施工図面データに種々の丁張データを設定しておくか、あるいは、工事進捗に応じ適宜設定することで、行えばよい。仮想丁張56の表示は、法面成形の例の他に、水平面の提示、工事境界(範囲)の標示等のために行うことができる。
【0060】
また、補助表示としては、例えば、作業限界表示がある。
図11は、本実施形態における表示データ出力の作業限界表示の例を示す説明図である。
具体的には、本実施形態においては、図11に示すように、基本形となる画像表示に加えて、補助表示の他の一つとして、作業限界表示に相当する作業境界または特に空中に表示するエアー丁張57の表示を行う。作業境界またはエアー丁張57としては、例えば、架空線等を想定した空中限界、道路や建築物等を想定した側方限界、埋設物を想定した埋設物限界がある。なお、境界等については、特にアラーム表示やアラーム吹鳴等を行うようにしてもよい。
【0061】
作業境界またはエアー丁張57の表示は、施工図面データに種々の作業境界やエアー丁張と呼ばれるものを設定しておくか、あるいは、工事進捗に応じ、適宜設定することで、行えばよい。いずれも、現場に物理的なガイドを置けないところにも好適である。
【0062】
(作用効果)
以上に説明した本実施形態によれば、施工管理データについて、施工図面は、施工位置あるいは施工内容に応じて、自動的に(管理システム34から)取得することができる。さらには、その他の施工管理データも取得し、提示あるいは利用することができる。したがって、施工図面等の取得が自動化され、利便性が向上する。また、付帯する管理情報を合わせて利用できることで、施工管理の便益性が向上する。
つまり、本実施形態によれば、マシンガイダンス機能の利便性向上が図れ、これにより施工管理の便益性が向上することになる。
【0063】
また、本実施形態によれば、補助表示について、従来物理的に施工現場に設定されていた丁張等に相当する表示を行うことができる。したがって、実際に見ているものと、別途参照しているものが異なることによる、認知上の隔たりを補完できる。また、実際の施工において従来使われていたガイド情報に相当するものを、表示パネルとしてのモニタ32に表示することで、表示内容の平易で円滑な理解を促し、マシンガイドシステムへの親和性を高めることができる。また、マシンガイドシステムに不慣れなオペレータであっても、従来馴染みのある丁張等を参照することで、マシンガイドシステムの理解が捗り、システム利用の難易度が下がる。また、現時点で地中となるところにも丁張を設置することや、空中にも限界点を設置すること、あるいは、作業具と衝突するところにも設置でき、従来の丁張等に比べても、利便性が高まる。
【0064】
<他の実施形態>
以上に、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明の技術的範囲は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0065】
例えば、上述の実施形態では、建設機械がバックホー1である場合を例に挙げて説明したが、本発明がこれに限定されることはなく、ブルドーザ等の他の土木用途の建設機械にも全く同様に適用することが可能である。さらには、土木用途の建設機械に限定されることはなく、運搬機械、荷役機械、基礎工事用機械、せん孔機械、トンネル工事用機械、圧砕機等のコンクリート機械、舗装機械、道路維持用機械等といった他の種類のものに対しても、全く同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…バックホー(建設機械)、11…上部回旋体(可動部)、12…ブーム(可動部)、13…アーム(可動部)、14…バケット(可動部、可動作業具)、15…下部移動体、16…GNSS受信機、21,22,23,24…角度センサ、31…PC、31a…計測処理部、31b…施工データ管理部、31c…表示処理部、32…モニタ、34…管理システム
【要約】
【課題】マシンガイダンス機能の利便性を向上させる。
【解決手段】建設機械の可動作業具を用いて行う施工に関する表示を行う施工表示方法であって、前記可動作業具の作業位置を計測して特定した前記作業位置と、前記施工に関する施工管理情報とを、前記建設機械に搭載されて用いられ、または前記建設機械に接続されて用いられる表示パネルに表示し、前記作業位置もしくは前記施工の施工内容が変化したときには、前記作業位置の変化もしくは前記施工内容の変化に伴ってさらに必要となる前記施工管理情報を、施工情報管理システムから適宜取得する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11