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特許7195720管理システム、監視装置、それらの方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】管理システム、監視装置、それらの方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 67/00 20170101AFI20221219BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20221219BHJP
   G06Q 10/00 20120101ALI20221219BHJP
【FI】
B29C67/00
B33Y50/00
G06Q10/00 300
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2016069175
(22)【出願日】2016-03-30
(65)【公開番号】P2017177574
(43)【公開日】2017-10-05
【審査請求日】2019-03-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】金子 剛
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】石附 直弥
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-340925(JP,A)
【文献】特開2003-296405(JP,A)
【文献】特開2004-106524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64
B33Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元の造形物を造形する造形装置を監視する監視装置と、前記監視装置とネットワーク介して通信する管理システムと、を含むシステムであって、
前記監視装置は、
複数のジョブに従う前記造形装置の造形部での3次元の造形物の造形処理が実行されるごとに積算されて前記造形装置の記憶部で記録される、積層された層の総数を示す積層回数を、前記造形装置から取得する取得手段と、
前記造形装置を識別するための識別情報と、前記取得された積層回数と、を含むデータを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成されたデータを前記管理システムに対して送信する送信手段と、を有し、
前記管理システムは、
前記監視装置から、データを受信する受信手段と、
前記受信されたデータに含まれる識別情報と、積層回数と、を記憶装置に格納する格納手段と、
を有することを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記送信手段は、前記造形装置を識別するための識別情報と、前記取得された積層回数と、を含むデータを、前記管理システムから指定されたスケジュールに従い、定期的に送信することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記生成手段は、前記造形装置でイベントが発生した場合に、当該発生したイベントを示す情報と、該イベントが発生した時刻を示す情報と、前記造形装置を識別するための識別情報と、前記取得された積層回数と、を含むデータを生成し、
前記送信手段は、前記造形装置での前記イベントの発生に応じて、当該発生したイベントを示す情報と、該イベントが発生した時刻を示す情報と、前記造形装置を識別するための識別情報と、前記取得された積層回数と、を含むデータを、前記管理システムに対して送信することを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記監視装置は、前記造形装置に内蔵されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
3次元の造形物を造形する造形装置を監視する監視装置と、前記監視装置とネットワーク介して通信する管理システムと、で実行される方法であって、
前記監視装置は、複数のジョブに従う前記造形装置の造形部での3次元の造形物の造形処理が実行されるごとに積算されて前記造形装置の記憶部で記録される、積層された層の総数を示す積層回数を、前記造形装置から取得し、
前記監視装置は、前記造形装置を識別するための識別情報と、前記取得された積層回数と、を含むデータを生成し、
前記監視装置は、前記生成されたデータを前記管理システムに対して送信し、
前記管理システムは、前記監視装置から、データを受信し、
前記管理システムは、前記受信されたデータに含まれる識別情報と、積層回数と、を記憶装置に格納することを特徴とする方法。
【請求項6】
3次元の造形物を造形する造形装置を監視する監視装置であって、
複数のジョブに従う前記造形装置の造形部での3次元の造形物の造形処理が実行されるごとに積算されて前記造形装置の記憶部で記録される、積層された層の総数を示す積層回数を、前記造形装置から取得する取得手段と、
前記造形装置を識別するための識別情報と、前記取得された積層回数と、を含むデータを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成されたデータを管理システムに対して送信する送信手段と、
を有することを特徴とする監視装置。
【請求項7】
前記送信手段は、前記造形装置を識別するための識別情報と、前記取得された積層回数と、を含むデータを、前記管理システムから指定されたスケジュールに従い、定期的に送信することを特徴とする請求項に記載の監視装置。
【請求項8】
前記生成手段は、前記造形装置でイベントが発生した場合に、当該発生したイベントを示す情報と、該イベントが発生した時刻を示す情報と、前記造形装置を識別するための識別情報と、前記取得された積層回数と、を含むデータを生成し、
前記送信手段は、前記造形装置での前記イベントの発生に応じて、当該発生したイベントを示す情報と、該イベントが発生した時刻を示す情報と、前記造形装置を識別するための識別情報と、前記取得された積層回数と、を含むデータを、前記管理システムに対して送信することを特徴とする請求項6または7に記載の監視装置。
【請求項9】
前記生成手段は、前記造形装置で造形処理が実行された際に、該造形処理の開始時の時刻を示す情報および前記造形装置の記憶部で記録される積層回数と、該造形処理の完了時の時刻を示す情報および前記造形装置の記憶部で記録される積層回数と、該造形処理で利用された消耗材の利用量と、を含む造形内容を示すデータを生成し、
前記送信手段は、当該造形処理の完了後に、前記生成された造形内容を示すデータを前記管理システムに対して送信することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項10】
前記造形装置の記憶部で記録される積層回数は、前記造形装置の造形方式が材料シート積層方式である場合には、造形処理での材料シートの積層枚数を示すことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項11】
前記造形装置の記憶部で記録される積層回数は、前記造形装置の造形方式が光造形方式である場合には、造形処理の際の造形部のステージ上への消耗材の積層回数を示すことを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項12】
前記造形装置の記憶部で記録される積層回数は、前記造形装置の造形方式がインクジェット方式である場合には、造形処理の際の造形部のステージが、消耗材が積層される該ステージの水平面に対して垂直方向に積層ごとに移動した回数を示すことを特徴とする請求項6乃至11のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項13】
前記監視装置は、前記造形装置に内蔵されることを特徴とする請求項6乃至12のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項14】
前記取得手段は、さらに、1ジョブに従う前記造形部での造形処理が実行されるごとに積算されて前記造形装置の記憶部で記録されるジョブ単位の積層の回数を取得し、
前記送信手段は、ジョブ単位の積層の回数を含むデータを前記管理システムに対して送信することを特徴とする請求項6乃至13のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項15】
前記造形装置は、前記記憶部に、前記造形装置で実行されたジョブに対応する造形処理で利用された消耗材の利用量をログとして記録し、
前記生成手段は、前記造形装置の前記記憶部で記録されるログに基づき、前記造形装置での造形処理で利用された消耗材の利用量と前記造形装置を識別するための識別情報とを含むデータをさらに生成することを特徴とする請求項6乃至14のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項16】
前記ログでは、造形材及びサポート材のそれぞれの利用量が記録され、
前記生成手段は、前記ログに基づき、前記造形装置での造形処理で利用された消耗材の利用量として、造形材及びサポート材のそれぞれの利用量と、前記造形装置を識別するための識別情報とを含むデータをさらに生成することを特徴とする請求項15に記載の監視装置。
【請求項17】
3次元の造形物を造形する造形装置を監視する監視装置における方法であって、
複数のジョブに従う前記造形装置の造形部での3次元の造形物の造形処理が実行されるごとに積算されて前記造形装置の記憶部で記録される、積層された層の総数を示す積層回数を、前記造形装置から取得する取得工程と、
前記造形装置を識別するための識別情報と、前記取得された積層回数と、を含むデータを生成する生成工程と、
前記生成されたデータを管理システムに対して送信する送信工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項18】
前記監視装置は、前記造形装置に内蔵されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
コンピューターに、
複数のジョブに従う造形装置の造形部での3次元の造形物の造形処理が実行されるごとに積算されて前記造形装置の記憶部で記録される、積層された層の総数を示す積層回数を、前記造形装置から取得する取得工程と、
前記造形装置を識別するための識別情報と、前記取得された積層回数と、を含むデータを生成する生成工程と、
前記生成されたデータを管理システムに対して送信する送信工程と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク通信を用いて造形装置を管理するための管理システムの仕組みに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷装置や複写機などの用紙に対して画像を形成する画像形成装置の稼働情報を、ネットワークを介して収集して、保守などを行うシステムが存在した。例えば、特許文献1には、画像形成装置からトナーなどの消耗品の残量に係る通知を受信して、該消耗品の在庫管理を行う技術が開示されている。特許文献1には、在庫管理の精度を向上させるために、残量に係る通知に含まれる、画像形成装置の稼働開始から積算されている印刷枚数であるトータルカウンタの値を利用していた。特許文献1においては、トータルカウンタの値の変化を参照することで、特定の期間における画像形成装置の稼働量が管理システムで適切に把握できた。
【0003】
近年、三次元状の造形物を造形するための造形装置、いわゆる3Dプリンターがひろく用いられるようになってきている。今後、上述の管理システムにおいて、ネットワーク上の造形装置を保守の対象とすることが考慮され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-159854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、3Dプリンターには様々な造形方式が存在し、造形される造形物も様々なので、ネットワークを介した遠隔地にある管理システムで、造形装置の稼働状況を適切に把握するのが困難であるといえる。現状、3Dプリンターについて、ある期間内にどのような造形処理が行われた場合であっても統一的に稼働状況を反映するために積算されていくような、従来技術の印刷枚数に相当する、トータルカウンタの値を収集することができていない。
【0006】
そこで、本発明は、管理システムの管理対象となり得る造形装置から、ネットワークを介して稼働状況を適切に把握できるような新たな稼働情報を収集するための仕組みを用意することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの形態は、ジョブに従い造形部を用いて3次元の造形物を造形する造形装置を監視する監視装置であって、複数のジョブに従う前記造形装置の造形部での3次元の造形物の造形処理が実行されるごとに積算されて前記造形装置の記憶部で記録される、積層された層の総数を示す積層回数を、前記造形装置から取得する取得手段と、前記造形装置を識別するための識別情報と、前記取得された積層回数と、を含むデータを生成する生成手段と、前記生成手段により生成されたデータを管理システムに対して送信する送信手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、管理システムが、3次元の造形物を造形する造形装置の稼働状況を、造形処理が実行されるごとに積算されて前記造形装置の記憶部で記録される積層回数を用いて、適切に把握できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】造形装置と管理システムとを含むネットワークシステムの構成例を示す図
図2】本発明に係るシステムを構成する各装置のハードウェア構成の例を示す図
図3】本発明に係るシステムを構成する各装置のソフトウェアのモジュール構成の例を示す図
図4】本発明に係る造形方式の例を示した図
図5】造形装置の稼働情報の定期送信処理を説明するためのフローチャート
図6】管理システムでの稼働情報の受信処理を説明するためのフローチャート
図7】消耗品の種類ごとの平均寿命を算出する処理を説明するためのフローチャートである。
図8】監視装置による造形処理の内容を示す情報を送信する処理を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る造形装置と管理システムとを含むネットワークシステムの構成例を示す図である。
【0011】
図1では、101は、ローカルエリアネットワーク(LAN)を示す。102は、3次元の造形物を造形する造形装置である。103は、Proxy Server、104は、Intranetのセキュリティを高めるために設置されたFirewallを表している。105は、一般のユーザが業務等で使用するパーソナルコンピュータ(PC)、これらがLAN101を介して相互に接続されていることを表している。PC105は、造形装置102に対して造形対象の造形物を造形するための造形データを送信することができる。107は、造形装置102の設置環境を示し、本図では、Proxy Server103、Firewall104などを含むイントラネットを構成している。なお、イントラネットには、複数の造形装置が設置されてもよい。
【0012】
管理システム106は、設置環境107内の各装置とインターネット108を介して通信を行う、1以上の造形装置を管理するためのシステムである。管理システム106は、1以上のサーバーコンピューターにより構成される。主に、造形装置102の稼働情報を収集して、その情報に基づき造形装置102の保守などの手配、レポーティングといった管理サービスを実現する。
【0013】
造形装置102は、管理システム106に対して、自装置の個体識別情報や機種情報といったデバイス情報や、障害情報やステータス情報などを含む稼働情報を送信する機能をもつ監視装置が内蔵されている。
【0014】
なお、造形装置102のデバイス情報や稼働情報などを送信する機能をもつ監視装置は、造形装置102とは別に、LAN101上に設置されてもよい。その場合は、監視装置がLAN101上の1以上の造形装置からデバイス情報や稼働情報などを取得して、管理システム106に対してその取得した情報を送信することになる。
【0015】
本実施例において、監視装置と管理システム106との間の通信プロトコルは、HTTPやHTTPSなどのプロトコルを想定しているが、とくに限定するものではない。ウェブソケットや、SMTPなど、様々な通信プロトコルを利用することが可能である。
【0016】
図2は、本発明に係るシステムを構成する各装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【0017】
図2(A)は、造形装置102のハードウェア構成の例を示している。CPU201は、ROM203や記憶装置204に格納されているプログラムを実行し、内部バス206を介して各デバイスを総括的に制御する。RAM202は、CPU201のメモリやワークエリアとして機能する。ROM203には、組込済みプログラムおよびデータが記録されている。ROM203には、個体識別情報や機種情報、造形装置102が出荷される地域を意味する仕向け情報なども格納されている。この仕向け情報に従って入出力装置210で表示する言語は決定される。ネットワークI/F205は、LAN101を介して、外部のネットワーク機器あるいはPC105と片方向または双方向にデータをやり取りするために利用される。
【0018】
記憶装置204は、外部記憶装置として機能し、造形データ等を記憶するほか、RAM202に代わって、造形装置102の内部で検出、記録された稼働情報や消耗材に関する情報を保存することも可能である。また、監視装置による機能を実現するためのプログラムも格納されている。稼働情報には、障害情報、ステータス情報、ログ情報などが含まれる。記憶装置204に保存された稼働情報などは、監視装置により取得され、インターネットなどのネットワークを介して管理システム106に送信される。
【0019】
操作部208は、造形装置102における入出力を担う構成を示す。具体的には、ユーザからの入力(ボタン入力など)を受け付け、該入力に対応する信号を操作部I/F207によって前述した各処理部へ伝える。ほかにも、ユーザに対して必要な情報を提供したり、ユーザ操作を受付けたりするための表示装置(タッチパネルなど)も操作部208に含まれる。
【0020】
造形部209には、3次元の造形物を造形するための造形材を積層するための造形ステージや、造形物の効果や仕上げ、サポート部を造形するための構成などが含まれる。ここで、造形部209による造形処理は、積層造形と呼ばれ、PC105などにインストールされている3D造形アプリケーションでモデルデータなどから生成された積層面単位の断面形状データ(すなわちスライスデータ)の造形コマンドを用いて実行される。なお、造形部209の内部構成としては、造形装置がサポートする造形方式に依存したハードウェア構成が含まれる。本発明が適用可能な造形方式の例については、図4などを用いて後述する。
【0021】
消耗材補給部212は、造形物を造形するのに必要な造形材213を含む消耗材を造形部209へ供給する。造形物の造形に際してサポート部を造形する造形方式が採用された造形装置では、消耗材として消耗材補給部212が保持するサポート部材も、造形部209へ供給されることになる。造形材213には、光硬化型樹脂や熱可塑性樹脂、金属粉、石膏材など様々なものが存在する。光硬化型樹脂には、例えば、液体状の紫外線などの照射により硬化する樹脂がある。
【0022】
消耗材補給部212は、造形材213やサポート材などの造形部209への供給量を管理することができる。この供給量は、記憶装置204にログとして記録することができる。ここで記録されるログは、1レコードに対して、1造形物(1ジョブ)ごとの供給量が記録される。なお、ログの記録は、造形物ごと以外にも、所定期間における供給量を記録するといった記録方法も可能である。また、造形装置102が複数カラーでの着色造形が可能であれば、消耗材補給部212は、複数色のそれぞれの造形材213を造形部209に補給することができ、個別に供給量を管理することができる。そして、それらの供給量をログとして記憶装置204に記録できる。
【0023】
なお、消耗材補給部212への消耗材の補充については、液体、粉末などの造形材213が入ったボトルを消耗材補給部212に対して装着することで供給する形式であってもよい。または、造形材補給部212に対して消耗材を専用のボトルなどから手動で補給する形式でもよい。
【0024】
センサー215は、造形装置102内に複数配置され、それぞれに目的がある。造形装置102内に配置されるセンサーの例について、以下に主なものを説明する。
【0025】
あるセンサーは、消耗材補給部212により管理する消耗材の造形部209への供給量を検出したり、消耗材補給部212で保持している消耗材の残量を検出したりする。また、造形材213が入ったボトルの装着を検出し、該ボトルの識別情報などを検出するセンサーが造形装置102内に配置されていてもよい。また、造形部209内における温度異常や故障などを検出するセンサーも配置されている。造形部209に、造形処理用の造形ヘッドやステージが存在する場合には、造形部209内に、それらの駆動回数(移動距離)をカウントするためのセンサーも配置されている。
【0026】
ほかにも、造形部209において造形材213が実際に積層された積層面の数をカウントするセンサーも配置されている。この積層面の数は、造形装置102並びに造形部209が正常稼働していると仮定すれば、造形部209で実行された造形処理で用いた造形データに対応するスライスデータの数とほぼ同等になる。実際には、故障などの要因で造形処理に利用されなかったスライスデータや、保守などの目的で積層処理が実行されることがあるため、同期間におけるセンサーで計数された積層面の総数と、スライスデータの総数とは一致しない場合がある。
【0027】
なお、上述のセンサーはハードウェアとして用意した例を記載しているが、それらの一部、または全てを、同等の検知機能をもつソフトウェアセンサーで代替してもよい。
【0028】
また、造形装置102にはオプション機器として、造形方式に応じて必要となる付帯設備や、カメラやICカードリーダー等の3Dプリンターの機能及び機構を拡張する周辺機器(不図示)などがある。付帯設備の例として、インクジェット方式の場合に粉末対策として必要な装置や、光造形(SLA)の場合に必要となる洗浄装置などがある。
【0029】
図2(B)は、情報処理装置のハードウェアの構成例を示す図である。情報処理装置には、本発明におけるPC105や管理システム106を構成する1以上のサーバーコンピューターなどが含まれる。また、監視装置を造形装置の外部に設置するケースでは、該監視装置も図示した情報処理装置と同様の構成を備えることになる。なお、監視装置による機能を実現するためのプログラムは情報処理装置内で実行されることになる。
【0030】
CPU251は、ROM253や記憶装置254に格納されたプログラムなどを実行し、情報処理装置全体を、内部バス256を介して制御する。また、ROM253や記憶装置254には、プログラム以外にも各種データが保存されている。たとえば、記憶装置254は、造形装置102のデバイス情報や稼働情報などが記憶できる。RAM252は、CPU201のメモリやワークエリアとして機能する。入出力I/F257は、例えばPS2やUniversal Serial Bus(USB)、アナログやデジタルのディスプレイI/Fなどである。入出力装置258は、キーボードやマウス、CRTや液晶ディスプレイであり、入出力I/F257を介して情報処理装置と接続することができる。情報処理装置はネットワークI/F255により、LAN101、インターネット108を介した通信を行う。
【0031】
図3は、本発明に係るシステムを構成する各装置のソフトウェアのモジュール構成の例を示す図である。これら構成は、本発明に係るプログラムを実行することで実現される処理の主体となる仮想的なモジュールを示している。図示した構成はあくまでも一例であり、後述するような処理を実現できれば、異なるモジュール構成をとってもよい。
【0032】
図3(A)は、造形装置102のソフトモジュール構成を説明する図である。
【0033】
通信部301は、管理システム106などの外部装置とネットワークI/F205を介して通信する。記憶部302は、おもに記憶装置204に対して、ハードウェアまたはソフトウェアによるセンサーで検出された稼働情報を記録する。また、造形装置102に係るデバイス情報も記憶装置204に記録する。デバイス情報には、装置の個体識別情報や機種情報、製造元を示すベンダー情報、IPアドレス、MACアドレスなどの通信情報が含まれる。
【0034】
造形管理部303は、造形部209に対する造形コマンドに従う造形制御や、消耗材補給部212への消耗材供給のための制御を行う。操作部304は、ユーザーによる造形指示をはじめとする造形装置102に対する操作を受け付ける。
【0035】
305~308は、監視装置の機能に対応するモジュール構成である。
デバイス情報管理部305は、監視対象である造形装置102のデバイス情報を、記憶装置204などを利用して、管理する。監視部306は、造形装置102の状態などを監視する。具体的には、造形装置102の記憶装置204に記録される稼働情報を参照し、イベント通知すべき情報(障害発生、障害の復帰)があるか否かを判定するなどといった監視機能を実現する。また、消耗材に係る通知を行う必要があるかといった判定なども行う。また、監視部306は、通信部301を介して受信した管理システム106からのデータ送信スケジュールや監視対象イベントなどの監視設定などを受け付け、反映する。生成部307は、監視部306で通知する必要があると判定された通知内容を含むアラームやサービスコールなどのメッセージを生成する。監視装置から管理システム106に対して定期的に送信すべき稼働情報を含むメッセージの生成も行う。通信制御部308は、生成部307により生成されたメッセージを、通信部301に所定の通信プロトコルを利用して送信させる。
【0036】
なお、監視装置が造形装置102の外部に存在する場合には、造形装置102内の記憶装置204と監視装置の機能に対応するモジュール305、306との間では、ネットワークを介して、所定のプロトコル(例えば、SNMP、IPPなど)を利用して、データのやり取りが行われる。また、通信制御部308は、監視装置のネットワークI/Fを用いて、メッセージの送信を行うことになる。
【0037】
図3(B)は、管理システム106のソフトモジュール構成を示す図である。
【0038】
通信部351は、造形装置102や監視装置などの外部装置と、ネットワークI/Fを用いて、通信を行うための機能を持つ。具体的には、監視装置経由で、造形装置102のデバイス情報や稼働情報などを含むメッセージを受け付ける。また、監視装置に対する監視設定などを含むメッセージの送信の制御も行う。
【0039】
表示制御部353は、記憶装置254や不図示のネットワーク上のストレージサービスに記憶されたデバイス情報ならびに稼働情報をWebブラウザーで表示するための画面情報を提供する。管理システム106内ではWWWサーバプログラムが動作しており、これにより販売会社の保守担当者等が任意のPC上で、デバイス情報などを閲覧することが可能となる。
【0040】
コマンド解析部354は、外部装置からの受信データを解析し、該データに含まれるメッセージの内容を判別する。メッセージ生成部355は、デバイス管理部356で生成した通知や監視設定を含むメッセージや、造形装置102や監視装置からの要求に対するレスポンスを生成する。
【0041】
デバイス管理部356は、管理対象の造形装置102の管理するための専用プログラムを実行することで実現される構成である。
【0042】
通知管理部357は、通知先の指定(監視装置や販売会社など)、必要な通知情報の生成を行う。ここで、生成される通知には、造形装置102の保守担当者への保守依頼通知や消耗品の補充依頼通知などがある。
【0043】
販売会社情報管理部358は、管理対象の造形装置102の保守、消耗品の管理、配送手配などを行う販売会社の情報を管理する。販売会社情報は、記憶装置254や不図示のネットワーク上のストレージサービスに記憶されている。
【0044】
デバイス情報管理部359は、管理対象の造形装置102や監視装置のデバイス情報を、記憶装置254や不図示のネットワーク上のストレージサービスで、管理する。デバイス情報としては、造形装置の個体識別情報、機種・製造元を示す情報、IPアドレスなどの通信情報などが管理対象になる。デバイス情報管理部359では、監視装置からの通知の内容に基づき、造形装置のエラー、アラームなどを含む稼働状況(ステータス)なども管理している。デバイス情報管理部359で管理される造形装置の状態を閲覧するための情報は、WWWサーバプログラムを介して、ネットワーク上にリアルタイムに提供される。これは、販売会社のディスパッチャ、保守担当者などにより閲覧される。また、さらに、障害情報は販売会社の対応状況に応じて「未対応」「対応中」「対応済み」などスのテータス管理されている。
【0045】
顧客情報管理部360は、管理対象の造形装置102を保有する顧客の情報を管理する。その情報の中には、販売会社との保守契約に関する情報も含まれる。保守契約には、造形装置の設置環境に対する消耗材の定期的な配送、定期的な保守作業、障害発生時の対応作業、などといった、顧客ごとに合意した保守の内容が含まれる。
【0046】
消耗品在庫管理部361は、造形装置102の消耗材や、造形装置102を構成する交換可能な部品などを含む消耗品の顧客が保有している在庫の数量を管理している。在庫管理対象の消耗品については、消耗品のIDにより特定できる。在庫の数量が所定の条件を満たす場合に、保守担当者への配送などの依頼が電子メールなどを用いて自動で行われる。
【0047】
ここで、在庫数が管理は、具体的には、監視装置から送信されてくる造形装置102の消耗材の残量を示すメッセージや部品の消耗度などを示す情報を含むメッセージなどを元に行われる。なお、造形装置の機種によって、送信されてくるメッセージの内容が異なり、一部の装置では、消耗材の使用量を示すメッセージを送信してくる場合もある。また、消耗品の交換の時期や交換前後の消耗日の識別情報を示す情報を含むメッセージが送信されてくる場合もある。
【0048】
マスタ情報管理部362は、機種情報、障害情報、消耗品情報などのWWWサーバプログラムを介した表示や、後述する判定処理に必要なマスタ情報を管理する。マスタ情報とは、例えば、ある機種に対応する製品名称、使用可能な消耗品情報、性能情報などといった仕様に係る登録情報である。つまり、監視装置からのメッセージに含まれる造形装置の機種などの情報から、その造形装置の性能(造形方式や利用する消耗材や消耗部品の種類)が特定できる。また、マスタ情報には、造形装置102の設置場所などといたった情報も管理される。
【0049】
消耗品寿命管理部363は、監視装置を介して送信されてくる、造形装置10での消耗品の交換情報を元に、実際に利用された消耗品の寿命の履歴を管理する。この履歴をもとに、実運用における、消耗品の平均寿命を算出できる。
【0050】
指示管理部364は、監視装置への指示を生成、管理を行う。生成された指示は、監視装置に対して、通信部351により送信される。指示の内容は、管理システム106への送信スケジュールの変更、通知すべきイベントの種類の変更、ファームウェア更新、リブートなどである。また、デバイス指示管理部364指示に対する実行結果を「成功」「失敗」「不明」などのステータスとして管理する。
【0051】
ファームウェア情報管理部365は、造形装置102のファームウェアバージョン情報を管理する。また、ファームウェア管理システム(不図示)と連携してファームウェアの配信設定を行う。ファームウェア管理システムにて、配信設定に従う、ファームウェアの配信が行われる。
【0052】
図4は、本発明が適用できる積層造形を行う造形方式の例を示す。以下の例にします造形方式をサポートする造形装置が、管理システム106の管理対象となり得る。
【0053】
図4(A)は、1つ目の例で、材料シート積層方式による造形物の造形方法を示す図である。
【0054】
この方式では、造形部209内で、材料シート402のステージ406への積層と、エネルギー供給元401からのエネルギー407(光、熱、紫外線など)の照射と、を繰り返すことで積層造形を行う。
【0055】
材料シート402は、実際に造形物となる造形材404とサポート材403からなる。造形材404はエネルギー407(光、熱、紫外線など)を受けて、積層造形物405と溶着される。なお、サポート材403は、造形物405に対して溶着されることはなく、造形物が倒壊しないようサポートする。例えば、サポート403は水溶性であって、造形物405を取り出す際にサポート材403部分に対して水をかけることで除去することが可能である。
【0056】
造形管理部303は、造形装置の利用開始から積算された材料シート402の積層回数(積層枚数)を記録し、記憶装置204に格納する。詳しくは、後述するが、利用開始から積算された積層回数を、本発明では造形装置の全般的な稼働状況を把握するための指標として利用する。よって、ここで記録された積層回数は、造形装置のトータルカウンタの値として、監視装置を介して、管理システム106に送信されることになる。
【0057】
また、造形管理部303は、利用開始から積算された積層回数とは別に、1造形物や1ジョブ単位での積層回数も、記録して記憶装置204に格納することができる。ここで説明した稼働情報に類似する情報として、積層造形物の完成までに造形部209に対して供給された造形材404の量や、造形データ(モデルデータ)から計算される積層造形物の体積といった情報がある。それらの情報も、レポーティングサービスなどの目的のため、監視装置を介して、管理システム106に送信される。
【0058】
2つ目の積層造形を行う造形方式の例として、光造形方式(不図示)というものも存在する。
【0059】
この方式では、造形部209において、ステージ上の水平面への造形材(紫外線硬化樹脂など)の積層、造形材を硬化させる部分に対するレーザーからのエネルギー(紫外線など)の放射、ステージの降下、の3つの工程を繰り返すことで、造形物を徐々に積層造形していく。ここで、紫外線が当たらなかった部分については、硬化せずにステージ上に残ることになる。よって、硬化しなかった造形材はそのまま積層造形物の倒壊を防ぐサポート部となる。造形処理の完了時には、そのサポート部分を除くことで、積層造形物のみが取り出せる。
【0060】
造形管理部303は、造形装置の利用開始からのステージ上への造形材の積層回数を記録し、記憶装置204に格納する。この造形方式についても、利用開始から積算された積層回数を、造形装置の全般的な稼働状況を把握するための指標として扱うものとする。よって、ここで記録された積層回数は、造形装置のトータルカウンタの値として、監視装置を介して、管理システム106に送信されることになる。
【0061】
なお、造形管理部303は、造形データから計算される積層造形物の体積などといった、造形物ごとの造形材の使用量を把握できるような稼働情報を記録し、記憶装置204に格納する。ここで格納された情報も、監視装置を介して、管理システム106に送信されることになる。
【0062】
図4(B)は、3つ目の例で、インクジェット方式による造形物の造形方法を示す図である。
【0063】
造形部209では、インクジェットヘッド409によるステージ417への造形が行われる。インクジェットヘッド409は、造形材用ノズル410とサポート材用ノズル411、造形材を硬化させるエネルギーを照射するエネルギー源412、積層造形中の造形物の厚みを調整するローラーカッター413から成る。
【0064】
本方式は、造形材用ノズル410とサポート材用ノズル411から微小な粒子を噴射、エネルギー源412からのエネルギーの放射、ステージ417の降下、の3つの工程を繰り返すことで、造形物を徐々に積層造形していく。造形材用ノズル410とサポート材用ノズル411から粒子を噴射する位置は、造形コマンドに基づく各スライスデータで指定された座標により決まる。造形物414の倒壊を防ぐためにサポート材用ノズル411から噴射された粒子が硬化したことで形成されるサポート部415は、造形後に除去することが可能である。また、造形材用ノズル410とサポート材用ノズル411から微小な粒子を噴射後に、その噴射された粒子で形成される面の厚みを調整するためにローラーカッター413で表面を削り取る工程が入る。
【0065】
本方式では、積層面の数だけ、ステージ417が降下することになるので、ステージ417の降下回数を積層回数として扱うことができる。造形管理部303は、造形装置の利用開始からの積層回数を記録し、記憶装置204に格納する。ここで記録された積層回数は、インクジェット方式を採用する造形装置のトータルカウンタの値として、監視装置を介して、管理システム106に送信されることになる。
【0066】
また、造形管理部303は、造形材用ノズル410とサポート材用ノズル411の噴射回数は、それぞれの消耗度を把握するための稼働情報として扱うことが可能なので、それらの情報も記憶装置204に格納する。そして、格納された情報は、監視装置を介して、管理システム106に送信されることになる。さらに、造形データ(モデルデータ)から計算される積層造形物の体積などといった、造形物ごとの造形材の使用量を把握できるような稼働情報についても、記憶装置204に格納され、その後、監視装置を介して、管理システム106に送信されることになる。
【0067】
4つ目の例として、熱溶解積層法(FDM)と呼ばれる造形方式(不図示)がある。
造形部209では、ステージと、半液状に溶かされた熱可塑性の造形材を押出す造形ヘッドとが含まれる。造形ヘッドは、複数のスライスデータに従い、造形材をステージ211上に積層していく。
【0068】
まず、造形ヘッドをX軸方向(以後、主走査方向と呼ぶ)に往復させて1ライン分を積層する。これをY軸方向(以後、副走査方向と呼ぶ)へ順番に移動させて繰り返すことで、1増分の断面形状を積層する。なお、造形ヘッドは造形ステージ上の造形物の断面形状データが存在している範囲内のみを制御して移動させ、造形材を押し出していく。1つのスライスデータに従う押出成形が終了すると、造形ヘッドを造形ステージの水平面と垂直上方向(Z軸方向)に移動させ、次のスライスデータに従う押出成形を実行する。
【0069】
本方式では、積層面の数だけ、造形ヘッドがZ軸方向に上昇することになるので、造形ヘッドのZ軸方向への上昇回数を積層回数として扱うことができる。造形管理部303は、造形装置の利用開始からのこの積層回数を記録し、記憶装置204に格納する。ここで記録された積層回数は、FDM方式を採用する造形装置のトータルカウンタの値として、監視装置を介して、管理システム106に送信されることになる。
【0070】
また、造形ヘッドからの造形材の押し出し量は、造形ヘッドの消耗度を把握するための稼働情報として扱うことが可能なので、造形管理部303は、それらの情報も記憶装置204に格納する。そして、格納された情報は、監視装置を介して、管理システム106に送信されることになる。さらに、造形データ(モデルデータ)から計算される積層造形物の体積や造形材の押し出し量といった、造形物ごとの造形材の使用量を把握できるような稼働情報についても、記憶装置204に格納され、その後、監視装置を介して、管理システム106に送信されることになる。
【0071】
図5は、監視装置により実行される造形装置の稼働情報などの送信処理を説明するためのフローチャートである。本処理は、監視装置が動作する造形装置102または情報処理装置内のCPUが、監視装置を実現するためのプログラムを実行することで行われる処理である。
【0072】
また、監視装置では、管理を開始するために、管理システム106との通信が可能であるか確認するために通信テストが実施される。通信テストは販売会社の保守担当者が操作部208から指示することで実施される。この通信テストが成功すると、管理システム106から、収集対象の稼働情報の種類と、定期送信スケジュールなどが送信されてくる。
【0073】
図5(A)は、監視装置により実行される造形装置の稼働情報の定期送信処理を説明するためのフローチャートである。
【0074】
S501で、監視部306は、管理システム106の収集対象となっている稼働情報のいずれかの送信タイミングであることを検知する。
【0075】
S502で、監視部306は、対象の稼働情報を造形装置102の記憶装置204から取得する。そして、生成部307は、監視部306により取得された稼働情報と造形装置102のデバイス情報とを含むメッセージを生成する。
【0076】
S503で、通信制御部308は、生成された稼働情報を含むメッセージを、ネットワークを介して管理システム106へ送信するよう制御する。
【0077】
管理システム106の収集対象となっている稼働情報には、トータルカウンタ値として記録されている造形部209での積層回数などがある。トータルカウンタ値としての積層回数の定期送信については、S502では、取得された年月日時を示す情報、記録された積層回数の値に加え、個体識別情報や機種情報、通信情報といったデバイス情報を含むメッセージが生成される。この定期送信は、例えば、1日1回、定時に行われるものとする。
【0078】
図5(B)は、監視装置により実行される造形装置102で発生した障害イベントなどを示す稼働情報の送信処理を説明するためのフローチャートである。監視装置は、管理システム106から指定された収集対象の稼働情報の中で、イベント送信すべき稼働情報を予め監視対象として指定されているものとする。
【0079】
S551で、監視部306は、管理システム106から指定された監視対象となる稼働情報を示すイベントの発生を検知する。具体的には、監視部306が、造形装置102の記憶装置204に記録される稼働情報を監視して、監視対象となる稼働情報が記録されたことを検出した場合に、イベント発生を検知する。なお、造形装置102のセンサーが、監視部306に対してイベント発生を通知する構成であってもよい。
【0080】
ここで、監視対象となる稼働情報とは、障害や異常を示すエラーやアラーム、ユーザーからの保守依頼を示すコールなどである。また、消耗品の交換の発生を示す情報なども含まれる。それらの情報は、それぞれを特定するためのコードが割り当てられている。コードには、造形装置102内の障害などが発生した発生箇所を示すようなサブコードといった情報が含まれてもよい。
【0081】
S552で、生成部307は、発生イベントを示すコード、発生した年月日時を示す情報、発生時のトータルカウンタ値としての積層回数、個体識別情報や機種情報、通信情報といったデバイス情報、を含むメッセージを生成する。
【0082】
S553で、通信制御部308は、生成されたメッセージを、ネットワークを介して管理システム106へ送信するよう制御する。
【0083】
なお、消耗品の交換に関する情報のイベント送信であれば、上記に加え、生成されるメッセージには、消耗品の名称、ID、シリアル番号、消耗度を示す情報、前回交換日時などが更に含まれる。消耗材を含む消耗品の交換の場合には、消耗度を示す情報として、消耗材(造形材)の使用量、または残量がメッセージに含まれる。交換可能な消耗部品の一例である造形部209の造形ヘッドについては、造形材の噴射回数や押出し量などが、消耗度を示す情報として、メッセージに含まれる。
【0084】
図6は、管理システム106での稼働情報の受信処理を説明するためのフローチャートである。本処理は、管理システム106を構成するサーバーコンピューターのCPU251が、プログラムを実行することで実現される処理である。
【0085】
S601で、通信部351は外部装置、ここでは監視装置からメッセージを受信する。S602で、デバイス情報管理部359は、コマンド解析部354でのメッセージ解析の結果に基づき、メッセージに含まれるデバイス情報が示す造形装置が、管理対象となる造形装置であるかを判定する。管理対象でなかった場合、S603で、デバイス情報管理部359は受信メッセージを破棄して、本処理を終了する。管理対象であった場合、S604で、デバイス情報管理部359は受信メッセージに含まれる稼働情報などの情報を記憶装置254や不図示のネットワーク上のストレージサービスに格納する。記憶装置254や不図示のネットワーク上のストレージサービスでは、個体識別情報に関連付けて、該識別情報で識別される造形装置の稼働情報はその取得日時といった情報が格納され、管理されている。
【0086】
S605で、デバイス情報管理部359は、受信メッセージがイベント送信されたものか否か判定する。イベント送信されたものであるならばS606に進み、イベント送信でない場合には本処理を終了する。
【0087】
S606で、デバイス情報管理部359は、受信メッセージの内容が、消耗品の交換イベントを示すか否かを判定する。ここでは、メッセージに含まれるコードを参照して判定が行われる。判定の結果、消耗品の交換であった場合にはS607に進み、消耗品の交換でなかった場合にはS609に進む。
【0088】
S607で、デバイス管理部356は、受信メッセージに含まれる消耗品のIDから、交換対象の消耗品が消耗品在庫管理部361での在庫管理対象か否かを判定する。在庫管理対象と判定された場合にはS608に進み、在庫管理対象でない判定された場合にはS609に進む。S607で、消耗品在庫管理部361は、消耗品のIDで特定される消耗品の残りの在庫数を1つ減算する。通知管理部357は、減算処理後の在庫の数量が所定の条件を満たす場合に、保守担当者への対象の消耗品の配送の依頼のための電子メールを自動で配信する。
【0089】
S609で、デバイス情報管理部359は、受信メッセージに含まれるコードに対応する発生イベントの内容の通知処理を実行する。通知処理では、造形装置のデバイス情報、発生イベントの内容、発生時刻、発生時のトータルカウンタ値を示す積層回数を含む内容が、WWWサーバプログラムを介して、ネットワーク上に提供される。保守担当者は、ウェブブラウザーを利用して、リアルタイムにイベント情報を確認できる。また、発生イベントが障害やサービスコールであった場合には、通知処理として、通知管理部357が、イベント発生元の造形装置の保守担当者のメールアドレス宛に、発生イベントの内容を含む電子メールを自動で送信する。電子メールには、造形装置のデバイス情報、イベント発生時刻、発生時のトータルカウンタ値を示す積層回数などといった情報も含まれる。
【0090】
なお、S609で、デバイス情報管理部359は、S601で受信したメッセージについて、同じ造形装置から連続で同じ内容のイベント発生であることを検出した場合には、所定の条件を満たす場合には、通知処理を抑制する。具体的には、今回のS601で受信したメッセージに含まれる積層回数と、前回のイベント発生を示すメッセージに含まれる積層回数との差を示す値が、閾値未満である場合には、今回のS601で受信したメッセージに係る通知処理を抑制する。これは、全く同じ障害を、センサーなどの誤検知により、重複して検出してしまったことが考えられるからである。積層回数を利用したこのような処理により、ノイズの少ないイベントの通知処理が実現できる。
【0091】
図7は、管理システム106で、消耗品の種類ごとの平均寿命を算出する処理を説明するためのフローチャートである。本処理は、管理システム106を構成するサーバーコンピューターのCPU251が、プログラムを実行することで実現される処理である。
【0092】
S701で、消耗品寿命管理部363は、記憶装置254や不図示のネットワーク上のストレージサービスから、監視装置を介して受信した消耗品の交換に関するイベント情報を含むメッセージに基づく、消耗品の交換履歴情報を取得する。同じ送信元からの消耗品の交換に関するイベント情報を含むメッセージを複数回の受信した際に、それらの内容を分析して、シリアル番号の違いから、消耗品の交換が行われたと判断される。デバイス情報管理部359は、その判断に応じて、消耗品交換時のトータルカウンタの値として、交換を判断したメッセージに含まれる積層回数を記録している。
【0093】
S702で、消耗品寿命管理部363は、消耗品の交換履歴情報を用いて、消耗品の種類ごとに、平均寿命を算出する。消耗品の種類は消耗品IDで識別できる。平均寿命算出処理は、下記式により実施される。
“平均寿命”=Σ((今回消耗品交換時のトータルカウンタ-前回消耗品交換時のトータルカウンタ))÷交換回数
S703で、デバイス情報管理部359は、消耗品寿命管理部363により算出された平均寿命の通知処理を実行する。通知処理では、消耗品IDで識別される消耗品の種類ごとの平均寿命が、WWWサーバプログラムを介して、ネットワーク上に提供される。保守担当者や造形装置の製造メーカの担当者は、ウェブブラウザーを利用して、実運用における消耗品の平均寿命を把握することができる。
【0094】
図7の処理結果に基づく分析によれば、これにより、将来的な消耗品の計画的な製造や配送手配などが実現できる。
【0095】
図8は、監視装置による造形装置102での1度の造形処理が完了した際に、該造形処理の処理内容に関する情報を送信する処理を説明するためのフローチャートである。本処理は、監視装置が動作する造形装置102または情報処理装置内のCPUが、監視装置を実現するためのプログラムを実行することで行われる処理である。ここで、1度の造形処理で、複数の積層造形物が造形される場合もある。
【0096】
S801で、デバイス情報管理部305は、造形管理部303から通知に応じて、造形処理の開始を検知する。デバイス情報管理部305は、造形処理が開始された時刻(年月日時)や、開始時点のトータルカウンタ値を示す積層回数を記録する。
【0097】
S802で、デバイス情報管理部305は、造形管理部303からの通知に応じて、造形処理の完了を検知する。デバイス情報管理部305は、造形処理が完了された時刻(年月日時)や、完了時点のトータルカウンタ値を示す積層回数を記録する。
【0098】
S803で、デバイス情報管理部305は、記憶装置204に記録された造形処理の間に消耗材補給部212が供給した消耗材(造形材、サポート材)の供給量を取得する。生成部307は、取得された消耗材の供給量を示す情報を含むメッセージを生成する。また、生成されるメッセージには、さらに、造形処理の対象となった造形データのファイル名、造形データのオーナー名、造形処理が開始された時刻(年月日時)と、その開始時点のトータルカウンタ値を示す積層回数、造形処理が完了された時刻(年月日時)と、その完了時点のトータルカウンタ値を示す積層回数、などが含まれる。
【0099】
S804で、通信制御部308は、生成されたメッセージを、ネットワークを介して管理システム106へ送信するよう制御する。管理システム106では、造形処理ごとの消耗材の使用量のレポーティングや、課金などに、このメッセージを利用する。
【0100】
(応用例)
造形装置102の保守担当者による定期メンテナンスについては、従来は1か月ごとといったように、メンテナンス時期を時間で決定していた。
【0101】
本発明によれば、造形装置102の利用開始からの稼働状況を全般的に把握できるトータルカウンタとしての積層回数が定期的に管理システム106送信されてくるようになった。よって、定期メンテナンスの時期について、前回メンテナンスから、積層回数が想定よりも多い場合には、通常よりも早めにメンテナンスに向かうといった、柔軟な対応が可能となる。
【0102】
管理システム106では、保守担当者がメンテナンスを実施した年月日時を登録できる。よって、管理システム106のデバイス情報管理部305は、その実施日に定期送信されたトータルカウンタとしての積層回数の値から、それ以降に定期送信されてくる積層回数の値を元にその変化を、毎日自動で計算する。計算された変化量が所定値を超えると判定した場合には、通知管理部357が、保守担当者のアドレス宛に、メンテナンスの実施を促す内容の電子メールを自動送信する。
【0103】
(他の実施例)
本発明は、上述した実施形態を適宜組み合わせることにより構成された装置あるいはシステムやその方法も含まれるものとする。
【0104】
ここで、本発明は、上述した実施形態の機能を実現する1以上のソフトウェア(プログラム)を実行する主体となる装置あるいはシステムである。また、その装置あるいはシステムで実行される上述した実施形態を実現するための方法も本発明の一つである。また、そのプログラムは、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給され、そのシステム或いは装置の1以上のコンピュータ(CPUやMPU等)によりそのプログラムが読み出され、実行される。つまり、本発明の一つとして、さらにそのプログラム自体、あるいは該プログラムを格納したコンピュータにより読み取り可能な各種記憶媒体も含むものとする。また、上述した実施形態の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても、本発明は実現可能である。
【符号の説明】
【0105】
102 造形装置
106 管理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8