(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】N^N^C^O型四座白金(II)錯体の製造及び使用
(51)【国際特許分類】
C07F 15/00 20060101AFI20221219BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20221219BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221219BHJP
C07D 213/74 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C07F15/00 F CSP
C09K11/06 660
H05B33/14 B
C07D213/74
(21)【出願番号】P 2021529326
(86)(22)【出願日】2019-11-02
(86)【国際出願番号】 CN2019115181
(87)【国際公開番号】W WO2020134569
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】201811628779.6
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515177907
【氏名又は名称】広東阿格蕾雅光電材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】康 健
(72)【発明者】
【氏名】戴 雷
(72)【発明者】
【氏名】蔡 麗菲
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/042444(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0237023(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0194615(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0362567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 15/00
C07D 213/74
C09K 11/06
H05B 33/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N^N^C^O四座配位白金(II)錯体であって、式に示される構造を有し、
【化1】
式中、R
1~R
15は独立して水素、重水素
、ハロゲン、水酸基、アシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、アシルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、スチレニル基、アミノカルボニル基、カルバモイル基、ベンジルカルボニル基、アリールオキシ基、ジアリールアミン基、1~30個のC原子を含む飽和アルキル基、
2~20個のC原子を含む不飽和アルキル基、5~30個のC原子を含む置換または無置換のアリール基、5~30個のC原子を含む置換または無置換のヘテロアリール基から選ばれ、あるいは、隣接するR
1~R
15は相互に共有結合によって結合して環を形成するN^N^C^O四座配位白金(II)錯体。
【請求項2】
R
1~R
15は独立して水素、ハロゲン、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ジアリールアミン基、1~10個のC原子を含む飽和アルキル基、ハロゲンまたは1つ以上のC
1~C
4アルキル基で置換された、または置換されていない5~20個のC原子を含むアリール基、ハロゲンまたは1つ以上のC
1~C
4アルキル基で置換された、または置換されていない5~20個のC原子を含むヘテロアリール基から選ばれ、あるいは、隣接するR
1~R
15は相互に共有結合によって結合して環を形成し、前記ハロゲンはF、Cl、Brである請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
R
1~R
15の15個の基のうち、0~3個の基は独立してジアリールアミン基、ハロゲンまたは1~3個のC
1~C
4アルキル基で置換されたまたは置換されていない5~10個のC原子を含むアリール基、ハロゲンまたは1~3個のC
1~C
4アルキル基で置換されたまたは置換されていない5~10個のC原子を含むN含有ヘテロアリール基を表し、他の基は独立して水素、または1~8個のC原子を含む飽和アルキル基を表し、前記ハロゲンはF、Clである請求項2に記載の錯体。
【請求項4】
R
1~R
15の15個の基のうち、0~3個の基は独立してジフェニルアミノ基、フェニル基、ピリジル基、カルバゾリル基を表し、他の基は独立して水素、フッ素、1~4個のC原子を含む飽和アルキル基を表す請求項3に記載の錯体。
【請求項5】
以下の式に示される構造を有し、
【化2】
式中、R
1’~R
5’は独立して水素、ハロゲン、ジアリールアミン基、1~10個のC原子を含む飽和アルキル基、ハロゲンまたは1つ以上のC
1~C
4アルキル基で置換された、または置換されていない5~20個のC原子を含むアリール基、ハロゲンまたは1つ以上のC
1~C
4アルキル基で置換された、または置換されていない5~20個のC原子を含むヘテロアリール基から選ばれ、あるいは、隣接するR
1’~R
5’は相互に共有結合によって結合して環を形成し、前記ハロゲンはF、Cl、Brである請求項2に記載の錯体。
【請求項6】
R
1’~R
5’の5個の基のうち、0~3個の基は独立してジアリールアミン基、ハロゲンまたは1~3個のC
1~C
4アルキル基で置換されたまたは置換されていない5~10個のC原子を含むアリール基、ハロゲンまたは1~3個のC
1~C
4アルキル基で置換されたまたは置換されていない5~10個のC原子を含むヘテロアリール基を表し、他の基は独立して水素、ハロゲンまたは1~8個のC原子を含む飽和アルキル基を表し、前記ハロゲンはF、Clである請求項5に記載の錯体。
【請求項7】
R
1’~R
5’の5個の基のうち、0~3個の基は独立してジフェニルアミノ基、C
1~C
4アルキル基で置換された、または置換されていないフェニル基、ピリジル基、カルバゾリル基を表し、他の基は独立して水素、フッ素、1~4個のC原子を含む飽和アルキル基を表す請求項6に記載の錯体。
【請求項8】
以下の構造を有する請求項1に記載の錯体。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【請求項9】
以下の構造を有する請求項8に記載の錯体。
【化8】
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の錯体の前駆体であって、配位子であり、その構造式は以下に示され、
【化9】
式中、R
1~R
15は独立して水素、ハロゲン、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ジアリールアミン基、1~10個のC原子を含む飽和アルキル基、ハロゲンまたは1つ以上のC
1~C
4アルキル基で置換された、または置換されていない5~20個のC原子を含むアリール基、ハロゲンまたは1つ以上のC
1~C
4アルキル基で置換された、または置換されていない5~20個のC原子を含むヘテロアリール基から選ばれ、あるいは、隣接するR
1~R
15は相互に共有結合によって結合して環を形成する前駆体。
【請求項11】
構造式は以下に示され、
【化10】
式中、R
1’~R
5’は独立して水素、ハロゲン、ジアリールアミン基、1~10個のC原子を含む飽和アルキル基、ハロゲンまたは1つ以上のC
1~C
4アルキル基で置換された、または置換されていない5~20個のC原子を含むアリール基、ハロゲンまたは1つ以上のC
1~C
4アルキル基で置換された、または置換されていない5~20個のC原子を含むヘテロアリール基から選ばれ、あるいは、隣接するR
1’~R
5’は相互に共有結合によって結合して環を形成し、前記ハロゲンはF、Cl、Brである請求項10に記載の前駆体。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の四座配位白金(II)錯体の合成方法であって、
初期基質S1とS2からBuchwald-Hartwigカップリング反応によって基質S3を得て、S3とS4からBuchwald-Hartwigカップリング反応によって基質S5を得て、S5をピリジン塩酸塩の作用で脱メチル化してS6を得て、S6とK
2PtCl
4を反応させて目的生成物Pを得るステップを含み、反応式は以下の通りである合成方法。
【化11】
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の錯体のOLED発光素子における使用。
【請求項14】
前記請求項1~9のいずれか一項に記載の錯体が発光層において光子放出作用を有するリン光ドープ材料である請求項13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新型のN^N^C^O四座白金(II)錯体金属有機材料に関し、特にOLED発光素子の発光層中で光子発射作用を有するリン光ドーパント材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode,OLED)は、自己発光、広視野角、無限に高いコントラスト、低い消費電力、非常に高い反応速度及び潜在的な柔軟性および折りたたみ性能などの利点を有するため、ずっと広く関心を集めて検討されている。
【0003】
OLED材料の分野において、リン光系OLED発光層のドーパント材料の発展は迅速で、成熟しており、それは主にイリジウム、白金、ユーロピウム、オスミウムなどの重金属有機錯体に基づくものである。リン光材料は発光過程において、一重項と三重項励起子のエネルギーを十分に利用できるため、理論上、その量子効率は100%に達することができ、現在、業界で広く使用されている発光材料である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、白金(II)によるリン光OLED材料が優れた表示性能を示している。白金(II)は一般的に四配位部位であり、四座錯体を設計することで唯一の配置を持つ金属有機白金(II)錯体を形成することができる。しかしながら、成熟したイリジウム(III)錯体発光材料の応用に比べて、白金(II)錯体の開発は相対的に遅れており、特に新規の白金(II)錯体リン光発光材に対する開発は白金(II)錯体の商業化応用を推進することに対して重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る新型のN^N^C^O四座白金(II)錯体金属有機材料は、下式に示す構造を有する。
【化1】
【0006】
式中、R1~R15は独立して水素、重水素、硫黄、ハロゲン、水酸基、アシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、アシルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、スチレニル基、アミノカルボニル基、カルバモイル基、ベンジルカルボニル基、アリールオキシ基、ジアリールアミン基、1~30個のC原子を含む飽和アルキル基、1~20個のC原子を含む不飽和アルキル基、5~30個のC原子を含む置換または無置換のアリール基、5~30個のC原子を含む置換または無置換のヘテロアリール基から選ばれるか、あるいは、隣接するR1~R15は相互に共有結合によって結合して環を形成する。
【0007】
好ましくは、R1~R15は独立して水素、ハロゲン、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ジアリールアミン基、1~10個のC原子を含む飽和アルキル基、ハロゲンまたは1つ以上のC1~C4アルキル基で置換された、または置換されていない5~20個のC原子を含むアリール基、ハロゲンまたは1つ以上のC1~C4アルキル基で置換された、または置換されていない5~20個のC原子を含むヘテロアリール基から選ばれるか、あるいは、隣接するR1~R15は相互に共有結合によって結合して環を形成し、前記ハロゲンはF、Cl、Brである。
【0008】
好ましくは、R1~R15の15個の基のうち、0~3個の基は独立してジアリールアミン基、ハロゲンまたは1~3個のC1~C4アルキル基で置換されたまたは置換されていない5~10個のC原子を含むアリール基、ハロゲンまたは1~3個のC1~C4アルキル基で置換されたまたは置換されていない5~10個のC原子を含むN含有ヘテロアリール基を表し、他の基は独立して水素、または1~8個のC原子を含む飽和アルキル基を表し、前記ハロゲンはF、Clである。
【0009】
好ましくは、R
1~R
15の15個の基のうち、0~3個の基は独立してジフェニルアミノ基、フェニル基、ピリジル基、カルバゾリル基を表し、他の基は独立して水素、フッ素、1~4個のC原子を含む飽和アルキル基を表す。
【化2】
【0010】
式中、R1~R5は独立して水素、ハロゲン、ジアリールアミン基、1~10個のC原子を含む飽和アルキル基、ハロゲンまたは1つ以上のC1~C4アルキル基で置換された、または置換されていない5~20個のC原子を含むアリール基、ハロゲンまたは1つ以上のC1~C4アルキル基で置換された、または置換されていない5~20個のC原子を含むヘテロアリール基から選ばれるか、あるいは、隣接するR1~R5は相互に共有結合によって結合して環を形成し、前記ハロゲンはF、Cl、Brである。
【0011】
好ましくは、R1~R5の5個の基において、0~3個の基は独立してジアリールアミン基、ハロゲンまたは1~3個のC1~C4アルキル基で置換されたまたは置換されていない5~10個のC原子を含むアリール基、ハロゲンまたは1~3個のC1~C4アルキル基で置換されたまたは置換されていない5~10個のC原子を含むヘテロアリール基を表し、他の基は独立して水素、ハロゲンまたは1~8個のC原子を含む飽和アルキル基を表し、前記ハロゲンはF、Clである。
【0012】
好ましくは、R1~R5の5個の基のうち、0~3個の基は独立してジフェニルアミノ基、C1~C4アルキル基で置換された、または置換されていないフェニル基、ピリジル基、カルバゾリル基を表し、他の基は独立して水素、フッ素、1~4個のC原子を含む飽和アルキル基を表す。
【0013】
本出願の目的のために、特に明記されていない限り、用語ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、ヘテロ環芳香族系又はヘテロ環アリール基は以下のような意味を持つことができる。
【0014】
前記ハロゲンまたはハロは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を含み、F、Cl、Brが好ましく、F又はClが特に好ましく、Fが最も好ましい。
【0015】
前記共有結合により結合して環を形成し、アリール基、ヘテロアリール基は5~30個の炭素原子を有し、5~20個の炭素原子が好ましく、更に5~10個の炭素原子でかつ1つの芳香環又は複数の縮合している芳香環からなるアリール基が好ましい。好適なアリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アセナフテニル基(acenaphthenyl)、ジヒドロアセナフチル基(acenaphthenyl)、アントリル基、フルオレニル基、フェナントリル基(phenalenyl)である。このアリール基は、置換されていない(置換可能なすべての炭素原子が水素原子を持つ)か、1つ以上またはすべてのアリール基の置換可能な位置で置換される。好適な置換基は以下の通りである。例えばハロゲンであり、好ましくはF、Br又はClである。アルキル基であり、好ましくは1~20個、1~10個又は1~8個の炭素原子を有するアルキル基であり、メチル基、エチル基、カルボニル基が特に好ましい。アリール基であり、好ましくは、再置換されるか、無置換のC5、C6アリール基又はフルオレニル基である。ヘテロアリール基であり、好ましくは、少なくとも1個の窒素原子を含むヘテロアリール基であり、ピリジル基が特に好ましい。アリール基はF及びt-ブチル基から選ばれた置換基を有することが特に好ましく、与えられたアリール基または少なくとも1つの前記置換基によって置換されるC5、C6アリール基である任意のアリール基が好ましく、C5、C6アリール基は0、1又は2個の前記置換基を有することが特に好ましく、C5、C6アリール基は置換されていないフェニル基又は置換されたフェニル基を有することが特に好ましく、例えば、ビフェニル基、二つのt-ブチル基にメタ置換されるフェニル基である。
【0016】
1~20個のC原子を含む不飽和アルキル基は、アルケニル基が好ましく、1つの二重結合を有するアルケニル基が更に好ましく、二重結合と1~8個の炭素原子を有するアルケニル基が特に好ましい。
前記アルキル基は1~30個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、望ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基を含む。このアルキル基は、分岐鎖または直鎖であってもよいし、環状であってもよいし、1つまたは複数のヘテロ原子、好ましくは、N、O、またはSで中断され得る。また、このアルキル基は、1つまたは複数のハロゲン又は上記のアリール基の置換基に置換され得る。同様に、アルキル基については、1つ又は複数のアリール基を有することが可能であり、上記のアリール基は全てこの目的に適用可能であり、アルキル基は特にメチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル、イソブチル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、イソペンチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基から選ばれるものが好ましい。
【0017】
上記のアシル基は単結合でCO基に結合したものであり、例えば本明細書で用いたアルキル基である。
【0018】
上記のアシル基は単結合で酸素に直接結合したものであり、例えば本明細書で用いたアルキル基である。
【0019】
前記ヘテロアリール基は、芳香族、環基と相関し、1個の酸素または硫黄原子または1~4個の窒素原子、あるいは1個の酸素または硫黄原子と最大2個の窒素原子との組み合わせ、及び、それらの置換された、及びベンゾピリジンかつ縮合型誘導体をさらに含み、例えば、そのうちの1つの環形成炭素原子を介して接続され、前記ヘテロアリール基は、1つまたは複数の、アリール基について言及された置換基に置換され得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は以上の、0、1、または2つの置換基を含む独立した5、6員の芳香族ヘテロ環であり得る。ヘテロアリール基の典型的な例としては、置換されていないフラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピロール、ピリジン、インドール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、インダゾール、テトラゾール、キノリン、イソキノリン、ピリダジン、ピリミジン、プリンとピラジン、フラン、1,2,3-ジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、プテリジン、ベンゾオキサゾール、ジアゾール、ベンゾピラゾール、キノリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリンとキノキサリン及びそのモノ-またはジ-置換誘導体である。いくつかの実施形態では、置換基はハロ、水酸基、シアノ基、O-C
1~6アルキル基、C
1~6アルキル基、水酸基C
1~6アルキル基とアミノ-C
1~6アルキル基である。
次に示す具体的な例には、次のような構造が含まれるが、これに限定されるものではない。
【化3】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
上記錯体の前駆体である配位子の構造式は以下の通りである。
【化8】
【0026】
式中、R1~R15は独立して水素、ハロゲン、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ジアリールアミン基、1~10個のC原子を含む飽和アルキル基、ハロゲンまたは1つ以上のC1~C4アルキル基で置換された、または置換されていない5~20個のC原子を含むアリール基、5~20個のC原子を含むハロゲンまたは1つ以上のC1~C4アルキル基で置換された、または置換されていないヘテロアリール基から選ばれ、あるいは、隣接するR1~R15は相互に共有結合によって結合して環を形成する。
【0027】
【0028】
式中、R1’~R5’は独立して水素、ハロゲン、ジアリールアミン基、1~10個のC原子を含む飽和アルキル基、ハロゲンまたは1つ以上のC1~C4アルキル基で置換された、または置換されていない5~20個のC原子を含むアリール基、ハロゲンまたは1つ以上のC1~C4アルキル基で置換された、または置換されていない5~20個のC原子を含むヘテロアリール基から選ばれ、あるいは、隣接するR1’~R5’は相互に共有結合によって結合して環を形成し、前記ハロゲンはF、Cl、Brである。
【0029】
前記錯体のOLED発光素子における使用である。
【0030】
前記構造を有する白金(II)錯体を用いて、熱沈着と溶液処理でOLED素子を製造することができる。
【0031】
1つまたは複数の上記錯体を含む有機発光素子である。
【0032】
ここでは、熱蒸着によって、この素子において層の形でこの錯体を印加する。
【0033】
ここでは、スピンコーティングによって、この素子において層の形でこの錯体を印加する。
【0034】
ここでは、インクジェット印刷によって、この素子において層の形でこの錯体を印加する。
【0035】
上記有機発光素子は、電流を印加すると、その素子は赤橙色光を放射する。
【0036】
本発明における有機金属錯体から、高蛍光量子効率、良好な熱安定性及び低消光定数を有し、高発光効率、低ロールオフの赤橙色光OLED素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の有機電界発光素子の構成の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、実施例に関連して本発明をさらに詳細に説明する。
【0039】
前記錯体の製造方法は、以下に示すように、初期基質S1とS2からBuchwald-Hartwigカップリング反応によって基質S3を得て、S3とS4からBuchwald-Hartwigカップリング反応によって基質S5を得て、S5をピリジン塩酸塩の作用で脱メチル化してS6を得て、S6とK
2PtCl
4を反応させて目的生成物Pを得るステップを含む。
【化12】
【0040】
本発明における化合物合成に係る初期基質及び溶媒は、いずれも安耐吉、百霊威、アラジン等の当業者に知られているメーカから購入される。
【0041】
【0042】
化合物3の合成:19.92g(0.10mol)の化合物1、26.92g(0.10mol)の化合物2、450mg(0.02eq.,2mmol)の酢酸パラジウム23、1.05g(0.04eq.,4mmol)のトリフェニルホスフィン、22.44g(2.0eq.,0.20mol)のt-ブトキシカリウムをフラスコに添加し、200mLのジオキサンを加え、窒素保護下で8時間加熱還流反応を行う。反応停止後、室温まで冷却してロタバップで溶媒を除去してから、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集して乾燥し、ロタバップで溶媒を除去した後に、メタノールで再結晶して32.18gの目的生成物化合物3を得た。収率は90%で、純度は99.5%である。
【0043】
化合物5の合成:17.88g(50mmol)の化合物3、11.75g(50mmol)の化合物4、225mg(0.02eq.,1mmol)の酢酸パラジウム、0.53g(0.04eq.,2mmol)のトリフェニルホスフィン、11.22g(2.0eq.,0.10mol)のt-ブトキシカリウムをフラスコに添加し、200mLのジオキサンを加え、窒素保護下で8時間加熱還流反応を行う。反応停止後、室温まで冷却してロタバップで溶媒を除去してから、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集して乾燥し、ロタバップで溶媒を除去した後に、メタノールで再結晶して23.83gの目的生成物化合物5を得た。収率は88%で、純度は99.9%である。
【0044】
化合物6の合成:化合物5を5.42g(10mmol)、ピリジン塩酸塩を30g取り、窒素保護下で200°に加熱して8時間反応させる。反応停止後、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集して乾燥し、ロタバップで溶媒を除去した後に、メタノールで再結晶して4.48gの目的生成物化合物6を得た。収率は85%で、純度は99.9%である。マススペクトル(ESI-)([M-H]-)C36H37N3O理論値:526.29;実測値:526.26。
【0045】
化合物P1の合成:1.06g(2.0mmol)の化合物6、160mgのテトラブチルアンモニウムブロミド(0.25eq.,0.5mmol)と930mg(1.2eq.,2.4mmol)のテトラクロロ白金酸カリウムを酢酸25mLに溶解し、真空引きをして窒素を通して複数回置換を行った後、130℃まで撹拌加熱して12hr反応させる。反応終了後、冷却してロタバップで溶媒を除去してから、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、ロタバップで溶媒を除去し、n-へキサン/酢酸エチル系カラムクロマトグラフィによって、得られた粗生成物を真空で昇華させて赤色の固体648mgを得た。収率は45%であり、純度は99.9%である。マススペクトル(ESI-)([M-H]-)C36H34N3OPt理論値:719.24;実測値:719.23。
【0046】
【0047】
化合物8の合成:27.53g(0.10mol)の化合物7、26.92g(0.10mol)の化合物2、450mg(0.02eq.,2mmol)の酢酸パラジウム、1.05g(0.04eq.,4mmol)のトリフェニルホスフィン、22.44g(2.0eq.,0.20mol)のt-ブトキシカリウムをフラスコに添加し、250mLのジオキサンを加え、窒素保護下で8時間加熱還流反応を行う。反応停止後、室温まで冷却してロタバップで溶媒を除去してから、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集して乾燥し、ロタバップで溶媒を除去した後に、メタノールで再結晶して40.82gの目的生成物化合物8を得た。収率は88%で、純度は99.5%である。
【0048】
化合物10の合成:23.18g(50mmol)の化合物8、14.56g(50mmol)の化合物9、225mg(0.02eq.,1mmol)の酢酸パラジウム、0.53g(0.04eq.,2mmol)のトリフェニルホスフィン、11.22g(2.0eq.,0.10mol)のt-ブトキシカリウムをフラスコに添加し、200mLのジオキサンを加え、窒素保護下で8時間加熱還流反応を行う。反応停止後、室温まで冷却してロタバップで溶媒を除去してから、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集して乾燥し、ロタバップで溶媒を除去した後に、メタノールで再結晶して30.32gの目的生成物化合物10を得た。収率は90%で、純度は99.9%である。
【0049】
化合物11の合成:化合物10を6.74g(10mmol)、ピリジン塩酸塩を40g取り、窒素保護下で200℃に加熱して8時間反応させる。反応停止後、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集して乾燥し、ロタバップで溶媒を除去した後に、メタノールで再結晶して5.28gの目的生成物化合物11を得た。収率は80%で、純度は99.9%である。マススペクトル(ESI-)([M-H]-)C46H48N3O理論値:658.39;実測値:658.37。
【0050】
化合物P6の合成:1.32g(2.0mmol)の化合物11、160mgのテトラブチルアンモニウムブロミド(0.25eq.,0.5mmol)と930mg(1.2eq.,2.4mmol)のテトラクロロ白金酸カリウムを酢酸25mLに溶解し、真空引きをして窒素を通して複数回置換を行った後、130℃まで撹拌加熱して12hr反応させる。反応終了後、冷却してロタバップで溶媒を除去してから、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、ロタバップで溶媒を除去し、n-へキサン/酢酸エチル系カラムクロマトグラフィによって、得られた粗生成物を真空で昇華させて赤色の固体716mgを得た。収率は42%であり、純度は99.9%である。マススペクトル(ESI-)([M-H]-)C46H46N3OPt理論値:851.34;実測値:851.32。
【0051】
【0052】
化合物13の合成:19.92g(0.10mol)の化合物1、24.12g(0.10mol)の化合物12、450mg(0.02eq.,2mmol)の酢酸パラジウム23、1.05g(0.04eq.,4mmol)のトリフェニルホスフィン、22.44g(2.0eq.,0.20mol)のt-ブトキシカリウムをフラスコに添加し、250mLのジオキサンを加え、窒素保護下で8時間加熱還流反応を行う。反応停止後、室温まで冷却してロタバップで溶媒を除去してから、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集して乾燥し、ロタバップで溶媒を除去した後に、メタノールで再結晶して32.36gの目的生成物化合物13を得た。収率は90%で、純度は99.5%である。
【0053】
化合物15の合成:17.98g(50mmol)の化合物13、19.78g(50mmol)の化合物14、225mg(0.02eq.,1mmol)の酢酸パラジウム、0.53g(0.04eq.,2mmol)のトリフェニルホスフィン、11.22g(2.0eq.,0.10mol)のt-ブトキシカリウムをフラスコに添加し、250mLのジオキサンを加え、窒素保護下で8時間加熱還流反応を行う。反応停止後、室温まで冷却してロタバップで溶媒を除去してから、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集して乾燥し、ロタバップで溶媒を除去した後に、メタノールで再結晶して28.64gの目的生成物化合物15を得た。収率は85%で、純度は99.9%である。
【0054】
化合物16の合成:化合物15を6.74g(10mmol)、ピリジン塩酸塩を40g取り、窒素保護下で200°に加熱して8時間反応させる。反応停止後、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集して乾燥し、ロタバップで溶媒を除去した後に、メタノールで再結晶して5.61gの目的生成物化合物16を得た。収率は85%で、純度は99.9%である。マススペクトル(ESI-)([M-H]-)C46H48N3O理論値:658.39;実測値:658.37。
【0055】
化合物P24の合成:1.32g(2.0mmol)の化合物16、160mgのテトラブチルアンモニウムブロミド(0.25eq.,0.5mmol)と930mg(1.2eq.,2.4mmol)のテトラクロロ白金酸カリウムを酢酸25mLに溶解し、真空引きをして窒素を通して複数回置換を行った後、130℃まで撹拌加熱して12hr反応させる。反応終了後、冷却してロタバップで溶媒を除去してから、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、ロタバップで溶媒を除去し、n-へキサン/酢酸エチル系カラムクロマトグラフィによって、得られた粗生成物を真空で昇華させて赤色の固体682mgを得た。収率は40%であり、純度は99.9%である。マススペクトル(ESI-)([M-H]-)C46H46N3OPt理論値:851.34;実測値:851.32。
【0056】
【0057】
化合物18の合成:30.34g(0.10mol)の化合物17、26.92g(0.10mol)の化合物2、450mg(0.02eq.,2mmol)の酢酸パラジウム23、1.05g(0.04eq.,4mmol)のトリフェニルホスフィン、22.44g(2.0eq.,0.20mol)のt-ブトキシカリウムをフラスコに添加し、300mLのジオキサンを加え、窒素保護下で8時間加熱回流反応を行う。反応停止後、室温まで冷却してロタバップで溶媒を除去してから、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集して乾燥し、ロタバップで溶媒を除去した後に、メタノールで再結晶して44.25gの目的生成物化合物18を得た。収率は90%で、純度は99.5%である。
【0058】
化合物20の合成:25.58g(50mmol)の化合物18、16.96g(50mmol)の化合物19、225mg(0.02eq.,1mmol)の酢酸パラジウム、0.53g(0.04eq.,2mmol)のトリフェニルホスフィン、11.22g(2.0eq.,0.10mol)のt-ブトキシカリウムをフラスコに添加し、300mLのジオキサンを加え、窒素保護下で8時間加熱回流反応を行う。反応停止後、室温まで冷却してロタバップで溶媒を除去してから、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集して乾燥し、ロタバップで溶媒を除去した後に、メタノールで再結晶して30.75gの目的生成物化合物20を得た。収率は82%で、純度は99.9%である。
【0059】
化合物21の合成:化合物20を7.50g(10mmol)、ピリジン塩酸塩を50g取り、窒素保護下で200°に加熱して8時間反応させる。反応停止後、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集して乾燥し、ロタバップで溶媒を除去した後に、メタノールで再結晶して5.89gの目的生成物化合物21を得た。収率は80%で、純度は99.9%である。マススペクトル(ESI-)([M-H]-)C52H52N3O理論値:734.42;実測値:734.40。
【0060】
化合物P45の合成:1.47g(2.0mmol)の化合物21、160mgのテトラブチルアンモニウムブロミド(0.25eq.,0.5mmol)と930mg(1.2eq.,2.4mmol)のテトラクロロ白金酸カリウムを酢酸25mLに溶解し、真空引きをして窒素を通して複数回置換を行った後、130℃まで撹拌加熱して12hr反応させる。反応終了後、冷却してロタバップで溶媒を除去してから、適量の水と酢酸エチルで抽出し、有機相を収集し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、ロタバップで溶媒を除去し、n-へキサン/酢酸エチル系カラムクロマトグラフィによって、得れらた粗生成物を真空で昇華させて赤色の固体780mgを得た。収率は42%であり、純度は99.9%である。マススペクトル(ESI-)([M-H]-)C50H50N3OPt理論値:927.37;実測値:927.35。
【0061】
実施例のPt(II)錯体について、ジクロロメタン溶液では橙赤色発光が顕著に現れる。以下の表に示すとおりである。
【化19】
【表1】
【0062】
本発明の化合物の応用例を以下に示す。
ITO/TAPC(60nm)/TCTA:Pt(II)(40nm)/TmPyPb(30nm)/LiF(1nm)/Al(80nm)
【0063】
素子の製造方法:
【0064】
アセトン、エタノール、蒸留水を順に用いて透明の陽極酸化インジウム錫(ITO、20)(10Ω/sq)ガラス基板10を超音波洗浄し、酸素プラズマで5分間処理する。
【0065】
次にITO基板を真空気相蒸着装置の基板固定器に取り付ける。蒸着装置においては、システムの圧力を10-6torr.に制御する。
【0066】
続いて、ITO基板上に60nmの空孔伝送層(30)材料TAPCを蒸着させる。
【0067】
その後、厚さ40nmの発光層材料(40)TCTAを蒸着させ、そのうち、質量分率の異なる白金(II)錯体ドーパント剤をドーパントする。
【0068】
次いで厚さ30nmの電子伝送層(50)材料TmPyPbを蒸着させる。
【0069】
そのあと、厚さ1nmのLiFを蒸着させて電子注入層(60)とする。
【0070】
最後に厚さ80nmのAlを陰極(70)として蒸着させて素子のパッケージを完成する。
図1に示す。
【化20】
【0071】
素子の構造と製造方法は全く同じで、違いは有機金属錯体P0、P1、P6、P24、P45を順次使用して発光層におけるドーパント剤とドーパント濃度とする。ここで、Pt0は、従来のO^N^N^O系赤色光材料である。
【化21】
【0072】
【0073】
四座白金(II)錯体のドーパント濃度がそれぞれ4wt%、8wt%、12wt%の条件で、上記ITO/HTL-1(60nm)/EML-1:Pt(II)(40nm)/ETL-1(30nm)/LiF(1nm)/Al(80nm)素子の基本構造で素子を製造する。Pt0による素子の性能を参考にして、四座白金(II)錯体P1、P6、P24、P45の素子は起動電圧Vonで、Pt0の素子に比べて、いずれも異なる程度の低減がある。同時に、1000cd/A条件の下で、P1、P6、P24、P45に基づく素子は電流効率(CE)、電力効率(PE)と外量子効率(EQE)においては、P0に比べて、いずれも異なる程度の向上があり、特にP45は電流効率(CE)、電力効率(PE)と外量子効率(EQE)の面での向上が明らかである。四座白金(II)錯体のドーパント濃度が増加すると、P1、P6、P24、P45の効率はすべて異なる程度の向上がある。P45はP1、P6、P24よりも大きな位置抵抗基があり、分子間の凝集作用を低下させ、励起錯体の形成を避け、発光効率を高める。
【0074】
本発明に係る四座白金(II)錯体は、中心白金は6員環+6員環+5員環キレート配位の形であり、構成される錯体は安定的であり、優れた剛性構造を有し、分子内の回転や振動などの非放射エネルギーの散逸を大きく減少することができ、白金(II)錯体の発光効率と性能の向上に有利である。同時に、配位子骨格におけるトリフェニルアミン構造部分は、異なる置換基を容易に添加することができ、分子構造の最適化と制御を実現しやすい。
【0075】
以上のように、本発明により製造される有機電界発光素子の性能は、基準素子と比較して良好な性能向上を示し、係る新型N^N^C^O四座白金(II)錯体の金属有機材料は、大きな応用価値を有する。