(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】診断及び治療のための、改善された薬物動態及びコレシストキニン-2受容体(CCK2R)への標的化
(51)【国際特許分類】
C07K 14/595 20060101AFI20221219BHJP
A61K 51/08 20060101ALI20221219BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20221219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221219BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C07K14/595 ZNA
A61K51/08 100
A61K51/08 200
A61K47/64
A61P35/00
G01N33/574 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021180132
(22)【出願日】2021-11-04
(62)【分割の表示】P 2019567733の分割
【原出願日】2018-06-08
【審査請求日】2021-12-02
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510019059
【氏名又は名称】メディツィーニシェ・ウニヴェルジテート・インスブルック
【氏名又は名称原語表記】MEDIZINISCHE UNIVERSITAET INNSBRUCK
【住所又は居所原語表記】Christph-Probst-Platz 1,Innrain 52,6020 Innsbruck,Austria
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】フォン・グゲンベルク・ツ・リードホーフェン,エリザベート
(72)【発明者】
【氏名】クリングラー,マクシミリアン
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/005765(WO,A1)
【文献】特表2017-501116(JP,A)
【文献】特開平03-068597(JP,A)
【文献】CORRINGER, P.J., et al.,"CCK-B agonist or antagonist activities of structurally hindered and peptidase-resistant Boc-CCK4 de,J. MED. CHEM.,1993年,Vol.36, No.1,pp.166-172
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有するペプチド模倣体:
68
Ga-DOTA-DGlu-Ala-Tyr-Gly-Trp-(N-Me)Nle-Asp-1Nal-NH
2
(式中、特記されない限り、アミノ酸はアミド結合を通して連結されている)。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチド模倣体を製造する方法であって、前記ペプチド模倣体を合成する工程を含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチド模倣体を含む、診断用組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のペプチド模倣体を含む、診断における使用のための診断用組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のペプチド模倣体を含む、がんの診断における使用のための診断用組成物。
【請求項6】
前記がんが、がん細胞の表面にコレシストキニン-2受容体(CCK2R)を発現している、請求項5に記載の診断用組成物。
【請求項7】
細胞をイメージングする方法のための診断用組成物であって、前記診断用組成物が請求項1に記載のペプチド模倣体を含み、前記方法が、
a)前記細胞を請求項1に記載のペプチド模倣体に接触させる工程、及び
b)細胞と接触している
68
Gaを可視化する工程
を含む、診断用組成物。
【請求項8】
前記工程a)が、患者に前記ペプチド模倣体を投与する工程を含む、請求項7に記載の診断用組成物。
【請求項9】
前記細胞ががん細胞である、請求項8に記載の診断用組成物。
【請求項10】
前記がん細胞がその表面にCCK2Rを発現している、請求項9に記載の診断用組成物。
【請求項11】
がん診断用の医薬の製造における、請求項1に記載のペプチド模倣体の使用。
【請求項12】
前記がんが、がん細胞の表面にCCK2Rを発現している、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
以下の構造を有するペプチド模倣体:
177
Lu-DOTA-DGlu-Ala-Tyr-Gly-Trp-(N-Me)Nle-Asp-1Nal-NH
2
(式中、特記されない限り、アミノ酸はアミド結合を通して連結されている)。
【請求項14】
請求項13に記載のペプチド模倣体を製造する方法であって、前記ペプチド模倣体を合成する工程を含む、方法。
【請求項15】
請求項13に記載のペプチド模倣体を含む、医薬組成物。
【請求項16】
請求項13に記載のペプチド模倣体を含む、治療における使用のための医薬組成物。
【請求項17】
請求項13に記載のペプチド模倣体を含む、がんの処置における使用のための医薬組成物。
【請求項18】
前記がんが、がん細胞の表面にコレシストキニン-2受容体(CCK2R)を発現している、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
がん処置用の医薬の製造における、請求項13に記載のペプチド模倣体の使用。
【請求項20】
前記がんが、がん細胞の表面にCCK2Rを発現している、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、とりわけ、特定のコレシストキニン-2受容体(CCK2R)への標的化について改善された特性を有するペプチド模倣体、並びにその診断使用及び治療使用に関する。コレシストキニン受容体は、CCK1R及びCCK2Rという、2つの受容体サブタイプに分類される。CCK2Rは、神経内分泌腫瘍、甲状腺髄様癌(MTC)、小細胞肺癌(SCLC)、平滑筋肉腫/平滑筋腫、消化管間質腫瘍、インスリノーマ、血管作動性腸管ペプチド分泌腫瘍、カルチノイド、星状細胞腫、間質卵巣癌、乳腺癌及び子宮内膜腺癌、並びにその他などの様々な腫瘍において同定されているが(Reubi JC et al., Cancer Res 1997, 57: 1377-1386; Reubi JC, Curr Top Med Chem 2007, 7: 1239-1242; Sanchez C et al. Mol Cell Endocrinol 2012, 349: 170-179)、CCK1Rは、限られた数のヒト腫瘍においてしか発現されていない。様々な放射性標識されたペプチドプローブが、CCK2R、コレシストキニン(CCK)、又はガストリンに対する内因性リガンドに基づいて開発されている。CCK及びガストリンという2つのペプチドは、ほぼ同じ親和性及び効力でCCK2Rに結合し、C末端における共通した生物活性領域である、Trp-Met-Asp-Pheを共有し(Dufresne M et al., Physiol Rev 2006, 86: 805-847)、これは受容体への結合にとって必須であることが証明されている(Tracy HJ et al., Nature 1964, 204: 935-938)。親ペプチドの生理学的半減期が非常に短いために、医療への適用のために鎖状アミノ酸配列を代謝的に安定化させる該ペプチドの追加の合成による修飾が一般的に必要とされる(Fani M et al., Theranostics 2012, 2: 481-501)。このような修飾は、放射性標識されたCCK及びガストリン類似体についても探究されている(Roosenburg S et al., Amino Acids 2011, 41: 1049-1058)。Asp-Tyr-Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2(CCK8)及びLeu-Glu-Glu-Glu-Glu-Glu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2(ミニガストリン、MG)に基づいた放射性リガンドの他に、非ペプチド性リガンドも提案されている(Wayua C et al., J Nucl Med 2015, 56: 113-119)。CCK2R特異的な腫瘍への取り込みが、蛍光CCK2R標的化MG類似体(dQ-MG-754)を用いての光学的イメージングによって、結腸直腸腺癌細胞から得られた腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおいても近年証明されている(Kossatz S et al., Biomaterials 2013, 34: 5172-5180)。細胞毒性薬物をCCK2R陽性腫瘍に選択的に送達するチューブリシンBにコンジュゲートさせた強力なCCK2RリガンドのZ-360を使用することによって、腫瘍の退縮を前臨床動物モデルにおいて観察することができた(Wayua C et al., Mol Pharm 2015, 12: 2477-2483)。
【0002】
放射性標識された[ジエチレントリアミン五酢酸0、D-Glu1]ミニガストリン(DTPA-MG0)を使用して、良好な腫瘍標的化特性が得られたが、腎臓への非常に高い取り込みも観察され、これにより、90Yで標識されたDTPA-MG0を用いて処置された患者において深刻な腎臓の副作用が生じた(Behe M et al., Biopolymers 2002, 66: 399-418)。しかしながら、111In-DTPA-MG0は、MTC及びSCLCの患者における腫瘍検出においては、ソマトスタチン受容体シンチグラフィー及び2-デオキシ-2-[18F]フルオロ-D-グルコース陽電子放射断層撮影(FDG PET)よりも優れていることが証明され、ソマトスタチン受容体発現が低い神経内分泌腫瘍においてもさらに価値があることが示されている(Gotthardt M et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 2006, 33: 1273-1279; Gotthardt M et al., Endocr Relat Cancer 2006, 13: 1203-1211)。
【0003】
切断短縮された111In標識ペプチド類似体である[1,4,7,10-テトラアザシクロドセカン-1,4,7,10-四酢酸0、D-Glu1、DesGlu2~6]ミニガストリン(DOTA-MG11)を用いて、有意に低減した腎臓への取り込みが動物試験において示され(Behe M et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 2005: 32, S78)、最初の臨床試験において確認された(Froberg AC et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 2009, 36: 1265-1272)。しかしながら、酵素的分解に対する明らかに低減した安定性及びインビボにおける5分間未満という短い生物学的半減期のために(Breeman WA et al., Nucl Med Biol 2008, 35: 839-849)、111In-DOTA-MG11では低い診断有効性しか観察されなかった。腎臓への滞留を低減させつつ、酵素に対する安定性を向上させ、特異的な受容体標的化を改善させるために、該ペプチドのN末端領域における、該ペプチド配列の様々な修飾が試みられている(Aloj L et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 2011, 38: 1417-1425; Laverman P et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 2011, 38: 1410-1416)。C末端領域においても非常に僅かな修飾しか試みられておらず、受容体の親和性の減少に関連したメチオニンの酸化を防ぐための、ノルロイシン又はホモプロパルギルグリシンなどの非天然アミノ酸によるメチオニンの置換に限定されている(Mather SJ et al., J Nucl Med 2007, 48: 615-622; Roosenburg S et al., Bioconjug Chem 2010, 21: 663-670)。しかしながら、177Luで標識されたこれらの様々な新規ペプチド類似体を注射したBALB/cマウスの血液及び尿の分析は、注射から10分後にすでに、インタクトな放射性リガンドを全く検出することができなかったことを示した(Ocak M et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 2011, 38: 1426-1435)。また近年、非標準アミノ酸のメトキシニン(methoxinine)を使用して、酸化感受性のメチオニン残基を置換し、MG類似体を化学的に安定化させたが、しかしながら生物学的半減期は改善されなかった(Grob NM et al., J Pept Sci 2017, 23: 38-44)。上記試験により、これまでに採用された化学的修飾が、インビボにおける生物学的半減期及び標的化特性を改善することに成功していないことが明らかとなる。
【0004】
本発明者らは以前、それぞれMGS1及びMGS4と称される、111In-DOTA-DGlu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Met-Asp-1Nal-NH2及び111In-DOTA-DGlu-Ala-Tyr-Gly-Trp―(N-Me)Nle-Asp―(N-Me)Phe-NH2という構造を有する、111Inで標識された2つのペプチド類似体を作製した(Klingler M et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 2017, 44: S228)。これらのペプチド類似体は、DOTA-MG11と比べて血清中において向上した安定性を示した。しかしながら、細胞内への取り込み及び特異的な受容体標的化に関するさらなる改善が所望された。それ故、本発明者らは、さらなるペプチド模倣体を開発し、酵素に対するそれらの安定性、受容体への親和性、及び特異的な受容体標的化(インビトロにおける細胞内への取り込み及びインビボにおける腫瘍への取り込みを含み、腎臓における滞留も評価する)を調べた。本発明者らは驚くべきことに、CCK2Rを標的化するペプチド模倣体の新規なグループが、酵素による分解に対して優れた安定性を有し、同時にインビボにおける改善された腫瘍への取り込み及び滞留を示すことを発見した。いずれかの特定の理論に束縛されるものではないが、改善された腫瘍への取り込み及び滞留は、少なくとも部分的には、改善された細胞への取り込みに起因すると現在考えられている。
【0005】
発明の概要
本発明の目的は、CCK2R標的化ペプチド模倣体の腎臓への少ない滞留を維持しつつ、血清中半減期、好ましくはまたインビボにおける安定性、細胞への取り込み、及び腫瘍標的化特性を改善させることである。この目的は、本発明に従って、本発明の以下の実施態様及び局面によって達成される。
【0006】
第一の実施態様では、本発明は、X1-X2-Asp-X3配列(X1は、疎水性アミノ酸、例えばPhe又はTrpであり、X2は、Metとの構造的類似性を有する疎水性アミノ酸、例えばLeu又はNleであり、X3は、Pheとの構造的類似性を有する非天然疎水性アミノ酸、例えば1Nal又は2Nalである)を有するアミノ酸ポリマーを含むペプチド模倣体を提供し、該ペプチド模倣体は、5~50アミノ酸長を有する。
【0007】
好ましい実施態様では、本発明のペプチド模倣体は、X4-X5-X6-X7-X1-X2-Asp-X3配列(X4は、Leu、又は別の疎水性アミノ酸、例えばPro、又は任意のタンパク質構成荷電アミノ酸、例えばArg、Asp、Lys、His、又はGlu、好ましくはD型のものであり、X5は、Ala、β-Ala、Tyr、又はProであり、X6は、Tyr、Pro、Phe、Met、又はMetとの構造的類似性を有する疎水性アミノ酸、例えばLeu又はNleであり、X7は、Gly、Thr、Ser、Ala、β-Ala、又はProである)を有するアミノ酸ポリマーを含む。さらなる実施態様では、N末端にコンジュゲートした化学基とX4、X4とX5、X5とX6、X6とX7、X7とX1、X1とX2、X2とAsp、及びAspとX3の間の結合(-)の少なくとも1つは、イソペプチド結合又は疑似ペプチド結合、例えば-NHCO-、-CONCH3-、又は-CH2NH-である。好ましくは、C末端はアミド化されている。好ましくは、該ペプチド模倣体は8~13アミノ酸を含む。いくつかの実施態様では、該ペプチド模倣体は、レポーター基又は細胞毒性基を含む。いくつかの実施態様では、レポーター基又は細胞毒性基は、ペプチド模倣体に含まれるキレート剤に配位している。いくつかの実施態様では、レポーター基又は細胞毒性基は、ペプチド模倣体に含まれる補欠分子族の一部である。好ましくは、レポーター基又は細胞毒性基は、放射性核種である。
【0008】
別の実施態様では、本発明は、アミノ酸ポリマーを合成する工程を含む、本発明のペプチド模倣体を生成する方法を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、本発明のペプチド模倣体を含む医薬組成物又は診断用組成物を提供する。
【0010】
本発明はまた、レポーター基又は細胞毒性基を細胞に送達するための、本発明のペプチド模倣体の使用を提供する。
【0011】
別の局面では、本発明は、細胞を標的化及びイメージングする方法を提供し、ここでの該方法は、a)細胞を本発明のペプチド模倣体と接触させる工程(ここでのペプチド模倣体はレポーター基を含む)、及びb)細胞と接触しているレポーター基を可視化する工程を含む。
【0012】
好ましい実施態様では、接触は、本発明のペプチド模倣体(該ペプチド模倣体はレポーター基を含む)を、患者に(好ましくは該患者はがんを有する)投与する工程を含む。
【0013】
本発明はまた、治療法に使用するための本発明のペプチド模倣体を提供する。
【0014】
本発明はまた、がん(好ましくは、該がんは腫瘍細胞表面上にCCK2Rを発現しているがんである)の処置に使用するための本発明のペプチド模倣体を提供する。
【0015】
本発明はさらに、診断、好ましくはがんの診断、より好ましくは本明細書に記載の種類のがんの診断に使用するための、本発明のペプチド模倣体を提供する。
【0016】
好ましい実施態様では、本発明のペプチド模倣体は、CCK2Rに特異的に結合する。CCK2Rへの特異的な結合は、CCK2Rを発現していない細胞及び組織を上回る、CCK2Rを発現している細胞及び組織の標的化を可能とする。本発明のペプチド模倣体のこの特徴は、診断及び治療の目的に、例えば、特定の種類のがん、特にCCK2Rを発現しているがんの診断及び処置に有用である。しかしながら、本発明の教義は、がんに限定されず、CCK2Rの発現を伴うあらゆる疾患に関する。特に、本発明のペプチド模倣体は、診断及び治療の目的に有用である。なぜなら、それらはCCK2Rを発現している細胞による、細胞への高いレベルの取り込み(細胞内への内部移行)を示すからである。さらに、本発明のペプチド模倣体は、特に分解に対して、特にプロテアーゼによる血清中での分解に対して、好ましくはインビボにおける様々なタンパク質分解酵素による代謝による分解に対して安定であるために有用である。さらに、本発明のペプチド模倣体は、腎臓に蓄積しないために、又は本発明のペプチド模倣体を用いて処置された患者に有害ではない低いレベルまでしか腎臓に蓄積しないために、有用である。
【0017】
上記の実施態様は、本発明の特に好ましい実施態様である。上記の実施態様の任意の組合せ、又はその中のそれぞれの技術的特色も、本明細書において本発明の一部として開示されることが強調される。当業者は、本発明は上記に明確に列挙されている実施態様だけに限定されず、上記又は下記において明示して開示されていない組合せも含むことを理解している。このような組合せは、例えば、上記の本発明の局面、実施態様、又は特色を、本発明の詳細な説明において以下に開示されている本発明の態様、実施態様、又は特色と組合せることから得られる。当業者は、事実、上記の実施態様が、以下にさらに示されている詳細な説明の対応する章と共に、並びに、本出願に示された実施例と共に考慮されるべきであることを理解するだろう。さらに、本明細書に示される任意の表題は、一般的に、表題の下で開示されている主題に限定されると捉えられるべきではなく、すなわち、ある表題の下で開示された主題は、異なる表題の下で記載された主題と組み合わせて解読され得る。
【0018】
本発明の他の局面、実施態様、特色、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。しかしながら、詳細な説明及び具体的な実施例は、本発明の好ましい実施態様を示しているが、例証のためだけに示されていると理解されるべきである。なぜなら、本発明の精神及び範囲内で様々な変更及び改変が、詳細な説明から当業者には明らかとなろうからである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明は、以下の章でより詳細に説明され、以下に示される添付図面において例証されるだろう。
【
図1-1】ヒト血清中で
111Inで標識された本発明のペプチド模倣体を24時間インキュベートした後にラジオHPLCによって分析した場合の、
111In-DOTA-MG11及び
111In-DOTA-MGS1と比較した、ヒト血清中の酵素的分解に対する安定性:放射性標識後の放射性化学物質の純度(点線)、ヒト血清中におけるインキュベート後のラジオHPLC(実線)。
【
図1-2】ヒト血清中で
111Inで標識された本発明のペプチド模倣体を24時間インキュベートした後にラジオHPLCによって分析した場合の、
111In-DOTA-MG11及び
111In-DOTA-MGS1と比較した、ヒト血清中の酵素的分解に対する安定性:放射性標識後の放射性化学物質の純度(点線)、ヒト血清中におけるインキュベート後のラジオHPLC(実線)。
【
図2】A431-CCK2R細胞及びA431モック細胞上で2時間インキュベートした後の、
111In-DOTA-MG11、
111In-PP-F11、
111In-PP-F11N、
111In-DOTA-MGS1、及び
111In-DOTA-MGS4と比較した、
111Inで標識された本発明のペプチド模倣体の細胞内部移行。
【
図3】A431-CCK2R細胞及びA431モック細胞上で2時間インキュベートした後の、本発明のペプチド模倣体の細胞内部移行。A)
111In、
68Ga、及び
177Luで放射性標識されたDOTA-MGS5、並びに、
99mTcで標識されたHYNIC-MGS5、並びに、B)
177Luで放射性標識されたDOTA-MGS10、PP-F11、及びPP-F11N、並びにC)
68Gaで放射性標識されたDOTA-MGS12。
【
図4】A431-CCK2R及びA431モックの腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける、注射の4時間後の
111In-DOTA-MGS1及び
111In-DOTA-MGS4と比較した、選択された
111Inで標識された本発明のペプチド模倣体の生体内分布。数値は、1gあたりに注射された活性の比率として表現される(%IA(injected activity)/g;平均値±標準偏差、n=4;
111In-DOTA-MGS1及び
111In-DOTA-MGS4、n=3)。
【
図5】A431-CCK2R及びA431モックの腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける、注射の1時間後又は4時間後の様々な時点についての、
111In、
68Ga、及び
177Luで放射性標識されたペプチド模倣体のDOTA-MGS5、並びに
99mTcで標識されたHYNIC-MGS5の生体内分布。数値は、%IA/gとして表現される(平均値±標準偏差、n=4)。
【
図6-1】注射の30分後の
177Lu-PP-F11及び
177Lu-PP-F11Nと比較した、A)注射の10分後の
111Inで標識された本発明のペプチド模倣体、及びB)例示的な
177Luで標識された本発明のペプチド模倣体の静脈内注射後に、BALB/cマウスから採取された血液試料のラジオHPLCによって分析した場合の、インビボにおける酵素的分解に対する安定性:放射性標識後の放射性化学物質の純度(点線)、血液試料のラジオHPLC(実線)。
【
図6-2】注射の30分後の
177Lu-PP-F11及び
177Lu-PP-F11Nと比較した、A)注射の10分後の
111Inで標識された本発明のペプチド模倣体、及びB)例示的な
177Luで標識された本発明のペプチド模倣体の静脈内注射後に、BALB/cマウスから採取された血液試料のラジオHPLCによって分析した場合の、インビボにおける酵素的分解に対する安定性:放射性標識後の放射性化学物質の純度(点線)、血液試料のラジオHPLC(実線)。
【0020】
発明の詳細な説明
本明細書において引用されている、特許、特許出願、及び科学的刊行物を含むがこれらに限定されない、全ての刊行物が、まるで各々の個々の刊行物が具体的にかつ個々に参照により組み入れられると示されているかのように、全ての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0021】
「含んでいる」という用語並びに「含む」及び「含まれる」などの他の文法形の使用は、限定するものではない。「含んでいる」、「含む」、及び「含まれる」という用語は、本発明の実施態様の制限のない記載を言及していると理解されるべきであり、これは、明記された技術的特色の他に追加の技術的特色を含んでいてもよいが、含む必要はない。同じような意味で、「関与している」という用語並びに「関与する」及び「関与される」などの他のそれぞれの文法形は、限定するものではない。同じことが、「含んでいる」という用語及び他の文法形、例えば「含む」及び「含まれる」にも該当する。説明全体における章の表題は、構成目的のためだけのものである。特に、それらは、その中に記載されている様々な実施態様について限定するためのものではなく、ある副題の下に記載された実施態様(及びその中の特色)は、別の副題の下で記載された実施態様(及びその中の特色)と自由に組み合わせてもよいと理解されるべきである。さらに、「含んでいる」、「関与している」及び「含んでいる」という用語、及びその任意の文法形は、明確に列挙された特色に追加された特色を含む実施態様をもっぱら指すと解釈されるべきではない。これらの用語は同様に、明記されたそうした特色のみからなる実施態様も指す。
【0022】
本明細書において使用する「ペプチド模倣体」、「ペプチド類似体」又は「ペプチド誘導体」又は「ペプチドコンジュゲート」という用語は、少なくとも1つの非天然アミノ酸、疑似ペプチド結合、又はアミノ酸とは異なる化学的部分、例えばレポーター基又は細胞毒性基(キレート剤、補欠分子族、リンカー、又は薬物動態修飾因子も含む)を含む、2つ以上のアミノ酸のポリマーを含む化合物を指す。本明細書において定義されているようなペプチド模倣体は一般的に、天然ペプチドの生物学的活性を模倣する。今回の場合では、本発明のペプチド模倣体は、ガストリンなどの天然CCK2RリガンドがCCK2Rへの結合能を有するという意味での能力を模倣する。
【0023】
本明細書において使用する「アミノ酸ポリマー」という用語は2つ以上のアミノ酸のポリマーを指す。
【0024】
「ペプチド」という用語は、アミド結合によって接続された、L型の2つ以上のタンパク質構成アミノ酸のポリマーを指す。
【0025】
本明細書において使用する「アミノ酸」という用語は、そのモノマー状態において少なくとも1つのアミン官能基(-NH2)と少なくとも1つのカルボキシル官能基(-COOH)を含有している化合物を指す。ペプチド結合を通して別のアミノ酸に結合している場合、アミノ酸のアミン基又はカルボキシル基は、他のアミノ酸のアミン基又はカルボキシル基とアミド基-CONH-を形成するだろう。アミノ酸が、以下に記載されているように、疑似ペプチド結合を通して、別のアミノ酸にコンジュゲートしている場合、アミン基又はカルボキシル基は、疑似ペプチド結合の性質に応じて、他の化学的部分によって置換されていてもよい。好ましくは、本明細書において使用する「アミノ酸」という用語は、α-アミノ酸又はβ-アミノ酸を指す。本明細書において使用する「アミノ酸」という用語は、タンパク質構成アミノ酸のアラニン(Ala);アルギニン(Arg);アスパラギン(Asn);アスパラギン酸(Asp);システイン(Cys);グルタミン(Gln);グルタミン酸(Glu);グリシン(Gly);ヒスチジン(His);イソロイシン(Ile);ロイシン(Leu);リシン(Lys);メチオニン(Met);フェニルアラニン(Phe);プロリン(Pro);セリン(Ser);トレオニン(Thr);トリプトファン(Trp);チロシン(Tyr);バリン(Val)及びセレノシステイン(Sec)を含む。本明細書において使用する「アミノ酸」という用語は非天然アミノ酸も含む。
【0026】
本出願の意味における「非天然アミノ酸」は、天然に存在しているか又は化学合成される非タンパク質構成アミノ酸、例えば、ノルロイシン(Nle)、メトキシニン、ホモプロパルギルグリシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、及び他のアミノ酸類似体、例えばLiu CC, Schultz PG, Annu Rev Biochem 2010, 79: 413-444及びLiu DR, Schultz PG, Proc Natl Acad Sci U S A 1999, 96: 4780-4785に記載されているものなどである。本明細書において使用する非天然アミノ酸は、例えば、D型のタンパク質構成アミノ酸、例えばDGluであり得る。追加の考えられる非天然アミノ酸は、パラ-、オルト-、又はメタ-置換フェニルアラニン、例えばパラ-エチニルフェニルアラニン、4-Cl-フェニルアラニン(Cpa)、4-アミノ-フェニルアラニン、及び4-NO2-フェニルアラニン、ホモプロリン、ホモアラニン、β-アラニン、1-ナフチルアラニン(1Nal)、2-ナフチルアラニン(2Nal)、p-ベンゾイル-フェニルアラニン(Bpa)、ビフェニルアラニン(Bip)、ホモフェニルアラニン(hPhe)、ホモプロパルギルグリシン(Hpg)、アジドホモアラニン(Aha)、シクロヘキシルアラニン(Cha)、アミノヘキサン酸(Ahx)、2-アミノブタン酸(Abu)、アジドノルロイシン(Anl)、tert-ロイシン(Tle)、4-アミノ-カルバモイル-フェニルアラニン(Aph(Cbm))、4-アミノ-ヒドロオロチル-フェニルアラニン(Aph(Hor))、S-アセトアミドメチル-L-システイン(Cys(Acm))、3-ベンゾチエニルアラニン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸(Sta)である。これらの非天然アミノ酸の中のいくつかは、ソマトスタチン類似体及びボンベシン類似体についてすでに探究されている(Fani M et al., J Nucl Med 2011, 52: 1110-1118; Ginj M et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2006, 103: 16436-16441; Ginj M et al., Clin Cancer Res 2005, 11: 1136-1145; Mansi R, J Med Chem 2015, 58: 682-691)。
【0027】
本明細書において使用する「疎水性アミノ酸」という用語は、生理学的pH(約pH7.4)において正味ゼロの荷電を有するアミノ酸を指す。疎水性アミノ酸は、タンパク質構成性疎水性アミノ酸であっても又は非天然疎水性アミノ酸であってもよい。タンパク質構成性疎水性アミノ酸は、例えば、セリン、トレオニン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、又はトリプトファンである。好ましいタンパク質構成性疎水性アミノ酸は、プロリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンである。非天然疎水性アミノ酸は、例えば、ノルロイシン(Nle)、メトキシニン、tert-ロイシン(Tle)、1-ナフチルアラニン(1Nal)、2-ナフチルアラニン(2Nal)、3-ベンゾチエニルアラニン、p-ベンゾイルーフェニルアラニン(Bpa)、ビフェニルアラニン(Bip)、ホモフェニルアラニン(hPhe)、ホモプロパルギルグリシン(Hpg)、アジドホモアラニン(Aha)、シクロヘキシルアラニン(Cha)、アミノヘキサン酸(Ahx)、2-アミノブタン酸(Abu)、アジドノルロイシン(Anl)、2-アミノオクチン酸(Aoa)、ノルバリン(Nva)、パラ-エチニルフェニルアラニン、4-Cl-フェニルアラニン、ホモプロリン、及びホモアラニンである。
【0028】
本明細書において使用する「Metとの構造的類似性を有する疎水性アミノ酸」は、Metと同じような分子幾何学を有する及び/又はMetの生物学的等価体である、上記に定義されているような疎水性アミノ酸である。特に、本発明の脈絡において、Metとの構造的類似性を有する非天然疎水性アミノ酸を、細胞へのペプチド模倣体の十分な取り込みを維持しつつ、X2位及び/又はX6位に挿入することができる。細胞へのペプチド模倣体の取り込みが、実施例5に記載されているようなアッセイにおいて、全放射活性の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約95%である場合、細胞へのペプチド模倣体の十分な取り込みが維持されている。本明細書において使用する「Metとの構造的類似性を有する疎水性アミノ酸」は、タンパク質構成性疎水性アミノ酸又は非天然疎水性アミノ酸、好ましくはNle又はLeuであり得る。
【0029】
本明細書において使用する「Pheとの構造的類似性を有する非天然疎水性アミノ酸」は、Pheと同じような分子幾何学を有する及び/又はPheの生物学的等価体である、上記に定義されているような非天然疎水性アミノ酸である。特に、本発明の脈絡において、Pheとの構造的類似性を有する非天然疎水性アミノ酸を、細胞へのペプチド模倣体の十分な取り込みを維持しつつ、X3位に挿入することができる。細胞へのペプチド模倣体の取り込みが、実施例5に記載されているようなアッセイにおいて、全放射活性の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約95%である場合に、細胞へのペプチド模倣体の十分な取り込みが維持されている。好ましくは、本明細書において使用する「Pheとの構造的類似性を有する非天然疎水性アミノ酸」は、1Nal又は2Nalである。
【0030】
いくつかの実施態様では、本発明のペプチド模倣体は、実施例5に記載されているようなアッセイにおいて、全放射活性の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約95%の程度まで、細胞への取り込み(すなわち、細胞膜への結合及び細胞内への内部移行)を示す。
【0031】
いくつかの実施態様では、本発明のペプチド模倣体は、CCK2Rに特異的に結合する。本発明のペプチド模倣体の結合親和性は、CCK2Rに対する、CCK8、ミニガストリン、又はペンタガストリンの結合親和性の少なくとも約2%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、又は約100%であり得る。本発明のいくつかの実施態様では、ペプチド模倣体の結合親和性は、CCK2Rに対するCCK8、ミニガストリン、又はペンタガストリンの結合親和性より高くさえあり得、例えば、実施例4に記載されているようなアッセイにおいて、CCK2Rに対する、CCK8、ミニガストリン、又はペンタガストリンの結合親和性の少なくとも約110%、約120%、約130%、約140%、約150%、約160%、約170%、約180%、約190%、約200%、約500%、約1000%、約1500%、又は約2000%であり得る。本発明の脈絡におけるCCK2Rに対する特異的結合は、CCK2Rに対する、本発明のペプチド模倣体の結合を意味し、これはCCK2Rの同族リガンド、例えばガストリン、又は同族リガンドの放射性標識変異体、例えば[125I]Tyr12標識ガストリン-Iで置き換えられ得る。半最大阻害濃度(IC50)は、上記において説明されているようなこの特異的結合の尺度であり、実施例4に記載のようなアッセイから得ることができる。
【0032】
本発明による結合親和性は、半最大阻害濃度(IC50)を測定することによって決定され、ここでの結合親和性とIC50値とは逆の相関を示し、このことは、結合親和性は、IC50値が減少するにつれて増加し、結合親和性はIC50値が増加するにつれて減少することを意味する。それ故、約50%の結合親和性は、IC50値が、CCK2Rに対するCCK8、ミニガストリン、又はペンタガストリンのIC50値の約2倍であることを意味する。
【0033】
本明細書において使用する「荷電アミノ酸」という用語は、生理学的pH約7.4においてゼロではない正味荷電を有するアミノ酸を含み、タンパク質構成アミノ酸及び非天然アミノ酸、例えば、タンパク質構成アミノ酸のArg、Lys、His、Glu、及びAspを含む。
【0034】
ペプチド模倣体の構造は、当業者には公知である3文字アミノ酸コードで示され、左にあるペプチド模倣体のN末端(アミノ末端)から始まり、右にあるペプチド模倣体のC末端で終わる。例えば、4つのアミノ酸X4、X5、X6、及びX7からなる、テトラペプチド模倣体又はペプチド「X4-X5-X6-X7」は、N末端にアミノ酸X4を有し、C末端にアミノ酸X7を有する。ハイフン「-」は、2つの個々のアミノ酸の間の、例えばX4とX5の間の化学結合を示す。
【0035】
本発明のペプチド模倣体の2つのアミノ酸を接続する化学結合は、ペプチド結合、すなわちアミド結合(-CONH-)であってもよい。本明細書において使用するペプチド結合は、あるアミノ酸のα炭素に付着したアミノ基と、別のアミノ酸のα炭素に付着したカルボキシル基との間に形成されてもよい。ペプチド結合はまた、アミノ基とカルボキシル基との間に形成されていてもよく、その中の1つはアミノ酸のα炭素に付着していないが、アミノ酸の側鎖に(イソペプチド結合)、例えばリシンの側鎖におけるアミノ基に付着している。化学結合はまた疑似ペプチド結合であってもよい。好ましい実施態様では、ペプチド模倣体の2つのアミノ酸を接続する化学結合は、アミド結合である。
【0036】
本明細書において使用する「疑似ペプチド結合」という用語は2つのアミノ酸を接続し、かつアミド結合(-CONH-)ではない、結合を指す。疑似ペプチド結合はまた、アミド化されたC末端に含まれていてもよい。当技術分野において公知である任意の疑似ペプチド結合、例えば、-CH2NH-、-CONRCH2-、-CONCH3-(後者はN-Meとも称される)、又は-CONR-が本発明の脈絡において考えられ、ここでのRは、アルキル、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1-メチル-2-メチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、又は1-エチルプロピルである。
【0037】
本明細書において、2つのアミノ酸間の化学結合の実体は、結合を通して接続されているアミノ酸間にある括弧又は角括弧で示され得る(例えばX4-(N-Me)X5)。この場合、2つのアミノ酸X4及びX5は、-CONCH3-という構造で示される疑似ペプチド結合によって接続され、ここでのアミド窒素はメチル化されている。2つのアミノ酸X4とX5及び疑似ペプチド結合のN-Meについて例示的に示されている以下のスペルは、疑似ペプチド結合の性質を示すために、本明細書において互換的に使用されている:「X4-(N-Me)-X5」、「X4-(N-Me)X5」及び「X4(N-Me)-X5」。アルキルエステル、アルキルエーテル、及び尿素結合も、疑似ペプチド結合として考えられる。他の疑似ペプチド結合、例えば1,2,3-トリアゾール(Mascarin A et al., Bioconjug Chem 2015, 26: 2143-2152)又は他のアミド結合の生物学的等価体も、ペプチド模倣体を安定化させ、腫瘍標的化を改善することが示されているが、これらも考えられる。
【0038】
いくつかの実施態様では、疑似ペプチド結合の存在は、当技術分野において一般的に使用されているように「psi」という用語によって示される。例えば、X4-psi[CH2NH]-X5」は、2つのアミノ酸X4及びX5が、疑似ペプチド結合である-CH2NH-を介して接続されていることを示す。いくつかの実施態様では、疑似ペプチド結合は、-psi[CH2-NH-CO-NH]-、-psi[CH2NH]-、-psi[CH2CH2]-、-psi[CS-NH]-、又は-psi[Tz]-であり得る。
【0039】
さらに好ましい疑似ペプチド結合は、-COO-、-COS-、-COCH2-、-CSNH-、-CH2CH2-、-CHCH-、-CC-、-NHCO-、-CH2S-、-CH2-NH-CO-NH-、及び-CH2O-である。
【0040】
本発明の脈絡において、L-アミノ酸及びD-アミノ酸は同等に考えられる。本発明のどのアミノ酸も、特記しない限り、L型又はD型で存在し得る。L型は、アミノ酸の名称の直前に「L」を列記することによって示され、D型は、アミノ酸の名称の直前に「D」を列記することによって示される。例えば、「DGlu」は、D型のアミノ酸グルタメートを指し、「LGlu」は、L型のアミノ酸グルタメートを指す。好ましい実施態様では、ペプチド模倣体の1つの、それ以上の、又は全てのアミノ酸のエナンチオマー形はL型である。例えば、命名法が、例えば、「-Asp-」の場合のように、両方のエナンチオマー形を包含している場合、好ましいエナンチオマー形はL型(「-LAsp-」におけるように)である。
【0041】
本発明のペプチド模倣体の結晶形も考えられ、例えば、ペプチド模倣体は、N末端をC末端に、N末端若しくはN末端アミノ酸の側鎖をアミノ酸側鎖に、又は、C末端若しくはC末端アミノ酸の側鎖をアミノ酸側鎖若しくは2つの異なるアミノ酸の2つの側鎖に連結させることによって環状化させてもよい。
【0042】
本発明のいくつかの実施態様では、N末端は、リンカー、スペーサー、キレート剤、又は補欠分子族にコンジュゲートされ、C末端はアミド化されている。
【0043】
「キレート剤」という用語は当技術分野におけるのと同様に使用され、金属イオンとキレート形成することのできる有機化合物を指す。
【0044】
「補欠分子族」という用語は、二官能性標識剤とも称されるが、これは当技術分野におけるのと同様に使用され、例えば放射性核種を用いて容易に放射性標識され、かつ放射性標識前又は放射性標識後にアミノ酸ポリマーなどの生体分子にコンジュゲートされることができ、かつキレート剤ではない、有機低分子を指す。一般的に、補欠分子族は、生体分子内に存在する、アミン、チオール、又はカルボン酸の官能基にコンジュゲートしている。また、クリックケミストリーを介したコンジュゲーションも考えられる。
【0045】
本発明の好ましい実施態様では、ペプチド模倣体のC末端(カルボキシ末端)は、例えば、タンパク質分解を低減させ、保存可能期間を延長させ、及び/又は細胞への取り込みを改善するために修飾されている。C末端は、例えば、-NR’R’’基を用いてアミド化され得、ここでのR’及びR’’は独立して、水素、又は本明細書において定義されているような置換されているか若しくは置換されていないアルキルである。いくつかの実施態様では、R’及びR’’は独立して、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、又はヘキシルである。いくつかの好ましい実施態様では、本発明のペプチド模倣体は、-NH2基によりC末端がアミド化されている。C末端はまた、-C(O)OR’’’という種類のエステルを用いて修飾されていてもよく、ここでのR’’’は、本明細書において定義されているような置換されているか又は置換されていないアルキル、例えば、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、又はヘキシルであり得る。
【0046】
本明細書において使用する「アルキル」という用語は、1~20(C1~C20)、好ましくは1~15(C1~C15)、より好ましくは1~10(C1~C10)、最も好ましくは1~5(C1~C5)の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素を指す。例えば、「アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1-メチル-2-メチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、及び1-エチルプロピルを指し得る。
【0047】
「アルキル」基は、例えば、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、及び臭素、アミン、例えば一級アミン(-NH2)、一級アミド、ヒドロキシル(-OH)、さらに酸素含有官能基、硫黄含有官能基又は窒素含有官能基、ヘテロ環、又はアリール置換基、例えばフェニル及びナフチルで置換されていてもよい。
【0048】
好ましい実施態様(実施態様A)では、ペプチド模倣体のX1-X2-Asp-X3におけるAspのエナンチオマー形は、L型(X1-X2-LAsp-X3)である。
【0049】
別の好ましい実施態様(実施態様B)では、X1-X2-Asp-X3のX2とAspの間の結合は、-CONCH3-(N-Me、NMe)ではない。
【0050】
さらに好ましい実施態様(実施態様C)では、X1-X2-Asp-X3のX2とAspの間の結合は、アミド結合である。
【0051】
好ましい実施態様(実施態様D)では、X1-X2-Asp-X3のX1とX2の間の結合は、-CONCH3-(N-Me、NMe)である。
【0052】
好ましい実施態様(実施態様E)では、X2はNleである。
【0053】
特に好ましいのは、X1-X2-Asp-X3のX1とX2の間の結合が、-CONCH3-(N-Me、NMe)であり、X2がNleである実施態様(実施態様F)である。
【0054】
好ましい実施態様(実施態様G)では、X1-X2-Asp-X3のX1とX2の間の結合は、-CONCH3-(N-Me、NMe)であり、X2はNleであり、X3は1Nal又は2Nal、好ましくは1Nalである。
【0055】
別の好ましい実施態様(実施態様H)では、X4-X5-X6-X7におけるアミノ酸残基の1つ以上がProである。
【0056】
特に好ましいのは、実施態様Gと、実施態様A、B、C、又はHとの組合せである。
【0057】
本発明は、実施態様A~Hの組合せであり、特に全ての実施態様A~Hの組合せである、ペプチド模倣体を包含する。これらの実施態様は、前の又は後続の実施態様のいずれかと組合せてもよい。特に、X1-X2-Asp-X3の配列を包含する任意の開示されているペプチド模倣体を、実施態様A~H、又はその任意の組合せと組み合わせてもよい。
【0058】
特に好ましいのは、X1-X2-Asp-X3がX1-(N-Me)Nle-(CONH)-LAsp-X3であり、X3が1Nal又は2Nalである実施態様である。
【0059】
本発明の好ましい実施態様では、ペプチド模倣体は、X4-X5-X6-X7-X1-X2-Asp-X3の配列を有するアミノ酸ポリマーを含む。好ましくは、該ペプチド模倣体は、ペプチド模倣体のC末端にこのポリマーを含む。より好ましくは、上記しているように、ペプチド模倣体のC末端は、-NH2基を用いてアミド化されている。X4はLeu又は別の疎水性アミノ酸、例えばPro、又は任意のタンパク質構成荷電アミノ酸、例えばArg、Asp、Lys、His、及びGluである。X5は、Ala、β-Ala、Tyr、又はProである。X6は、Tyr、Pro、Phe、Met、又はMetとの構造的類似性を有する疎水性非天然アミノ酸、例えばNleである。X7は、Gly、Thr、Ser、Ala、β-Ala、又はProである。アミノ酸X1、X2、及びX3は、本明細書において定義されている通りである。アミノ酸X4、X5、X6、X7、X1、X2、及びX3の上記又は下記されている実施態様から得られた任意の組合せが同等に本発明の脈絡において考えられる。
【0060】
本発明のペプチド模倣体は、5~50アミノ酸を含む。本明細書において使用する「5~50アミノ酸を含む」という用語は、該ペプチド模倣体が、50を超えるアミノ酸を有さず、かつ5未満のアミノ酸を有さないことを意味する。さらに、含んでいるという言葉(「含んでいる」)は、該ペプチド模倣体が、明示して列挙されていない、さらなる成分、例えばキレート剤、補欠分子族、リンカー、スペーサー、薬物動態修飾因子、レポーター基、又は細胞毒性基を含有していてもよいことを意味する。
【0061】
いくつかの実施態様では、前記ペプチド模倣体は、45、40、35、30、25、20、15、又は13以下のアミノ酸を含む。特に好ましいのは、5~15アミノ酸を含むペプチド模倣体である。より好ましいのは、8~13アミノ酸を含むペプチド模倣体である。本発明のいくつかの実施態様では、該ペプチド模倣体は、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15アミノ酸を含む。ペプチド模倣体に含まれる上記の最大数のアミノ酸と最小数のアミノ酸の組合せから生じるあらゆる範囲も、本発明の脈絡において考えられ、例えば、いくつかの実施態様では、該ペプチド模倣体は、8~35、8~25、又は8~20アミノ酸を含む。同等に考えられるのは、範囲の上の終点と下の終点のどちらも除外されているか、範囲の上の終点と下の終点のどちらも含まれているか、下の終点が含まれ、上の終点が除外されているか、又は、下の終点が除外され、上の終点が含まれている、上記の範囲である。この解釈は、本出願に列挙されている全ての範囲に適用される。
【0062】
本発明のいくつかの好ましい実施態様では、前記ペプチド模倣体は、8~13アミノ酸を含み、X1はTrpであり、X2はNleであり、X3は1Nal又は2Nalである。本発明のさらにより好ましい実施態様では、該ペプチド模倣体は8~13アミノ酸を含み、X1はTrpであり、X2はNleであり、X3は1Nal又は2Nalであり、X1とX2の間の結合は-CONCH3-であり、C末端は、-NH2基でアミド化されている。さらに好ましい実施態様では、該ペプチド模倣体は8~13アミノ酸を含み、X1はTrpであり、X2はNleであり、X3は1Nal又は2Nalであり、X1とX2の間の結合は-CONCH3-であり、X1-X2-Asp-X3におけるAspは、L型であり、X2とAspとの間の結合はアミド結合(-CONH-)であり、C末端はNH2基でアミド化されている。好ましくは、本明細書に記載のこれら及び全ての他のペプチド模倣体は、N末端においてキレート剤のDOTA又はHYNICを用いて修飾されている。
【0063】
本発明のいくつかの実施態様では、X1は疎水性アミノ酸である。好ましくは、X1はPhe又はTrpである。最も好ましくは、X1はTrpである。
【0064】
本発明のいくつかの実施態様では、X2は、Metとの構造的類似性を有する疎水性アミノ酸である。好ましくは、X2はLeu又はNleである。最も好ましくは、X2はNleである。
【0065】
本発明のいくつかの実施態様では、X3は、Pheとの構造的類似性を有する非天然疎水性アミノ酸である。好ましくは、X3は1Nal又は2Nalである。最も好ましくは、X3は1Nalである。
【0066】
本発明のいくつかの実施態様では、X4は、Leu又は別の疎水性アミノ酸、例えばPro、又はタンパク質構成荷電アミノ酸である。好ましくは、X4は、Leu、Arg、Asp、Asn、Lys、His、又はGluである。好ましくは、X4は、D型のアミノ酸である。最も好ましくは、X4は、DGlu又はDLys、特にDGluである。
【0067】
本発明のいくつかの実施態様では、X5は、Ala、β-Ala、Tyr、又はProである。好ましくは、X5は、Ala、Tyr、又はProである。
【0068】
本発明のいくつかの実施態様では、X6は、Tyr、Pro、Phe、Met、又はMetとの構造的類似性を有する疎水性アミノ酸、例えばLeu又はNleである。好ましくは、X6は、Tyr又はProである。
【0069】
本発明のいくつかの実施態様では、X7は、Gly、Thr、Ser、Ala、β-Ala、又はProである。好ましくは、X7は、Gly又はProである。
【0070】
以下の表は、本発明の特に好ましい実施態様を列挙する。特に好ましいのは、表1に列挙された配列を有するアミノ酸ポリマーを含むか又はからなるペプチド模倣体である。本発明の好ましい実施態様では、表1に列挙されたアミノ酸ポリマーは、該ペプチド模倣体のC末端に位置し、好ましくはC末端はアミド化されている。
【0071】
【0072】
同等に考えられるのは、表1のアミノ酸ポリマー配列の少なくとも4つの最もC末端にあるアミノ酸を含み、かつ5~50アミノ酸、好ましくは8~13アミノ酸を含む、ペプチド模倣体である。
【0073】
本発明のいくつかの実施態様では、前記ペプチド模倣体はキレート剤を含む。いくつかの実施態様では、該キレート剤はDOTA又はHYNICである。以下に示されている表2は、本発明のいくつかの好ましい実施態様を示す。本発明のいくつかの実施態様では、該ペプチド模倣体は、表2に示されるような構造の1つを含み得るか、又は表2に示されるような構造の1つからなり得る。
【0074】
【0075】
表1又は2に列挙されているようなX3は、本明細書において使用されている通りであり、好ましくは1Nal又は2Nal、最も好ましくは1Nalである。
【0076】
表1又は2に列挙されているようなX4、X5、X6、及びX7は、本明細書において使用されている通りであり、特にX4はLeu又は別の疎水性アミノ酸、例えばPro、又は任意のタンパク質構成荷電アミノ酸、例えばArg、Asp、Lys、His、及びGluであり、X5は、Ala、β-Ala、Tyr、又はProであり、X6は、Tyr、Pro、Phe、Met、又はMetとの構造的類似性を有する疎水性アミノ酸、例えばLeu又はNleであり、X7は、Gly、Thr、Ser、Ala、β-Ala、又はProである。
【0077】
表1及び2に列挙されているペプチド模倣体は、例示を用いて示されており、明示して開示されていない表1又は2に記載されている異なる修飾の組合せも考えられることが理解されるべきである。表1及び2の好ましい実施態様を以下の表3に示す。
【0078】
【0079】
表1~3では、特記されない限り、個々のアミノ酸はアミド結合を通して連結されている。好ましくは、表1~3に示されている任意のアミノ酸は、L型であり、例えば表1~3におけるAspは好ましくはLAspである。
【0080】
本発明のいくつかの実施態様では、前記ペプチド模倣体は、表2又は3に示されているような構造の1つを含み、ここでのキレート剤のDOTA又はHYNICは、放射性核種、例えば金属放射性核種、例えば225Ac、212Bi、213Bi、62Cu、64Cu、67Cu、69Cu、66Ga、67Ga、68Ga、111In、113mIn、177Lu、186Re、188Re、43Sc、44Sc、47Sc、155Tb、161Tb、99mTc、86Y、90Y、169Yb、175Ybと配位している。
【0081】
本発明の特に好ましい実施態様では、前記ペプチド模倣体は、表2又は3に示されるような構造からなり、ここでは、表2又は3に提供された情報に加えて、DOTAキレート剤は、放射性核種90Y、111In、68Ga、又は177Luと配位し、HYNICキレート剤は、放射性核種99mTcと配位している。
【0082】
本発明のペプチド模倣体は、レポーター基、細胞毒性基、光増感剤、リンカー、及び/又は薬物動態修飾因子を含み得る。好ましくは、該ペプチド模倣体は、レポーター基又は細胞毒性基を含む。
【0083】
レポーター基
本明細書において使用する「レポーター基」という用語は、イメージング法において直接的又は間接的にのいずれかで検出されることのできる任意の材料又は化学的部分であり得る。それ故、レポーター基を含むペプチド模倣体は、イメージング法に、例えば診断目的のために使用され得る。「レポーター基」という用語は、「レポーター剤」及び「標識」という用語と互換的に使用される。レポーター基は、検出可能な放射能を放出するか又は放出が引き起こされ得(例えば、放射性崩壊、蛍光励起、スピン共鳴励起などによって)、局所的な電磁場に影響を及ぼし(例えば、常磁性種、超常磁性種、フェリ磁性種、又は強磁性種)、放射線エネルギー(例えば発色団及びフルオロフォア)、粒子(液体含有小胞を含む)、重金属及びその化合物、並びに検出可能な物質を発生する部分、及びその他を吸収又は散乱する、材料又は化学的部分であり得る。
【0084】
イメージング法、例えばイメージング診断法、例えばコンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、シンチグラフィー、SPECT、PET、又は他の類似した技術などによって検出可能な多種多様な材料及び化学的部分が当技術分野から公知であり、レポーター基は、使用される予定のイメージング法に従って選択されるだろう。したがって、例えば、超音波イメージングでは、エコー源性材料、又はエコー源性材料を発生することのできる材料が通常選択されるだろう。
【0085】
レポーター基は、フルオロフォアであってもよい。本明細書において定義されているようなフルオロフォアは、当技術分野において公知であり、当業者には入手可能であり、alexaファミリーの様々な全てのメンバー、bimane、ボディパイ、ニトロベンゾキサジアゾール、ダンシル、アクリロダン、フルオレセイン、ローダミン、ランタニド、及びCye3/Cye5シリーズのメンバー(Filizola M, G Protein-Coupled Receptors in Drug Discovery, Humana Press, Springer Science+Business Media New York 2015)が挙げられるがこれらに限定されない。好ましいフルオロフォアは、例えば、近赤外線色素、例えばインドシアニングリーン、IRDye800CW、IRDye650、LS-288、又はAlexa Fluor色素(例えばAF647、AF680、及びAF488)、フルオレセイン、シアニン、及びヘミシアニン色素、例えばDy488、Dy676、及びDy754である。これらのフルオロフォアは、例えば、イメージング法において、蛍光顕微鏡検査又は蛍光誘導内視鏡検査又は蛍光誘導検査、及び光学的イメージングの脈絡において使用され得る。レポーター基はまた化学発光色素であってもよい。
【0086】
レポーター基はまた、安定な同位体であっても、又は安定な同位体を含む化学的部分であってもよい。
【0087】
レポーター基はさらに、特にX線イメージングによって検出されるための、重原子(例えば、原子重量38又はそれ以上の)であり得るか又は重原子を含有し得る。レポーター基はまた、ゼロではない核スピンの同位体(例えば19F)であり得るか、又は不対電子スピンを有し、したがって、磁気共鳴画像法にとって有用である、常磁性、超常磁性、フェリ磁性、又は強磁性特性を有する材料であり得る。レポーター基は、光イメージングにとって有用である、光散乱体(例えば着色した粒子又は未着色の粒子)、光吸収体又は発光体であり得る。磁気測定イメージングのためのレポーター基は、検出可能な磁気特性を有し;電気インピーダンスイメージングのためのレポーター基は、電気インピーダンスに影響を及ぼすだろう。レポーター基は、シンチグラフィー、SPECT、PET、又は他の類似した技術にとって有用である、放射性核種、又は放射性核種を含む化学的部分であり得る。
【0088】
本発明の脈絡において使用され得る適切なレポーター基の例、例えば、磁気酸化鉄粒子、X線造影剤を含有している小胞、キレート化した常磁性金属(例えば、Gd、Dy、Mn、Feなど)は、診断イメージングの文献から広く知られている。例えば、米国特許第4,647,447号、PCT/GB97/00067号、米国特許第4,863,715号、米国特許第4,770,183号、国際公開公報第96/09840号、国際公開公報第85/02772号、国際公開公報第92/17212号、PCT/GB97/00459、EP-A-554213号、米国特許第5,228,446号、国際公開公報第91/15243号、国際公開公報第93/05818号、国際公開公報第96/23524号、国際公開公報第96/17628号、米国特許第5,387,080号、国際公開公報第95/26205号、及び英国特許第9624918.0号を参照されたい。また、国際公開公報第98/47541号(63~66頁及び70~86頁)も参照されたい。
【0089】
レポーター基として特に好ましいのは、特に巨大環状キレート剤とキレート化する場合には、キレート化した常磁性金属イオン、例えばGd、Dy、Fe、及びMnである。
【0090】
レポーター基は、(1)キレート可能な金属又は多原子金属含有イオン(すなわちTcOなど)(ここでの金属は、高原子数の金属(例えば、37を超える原子数)、常磁性種(例えば遷移金属又はランタニド)、又は放射性同位体である)、(2)不対電子部位である共有結合した非金属種(持続的なフリーラジカルの酸素又は炭素)、高原子数の非金属、又は放射性同位体、(3)協調的な磁気挙動(例えば超常磁性、フェリ磁性、又は強磁性)を示すか又は放射性核種を含有している、多原子クラスター又は高原子数の原子を含有している結晶、あるいは(4)発色団(この用語により蛍光性であるか又は燐光性である種が含まれる)、例えば無機若しくは有機構造、特に錯化金属イオン又は広範に非局在化した電子系を有する有機基、であり得る。
【0091】
特に好ましいレポーター基の例を、以下においてより詳細に記載する。
【0092】
好ましいレポーター基は、例えば、放射性核種、例えば金属放射性核種、常磁性金属イオン、蛍光金属イオン、重金属イオン、及びクラスターイオンである。
【0093】
本発明の放射性核種は、例えば、C、N、O、F、Na、P、Sc、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Br、Rb、Sr、Y、Zr、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Te、I、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、At、Ra、Ac、Th、及びFmの放射性同位体から選択され得る。
【0094】
好ましい放射性核種としては、225Ac、198Au、199Au、212Bi、213Bi、51Cr、62Cu、64Cu、67Cu、69Cu、159Dy、166Dy、66Ga、67Ga、68Ga、159Gd、166Ho、111In、113mIn、196Ir、177Lu、189mOs、203Pb、109Pd、149Pm、151Pm、142Pr、143Pr、186Re、188Re、97Ru、43Sc、44Sc、47Sc、153Sm、117mSn、121Sn、155Tb、161Tb、99mTc、127Te、167Tm、86Y、90Y、169Yb、175Yb、及び89Zrなどがあるがこれらに限定されない金属の放射性核種が挙げられるがこれらに限定されない。好ましいレポーター基は、ハロゲンの放射性核種、例えば18F、131I、123I、124I、及び125Iなどであるがこれらに限定されない。
【0095】
診断に適用するためのγ線及び陽子線放出体としては、11C、51Cr、62Cu、64Cu、52Fe、66Ga、67Ga、68Ga、123I、124I、125I、111In、113mIn、177Lu、24Na、203Pb、97Ru、43Sc、44Sc、152Tb、155Tb、94mTc、99mTc、167Tm、86Y、及び89Zrが挙げられるがこれらに限定されない。
【0096】
治療に適用するための、α線及びβ線の放出並びにオージエ電子及び内部転換電子の放出を示す放射性核種としては、225Ac、111Ag、77As、211At、198Au、199Au、212Bi、213Bi、77Br、58Co、51Cr、67Cu、152Dy、159Dy、165Dy、169Er、255Fm、67Ga、159Gd、195Hg、161Ho、166Ho、123I、125I、131I、111In、192Ir、194Ir、196Ir、177Lu、189mOs、32P、212Pb、109Pd、149Pm、142Pr、143Pr、223Ra、186Re、188Re、105Rh、119Sb、47Sc、153Sm、117mSn、121Sn、89Sr、149Tb、161Tb、99mTc、127Te、227Th、201Tl及び90Yが挙げられるがこれらに限定されない。好ましい常磁性金属イオンとしては、遷移金属及びランタニド金属(例えば、6~9、21~29、42、43、44、又は57~71の原子数を有する金属)のイオン、特にCr、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuのイオン、特にMn、Cr、Fe、Gd,及びDyのイオン、より特定するとGdのイオンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0097】
本発明のいくつかの実施態様では、レポーター基は、特にペプチド模倣体に含まれる場合には、治療効果、例えば細胞毒性作用を全く有さない。いくつかの実施態様では、レポーター基は、治療に関連する程度までは細胞毒性作用を少なくとも有さない。当業者は、例えばイメージング法において検出されるのに十分であるが、治療効果を有さない程に十分に低い、レポーター基の投与量/放射線量を決定することができる。結果として、本発明のいくつかの実施態様、例えば、イメージング法及び任意の診断使用又は診断法において、検出には十分であるが、治療効果は有さない、レポーター基、特に放射性核種の用量が使用される。本明細書において使用する治療効果を有さないレポーター基は、「非治療的レポーター基」と称される。したがって、本発明はまた、上記のレポーター基の非治療的実施態様にも関する。例えば、本発明は、非治療的フルオロフォア、安定な同位体、又は安定な同位体を含む化学的部分、重原子、放射性核種、例えば金属放射性核種、常磁性金属イオン、蛍光金属イオン、重金属イオン、及びクラスターイオンを含む。
【0098】
イメージングに使用することのできる、放射性核種である好ましい非治療的レポーター基は、64Cu、67Ga、68Ga、123I、124I、125I、131I、111In、177Lu、203Pb、97Ru、44Sc、152Tb、155Tb、99mTc、167Tm、86Y、及び89Zrである。
【0099】
細胞毒性基
いくつかの実施態様では、ペプチド模倣体は細胞毒性基を含む。本明細書において使用する「細胞毒性基」という用語は、細胞毒性基を含むペプチド模倣体が結合しているか又はそれが内部移行している細胞の死滅を直接的又は間接的に引き起こす、任意の材料又は化学的部分を指す。
【0100】
細胞毒性基は、例えば、化学療法剤又は放射性核種であり得る。ペプチド模倣体に含まれる化学療法剤又は放射性核種が、CCK2Rを発現している細胞に内部移行した場合、CCK2R発現細胞は、化学療法剤又は放射性核種によって死滅する。いくつかの実施態様では、ペプチド模倣体が結合している細胞はまた、細胞毒性基を含むペプチド模倣体を内部移行しなくても死滅し得る。
【0101】
化学療法剤は、ビンブラスチンモノヒドラジド、チューブリシンBヒドラジド、アクチノマイシン、全トランス型レチノイン酸、アザシチジン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、インドテカン(indotecan)、インジミテカン(indimitecan)、メルタンシン、エムタンシン、バルルビシン、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビンからなる群より選択され得る。
【0102】
細胞毒性基として使用され得る好ましい放射性核種としては、金属及びハロゲンの放射性核種が挙げられる。本発明の放射性核種は、例えば、P、Sc、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、As、Br、Sr、Y、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Te、I、Pr、Pm、Sm、Gd、Tb、Y、Ho、Er、Lu、Ta、W、Re、Os、Ir、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、At、Ra、Ac、Th及びFmの放射性同位体から選択され得る。好ましい放射性核種としては、225Ac、111Ag、77As、211At、198Au、199Au、212Bi、213Bi、77Br、58Co、51Cr、67Cu、152Dy、159Dy、165Dy、169Er、255Fm、67Ga、159Gd、195Hg、161Ho、166Ho、123I、125I、131I、111In、192Ir、194Ir、196Ir、177Lu、189mOs、32P、212Pb、109Pd、149Pm、142Pr、143Pr、223Ra、186Re、188Re、105Rh、119Sb、47Sc、153Sm、117mSn、121Sn、89Sr、149Tb、161Tb、99mTc、127Te、227Th、201Tl及び90Yが挙げられるがこれらに限定されない。
【0103】
光増感剤
本発明のいくつかの実施態様では、ペプチド模倣体は光増感剤を含む。
【0104】
本明細書において使用する「光増感剤」という用語は、光に曝露された時に、毒性となるか、又は、毒性物質、例えば細胞膜及び細胞構造をはじめとする細胞材料若しくは生体分子に傷害を与える一重項酸素若しくは他の酸化性ラジカルを放出する、材料又は化学的部分を指し、このような細胞傷害又は膜傷害は最終的に細胞を死滅させ得る。本明細書において定義されているような光増感剤は当技術分野において公知であり、当業者には入手可能である。光増感剤の細胞毒性作用は、新生物疾患を含む、様々な異常又は障害の処置に使用され得る。このような処置は、光線力学療法(PDT)として知られ、これは生体の罹患部位への光増感剤の投与と、それに続く、光増感剤を活性化させ、それらを細胞毒性形へと変換する、活性化光への曝露を含み、これにより、罹患細胞は死滅するか又はそれらの増殖能は減少する。
【0105】
光増感剤は、直接的に又は間接的に、様々な機序によってそれらの効果を発揮する。したがって、例えば、ある光増感剤は、光によって活性化された時に直接的に毒性となり、一方、他の光増感剤は、毒性種、例えば、酸化性物質、例えば一重項酸素又は酸素由来フリーラジカルを発生するように作用し、これは細胞材料及び生体分子、例えば脂質、タンパク質、及び核酸などを破壊し、最終的には細胞を死滅させる。
【0106】
いくつかの実施態様では、光増感剤としては、例えば、プソラレン、ポルフィリン、クロリン、及びフタロシアニンが挙げられる。ポルフィリン光増感剤は、毒性酸素種の発生によって間接的に作用し、特に好ましい。ポルフィリンは、ヘムの合成における天然の前駆体である。特に、ヘムは、鉄(Fe2+)が、フェロケラターゼ酵素の作用によってプロトポルフィリンIX(PpIX)に取り込まれると生成される。PpIXは非常に強力な光増感剤である。本発明の脈絡において使用され得るさらなる光増感剤は、アミノレブリン酸(ALA)、シリコンフタロシアニン(Pc4)、m-テトラヒドロキシフェニルクロリン(mTHPC)、及びモノ-L-アスパルチルクロリンe6(NPe6)、ポルフィマーナトリウム、ベルテポルフィン、テモポルフィン、アミノレブリン酸メチル、アミノレブリン酸ヘキシル、レザフィリン(-PDT)、BF-200ALA、アンフィネックス(amphinex)、及びアザジピロメテンである。
【0107】
リンカー
本発明のペプチド模倣体は、本明細書において定義されているような配列を有するアミノ酸ポリマーを含む。ペプチド模倣体に含まれるアミノ酸の総数は、本明細書において定義されているように制限されている。アミノ酸ポリマーに加えて、本発明のペプチド模倣体は、レポーター基、細胞毒性基、光増感剤、キレート剤、補欠分子族、薬物動態修飾因子、リンカー、又はスペーサーなどのさらなる成分を含んでいてもよい。これらの個々の成分又は化学的部分は、共有結合、イオン結合、又は配位結合を通して、互いに又はアミノ酸ポリマーに直接接続していてもよく、例えば、レポーター基又は細胞毒性基は、配位結合を通してキレート剤と接続していてもよい。
【0108】
あるいは、上記成分は、互いに又はアミノ酸ポリマーにリンカーを通して間接的に接続していてもよい。本明細書において使用する「リンカー」という用語は、2つの個々の化学的部分を接続する化学的部分を指す。「リンカー」又は「スペーサー」という用語は、文献及び本明細書においてこのような化学的部分を説明するために互換的に使用される。リンカーは、ペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーのN末端に結合していても、ペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーのアミノ酸配列内に統合していても、又はペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーのアミノ酸の側鎖若しくは別の官能基にコンジュゲートしていてもよく、これは通常、ペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーとレポーター剤若しくは細胞毒性剤との間の分離剤として、又はペプチド模倣体の親水性及び薬物動態などに影響を及ぼす薬物動態修飾因子として使用される。例えば、本発明のレポーター基、細胞毒性基、光増感剤、キレート剤、補欠分子族、又は薬物動態修飾因子は、アミノ酸ポリマー、例えばX4-X5-X6-X7-X1-X2-Asp-X3にリンカーを通して接続されていてもよい。該リンカーは、上記の任意の成分を、ペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーのN末端、C末端、又は任意の側鎖に接続することができる。いくつかの実施態様では、該リンカーはまた、上記の成分を互いに接続してもよく、例えば、該リンカーは薬物動態修飾因子をレポーター基に接続していてもよい。
【0109】
前記リンカーは、アミノ酸、例えばGly、Ala、Gln、Glu、His(全てL型又はD型)、又はこれらの中の1つ以上のアミノ酸からなるアミノ酸ポリマー、又は任意の他の化学的部分、例えばポリエチレングリコール又は糖質、並びに、アミノヘキサノイル部分又はアミノベンゾイル部分又はピペリジン部分であり得る。いくつかの実施態様では、該リンカーは、6-アミノヘキサン酸、4-アミノ酪酸、4-アミノ-1-カルボキシメチルピペリジン若しくは尿素、又は、ペプチド模倣体に官能基を導入することを可能とする別の化学的部分であり得る。いくつかの実施態様では、該リンカーは上記のリンカーの組合せである。
【0110】
前記リンカーは、ペプチド模倣体の個々の成分の分離剤として使用され得る。該リンカーはまた、複数のペプチド模倣体の多量体コンジュゲートを形成するために使用されても、又は、例えば代替的な受容体を標的化する他のリガンドと組み合わせて使用されてもよい。該リンカーはさらに、複数のレポーター基又はレポーター基及び細胞毒性基の組合せを、該ペプチドに結合させるために使用され得る。このような例は、二価ガストリンペプチド模倣体DOTA-Gly-Ser-Cys(スクシンイミドプロピオニル-Glu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Nle-Asp-Phe-NH2)-Glu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Nle-Asp-Phe-NH2(DOTA-MGD5)(Sosabowski JK et al., J Nucl Med 2009, 50: 2082-2089)によって、又は、ガストリン放出性ペプチド受容体のアンタゴニストを標的化するデュアルモダリティの蛍光及び放射性標識リガンドDOTA-Lys(IRDye-650)-PEG4-[D-Phe6,Sta13]-ボンベシン(6-14)NH2(HZ220)(Zhang H et al., J Nucl Med 2017, 58: 29-35)によって示される。DOTA-MGD5は、マレイミドリンカーに基づいた二価MG類似体であり、腫瘍への高い取り込み及び腎臓への少ない滞留が前臨床試験において示されている。ガストリン放出性ペプチド(GRP)受容体を標的化するガストリン放出性ペプチド受容体のアンタゴニストHZ220は、ボンベシン類似体に基づき、ここではリシンの中の2つのアミンが、キレート剤DOTAと近赤外線蛍光(NIRF)色素IRDye650をコンジュゲートさせるために使用されている。68Ga標識HZ220では、PET及び光学イメージングの両方において、バックグラウンドに対する腫瘍の高い対比を達成することができた。リンカーはまた、ペプチド配列に切断可能な基を導入するために使用することができ、これにより、ペプチドコンジュゲートの一部、例えばペプチド断片、細胞毒性基、又はレポーター基を放出する。このような例は、カテプシンB切断部位によって示される(Naqvi SA et al., Cancer Biother Radiopharm 2010, 25: 89-95; Albericio F and Kruger HG, Future Med Chem 2012, 4: 1527-1231)。また、ボンベシン誘導体の177Lu-DOTA-Lys(グルコース)-4-アミノ安息香酸-BBS7-14において、グルコースと4-アミノ安息香酸の組合せなどのリンカーの組合せを使用することができる(Lim JC et al, Nucl Med Biol 2015, 42: 234-241)。
【0111】
本明細書において使用する「薬物動態修飾因子」は、ペプチド模倣体の薬物動態、例えば親水性、生分解、及びクリアランスに影響を及ぼす、化学的部分を意味する。例えば、薬物動態修飾因子は、血流中のペプチド模倣体の半減期を延長し得る。
【0112】
放射性標識されたMG類似体のDOTA-His-His-Glu-Aly-Tyr-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2(Mather SJ et al., J Nucl Med 2007, 48: 615-622)はMG11から誘導され、該ペプチドのN末端部分に2つのHis残基を含む。放射性標識されたMG類似体のDOTA-DGln-DGln-DGln-DGln-DGln-DGln-Aly-Tyr-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2、DOTA-DGln-DGln-DGln-Ala-Tyr-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2、DOTA-DGln-DGlu-DGln-DGlu-DGln-DGlu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2及びDOTA-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2はMG0から誘導され、該ペプチドのN末端部分に様々な数のDGln残基及びDGlu残基を含む(Laverman P et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 2011, 38: 1410-1416)。これらの新規ペプチド誘導体の設計は、MG0の腎臓への高い取り込みが、構造内の陰イオン性のペンタグルタミン酸配列によって引き起こされているという知識に基づいていた。正に荷電した残基及びD-アミノ酸残基の導入によって、腎臓への取り込みを低減させることができ、同時に腎臓に対する腫瘍の比率は改善された。イメージングにおけるバックグラウンドに対する高い腫瘍の対比を得るために、循環中からの放射性リガンドの迅速なクリアランスが望ましい。また、PEG又はD-アミノ酸、例えばD-Ser及びD-Glnを含む、様々な極性を有する他のスペーサーも、放射性リガンドの安定性及び腎臓に対する腫瘍の比を増加させる試みにおいて、MG類似体の薬物動態修飾因子として研究されている(Kolenc-Peitl P et al., J Med Chem 2011, 54: 2602-2609)。様々な長さの親水性かつ非荷電のスペーサーを導入することによって、血清中における安定性、腎臓への取り込み、及び腎臓に対する腫瘍の比に対する好ましい効果を観察することができた。
【0113】
レポーター基と細胞毒性基の連結
本発明のペプチド模倣体は、1つのレポーター基若しくは細胞毒性基、又は複数のレポーター基若しくは細胞毒性基を含み得る。いくつかの実施態様では、ペプチド模倣体はまた、レポーター基と細胞毒性基を含んでいてもよい。いくつかの実施態様では、レポーター基、細胞毒性基、又はその両方は、ペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーに、例えば共有結合を通して直接連結されていてもよい。他の実施態様では、レポーター基、細胞毒性基、又はその両方は、ペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーに間接的に連結されていてもよい。
【0114】
レポーター基、又は細胞毒性基、又はその両方が、ペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーに間接的に連結されている場合、それらは上記に定義されているようなリンカー若しくは薬物動態修飾因子を通して、又はキレート剤若しくは補欠分子族を通して、アミノ酸ポリマーに連結されている。例えば、フルオロフォアであるレポーター基は好ましくは、ペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーに、直接的に、又はリンカー若しくはスペーサー、例えばポリエチレングリコールを通してのいずれかで、共有結合で連結されている。一方、金属放射性核種などの放射性核種及び金属イオンは好ましくはペプチド模倣体にキレート剤を介して連結されている。ハロゲンの放射性核種は好ましくは、ペプチド模倣体に、補欠分子族を介して又はアミノ酸の側鎖の官能基を介して連結されている。
【0115】
レポーター基又は細胞毒性基は、ペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーに、N末端、C末端を介して、又はアミノ酸側鎖、例えばリシン若しくはシステインを介して、又はリンカー若しくは薬物動態修飾因子の官能基を介して、直接的に又は間接的に連結されていてもよい。好ましくは、レポーター基又は細胞毒性基は、ペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーにN末端を介して連結されている。本発明の好ましい実施態様では、レポーター基又は細胞毒性基は、ペプチドのN末端に、キレート剤又は補欠分子族を通して連結されている。特に、いくつかの実施態様では、放射性核種は、ペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーに、該ペプチドのN末端を介して連結されている。リンカーはさらに、キレート剤又は補欠分子族を、該ペプチド配列内のN末端又はアミノ酸側鎖に接続するために使用され得る。レポーター基、例えば放射性核種は、キレート剤に配位していても、又は、ペプチドコンジュゲートとコンジュゲートする前若しくは後に補欠分子族に導入されていてもよい。
【0116】
キレート剤及び補欠分子族
レポーター基又は細胞毒性基の導入のために、ペプチド模倣体は、キレート剤又は補欠分子族を含むことができる。キレート剤又は補欠分子族は、ペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーの、N末端、C末端、又は任意のアミノ酸側鎖に、又はリンカー若しくは薬物動態修飾因子に存在する官能基にコンジュゲートさせることができる。好ましくは、キレート剤又は補欠分子族は、ペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーのN末端にコンジュゲートしている。
【0117】
レポーター基又は細胞毒性基の、キレート剤又は補欠分子族への導入は、キレート剤又は補欠分子族とペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーのコンジュゲートの前又は後に実施され得る。
【0118】
いくつかの実施態様では、キレート剤は、レポーター基若しくは細胞毒性基としての、本明細書において記載されているような金属、例えば金属放射性核種と配位しているか、又は、補欠分子族は、レポーター基若しくは細胞毒性基としての、本明細書において記載されているようなハロゲン、例えばハロゲン放射性核種を含む。
【0119】
キレート剤は、金属錯体形成のための様々なドナー基、例えば酸素、窒素、硫黄、(カルボキシル、ホスホネート、ヒドロキサメート、アミン、チオール、チオカルボキシレート、又はその誘導体)を含有していてもよく、アクリル酸及び大環状キレート剤、例えばポリアミノポリカルボン酸リガンドを含む。
【0120】
いくつかの実施態様では、キレート剤は、ジエチレントリアミノ五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリス[メチレン(2-カルボキシエチル)]ホスフィン酸(TRAP)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-二酢酸(NODA)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)並びにその誘導体、例えばグルタル酸群を用いて官能基化されたDOTA又はNOTA(DOTAGA、NOTAGA)からなる群より選択される。他のキレート剤、特に放射性金属とキレート形成するためのキレート剤も考えられる。
【0121】
例えば99mTcとキレート形成するのに考えられるさらなるキレート剤としては、ジアミドジチオール(N2S2)、トリアミドチオール(N3S)、テトラアミン(N4)、及びヒドラジノニコチン酸(HYNIC)が挙げられるがこれらに限定されない。HYNICは通常、金属の配位圏と競合する共リガンドと組み合わせて使用され、この共リガンドとしては、エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(EDDA)及びトリシンが挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施態様では、有機金属水イオン99mTc(CO)3(H2O)3を使用して、水分子を一座配位、二座配位、及び三座配位キレート剤と交換することによって、安定な錯体を形成することによって、トリカルボニル錯体を作製することができる(クリック・トゥ・キレート(click-to-chelate)法も含む)。
【0122】
例えばペプチド模倣体を68Gaで標識するために有用であるさらなるキレート剤としては、N,N’-ビス[2-ヒドロキシ-5-(カルボキシエチル)ベンジル]エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(HBED-CC)、シデロホアに基づいたリガンド、例えばデスフェリオキサミン、ヒドロキシピリジノンリガンド、例えばデフェリプロン及びトリス(ヒドロキシピリジノン)(THP)及びその誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0123】
本発明の好ましい補欠分子族は、ヨウ素又はフッ素などのハロゲンの放射性核種、例えば本明細書において記載されているもので標識されている。いくつかの実施態様では、補欠分子族は、ボルトンハンター試薬、N-スクシンイミジル-5-(トリアルキルスタニル)-3-ピリジンカルボキシレート、又は放射性ヨウ素化のためのN-スクシンイミジル-4-[131I]ヨードベンゾエート([131I]SIB)からなる群より選択されるだろう。いくつかの実施態様では、補欠分子族は、4-[18F]フルオロフェナシルブロミド、N-スクシンイミジル-4-[18F]フルオロベンゾエート([18F]SFB)、N-スクシンイミジル-4-[18F]フルオロメチル)ベンゾエート、4-[18F]フルオロベンズアルデヒド、6-[18F]フルオロニコチン酸テトラフルオロフェニルエステル([18F]F-Py-TFP)、ケイ素含有構築ブロック、例えばN-スクシンイミジル3-(ジ-tert-ブチル[18F]フルオロシリル)ベンゾエート([18F]SiFB)、糖質に基づいた補欠分子族、例えば[18F]フルオロ-デオキシグルコース、好ましくは2-[18F]フルオロ-2-デオキシグルコース([18F]FDG)、及び[18F]フルオロ-デオキシマンノース、好ましくは[18F]2-フルオロ-2-デオキシマンノース、又はその誘導体、マレイミドを基盤とする及びヘテロ環メチルスルホンを基盤とする18F-合成等価体、クリックケミストリーを介した標識を可能とする18Fで標識された補欠分子族、例えば18F-アジド又は18F-アルキン、18Fで標識された有機トリフルオロボラート及び[18F]フルオロピリジンからなる群より選択されるがこれらに限定されない。いくつかの実施態様では、フッ化アルミニウム(Al18F)を使用したキレート剤に基づく標識アプローチが、放射性フッ素化のために適用される。
【0124】
本発明のさらなる局面及び実施態様
本発明はまた、本明細書に記載のような本発明のペプチド模倣体の作製法に関する。本発明のペプチド模倣体の作製は、当業者には利用可能な標準的な有機化学法及び固相ペプチド合成法によって可能である。該方法は少なくとも、ペプチド模倣体のアミノ酸ポリマーを合成する工程を含む(Behrendt R et al., J Pept Sci 2016, 22: 4-27; Jones J, Amino Acid and Peptide Synthesis, Oxford University Press, New York 2002; Goodman M, Toniolo C, Moroder L, Felix A, Houben-Weyl Methods of Organic Chemistry, Synthesis of Peptides and Peptidomimetics, workbench edition set, Thieme Medical Publishers, 2004)。
【0125】
本発明はさらに、本明細書に記載のペプチド模倣体を含む、医薬組成物及び診断用組成物に関する。本発明による医薬組成物は、CCK2R関連疾患、例えば、CCK2Rの発現又は過剰発現によって特徴付けられる疾患の処置に使用され得る。いくつかの実施態様では、本発明の医薬組成物は、がん、特に、CCK2Rの発現によって特徴付けられるようながんの処置に使用され得る。本発明のいくつかの実施態様では、本発明の医薬組成物は、化学療法剤又は放射性核種などの細胞毒性基を、CCK2Rを発現している腫瘍細胞に送達するために使用され得る。したがって、本発明の医薬組成物は、標的化がん療法のために使用され得る。
【0126】
本発明はまた、本発明の1つ以上の成分、例えば、本発明による医薬組成物若しくは診断用組成物又は本発明によるペプチド模倣体を含む、キットに関する。該キットはさらに、本発明のペプチド模倣体、医薬組成物又は診断用組成物の調製法又は使用法の説明を提供する情報リーフレットも含み得る。1つの実施態様では、該キットは、すぐに使用できる本発明の医薬組成物又は診断用組成物を含む。さらなる実施態様では、該キットは、すぐに使用できる医薬組成物又は診断用組成物を調製するに十分な2つ以上の組成物を含む。例えば、1つの実施態様では、該キットは、キレート剤を含むペプチド模倣体を含む第一の組成物と、レポーター基又は細胞毒性基を含む第二の組成物を含み得る。最終の診断用組成物又は治療用組成物を調製するために、当業者は、該キットに備えられた情報リーフレットに従い、第一の組成物と第二の組成物を合わせて、すぐに使用できる診断用組成物又は治療用組成物を作製するだろう。
【0127】
本発明の診断用組成物は、診断目的で使用され得る。本発明の診断用組成物は、診断プロセスの一部として患者に投与されることにより、例えば、CCK2R発現細胞又は組織、例えばCCK2R発現腫瘍細胞のイメージングが可能となり得る。本発明の診断用組成物は、本発明によるイメージング法などのイメージング法に、例えば腫瘍細胞のイメージング法に使用され得る。
【0128】
本発明はまた、本明細書に記載されているようなレポーター基又は細胞毒性基を細胞に送達するための、本明細書に記載の本発明のペプチド模倣体の使用に関する。好ましくは、レポーター基又は細胞毒性基は、CCK2Rを発現する細胞、例えば、CCK2Rを発現しているがん細胞に送達される。本発明のペプチド模倣体の使用はインビボ又はインビトロにおいてであり得る。例えば、本発明のペプチド模倣体は、レポーター基又は細胞毒性基をヒト又は動物、例えば哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、ハムスター、又は他の哺乳動物に送達するために使用され得る。本発明のいくつかの実施態様では、ペプチド模倣体は、レポーター基又は細胞毒性基をエクスビボにおいて細胞に、例えば、細胞培養液中で培養されている不死化細胞株又は初代細胞株に送達するために使用され得る。
【0129】
本発明はまた、本明細書に記載のような細胞のイメージング法にも関する。本明細書に記載の細胞のイメージング法は、本明細書に記載のペプチド模倣体を利用する。本発明のいくつかの実施態様では、細胞のイメージング法は、本明細書に記載のような非治療的ペプチド模倣体を利用する。本発明の細胞のイメージング法は、確立されたイメージング法、例えばコンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、シンチグラフィー、SPECT、PET、又は他の類似した技術を含み得るか又はこれらに基づき得る。使用される個々のイメージング法に基づいて、当業者は、適切なレポーター基を選択するだろう。本発明の細胞のイメージング法は、インビボ又はインビトロにおいて実施され得る。本発明のいくつかの実施態様では、細胞を本発明のペプチド模倣体に接触させる工程は、本明細書に記載のペプチド模倣体を患者に、例えばがん、例えばCCK2Rの発現を含むがんに罹患している患者に投与する工程を含む。いくつかの好ましい実施態様では、細胞は腫瘍細胞である。したがって、いくつかの好ましい実施態様では、腫瘍細胞をペプチド模倣体と接触させる。いくつかの好ましい実施態様では、腫瘍細胞はCCK2Rを発現している。
【0130】
いくつかの実施態様では、本発明はまた、CCK2Rの発現を含む疾患、例えば腫瘍細胞におけるCCK2Rの発現によって特徴付けられるがんに罹患している患者の処置法にも関する。患者を処置するこのような方法は、患者への本発明のペプチド模倣体の投与を含む。
【0131】
いくつかの実施態様では、本発明は、治療法に使用するための本明細書に記載のペプチド模倣体に関する。本発明の好ましい実施態様では、ペプチド模倣体は、がんの処置に使用するためのものである。好ましくは、がんは、腫瘍細胞表面上にCCK2Rを発現するがんである。
【0132】
本発明のペプチド模倣体は、診断精密検査及び様々な種類のがん、例えば、甲状腺癌、例えば甲状腺髄様癌(MTC)、肺癌、例えば小細胞肺癌(SCLC)、消化管間質腫瘍、神経系の腫瘍、例えば星状細胞腫及び髄膜腫、間質卵巣癌、消化管の癌、神経内分泌腫瘍、膵消化管腫瘍、神経芽細胞腫、生殖器系の腫瘍、例えば乳癌、子宮内膜癌、卵巣癌及び前立腺癌、インスリノーマ、血管作動性腸管ペプチド分泌腫瘍、気管支及び回腸カルチノイド、平滑筋肉腫、平滑筋腫、及び肉芽腫細胞腫の治療に有用である。いくつかの好ましい実施態様では、上記の種類のがんはCCK2Rを発現する。
【0133】
実施例
実施例1:本発明のペプチド模倣体の合成
本発明のペプチド模倣体の合成は、標準的な9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)化学を使用して実施された。
【0134】
ペプチド模倣体は、アルカリ媒体中の過剰のFmoc保護アミノ酸、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、及び2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)を使用して、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中のRinkアミドMBHAレジン(ノバビオケム、ホーエンブルン、ドイツ)上に構築された。アミノ酸の反応性側鎖を適切な保護基を用いてマスクした。所望のアミノ酸配列を構築した後、Bocで保護されたDOTA及びHYNICのカップリングを実施し、その後、酸に不安定な保護基の除去と同時にペプチド模倣体をレジンから切断し、HPLCによる精製及び凍結乾燥後、ペプチド模倣体が、RP-HPLC及びMALDI-TOF MSによって確認したところ、20%を超える収率で95%以上の化学的純度で得られた。様々な放射性金属を用いての本発明のペプチド模倣体の放射性標識は、標準的な放射性標識プロトコールを使用して、25~50%エタノールなどの水溶液中にペプチドを溶かし、該溶液を、放射性金属を含有している塩酸などの酸性溶液、及びpH調整のための酢酸ナトリウム溶液又はアスコルビン酸溶液などの溶液と混合し、該混合物を高温(90~95℃)で約30分間インキュベートすることによって実施された。様々な放射性金属を用いての放射性標識により、高い標識収率及び放射性化学物質の純度が得られた。ペプチド模倣体及び放射性標識された誘導体のHPLCによる分析を、ダイオネクス社のUltiMate3000ポンプ(ダイオネクス社、ゲルメリング、ドイツ)、280nmにおけるUV検出(UltiMate3000可変波長UV検出器)及び放射線検出(Gabi Star、レイテスト社、ストラゥベンハルト、ドイツ)からなるダイオネクス社のクロマトグラフィーシステムで、フェノメネクス社のJupiter4μProteo90A 250×4.6(C12)カラム及び1mL/分の流速を、0.1%TFAを含有している水(溶媒A)と0.1%TFAを含有しているアセトニトリル(溶媒B)の勾配系(0~3分間は10%のB、3~18分間は10~55%のB、18~20分間は80%のB、20~21分間は10%のB、21~25分間は10%)と一緒に使用して実施された。
【0135】
以下のペプチド模倣体(表4)は、上記の方法に従って合成された:
【0136】
【0137】
実施例2:本発明のペプチド模倣体は、インビトロでヒト血清中において増加した安定性を有する
インビトロにおいて放射性標識されたペプチド模倣体を特徴付けるために、ヒト血清中の安定性を試験した。
111Inで標識されたペプチド模倣体を、新鮮なヒト血清中で500~2000pmol/mLの濃度で、37℃で最大24時間かけてインキュベートし、分解を、ラジオHPLCによって評価した。この目的のために、ヒト血清試料をACNを用いて沈降させ、2000gで2分間遠心分離にかけ、水で希釈し(1:1/v:v)、その後、フェノメネクス社のJupiter ProteoC12カラム(90Å、4μm、250×4.6mm)又はBischoff社のクロマトグラフィーヌクレオシルC18カラム(120Å、5μm、250×4.6mm)を具備した、放射線検出及びUV検出を含む、ダイオネクス社のクロマトグラフィーシステムで、様々な水/アセトニトリル/0.1%TFA勾配系を使用して、HPLC分析を行なった。
図1に示されているように、ヒト血清中の放射性標識されたペプチド模倣体の安定性は、24時間インキュベートした後に、それぞれ16.1%(n=2)及び60.1%(n=1)のインタクトな放射性標識されたペプチド模倣体を示した、
111Inで標識されたDOTA-MG11及び
111In-DOTA-MGS1と比較するとかなり増加した。
111In-DOTA-MGS5、
111In-DOTA-MGS5-2、
111In-DOTA-MGS8、
111In-DOTA-MGS9、及び
111In-DOTA-MGS10は同じ時点で、94%を超える数値を示し、それ故、酵素による分解に対してはるかにより高い安定性を示した。
111In-DOTA-MGS11及び
111In-DOTA-MGS12もまた、ヒト血清中において94%を超えるインタクトな放射性ペプチドを示した。この安定化は、MGのC末端受容体特異的配列内に少なくとも2つの置換を、好ましくは追加のN末端における置換と組み合わせて適用することによって達成される。本発明者らはさらに、Metを(N-Me)Nleで単一置換した
111In-DOTA-MGS16を試験し、部分的な安定化が判明した(53.1%のインタクトな放射性ペプチド、n=2)。このことは、例えば(N-Me)Nle又は1Nalを用いての単一置換は、ペプチド模倣体を分解から完全に保護せず、本発明に記載のような、異なる位置における置換の組合せのみが、ペプチド模倣体の完全な安定化を可能とすることを確認する。
【0138】
実施例3:本発明のペプチド模倣体は、血清タンパク質に結合する
さらに、血清タンパク質へのタンパク質の結合を調べた。この目的のために、111Inで標識されたペプチド模倣体をデュプリケートで、新鮮なヒト血清中(500pmol/mL)で37℃でインキュベートし、セファデックスG-50サイズ排除クロマトグラフィー(GEヘルスケアIllustra、リトル・チャルフォント、英国)によって4時間後及び24時間後に分析した。カラム及び溶出液を2480ウィザード2自動γカウンター(パーキンエルマーライフサイエンスアンドアナリティカルサイエンス社、トゥルク、フィンランド)で測定することによって、タンパク質結合率を決定した。結果を表5にまとめる。
【0139】
【0140】
24時間インキュベートした後に10%未満のタンパク質結合を示した111In-DOTA-MG11と比較すると、111In-DOTA-MGS4は、同じようなタンパク質結合を示した(約12%)。本発明の放射性標識されたペプチド模倣体は、表5に示されているように、より高いタンパク質結合を示した。111In-DOTA-MGS5-2、111In-DOTA-MGS9、及び111In-DOTA-MGS11は、約30%という中程度のタンパク質結合を示した。4つのペプチド模倣体を用いると、111In-DOTA-MGS5及び111In-DOTA-MGS12では40%を超える数値、111In-DOTA-MGS8及び111In-DOTA-MGS10では50%を超える数値を示す、高いタンパク質結合が、24時間インキュベートした後に観察された。
【0141】
実施例4:本発明のペプチド模倣体は、CCK2Rに対して高い親和性を有する
CCK2Rに対する親和性を、Luigi Aloj博士(Aloj L et al., J Nucl Med 2004, 45: 485-494)によって親切にも提供された、ヒトCCK2R(A431-CCK2R)の完全コード配列を含有しているプラスミドpCR3.1が安定にトランスフェクトされたA431ヒト類表皮癌細胞において試験した。ペンタガストリン(Boc-β-Ala-Trp-Met-Asp-Phe-NH2)、DOTA-MG11、及びPP-F11(ペンタ-Glu配列を5つのD-グルタミン酸残基で置換することによってMG0から誘導されたペプチド類似体)、並びにDOTA-MGS1及びDOTA-MGS4と比較した、[125I]Tyr12-ガストリン-Iに対する結合親和性を競合アッセイで試験した。ガストリン-Iの放射性ヨウ素化はクロラミンT法を使用して実施された。キャリアの添加されていない[125I]Tyr12-ガストリン-Iを、HPLCによる精製によって得、分注して-20℃で保存した。結合アッセイは、10mMトリス/139mM NaCl pH7.4(2×250μl)で前処理された96ウェルフィルタープレート(マルチスクリーンHTS-FB、メルクグループ、ダルムシュタット、ドイツ)中で実施された。アッセイのために1ウェルあたり200,000~400,000個の数のA431-CCK2R細胞を、10mM MgCl2、14μMのバシトラシン、及び0.5%BSAを含有している35mM HEPES緩衝液(pH7.4)(細胞膜の完全性をかく乱する低張溶液)中で調製した。細胞をトリプリケートで、漸増濃度のペプチド模倣体(0.0003~10,000nM、例えば0.001~1000nM)及び[125I]-Tyr12-ガストリン-I(20,000~60,000cpm)と共に室温で1時間インキュベートした。インキュベーションを、培地のろ過及び氷冷10mMのトリス/139mM NaCl(pH7.4)(2×200μl)を用いた迅速な濯ぎによって中断し、フィルターをγカウンターで計数した。半最大阻害濃度(IC50)値を、オリジンソフトウェア(Microcal社のオリジン6.1、ノーサンプトン、マサチューセッツ州)を用いて非線形回帰に従って計算し、比較のために代表的なアッセイを選択した。表6に示されているように、低いナノモル範囲のIC50値を伴うCCK2Rに対する高い親和性を、試験された全てのペプチド模倣体について確認することができた。
【0142】
【0143】
実施例5:本発明のペプチド模倣体は、改善された細胞内への内部移行を示す
これらの試験は、以前に公表されたプロトコール(von Guggenberg E et al., Bioconjug Chem 2004, 15: 864-871)に従って、100万個のA431-CCK2R細胞、並びに、対照としての空ベクターのみがトランスフェクトされた同細胞株(A431モック)を使用して実施された。1%(v/v)のウシ血清アルブミンの補充されたDMEMを内部移行用培地として使用し、遮断試験を実施する代わりに、非特異的な細胞への取り込みを、A431モック細胞において試験した。細胞をトリプリケートで、10,000~500,000cpm、例えば10,000~30,000cpmの放射性標識されたペプチド模倣体(アッセイにおいて0.4nM及び約600fmolの最終濃度の全ペプチド模倣体に相当する)と共にインキュベートし、37℃で2時間インキュベートした。A431-CCK2R細胞及びA431モック細胞において内部移行した画分を、添加された全放射活性に対して表現した(全体に対する%)。各々の放射性標識されたペプチド模倣体について、トリプリケートで実施された1つの代表的なアッセイの平均値が示されている。111In-DOTA-MGS1及び111In-DOTA-MGS4については、2つの独立したアッセイから得られた細胞への取り込みの平均値が考慮された。
【0144】
本発明の放射性標識された様々なペプチド模倣体の細胞内への内部移行を、PP-F11及びPP-F11Nと比較した。これらの2つのペプチド誘導体は、ペンタ-Glu配列を5つのD-グルタミン酸残基で置換することによって、及びPP-F11NにおいてはさらにMetをNleで置換することによって、MG0から誘導されている。
111In及び
177Luで標識されたPP-F11及びPP-F11Nと比較して、本発明の全ての放射性標識されたペプチド模倣体は、増加した細胞内への内部移行を示す。
111Inで標識されたペプチド模倣体について
図2において示されているように、2時間インキュベートした後に内部移行した放射性リガンド画分は、
111In-DOTA-MGS5、
111In-DOTA-MGS8、
111In-DOTA-MGS10、及び
111In-DOTA-MGS12において最も高くなり、数値は47~68%であった。これらのペプチド模倣体はまた、最も高いレベルのタンパク質結合も示した。中程度のタンパク質結合を示すペプチド模倣体は、幾分より低い細胞取り込みを示し、
111In-DOTA-MGS9では37%の数値、
111In-DOTA-MGS5-2では45%の数値であった。細胞への全ての放射性標識ペプチド模倣体の取り込みが、参照化合物である
111In-PP-F11及び
111In-F11N(24%未満の細胞内部移行を示す)、対照ペプチドである
111In-DOTA-MG11(29%)並びに以前に研究されていた2つのペプチド誘導体(Klingler M et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 2017, 44: S228)である
111In-DOTA-MGS1及び
111In-DOTA-MGS4(21~25%)と比較してかなり高かった。CCK2Rの発現を伴わないA431モック細胞における無視できる取り込み(1%未満)により、受容体特異的な細胞への取り込みが確認される。
【0145】
さらなる細胞への取り込みについての試験を、本発明の様々なDOTA及びHYNICにコンジュゲートさせたペプチド模倣体を用いて行なうことにより、他の放射性金属を用いた放射性標識についても、驚くべき程に高い細胞への取り込みを確認した。
図3に示されているように、
111In、
177Lu、
68Ga、又は
99mTcのいずれで放射性標識されたペプチド模倣体についても、細胞への非常に高い取り込みが観察された。
111In-DOTA-MGS5については68%、
68Ga-DOTA-MGS5については54%、
99mTc-HYNIC-MGS5及び
177Lu-DOTA-MGS5については63%の数値が測定された(
図3A)。
177Lu-DOTA-MGS10もまた、50%を超える細胞内への内部移行を示し、一方、
177Lu-PP-F11及び
177Lu-PP-F11Nについてははるかに低い取り込み(30%未満)が判明した(
図3B)。
68Ga-DOTA-MGS12は、約40%の細胞内への内部移行を示した(
図3C)。A431モック細胞における細胞への取り込みは、1.5%未満であった。
【0146】
実施例6:本発明のペプチド模倣体は、インビボにおいて改善された生体内分布を示す
放射性標識された本発明のCCK2R標的化ペプチド類似体の腫瘍への取り込みを評価する生体内分布試験を、7週令の雌無胸腺BALB/cヌードマウス(チャールズリバー、スルツフェルト、ドイツ)において実施した。全ての動物実験は、オーストリア動物保護法を順守し、オーストリア科学技術省の承認を得て実施された。腫瘍異種移植片の導入のために、A431-CCK2R細胞及びA431モック細胞を、それぞれ右側腹部及び左側腹部の皮下に注射した(200μl中に200万個の細胞)。腫瘍が約0.2mlのサイズに到達したら、生体内分布試験を実施した。4匹のマウスのグループに、外側尾静脈を介して、
111In(約0.2MBq及び0.02nmolのペプチド模倣体)、
68Ga(約0.8MBq及び0.02~0.03nmolのペプチド模倣体)、
177Lu(約0.5MBq及び0.02nmolのペプチド模倣体)、又は
99mTc(約0.3MBq及び0.02nmolのペプチド模倣体)で標識された本発明のペプチド模倣体を静注した。注射から1時間又は4時間の期間の後(p.i.)、動物を頸椎脱臼によって屠殺し、腫瘍及び他の組織(血液、肺、心臓、筋肉、骨、脾臓、腸、肝臓、腎臓、胃、膵臓)を取り出し、秤量し、それらの放射活性をγカウンターで測定した。結果は、組織1gあたりに注射された活性の比率(%IA/g)として表現され、臓器に対する腫瘍の活性の比を、解体した組織において測定された活性から計算した。
図4では、本発明の
111In標識ペプチド模倣体についての、注射から4時間後における生体内分布試験の結果を、
111In-DOTA-MGS1及び
111In-DOTA-MGS4と比較してまとめる(Klingler M et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 2017, 44: S228)。
図5では、異なる放射性金属で放射性標識された、DOTA-MGS5及びHYNIC-MGS5という本発明のペプチド模倣体モデルについての結果が、注射から1時間後又は4時間後という異なる時点において示されている。迅速な血液からのクリアランス、主に腎からの排泄、及び大半の組織における低く非特異的な取り込み、及び腎臓における少ない滞留と共に全体的に非常に改善された生体内分布プロファイルが、全ての放射性リガンドについて観察された。
111Inで標識された様々なペプチド模倣体は、CCK2R発現組織である胃(約8%IA/g)及び膵臓(約2%IA/g)においてより高い取り込みを示した。
111In-DOTA-MGS9は、腸及び肝臓(約2%IA/g)、特に腎臓(約20%IA/g)において幾分より高い取り込みを示した。CCK2Rにより媒介される作用についての、主要なファルマコフォアとしてのC末端Trp-Met-Asp-Phe-NH
2テトラペプチドの決定的な重要性から(Stone SR et al., Peptides 2007, 28: 2211-2222)、この特定のアミノ酸配列内に2つの置換を有する本発明のペプチド模倣体が、インビボでA431-CCK2R腫瘍異種移植片において非常に特異的な腫瘍標的化を示したことは非常に驚くべきことであった。本発明の全てのペプチド模倣体は、
111In-DOTA-MGS1(1.3±0.1%IA/g)及び
111In-DOTA-MGS4(10.2±2.0%IA/g)と比較して、2~40倍、例えば2.3~35.6倍高い腫瘍への取り込みを示した(Klingler M et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 2017, 44: S228)。注射から4時間後にそれぞれ42.8±2.3%IA/g及び46.3±8.2%IA/gの数値を示す、
111In-DOTA-MGS8及び
111In-DOTA-MGS10は、腫瘍への最も高い取り込みを示した。また、
111In-DOTA-MGS9を用いても、腫瘍への高い取り込みが観察され(33.9±9.5%IA/g)、これはしかしながら腎臓へのより高い取り込み(20.7±4.4%IA/g)も伴った。
111In-DOTA-MGS5及び
111In-DOTA-MGS5-2は、それぞれ、23.5±1.3%IA/g及び25.5±4.5%IA/gという腫瘍への取り込みを示した。1%未満のIA/gの数値を示す、A431モックの腫瘍異種移植片への取り込みは非常に少なく、これにより、受容体特異的な腫瘍への高い取り込みが確認された。理論により束縛されるものではないが、より高い安定性、より高いタンパク質結合、及び改善された細胞内への内部移行によってまた、インビボにおける腫瘍へのより高い取り込みがもたらされたと考えられる。それ故、高い安定性とインビボにおける増加したタンパク質結合との組合せにより、血中の酵素的分解から放射性リガンドが最適に保護されることになると考えられ、これにより、腫瘍への極めて高い取り込みに到達することが可能となる。この印象的な腫瘍への高い取り込みはまた、ペプチド模倣体モデルとしてDOTA-MGS5及びHYNIC-MGS5を使用し、様々な放射性同位体を用いた放射性標識においても確認することができた。
177Lu-DOTA-MGS5(24.5±3.1%IA/g)、
68Ga-DOTA-MGS5(23.3±4.7%IA/g)、及び
99mTc-HYNIC-MGS5(24.8±4.4%IA/g)は、
111In-DOTA-MGS5(23.5±1.3%IA/g)と同等な腫瘍への取り込みを示した。
68Ga-DOTA-MGS5は、血液、肺、及び心臓において、組織への幾分より高く非特異的な取り込み(1~2%IA/g)を示したが、一方、Lu-177、Ga-68、及びIn-111で標識されたDOTA-MGS5の腎臓への取り込み(4~6%IA/g)並びにCCK2R発現臓器である胃(5~8%IA/g)及び膵臓(2~3%IA/g)への取り込みは同等であった。
99mTc-HYNIC-MGS5は、全ての放射性同位体の中で最も高い腎臓への取り込み(8%IA/g)、並びに胃(13%IA/g)及び膵臓(7%IA/g)におけるより高い取り込み傾向を示した。A431モックの腫瘍異種移植片では、1%未満のID/gという非常に低い取り込みが、全ての放射性リガンドについて観察され、このことから、A431-CCK2R腫瘍異種移植片への受容体特異的取り込みが確認された。
【0147】
腫瘍への非常に高い取り込みと経時的な腫瘍における滞留とを組み合わせた、血中及び正常組織への低い取り込みという例外的な組合せにより、特にペプチド模倣体のDOTA-MGS5、DOTA-MGS5-2、DOTA-MGS8、及びDOTA-MGS10について、臓器に対する腫瘍の活性の非常に好ましい比が得られた。111In-DOTA-MGS8(11.6±3.0)>111In-DOTA-MGS10(9.3±2.0)>111In-DOTA-MGS5(6.4±0.6)>111In-DOTA-MGS5-2(6.0±0.9)の順で、腎臓に対する腫瘍の高い比が観察された。
【0148】
異なる放射性同位体で放射性標識されたペプチド模倣体モデルであるMGS5の腎臓に対する腫瘍の比を比較すると、177Lu-DOTA-MGS5(6.5±1.6)>111In-DOTA-MGS5(6.4±0.6)>68Ga-DOTA-MGS5(4.1±0.3)>99mTc-HYNIC-MGS5(3.3±1.1)の順で腎臓に対する腫瘍の比に到達した。これらの印象的な生体内分布特性は文献において依然として比類がなかった。これまで、CCK2R標的化ペプチドの標的化プロファイルにおける同じような改善は、酵素阻害剤の共投与によってのみ達成されていた(Kaloudi A et al., Q J Nucl Med Mol Imaging 2015, 59: 287-302; Nock BA et al., J Nucl Med 2014, 55: 121-127)。放射性標識されたCCK2R標的化ペプチド類似体のみの1回投与による、腫瘍標的化の同等な改善に関する、類似した報告は全く存在しない。それ故、本発明のペプチド模倣体は、傑出した特性を示す。同じ腫瘍モデルにおいて異なる111In標識ペプチド類似体を比較した場合、111In-DOTA-MG0は、9.9±2.0%ID/gの腫瘍への取り込みを示し、111In-DOTA-MG11は3.04±1.30%ID/gの腫瘍への取り込みを示した(Laverman P et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 2011, 38: 1410-1416)。
【0149】
一連の放射性リガンドにおいて、6つのD-Glu残基を有するMG類似体である試験された111In-PP-F11は、1.2±0.5という腎臓に対する腫瘍の比と合わせて、最も好ましい腫瘍への滞留(注射から4時間後において6.30±2.75%のID/g)を示した。腫瘍への同じような取り込みが、177Lu-PP-F11(6.70±0.60%IA/g)及び177Lu-PP-F11N(6.90±0.80%IA/g)についても報告されている(Sauter AW et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 2016, 43: S238-S239)。
【0150】
本発明のペプチド模倣体は、比較すると、MG0のプラスの特色(腫瘍への高い取り込み)及びMG11(腎臓への低い滞留)と合わせて、非常に改善された腫瘍への取り込み及び腎臓に対する腫瘍の比を示し、腎臓に対する腫瘍の非常に好ましい比を示す。
【0151】
実施例7:本発明のペプチド模倣体は、インビボにおいて増加した安定性を有する
インビボにおける放射性標識されたペプチド模倣体の安定性をさらに特徴付けるために、111Inで標識されたペプチド模倣体及び177Luで標識されたペプチド模倣体が静注された5~6週令の雌BALB/cマウス(チャールズリバー、スルツフェルト、ドイツ)において代謝試験を実施した。全ての動物実験は、オーストリア動物保護法を順守し、オーストリア科学技術省の承認を得て実施された。ラジオHPLCによる代謝のモニタリングを可能とするために、マウスに、外側尾静脈を通してより高い量の放射能(1~2nmolの全ペプチドに相当する、5~15MBqの111In及び20~40MBqの177Lu)を注射し、頸椎脱臼によって注射から10分後又は30分後(p.i.)に安楽死させた。血液試料を収集し、分解をラジオHPLCによって評価した。この目的のために血液試料をACNを用いて沈降させ、2000gで2分間遠心分離にかけ、水(1:1/v:v)で希釈し、その後、フェノメネクス社のJupiter ProteoC12カラム(90Å、4μm、250×4.6mm)又はBischoff社のクロマトグラフィーヌクレオシルC18カラム(120Å、5μm、250×4.6mm)を具備した、放射線検出及びUV検出を含む、ダイオネクス社のクロマトグラフィーシステムを使用して、様々な水/アセトニトリル/0.1%TFA勾配系を使用して、HPLC分析を行なった。
【0152】
図6に示されているように、本発明の放射性標識されたペプチド模倣体は、インビボにおいて、酵素的分解に対する非常に高い安定性を示した。注射から10分後に血中に存在するインタクトな放射性リガンドの比率は、全ての
111Inで標識されたペプチド模倣体について80%以上であった(n=2;
111In-DOTA-MGS5;82.7±3.3%、
111In-DOTA-MGS5-2:88.4±0.4%、
111In-DOTA-MGS8:80.0±5.2%、
111In-DOTA-MGS9:93.9±1.2%、
111In-DOTA-MGS10:82.3±1.8%、
111In-DOTA-MGS11:98.4±0.1%)。インビボにおける安定性は、注射から5分後において僅か5%のインタクトな放射性ペプチドしか示さなかった、
111In-DOTA-MGS11と比較してかなり増加し、一方、インビボにおける安定性の同じような改善は、酵素阻害剤のホスホラミドンの共注射によってのみ達成可能であった(Nock BA et al., J Nucl Med 2014, 55: 121-127)。選択された
177Lu標識ペプチド模倣体(n=1)を用いてもさらなる試験を実施し、類似の結果が判明した。
177Lu-DOTA-MGS5については、血中に存在するインタクトな放射性リガンドは、注射から10分後に85.9%に達し、注射から30分後には77.0%に達し、
177Lu-DOTA-MGS8についての数値の結果は、注射から10分後及び30分後にそれぞれ80.5%及び56.8%であった。
【0153】
比較のために、インビボにおける代謝試験を、Lu-177で標識されたPP-F11及びPP-F11N(n=1)についても実施した。
【0154】
PP-F11:DOTA-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2
PP-F11N:DOTA-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-DGlu-Ala-Tyr-Gly-Trp-Nle-Asp-Phe-NH2
【0155】
PP-F11及びPP-F11Nにおける全ての結合(「-」)がアミド結合であり、そのエナンチオマー形が明確に示されていない全てのアミノ酸がL型である。
【0156】
これらの2つのペプチド誘導体は、ペンタ-Glu配列を5つのD-グルタミン酸残基で置換することによって、及びPP-F11NにおいてはさらにMetをNleで置換することによって、MG0から誘導されている。2つのペプチドコンジュゲートは、代謝安定性及び薬物動態を改善する目的で開発され、2012年に最初に記載された(Kroselj M et al., Eur J Nucl Med Mol Imaging 2012, 39: S533-S534 及び WO 2015/067473 A1)。注射から10分後の同じ時点において、177Lu-PP-F11Nについて酵素に対する低い安定性が確認され、22.3%のインタクトな放射性リガンドが血中には存在していた。注射から30分後に177Lu-PP-F11及び177Lu-PP-F11Nは、それぞれ5.5%及び12.7%の数値を示し、結果としてほぼ完全に分解された。
【0157】
それ故、本発明のペプチド模倣体は、例えば、先行技術のPP-F11及びPP-F11Nと比較して、酵素分解に対するはるかに高い安定性を示す。驚くべきことには、本発明による異なる位置における置換の組合せは、ペプチド模倣体を完全に安定化させることを可能とする。
【0158】
いかなる特定の理論に束縛されるものではないが、改善された細胞内への取り込みの他に、インビボにおける安定性もまた、腫瘍への改善された取り込み及び滞留の原因となり得ると現在考えられている。腫瘍への極めて高い取り込み及び腫瘍への滞留、並びに、腎臓を含むバックグラウンドに対する腫瘍の活性の非常に好ましい比により、本発明のペプチド模倣体はがんなどのCCK2R関連疾患における診断使用及び治療使用にとって特に有用となる。
【配列表】