(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/228 20060101AFI20221219BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01G4/228 W
H01G4/228 J
H01G4/30 201E
H01G4/30 513
(21)【出願番号】P 2017174276
(22)【出願日】2017-09-11
【審査請求日】2020-05-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 ▲徳▼久
(72)【発明者】
【氏名】増田 淳
(72)【発明者】
【氏名】森 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】松永 香葉
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 広祐
【合議体】
【審判長】酒井 朋広
【審判官】山本 章裕
【審判官】齋藤 正貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-162938(JP,A)
【文献】特開2001-196260(JP,A)
【文献】特開平11-16768(JP,A)
【文献】特開2014-44977(JP,A)
【文献】特開2000-235931(JP,A)
【文献】実開昭62-028423(JP,U)
【文献】特開2004-288847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/232, 4/30, 4/228
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ部品と、
前記チップ部品に連結される金属端子と、を有する電子部品であって、
前記金属端子は、
前記チップ部品の端子電極の端面に対応して配置される電極対向部と、
前記チップ部品を保持する保持部と、を有し、
前記電極対向部と前記端子電極の端面との間には、
前記電極対向部と前記端子電極の端面とを接続する接続部材が、所定範囲内の接合領域で存在し、
前記接合領域の縁部と前記保持部との間には非接合領域が形成してあり、
前記接合領域では、前記電極対向部の表裏面を貫通する第1貫通孔が形成してあり、
前記非接合領域において、前記電極対向部には、表裏面を貫通する第2貫通孔が形成してあり、前記第2貫通孔の開口縁から前記保持部が延びて
おり、
前記保持部、前記第2貫通孔および前記接合領域が、実装面側から、前記保持部、前記第2貫通孔、前記接合領域の順で、電子部品の高さ方向に並んで配置してある電子部品。
【請求項2】
前記電極対向部と前記端子電極の端面との間では、前記非接合領域の合計面積が、前記接合領域の合計面積の3/10よりも大きい請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記非接合領域では、前記電極対向部と前記端子電極の端面との間には、前記接続部材の厚み程度の隙間が存在する請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記電極対向部には、複数のチップ部品の端子電極の端面が複数の接合領域で並んで接合され、隣り合う前記接合領域の間にも、前記非接合領域が形成してある請求項1~3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
前記非接合領域において、前記第2貫通孔の開口幅が、前記第1貫通孔の開口幅よりも広く形成してある請求項1~4のいずれかに記載の電子部品。
【請求項6】
前記接続部材がハンダである請求項1~5のいずれかに記載の電子部品。
【請求項7】
前記接合領域において、前記電極対向部の内面には、前記端子電極の端面に向けて突出する突起が形成してある請求項1~6のいずれかに記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックコンデンサ等の電子部品としては、単体で直接基板等に面実装等する通常のチップ部品の他に、たとえば特許文献1に示すように、チップ部品に金属端子が取り付けられたものが提案されている。
【0003】
金属端子が取り付けられている電子部品は、実装後において、チップ部品が基板から受ける変形応力を緩和したり、チップ部品を衝撃等から保護する効果を有することが報告されており、耐久性および信頼性等が要求される分野において使用されている。
【0004】
しかしながら、従来の金属端子付き電子部品では、チップ部品の端子電極と金属端子とはハンダのみで接合してあり、その接合に課題があった。たとえばハンダ付けの際には、チップ部品の端子電極と金属端子とを位置合わせしながらハンダ付け作業を行う必要がある。特に、複数のチップ部品を一対の金属端子にハンダ付けする際には、その作業が繁雑であると共に、接合の確実性が低下するおそれがある。
【0005】
また、チップ部品の端子電極端面の全体を金属端子とハンダ付けする場合には、金属端子と端子電極との接合強度が向上するが、金属端子が撓み弾性変形し難くなる。また、チップ部品からの振動が基板などに伝わりやすくなり、いわゆる音鳴き現象を生じさせるおそれもある。さらに、高温環境や温度変化の大きい環境で使用された場合、ハンダと金属端子との熱膨張率の違いなどにより、チップ部品と金属端子との接合が解除されてしまうおそれもある。
【0006】
なお、嵌合アームでチップ部品を金属端子に連結している電子部品も提案されている。この構造によれば、音鳴き現象の抑制などに効果が期待できる。この構造において、チップ部品と金属端子との接合強度をさらに上げるために、チップ部品の端子電極端面と金属端子とをハンダにより接合することが考えられる。しかしながら、その場合には、音鳴き現象の抑制効果が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、チップ部品と金属端子とを確実かつ強固に連結することができると共に、音鳴き現象の抑制効果にも優れた電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子部品は、
チップ部品と、
前記チップ部品に連結される金属端子と、を有する電子部品であって、
前記金属端子は、
前記チップ部品の端子電極の端面に対応して配置される電極対向部と、
前記チップ部品を保持する保持部と、を有し、
前記電極対向部と前記端子電極の端面との間には、
前記電極対向部と前記端子電極の端面とを接続する接続部材が、所定範囲内の接合領域で存在し、
前記接合領域の縁部と前記保持部との間には非接合領域が形成してある。
【0010】
本発明に係る電子部品では、金属端子の保持部でチップ部品を保持し、しかもハンダなどの接続部材により所定範囲内の接合領域で、金属端子とチップ部品との接続を行うため、チップ部品と金属端子とを確実かつ強固に連結することができる。なお、接続部材としては、ハンダに限定されず、導電性接着剤などを用いることもできる。
【0011】
また、接合領域の縁部と保持部との間には、電極対向部と端子電極の端面とを接続しない非接合領域が形成してあり、非接合領域では、金属端子の電極対向部は、端子電極に拘束されずに自由に撓み弾性変形が可能であり、応力が緩和される。そのため、その非接合領域に連続する保持部の弾力性が良好に確保され、保持部でチップ部品を良好に保持することができる。また、金属端子が撓み弾性変形し易くなると共に、音鳴き現象を効果的に抑制することができる。
【0012】
好ましくは、前記電極対向部と前記端子電極の端面との間では、前記非接合領域の合計面積が、前記接合領域の合計面積の3/10よりも大きい。このように構成することで、本発明の作用効果が大きくなる。
【0013】
前記非接合領域では、前記電極対向部と前記端子電極の端面との間には、前記接続部材の厚み程度の隙間が存在してもよい。隙間を設けることで、非接合領域の電極対向部は、端子電極に拘束されずに自由に撓み変形が可能になる。
【0014】
前記電極対向部には、複数のチップ部品の端子電極の端面が複数の接合領域で並んで接合されてもよく、隣り合う前記接合領域の間にも、前記非接合領域が形成してあることが好ましい。このように構成することで、複数のチップ部品を一対の金属端子で連結することが容易になり、しかも、チップ部品の相互間に存在する非接合領域の存在により、撓み強度が向上し、音鳴き現象を抑制することができる。
【0015】
好ましくは、前記接合領域では、前記電極対向部の表裏面を貫通する第1貫通孔が形成してある。このように構成することで、第1貫通孔を通して、接合領域内の接続部材の塗布状態を外部から観察が可能になる。また、第1貫通孔を通して、ハンダなどの接続部材に含まれる気泡を逃がすことができる。このため、ハンダなどの接続部材の量が少なくても接合が安定化する。
【0016】
前記非接合領域において、前記電極対向部には、表裏面を貫通する第2貫通孔が形成してもよく、前記第2貫通孔の開口縁から前記保持部が延びていることが好ましい。第2貫通孔を形成することで、非接合領域を容易に形成することができると共に、保持部を容易に成形することができ、チップ部品の保持も確実なものとなる。
【0017】
前記接合領域において、前記電極対向部の内面には、前記端子電極の端面に向けて突出する突起が形成してもよい。このように構成することで、接続部材の塗布領域を容易に制御することができると共に、接合領域の厚みも容易に制御することが可能となる。また、接合部材の量が少なくても接合が安定化する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るセラミック電子部品を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すセラミック電子部品の正面図である。
【
図3B】
図3Bは、第1実施形態の変形例に係るセラミック電子部品の左側面図である。
【
図3C】
図3Cは、第1実施形態のその他の変形例に係るセラミック電子部品の左側面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すセラミック電子部品の上面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すセラミック電子部品の底面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示すセラミック電子部品のY軸に垂直な断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係るセラミック電子部品を示す概略斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すセラミック電子部品の正面図である。
【
図9】
図9は、
図7に示すセラミック電子部品の左側面図である。
【
図12】
図12は、
図1に示す実施形態の変形例に係るセラミック電子部品を示す概略斜視図である。
【
図13】
図13は、
図7に示す実施形態の変形例に係るセラミック電子部品を示す概略斜視図である。
【
図14】
図14は、
図13に示す実施形態の変形例に係るセラミック電子部品を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0020】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子部品としてのコンデンサ10を示す概略斜視図である。コンデンサ10は、チップ部品としてのコンデンサチップ20と、一対の金属端子30,40とを有する。第1実施形態に係るコンデンサ10は、2つのコンデンサチップ20を有するが、コンデンサ10が有するコンデンサチップ20の数は、単数でも複数でもよく、複数であれば数に制限はない。
【0021】
なお、各実施形態の説明では、コンデンサチップ20に金属端子30,40が取り付けられたコンデンサを例に説明を行うが、本発明のセラミック電子部品としてはこれに限られず、コンデンサ以外のチップ部品に金属端子30,40が取り付けられたものであっても良い。
【0022】
また、図面において、X軸とY軸とZ軸とは、相互に垂直であり、X軸は、
図1に示すように、コンデンサチップ20が並べられる方向に平行であり、Z軸は、コンデンサ10の実装面からの高さ方向に一致し、Y軸は、チップ20の一対の端子電極22,24が相互に反対側に位置する方向に一致する。
【0023】
コンデンサチップ20は、略直方体形状であり、2つのコンデンサチップ20は、互いに略同一の形状およびサイズを有している。
図2に示すように、コンデンサチップ20は、互いに対向する一対のチップ端面を有しており、一対のチップ端面は、第1端面20aと第2端面20bとで構成されている。
図1、
図2および
図4に示すように、第1端面20aおよび第2端面20bは略長方形であり、第1端面20aおよび第2端面20bの長方形を構成する4辺のうち、長い方の一対の辺がチップ第1辺20g(
図2参照)であり、短い方の一対の辺がチップ第2辺20h(
図3A参照)である。
【0024】
コンデンサチップ20は、第1端面20aと第2端面20bとが実装面に対して垂直になるように、言い換えると、第1端面20aと第2端面20bとを繋ぐコンデンサチップ20のチップ第3辺20jが、コンデンサ10の実装面と平行になるように配置されている。なお、コンデンサ10の実装面は、後述する金属端子30,40の実装部38,48が対向するように、コンデンサ10がハンダ等によって取り付けられる面であり、
図1に示すXY平面に平行な面である。
【0025】
図2に示すチップ第1辺20gの長さL1と、
図4に示すチップ第2辺20hとの長さL2とを比較すると、チップ第2辺20hの方がチップ第1辺20gより短い(L1>L2)。チップ第1辺20gとチップ第2辺20hとの長さの比は特に限定されないが、たとえばL2/L1は、0.3~0.7程度である。
【0026】
コンデンサチップ20は、
図2に示すように、チップ第1辺20gが実装面に対して垂直になり、
図4に示すように、チップ第2辺20hが実装面に対して平行になるように配置される。したがって、第1端面20aと第2端面20bとを接続する4つのチップ側面である第1~第4側面20c~20fのうち、面積の広い第1側面20cおよび第2側面20dは実装面に対して垂直に配置され、第1側面20cおよび第2側面20dより面積が小さい第3側面20eおよび第4側面20fは、実装面に対して平行に配置される。また、第3側面20eは、下方の実装部38、48とは反対方向を向く上方側面であり、第4側面20fは、実装部38、48と向き合う下方側面である。
【0027】
図1、
図2および
図4に示すように、コンデンサチップ20の第1端子電極22は、第1端面20aから第1~第4側面20c~20fの一部に回り込むように形成されている。したがって、第1端子電極22は、第1端面20aに配置される部分と、第1側面20c~第4側面20fに配置される部分とを有する。
【0028】
また、コンデンサチップ20の第2端子電極24は、第2端面20bから側面20c~20fの他の一部(第1端子電極22が回り込んでいる部分とは異なる部分)に回り込むように形成されている。したがって、第2端子電極24は、第2端面20bに配置される部分と、第1側面20c~第4側面20fに配置される部分を有する(
図1、
図2および
図4参照)。また、第1側面20c~第4側面20fにおいて、第1端子電極22と第2端子電極24とは所定の距離を隔てて形成されている。
【0029】
コンデンサチップ20の内部構造を模式的に表す
図6に示すように、コンデンサチップ20は、内部電極層26と誘電体層28とが積層された積層コンデンサである。内部電極層26は、第1端子電極22に接続しているものと、第2端子電極24に接続しているものとがあり、第1端子電極22に接続する内部電極層26と、第2端子電極24に接続している内部電極層26とが、誘電体層28を挟んで交互に積層されている。
【0030】
図6に示すように、コンデンサチップ20における内部電極層26の積層方向は、X軸に平行でY軸に垂直である。つまり、
図6に示す内部電極層26は、Z軸およびY軸の平面に平行で、実装面に対して垂直に配置される。
【0031】
コンデンサチップ20における誘電体層28の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムまたはこれらの混合物などの誘電体材料で構成される。各誘電体層28の厚みは、特に限定されないが、数μm~数百μmのものが一般的である。本実施形態では、好ましくは1.0~5.0μmである。また、誘電体層28は、コンデンサの静電容量を大きくできるチタン酸バリウムを主成分とすることが好ましい。
【0032】
内部電極層26に含有される導電体材料は特に限定されないが、誘電体層28の構成材料が耐還元性を有する場合には、比較的安価な卑金属を用いることができる。卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn、Cr、CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。また、内部電極層26は、市販の電極用ペーストを使用して形成してもよい。内部電極層26の厚みは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0033】
第1および第2端子電極22,24の材質も特に限定されず、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。第1および第2端子電極22,24の厚みも特に限定されないが、通常10~50μm程度である。なお、第1および第2端子電極22,24の表面には、Ni、Cu、Sn等から選ばれる少なくとも1種の金属被膜が形成されていても良い。
【0034】
コンデンサチップ20の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。コンデンサチップ20は、たとえば、縦(
図2に示すL3)1.0~6.5mm、好ましくは3.2~5.9mm×横(
図2に示すL1)0.5~5.5mm、好ましくは1.6~5.2mm×厚み(
図4に示すL2)0.3~3.5mm、好ましくは0.8~3.2mm程度である。複数のコンデンサチップ20を有する場合は、互いに大きさや形状が異なっていてもかまわない。
【0035】
コンデンサ10における一対の金属端子30,40は、一対のチップ端面である第1および第2端面20a,20bに対応して設けられる。すなわち、一対の金属端子30,40の一方である第1金属端子30は、一対の端子電極22、24の一方である第1端子電極22に対応して設けられており、一対の金属端子30,40の他方である第2金属端子40は、一対の端子電極22,24の他方である第2端子電極24に対応して設けられている。
【0036】
第1金属端子30は、第1端子電極22に対向する電極対向部36を有する。また、第1金属端子30は、コンデンサチップ20をチップ第1辺20gの両端側からZ軸方向に挟んで把持する複数対の嵌合アーム部(保持部)31a,31b,33a,33bを有する。さらに、第1金属端子30は、電極対向部36からコンデンサチップ20側へ延びており少なくとも一部が電極対向部36に対して略垂直である実装部38を有する。
【0037】
図2に示すように、電極対向部36は、実装面に垂直であるチップ第1辺20gに略平行な一対の端子第1辺36gと、
図3Aに示すように実装面に平行であるチップ第2辺20hに略平行な一対の端子第2辺36ha,36hbとを有する略矩形平板状である。
【0038】
図3Aおよび
図3B(第1変形例)に示すように、実装面に平行である端子第2辺36ha,36hbの長さは、端子第2辺36ha,36hbと平行に配置されるチップ第2辺20hの長さL2(
図4参照)の数倍±αである。すなわち、電極対向部36のX軸間幅は、
図3Aに示すコンデンサ10または
図3Bに示すコンデンサ200に含まれるコンデンサチップ20の数とコンデンサチップ20のX軸幅とを積算した長さに対して同等であってもよく、僅かに短くても良く、僅かに長くてもよい。
【0039】
たとえば、
図3Bに示す第1変形例に係るコンデンサ200では、コンデンサ200がコンデンサチップ20を2つ含んでおり、実装面に平行である端子第2辺36ha,36hbの長さは、端子第2辺36ha,36hbと平行に配置されるチップ第2辺20hの長さL2の2倍より短い。なお、コンデンサ200は、コンデンサチップ20におけるチップ第2辺の長さが、実施形態に係るコンデンサチップ20のチップ第2辺20hの長さより長いことを除き、
図1~
図6に示すコンデンサ10と同様である。
【0040】
一方、
図3Aに示す第1実施形態では、コンデンサ10がコンデンサチップ20を2つ含んでおり、実装面に平行である端子第2辺36ha,36hbの長さは、端子第2辺36ha,36hbと平行に配置されるチップ第2辺20hの長さL2の2倍と同一または僅かに長い。
図3Aに示すように、金属端子30,40に対して組み合わせることのできるコンデンサチップの寸法は、1種類に限定されず、金属端子30,40は、X軸方向の長さが異なる複数種類のコンデンサチップ20に対応して、電子部品を構成することが可能である。
【0041】
電極対向部36は、対向する第1端面20aに形成された第1端子電極22に対して、電気的および機械的に接続されている。たとえば、
図2に示す電極対向部36と第1端子電極22との隙間に、はんだや導電性接着剤等の導電性の接続部材50を介在させて、電極対向部36と第1端子電極22とを接続することができる。
【0042】
接続部材50により電極対向部36と第1端子電極22の端面とが接合する領域が接合領域50aと規定され、接続部材50が介在されずに電極対向部36と第1端子電極22の端面とが接合されずに隙間が存在する領域が非接合領域50bと規定される。非接合領域50bにおける電極対向部36と第1端子電極22の端面との間の隙間は、接続部材50の厚み程度の隙間である。本実施形態では、接続部材50の厚みは、後述する突起36aの突出高さなどに応じて決定される。
【0043】
本実施形態では、電極対向部36における第1端面20aに面する部分には、第1貫通孔36bが形成されている。第1貫通孔36bは、コンデンサ10に含まれる各コンデンサチップ20に対応するように2つ形成されているが、第1貫通孔36bの形状および数はこれに限定されない。本実施形態では、第1貫通孔36bは、接合領域50aの略中央部に形成される。
【0044】
図3Aに示すように、接合領域50aは、第1貫通孔36bのZ軸方向の両側にそれぞれ位置する初期塗布領域50cに、接続部材50(
図2参照)が塗布されることにより形成される。すなわち塗布の後に、電極対向部36の外面から発熱体を接触させてチップ20の端面に向けて電極対向部36を押し付けることにより、初期塗布領域50cに塗布されている接続部材50が広がって接合領域50aが形成される。接続部材50が広がりきれない領域が非接合領域50bとなる。本実施形態において、電極対向部36と端子電極22のY軸端面との間では、非接合領域50bの合計面積が、接合領域50aの合計面積の3/10よりも大きく、さらに好ましくは1/2~10倍である。
【0045】
本実施形態では、はんだからなる接続部材50は、第1貫通孔36bの周縁と第1端子電極22との間にはんだブリッジを形成することにより、電極対向部36と第1端子電極22とを強く接合することができる。また、第1貫通孔36bを通して、接合領域50a内の接続部材50の塗布状態を外部から観察が可能になる。また、第1貫通孔36bを通して、ハンダなどの接続部材50に含まれる気泡を逃がすことができる。このため、ハンダなどの接続部材50の量が少なくても接合が安定化する。
【0046】
また、電極対向部36には、コンデンサチップ20の第1端面20aへ向かって突出し、第1端面20aに接触する複数の突起36aが、第1貫通孔36aを囲むように形成してある。しかも、突起36aは、初期塗布領域50cの外側に形成されてもよく、突起36aと第1貫通孔36bとの間に、初期塗布領域50cが位置するようになっていてもよい。なお、初期塗布領域50cは、突起36aと第1貫通孔36bとの間からはみ出していてもよい。
【0047】
突起36aは、電極対向部36と第1端子電極22との接触面積を低減することにより、コンデンサチップ20で発生した振動が第1金属端子30を介して実装基板に伝わることを防止し、コンデンサ10の音鳴きを防止することができる。
【0048】
また、突起36aを第1貫通孔36bの周辺に形成することにより、はんだ等の接続部材50が広がって形成される接合領域50aを調整することが可能である。本実施形態では、接合領域50aは、突起36aの外側を少し超える位置に縁部を有する。特に、
図1に示すように、接合領域50aのZ軸方向の下端縁部は、後述する第2貫通孔36cの上部開口縁の近くに位置する。
【0049】
このようなコンデンサ10は、電極対向部36と第1端子電極22との接合強度を適切な範囲に調整しつつ、音鳴きを防止することができる。なお、コンデンサ10では、1つの第1貫通孔36bの周りに、4つの突起36aが形成されているが、突起36aの数および配置は、これに限定されない。
【0050】
電極対向部36には、複数対の嵌合アーム部31a,31b,33a,33bの一つである下部アーム部31bまたは下部アーム部33bが接続する周縁部を有する第2貫通孔36cが形成されている。第2貫通孔36cは、第1貫通孔36bより実装部38の近くに位置しており、第1貫通孔36bとは異なり、はんだ等の接続部材は設けられていない。すなわち、第2貫通孔36cは、非接合領域50bの範囲内に形成される。
【0051】
このような第2貫通孔36cが形成されている第1金属端子30は、コンデンサチップ20を支持する下部アーム部31b,33bの周辺が弾性変形しやすい形状となっているため、コンデンサ10に生じる応力を緩和する作用や、コンデンサチップ20の振動を吸収する作用を、効果的に奏することができる。したがって、このような第1金属端子30を有するコンデンサ10は、音鳴きを好適に防止することが可能であり、また、実装時における実装基板との接合信頼性が良好である。
【0052】
第2貫通孔36cの形状は特に限定されないが、第2貫通孔36cは、端子第2辺36ha、36hbに平行な方向(X軸方向)である幅方向の開口幅が、第1貫通孔36bより広いことが好ましい。第2貫通孔36cの開口幅を広くすることにより、第1金属端子30による応力緩和作用や、音鳴き防止効果を、効果的に高めることができる。また、第1貫通孔36bの開口幅を第2貫通孔36cより狭くすることにより、接続部材が広がりすぎることによってコンデンサチップ20と電極対向部36との接合強度が過度に高まることを防止することができるため、このようなコンデンサ10は、音鳴きを抑制することができる。
【0053】
電極対向部36において、下部アーム部31bが接続する第2貫通孔36cは、実装部38が接続する下方の端子第2辺36hbに対して、高さ方向に所定の距離を離して形成されており、第2貫通孔36cと端子第2辺36hbの間には、スリット36dが形成されている。
【0054】
スリット36dは、電極対向部36において、実装部38の近くに位置する下部アーム部31bの電極対向部36に対する接続位置(第2貫通孔36cの周縁部下辺)と、実装部36が接続する下方の端子第2辺36hbとの間に形成されている。スリット36dは、端子第2辺36ha,36hbと平行な方向に延びている。スリット36dは、コンデンサ10を実装基板に実装する際に使用されるはんだが、電極対向部36をはい上がることを防止し、下部アーム部31b,33bや第1端子電極22まで繋がるはんだブリッジを形成することを防止できる。したがって、このようなスリット36dが形成されたコンデンサ10は、音鳴きを抑制する効果を奏する。
【0055】
図1および
図2に示すように、第1金属端子30の嵌合アーム部31a,31b,33a,33bは、電極対向部36からコンデンサチップ20のチップ側面である第3側面20eまたは第4側面20fに延びている。嵌合アーム部31a,31b,33a,33bの1つである下部アーム部31b(または下部アーム部33b)は、電極対向部36に形成された第2貫通孔36cのZ軸下端周縁部から折り曲げられて成形してある。
【0056】
また、嵌合アーム部31a,31b,33a,33bの他の一つである上部アーム部31a(または上部アーム部33a)は、電極対向部36における上方(Z軸正方向側)の端子第2辺36haから折り曲げられて成形してある。
【0057】
図1に示すように、電極対向部36は、コンデンサチップ20の第1端面20aに面しており第1端面20aと重複する高さに位置するプレート本体部36jと、プレート本体部36jより下方に位置する端子接続部36kを有する。端子接続部36kは、プレート本体部36jと実装部38とを接続する位置にある。
【0058】
第2貫通孔36cは、その周縁部がプレート本体部36jと端子接続部36kとに跨るように形成されており、下部アーム部31b,33bは、端子接続部36kから延びている。すなわち、下部アーム部31b,33bの基端は、第2貫通孔36cにおける略矩形の周縁部における下辺に接続している。
【0059】
下部アーム部31b,33bは、その基端からY軸方向の内側(チップ20の中心側)へ屈曲しながら延びて、コンデンサチップ20の第4側面20fに接触し、コンデンサチップ20を下方から支持する(
図2参照)。なお、下部アーム部31b,33bは、チップ20の取付前の状態で、第2貫通孔36cの周縁部の下辺よりZ軸方向の上に向けて傾斜していてもよい。下部アーム部31b,33bの弾力性でチップ20の第4側面20fに接触するようにするためである。
【0060】
コンデンサチップ20の第1側面20aの下端(下方のチップ第2辺20h)は、下部アーム部31b,33bの基端である第2貫通孔36cの周縁部の下辺よりわずかに上方に位置する。また、
図3Aに示すように、コンデンサチップ20をY軸方向から見た場合、第2貫通孔36cを通してコンデンサ10の側方から、コンデンサチップ20の第1側面20aの下端(下方のチップ第2辺20h)を、視認することができる。
【0061】
図1に示すように、上部アーム部31aと下部アーム部31bとが対を成して1つのコンデンサチップ20を把持しており、上部アーム部33aと下部アーム部33bとが対を成して他の1つのコンデンサチップ20を把持している。第1金属端子30では、一対の嵌合アーム部31a,31b(または嵌合アーム部33a,33b)が、複数ではなく1つのコンデンサチップ20を把持しているため、各コンデンサチップ20を確実に把持することができる。
【0062】
また、一対の嵌合アーム部31a,31bは、第1端面20aの短辺であるチップ第2辺20hではなく、長辺であるチップ第1辺20gの両端側からコンデンサチップ20を把持している。これにより、上部アーム部31a,33aと下部アーム部31b,33bとの間隔が長くなり、コンデンサチップ20の振動を吸収しやすくなるので、コンデンサ10は、音鳴きを好適に防止できる。
【0063】
なお、コンデンサチップ20を把持しており対を成す上部アーム部31aと下部アーム部31bとは、互いに非対称な形状を有していてもよく、幅方向の長さ(X軸方向の長さ)が互いに異なっていてもよい。また、下部アーム部31b,33bが端子接続部36から延びていることにより、これらがプレート本体部36jに接続している場合に比べて、コンデンサチップ20の第1端子電極22と実装基板との伝送経路が短くなる。
【0064】
実装部38は、電極対向部36における下方(Z軸負方向側)の端子第2辺36hbに接続している。実装部38は、下方の端子第2辺36hbからコンデンサチップ20側(Y軸負方向側)へ延びており、電極対向部36に対して略垂直に曲がっている。なお、実装部38におけるコンデンサチップ20側の表面である実装部38の上面は、コンデンサチップ20を基板に実装する際に使用されるはんだの過度な回り込みを防止する観点から、実装部38の下面より、はんだに対する濡れ性が低いことが好ましい。
【0065】
コンデンサ10は、
図1および
図2に示すように、実装部38が下方を向く姿勢で実装基板等の実装面に実装されるため、コンデンサ10では、Z軸方向の長さが、実装時の高さとなる。コンデンサ10では、実装部38が電極対向部36における一方の端子第2辺36hbに接続しており、上部アーム部31a、33aが他方の端子第2辺36haに接続しているため、Z軸方向の長さに無駄がなく、低背化に対して有利である。
【0066】
また、実装部38が、電極対向部36における一方の端子第2辺36hbに接続しているため、実装部38が電極対向部36における端子第1辺36gに接続する従来技術に比べてZ軸方向からの投影面積が小さく、実装面積を小さくすることが可能である。また、
図1および
図5等に示すように、コンデンサチップ20の第1~第4側面20c,20d,20e,20fのうち、面積の小さい第3側面20eおよび第4側面20fが実装面と平行に配置されるため、コンデンサチップ20を高さ方向に重ねて配置しない構成であっても、実装面積を小さくすることができる。
【0067】
図1および
図2に示すように、第2金属端子40は、第2端子電極24に対向する電極対向部46と、コンデンサチップ20をチップ第1辺20gの両端側からZ軸方向に挟んで把持する複数対の嵌合アーム部41a,41b,43a,43bと、電極対向部46からコンデンサチップ20側へ延びており少なくとも一部が電極対向部46に対して略垂直である実装部48とを有する。
【0068】
第2金属端子40の電極対向部46は、第1金属端子30の電極対向部36と同様に、チップ第1辺20gに略平行な一対の端子第1辺46gと、チップ第2辺20hに略平行な端子第2辺46haとを有する。電極対向部46には、電極対向部36に設けられている突起36a、第1貫通孔36b、第2貫通孔36cおよびスリット36dと同様な突起(図示省略)、第1貫通孔(図示省略)、第2貫通孔(図示省略)およびスリット46d(
図6参照)が形成されている。
【0069】
図1に示すように、第2金属端子40は、第1金属端子30に対して対称に配置されており、コンデンサチップ20に対する配置が第1金属端子30とは異なる。しかし、第2金属端子40は、配置が異なるだけで、第1金属端子30と同様の形状を有するため、詳細については説明を省略する。
【0070】
第1金属端子30および第2金属端子40の材質は、導電性を有する金属材料であれば特に限定されず、たとえば鉄、ニッケル、銅、銀等若しくはこれらを含む合金を用いることができる。特に、第1および第2金属端子30、40の材質をりん青銅とすることが、第1および第2金属端子30、40の比抵抗を抑制し、コンデンサ10のESRを低減する観点から好ましい。
【0071】
以下に、コンデンサ10の製造方法について説明する。
【0072】
積層コンデンサチップ20の製造方法
積層コンデンサチップ20の製造では、まず、焼成後に内部電極層26となる電極パターンが形成されたグリーンシート(焼成後に誘電体層28となる)を積層して積層体を作製したのち、得られた積層体を加圧・焼成することによりコンデンサ素体を得る。さらに、コンデンサ素体に第1端子電極22および第2端子電極24を、端子電極用塗料焼き付けおよびめっき等により形成することにより、コンデンサチップ20を得る。
【0073】
積層体の原料となるグリーンシート用塗料や内部電極層用塗料、端子電極の原料並びに積層体および電極の焼成条件等は特に限定されず、公知の製造方法等を参照して決定することができる。本実施形態においては、誘電体材料としてチタン酸バリウムを主成分とするセラミックグリーンシートを用いる。また、端子電極は、Cuペーストを浸漬、焼付処理することで焼付層を形成し、さらに、Niめっき、Snめっき処理を行なうことで、Cu焼付層/Niめっき層/Snめっき層を形成する。
【0074】
金属端子30,40の製造方法
第1金属端子30の製造では、まず、平板状の金属板材を準備する。金属板材の材質は、導電性を有する金属材料であれば特に限定されず、たとえば鉄、ニッケル、銅、銀等若しくはこれらを含む合金を用いることができる。次に、金属板材を機械加工することにより、嵌合アーム部31a~33bや電極対向部36、実装部38等の形状を形成した中間部材を得る。
【0075】
次に、機械加工により形成された中間部材の表面に、めっきによる金属被膜を形成することにより、第1金属端子30を得る。めっきに用いる材料としては、特に限定されないが、たとえばNi、Sn、Cu等が挙げられる。また、めっき処理の際、実装部38の上面にレジスト処理を施すことにより、めっきが実装部38の上面に付着することを防止することができる。これにより、実装部38の上面と下面のはんだに対する濡れ性に差異を発生させることができる。なお、中間部材全体にめっき処理を施して金属被膜を形成した後、実装部38の上面に形成された金属被膜のみをレーザー剥離等で除去しても、同様の差異を発生させることができる。
【0076】
なお、第1金属端子30の製造では、帯状に連続する金属板材から、複数の第1金属端子30が、互いに連結された状態で形成されてもよい。互いに連結された複数の第1金属端子30は、コンデンサチップ20との接続前、またはコンデンサチップ20に接続された後に、個片に切断される。第2金属端子40の製造方法も、第1金属端子30と同様である。
【0077】
コンデンサ10の組み立て
上述のようにして得られたコンデンサチップ20を2つ準備し、
図1に示すように第2側面20dと第1側面20cとが接触するように配列して保持する。そして、第1端子電極22のY軸方向の端面に、第1金属端子30の裏面を向き合わせると共に、第2端子電極24のY軸方向端面に、第2金属端子40を向き合わせる。
【0078】
その際に、第1端子電極22のY軸方向の端面、または第1金属端子30の裏面で、
図1および
図3Aに示す初期塗布領域50cに、ハンダなどの接合部材50(
図2参照)を塗布する。また同様にして、第2端子電極24のY軸方向の端面、または第2金属端子40の裏面で、
図1および
図3Aに示す初期塗布領域50cに対応する位置に、ハンダなどの接続部材50(
図2参照)を塗布する。
【0079】
その後に、電極対向部36(46も同様)の外面から発熱体(図示省略)を接触させてチップ20の端面に向けて電極対向部36を押し付けることにより、初期塗布領域50cに塗布されている接続部材50が広がって接合領域50aが形成される。接続部材50が広がりきれない領域が非接合領域50bとなる。これにより、第1および第2金属端子30,40をコンデンサチップ20の第1端子電極22および第2端子電極24に電気的および機械的に接続し、コンデンサ10を得る。
【0080】
このようにして得られるコンデンサ10は、コンデンサ10の高さ方向(Z軸方向)が、コンデンサチップ20の長辺であるチップ第1辺20gの方向と同じ方向であり、しかも、実装部38,48が端子第2辺36hbからコンデンサチップ20の下方に曲げられて形成されているため、コンデンサ10における高さ方向からの投影面積が小さい(
図4および
図5参照)。したがって、このようなコンデンサ10は、実装面積を小さくすることができる。
【0081】
また、複数のコンデンサチップ20を実装面に平行な方向に並べて配置する構成としたコンデンサ10では、たとえば一対の嵌合アーム部31a,31bの間には、嵌合方向(Z軸方向)に沿って1つだけのコンデンサチップ20が把持される構成となるため、コンデンサチップ20と金属端子30,40との接合信頼性が高く、衝撃や振動に対する信頼性が高い。
【0082】
さらに、複数のコンデンサチップ20を実装面に平行な方向に配列し、かつ、コンデンサチップ20の積層方向を実装面と平行な方向にしたことにより、コンデンサ10の伝送経路が短くなるため、コンデンサ10は、低ESLを実現できる。また、コンデンサチップ20を把持する方向が、コンデンサチップ20の積層方向とは直交する方向であるため、把持されるコンデンサチップ20の積層数が変化し、コンデンサチップ20のチップ第2辺20hの長さL2が変化した場合であっても、第1および第2金属端子30,40は、問題なくコンデンサチップ20を把持することができる。このように、コンデンサ10では、第1および第2金属端子30,40が、多様な積層数のコンデンサチップ20を把持することが可能であるため、設計変更に柔軟に対応することができる。
【0083】
また、コンデンサ10は、上部アーム部31a,33aと下部アーム部31b,33bとが、コンデンサチップ20における第1端面20aの長辺であるチップ第1辺20gの両端側から、コンデンサチップ20を挟んで把持している。このため、第1および第2金属端子30、40が応力の緩和効果を効果的に発揮し、コンデンサチップ20から実装基板への振動の伝達を抑制し、音鳴きを防止することができる。
【0084】
特に、下部アーム部31b,33bが第2貫通孔36cの周縁部に接続していることにより、コンデンサチップ20を支持する下部アーム部31b,33bおよび下部アーム部31b,33bを支える電極対向部36,46が、弾性変形しやすい形状となっている。したがって、第1および第2金属端子30、40は、コンデンサ10に生じる応力を緩和する作用や、振動を吸収する作用を、効果的に奏することができる。
【0085】
また、第2貫通孔36cの周縁部に下部アーム部31b,33bが接続していることにより、コンデンサ10では、実装面に垂直な方向(Z軸方向)から見た場合、下部アーム部31b,33bを、実装部38に対して重なる位置に配置することが可能である(
図2および
図5参照)。したがって、コンデンサ10は、実装部38を広くすることが可能であり、また、小型化の観点で有利である。
【0086】
また、第1貫通孔36bが形成されていることにより、コンデンサ10は、第1および第2金属端子30,40とコンデンサチップ20との接合状態を、外部から容易に視認することができるため、品質のばらつきを低減し、良品率を向上させることが可能である。
【0087】
特に本実施形態に係るコンデンサ10では、金属端子30(40も同様)の一対の嵌合アーム部(弾性を持つ保持部)31a,31b,33a,33b(41a,41b,43a,43bも同様)がチップ20をZ軸の両側から挟み込み保持する。しかもハンダなどの接続部材50(
図2参照)により所定範囲内の接合領域50aで、金属端子30,40とチップ20との接続を行うため、チップ20と金属端子30,40とを確実かつ強固に連結することができる。
【0088】
また、接合領域50aの縁部と嵌合アーム部31a,31b,33a,33b(41a,41b,43a,43bも同様)との間には、電極対向部36(46)と端子電極22(24)の端面とを接続しない非接合領域50bが形成してある。非接合領域50bでは、金属端子30(40)の電極対向部36(46)は、端子電極22(24)に拘束されずに自由に撓み弾性変形が可能であり、応力が緩和される。そのため、その非接合領域50bに連続する嵌合アーム部31a,31b,33a,33b(41a,41b,43a,43b)の弾力性が良好に確保され、一対の嵌合アーム部31a,31b,33a,33b(41a,41b,43a,43b)の間で各チップ20を良好に把持することができる。また、金属端子30(40)が撓み弾性変形し易くなると共に、音鳴き現象を効果的に抑制することができる。
【0089】
電極対向部36(46)と端子電極22(24)の端面との間では、非接合領域50bの合計面積が、接合領域50aの合計面積の3/10よりも大きく所定範囲内である。このように構成することで、本実施形態の作用効果が大きくなる。
【0090】
また、非接合領域50aでは、電極対向部36(46)と端子電極22(24)の端面との間には、接続部材50の厚み程度の隙間が存在してある。隙間を設けることで、非接合領域50bの電極対向部36(46)は、端子電極30(40)に拘束されずに自由に撓み変形が可能になる。
【0091】
さらに、
図3Aに示すように、電極対向部36(46)には、複数のチップ20の端子電極22(24)の端面が複数の接合領域50aで並んで接合されてもよく、隣り合う接合領域50aの間にも、非接合領域50bが形成してある。このように構成することで、複数のチップ20を一対の金属端子30,40で連結することが容易になり、しかも、チップ20の相互間に存在する非接合領域50bの存在により、音鳴き現象を抑制することができる。
【0092】
さらに本実施形態では、非接合領域50bにおいて、電極対向部36(46)には、表裏面を貫通する第2貫通孔36cが形成してある。第2貫通孔36cの開口縁からアーム部31b,33b(41b,43b)が延びている。第2貫通孔36cを形成することで、非接合領域50bを容易に形成することができると共に、アーム部31b,33b(41b,43b)を容易に成形することができ、チップ20の把持も確実なものとなる。
【0093】
さらに本実施形態では、接合領域50aにおいて、電極対向部36(46)の内面には、端子電極22(24)の端面に向けて突出する突起36aが形成してある。このように構成することで、接続部材50の接合領域50aを容易に制御することができると共に、接合領域50aの厚みも容易に制御することが可能となる。また、接合部材の量が少なくても接合が安定化する。
【0094】
第2実施形態
図7は、本発明の第2実施形態に係るコンデンサ100の概略斜視図であり、
図8、
図9、
図10、
図11は、それぞれコンデンサ100の正面図、左側面図、上面図および底面図である。
図7に示すように、コンデンサ100は、3つのコンデンサチップ20を有している点と、第1金属端子130および第2金属端子140に含まれる第1貫通孔36b等の数が異なる他は、第1実施形態に係るコンデンサ10と同様である。したがって、コンデンサ100の説明においては、コンデンサ10と同様の部分については、コンデンサ10と同様の符号を付し、説明を省略する。
【0095】
図7に示すように、コンデンサ100に含まれるコンデンサチップ20は、
図1に示すコンデンサ10に含まれるコンデンサチップ20と同様である。コンデンサ100に含まれる3つのコンデンサチップ20は、
図8に示すように、チップ第1辺20gが実装面に対して垂直になり、
図10に示すように、チップ第2辺20hが実装面に対して平行になるように配置される。コンデンサ100に含まれる3つのコンデンサチップ20は、隣接するコンデンサチップ20の第1端子電極22同士が互いに接触し、隣接するコンデンサチップ20の第2端子電極24同士が互いに接触するように、実装面に平行に配列されている。
【0096】
コンデンサ100に含まれる第1金属端子130は、第1端子電極22に対向する電極対向部136と、コンデンサチップ20を把持する3対の嵌合アーム部31a,31b,33a,33b,35a,35bと、電極対向部136における端子第2辺136hbからコンデンサチップ20側へ垂直に曲がっている実装部138とを有する。電極対向部136は略矩形平板状であり、チップ第1辺20gに略平行な一対の端子第1辺136gと、チップ第2辺20hに略平行な一対の端子第2辺136ha、136hbとを有する。
【0097】
図9に示すように、第1金属端子130には、
図3Aに示す第1金属端子30と同様に、突起36a、第1貫通孔36b、第2貫通孔36cおよびスリット36dが形成されている。ただし、第1金属端子130には、第1貫通孔36b、第2貫通孔36cおよびスリット36dが3つずつ形成されており、1つの第1貫通孔36b、第2貫通孔36cおよびスリット36dが、1つのコンデンサチップ20に対応している。また、第1金属端子130には、合計12個の突起36aが形成されており、4つの突起36aが1つのコンデンサチップ20に対応している。
【0098】
また、
図10に示すように、第1金属端子130において、上部アーム部31aおよび下部アーム部31bは1つのコンデンサチップ20を把持しており、上部アーム部33aおよび下部アーム部33bは他の1つのコンデンサチップ20を把持しており、上部アーム部35aおよび下部アーム部35bは上記2つとは異なる他の1つのコンデンサチップ20を把持している。上部アーム部31a,33a,35aは、電極対向部36における上方(Z軸正方向側)の端子第2辺136haに接続しており、下部アーム部31b,33b,35bは第2貫通孔36cの周縁部に接続している。
【0099】
図8および
図11に示すように、第1金属端子130の実装部138は、電極対向部136における下方(Z軸負方向側)の端子第2辺136hbに接続している。実装部138は、下方の端子第2辺136hbからコンデンサチップ20側(Y軸負方向側)へ延びており、電極対向部136に対して略垂直に曲がっている。
【0100】
第2金属端子140は、第2端子電極24に対向する電極対向部146と、コンデンサチップ20をチップ第1辺20gの両端側からZ軸方向に挟んで把持する複数対の嵌合アーム部141a,143a,145aと、電極対向部146からコンデンサチップ20側へ延びており少なくとも一部が電極対向部146に対して略垂直である実装部148とを有する。
【0101】
第2金属端子140の電極対向部146は、第1金属端子130の電極対向部36と同様に、チップ第1辺20gに略平行な一対の端子第1辺146gと、チップ第2辺20hに略平行な端子第2辺140haとを有しており、電極対向部146には、突起46a、第1貫通孔、第2貫通孔およびスリットが形成されている。
図7に示すように、第2金属端子140は、第1金属端子130に対して対称に配置されており、コンデンサチップ20に対する配置が第1金属端子130とは異なる。しかし、第2金属端子140は、配置が異なるだけで、第1金属端子130と同様の形状を有するため、詳細については説明を省略する。
【0102】
第2実施形態に係るコンデンサ100も、第1実施形態に係るコンデンサ10と同様の効果を奏する。なお、コンデンサ100において、第1金属端子130に含まれる上部アーム部31a~33a、下部アーム部31b~33b、第1貫通孔36b、第2貫通孔36cおよびスリット36dの数は、コンデンサ100に含まれるコンデンサチップ20の数と同様であるが、コンデンサ100に含まれる嵌合アーム部等の数はこれに限定されない。たとえば、第1金属端子130には、コンデンサチップ20の2倍の数の第1貫通孔36bが形成されていてもよく、連続する1つの長いスリット36dが形成されていてもよい。
【0103】
その他の実施形態
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0104】
たとえば、
図1に示す第1金属端子30には、突起36a、第1貫通孔36b、第2貫通孔36cおよびスリット36dが全て形成されているが、第1金属端子としてはこれに限定されず、これらのうち1つまたは複数の部分が形成されていない変形例も、本発明に係る第1金属端子に含まれる。また、上述した実施形態では、Z軸方向に一対のアーム部(たとえば31a,31b)を具備してあるが、Z軸方向の上部に位置する一方のアーム部(たとえば31a)は省略し、片側のみのアーム部(たとえば31b)としてもよい。
【0105】
図3Cは、第2変形例に係るコンデンサ300を示す左側面図である。第2変形例に係るコンデンサ300は、第1および第2金属端子330に形成されたスリット336dの形状が異なることを除き、第1実施形態に係るコンデンサ10と同様である。
図3Cに示すように、第1および第2金属端子330には、X軸方向に連続する1つのスリット336dが、2つの第2貫通孔36cの下方に形成されている。このように、スリット336dは、コンデンサチップ20の第1端面20aに対向する部分の下端(下方のチップ第2辺20h)と端子第2辺36hbとの間(すなわち端子接続部36k)に形成されている限り、その形状および数は限定されない。
【0106】
また、本発明では、電子部品が有するチップの数は、単数でも複数でもよく、複数であれば数に制限はない。たとえば
図12に示すコンデンサ400では、金属端子30と40とで、単一のコンデンサチップ20を保持している。また、
図13に示すコンデンサ500では、金属端子130と140とで、X軸方向に5つコンデンサチップ20を保持している。さらに、
図14に示すコンデンサ600では、金属端子130と140とで、X軸方向に10のコンデンサチップ20を保持している。
【符号の説明】
【0107】
10,100,200,300,400,500,600…コンデンサ
20…コンデンサチップ
20a…第1端面
20b…第2端面
20c…第1側面
20d…第2側面
20e…第3側面
20f…第4側面
20g…チップ第1辺
20h…チップ第2辺
20j…チップ第3辺
22…第1端子電極
24…第2端子電極
26…内部電極層
28…誘電体層
30,130,40,140…金属端子
31a,33a,35a,41a,43a,45a…上部アーム部(保持部)
31b,33b,35b,41b,43b…下部アーム部(保持部)
36,136,46,146…電極対向部
36a,46a…突起
36b…第1貫通孔
36c…第2貫通孔
36d,46d…スリット
36g…端子第1辺
36ha,36hb…端子第2辺
38,138,48,148…実装部
50…接続部材
50a…接合領域
50b…非接合領域
50c…初期塗布領域