(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法及びX線CT装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20221219BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61B6/03 360D
A61B6/03 360G
A61B5/00 G
A61B6/03 360E
(21)【出願番号】P 2017116162
(22)【出願日】2017-06-13
【審査請求日】2020-04-13
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】イエマン・ホイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・マナーク
(72)【発明者】
【氏名】荒木田 和正
(72)【発明者】
【氏名】ジンウ・ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス・ベゼルマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター・ゴリン
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/031742(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/120225(WO,A1)
【文献】特開2002-222433(JP,A)
【文献】特開2014-128650(JP,A)
【文献】特表2016-513530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の血管を含む画像データを取得する取得部と、
前記画像データを用いた第1の精度の流体解析を行うことによって求められた血流パラメータの第1の空間分布に基づいて、前記血管における関心領域を特定する特定部と、
前記血管における前記関心領域
以外の領域のうち
の前記関心領域より上流側に位置する領域については、前記第1の精度の流体解析により得られた解析結果を用い、
前記血管における前記関心領域以外の領域のうちの前記関心領域より下流側に位置する領域
及び前記関心領域については、
前記第1の精度で生成された前記関心領域以外の領域の解析モデルと前記第1の精度より高い第2の精度
で生成された前記関心領域の解析モデルとを合成した合成モデルを用いて流体解析を行うことによって、前記血流パラメータの空間分布を求めることで、前記血流パラメータの前記第1の空間分布を第2の空間分布に更新する解析部と
を備える、医用画像処理装置。
【請求項2】
前記解析部は、前記血管における前記関心領域
以外の領域のうちの前記関心領域より下流側に位置する領域について、第1の空間解像度で前記第1の精度の流体解析を行い、前記血管における前記関心領域について、前記第1の空間解像度よ
り高い第2の空間解像度で前記第2の精度の流体解析を行う、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記解析部は、流体解析の計算コストを増やすことで、前記第1の精度より高い第2の精度の流体解析を行う、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記解析部は、有限要素法を用いたシミュレーションによって前記第1の精度の流体解析及び前記第2の精度の流体解析を行い、解析モデルにおけるメッシュの密度を高めることで、前記計算コストを増やす、
請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記解析部は、前記メッシュの密度を高めた解析モデルを生成した後に、当該解析モデルを前記画像データと比較することで、前記メッシュを修正する、
請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記解析部は、流体解析で行われる逐次演算の収束回数を増やすことで、前記計算コストを増やす、
請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記解析部は、前記第1の精度で生成された血管全体の解析モデルにおける前記関心領域
以外の部分と、前記第2の精度で生成された前記関心領域の解析モデルとを連結し
て前記合成モデルを生成し、当該合成モデルを用いて、前記関心領域より下流側に位置する領域及び前記関心領域について流体解析を行う、
請求項1~6のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記解析部は、前記第1の精度で生成された前記関心領域
以外の領域の解析モデルと、前記第2の精度で生成された前記関心領域の解析モデルとを連結し
て前記合成モデルを生成し、当該合成モデルを用いて、前記関心領域より下流側に位置する領域及び前記関心領域について流体解析を行う、
請求項1~6のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記解析部は、前記合成モデルを生成する際に、前記第1の精度の解析モデルと前記第2の精度の解析モデルとの連結部分に空間補間を施すことで、当該解析モデルを滑らかに連結させる、
請求項7又は8に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記解析部は、前記合成モデルを用いて流体解析を行う際に、前記関心領域より上流側に位置する領域について、前記第1の精度の流体解析によって得られた前記解析結果を用いることで、流体解析の計算を省略する、
請求項9に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記特定部は、前記画像データを用いた流体解析を行い、当該流体解析の解析結果として得られた血流パラメータの値が正常な範囲を外れている領域を前記関心領域として特定する、
請求項1~10のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記特定部は、前記画像データを用いた流体解析及び画像解析をそれぞれ行い、前記画像解析の解析結果に基づいて、前記流体解析によって得られた解析結果の信頼度を表示する、
請求項1~11のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
前記特定部は、前記血管に所定の閾値より太い血管の分枝が含まれており、かつ、当該分枝の領域における前記信頼度が所定の閾値より低い場合に、警告を報知する、
請求項12に記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
前記解析部は、前記画像データに対して画像補正を行った後に、補正後の画像データを用いて前記第2の精度の流体解析を行う、
請求項1~13のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。
【請求項15】
前記解析部は、前記画像補正として、複数の種類の画像補正の中から選択された画像補正を行う、
請求項14に記載の医用画像処理装置。
【請求項16】
被検体の血管を含む画像データを取得し、
前記画像データを用いた第1の精度の流体解析を行うことによって求められた血流パラメータの第1の空間分布に基づいて、前記血管における関心領域を特定し、
前記血管における前記関心領域
以外の領域のうち
の前記関心領域より上流側に位置する領域については、前記第1の精度の流体解析により得られた解析結果を用い、
前記血管における前記関心領域以外の領域のうちの前記関心領域より下流側に位置する領域
及び前記関心領域については、
前記第1の精度で生成された前記関心領域以外の領域の解析モデルと前記第1の精度より高い第2の精度
で生成された前記関心領域の解析モデルとを合成した合成モデルを用いて流体解析を行うことによって、前記血流パラメータの空間分布を求めることで、前記血流パラメータの前記第1の空間分布を第2の空間分布に更新する
ことを含む、医用画像処理方法。
【請求項17】
被検体の血管を含む画像データを再構成する再構成部と、
前記画像データを用いた第1の精度の流体解析を行うことによって求められた血流パラメータの第1の空間分布に基づいて、前記血管における関心領域を特定する特定部と、
前記血管における前記関心領域
以外の領域のうち
の前記関心領域より上流側に位置する領域については、前記第1の精度の流体解析により得られた解析結果を用い、
前記血管における前記関心領域以外の領域のうちの前記関心領域より下流側に位置する領域
及び前記関心領域については、
前記第1の精度で生成された前記関心領域以外の領域の解析モデルと前記第1の精度より高い第2の精度
で生成された前記関心領域の解析モデルとを合成した合成モデルを用いて流体解析を行うことによって、前記血流パラメータの空間分布を求めることで、前記血流パラメータの前記第1の空間分布を第2の空間分布に更新する解析部と
を備える、X線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理方法及びX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT(Computed Tomography)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の医用画像診断装置によって収集された画像データを用いて、シミュレーションによって血流の流体解析を行う技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2014/0249784号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0112191号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、血流の流体解析をより高い精度で行うことができる医用画像処理装置、医用画像処理方法及びX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、特定部と、解析部とを備える。取得部は、被検体の血管を含む画像データを取得する。特定部は、前記画像データを用いて前記血管に関する解析を行い、当該解析によって求められた前記血管に関する解析結果の空間分布に基づいて、前記血管における関心領域を特定する。解析部は、前記関心領域以外の領域について、第1の精度の流体解析を行い、前記関心領域について、前記第1の精度より高い第2の精度の流体解析を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置によって行われる流体解析の処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る特定機能によって生成される解析モデルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る特定機能によって表示される解析結果及び関心領域の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る解析機能によって生成される合成モデルの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る特定機能によって表示される解析結果及び関心領域の他の例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る解析機能によって表示される最終結果の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態の第1の変形例に係る医用画像処理装置によって行われる流体解析の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第1の実施形態の第4の変形例に係る解析機能によって行われる解析モデルの空間補間の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態の第5の変形例に係る解析機能によって行われる流体解析の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態の第7の変形例に係る特定機能によって行われる血管の分枝に関する警告表示の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置、医用画像処理方法及びX線CT装置の実施形態について詳細に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の構成例を示す図である。例えば、
図1に示すように、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、ネットワーク200を介して、X線CT(Computed Tomography)装置300及び医用画像保管装置400と相互に通信可能に接続される。なお、医用画像処理装置100は、ネットワーク200を介して、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置やX線診断装置、超音波診断装置、PET(Positron Emission Tomography)装置等の他の医用画像診断装置にさらに接続されてもよい。
【0009】
X線CT装置300は、被検体に関するCT画像データを収集する。具体的には、X線CT装置300は、被検体を略中心にX線管及びX線検出器を旋回移動させ、被検体を透過したX線を検出して投影データを収集する。そして、X線CT装置300は、収集された投影データに基づいて、2次元又は3次元CT画像データを生成する。
【0010】
医用画像保管装置400は、ネットワーク200を介して、X線CT装置300からCT画像データや投影データを取得し、取得したCT画像データや投影データを装置内又は装置外に設けられた記憶回路に記憶させる。例えば、医用画像保管装置400は、サーバ装置等のコンピュータ機器によって実現される。
【0011】
医用画像処理装置100は、ネットワーク200を介してX線CT装置300又は医用画像保管装置400からCT画像データを取得し、取得したCT画像データに対して各種画像処理を行う。医用画像処理装置100は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
【0012】
例えば、医用画像処理装置100は、I/F(インターフェース)回路110と、記憶回路120と、入力回路130と、ディスプレイ140と、処理回路150とを有する。
【0013】
I/F回路110は、処理回路150に接続され、X線CT装置300及び医用画像保管装置400との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。本実施形態では、I/F回路110は、X線CT装置300又は医用画像保管装置400からCT画像データを受信し、受信したCT画像データを処理回路150に出力する。例えば、I/F回路110は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0014】
記憶回路120は、処理回路150に接続され、各種データを記憶する。本実施形態では、記憶回路120は、X線CT装置300又は医用画像保管装置400から受信したCT画像データを記憶する。例えば、記憶回路120は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0015】
入力回路130は、処理回路150に接続され、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路150に出力する。例えば、入力回路130は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。
【0016】
ディスプレイ140は、処理回路150に接続され、処理回路150から出力される各種情報及び各種画像データを表示する。例えば、ディスプレイ140は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0017】
処理回路150は、入力回路130を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用画像処理装置100が有する各構成要素を制御する。具体的には、処理回路150は、I/F回路110から出力されるCT画像データを記憶回路120に記憶させる。また、処理回路150は、記憶回路120からCT画像データを読み出し、ディスプレイ140に表示する。例えば、処理回路150は、プロセッサによって実現される。
【0018】
以上、本実施形態に係る医用画像処理装置100の全体構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、被検体の血管を含む3次元のCT画像データを用いて、シミュレーションによって血流の流体解析を行う機能を有する。例えば、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、冠動脈の狭窄を診断又は治療する際に用いられる。
【0019】
ここで、一般的に、冠動脈の狭窄は多面的な問題を有しているため、冠動脈の狭窄の評価が行われる際には、多数の情報が必要とされる。これに対し、流体解析によって血流の動態をシミュレーションすることで、狭窄の重症度を同定することができる。しかし、一般的に、流体解析で行われるシミュレーションは、血管の幾何学的形状や血流のパターンが複雑な場合に、解析結果の精度が低くなることがあり得る。
【0020】
このようなことから、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、血流の流体解析をより高い精度で行うことができるように構成されている。なお、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、診断又は治療の対象が冠動脈である場合だけでなく、例えば、脳や肝臓等の他の臓器の血管が対象となる場合でも、同様に用いることが可能である。
【0021】
具体的には、本実施形態に係る医用画像処理装置100では、処理回路150が、取得機能151と、特定機能152と、解析機能153とを有する。なお、取得機能151は、特許請求の範囲における取得部の一例である。また、特定機能152は、特許請求の範囲における特定部の一例である。また、解析機能153は、特許請求の範囲における解析部の一例である。
【0022】
取得機能151は、被検体の血管を含む3次元のCT画像データを取得する。具体的には、取得機能151は、X線CT装置300又は医用画像保管装置400からCT画像データを取得し、取得したCT画像データを記憶回路120に記憶させる。
【0023】
特定機能152は、CT画像データを用いて血管に関する解析を行い、当該解析によって求められた血管に関する解析結果の空間分布に基づいて、被検体の血管における関心領域を特定する。具体的には、特定機能152は、取得機能151によって取得されたCT画像データを記憶回路120から読み出し、読み出したCT画像データを用いて解析を行う。そして、特定機能152は、解析の解析結果に基づいて、CT画像に含まれる血管における関心領域を特定する。
【0024】
解析機能153は、関心領域以外の領域について、第1の精度の流体解析を行い、関心領域について、第1の精度より高い第2の精度の流体解析を行う。具体的には、解析機能153は、取得機能151によって取得されたCT画像データを用いて、特定機能152によって特定された関心領域に基づいて、関心領域以外の領域については第1の精度の流体解析を行い、関心領域については第1の精度より高い第2の精度の流体解析を行う。
【0025】
このように、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、血管に関する解析の解析結果に基づいて、血管における関心領域を特定し、特定した関心領域について、関心領域以外の領域と比べて精度が高い流体解析を行う。これにより、本実施形態によれば、血流の流体解析をより高い精度で行うことができる。
【0026】
ここで、上述した各処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路120に記憶される。処理回路150は、各プログラムを記憶回路120から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、
図1に示した各処理機能を有することとなる。
【0027】
なお、
図1では、上述した各処理機能が単一の処理回路150によって実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路150は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路150が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0028】
以下、本実施形態に係る医用画像処理装置100によって行われる処理について、より詳細に説明する。なお、本実施形態では、特定機能152が、血管に関する解析として、流体解析を行う場合の例を説明する。
【0029】
図2は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置100によって行われる流体解析の処理手順を示すフローチャートである。
【0030】
例えば、
図2に示すように、本実施形態では、まず、取得機能151が、X線CT装置300又は医用画像保管装置400から、被検体の血管を含む3次元のCT画像データを取得する(ステップS101)。具体的には、取得機能151は、入力回路130を介して操作者から流体解析の開始を指示する操作を受け付けた場合に、操作者によって指定された被検体について、当該被検体の血管を含むCT画像データを取得する。
【0031】
続いて、特定機能152が、取得機能151によって取得されたCT画像データを用いて、流体解析を実行する。具体的には、特定機能152は、CT画像データに含まれる血管全体について、予め決められた所定の精度の流体解析を行う。ここで、特定機能152は、有限要素法を用いたシミュレーションによって流体解析を行う。
【0032】
まず、特定機能152は、CT画像データに基づいて、予め決められた所定の精度で、当該CT画像データに含まれる血管全体の解析モデルを生成する(ステップS102)。
【0033】
図3は、第1の実施形態に係る特定機能152によって生成される解析モデルの一例を示す図である。例えば、
図3に示すように、特定機能152は、CT画像データに含まれる血管の形状を複数の三角形のメッシュに分割することで、血管の解析モデル31を生成する。ここで、特定機能152は、上述した所定の精度で流体解析が行われるように、解析モデルにおけるメッシュの密度を設定する。
【0034】
その後、特定機能152は、生成した解析モデルを用いて流体解析を実行する(ステップS103)。具体的には、特定機能152は、流体解析の解析結果として、血流パラメータの値を算出する。ここで、血流パラメータは、例えば、FFR(Fractional Flow Reserve)である。なお、血流パラメータとしては、FFRの他にも各種のパラメータを用いることができる。例えば、血流パラメータは、血流の速度(blood flow velocity)、流速勾配(velocity gradient)、圧力(pressure)、圧力勾配(pressure gradient)、圧力比(pressure ratio)、渦度(vorticity)、運動エネルギー(kinetic energy)、乱流強度(turbulence intensity)、せん断応力(shear stress)、せん断応力勾配(shear stress gradient)等である。
【0035】
続いて、特定機能152は、流体解析の解析結果に基づいて、被検体の血管における関心領域を特定する(ステップS104)。具体的には、特定機能152は、流体解析によって解析結果として得られた血流パラメータの値が正常な範囲を外れている領域を関心領域として特定する。なお、ここでいう正常な範囲は、上述した各種の血流パラメータごとに予め決められており、解析に用いられる血流パラメータの種類に応じて、対応する範囲が適宜に用いられる。
【0036】
その後、特定機能152は、流体解析の解析結果及び関心領域をディスプレイ140に表示する(ステップS105)。そして、特定機能152は、入力回路130を介して、関心領域を変更する操作と、関心領域の解析を実行するか否かを指示する操作とを操作者から受け付ける。
【0037】
図4は、第1の実施形態に係る特定機能152によって表示される解析結果及び関心領域の一例を示す図である。例えば、
図4に示すように、特定機能152は、解析モデルの形状を表すグラフィック41をディスプレイ140に表示する。そして、特定機能152は、解析モデルを表すグラフィック41上に、流体解析によって得られた血流パラメータの値の分布を示す情報を表示する。例えば、特定機能152は、血流パラメータの各値に異なる色を割り当て、関心領域内における血流パラメータの値の空間的な分布に応じて、解析モデルを表すグラフィック41に色を付ける。また、特定機能152は、解析モデルを表すグラフィック41上に、特定した関心領域の範囲を示すグラフィック42を表示する。ここで、特定機能152は、関心領域を変更する操作を受け付けた場合には、受け付けた操作に応じて関心領域の範囲を変更し、解析モデルを表すグラフィック41上に、変更後の関心領域を表すグラフィック42を表示する。
【0038】
そして、特定機能152によって、関心領域の解析を実行することを指示する操作が受け付けられた場合には(ステップS106,Yes)、解析機能153が、その時点で設定されている関心領域に基づいて、流体解析を実行する。ここで、解析機能153は、特定機能152と同様に、有限要素法を用いたシミュレーションによって流体解析を行う。
【0039】
ここで、1回目の流体解析では、解析機能153は、関心領域以外の領域について、特定機能152によって行われた流体解析と同じ所定の精度の流体解析を行い、関心領域について、当該所定の精度より高い精度の流体解析を行う。
【0040】
このとき、解析機能153は、流体解析で用いられる解析モデルの基になる画像データの空間解像度を高めることで、当該所定の精度より高い精度の流体解析を行う。また、解析機能153は、流体解析の計算コストを増やすことで、当該所定の精度より高い精度の流体解析を行う。例えば、解析機能153は、有限要素法の解析モデルにおけるメッシュの密度を高めることで、流体解析の計算コストを増やす。
【0041】
具体的には、解析機能153は、X線CT装置300に対して、その時点で関心領域が設定されている範囲を拡大した3次元のCT画像データを再構成するように要求することによって、関心領域を拡大再構成したCT画像データをX線CT装置300から取得する(ステップS107)。これにより、関心領域について空間解像度が高められたCT画像データが得られる。
【0042】
続いて、解析機能153は、関心領域を拡大再構成したCT画像データに基づいて、特定機能152によって行われた流体解析で用いられた解析モデルよりメッシュの密度を高めた関心領域の解析モデルを生成する(ステップS108)。
【0043】
なお、ここで、解析機能153は、関心領域を拡大再構成したCT画像データを用いるのではなく、特定機能152によって行われた流体解析で用いられた解析モデルのメッシュをより細かく設定することで、メッシュの密度を高めた関心領域の解析モデルを生成してもよい。この場合には、関心領域を拡大再構成したCT画像データの取得は不要になる。さらに、この場合には、解析機能153は、メッシュの密度を高めた解析モデルを生成した後に、生成した解析モデルをCT画像データと比較することで、メッシュを修正してもよい。
【0044】
その後、解析機能153は、前述した所定の精度で生成された血管全体の解析モデルにおける関心領域以外の部分と、当該所定の精度より高い精度で生成された関心領域の解析モデルとを連結した合成モデルを生成する(ステップS109)。
【0045】
図5は、第1の実施形態に係る解析機能153によって生成される合成モデルの一例を示す図である。例えば、
図5に示すように、解析機能153は、血管全体の解析モデル31における関心領域以外の部分31a、31b及び31cと、関心領域の解析モデル51とを連結した合成モデルを生成する。このような合成モデルを用いることによって、関心領域については、関心領域以外の部分と比べて、より精度が高い流体解析が行われることになる。
【0046】
そして、解析機能153は、生成した合成モデルを用いて、血管全体の流体解析を実行する(ステップS110)。
【0047】
その後、特定機能152が、新たに行われた流体解析によって得られた解析結果に基づいて、再度、関心領域を特定し(ステップS104)、流体解析の解析結果及び関心領域をディスプレイ140に表示する(ステップS105)。
【0048】
図6は、第1の実施形態に係る特定機能152によって表示される解析結果及び関心領域の他の例を示す図である。例えば、
図6に示すように、特定機能152は、
図4に示した例と同様に、解析モデルの形状を表すグラフィック41と、流体解析によって得られた血流パラメータの値の分布を示す情報と、関心領域を表すグラフィック42とを表示する。ここで表示される解析モデルの形状を表すグラフィック41は、新たに行われた流体解析で用いられた合成モデルに基づいて表示される。また、血流パラメータの値の分布を示す情報は、新たに行われた流体解析によって得られた解析結果に基づいて表示される。また、関心領域を表すグラフィック42は、最後に設定された関心領域に基づいて表示される。
【0049】
操作者は、ディスプレイ140に表示された流体解析の解析結果を参照することで、流体解析を再度実行するか否かを判断することができる。そして、特定機能152によって、再度、関心領域の解析を実行することを指示する操作が受け付けられた場合には(ステップS106,Yes)、解析機能153が、その時点で設定されている関心領域に基づいて、再度、流体解析を実行する。
【0050】
ここで、2回目以降の流体解析では、解析機能153は、関心領域以外の領域について、前回行った流体解析と同じ精度の流体解析を行い、関心領域について、前回行った流体解析の精度より高い精度の流体解析を行う。
【0051】
このとき、解析機能153は、流体解析で用いられる解析モデルの基になる画像データの空間解像度を高めることで、前回行った流体解析の精度より高い精度の流体解析を行う。また、解析機能153は、流体解析の計算コストを増やすことで、前回行った流体解析の精度より高い精度の流体解析を行う。例えば、解析機能153は、有限要素法の解析モデルにおけるメッシュの密度を高めることで、流体解析の計算コストを増やす。
【0052】
具体的には、解析機能153は、1回目の流体解析を行った際と同様に、関心領域を拡大再構成したCT画像データをX線CT装置300から取得する(ステップS107)。そして、解析機能153は、取得したCT画像データを用いて、前回行った流体解析で用いられた解析モデルよりメッシュの密度を高めた関心領域の解析モデルを生成する(ステップS108)。
【0053】
その後、解析機能153は、前回行った流体解析用に生成された血管全体の解析モデルにおける関心領域以外の部分と、新たな流体解析用に生成された関心領域の解析モデルとを連結した合成モデルを生成する(ステップS109)。そして、解析機能153は、生成した合成モデルを用いて、血管全体の流体解析を実行する(ステップS110)。
【0054】
こうして、解析機能153は、特定機能152によって、関心領域の解析を実行することを指示する操作が受け付けられている間は(ステップS106,Yes)、流体解析の実行を繰り返す。そして、特定機能152によって関心領域の解析を実行しないことを指示する操作が受け付けられた場合には(ステップS106,No)、解析機能153は、最後に行った流体解析の結果を最終結果としてディスプレイ140に表示する(ステップS111)。
【0055】
図7は、第1の実施形態に係る解析機能153によって表示される最終結果の一例を示す図である。例えば、
図7に示すように、解析機能153は、最終結果として、
図4及び6に示した例と同様に、解析モデルの形状を表すグラフィック41と、流体解析によって得られた血流パラメータの値の分布を示す情報と、関心領域を表すグラフィック42とを表示する。ここで表示される解析モデルの形状を表すグラフィック41は、最後に行われた流体解析で用いられた合成モデルに基づいて表示される。また、血流パラメータの値の分布を示す情報は、最後に行われた流体解析の結果に基づいて表示される。また、関心領域を表すグラフィック42は、最後に設定された関心領域に基づいて表示される。
【0056】
さらに、例えば、解析機能153は、最終結果として、血管の解析モデルに関する幾何学形状パラメータの値を示す情報を表示する。ここで、幾何学形状パラメータ(Vascular geometric parameters)は、例えば、血管芯線(centerline)、血管断面積(coronary vessel lumen area)、血管径(coronary vessel diameter (size))、血管最小内腔断面積(minimal luminal area)、血管最小内腔径(minimal luminal diameter (size))、血管断面積に対する血管最小内腔断面積の比率(ratio of minimal luminal area to coronary vessel area)、血管径に対する血管最小内腔径の比率(ratio of minimal luminal diameter to coronary vessel size)、血管長に沿った血管断面積の変化(change of coronary vessel area along the vessel length)、予め決められた基準断面積に対する血管断面積の割合(percentage of coronary vessel area to a pre-defined referenced area)等である。
【0057】
例えば、特定機能152は、血流パラメータと同様に、幾何学形状パラメータの各値に異なる色を割り当て、関心領域内における幾何学形状パラメータの値の空間的な分布に応じて、解析モデルを表すグラフィック41に色を付ける。
【0058】
ここで、例えば、特定機能152は、入力回路130を介して、血流パラメータに関する情報及び幾何学形状パラメータに関する情報それぞれについて、表示又は非表示を選択する操作を操作者から受け付ける。そして、特定機能152は、受け付けた操作に応じて、操作者によって選択された情報を、解析モデルを表すグラフィック41上に表示する。例えば、
図7に示すように、特定機能152は、血流パラメータ及び幾何学形状パラメータそれぞれについて、表示又は非表示を選択するためのチェックボックスをディスプレイ140に表示することで、操作者から各情報の表示又は非表示を選択する操作を受け付ける。
【0059】
なお、上述した各ステップは、例えば、処理回路150が、各機能に対応する所定のプログラムを記憶回路120から呼び出して実行することにより実現される。具体的には、ステップS101は、例えば、処理回路150が取得機能151に対応する所定のプログラムを記憶回路120から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS102~S106は、例えば、処理回路150が特定機能152に対応する所定のプログラムを記憶回路120から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS107~S111は、例えば、処理回路150が解析機能153に対応する所定のプログラムを記憶回路120から呼び出して実行することにより実現される。
【0060】
上述したように、第1の実施形態では、医用画像処理装置100は、流体解析の解析結果に基づいて、血管における関心領域を特定し、特定した関心領域について、関心領域以外の領域と比べて精度が高い流体解析を行う。したがって、本実施形態によれば、血流の流体解析をより高い精度で行うことができる。
【0061】
なお、上述した第1の実施形態は適宜に変形して実施することも可能である。以下では、第1の実施形態に係る複数の変形例について説明する。なお、各変形例に係る医用画像処理装置の構成は、基本的には、
図1に示した構成と同様であるため、以下では、第1の実施形態で説明した内容と異なる点を中心に説明する。
【0062】
(第1の実施形態の第1の変形例)
例えば、上述した第1の実施形態では、特定機能152が、血管に関する解析として、流体解析を行い、当該流体解析の解析結果に基づいて、被検体の血管における関心領域を特定する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、特定機能152は、血管に関する解析として、画像解析を行い、当該画像解析の解析結果に基づいて、関心領域を特定してもよい。
【0063】
図8は、第1の実施形態の第1の変形例に係る医用画像処理装置100によって行われる流体解析の処理手順を示すフローチャートである。
【0064】
例えば、
図8に示すように、本変形例では、まず、取得機能151が、第1の実施形態と同様に、X線CT装置300又は医用画像保管装置400から、被検体の血管を含む3次元のCT画像データを取得する(ステップS201)。
【0065】
続いて、特定機能152が、取得機能151によって取得されたCT画像データを用いて、画像解析を実行する(ステップS202)。ここで、特定機能152は、CT画像データに含まれる画素値に基づいて画像解析を行うことによって、血管に生じている異常領域を特定する。例えば、特定機能152は、カルシウム等の病変組織が所定量を超えて発生している領域や、アーティファクトが発生している領域、血管の径が所定の閾値より小さい領域等を異常領域として特定する。
【0066】
続いて、特定機能152は、画像解析の解析結果に基づいて、被検体の血管における関心領域を特定する(ステップS203)。例えば、特定機能152は、画像解析によって得られた異常領域を関心領域として特定する。
【0067】
その後、特定機能152は、画像解析の解析結果及び関心領域をディスプレイ140に表示する(ステップS204)。ここで、特定機能152は、第1の実施形態と同様に、入力回路130を介して、関心領域を変更する操作と、関心領域の解析を実行するか否かを指示する操作とを操作者から受け付ける。
【0068】
例えば、特定機能152は、
図4に示した例と同様に、解析モデルの形状を表すグラフィック41をディスプレイ140に表示する。そして、特定機能152は、解析モデルを表すグラフィック41上に、画像解析によって病変と判定された領域を示す情報や、アーティファクトが発生していると判定された領域を示す情報を表示する。例えば、特定機能152は、解析モデルを表すグラフィック41上で、画像解析によって病変と判定された領域や、アーティファクトが発生していると判定された領域に色を付ける。また、特定機能152は、解析モデルを表すグラフィック41上に、特定した関心領域の範囲を示すグラフィック42を表示する。ここで、特定機能152は、関心領域を変更する操作を受け付けた場合には、受け付けた操作に応じて関心領域の範囲を変更し、解析モデルを表すグラフィック41上に、変更後の関心領域を表すグラフィック42を表示する。
【0069】
そして、特定機能152によって、関心領域の解析を実行することを指示する操作が受け付けられた場合には(ステップS205,Yes)、解析機能153が、その時点で設定されている関心領域に基づいて、流体解析を実行する。ここで、解析機能153は、第1の実施形態と同様に、有限要素法を用いたシミュレーションによって流体解析を行う。
【0070】
ここで、1回目の流体解析では、解析機能153は、関心領域以外の領域について、予め決められた所定の精度の流体解析を行い、関心領域について、当該所定の精度より高い精度の流体解析を行う。
【0071】
このとき、解析機能153は、流体解析で用いられる解析モデルの基になる画像データの空間解像度を高めることで、当該所定の精度より高い精度の流体解析を行う。また、解析機能153は、流体解析の計算コストを増やすことで、当該所定の精度より高い精度の流体解析を行う。例えば、解析機能153は、有限要素法の解析モデルにおけるメッシュの密度を高めることで、流体解析の計算コストを増やす。
【0072】
具体的には、解析機能153は、第1の実施形態と同様に、X線CT装置300に対して、その時点で関心領域が設定されている範囲を拡大した3次元のCT画像データを再構成するように要求することによって、関心領域を拡大再構成したCT画像データをX線CT装置300から取得する(ステップS206)。
【0073】
続いて、解析機能153は、特定機能152によって行われた画像解析で用いられたCT画像データに基づいて、前述した所定の精度で、当該CT画像データに含まれる血管における関心領域以外の領域の解析モデルを生成する(ステップS207)。さらに、解析機能153は、関心領域を拡大再構成したCT画像データに基づいて、前述した所定の精度で生成された解析モデルよりメッシュの密度を高めた関心領域の解析モデルを生成する(ステップS208)。
【0074】
その後、解析機能153は、前述した所定の精度で生成された関心領域以外の領域の解析モデルと、当該所定の精度より高い精度で生成された関心領域の解析モデルとを連結した合成モデルを生成する(ステップS209)。このような合成モデルを用いることによって、第1の実施形態と同様に、関心領域については、関心領域以外の部分と比べて、より精度が高い流体解析が行われることになる。
【0075】
そして、解析機能153は、生成した合成モデルを用いて、血管全体の流体解析を実行する(ステップS210)。
【0076】
その後、特定機能152が、新たに行われた流体解析によって得られた解析結果に基づいて、再度、関心領域を特定し(ステップS203)、流体解析の解析結果及び関心領域をディスプレイ140に表示する(ステップS204)。
【0077】
操作者は、第1の実施形態と同様に、ディスプレイ140に表示された流体解析の解析結果を参照することで、流体解析を再度実行するか否かを判断することができる。そして、特定機能152によって、再度、関心領域の解析を実行することを指示する操作が受け付けられた場合には(ステップS205,Yes)、解析機能153が、その時点で設定されている関心領域に基づいて、再度、流体解析を実行する。
【0078】
ここで、2回目以降の流体解析では、解析機能153は、関心領域以外の領域については、前回行った流体解析と同じ精度の流体解析を行い、関心領域については、前回行った流体解析の精度より高い精度の流体解析を行う。
【0079】
このとき、解析機能153は、流体解析で用いられる解析モデルの基になる画像データの空間解像度を高めることで、前回行った流体解析の精度より高い精度の流体解析を行う。また、解析機能153は、流体解析の計算コストを増やすことで、前回行った流体解析の精度より高い精度の流体解析を行う。例えば、解析機能153は、有限要素法の解析モデルにおけるメッシュの密度を高めることで、流体解析の計算コストを増やす。
【0080】
具体的には、解析機能153は、1回目の流体解析を行った際と同様に、関心領域を拡大再構成したCT画像データをX線CT装置300から取得する(ステップS206)。そして、解析機能153は、特定機能152によって行われた画像解析で用いられたCT画像データを用いて、血管における関心領域以外の領域について、前述した所定の精度で流体解析の解析モデルを生成する(ステップS207)。また、解析機能153は、取得したCT画像データを用いて、前回行った流体解析で用いられた解析モデルよりメッシュの密度を高めた関心領域の解析モデルを生成する(ステップS208)。
【0081】
その後、解析機能153は、前述した所定の精度で生成された関心領域以外の領域の解析モデルと、当該所定の精度より高い精度で生成された関心領域の解析モデルとを連結した合成モデルを生成する(ステップS209)。そして、解析機能153は、生成した合成モデルを用いて、血管全体の流体解析を実行する(ステップS210)。
【0082】
こうして、解析機能153は、特定機能152によって、関心領域の解析を実行することを指示する操作が受け付けられている間は(ステップS205,Yes)、流体解析の実行を繰り返す。そして、特定機能152によって関心領域の解析を実行しないことを指示する操作が受け付けられた場合には(ステップS205,No)、解析機能153は、最後に行った流体解析の結果を最終結果としてディスプレイ140に表示する(ステップS211)。例えば、解析機能153は、
図7に示した例と同様に、最終結果を表示する。
【0083】
なお、上述した各ステップは、例えば、処理回路150が、各機能に対応する所定のプログラムを記憶回路120から呼び出して実行することにより実現される。具体的には、ステップS201は、例えば、処理回路150が取得機能151に対応する所定のプログラムを記憶回路120から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS202~S205は、例えば、処理回路150が特定機能152に対応する所定のプログラムを記憶回路120から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS206~S211は、例えば、処理回路150が解析機能153に対応する所定のプログラムを記憶回路120から呼び出して実行することにより実現される。
【0084】
上述したように、第1の実施形態の第1の変形例では、医用画像処理装置100は、画像解析の解析結果に基づいて、血管における関心領域を特定し、特定した関心領域について、関心領域以外の領域と比べて精度が高い流体解析を行う。したがって、本変形例によれば、血流の流体解析をより高い精度で行うことができる。
【0085】
(第1の実施形態の第2の変形例)
また、上述した第1の変形例では、特定機能152が、自動的に画像解析を行う場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、特定機能152は、操作者から受け付けた操作に応じて血管解析を行う機能を有していてもよい。
【0086】
本変形例では、特定機能152は、血管に関する解析として、操作者から受け付けた操作に応じて血管の構造を解析する血管解析を行い、当該血管解析の解析結果として得られた異常領域を関心領域として特定する。
【0087】
具体的には、特定機能152は、操作者から受け付けた操作に応じて、CT画像データに描出されている血管から血管芯線や血管壁、分岐形状等の情報を抽出し、抽出した情報に基づいて、狭窄が発生している領域や狭窄率等を同定する。
【0088】
例えば、特定機能152は、操作者から受け付けた操作に応じて血管の狭窄率を同定し、当該狭窄率が所定の閾値を超えている範囲を関心領域として特定する。例えば、特定機能152は、狭窄率が50%以上である領域を関心領域として特定する。
【0089】
そして、本変形例では、解析機能153が、特定機能152によって関心領域の特定が行われている間に、流体解析を開始するようにしてもよい。この場合には、解析機能153は、特定機能152によって関心領域が特定された時点で、関心領域以外の領域について、それまでに流体解析が終わっている流体解析の結果を流用する。これにより、血管の流体解析にかかる時間を短縮することができる。
【0090】
(第1の実施形態の第3の変形例)
また、上述した第1の実施形態及び変形例では、解析機能153が、有限要素法の解析モデルにおけるメッシュの密度を高めることで、流体解析の計算コストを増やす場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
【0091】
例えば、解析機能153は、1次元解析を3次元解析に変更することで、流体解析の計算コストを増やしてもよい。または、解析機能153は、流体解析で行われる逐次演算の収束回数を増やすことで、流体解析の計算コストを増やしてもよい。
【0092】
(第1の実施形態の第4の変形例)
また、上述した第1の実施形態及び変形例では、解析機能153が、関心領域以外の領域に関する解析モデルと関心領域に関する解析モデルとを連結して合成モデルを生成することとしたが、解析機能153は、合成モデルを生成する際に、解析モデルとの連結部分に空間補間を施すことで、当該解析モデルを滑らかに連結させるようにしてもよい。
【0093】
図9は、第1の実施形態の第4の変形例に係る解析機能153によって行われる解析モデルの空間補間の一例を示す図である。
図9に示す複数の点は、それぞれ、有限要素法の解析モデルにおけるメッシュの接点を示している。ここで、
図9の上側に示す4つの接点91a~91dは、関心領域以外の領域に関する解析モデルに設定された接点を示している。また、
図9の下側に示す5つの接点91e~91iは、関心領域に関する解析モデルに設定された接点を示している。
【0094】
例えば、
図9に示すように、関心領域に関する解析モデルでは、関心領域以外の領域の解析モデルと比べて、メッシュが細かく設定されるため、各接点の間隔が狭くなる。このため、合成モデルが生成された際には、パーシャルボリューム効果等によって、解析モデルの連結部分において、接点の位置がずれることがあり得る。例えば、
図9に示すように、関心領域以外の領域に関する解析モデルの連結側の端部に位置する接点91dと、関心領域に関する解析モデルの連結側の端部に位置する接点91eとの間に、ずれが生じることがあり得る。
【0095】
このような場合に、解析機能153は、解析モデルとの連結部分にスプライン補間等の方法を用いて空間補間を施すことで、当該解析モデルを滑らかに連結させる。例えば、
図9に示すように、解析機能153は、関心領域以外の領域に関する解析モデルの連結側の端部に位置する接点91dの代わりに、それ以外の各接点の位置に基づいて、新たな接点91jを補間する。これにより、関心領域に関する解析モデルと関心領域以外の領域の解析モデルとを滑らかに連結することができ、合成モデルを用いた流体解析の精度を向上させることができる。
【0096】
(第1の実施形態の第5の変形例)
また、上述した第1の実施形態及び変形例では、解析機能153が、合成モデルを用いて流体解析を行うこととしたが、合成モデルにおける関心領域より上流側にある領域については、前回の流体解析で用いられた解析モデルが用いられるため、流体解析の結果も前回から変わらないことになる。
【0097】
そこで、解析機能153は、合成モデルを用いて流体解析を行う際に、関心領域以外の領域のうちの関心領域より上流側に位置する領域については、前回行われた流体解析によって得られた解析結果を用いることで、流体解析の計算を省略してもよい。
【0098】
図10は、第1の実施形態の第5の変形例に係る解析機能153によって行われる流体解析の一例を示す図である。
図10の左側及び右側に示す図は、血管全体の合成モデル101を示しており、破線の矢印が血流の流れの方向を示している。また、
図10の右側に示す図において、両矢印で示す範囲は、合成モデル101における関心領域Rの範囲を示している。
【0099】
例えば、
図10に示す例では、解析機能153は、関心領域R以外の領域のうちの関心領域Rより上流側に位置する領域Ruについて、前回行われた流体解析によって得られた解析結果を用いることで、流体解析の計算を省略する。また、解析機能153は、関心領域R、及び、関心領域以外の領域のうちの関心領域Rより下流側に位置する領域Rdについて、合成モデル101を用いて新たに流体解析を行う。これにより、血管の流体解析にかかる時間を短縮することができる。
【0100】
(第1の実施形態の第6の変形例)
また、上述した第1の実施形態及び変形例では、特定機能152が、血管に関する解析の解析結果をディスプレイ140に表示することとしたが、特定機能152は、流体解析及び画像解析の両方を行い、画像解析の解析結果に基づいて、流体解析によって得られた解析結果の信頼度をさらに表示してもよい。
【0101】
具体的には、特定機能152は、第1の実施形態と同様に、取得機能151によって取得されたCT画像データを用いて流体解析を行う。また、特定機能152は、第1の変形例と同様に、取得機能151によって取得されたCT画像データを用いて画像解析を行い、血管に生じている異常領域を特定する。例えば、特定機能152は、カルシウム等の病変組織が所定量を超えて発生している領域や、モーションアーティファクトやバンディングアーティファクト等のアーティファクトが発生している領域、血管の径が所定の閾値より小さい領域等を異常領域として特定する。
【0102】
そして、特定機能152は、第1の実施形態と同様に、流体解析の解析結果及び関心領域をディスプレイ140に表示する。さらに、特定機能152は、流体解析の解析結果と一緒に、画像解析の結果として得られた解析値に基づいて、血管の各位置における流体解析の信頼度を算出し、算出した信頼度を流体解析の解析結果とともにディスプレイ140に表示する。
【0103】
例えば、特定機能152は、カルシウム等の病変組織の量や、アーティファクトが発生している量、血管径に基づいて、血管の各位置における流体解析の信頼度を算出する。そして、特定機能152は、例えば、
図4に示したように、解析モデルの形状を表すグラフィック41上に血流パラメータの値の分布を示す情報を表示したうえで、算出した信頼度を示す情報を当該グラフィック41上にさらに表示する。例えば、特定機能152は、信頼度の各値に異なる色を割り当て、血管における信頼度の空間的な分布に応じて、解析モデルを表すグラフィック41に色を付ける。または、特定機能152は、解析モデルを表すグラフィック41上、又は、当該グラフィック41の近傍に、信頼度を表す数値を表示してもよい。これにより、操作者に対して、流体解析を再度実行するか否かを決める際の参考となる情報を提示することができる。
【0104】
(第1の実施形態の第7の変形例)
さらに、特定機能152は、血管に所定の閾値より太い分枝が含まれており、かつ、当該分枝の領域における信頼度が所定の閾値より低い場合に、警告を報知してもよい。
【0105】
図11は、第1の実施形態の第7の変形例に係る特定機能152によって行われる血管の分枝に関する警告表示の一例を示す図である。例えば、
図11に示すように、特定機能152は、取得機能151によって取得されたCT画像データに基づいて、血管111から分岐する血管である分枝112を検出し、検出した分枝112と血管111とが接続する箇所における分枝112の血管径Dを算出する。そして、例えば、取得機能151は、算出した分枝112の血管径Dが3mm以上であった場合に、血管111と分枝112との接続箇所を含み、かつ、流体解析の信頼度が所定の閾値より低い領域があるか否かを検出する。そして、取得機能151は、該当する領域Rbがあった場合には、流体解析の解析結果とともに、当該領域Rbを示す情報と、警告用のメッセージとをディスプレイ140に表示する。
【0106】
一般的に、シミュレーションによる流体解析では、血管が細い場合や、血管が分岐している場合は、解析結果の精度が低くなることがあり得る。言い換えると、血管がある程度太いにもかかわらず、解析結果の信頼度が低い場合は、流体解析が正確に行われていない可能性がある。本変形例では、そのような場合に、操作者に対して、流体解析を再度行うことを促すことができる。
【0107】
(第1の実施形態の第8の変形例)
また、上述した第1の実施形態及び変形例では、関心領域を拡大再構成したCT画像データに基づいて、メッシュの密度を高めた関心領域の解析モデルを生成する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、解析機能153は、関心領域を拡大再構成したCT画像データを取得する代わりに、CT画像データに対して画像補正を行った後に、補正後の画像データを用いて、精度を高めた流体解析を行うようにしてもよい。
【0108】
この場合には、解析機能153は、関心領域を拡大再構成したCT画像データに基づいて、メッシュの密度を高めた関心領域の解析モデルを生成するのではなく、CT画像データに対して画像補正を行った後に、補正後の画像データに基づいて、メッシュの密度を高めた関心領域の解析モデルを生成する。例えば、解析機能153は、CT画像データに対して、モーションアーティファクト補正や、バンディングアーティファクト補正、位相補正等の所定の画像補正を行う。
【0109】
(第1の実施形態の第9の変形例)
さらに、解析機能153は、上述した画像補正として、所定の画像補正を行うのではなく、複数の種類の画像補正の中から選択された画像補正を行うようにしてもよい。この場合には、例えば、各画像補正の内容は、予めデータベース化されて記憶回路120に記憶される。ここでいう画像補正の内容としては、例えば、血管壁の補正や偽狭窄の補正、画素値の変化のスムージング等が挙げられる。
【0110】
そして、例えば、解析機能153は、操作者によってデータベースの中から選択された画像補正を行う。または、解析機能153は、予めCT画像データの解析結果と画像補正の種類とを対応付けたパターンに従って、画像解析や流体解析の解析結果に応じてデータベースの中から適切な画像補正を自動的に選択し、選択した画像補正を行ってもよい。これにより、流体解析の精度を高めることができる。
【0111】
(第1の実施形態の第10の変形例)
また、上述した第1の実施形態及び変形例では、取得機能151が、X線CT装置300又は医用画像保管装置400からCT画像データを取得する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、取得機能151は、CT画像データを取得する代わりに、CT画像データの基になる投影データを取得してもよい。
【0112】
この場合には、取得機能151は、被検体の血管を含む3次元のCT画像データの基になる投影データをX線CT装置300又は医用画像保管装置400から取得し、取得した投影データを記憶回路120に記憶させる。そして、特定機能152及び解析機能153が、それぞれ、血管に関する解析を行う際に、記憶回路120から投影データを読み出し、読み出した投影データから解析に用いるCT画像データを再構成又は拡大再構成する。
【0113】
または、取得機能151は、第1の実施形態と同様にCT画像データを取得し、特定機能152及び解析機能153が、当該CT画像データを記憶回路120から読み出し、読み出したCT画像データを用いて、解析に用いるCT画像データを生成してもよい。例えば、血管に関する解析を行う際に、フォワードプロジェクション等の方法によってCT画像データを投影データに戻し、それにより得られた投影データから解析に用いるCT画像データを再構成又は拡大再構成する。
【0114】
(第1の実施形態の第11の変形例)
また、上述した第1の実施形態及び変形例では、医用画像処理装置100が、自装置に備えられたディスプレイ140に流体解析の結果を表示する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、医用画像処理装置100は、ネットワーク200を介して接続された医用画像表示装置に解析結果を出力してもよい。
【0115】
近年では、操作者が用いるクライアント装置には必要最小限の処理を実行させ、大部分の処理をサーバ装置に実行させるシンクライアント(Thin Client)の形態で、医用画像処理システムが構築される場合もある。例えば、このような医用画像処理システムにおいて、サーバ装置が有する処理回路が、上述した第1の実施形態及び変形例で説明した医用画像処理装置100と同様の構成を有し、クライアント装置(医用画像表示装置)が、医用画像処理装置100によって行われた解析の結果を医用画像処理装置100から取得して表示してもよい。例えば、クライアント装置は、予め装置にインストールされた汎用的なブラウザ等によって、解析結果を表示する。
【0116】
(第1の実施形態の第12の変形例)
また、上述した第1の実施形態及び変形例では、被検体に関する画像データとして、X線CT装置300によって収集されたCT画像データを用いる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、被検体に関する画像データとして、他の医用画像診断装置によって収集された画像データが用いられてもよい。ここでいう医用画像診断装置は、例えば、MRI装置やX線診断装置、超音波診断装置、PET装置等である。
【0117】
(第2の実施形態)
また、上述した第1の実施形態及び変形例では、医用画像処理装置100が各種処理を実行する場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、X線CT装置300によって、上述した各種処理が実行されてもよい。以下では、このような例を第2の実施形態として説明する。
【0118】
図12は、第2の実施形態に係るX線CT装置300の構成の一例を示す図である。例えば、
図1に示すように、本実施形態に係るX線CT装置300は、架台310と、寝台320と、コンソール330とを有する。
【0119】
架台310は、被検体S(患者)にX線を照射し、被検体Sを透過したX線を検出して、コンソール330に出力する装置である。例えば、架台310は、X線発生装置311と、X線照射制御回路312と、検出器313と、回転フレーム314と、架台駆動回路315と、データ収集回路316とを有する。
【0120】
X線発生装置311は、X線を発生し、発生したX線を被検体Sへ照射する。例えば、X線発生装置311は、X線管311aと、ウェッジ311bと、コリメータ311cとを有する。
【0121】
X線管311aは、X線を発生する。例えば、X線管311aは、真空管であり、図示しない高電圧発生装置から供給される高電圧によってX線を発生する。また、X線管311aは、ファン角及びコーン角を持って広がるX線を発生する。
【0122】
ウェッジ311bは、X線管311aから曝射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ウェッジ311bは、X線管311aから被検体Sへ照射されるX線が予め定められた分布になるように、X線管311aから曝射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ311bは、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。なお、ウェッジ311bは、ウェッジフィルタ(wedge filter)や、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
【0123】
コリメータ311cは、後述するX線照射制御回路312による制御のもと、ウェッジ311bによってX線量が調節されたX線の照射範囲を絞り込むためのスリットである。
【0124】
X線照射制御回路312は、後述するスキャン制御回路333による制御のもと、X線発生装置311を制御する。例えば、X線照射制御回路312は、図示しない高電圧発生装置を制御して、X線発生装置311が有するX線管311aに高電圧を供給する。また、X線照射制御回路312は、X線管311aに供給する管電圧や管電流を調整することで、被検体Sに対して照射されるX線量を調整する。また、X線照射制御回路312は、X線発生装置311が有するウェッジ311bの切り替えを行う。また、X線照射制御回路312は、X線発生装置311が有するコリメータ311cの開口度を調整することにより、X線の照射範囲(ファン角やコーン角)を調整する。
【0125】
検出器313は、X線管311aから発生したX線を検出する。例えば、検出器313は、被検体Sを透過したX線を検出する2次元アレイ型検出器(面検出器)であり、複数チャンネル分のX線検出素子を配してなる検出素子列が被検体Sの体軸方向(
図1に示すZ軸方向)に沿って複数列配列されている。具体的には、本実施形態における検出器313は、被検体Sの体軸方向に沿って320列など多列に配列されたX線検出素子を有し、例えば、被検体Sの肺や心臓を含む範囲など、広範囲に被検体Sを透過したX線を検出することが可能である。
【0126】
回転フレーム314は、円環状に形成されたフレームであり、X線発生装置311と検出器313とを被検体Sを挟んで対向するように支持する。
【0127】
架台駆動回路315は、後述するスキャン制御回路333による制御のもと、回転フレーム314を回転駆動させることによって、被検体Sを中心とした円軌道上でX線発生装置311と検出器313とを旋回させる。
【0128】
データ収集回路316は、後述するスキャン制御回路333による制御のもと、検出器313が検出したX線の検出データから投影データを収集する。データ収集回路316は、DAS(Data Acquisition System)とも呼ばれる。例えば、データ収集回路316は、検出器313により検出されたX線強度分布データに対して、増幅処理やA/D変換処理、チャンネル間の感度補正処理等を行なって投影データを生成し、生成した投影データを後述するコンソール330に送信する。なお、チャンネル間の感度補正処理は、後述する前処理回路334が行なってもよい。
【0129】
寝台320は、被検体Sを載せる装置であり、
図1に示すように、被検体Sが載置される天板321と、寝台駆動装置322とを有する。寝台駆動装置322は、天板321をZ軸方向へ移動して、被検体Sを回転フレーム314内に移動させる。
【0130】
架台310は、例えば、天板321を連続的に移動させながら回転フレーム314を回転させて被検体Sを螺旋状にスキャンするヘリカルスキャンを実行する。または、架台310は、天板321を移動させた後に被検体Sの位置を固定したままで回転フレーム314を回転させて被検体Sを円軌道にてスキャンするコンベンショナルスキャンを実行する。または、架台310は、天板321の位置を一定間隔で移動させてコンベンショナルスキャンを複数の撮影位置で行うステップアンドシュート方式を実行する。
【0131】
コンソール330は、操作者によるX線CT装置300の操作を受け付けるとともに、架台310によって収集された投影データを用いてCT画像データを再構成する装置である。コンソール330は、
図1に示すように、入力回路331と、ディスプレイ332と、スキャン制御回路333と、前処理回路334と、記憶回路335と、画像再構成回路336と、処理回路337とを有する。
【0132】
入力回路331は、X線CT装置300の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、処理回路337に転送する。例えば、入力回路331は、操作者から、CT画像データの撮影条件や、CT画像データを再構成する際の再構成条件、CT画像データに対する画像処理条件等を受け付ける。また、入力回路331は、画像上の部位や、関心領域などの所定の領域を指定するための指定操作を受け付ける。
【0133】
ディスプレイ332は、操作者によって参照されるモニタであり、処理回路337による制御のもと、CT画像データから生成されたCT画像を操作者に表示したり、入力回路331を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
【0134】
スキャン制御回路333は、処理回路337による制御のもと、X線照射制御回路312、架台駆動回路315、データ収集回路316及び寝台駆動装置322の動作を制御することで、架台310における投影データの収集処理を制御する。
【0135】
前処理回路334は、データ収集回路316によって生成された投影データに対して、対数変換処理と、オフセット補正、感度補正及びビームハードニング補正等の補正処理とを行なって、補正済みの投影データを生成する。具体的には、前処理回路334は、データ収集回路316によって生成された投影データについて、補正済みの投影データを生成して、記憶回路335に格納する。
【0136】
記憶回路335は、各種データを記憶する。例えば、記憶回路335は、前処理回路334によって生成された投影データ、及び、後述する画像再構成回路336によって生成されるCT画像データを記憶する。また、記憶回路335は、後述する処理回路337によって実行される処理の結果として生成される各種データを記憶する。
【0137】
画像再構成回路336は、記憶回路335によって記憶された投影データを用いてCT画像データを再構成する。例えば、画像再構成回路336は、FBP(Filtered Back Projection)法等を用いた逆投影処理によって、CT画像データを再構成する。または、例えば、画像再構成回路336は、逐次近似法を用いて、CT画像データを再構成する。また、画像再構成回路336は、CT画像データに対して各種画像処理を行うことで、各種のCT画像を生成する。そして、画像再構成回路336は、再構成したCT画像データや、各種画像処理により生成したCT画像を記憶回路335に格納する。なお、画像再構成回路336は、特許請求の範囲における再構成部の一例である。
【0138】
処理回路337は、架台310、寝台320及びコンソール330の動作を制御することによって、X線CT装置300の全体制御を行う。具体的には、処理回路337は、スキャン制御回路333を制御することで、架台310で行なわれるCTスキャンを制御する。また、処理回路337は、画像再構成回路336を制御することで、コンソール330における画像再構成処理や画像生成処理を制御する。また、処理回路337は、記憶回路335が記憶する各種CT画像を、ディスプレイ332に表示するように制御する。
【0139】
このような構成のもと、本実施形態に係るX線CT装置300では、処理回路337が、取得機能337aと、特定機能337bと、解析機能337cとを有する。なお、特定機能337bは、特許請求の範囲における特定部の一例である。また、解析機能337cは、特許請求の範囲における解析部の一例である。
【0140】
取得機能337aは、上述した第1の実施形態又は変形例で説明した取得機能151と同様の処理を実行する。ただし、上述した第1の実施形態及び変形例では、取得機能151が、X線CT装置300又は医用画像保管装置400からCT画像データ又は投影データを取得したのに対し、本実施形態に係る取得機能337aは、記憶回路335からCT画像データ又は投影データを取得する。
【0141】
特定機能337bは、上述した第1の実施形態又は変形例で説明した特定機能152と同様の処理を実行する。
【0142】
解析機能337cは、上述した第1の実施形態又は変形例で説明した解析機能153と同様の処理を実行する。
【0143】
また、本実施形態では、入力回路331、ディスプレイ332及び記憶回路335が、それぞれ、上述した第1の実施形態で説明した入力回路130、ディスプレイ140及び記憶回路120と同様の機能を含む。
【0144】
上述した第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、血流の流体解析をより高い精度で行うことができる。
【0145】
なお、上述した実施形態では、単一の処理回路(処理回路150、処理回路337)によって各処理機能が実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、当該処理回路は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、当該処理回路が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0146】
なお、上述した各実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0147】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、後述する各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0148】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、血流の流体解析をより高い精度で行うことができる。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0150】
100 医用画像処理装置
150 処理回路
151 取得機能
152 特定機能
153 解析機能