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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】粘度指数向上剤及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 149/10 20060101AFI20221219BHJP
   C10M 145/14 20060101ALI20221219BHJP
   C10M 149/06 20060101ALI20221219BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20221219BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20221219BHJP
   C10N 40/06 20060101ALN20221219BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20221219BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20221219BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20221219BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20221219BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20221219BHJP
【FI】
C10M149/10
C10M145/14
C10M149/06
C10N30:02
C10N40:04
C10N40:06
C10N40:08
C10N40:25
C10N20:02
C10N20:00 Z
C10N20:04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021103194
(22)【出願日】2021-06-22
(65)【公開番号】P2022022992
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2020106814
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021095360
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内藤 展洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘記
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和徳
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/174188(WO,A1)
【文献】特開2019-156953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
C09K3/00
C08C19/00-19/44
C08F6/00-246/00
C08F283/01
C08F290/00-290/14
C08F299/00-301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される単量体であってRが炭素数2~3のアルキル基である単量体(a)、下記一般式(1)で示される単量体であってRが炭素数4のアルキル基である単量体(b)及び下記一般式(2)で示されるポリオレフィン系単量体(c)を必須構成単量体とする共重合体(A)を含有する粘度指数向上剤であって、前記共重合体(A)が構成単量体として(A)の重量に基づいて前記単量体(a)を0.1~65重量%含有し、かつ(a)と(b)の重量比(a/b)が0.17~65である粘度指数向上剤。
【化1】
[一般式(1)においてRは水素原子又はメチル基;-X1-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキル基。]
【化2】
[一般式(2)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-、-O(AO)-又は-NH-で表される基であって、Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよい;Rは1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基;pは0又は1の数。]
【請求項2】
前記共重合体(A)が、下記一般式(3)で表される単量体(d)を構成単量体とする共重合体である請求項1に記載の粘度指数向上剤。
【化3】
[Rは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;qは1~20の整数であり、qが2以上の場合のR は同一でも異なっていてもよい;Rは炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基。]
【請求項3】
前記共重合体(A)の溶解性パラメータが9.0~10.0(cal/cm1/2である請求項1又は2に記載の粘度指数向上剤。
【請求項4】
前記共重合体(A)が、更に炭素数1のアルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(e)及び/又は炭素数9~36の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(f)を構成単量体として含む共重合体である請求項1~3のいずれか1項に記載の粘度指数向上剤。
【請求項5】
前記共重合体(A)が、構成単量体として(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて前記単量体(a)、前記単量体(b)及び前記単量体(c)の合計重量割合が36~80重量%であり、前記単量体(d)、前記単量体(e)及び前記単量体(f)の合計重量割合が20~64重量%である請求項4に記載の粘度指数向上剤。
【請求項6】
前記共重合体(A)の重量平均分子量が5,000~2,000,000である請求項1~5のいずれか1項に記載の粘度指数向上剤。
【請求項7】
前記共重合体(A)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体(C)を、(A)の重量に基づいて0.01~30重量%含有してなる請求項1~6のいずれか1項に記載の粘度指数向上剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の粘度指数向上剤と、基油(B)とを含有してなる潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘度指数向上剤及び潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO排出量低減及び石油資源保護等の実現のために、自動車の省燃費化がより一層要求されている。省燃費化の一つとして、エンジンオイルの低粘度化が挙げられる。しかし、特に高温側で低粘度化しすぎると、液漏れや焼付きといった問題が生じてくる。この問題に対しては米国SAEのエンジン油用粘度規格(SAE J300)で最低保証粘度が定められており、0W-20グレードにおいては、高温高剪断下での粘度(HTHS粘度)として、150℃HTHS粘度(ASTM D4683又はD5481)が2.6mPa・s以上および0W-16グレードでは2.3mPa・s以上と規定されている。また、近年では電気とガソリンを組み合わせたハイブリッド車、プラグインハイブリッド車等のハード面による省燃費化も行われている。このようなハイブリッド車は従来のガソリン車と異なり、走行中のエンジンオイルの温度が低く、具体的にはガソリン車の場合は通常走行時で80~100℃に対して、ハイブリッド車では40~80℃となる。そのため、ハイブリッド車などに使用されるエンジンオイルについては、40℃~80℃領域での低粘度化がより一層求められる。そこで潤滑油に粘度指数向上剤を添加して粘度の温度依存性を改善する方法が広く行われている。粘度指数向上剤としては、メタクリル酸エステル共重合体(特許文献1~3)、櫛型共重合体(特許文献4~6)等が知られている。
しかしながら、これら粘度指数向上剤では、40~80℃での動粘度及び高剪断下での実効粘度(HTHS粘度)が高いという問題がある。そのため、エンジンオイルにした時の40~80℃での動粘度及びHTHS粘度を低下させることができる粘度指数向上剤が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2732187号公報
【文献】特許第2754343号公報
【文献】特許第3831203号公報
【文献】特許第3474918号公報
【文献】特表2008-546894号公報
【文献】特表2010-532805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、粘度指数向上剤を添加した潤滑油組成物の40~80℃での動粘度及び高せん断下での実行粘度(60~100℃でのHTHS粘度)が低い潤滑油組成物を得ることができる粘度指数向上剤及びこれを含有してなる潤滑油組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示される単量体であってRが炭素数2~3のアルキル基である単量体(a)、下記一般式(1)で示される単量体であってRが炭素数4のアルキル基である単量体(b)及び下記一般式(2)で示されるポリオレフィン系単量体(c)を必須構成単量体とする共重合体(A)を含有する粘度指数向上剤であって、前記共重合体(A)が構成単量体として(A)の重量に基づいて前記単量体(a)を0.1~65重量%含有し、かつ(a)と(b)の重量比(a/b)が0.17~65である粘度指数向上剤;前記粘度指数向上剤と、基油(B)とを含有してなる潤滑油組成物である。
【化1】
[一般式(1)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキル基。]
【化2】
[一般式(2)においてR3は水素原子又はメチル基;-X2-は-O-、-O(AO)-又は-NH-で表される基であって、Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよい;R4は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基;pは0又は1の数。]
【発明の効果】
【0006】
本発明の粘度指数向上剤を用いれば、粘度指数向上剤を添加した潤滑油組成物の40~80℃での動粘度及び60~100℃でのHTHS粘度が低いという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の粘度指数向上剤は、下記一般式(1)で示される単量体であってRが炭素数2又は3のアルキル基である単量体(a)、下記一般式(1)で示される単量体であってRが炭素数4のアルキル基である単量体(b)及び下記一般式(2)で示されるポリオレフィン系単量体(c)を必須構成単量体とする共重合体(A)を含有する粘度指数向上剤であって、前記共重合体(A)が構成単量体として(A)の重量に基づいて前記単量体(a)を0.1~65重量%含有し、かつ(a)と(b)の重量比(a/b)が0.17~65である粘度指数向上剤である。
【化3】
[一般式(1)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキル基。]
【化4】
[一般式(2)においてR3は水素原子又はメチル基;-X2-は-O-、-O(AO)-又は-NH-で表される基であって、Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよい;R4はブタジエンを必須構成単量体とする炭化水素重合体又はその炭化水素重合体の有する炭素-炭素二重結合の少なくとも一部が水素化された重合体から水素原子を1つ除いた残基;pは0又は1の数。]
【0008】
<共重合体(A)>
本発明の粘度指数向上剤は、上記一般式(1)で示される単量体であってRが炭素数2又は3のアルキル基である単量体(a)、上記一般式(1)で示される単量体であってRが炭素数4のアルキル基である単量体(b)及び上記一般式(2)で示されるポリオレフィン系単量体(c)を必須構成単量体とする共重合体(A)を含有する。
単量体(c)に由来する構成単位は、極性基(エステル基等)に対する(c)の有するR4(炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基)が長いため極性が低く、単量体(a)及び(b)に由来する構成単位は極性基(エステル基等)に対するアルキル基が短い(炭素数2~4)ため極性が高い。従来、単量体(c)と単量体(b)とを構成単量体として含む共重合体を用いると、基油中でのポリマー鎖の挙動(低温では基油に対して極性の高い(b)に由来する構成単位を覆い隠すようにR4(炭化水素鎖)が凝集し、高温ではR4が広がる)の温度依存性が大きくなり、粘度指数向上剤として優れる傾向があることが知られていた。本発明においては、単量体(b)及び(c)に加えて単量体(a)を構成単量体として含む共重合体とし、さらに(a)と(b)の重量比(a/b)が0.17~65と特定の範囲とすることにより、(A)の基油の温度に対するポリマー鎖の挙動がさらに優れ、40~80℃での動粘度及び60~100℃での剪断粘度が低い潤滑油組成物を得ることができることを見出したものである。
【0009】
一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基であり、粘度指数向上効果の観点から、メチル基が好ましい。
【0010】
一般式(1)において、-X-は-O-又は-NH-で表される基であり、粘度指数向上効果の観点から、-O-で表される基が好ましい。
【0011】
単量体(a)は、一般式(1)においてRが炭素数2又は3のアルキル基であるものである。
炭素数2又は3のアルキル基としては、例えば、エチル基、n-プロピル基及びイソプロピル基等が挙げられる。
単量体(a)として、具体的には、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、N-エチル(メタ)アクリルアミド及びN-プロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
単量体(a)としては、低温領域での動粘度及びHTHS粘度低下効果の観点から、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル及び(メタ)アクリル酸イソプロピルが好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸エチルである。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0012】
単量体(b)は、一般式(1)においてRが炭素数4のアルキル基であるものである。
炭素数4のアルキル基としては、例えば、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基及びt-ブチル基等が挙げられる。
単量体(b)として、具体的には、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸1-メチルプロピル、(メタ)アクリル酸2-メチルプロピル、(メタ)アクリル酸1,1-ジメチルエチル及びN-ブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
単量体(b)としては、粘度指数向上効果の観点から、(メタ)アクリル酸n-ブチル及び(メタ)アクリル酸イソブチルが好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸n-ブチルである。
【0013】
上記一般式(2)で示されるポリオレフィン系単量体(c)について説明する。
一般式(2)におけるRは、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果及びHTHS粘度低下効果の観点から、好ましいのはメチル基である。
【0014】
一般式(2)における-X-は、-O-、-O(AO)-又は-NH-で表される基である。
Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、エチレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基及び1,2-、1,3-、1,4-又は2,3-ブチレン基等が挙げられる。
AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、エチレンオキシ基、1,2-又は1,3-プロピレンオキシ基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレンオキシ基等が挙げられる。
mはアルキレンオキサイドの付加モル数であり、1~10の整数であり、粘度指数向上効果の観点から、好ましくは1~4の整数、更に好ましくは1~2の整数である。
mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよく、(AO)部分の結合形式はランダム状でもブロック状でもよい。
-X-のうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、-O-及び-O(AO)-で表される基であり、更に好ましくは-O-及び-O(CHCHO)-で表される基である。
pは0又は1の数であり、基油中でのポリマー鎖の挙動が大きくなり、40~80℃での動粘度及び60~100℃での剪断粘度を低くすることができる観点から、p=0が好ましい。
【0015】
一般式(2)におけるRは1-ブテンを必須構成単量体とする炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基、又はブタジエン(1,3-ブタジエン等)を必須構成単量体とする炭化水素重合体の有する炭素-炭素二重結合の少なくとも一部が水素化された重合体から水素原子を1つ除いた残基である。炭化水素重合体としては、炭素数37以上のものが好ましい。
【0016】
一般式(2)における炭化水素重合体において、炭化水素重合体を構成する全単量体のうち1,3-ブタジエンの比率は、粘度指数向上効果及びHTHS粘度低下効果の観点から、50重量%以上が好ましく、さらに好ましくは75重量%以上、次にさらに好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
【0017】
一般式(2)における炭化水素重合体において、全構成単位中の1,2-ブチレン基の比率は、基油(本発明においては炭化水素油(B)、以下においても同じ。)への溶解性の観点から、1~80モル%が好ましく、さらに好ましくは20~75モル%である。
【0018】
一般式(2)における炭化水素重合体の1-ブテン及び/又は1,3-ブタジエン由来の構造について、全構成単位中の1,2-ブチレン基の比率は、13C-NMRによって測定することができる。具体的には、例えば、単量体として炭素数4のもののみを用いた場合、炭化水素重合体を13C-NMRにより分析し、下記数式(1)を用いて、炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づく1,2-ブチレン基のモル%を計算し決定することができる。13C-NMRにおいて、1,2-ブチレン基の3級炭素原子(-CHCH(CHCH)-)に由来するにピークが26~27ppmの積分値(積分値B)に現れる。上記ピークの積分値と、炭化水素重合体の全炭素のピークに関する積分値(積分値C)から求めることができる。
1,2-ブチレン基の比率(モル%)={(積分値B)×4}/(積分値C)×100 (1)
なお、1,2-ブチレン基の比率を大きくするには、例えば1,3-ブタジエンを用いたアニオン重合においては、反応温度を1,3-ブタジエンの沸点(-4.4℃)以下とし、且つ、重合開始剤の投入量を1,3-ブタジエンに対して少なくすればよく、1,2-ブチレン基の比率を小さくするには、反応温度を1,3-ブタジエンの沸点以上とし、開始剤量を多くすればよい。
【0019】
における炭化水素重合体が構成単量体にブタジエン、又はブタジエン及び1-ブテンを含む場合、一般式(2)中のRの一部又は全部を構成するブタジエン、又はブタジエン及び1-ブテン由来の構造において、1,2-ブチレン基(1,2-付加体)と1,4-ブチレン基(1,4-付加体)のモル比(1,2-付加体/1,4-付加体)は、粘度指数向上効果、HTHS粘度及び基油への溶解性の観点から、好ましくは1/99~55/45、更に好ましくは10/90~53/47、特に好ましくは20/80~50/50である。
における炭化水素重合体が構成単量体にブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテンを含む場合、一般式(2)中のRの一部または全部を構成するブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテン由来の構造における1,2-付加体/1,4-付加体のモル比はH-NMRや13C-NMR、ラマン分光法などで測定することができる。
【0020】
一般式(2)におけるRは、粘度指数向上効果の観点から、1,2-ブチレン基に加えて、さらにイソブチレン基(-C(CH-CH-)を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基であることが好ましい。イソブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体とする方法としては、構成単量体(不飽和炭化水素(x))としてイソブテンを用いる等の方法が挙げられる。
炭化水素重合体におけるイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計比率は、炭化水素重合体の合計構成単位数に基づいて、粘度指数向上効果の観点から、30モル%以上が好ましく、更に好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上、最も好ましくは60モル%以上である。
【0021】
炭化水素重合体の合計構成単位数に基づき、イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計比率は、炭化水素重合体を13C-核磁気共鳴スペクトルにより分析し、下記数式(2)を用いて計算し決定することができる。具体的には、13C-核磁気共鳴スペクトルにおいて、イソブチレン基のメチル基に由来するピークが30~32ppmの積分値(積分値A)、1,2-ブチレンの3級炭素原子(-CH-CH(CHCH)-)に由来するピークが26~27ppmの積分値(積分値B)に現れる。上記ピークの積分値と、炭化水素重合体の全炭素のピークに関する積分値(積分値C)から求めることができる。
イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計比率(モル%)={(積分値A)×2+(積分値B)×4}/(積分値C)×100 (2)
【0022】
一般式(2)における炭化水素重合体は、上記ブタジエン、1-ブテン及びイソブチレン以外に、不飽和炭化水素(x)として以下の(1)~(3)を構成単量体としてもよい。
(1)脂肪族不飽和炭化水素[炭素数2~36のオレフィン(例えばエチレン、プロピレン、2-ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、トリアコセン及びヘキサトリアコセン等)及び炭素数4~36のジエン(例えば、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン及び1,7-オクタジエン等)等]
(2)脂環式不飽和炭化水素[例えばシクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等]
(3)芳香族基含有不飽和炭化水素(例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等)等が挙げられる。
これらによって構成される炭化水素重合体は、ブロック重合体でもランダム重合体であってもよい。また炭化水素重合体が、二重結合を有する場合には、水素添加により、二重結合の一部又は全部を水素化したものであってもよい。一態様において、Rにおける炭化水素重合体は、構成単量体として炭素数4の単量体のみを用いた炭化水素重合体であってよく、炭素数4の単量体は、1-ブテン、1,3-ブタジエン及びイソブテンからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0023】
単量体(c)の重量平均分子量(以下Mwと略記する)及び数平均分子量(以下Mnと略記する)は以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記する)によって測定することができる。
<単量体(c)のMwおよびMnの測定条件>
装置 :「HLC-8320GPC」[東ソー(株)製]
カラム :「TSKgel GMHXL」[東ソー(株)製]2本
「TSKgel Multipore H XL-M 1本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10.0μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TS 基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)
12点(分子量:589、1,050、2,630、9,100、19,500、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,110,000、4,480,000)[東ソー(株)製]
【0024】
単量体(c)のMnは、好ましくは800~10,000であり、さらに好ましくは1,000~9,500、特に好ましくは1,200~9,500である。
単量体(c)のMnが800以上であると基油中でのポリマー鎖の挙動の温度依存性が高くなり、粘度指数向上効果が良好になる傾向があり、10,000以下であると長期間使用時の剪断安定性が良好である傾向がある。
単量体(c)のMwは、粘度指数向上効果の観点から、好ましくは900~13,000であり、さらに好ましくは1,200~12,000、特に好ましくは1,500~11,000である。
【0025】
単量体(c)は、片末端に水酸基を含有する重合体(Y){上記炭化水素重合体の片末端に水酸基を導入したもの}と(メタ)アクリル酸とのエステル化反応、または重合体(Y)と(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキル(好ましくはアルキル基の炭素数が1~4)エステルとのエステル交換反応等により得ることができる。また、片末端にアミノ基(-NH)を有する重合体と(メタ)アクリル酸とのアミド化反応により得ることができる。
【0026】
単量体(c)に由来する構成単位((c)のビニルが反応して単結合になった構造)の溶解性パラメータ(以下、SP値と略記する)は、潤滑油への溶解性の観点から、好ましくは7.0~9.0(cal/cm1/2であり、更に好ましくは7.3~8.5(cal/cm1/2である。
SP値は、例えば、Rの分岐度が大きく炭素数が大きい方が小さくなる傾向があり、分岐度が小さく炭素数が小さい方が大きくなる傾向がある。
なお、本発明におけるSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,February,1974,Vol.14、No.2 P.147~154)の152頁(Table.5)に記載の数値(原子又は官能基の25℃における蒸発熱及びモル体積)を用いて、数式(28)(153頁)により算出される値である。具体的には、Fedors法のパラメータである下記表1に記載のΔe及びΔviの数値から、分子構造内の原子及び原子団の種類に対応した数値を用いて、下記数式に当てはめることで算出することができる。
SP値=(ΣΔe/ΣΔv1/2
【表1】
単量体(c)に由来する構成単位のSP値は、単量体(c)に由来する構成単位の分子構造に基づいて、前記パラメータを用いて算出することができ、使用する単量体(不飽和炭化水素(x))、重量分率を適宜調整することにより所望の範囲にすることができる。
【0027】
片末端に水酸基を含有する重合体(Y)の具体例としては、以下の(Y1)~(Y4)が挙げられる。
アルキレンオキサイド付加物(Y1);不飽和炭化水素(x)をイオン重合触媒(リチウム触媒及びナトリウム触媒等)存在下に重合して得られた重合体に、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等)を付加して得られたもの等(一般式(2)において、-X-が-(AO)-であり、p=0であるもの)。
ヒドロホウ素化物(Y2);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の重合体のヒドロホウ素化反応物(例えば米国特許第4,316,973号明細書に記載のもの)等(一般式(2)において、-X-が-O-であり、p=0であるもの)。
無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の重合体と無水マレイン酸とのエン反応で得られた反応物を、アミノアルコールでイミド化して得られたもの等(一般式(2)において、-X-が-O-であり、p=1であるもの)。
ヒドロホルミル-水素化物(Y4);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の重合体をヒドロホルミル化し、次いで水素化反応して得られたもの(例えば特開昭63-175096号公報に記載のもの)等(一般式(2)において、-X-が-O-であり、p=0であるもの)。
これらの片末端に水酸基を含有する重合体(Y)のうち、HTHS粘度低下効果及び粘度指数向上効果の観点から、好ましいのはアルキレンオキサイド付加物(Y1)、ヒドロホウ素化物(Y2)であり、更に好ましいのはアルキレンオキサイド付加物(Y1)である。
【0028】
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(a)の重量割合は、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、0.1~65重量%であり、0.5~55重量%が好ましく、さらに好ましくは1.0~50重量%である。
単量体(a)の重量割合が0.1重量%未満であると40~80℃での動粘度及びHTHS粘度を低くすることが困難であり、65重量%を超えると基油に対する溶解性が低くなる。
【0029】
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(b)の重量割合は、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、粘度指数向上効果の観点から、1~80重量%が好ましく、さらに好ましくは2~70重量%である。
【0030】
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(a)の重量と単量体(b)の重量との重量比率(a/b)は0.17~65であり、0.18~30が好ましく、さらに好ましくは0.20~10である。
重量比率(a/b)が0.17未満であると40~80℃での動粘度及びHTHS粘度を低くすることが困難であり、65を超えると基油への溶解性が低くなる。
【0031】
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(a)及び(b)の合計重量割合は、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、粘度指数向上効果及び基油への溶解性の観点から、98重量%以下が好ましく、さらに好ましくは35~70重量%である。
【0032】
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(c)の重量割合は、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、粘度指数向上効果の観点から、1~30重量%が好ましく、さらに好ましくは10~20重量%である。
【0033】
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(a)、(b)及び(c)の合計重量割合は、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、粘度指数向上効果の観点から、10重量%以上が好ましく、さらに好ましくは36~80重量%である。
【0034】
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(c)の重量と単量体(a)の重量との重量比率(c/a)は、低温領域での動粘度及びHTHS粘度低下効果の観点から、好ましくは0.15~200であり、更に好ましくは0.20~100である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(c)の重量と単量体(a)及び単量体(b)の合計重量との重量比率(c/(a+b))は、低温領域での動粘度及びHTHS粘度低下効果の観点から、好ましくは0.03~2であり、更に好ましくは0.12~1である。
【0035】
本発明において、共重合体(A)は、粘度指数向上効果の観点から、さらに下記一般式(3)で表される単量体(d)を構成単量体として含む共重合体であることが好ましい。
【化5】
[一般式(3)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;qは1~20の整数であり、qが2以上の場合のRは同一でも異なっていてもよい;Rは炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基。]
【0036】
一般式(3)におけるRは、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのはメチル基である。
【0037】
一般式(3)における-X-は、-O-又は-NH-で表される基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのは-O-で表される基である。
【0038】
一般式(3)におけるRは、炭素数2~4のアルキレン基である。
炭素数2~4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、イソプロピレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基等が挙げられる。
Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、例えば、エチレンオキシ基、1,2-又は1,3-プロピレンオキシ基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレンオキシ基等が挙げられる。
一般式(3)におけるqは1~20の整数であり、粘度指数向上効果の観点から、好ましくは1~5の整数であり、更に好ましくは1~2の整数である。
qが2以上の場合のROは同一でも異なっていてもよく、(RO)部分の結合形式はランダム状でもブロック状でもよい。
【0039】
一般式(3)におけるRは、炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基及びt-ブチル基等が挙げられる。
炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基のうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、炭素数1~4の直鎖アルキル基であり、更に好ましいのは炭素数4の直鎖アルキル基(n-ブチル基)である。
【0040】
単量体(d)として具体的には、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、プロポキシブチル(メタ)アクリレート及びブトキシブチル(メタ)アクリレート、並びに炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキルアルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1種を2~20モル付加したものと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。
単量体(d)のうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、エトキシエチル(メタ)アクリレート及びブトキシエチル(メタ)アクリレートであり、更に好ましくはn-ブトキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0041】
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(d)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、80重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1~50重量%であり、特に好ましくは5~15重量%である。
【0042】
本発明において、共重合体(A)は、単量体(a)~(d)以外に、炭素数1のアルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(e)(以下、単量体(e)と略記することがある)及び/又は炭素数9~36の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(f)(以下、単量体(f)と略記することがある)を構成単量体として含む共重合体であってもよい。単量体(e)は極性基(エステル基等)に対するアルキル基の炭素数が短いため極性が高く、共重合体(A)の極性を高くすることができ、単量体(f)は極性基(エステル基等)に対するアルキル基の炭素数が(b)より長く(c)より短いいため中間程度の極性があり、共重合体(A)の極性を調整することができる。
なお、単量体(e)及び(f)はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
炭素数1のアルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(e)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル及びN-メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
単量体(e)のうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのは(メタ)アクリル酸メチルである。
【0044】
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(e)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、1~80重量%が好ましく、さらに好ましくは2~70重量%である。
【0045】
本発明において、共重合体(A)は、単量体(f)を構成単量体とする共重合体であることが、基油への溶解性の観点から好ましい。
単量体(f)としては、(c)以外のものであり、炭素数9~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(f1)及び下記一般式(4)で表される炭素数9~36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(f2)等が含まれる。
なお、単量体(f)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化6】
[一般式(4)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;ROは炭素数2~4のアルキレンオキシ基;R10及びR11はそれぞれ独立に炭素数1~24の直鎖アルキル基であり、R10及びR11の合計炭素数は7~34;sは0~20の整数であり、sが2以上の場合のROは同一でも異なっていてもよい。]
【0046】
炭素数9~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(f1)(以下、単量体(f1)と略記することがある)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル{炭素数9~36の直鎖アルキルアルコールとアクリル酸とのエステル化物であり、例えば、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ペンタデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸n-イコシル、(メタ)アクリル酸n-ドコシル、(メタ)アクリル酸n-テトラコシル、(メタ)アクリル酸n-トリアコンチル及び(メタ)アクリル酸n-ヘキサトリアコンチル等}、炭素数9~36の直鎖アルキルアルコールのアルキレンオキサイド(炭素数2~4)1~20モル付加物と(メタ)アクリル酸とのエステル化物、及び(メタ)アクリル酸アルキルアミド{炭素数9~36の直鎖アルキルアミンとアクリル酸とのアミド化物等}等が挙げられる。
単量体(f1)のうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのは炭素数12~28の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、更に好ましいのは炭素数12~24の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、特に好ましいのは炭素数12~20の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。
単量体(f1)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
単量体(f2)において、一般式(4)におけるRは、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのはメチル基である。
一般式(4)における-X-は、-O-又は-NH-で表される基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのは-O-で表される基である。
一般式(4)におけるRは、炭素数2~4のアルキレン基である。炭素数2~4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、イソプロピレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基が挙げられる。
Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、例えば、エチレンオキシ基、1,2-又は1,3-プロピレンオキシ基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレンオキシ基等が挙げられる。
一般式(4)におけるsは0~20の整数であり、粘度指数向上効果の観点から、0~5の整数が好ましく、さらに好ましくは0~2の整数である。
sが2以上である場合のROは同一でも異なっていてもよく、(RO)部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
一般式(4)におけるR10及びR11は、それぞれ独立に、炭素数1~24の直鎖アルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘプチル基、n-ヘキシル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基及びn-テトラコシル基等が挙げられる。炭素数1~24の直鎖アルキル基のうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、炭素数6~24の直鎖アルキル基であり、更に好ましいのは炭素数6~20の直鎖アルキル基、特に好ましいのは炭素数8~16の直鎖アルキル基である。
10及びR11の合計炭素数は、7~34であり、粘度指数向上効果の観点から、12~30が好ましく、さらに好ましくは14~26である。
【0048】
単量体(f2)として具体的には、(メタ)アクリル酸2-オクチルデシル、エチレングリコールモノ-2-オクチルペンタデシルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、(メタ)アクリル酸2-n-オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸2-n-デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2-n-テトラデシルオクタデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ドデシルペンタデシル、(メタ)アクリル酸2-n-テトラデシルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ヘキサデシルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ヘプタデシルイコシル、(メタ)アクリル酸2-n-ヘキサデシルドコシル、(メタ)アクリル酸2-n-エイコシルドコシル、(メタ)アクリル酸2-n-テトラコシルヘキサコシル及びN-2-オクチルデシル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
単量体(f2)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
単量体(f2)のうち、基油への溶解性および低温粘度の観点から好ましいのは、炭素数12~32の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体であり、特に好ましいのは炭素数16~28の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体である。
【0050】
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(f)の重量割合は、粘度指数向上効果及び共重合体(A)を好ましいSP値にする観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、1~64重量%が好ましく、さらに好ましくは5~35重量%である。
【0051】
共重合体(A)において、単量体(d)、単量体(e)及び単量体(f)からなる群より選ばれる少なくとも1種を構成単量体として含む場合、(A)の構成単量体のうち単量体(d)、単量体(e)及び単量体(f)の合計重量割合は、粘度指数向上効果及び共重合体(A)を好ましいSP値にする観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、90重量%以下が好ましく、さらに好ましくは20~64重量%である。
【0052】
本発明における共重合体(A)は、上記単量体(a)~(f)に加え、さらにリン原子含有単量体(g)、芳香環含有ビニル単量体(h)、単量体(i)~単量体(m)、窒素原子含有単量体(n)及び水酸基含有単量体(o)等のその他の単量体を構成単量体としてもよい。
単量体(g)~(o)はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
リン原子含有単量体(g)としては、以下の単量体(g1)~(g2)が挙げられる。
【0054】
リン酸エステル基含有単量体(g1):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート及び(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェート]及びリン酸アルケニルエステル[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル及びリン酸ドデセニル等]等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイロキシ」は、アクリロイロキシ又はメタクリロイロキシを意味する。
【0055】
ホスホノ基含有単量体(g2):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)ホスホン酸[(メタ)アクリロイロキシエチルホスホン酸等]及びアルケニル(炭素数2~12)ホスホン酸[ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸及びオクテニルホスホン酸等]等が挙げられる。
【0056】
単量体(g)のうち好ましいのは(g1)であり、更に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステルであり、特に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェートである。
【0057】
芳香環含有ビニル単量体(h):
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、4-エチルスチレン、4-イソプロピルスチレン、4-ブチルスチレン、4-フェニルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ベンジルスチレン、4-クロチルベンゼン、インデン及び2-ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0058】
単量体(h)のうち好ましいのは、スチレン及びα-メチルスチレンであり、更に好ましいのはスチレンである。
【0059】
単量体(i)としては、不飽和基を2つ以上有するものが含まれ、例えば、ジビニルベンゼン、炭素数4~12のアルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘプタジエン及び1,7-オクタジエン等)、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン、リモネン、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキサイドグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、国際公開WO01/009242号公報に記載の、Mnが500以上の不飽和カルボン酸とグリコールとのエステル及び不飽和アルコールとカルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0060】
ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類(j)(単量体(j)と略記することがある):
炭素数2~12の飽和脂肪酸のビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等)、炭素数1~12のアルキル、アリール又はアルコキシアルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル-2-メトキシエチルエーテル及びビニル-2-ブトキシエチルエーテル等)及び炭素数1~8のアルキル又はアリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)等が挙げられる。
【0061】
エポキシ基含有単量体(k)(単量体(k)と略記することがある):
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0062】
ハロゲン元素含有単量体(l)(単量体(l)と略記することがある):
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
【0063】
不飽和ポリカルボン酸のエステル(m)(単量体(m)と略記することがある):
不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキル又はアラルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等)の炭素数1~8のアルキルジエステル(ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート)]等が挙げられる。
【0064】
窒素原子含有単量体(n)としては、単量体(a)~単量体(f)を除く、以下の単量体(n1)~(n4)が挙げられる。
アミド基含有単量体(n1):
(メタ)アクリルアミド、N-(N’-モノアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-(N’-メチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’-エチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’-イソプロピルアミノ-n-ブチル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’-n-又はイソブチルアミノ-n-ブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したもの;例えばN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等]、N-(N’,N’-ジアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[アミノアルキル基の窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’,N’-ジ-n-ブチルアミノブチル)(メタ)アクリルアミド等];N-ビニルカルボン酸アミド[N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-n-又はイソプロピオン酸アミド及びN-ビニルヒドロキシアセトアミド等]等が挙げられる。
【0065】
ニトロ基含有単量体(n2):
4-ニトロスチレン等が挙げられる。
【0066】
1~3級アミノ基含有単量体(n3):
1級アミノ基含有単量体{炭素数3~6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等]、アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]};2級アミノ基含有単量体{モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、炭素数6~12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミン等]};3級アミノ基含有単量体{ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、窒素原子を有する脂環式(メタ)アクリレート[モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]、芳香族系単量体[N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノスチレン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、N-ビニルピロール、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルチオピロリドン等]}、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1~8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。
【0067】
ニトリル基含有単量体(n4):
(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0068】
単量体(n)のうち好ましいのは、(n1)及び(n3)であり、更に好ましいのは、N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートである。
【0069】
水酸基含有単量体(o):
水酸基含有芳香族単量体(p-ヒドロキシスチレン等)、ヒドロキシアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等]、モノ-又はビス-ヒドロキシアルキル(炭素数1~4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N-ビス(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアルコール、炭素数3~12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-オクテノール及び1-ウンデセノール等]、炭素数4~12のアルケンモノオール又はアルケンジオール[1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール及び2-ブテン-1,4-ジオール等]、ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)アルケニル(炭素数3~10)エーテル(2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等)、多価(3~8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、糖類及び蔗糖等)のアルケニル(炭素数3~10)エーテル又は(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル等]等;
ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~50)、ポリオキシアルキレンポリオール[上記3~8価のアルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~100)]、ポリオキシアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンポリオールのアルキル(炭素数1~4)エーテルのモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(Mn:100~300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn:130~500)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(Mn:110~310)(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物(2~30モル)(メタ)アクリレート及びモノ(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン(Mn:150~230)ソルビタン等]等;が挙げられる。
【0070】
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(g)の重量割合は、HTHS粘度低下効果及び粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、30重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1~20重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(h)の重量割合は、HTHS粘度低下効果及び粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、20重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1~15重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(i)の重量割合は、実効温度でのHTHS粘度低下効果の観点から、10重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1~5重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(j)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、5重量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.5~2重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(k)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、20重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1~10重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(l)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、5重量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.1~2重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(m)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、1重量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.01~0.5重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(n)の重量割合は、実行温度でのHTHS粘度低下効果及び粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1~40重量%である。
共重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(o)の重量割合は、HTHS粘度低下効果及び粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、40重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1~30重量%である。
【0071】
共重合体(A)のMwは、好ましくは5,000~2,000,000である。共重合体(A)のMwが5,000以上であると粘度温度特性の向上効果や粘度指数向上効果が良好である傾向がある。また粘度指数向上剤の添加量が多すぎず、コスト面でも有利である。2,000,000以下であると剪断安定性が良好である傾向がある。
【0072】
なお、共重合体(A)のMwのより好ましい範囲は、粘度指数向上剤及び潤滑油組成物の用途によって異なり、表2に記載の範囲である。
【表2】
【0073】
共重合体(A)のMnは、好ましくは2,500以上であり、更に好ましくは5,000以上であり、特に好ましくは7,500以上であり、最も好ましくは15,000以上である。また、好ましくは1,000,000以下であり、更に好ましくは850,000以下であり、特に好ましくは700,000以下である。
Mnが2,500以上であると粘度温度特性の向上効果や粘度指数向上効果が良好である傾向がある。また粘度指数向上剤の添加量が多すぎず、コスト面でも有利である。Mnが1,000,000以下であると剪断安定性が良好である傾向がある。
共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、剪断安定性の観点から、1.0~4.0が好ましく、さらに好ましくは1.5~3.5である。
なお、共重合体(A)のMw、Mn及び分子量分布の測定条件は上記単量体(c)のMw及びMnの測定条件と同様である。
【0074】
共重合体(A)は、公知の製造方法によって得ることができ、具体的には前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下に溶液重合することにより得る方法が挙げられる。
溶剤としては、トルエン、キシレン、炭素数9~10のアルキルベンゼン、メチルエチルケトン、炭化水素油(鉱物油等)、合成油等及びこれらの混合物が挙げられる。
重合触媒としては、アゾ系触媒(2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等)、過酸化物系触媒(ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド及びラウリルパーオキサイド等)及びレドックス系触媒(ベンゾイルパーオキサイドと3級アミンの混合物等)が挙げられる。更に分子量調整のために必要により、公知の連鎖移動剤(炭素数2~20のアルキルメルカプタン等)を使用することもできる。
重合温度は、好ましくは25~140℃であり、更に好ましくは50~120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により共重合体(A)を得ることができる。
共重合体(A)の重合形態としては、ランダム付加重合体又は交互共重合体のいずれでもよく、また、グラフト共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよい。
【0075】
共重合体(A)のSP値は、9.0~10.0(cal/cm1/2が好ましく、さらに好ましくは9.1~9.7(cal/cm1/2であり、特に好ましくは9.2~9.5(cal/cm1/2である。
共重合体(A)のSP値が9.0(cal/cm1/2以上であると40℃動粘度及び粘度指数が良好であり、10.0(cal/cm1/2以下であると基油のSP値にもよるが、基油へ溶解しやすい傾向がある。
共重合体(A)のSP値は、前記SP値の算出方法を用いて(A)を構成する各単量体に由来する構成単位(ビニル基が重合反応により単結合となった構造)のSP値を算出し、仕込み時の各構成単量体の重量分率に基づいて相加平均した値を意味する。例えば、単量体がメタクリル酸メチルの場合、メタクリル酸メチルに由来する構成単位は、原子団として、CHが2個、CHが1個、Cが1個、COが1個なので、下記数式により、メタクリル酸メチルに由来する構成単位のSP値は9.933(cal/cm1/2であることが分かる。同様に計算して、メタクリル酸エチルに由来する構成単位のSP値は9.721(cal/cm1/2であることがわかる。
ΣΔe=1125×2+1180+350+4300=8080
ΣΔv=33.5×2+16.1-19.2+18.0=81.9
δ=(8080/81.9)1/2=9.933(cal/cm1/2
共重合体がメタクリル酸メチル50重量%とメタクリル酸エチル50重量%との重合物である場合、共重合体のSP値は、下記の通り各単量体に由来する構成単位のSP値の重量分率に基づいて相加平均することにより算出される。
共重合体のSP値=(9.933×50+9.721×50)/100=9.827
(A)のSP値は、使用する単量体、重量分率を適宜調整することにより所望の範囲にすることができる。具体的には、アルキル基の炭素数の長い単量体を多く使用することでSP値を小さくすることができ、アルキル基の炭素数の短い単量体を多く使用することでSP値を大きくすることができる。
【0076】
共重合体(A)のせん断安定性指数(SSI)は、省燃費性の観点から、10以下が好ましく、更に好ましくは5以下である。
なお、本発明において、共重合体(A)のSSIとは、共重合体(A)のせん断による粘度低下をパーセンテージで示すものであり、ASTM D6278に準拠して測定された値である。より具体的には、下記数式(3)により算出された値である。
SSI=(Κν-Κν)/(Κν-Κνoil) (3)
上記数式(3)中、Κνは、共重合体(A)を含む粘度指数向上剤を鉱油に希釈した試料油の100℃における動粘度の値であり、Κνは、当該の共重合体(A)を含む粘度指数向上剤を鉱油に希釈した試料油をASTM D6278の手順にしたがって、30サイクル高剪断ボッシュ・ディーゼルインジェクターに通過させた後の100℃における動粘度の値である。また、Κνoilは、当該粘度指数向上剤を希釈する際に用いた鉱油の100℃における動粘度の値である。
【0077】
本発明の粘度指数向上剤は、上記共重合体(A)に加えて、さらに共重合体(A)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体(C)を含有してもよく、(共)重合体(C)を含有することが低温粘度の観点から好ましい。
(共)重合体(C)としては、単量体(c)を含まない(共)重合体が含まれ、例えば炭素数9~36の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(f)を必須構成単量体とする(共)重合体等が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル及び(メタ)アクリル酸n-オクタデシル共重合体、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル/(メタ)アクリル酸n-ドデシル(モル比10~30/90~70)共重合体、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル/(メタ)アクリル酸n-ドデシル(モル比10~30/90~70)共重合体、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル/(メタ)アクリル酸n-ドデシル/(メタ)アクリル酸メチル(モル比20~40/55~75/0~10)共重合体及びアクリル酸n-ドデシル/メタクリル酸n-ドデシル(モル比10~40/90~60)共重合体等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0078】
(共)重合体(C)の含有量は、低温粘度の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、0.01~30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01~10重量%である。
【0079】
(共)重合体(C)のMwは、流動点温度低下の観点から、5,000~100,000が好ましく、さらに好ましくは10,000~80,000である。
(共)重合体(C)のSP値は、基油への溶解性の観点から、7.0~10が好ましく、さらに好ましくは8.0~9.5である。
なお、(共)重合体(C)のMwの測定条件は上記単量体(c)のMwの測定条件と同様である。また、(共)重合体(C)のSP値は、前記SP値の算出方法を用いて(C)を構成する各単量体に由来する構成単位(ビニル基が重合反応により単結合となった構造)のSP値を算出し、仕込み時の各構成単量体の重量分率に基づいて相加平均した値を意味する。
【0080】
本発明の粘度指数向上剤は、ハンドリング性の観点から、共重合体(A)を粘度指数向上剤の重量に基づいて0.1~40重量%となるように含有することが好ましい。
本発明の粘度指数向上剤において、低温粘度の観点から、(共)重合体(C)を粘度指数向上剤の重量に基づいて0.01~10重量%となるように含有することが好ましい。
【0081】
本発明において、粘度指数向上剤は、基油(B)を含有してもよい。基油(B)を含有すると、潤滑油組成物を製造する際に、さらに基油で希釈したり、後述する添加剤等と混合しやすく、潤滑油組成物を製造しやすいので好ましい。
基油(B)としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素油{鉱物油(溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、イソパラフィンの水素化分解による高粘度指数油及びナフテン油等)、合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリα-オレフィン系合成潤滑油、GTL基油等)]等}、非炭化水素系合成油(エステル系合成潤滑油、エーテル系合成潤滑油、シリコン系合成潤滑油等)及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち溶解性の観点から好ましいのは炭化水素油であり、さらに好ましくは鉱物油、ポリα-オレフィン系合成潤滑油(PAO油)、GTL基油である。
【0082】
基油(B)の100℃における動粘度(JIS-K2283で測定したもの)は、潤滑油組成物の粘度指数及び低温流動性の観点から好ましくは1~15mm/sであり、更に好ましくは2~5mm/sである。
基油(B)の粘度指数(JIS-K2283で測定したもの)は、潤滑油組成物の粘度指数及び低温流動性の観点から、好ましくは100以上である。
【0083】
基油(B)の曇り点(JIS-K2269で測定したもの)は、好ましくは-5℃以下であり、更に好ましくは-15℃以下である。基油の曇り点がこの範囲内であると潤滑油組成物の低温粘度が良好となる傾向がある。
【0084】
本発明の粘度指数向上剤を用いれば、40~80℃での動粘度及びHTHS粘度が低い潤滑油組成物を得ることができるので、本発明の粘度指数向上剤を含む潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)及びエンジン油(ガソリン用及びディーゼル用)に好適に用いることができる。
【0085】
<潤滑油組成物>
本発明の潤滑油組成物は、本発明の粘度指数向上剤と、前記基油(B)とを含有してなる。必要により、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、流動点降下剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤、金属不活性剤及び腐食防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有してもよい。
本発明の潤滑油組成物中の共重合体(A)の含有量は、省燃費性の観点から、潤滑油組成物の重量に基づいて0.1~20重量%が好ましい。
本発明の潤滑油組成物中の(共)重合体(C)の含有量は、低温粘度の観点から、潤滑油組成物の重量に基づいて0.01~5重量%が好ましい。
本発明の潤滑油組成物中の基油(B)の含有量は、潤滑油組成物の重量に基づいて、45重量%以上が好ましく、更に好ましくは50重量%以上であり、99.8重量%以下が好ましく、更に好ましくは99.79重量%以下である。
【0086】
潤滑油組成物中の基油(B)のSP値{(cal/cm1/2}は、粘度指数向上効果の観点から、6~9が好ましく、更に好ましくは7~9であり、特に好ましくは8~9である。
なお、基油(B)として鉱物油のように複数の炭化水素化合物の混合物を用いる場合、GPCによる分子量の測定、H-NMR及び13C-NMR等による分子構造の解析で、おおよその構成成分及びその分子構造がわかり、モル分率に基づく相加平均により基油(B)のSP値を算出することができる。
潤滑油組成物中の共重合体(A)のSP値と基油(B)のSP値との差の絶対値{(cal/cm1/2}は、0.5~1.5が好ましく、更に好ましくは0.6~1.2である。1.5以下であると、(A)が(B)に溶解しやすい傾向があり、0.5以上であると、(B)中での(A)のポリマー鎖の挙動の温度依存性が良好となる傾向があり、40~80℃での動粘度及び高剪断下での実効粘度(HTHS粘度)が良好である傾向がある。
【0087】
潤滑油組成物がエンジン油として使用される場合には、100℃における動粘度が4~10mm/sの基油(B)に、(B)の重量を基準として、共重合体(A)を1~10重量%含有しているものが好ましい。
ギヤ油として使用される場合には、100℃における動粘度が2~10mm/sの基油(B)に、(B)の重量を基準として、共重合体(A)を3~20重量%含有しているものが好ましい。
自動変速機油(ATF及びbelt-CVTF等)として使用される場合には、100℃における動粘度が2~6mm/sの基油(B)に、(B)の重量を基準として、共重合体(A)を3~20重量%含有しているものが好ましい。
トラクション油として使用される場合には、100℃における動粘度が1~5mm/sの基油(B)に、(B)の重量を基準として、共重合体(A)を0.5~10重量%含有しているものが好ましい。
【0088】
潤滑油組成物がエンジン油(0W-16)として使用される場合、潤滑油組成物の粘度指数は、省燃費性の観点から、190以上が好ましく、更に好ましくは195~249である。
潤滑油組成物がエンジン油(0W-20)として使用される場合、潤滑油組成物の粘度指数は、省燃費性の観点から、230以上が好ましく、更に好ましくは235~295である。
【0089】
潤滑油組成物がエンジン油(0W-16)として使用される場合、潤滑油組成物の60℃HTHS粘度は、省燃費性の観点から、8.5~9.2(mPa・s)が好ましく、更に好ましくは8.7~9.1(mPa・s)である。
潤滑油組成物がエンジン油(0W-20)として使用される場合、潤滑油組成物の60℃HTHS粘度は、省燃費性の観点から、9.0~10.2(mPa・s)が好ましく、更に好ましくは9.1~9.6(mPa・s)である。
【0090】
潤滑油組成物がエンジン油(0W-16)として使用される場合、潤滑油組成物の100℃HTHS粘度と60℃HTHS粘度とのHTHS粘度比率(60℃/100℃)は、省燃費性の観点から、2.0~2.3が好ましく、更に好ましくは2.1~2.2である。
潤滑油組成物がエンジン油(0W-20)として使用される場合、潤滑油組成物の100℃HTHS粘度と60℃HTHS粘度とのHTHS粘度比率(60℃/100℃)は、省燃費性の観点から、1.9~2.2が好ましく、更に好ましくは2.0~2.1である。
【0091】
潤滑油組成物がエンジン油(0W-16)として使用される場合、潤滑油組成物の40℃動粘度は、省燃費性の観点から、23.0~26.1(mm/s)が好ましく、更に好ましくは23.5~26.0(mm/s)である。
潤滑油組成物がエンジン油(0W-20)として使用される場合、潤滑油組成物の40℃動粘度は、省燃費性の観点から、25.0~28.0(mm/s)が好ましく、更に好ましくは25.0~27.0(mm/s)である。
【0092】
潤滑油組成物がエンジン油(0W-16)として使用される場合、潤滑油組成物の100℃動粘度と40℃動粘度との動粘度比率(40℃/100℃)は、省燃費性の観点から、3.5~4.2が好ましく、更に好ましくは3.7~4.2である。
潤滑油組成物がエンジン油(0W-20)として使用される場合、潤滑油組成物の100℃動粘度と40℃動粘度との動粘度比率(40℃/100℃)は、省燃費性の観点から、3.0~3.85が好ましく、更に好ましくは3.3~3.85である。
【0093】
本発明において添加剤としては、以下のものが挙げられる。
(1)清浄剤:
塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物;
(2)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス-又はモノ-ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物及びボレート類等;
(3)酸化防止剤:
ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
(4)油性向上剤:
長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等;
(5)流動点降下剤
ポリアルキルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等;
(6)摩擦摩耗調整剤:
モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
(7)極圧剤:
硫黄系化合物(モノ又はジスルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(8)消泡剤:
シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等;
(9)抗乳化剤:
4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油及びフォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)、炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン、エチルベンゼン)等;
(10)金属不活性剤
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール等)、窒素原子含有キレート化合物(N,N’-ジサリチデン-1,2-ジアミノプロパン等)、窒素・硫黄原子含有化合物(2-(n-ドデシルチオ)ベンズイミダゾール等)等;
(11)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4-チオジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート等)等。
【0094】
これらの添加剤は1種だけ添加してもよいし、必要に応じて2つ以上の添加剤を添加することもできる。またこれらの添加剤を配合したものを性能添加剤、またはパッケージ添加剤と呼ぶこともあり、それを添加してもよい。
これらの添加剤のそれぞれの含有量は潤滑油組成物全量を基準として0.1~15重量%であることが好ましい。また各添加剤を合計した含有量は潤滑油組成物全量を基準として0.1~30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.3~20重量%である。
【0095】
本発明の潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)及びエンジン油(ガソリン用及びディーゼル用)に好適に用いられる。
【実施例
【0096】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
炭化水素重合体の構成単位中の1,2-ブチレン基の比率は、重合体を13C-NMRにより分析し、上記の方法で上記数式(1)を用いて求め、イソブチレン基及び1,2-ブチレン基の合計比率は、重合体を13C-NMRにより分析し、上記の方法で上記数式(2)を用いて求めた。
炭化水素重合体中の1,2-付加体/1,4-付加体のモル比(ブタジエン由来の構造におけるモル比)は、重合体を13C-NMRにより分析し、上記数式(1)に使用した積分値Bの値及び積分値Cの値から、下記数式(3)により求めた。
1,2-付加体/1,4-付加体のモル比={100×積分値B×2/積分値C}/{100-(100×積分値B×2/積分値C)} (3)
【0098】
<製造例1>
温度調節装置及び撹拌機を備えたSUS製耐圧反応容器に、脱気及び脱水したヘキサンを400重量部、テトラヒドロフラン1重量部、1,3-ブタジエン75重量部、n-ブチルリチウム2重量部を仕込んだ後、重合温度を70℃とし重合させた。
重合率がほぼ100%となった後、エチレンオキサイド2重量部を加え、50℃で3時間反応させた。反応を停止させるために水50重量部と1N-塩酸水溶液25重量部を加えて80℃で1時間撹拌した。反応溶液の有機相を分液ロートにて回収し、70℃に昇温後、0.027~0.040MPaの減圧下で溶媒を2時間かけて除去した。
得られた片末端水酸基含有のポリブタジエンを、温度調節装置、攪拌機、水素導入管を備えた反応容器に移し入れ、テトラヒドロフラン150重量部を加えて均一に溶解させた。そこにパラジウム炭素10重量部とテトラヒドロフラン50重量部をあらかじめ混合した懸濁液を注ぎ入れた後、水素導入管より30mL/分の流量で液中に水素を供給しながら、室温で8時間反応させた。その後ろ過にてパラジウム炭素を取り除き、得られたろ液を70℃に昇温して0.027~0.040MPaの減圧下でテトラヒドロフランを除去して水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(Y1-1)(イソブチレン基及び1,2-ブチレン基の合計比率;45モル%、1,2-付加体/1,4-付加体(モル比);45/55、水酸基価;8.0mgKOH/g、結晶化温度;-60℃以下)を得た。
水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(Y1-1)245重量部、メタクリル酸245重量部、スルホン酸基担持無機多孔体(酸価45mgKOH/g、粒径240μm)98重量部を投入し、120℃にてエステル化を行った。次いで、スルホン酸基担持無機多孔体をろ過にて取り除き、反応液を減圧下(0.027~0.040MPa)にて余分なメタクリル酸を除去し、単量体(c-1)を得た。得られた(c-1)の分子量をGPCで測定し、1,2-ブチレン基の比率を13C-NMRにて測定した。結果はMw=6,900、Mn=6,800、1,2-ブチレン基の比率=45モル%、-X-は-O(CHCHO)-で表される基、p=0であった。なお、(c-1)のSP値は下記により算出した。
(1)の構造
ΣΔe=1125(CH)+1180(CH)+350(C)+4300(CO)=6955
ΣΔv=33.5(CH)+16.1(CH)-19.2(C)+18.0(CO)=48.4
(2)の構造
ΣΔe=1180(CH)×2+800(O)=3160
ΣΔv=16.1(CH)×2+3.8(O)=36
(3)の構造
ΣΔe=1180(CH)×2+1125(CH)+820(CH)=4305
ΣΔv=16.1(CH)×2+33.5(CH)-1.0(CH)=64.7
(4)の構造
ΣΔe=1180(CH)×4=4720
ΣΔv=16.1(CH)×4=64.4
ここで、1,2-ブチレン基及び1,4-ブチレン基の合計個数は下記である。
1,2-ブチレン基(3の構造)及び1,4-ブチレン基(4の構造)の合計個数=(6800(c-1のMn)-85((1)の構造)-44((2)の構造))/56=119.125
したがって、(a-1)に由来する構成単位のパラメータは下記である。
ΣΔe=6955+3160+4305×119.125×0.45+4720×119.125×0.55=550138.4
ΣΔv=48.4+36+64.7×119.125×0.45+64.4×119.125×0.55=7772.1319
SP値=(ΣΔe/ΣΔv1/2=(550138.4/7772.1319)1/2=8.413
【0099】
<製造例2>
温度調節装置及び撹拌機を備えた1LのSUS製耐圧反応容器に、脱気及び脱水したヘキサンを400重量部、テトラヒドロフラン1重量部、1,3-ブタジエン122重量部、n-ブチルリチウム2重量部を仕込んだ後、重合温度を70℃とし重合させた。その後は製造例1と同様に行い、水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(Y1-2)(イソブチレン基及び1,2-ブチレン基の合計比率;45モル%、1,2-付加体/1,4-付加体(モル比);45/55、水酸基価;8.0mgKOH/g、結晶化温度;-60℃以下)を得た。さらに、(Y1-2)とメタクリル酸とのエステル化を行い、単量体(c-2)を得た。得られた(c-2)の分子量をGPCで測定し、1,2-ブチレン基の比率を13C-NMRにて測定した。結果はMw=9,300、Mn=9,100、1,2-ブチレン基の比率=45モル%、-X-は-O(CHCHO)-で表される基、p=0であった。また、(c-1)と同様に算出したところ、(c-2)のSP値は8.405である。
【0100】
<製造例3>
温度調節装置及び撹拌機を備えた1LのSUS製耐圧反応容器に、脱気・脱水したヘキサンを400重量部、テトラヒドロフラン1重量部、n-ブチルリチウム0.4重量部を仕込んだ後、-40℃まで冷却した。ここに-40℃で液化させた1,3-ブタジエン90重量部を加え、重合温度を-40℃とし重合させた。その後は製造例1と同様に行い、水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(Y1-3)(イソブチレン基及び1,2-ブチレン基の合計比率;65モル%、1,2-付加体/1,4-付加体(モル比);65/35、水酸基価;13.1mgKOH/g、結晶化温度;-60℃以下)を得た。さらに、(Y1-3)とメタクリル酸とのエステル化を行い、単量体(c-3)を得た。得られた(c-3)の分子量をGPCで測定し、1,2-ブチレン基の比率を13C-NMRにて測定した。結果はMw=6,900、Mn=6,800、1,2-ブチレン基の比率=65モル%、-X-は-O(CHCHO)-で表される基、p=0であった。また、(c-1)と同様に算出したところ、(c-3)のSP値は8.334である。
【0101】
<製造例4>
温度調節装置及び撹拌機を備えた1LのSUS製耐圧反応容器に、脱気・脱水したヘキサンを400重量部、テトラヒドロフラン1重量部、n-ブチルリチウム0.4重量部を仕込んだ後、-40℃まで冷却した。ここに-40℃で液化させた1,3-ブタジエン90重量部を加え、重合温度を-40℃とし重合させた。その後は製造例1と同様に行い、水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(Y1-4)(イソブチレン基及び1,2-ブチレン基の合計比率;65モル%、1,2-付加体/1,4-付加体(モル比);65/35、水酸基価;8.0mgKOH/g、結晶化温度;-60℃以下)を得た。さらに、(Y1-4)とメタクリル酸とのエステル化を行い、単量体(c-4)を得た。得られた(c-4)の分子量をGPCで測定し、1,2-ブチレン基の比率を13C-NMRにて測定した。結果はMw=9,300、Mn=9,100、1,2-ブチレン基の比率=65モル%、-X-は-O(CHCHO)-で表される基、p=0であった。また、(c-1)と同様に算出したところ、(c-4)のSP値は8.325である。
【0102】
<製造例5:共重合体(C)の製造>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素吹き込み管及び減圧装置を備えた反応容器に、基油(100℃の動粘度:4.2mm/s、粘度指数:128)75部を投入し、別のガラス製ビーカーに、メタクリル酸n-ドデシル244重量部、メタクリル酸n-テトラデシル24重量部、メタクリル酸n-ヘキサデシル41重量部、メタクリル酸n-オクタデシル16重量部、連鎖移動剤としてのドデシルメルカプタン0.6重量部、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5重量部及び2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.2重量部を投入し、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに投入した。
反応容器の気相部の窒素置換(気相酸素濃度:100ppm以下)を行った後、密閉下系内温度を70~85℃に保ちながら、2時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から2時間、85℃で熟成した後、120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)未反応の単量体を2時間かけて除去し、基油中に65重量%の共重合体(C)を含有する共重合体組成物(C-1)を得た。得られた共重合体(C)のMwは53,000、SP値は9.0であった。
【0103】
<実施例1~11、18~21、比較例1~5>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、表3~5に記載の基油375重量部、表3~5に記載の単量体配合物125重量部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.2重量部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)を表3~5に記載の量投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で4時間重合反応を行った。120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)未反応の単量体を2時間かけて除去し共重合体(A-2)~(A-11)、(A-18)~(A-21)及び(A’-1)~(A’-5)は表3~5に記載の触媒量の調整により異なるMw及び分子量分布を持つものを得た。得られた共重合体(A-1)~(A-11)及び(A’-1)~(A’-5)を25重量%含有する粘度指数向上剤(R-1)~(R-11)、(R-18)~(R-21)及び(S-1)~(S-5)中の重合体(A-1)~(A-11)、(A-18)~(A-21)及び(A’-1)~(A’-5)のSP値を上記の方法で計算し、Mw及びMnを上記の方法で測定した。Mw及び分子量分布(Mw/Mn)の結果を表3~5に示す。
【0104】
<実施例12~17>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、表4に記載の基油370重量部、表4に記載の単量体配合物125重量部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.2重量部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)を表4に記載の量投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で4時間重合反応を行った。120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)未反応の単量体を2時間かけて除去し共重合体(A-12)~(A-17)を得た。得られた共重合体(A-12)~(A-17)のSP値を上記の方法で計算し、Mw及びMnを上記の方法で測定した。Mw及び分子量分布(Mw/Mn)の結果を表4に示す。
さらに製造例5で得られた共重合体組成物(C-1)を5重量部加えて、それぞれ共重合体(A-12)~(A-17)を25重量%、共重合体(C)を0.81重量%含有する粘度指数向上剤(R-12)~(R-17)を得た。
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
表3~5に記載の単量体(a)~(o)及び基油の組成は、以下に記載した通りである。
(a-1):メタクリル酸エチル
(a-2):メタクリル酸プロピル
(a-3):メタクリル酸イソプロピル
(b-1):メタクリル酸n-ブチル
(b-2):メタクリル酸イソブチル
(c-1):(Y1-1)のメタクリル酸エステル化物[Mn:6,800]
(c-2):(Y1-2)のメタクリル酸エステル化物[Mn:9,100]
(c-3):(Y1-3)のメタクリル酸エステル化物[Mn:6,800]
(c-4):(Y1-4)のメタクリル酸エステル化物[Mn:9,100]
(d-1):エトキシエチルメタクリレート
(d-2):n-ブトキシエチルメタクリレート
(e-1):メタクリル酸メチル
(f1-1):炭素数12~13の直鎖及び分岐アルキルメタクリレート混合物(SHELL社製NEODOL23(重量比=直鎖C12:分岐C12:直鎖C13:分岐C13=40:10:40:10)の混合物)のメタクリル酸エステル化物)
(f1-2):炭素数14~15の直鎖及び分岐アルキルメタクリレート混合物(SHELL社製NEODOL45(重量比=直鎖C14:分岐C14:直鎖C15:分岐C15=40:10:40:10)の混合物)のメタクリル酸エステル化物
(f1-3):メタクリル酸n-ヘキサデシル
(f1-4):メタクリル酸n-オクタデシル
(f2-1):メタクリル酸2-n-デシルテトラデシル
(f2-2):メタクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシル
(f2-3):メタクリル酸2-n-テトラデシルオクタデシル
(g-1):メタクリロイロキシエチルホスフェート
(n-1):N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
(o-1):2-ヒドロキシエチルメタクリレート
鉱物油1:SKルブリカンツ社製、製品名「Yubase4」(100℃の動粘度:4.24mm/s、粘度指数:122、SP値:8.3)
鉱物油2:SKルブリカンツ社製、製品名「Yubase3」(100℃の動粘度:3.06mm/s、粘度指数:106、SP値:8.3)
PAO油1:エクソンモービル社製、製品名「SpectrasynPAO4」(100℃動粘度:4.1mm/s、粘度指数:118、SP値:8.4)
GTL油1:Shell社製、製品名「Shell Risella X 420」、GTL4(フィッシャー-トロプシュ由来基油)(100℃動粘度:4.1mm/s、粘度指数:131、SP値:8.3)
【0109】
共重合体(A)の基油への溶解性
粘度指数向上剤(R-1)~(R-21)及び(S-1)~(S-5)の外観を目視で観察し、以下の評価基準で基油溶解性を評価した。
[評価基準]
○:外観が均一であり、共重合体の不溶解物がない
×:外観が不均一であり、共重合体の不溶解物が認められる
【0110】
<実施例22~42及び比較例6~9:0W-20評価>
撹拌装置を備えたステンレス製容器に、基油A(炭化水素油、100℃の動粘度:4.20mm/s、粘度指数:128、SP値:8.3)90重量部とパッケージ添加剤(Infineum P5741)10重量部を投入し、得られる潤滑油組成物の150℃のHTHS粘度が2.60±0.05(mPa・s)になるように、それぞれ粘度指数向上剤(R-1)~(R-21)又は(S-1)~(S-3)、(S-5)を添加し、潤滑油組成物(V-1)~(V-21)及び(W-1)~(W-4)を得た。
潤滑油組成物(V-1)~(V-21)及び(W-1)~(W-4)の剪断安定性(BOSCH SSI)、HTHS粘度(150℃、100℃、80℃、60℃)、動粘度(100℃、80℃、60℃、40℃)、粘度指数、低温粘度(-40℃)を以下の方法で測定した。結果を表6に示す。
なお、粘度指数向上剤(S-4)は共重合体(A’-4)の基油への溶解性が低いことから評価しなかった。
【0111】
【表6】
【0112】
<実施例43~63及び比較例10~13:0W-16評価>
撹拌装置を備えたステンレス製容器に、基油A(炭化水素油、100℃の動粘度:4.20mm/s、粘度指数:128、SP値:8.3)90重量部とパッケージ添加剤(Infineum P5741)10重量部を投入し、得られる潤滑油組成物の150℃のHTHS粘度が2.30±0.05(mPa・s)になるように、それぞれ粘度指数向上剤(R-1)~(R-21)又は(S-1)~(S-3)、(S-5)を添加し、潤滑油組成物(V-22)~(V-42)及び(W-5)~(W-8)を得た。
潤滑油組成物(V-22)~(V-42)及び(W-5)~(W-8)の剪断安定性(BOSCH SSI)、HTHS粘度(150℃、100℃、80℃、60℃)、動粘度(100℃、80℃、60℃、40℃)、粘度指数、低温粘度(-40℃)を以下の方法で測定した。結果を表7に示す。
なお、粘度指数向上剤(S-4)は共重合体(A’-4)の基油への溶解性が低いことから評価しなかった。
【0113】
【表7】
【0114】
<潤滑油組成物のHTHS粘度の測定方法>
ASTM D 4683の方法により、60℃、80℃、100℃及び150℃で測定した。100℃、80℃及び60℃のHTHS粘度が低いほど、良好であることを意味する。
【0115】
<潤滑油組成物の動粘度の測定方法及び粘度指数の計算方法>
JIS-K2283の方法で40℃、60℃、80℃と100℃の動粘度を測定し、JIS-K2283の方法で計算した。動粘度が低く、粘度指数の値が大きいほど粘度指数向上効果が高いことを意味する。
【0116】
<潤滑油組成物の剪断安定性(BOSCH SSI)の測定方法及び計算方法>
ASTM D 6278の方法で測定し、ASTM D 6022の方法で計算した。値が小さいほど、剪断安定性が高いことを意味する。
【0117】
<潤滑油組成物の低温粘度測定方法>
JPI-5S-42-2004の方法で-40℃での粘度を測定した。値が小さいほど、低温粘度が低く良好であることを意味する。
【0118】
表6及び表7の結果から、本発明の粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物は、40~80℃での動粘度及び60~100℃でのHTHS粘度、粘度指数、剪断安定性、低温粘度も優れており、潤滑油組成物として優れていることがわかる。
一方、単量体(a)を構成単量体として含まない共重合体を含む比較例6及び10の潤滑油組成物は、単量体(a)を構成単量体として含む以外はほぼ同じ実施例22又は43と比較して、40~80℃での動粘度及び60~100℃でのHTHS粘度が高く、粘度指数が低く、潤滑油組成物として劣っていることがわかる。また、単量体(b)を構成単量体として含まない共重合体を含む比較例7及び11の潤滑油組成物は、単量体(b)を構成単量体として含む以外は同じ実施例26又は47と比較して、40~80℃での動粘度及び60~100℃でのHTHS粘度が高く、粘度指数が低く、潤滑油組成物として劣っていることがわかる。また、単量体(c)を構成単量体として含まない共重合体を含む比較例8及び12の潤滑油組成物は、単量体(c)を構成単量体として含む以外は同じ実施例22又は43と比較して、40~80℃での動粘度及び60~100℃でのHTHS粘度が高く、粘度指数が低く、剪断安定性が高く、低温粘度が高く、潤滑油組成物として劣っていることがわかる。また、重量比率(a/b)が数値範囲外である比較例9及び13の潤滑油組成物は、数値範囲内である以外は同じ実施例27又は48と比較して、40~80℃での動粘度及び60~100℃でのHTHS粘度が高く、粘度指数が低く、劣っていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の粘度指数向上剤を用いれば、粘度指数向上剤を添加した潤滑油組成物の40~80℃での動粘度及び60~100℃でのHTHS粘度が低い潤滑油組成物を得ることができるので、本発明の粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)及びエンジン油(ガソリン用及びディーゼル用)に好適に用いられる。
また、本発明の潤滑油組成物は、40℃の動粘度に優れ、低温でのゲル化指数が低いので、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)及びエンジン油(ガソリン用及びディーゼル用)に好適に用いられる。