(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】フックの外れ止め装置
(51)【国際特許分類】
B66C 1/36 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
B66C1/36 A
(21)【出願番号】P 2022173645
(22)【出願日】2022-10-28
【審査請求日】2022-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391011065
【氏名又は名称】株式会社神内電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】井伊 浩行
(72)【発明者】
【氏名】森 圭司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】中川 武吉
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-20897(JP,A)
【文献】実開平3-122076(JP,U)
【文献】特開2019-150231(JP,A)
【文献】特開2001-253679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00- 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フックの首部に設けられた突起部に設置される支軸部材に、内側外れ止め部材と、外側外れ止め部材とが、それぞれ前後方向に回動し得るように取り付けられるとともに、
前記支軸部材には前記外側外れ止め部材を前記フックの前方へ回動する向きに付勢する付勢部材が取り付けられ、
前記外側外れ止め部材及び前記内側外れ止め部材はいずれも、正面部と、前記正面部の両側縁から背面側に延び出して上端が前記支軸部材に取り付けられる左右一対の側面腕部と、を具備し、前記正面部に直交する横幅方向の断面が前記フックの首部の横幅よりも大きく開口する溝形をなして、前記外側外れ止め部材の溝内に前記内側外れ止め部材が収容され、
前記内側外れ止め部材は、その正面部を前記フックの先端部近傍の内側面に当接させる位置から、前記正面部を前記フックの首部の下方に当接させる位置までの範囲内で回動し得る形状をなし、
前記内側外れ止め部材には、前記外側外れ止め部材に形成された係止片が背面側から係止されて、前記外側外れ止め部材が前方へ回動する際には、それに伴って前記内側外れ止め部材も前方へ回動するように保持され、
前記付勢部材の付勢力によって前記外側外れ止め部材及び内側外れ止め部材が前方へ回動し、前記内側外れ止め部材が前記フックの先端部近傍に当接すると、外側外れ止め部材の正面部が側面視において前記フックの先端部に重なる位置ないしそれよりも前方へ迫り出す位置に保持され、
前記外側外れ止め部材が前記付勢部材の付勢力に抗して後方に押し込まれると、前記外側外れ止め部材の正面部が内側外れ止め部材の正面部に当接して前記内側外れ止め部材を前記外側外れ止め部材とともに後方へ回動させ、前記外側外れ止め部材の正面部が前記内側外れ止め部材の正面部に重なるようにして前記フックの首部下方に保持される、
ことを特徴とするフックの外れ止め装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたフックの外れ止め装置において、
前記係止片が、前記外側外れ止め部材の両側面腕部の後縁に形成されて、前記内側外れ止め部材の側面腕部の後縁に係止される
ことを特徴とするフックの外れ止め装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたフックの外れ止め装置において、
前記外側外れ止め部材の正面部の下縁中央部分には、前記フックの先端部との干渉を避けるために正面視円弧状または逆U字形の切欠部が形成され、前記切欠部の左右両側部が前記フックの先端部を跨いでフックの両側方に張り出すように形成されている
ことを特徴とするフックの外れ止め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が開示する発明は、クレーン等のフックに掛止されたワイヤーロープの玉掛け具が不意に外れるのを防止するフックの外れ止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーン等によって吊り下げられた略C形のフックに、玉掛け用ワイヤーロープの端部に形成されたアイ(環状部)を掛止して吊り荷を昇降移動させる際、アイがフックから不意に外れるのを防ぐため、フックの掛け口には通常、外れ止めが取り付けられている。従来の一般的な外れ止めは、
図10に示すように、フック1の首部11の前面側に設けられた突起部12に、細長い桿材9の基端部が回動可能に取り付けられ、この桿材9の自由端部がフック1の先端部13側に延びて掛け口10を閉じるように構成されている。桿材9の基端部の支軸にはねじりコイルばね等の付勢部材91が装着されて、桿材9の自由端部が常に掛け口10の内側からフック1の先端部13に当接するように付勢されている。
【0003】
ところが、このような外れ止めが装着されていても、例えば長尺の吊り荷を昇降させる際、まれにアイWがフック1から外れて重大な事故になる場合がある。その現象は、例えば1本吊り状態の吊り荷の片端部が着地したとき、ワイヤーロープが緩んでアイWがフック1から浮き上がり、ワイヤーロープのねじれ戻りやフック1の回転によってフック1の先端部13をアイWが乗り越え、外れ止めの外側を廻り込んでフック1から抜け落ちてしまう、という挙動によるものである。この挙動は、「知恵の輪現象」や「背抜け現象」とも呼ばれている。
【0004】
特許文献1~4等には、かかる現象による事故災害を防止するための外れ止め装置が提案されている。また、非特許文献1には、業界団体による事故災害の事例分析や防止対策等が提言されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平4-112881号公報
【文献】特開2001-253679号公報
【文献】特開2004-307108号公報
【文献】特開2006-264953号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】日本クレーン協会機関誌『クレーン』第52巻 No.598 つり具委員会報告「クレーン等フックの外れ止め装置に関する調査報告書(概要編)」 2014年1月、(ISSN:0285-3892)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1~3に開示された外れ止め装置は、いずれも
図10に示した外れ止め用の桿材9(に相当する部材)とは別に、フックの前方(先端部の延長方向)からフックの先端部に被さって、フックの先端部と桿材との間に形成される谷間を塞ぐカバー(第2の外れ止め)を具備している。そして、ワイヤーロープのアイをフックに掛け外しする際には、カバーをフックの前方へ持ち上げつつ、桿材をフックの奥側へ押し込んで、フックの掛け口を開く機構になっている。このように、二つの部材を同時に前後反対向きに回動させる操作は作業性が良いとはいえず、特にアイW自体が重い場合には手指の負担が大きくなるので、改良の余地がある。
【0008】
特許文献4に開示された外れ止め装置は、
図10に示した外れ止め用の桿材9(に相当する部材)に、その前面側(フックの先端部の延長側)に膨出する膨出部を形成し、その膨出部の高さをフックの先端部と揃えて、フックの先端部と桿材との間に形成される谷間を塞ぐようにしたものである。アイをフックに掛け外しする際には、桿材をフックの奥側へ押し込むだけでよいので、前記特許文献1~3に開示された外れ止め装置に比べると、フックの掛け口を開閉する操作は簡単である、しかしながら、この構成では、桿材に形成された膨出部によって桿材の実質的な厚みが増大するので、フックの掛け口を開くために桿材をフックの奥まで押し込んだとき、膨出部の厚み分だけフックの掛け口の有効寸法が狭くなって、アイWを掛け外しする際の邪魔になりかねない。特にアイが大きい場合は、フックに掛止されているアイを取り外す作業が困難になるおそれがある。
【0009】
本願が開示する発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、アイその他の玉掛け用具を掛け外しする際に、フックの掛け口を開く操作が簡単で、掛け口の有効寸法も大きく確保することのできる外れ止め装置を、より簡素で合理的な機構によって実現することを課題とする。
【0010】
なお、本願が開示する発明における「玉掛け用具」には、ワイヤーロープの端部に設けられたアイだけでなく、各種ロープ、チェーン、ベルトスリング等の中間部分や、それらの端部をまとめたマスターリンク、吊り荷自体に設けられた閉環状の掛止部材、等も包含される。また、本願が開示する発明における「フック」には、クレーン用フックのほか、それに類するデリック、ホイストその他の揚重機械のフックも包含される。本明細書では、それらを総称して単に「フック」という。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するために、本願が開示する発明のフックの外れ止め装置は、フックの首部に設けられた突起部に設置される支軸部材に、内側外れ止め部材と外側外れ止め部材とが、それぞれ前後方向に回動し得るように取り付けられるとともに、前記支軸部材には前記外側外れ止め部材を前記フックの前方へ回動する向きに付勢する付勢部材が取り付けられ、前記外側外れ止め部材及び前記内側外れ止め部材はいずれも、正面部と、前記正面部の両側縁から背面側に延び出して上端が前記支軸部材に取り付けられる左右一対の側面腕部と、を具備し、前記正面部に直交する横幅方向の断面が前記フックの首部の横幅よりも大きく開口する溝形をなして、前記外側外れ止め部材の溝内に前記内側外れ止め部材が収容され、前記内側外れ止め部材は、その正面部を前記フックの先端部近傍の内側面に当接させる位置から、前記正面部を前記フックの首部の下方に当接させる位置までの範囲内で回動し得る形状をなし、前記内側外れ止め部材には、前記外側外れ止め部材に形成された係止片が背面側から係止されて、前記外側外れ止め部材が前方へ回動する際には、それに伴って前記内側外れ止め部材も前方へ回動するように保持され、前記付勢部材の付勢力によって前記外側外れ止め部材及び内側外れ止め部材が前方へ回動し、前記内側外れ止め部材が前記フックの先端部近傍に当接すると、外側外れ止め部材の正面部が側面視において前記フックの先端部に重なる位置ないしそれよりも前方へ迫り出す位置に保持され、前記外側外れ止め部材が前記付勢部材の付勢力に抗して後方に押し込まれると、前記外側外れ止め部材の正面部が内側外れ止め部材の正面部に当接して前記内側外れ止め部材を前記外側外れ止め部材とともに後方へ回動させ、前記外側外れ止め部材の正面部が前記内側外れ止め部材の正面部に重なるようにして前記フックの首部下方に保持される、との構成を採用する。
【0012】
前述の構成において、前記係止片は、前記外側外れ止め部材の両側面腕部の後縁に形成されて、前記内側外れ止め部材の側面腕部の後縁に係止される、ものとすることができる。
【0013】
また、前述の構成において、前記外側外れ止め部材の正面部の下縁中央部分には、前記フックの先端部との干渉を避けるために正面視円弧状または逆U字形の切欠部が形成され、前記切欠部の左右両側部が前記フックの先端部を跨いでフックの両側方に張り出すように形成されている、ものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
前述のように構成されるフックの外れ止め装置によれば、フックに玉掛け用具を掛け外しする際に、フックの掛け口を開く操作が簡単になり、掛け口の有効寸法も大きく確保することができるので、玉掛け作業の効率が大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本願が開示する発明の実施形態に係る外れ止め装置を備えたフックの、掛け口を閉じた状態の側面図である。
【
図2】
図1に示したフックの、掛け口を開いた状態の側面図である。
【
図3】
図1に示したフックの、掛け口を閉じた状態の正面図である。
【
図4】
図3において外側外れ止め部材を取り外した状態の正面図である。
【
図5】
図3中に記載したA-A位置における、掛け口を開いた状態の断面図である。
【
図6】
図3中に記載したA-A位置における、掛け口を閉じた状態の断面図である。
【
図7】内側外れ止め部材の側面図及び背面図である。
【
図8】外側外れ止め部材の側面図及び背面図である。
【
図10】従来の一般的な外れ止めの構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下において、部位・部材の位置関係や動作の向きを説明する際には、通常の使用状態、つまりフックがクレーン等から吊り下げられた状態を基準にして「上下方向(高さ方向)」を特定する。また、玉掛け用具が掛け外しされるフックの開口側を「正面」または「前(前面・前方)」、C字状に湾曲して閉じている側を「背面」または「後(後面・後方)」と称し、正面側から背面側に向かってフックを見た向きを基準にして「前後方向(奥行方向)」と「左右方向(横幅方向)」を特定することとする。
【0017】
図1~
図9は、本願が開示する発明の実施形態に係るフックの外れ止め装置2を示している。この外れ止め装置2は、フック1の首部11の前面側に設けられた突起部12にフック1の横幅方向に設置される支軸部材3と、支軸部材3に取り付けられてフック1の前後方向に回動し得るように保持される内側外れ止め部材4及び外側外れ止め部材5と、同じく支軸部材3に取り付けられて外側外れ止め部材5をフック1の前方へ回動する向きに付勢する付勢部材6と、を含んで構成される。
【0018】
支軸部材3は、
図3に示すように、突起部12に形成された孔部(図示せず)に挿し込まれる長めの軸ボルト31と、突起部12を左右から挟むようにして軸ボルト31に装着される一対のカラー32、32と、軸ボルト31の先端に取り付けられるバネ座金33とナット34と、を組み合わせて構成されている。軸ボルト31は、フック1の首部11の横幅よりも長寸の脚部を有している。円筒状のカラー32は、鍛造製品であるフック1に形成された孔部の加工精度をカバーするために取り付けられている。
【0019】
内側外れ止め部材4は、一枚の金属板材を切断・折曲加工するなどして形成された部材で、
図7に示すように、正面視略矩形の平坦な正面部41と、正面部41の左右両側縁から背面側に延び出した左右一対の側面腕部42、42とを具備して、正面部41に直交する横幅方向の断面がフック1の首部11の横幅よりも大きく開口する溝形をなしている。側面腕部42は上方にも延びて、その上端が支軸部材3のカラー32に取り付けられている。
【0020】
内側外れ止め部材4は、前述した従来の一般的な外れ止め用の桿材9(
図10)と同様に、フックの内側から掛け口10を閉鎖する部材である。そのため、内側外れ止め部材4は、正面部41の下縁をフック1の先端部13近傍の内側面に当接させる位置(
図1及び
図5:以下、これを「掛け口閉鎖位置」と呼ぶ。)から、フック1の首部11の下方に当接させる位置(
図2及び
図6:以下、これを「掛け口開放位置」と呼ぶ。)までの範囲内で回動し得るように、全体の高さ寸法が設定されている。掛け口閉鎖位置における正面部41とフック1との当接状態を良好にするため、正面部41の下縁中央部分には略円弧状または逆U字形の切欠部43が形成されている。また、掛け口開放位置においては、正面部41がフック1の首部11の下方前面に当接すると、両側面腕部42はフック1の首部11を跨ぐようにして首部11の左右に保持される。
【0021】
外側外れ止め部材5は、フックの先端部13を突出させないように覆うカバーとして機能する部材である。内側外れ止め部材4と同様に外側外れ止め部材5も、一枚の金属板材を切断・折曲加工するなどして形成され、
図8に示すように、正面視略矩形の平坦な正面部51と、正面部51の左右両側縁から背面側に延び出した左右一対の側面腕部52、52とを具備している。側面腕部52は上方にも延びて、その上端が支軸部材3のカラー32に取り付けられる。外側外れ止め部材5の正面部51に直交する横幅方向の断面は内側外れ止め部材4の幅寸法よりもやや大きく開口する溝形をなしており、その溝内に内側外れ止め部材4が、互いの正面部41、51を重ねるようにして収容される。
【0022】
外側外れ止め部材5の側面腕部52の奥行きも内側外れ止め部材4の奥行きより大きく形成されている。外側外れ止め部材5の両側面腕部52の後縁には、溝内側に突出して互いに対向する係止片54が形成されており、それらの係止片54が内側外れ止め部材4の側面腕部42の後縁に背面側から係止されるように組み付けられる。こうして外側外れ止め部材5の正面部51と係止片54との間に挟み込まれた内側外れ止め部材4は、外側外れ止め部材5に対し、支軸部材3を支点とする一定の角度範囲(例示形態では約25°)内で揺動し得るように保持される。
【0023】
外側外れ止め部材5の正面部51の下縁中央部分には、フック1の先端部13との干渉を避けるために正面視円弧状または逆U字形の切欠部53が形成されており、その切欠部53の左右両側部はフック1の先端部13を跨いでフック1の両側方に張り出すように形成されている。
【0024】
付勢部材6は、例示形態ではねじりコイルばねによって構成されている。そのねじりコイルばねは、
図9に示すように、略U字形に湾曲する跨ぎ部61と、跨ぎ部61を介して連続する左右一対のコイル部62と、各コイル部62から互いに平行に延び出す左右一対のアーム部63、63とを有している。そして、左右のコイル部62が左右のカラー32にそれぞれ取り付けられ、跨ぎ部61がフック1の突起部12の前面に係止され、アーム部63が外側外れ止め部材5の正面部51の背面側に係止されて、外側外れ止め部材5をフック1の前方へ回動する向きに付勢している。
【0025】
このように、支軸部材3を共有してフック1に取り付けられた内側外れ止め部材4及び外側外れ止め部材5は、以下のように動作する。まず、外力が作用しないとき、付勢部材6の付勢力によって外側外れ止め部材5がフック1の前方へ押し出される。すると、その外側外れ止め部材5の係止片54が内側外れ止め部材4の側面腕部42に係止されて、内側外れ止め部材4も前方に押し出される。内側外れ止め部材4は、その正面部41をフック1の先端部13の内側面に当接させたところで、それ以上前方には回動できなくなり停止する。そのとき、付勢部材6によって付勢されている外側外れ止め部材5は、その正面部51が側面視においてフック1の先端部13に重なる位置、ないしそれよりも前方へ迫り出す位置まで回動して保持される。こうして、フック1の先端部13と内側外れ止め部材4との間に形成される谷間を外側外れ止め部材5の正面部51によって塞ぎ、フックの先端部13を外側外れ止め部材5よりも突出させないようにすることで、知恵の輪現象による玉掛け用具の抜け落ちを確実に防ぐことができる。外側外れ止め部材5の正面部51がフック1の先端を跨いで左右に張り出すことにより、その効果はさらに高くなる。
【0026】
玉掛け用具をフック1に掛止する際には、付勢部材6の付勢力に抗して外側外れ止め部材5の正面部51をフック1の後方に押し込む。この外れ止め装置2では、外力が作用しないとき、外側外れ止め部材5の正面部51が前方斜め下向きに傾斜するように保持されているので、玉掛け用具を把持した両手の親指等で正面部51を押し込む操作を、無理のない角度で容易に行うことができる。
【0027】
外側外れ止め部材5がフック1の後方に押し込まれると、外側外れ止め部材5の正面部51が内側外れ止め部材4の正面部41に当接して、内側外れ止め部材4も一緒に後方へと回動させる。(厳密には両正面部41、51の間にねじりコイルばねのアーム部63が挟まれるが、その厚みは僅かである。)内側外れ止め部材4は、その正面部41をフック1の首部11の下方に当接させたところで、それ以上後方には回動できなくなり停止する。そのとき、外側外れ止め部材5は、その両側面腕部52の間にフック1の首部11と内側外れ止め部材4とを抱き込み、その正面部51を内側外れ止め部材4の正面部41に重ねた状態で、フック1の首部11の下方に保持される。こうして、
図2及び
図6に示すように、フック1の掛け口10が大きく開放される。
【0028】
フック1に掛止されている玉掛け用具を外す際にも、掛止する際と同様にして外側外れ止め部材5の正面部51をフック1の後方に押し込み、外側外れ止め部材5及び内側外れ止め部材4をフック1の首部11の下方に押し付けてフック1の掛け口10を開放する。
【0029】
以上に述べたように、本願が開示する発明の外れ止め装置2によれば、フック1の掛け口10を内側から閉鎖する内側外れ止め部材4と、フック1の先端部13を突出しないようにカバーする外側外れ止め部材5とを、一緒にフック1の後方へ押し込むことにより、フック1の掛け口10をワンアクション(単純な一方向の操作)で開くことができる。そして、掛け口開放位置における掛け口10の有効寸法Fも最大限に確保することができる。外側外れ止め部材5の押し込みを解除すれば、内側外れ止め部材4は自動的に掛け口閉鎖位置に戻り、外側外れ止め部材5はフック1の先端部13と内側外れ止め部材4との間に形成される谷間を塞ぐ位置に戻る。かくして、操作性に優れる外れ止め装置2を、簡素かつ合理的な機構によって実現することができる。しかも、この外れ止め装置2は構成部材の点数が少なく、それらの形状も簡素であるから、安価に製造することができ、既存のフック1に対しても容易に後付けすることができる。
【0030】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない部位、部材の詳細な形状、構造、相対的な位置関係、接合形態等を、例示した実施形態と実質的に同程度の作用効果が得られる範囲内で適宜、改変して実施することができる。
【0031】
例えば、内側外れ止め部材と外側外れ止め部材との係止形態については、例示のような形態だけでなく、いずれか一方の側面腕部に円弧状のガイド長孔を形成し、そのガイド長孔に係止されるガイドピンを他方の側面腕部に取り付ける、などの形態を採用することもできる。また、付勢部材については、例示のようなねじりコイルばねに替えて、薄い板ばねをフックの首部近傍に取り付ける、などの形態を採用することもできる。支軸部材についても、様々な棒状部材や筒状部材等を適宜、組み合わせて構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本願が開示する発明は、重量物を懸吊するクレーン、ホイスト、ウインチ等のフックに幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 フック
10 掛け口
11 首部
12 突起部
13 先端部
2 外れ止め装置
3 支軸部材
31 軸ボルト
32 カラー
33 バネ座金
34 ナット
4 内側外れ止め部材
41 正面部
42 側面腕部
43 切欠部
5 外側外れ止め部材
51 正面部
52 側面腕部
53 切欠部
54 係止片
6 付勢部材
61 跨ぎ部
62 コイル部
63 アーム部
【要約】
【課題】玉掛け用具の掛け外しに際し、フックの掛け口を開く操作が簡単で、掛け口の有効寸法も大きく確保できる外れ止め装置を、簡素で合理的な機構により実現する。
【解決手段】支軸部材3に内側外れ止め部材4と外側外れ止め部材5とが回動可能に取り付けられ、外側外れ止め部材5が前方へ回動するように付勢される。両外れ止め部材は横断面溝形をなして、外側外れ止め部材5の溝内に内側外れ止め部材4が収容され、外側外れ止め部材5の係止片54が内側外れ止め部材4に背面側から係止される。外側外れ止め部材5が前方へ回動する際には内側外れ止め部材4も前方へ回動し、内側外れ止め部材4がフック1の先端部13近傍に当接すると、外側外れ止め部材5がフック1の先端部13を覆う。外側外れ止め部材5が押し込まれると内側外れ止め部材4も後方へ回動し、外側外れ止め部材5が内側外れ止め部材4に重なってフック1の首部11下方に保持される。
【選択図】
図1