(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】検出センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/16 20060101AFI20221219BHJP
G01R 1/22 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G01R15/16
G01R1/22 B
(21)【出願番号】P 2018149868
(22)【出願日】2018-08-09
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】芦川 真也
(72)【発明者】
【氏名】石橋 賢一
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-41925(JP,A)
【文献】特開2014-238386(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0187636(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00-15/26
G01R 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半円状の第1湾曲部と第1支点部とが連結した第1クランプ部と、
前記第1湾曲部よりも中心角が小さく弧長の短い弧状の第2湾曲部と第2支点部とが連結した第2クランプ部とを備え、
前記第1支点部と前記第2支点部とを軸として前記第1湾曲部と前記第2湾曲部とが開閉可能な
、測定対象電線をクランプする検出センサであって、
前記第2湾曲部に、
前記測定対象電線の導体と容量結合するための、端部同士が軸で連結された2つの電極を備えて構成され、前記第2湾曲部の内側で開閉可能な電極部が連結されていることを特徴とする検出センサ。
【請求項2】
前記2つの電極は、前記第2湾曲部と同じ向きで湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の検出センサ。
【請求項3】
前記2つの電極を閉じる方向に力を加える弾性部材と、
前記2つの電極を開いた状態で固定する解除可能な開固定機構と、を
さらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の検出センサ。
【請求項4】
前記開固定機構は、一方の電極をさらに開く方向に押すことで解除されることを特徴とする請求項3に記載の検出センサ。
【請求項5】
前記開固定機構は、一方の電極に軸機構で取り付けられ、端部に爪が形成されたリンク板と、他方の電極に固定され、前記爪と噛み合うラッチと、を含んでいることを特徴とする請求項3または4に記載の検出センサ。
【請求項6】
前記電極部
の2つの電極それぞれが樹脂成形されたハウジングに覆われていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の検出センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の電線をクランプする検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、測定対象の電線をクランプする検出センサ500が記載されている。この検出センサ500は、
図8に示すように、回動軸Aを中心として回動自在に連結された一対のクリップ片501、502を備えている。クリップ片501には受け面503が形成され、クリップ片502には押し付け面504が形成されており、測定対象電線Wを挟み込むことができるようになっている。
【0003】
クリップ片502の押し付け面504の長さは、クリップ片501の受け面503の長さよりも短くなっており、クリップ片501の受け面503の内部には測定対象電線Wと容量結合する電極505が配設されている。
【0004】
電極505は、クリップ片501、502が閉じたときの押し付け面504に対応して配置されているため、
図8(a)に示すように径の大きい測定対象電線Wであっても、
図8(b)に示すように径の小さい測定対象電線Wであっても、測定対象電線Wを電極505に近接した状態でクランプすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
検出センサ500の検出感度を高くするためには、測定電極505を大きくすることが効果的である。しかしながら、検出センサ500の構成では、測定電極505を大きくしても、特に径の小さい測定対象電線Wをクランプしたときに、測定電極505が測定対象電線Wと近接する領域が大きくならないため、測定電極505の大きさを有効に活用できない。
【0007】
そこで、本発明は、径の異なる測定対象電線をクランプ可能な検出センサの検出感度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の1態様である検出センサは、半円状の第1湾曲部と第1支点部とが連結した第1クランプ部と、前記第1湾曲部よりも中心角が小さく弧長の短い弧状の第2湾曲部と第2支点部とが連結した第2クランプ部とを備え、前記第1支点部と前記第2支点部とを軸として前記第1湾曲部と前記第2湾曲部とが開閉可能な検出センサであって、前記第2湾曲部に、2つの電極を備えて構成され、前記第2湾曲部の内側で開閉可能な電極部が連結されていることを特徴とする。
ここで、前記2つの電極は、前記第2湾曲部と同じ向きで湾曲していることができる。
また、前記2つの電極を閉じる方向に力を加える弾性部材と、前記2つの電極を開いた状態で固定する解除可能な開固定機構と、をさらに備えてもよい。
このとき、前記開固定機構は、一方の電極をさらに開く方向に押すことで解除されることができる。
また、前記開固定機構は、一方の電極に軸部材で取り付けられ、端部に爪が形成されたリンク板と、他方の電極に固定され、前記爪と噛み合うラッチと、を含んでいてもよい。
また、前記電極部が樹脂成形されたハウジングに覆われていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、径の異なる測定対象電線をクランプ可能な検出センサの検出感度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】下部クランプ部と電極部とを説明する図である。
【
図4】径の大きい測定対象電線Wをクランプしたときの様子を示す図である。
【
図5】径の小さい測定対象電線Wをクランプしたときの様子を示す図である。
【
図6】本発明の検出センサの適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の検出センサ100を示す図である。検出センサ100は、径の異なる測定対象電線Wをクランプする機能を有しており、上部クランプ部110と、下部クランプ部120と、電極部130とを備えている。上部クランプ部110と、下部クランプ部120は、軸140を支点に開閉できるようになっている。なお、上部、下部の名称は便宜的なものである。
【0012】
上部クランプ部110は、半円状の上部湾曲部110aと、操作者が開閉操作を行なう上部把持部110bと、上部湾曲部110aと上部把持部110bとを連結するとともに、開閉用の軸140が位置する上部支点部110cとを備えている。ただし、厳密に半円でなくてもよい。
【0013】
下部クランプ部120は、上部湾曲部110aよりも中心角の小さい弧状の下部湾曲部120aと、操作者が開閉操作を行なう下部把持部120bと、下部湾曲部120aと下部把持部120bとを連結するとともに、軸140が位置する下部支点部120cとを備えている。
【0014】
上部湾曲部110aの径長と下部湾曲部120aの径長とはほぼ同一とすることができ、開いたときに円を形成する向きで上部クランプ部110と下部クランプ部120とが軸140で連結されている。このとき、弾性部材であるばね141により、上部クランプ部110と下部クランプ部120とが閉じる方向に力が加えられている。
【0015】
下部湾曲部120aの弧長は上部湾曲部110aの弧長よりも短いため、本図に示すように、測定対象電線Wをクランプしていないときには、ばね141の作用により、下部湾曲部120aの先端(下部支点部120cから遠い方)部分が上部湾曲部110aの内径部分に突き当たった状態で検出センサ100が安定する。操作者は、上部把持部110bと下部把持部120bとを握ることで開操作を行ない、握りを弛めることで閉操作を行なうことができる。
【0016】
電極部130は、測定対象電線Wの外周に沿うように、1/4円状の2つの湾曲電極(第1電極131、第2電極132)を備えて構成されている。ただし、厳密に円でなくてもよく、直線に近くてもよい。第1電極131と第2電極132は、それぞれの端部同士が、半円を形成できる向きで、軸133により下部湾曲部120aの中央部分に連結されている。すなわち、電極部130は、下部湾曲部120aにおいて、下部湾曲部120aの内側で開閉動作を行なえる。電極部130の径長は下部湾曲部120aの径長よりも短いものとする。
【0017】
第1電極131、第2電極132は、下部湾曲部120aと同じ方向で半円を形成できる向きとなっており、この状態で下部支点部120cに近い方を第1電極131とする。第1電極131、第2電極132とも、金属製であり、例えば、樹脂成形されたハウジングに覆われていてもよい。電極部130からは、リード線、ケーブル等が引き出される。
【0018】
図2(a)に示すように、第1電極131と第2電極132との軸133部分には、弾性部材であるばね142が配置されており、第1電極131、第2電極132が閉じる方向に力が加えられている。
図2(b)は、下部クランプ部120および電極部130を、上部クランプ部110側から見た図である。このように、下部クランプ部120、電極部130は、ある程度の厚みを有して形成されている。上部クランプ部110についても同様である。
【0019】
第1電極131と第2電極132とは、ばね142により閉じる方向に力が加えられているが、解除可能な開固定機構を備えており、開いた状態で固定できるようになっている。開固定機構は、開固定状態からさらに開くことで解除されるようになっており、例えば、
図3に示すように、リンク板135とラッチ134とで構成することができる。
【0020】
リンク板135は、円弧形状となっており、一端が第1電極131の開放端側に軸機構136で取り付けられており、他端が爪形状となっている。リンク板の中央付近は、軸133を避けるようにU字型となっており、その部分に突起136が形成されている。突起136は、下部クランプ部120に形成された溝123に嵌っている。このため、リンク板135は、軸機構136を支点とし、溝123に沿って移動可能となっている。
【0021】
ラッチ134は、第2電極132の中程に固定されており、電極部130が開いた状態で、リンク板135の爪と噛み合うようになっている。すなわち、リンク板135の爪がラッチ134と噛み合うと、
図3(a)に示すように、電極部130は、開いた状態で固定される。
【0022】
図3(b)に示すように、第1電極131をF方向に押して、さらに開くようにすると、リンク板135の爪がラッチ134から外れて、ばね142の作用により、
図3(c)に示すように、電極部130が閉じることになる。閉じた電極部130は、手動で開いてラッチ134と爪とを噛み合わせることで
図3(a)に示すように開いた状態で固定することができる。ただし、解除可能な開固定機構は本図の例に限られない。
【0023】
検出センサ100で、測定対象電線Wをクランプする場合には、事前に開固定機構により電極部130を開いた状態で固定しておく。そして、上部クランプ部110と下部クランプ部120とを開いて測定対象電線Wを挟み込む。この操作により、測定対象電線Wが第1電極131を開く方向に押すため、開固定機構が解除されて、第1電極131および第2電極132が測定対象電線Wに接する状態まで電極部130が閉じることになる。
【0024】
図4は、径の大きい測定対象電線Wをクランプしたときの様子を示し、
図5は、径の小さい測定対象電線Wをクランプしたときの様子を示している。このように、本実施形態の検出センサ100では、径の大きい測定対象電線W、径の小さい測定対象電線Wとも、電極部130全体にわたって測定対象電線Wに近接することができ、電極部130の大きさを有効活用することができる。これにより、検出センサ100の検出感度が高められることになる。
【0025】
このような検出センサ100は、例えば、
図6に示すようなセンサ本体200に接続することができる。センサ本体200は、交流電圧を測定対象とした電圧測定器である。本図の例では、周波数fxの交流電圧Vxが印加されている電線Wが測定対象となっている。測定対象電線Wは、導体310と絶縁被覆320とで構成されている。
【0026】
測定対象電線Wは、検出センサ100でクランプされており、電極部130と測定対象電線Wの導体310とは、寄生容量C1で容量結合されている。
【0027】
センサ本体200には、周波数fsで出力電圧Vsが可変の可変電圧源210が備えられている。周波数fx、周波数fsとも既知であり、fs>>fxであるとする。容量C1は未知でよい。
【0028】
測定対象の電圧Vxが起因となって容量C1を流れる周波数fxの電流をIxとし、可変電圧源210の電圧Vsが起因となって容量C1を流れる周波数fsの電流をIsとする。実際には、電流Ixと電流Isとを重ね合わせた電流が容量C1を流れることになる。
【0029】
また、センサ本体200には、電流検出部220、差分抽出部230、電圧調整部240、電圧測定部250、演算部260が備えられている。
【0030】
電流検出部220は、電流Ixと電流Isとが重畳した電流を検出する。差分抽出部230は、電流検出部220の検出結果から、電流Ixの大きさと電流Isの大きさとの差分に相当する値を抽出して出力する。電圧調整部240は、差分抽出部230の出力が0になるように、すなわち、電流Isの大きさが電流Ixの大きさと等しくなるように可変電圧源210の出力電圧Vsを変化させる。電圧測定部250は、可変電圧源210の出力電圧Vsを測定する。演算部260は、電圧測定部250における電圧Vsの測定結果に基づいて電圧Vxを算出して出力する。
【0031】
この構成において、電流Ixに対する容量C1のインピーダンスをXcxとし、電流Isに対する容量C1のインピーダンスをXcsとすると、電流Ix、電流Isは以下のように表すことができる。
【数1】
【数2】
ここで、Aを定数としてfs=A×fxとすると、
【数3】
【数4】
が成り立つので、[数5]が得られる。
【数5】
差分抽出部230と電圧調整部240により、Ix=Isとなるように電圧Vsが調整されるため、[数1][数2]より、
【数6】
そして、[数5][数6]より[数7]が得られる。
【数7】
したがって、演算部260は、電圧測定部250の測定結果VsをA倍する演算を行なうことで、測定対象電圧Vxを算出し、測定結果として出力することができる。例えば、測定対象電圧の周波数fxを商用電源の50Hzとすると、測定側の周波数fsが50kHであれば、電圧Vsを1000倍した値が測定対象の電圧Vxとなる。すなわち、測定対象電圧が数kVであっても数Vの電圧で測定できることになる。
【0032】
検出センサ100とセンサ本体200とは、
図7(a)に示すように、ケーブル190で接続した分離型としてもよいし、
図7(b)に示すように一体型としてもよい。また、検出センサ100が接続するセンサ本体200は、電圧計測に限られず、電流計測、磁気計測等を行なうものであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
100 検出センサ
110 上部クランプ部
110a 上部湾曲部
110b 上部把持部
110c 上部支点部
120 下部クランプ部
120a 下部湾曲部
120b 下部把持部
120c 下部支点部
130 電極部
131 第1電極
132 第2電極
133 軸
134 ラッチ
135 リンク板
136 軸機構
140 軸
190 ケーブル
200 センサ本体
210 可変電圧源
220 電流検出部
230 差分抽出部
240 電圧調整部
250 電圧測定部
260 演算部
310 導体
320 絶縁被覆