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特許7195733支持脊柱部材及び可変形状を有する灌流されたバルーンカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】支持脊柱部材及び可変形状を有する灌流されたバルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20221219BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20221219BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/10 540
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017234904
(22)【出願日】2017-12-07
(65)【公開番号】P2018094407
(43)【公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-11-04
(31)【優先権主張番号】62/431,773
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/827,111
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】シュバユ・バス
(72)【発明者】
【氏名】セサル・フエンテス-オルテガ
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-515442(JP,A)
【文献】特表2013-529109(JP,A)
【文献】特開2013-013726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0140072(US,A1)
【文献】特開2013-078587(JP,A)
【文献】特開2015-100706(JP,A)
【文献】国際公開第2016/183337(WO,A2)
【文献】特開2016-116863(JP,A)
【文献】特開平06-261951(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0256629(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0265329(US,A1)
【文献】特表2015-518776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12 - 18/16
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の管腔を有する細長いカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの遠位に位置するバルーンであって、長手方向軸を規定する遠位端と近位端を有し、メンブレン及び前記メンブレンの外側表面上に支持された複数の接触電極を含み、前記メンブレンが前記バルーンの内部を画定する、バルーンと、
前記カテーテルシャフトの前記第1の管腔を通じて延びる灌流管であって、第2の管腔を有し、前記バルーンの前記近位端で概ね終端する遠位端を有する、灌流管と、
前記灌流管の前記第2の管腔を通じて延びる第1の部分と、前記バルーンの前記近位端を通じて前記バルーンの前記内部へ延びる第2の部分を有する細長い拡張要素であって、前記バルーンの前記遠位端と連結された遠位端を有し、前記カテーテルシャフトに対して長手方向に可動であることで前記バルーンの前記遠位端を動かして前記バルーンの形態を変化させる、拡張要素と、を有し、
前記複数の接触電極は、前記バルーンの周方向において互いに間隔をあけて配置され、
前記バルーンが、前記バルーンの前記メンブレンの前記外側表面に沿って長手方向に、前記バルーンの前記近位端から前記バルーンの前記遠位端近傍の近位側の位置まで延びる複数の支持脊柱部材を有し、
前記複数の支持脊柱部材の各々は、前記バルーンの前記周方向において互いに隣り合う前記複数の接触電極の間に配置されている、電気生理カテーテル。
【請求項2】
前記バルーンが、前記バルーンの前記メンブレンの前記外側表面に沿って前記長手方向に延びる複数の第2の支持脊柱部材を更に有し、前記複数の第2の支持脊柱部材の各々は、前記バルーンの前記周方向において、前記複数の接触電極の各々と略同一の位置に配置され、前記長手方向において、前記複数の第2の支持脊柱部材の各々の遠位端は、前記複数の接触電極の各々の近位端よりも近位側に配置される、請求項1に記載の電気生理カテーテル。
【請求項3】
前記バルーンは、前記メンブレンに接着された複数のカバーを更に有し、少なくとも1つのカバーが前記複数の第2の支持脊柱部材の少なくとも1つを覆っている、請求項2に記載の電気生理カテーテル。
【請求項4】
前記バルーンの前記遠位端は平坦な遠位面を有する、請求項1に記載の電気生理カテーテル。
【請求項5】
前記バルーンの前記遠位端は、前記平坦な遠位面及び径方向外側表面を有するハウジングを有し、前記メンブレンの遠位端部分が内側に曲げられて前記径方向外側表面に接着されている、請求項4に記載の電気生理カテーテル。
【請求項6】
前記拡張要素は、屈曲スリットを有する部分を有する、請求項1に記載の電気生理カテーテル。
【請求項7】
前記屈曲スリットは、螺旋状スリットを含む、請求項6に記載の電気生理カテーテル。
【請求項8】
前記ハウジング内に収容された位置センサを更に有する、請求項5に記載の電気生理カテーテル。
【請求項9】
前記拡張要素は第3の管腔を有し、前記位置センサは、前記第3の管腔を通じて延びるケーブルを有する、請求項8に記載の電気生理カテーテル。
【請求項10】
前記ハウジングは、前記平坦な遠位面を有する遠位電極を有する、請求項5に記載の電気生理カテーテル。
【請求項11】
前記接触電極は、塗工された導電性インクを含む、請求項1に記載の電気生理カテーテル。
【請求項12】
第1の管腔を有する細長いカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの遠位に位置するバルーンであって、長手方向軸を規定する遠位端と近位端を有し、前記バルーンは、メンブレン及び前記メンブレンの外側表面上に支持された多層フレックス回路電極アセンブリを含み、前記メンブレンは前記バルーンの内部を画定し、前記遠位端は電気的導路を有する構成要素を含む、バルーンと、
前記第1の管腔を通じて前記カテーテルシャフトに対して長手方向に可動である中空の細長い拡張要素であって、前記拡張要素は第2の管腔及び遠位端を有し、前記電気的導路は前記第2の管腔を通り、前記拡張要素及び前記バルーンの前記遠位端が互いに連結されている、拡張要素と、を有し、
前記多層フレックス回路電極アセンブリは、前記バルーンの周方向において互いに間隔をあけて配置された複数のリーフを含み、複数の接触電極の各々が前記複数のリーフの各々の上に支持され
前記バルーンが、前記バルーンの前記メンブレンの前記外側表面に沿って長手方向に、前記バルーンの前記近位端から前記バルーンの前記遠位端近傍の近位側の位置まで延びる複数の支持脊柱部材を有し、
前記複数の支持脊柱部材の各々は、前記バルーンの前記周方向において互いに隣り合う前記複数の接触電極の間に配置されている、電気生理カテーテル。
【請求項13】
前記バルーンは、前記メンブレンに沿って前記長手方向に延びる複数の第2の支持脊柱部材を更に有し、前記複数の第2の支持脊柱部材の各々は、前記バルーンの前記周方向において、前記複数の接触電極の各々と略同一の位置に配置され、前記長手方向において、前記複数の第2の支持脊柱部材の各々の遠位端は、前記複数の接触電極の各々の近位端よりも近位側に配置される、請求項12に記載の電気生理カテーテル。
【請求項14】
前記バルーンは、非外傷性の遠位端を有する、請求項12に記載の電気生理カテーテル。
【請求項15】
前記バルーンの前記遠位端は、平坦な遠位面及び遠位端部分を有し、前記メンブレンが内側に曲げられて前記拡張要素の前記遠位端に接着されている、請求項12に記載の電気生理カテーテル。
【請求項16】
前記多層フレックス回路電極アセンブリのリード線は、前記バルーンの前記内部の外側の前記メンブレンに沿って、前記多層フレックス回路電極アセンブリの近位端から前記バルーンの前記近位端まで延びている、請求項12に記載の電気生理カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は医療装置に関する。より詳細には、本開示は、電気生理(EP)カテーテル、詳細には、心臓の心房、口及び管状領域を含む心臓の各領域をマッピング及び/又は焼灼するためのEPカテーテルを含む心臓カテーテル法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動などの心不整脈は、心臓組織の各領域が、隣接組織に電気信号を異常に伝導することによって正常な心周期を阻害し、非同期的なリズムを引き起こす場合に発生する。
【0003】
不整脈を治療するための手技としては、不整脈を発生させている信号の発生源を外科的に破壊すること、及びそのような信号の伝導路を破壊することが挙げられる。カテーテルによりエネルギーを印加して心臓組織を選択的に焼灼することによって、心臓の1つの部分から別の部分への望ましくない電気信号の伝播を阻止又は改変することが時に可能である。アブレーション法は、非伝導性の損傷部位を形成することによって望ましくない電気経路を破壊するものである。
【0004】
肺静脈口又はその近傍に周方向の損傷部位を形成することによって、心房性不整脈の治療が行われている。いずれもレッシュ(Lesh)に付与された米国特許第6,012,457号及び同第6,024,740号には、高周波電極を含む径方向に拡張可能なアブレーション装置が開示されている。この装置を使用し、肺静脈に高周波エネルギーを供給して周方向の伝導ブロックを確立することによって、肺静脈を左心房から電気的に隔離することが提案されている。
【0005】
本願と同一譲受人に譲渡され、本明細書に参照によって援用するところのシュワルツ(Schwartz)らに付与された米国特許第6,814,733号は、高周波エミッタとしての径方向に拡張可能な螺旋状コイルを有するカテーテル導入装置について記載している。1つの用途では、エミッタは、経皮的に導入され、経中隔的に肺静脈口まで進められる。エミッタは、エミッタを肺静脈の内壁と周方向に接触させるために径方向に拡張されるが、これはエミッタが巻き付けられている固定バルーンを膨張させることによって実現することができる。コイルは、高周波発生器によって励磁され、周方向のアブレーションの損傷部位が肺静脈の心筋スリーブ内に生じ、これにより、肺静脈と左心房との間の電気的伝播を効果的に遮断することができる。
【0006】
別の例がマグワイア(Maguire)らに付与された米国特許第7,340,307号に見られるが、当該特許では、心房から肺静脈が延びる位置において組織の外周領域を焼灼することによって心房性不整脈を治療する組織アブレーションシステム及び方法を提案している。このシステムは、アブレーション要素を有する周方向アブレーション部材を含み、アブレーション部材をその位置まで送達するための送達アセンブリを含んでいる。周方向アブレーション部材は、送達シースを通じた心房内への送達を可能とし、アブレーション要素と組織の周方向領域とが焼灼可能に結合されるように一般的に異なる形態間で調整可能である。
【0007】
より最近では、多数のごく小さな電極を有する膨張可能な電極アセンブリの外側表面を与える、フレックス回路を備えた膨張式のカテーテル電極アセンブリが構築されている。カテーテルバルーン構造の例は、その全容を参照により本明細書に援用するところの発明の名称が「Balloon for Ablation Around Pulmonary Vein」である米国特許出願公開第2016/0175041号に記載されている。
【0008】
フレックス回路又はフレキシブル電子部品は、電子素子をポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、PEEK又は透明な導電性ポリエステルフィルム(PET)などのフレキシブルプラスチック基板上に実装することによって電子回路を組み立てる技術をともなう。更に、フレックス回路は、ポリエステル上にスクリーン印刷された銀回路であってもよい。フレキシブルプリント回路(FPC)は、フォトリソグラフィ技術を用いて製造される。フレキシブル箔回路又はフレキシブルフラットケーブル(FFC)を作製する別の方法として、PETの2つの層の間にごく薄い(0.07mm)銅ストリップを積層することがある。これらのPET層は通常厚さ0.05mm厚であり、熱硬化性の接着剤がコーティングされ、積層プロセスの間に活性化される。片面フレキシブル回路は、フレキシブル誘導体フィルムに金属又は導電性(金属充填)ポリマーで形成された1層の導電体層を有する。構成部品の終端要素は、片面からのみアクセス可能である。通常ははんだ付けによる相互連結のために部品リード線を通すことができるように、ベースフィルムに穴を形成することができる。
【0009】
しかしながら、ヒトの解剖学的構造のばらつきのため、心臓内の口部及び管状領域にはあらゆるサイズのものがある。そのため、従来のバルーンカテーテル又は膨張式カテーテルでは、組織と周方向の効果的な接触を与えるうえで充分な構造的支持を有する一方で、異なる形状及びサイズに適合するのに必要とされる可撓性を有していない場合がある。更に、バルーンは、組織と接触すると軸外に座屈又は曲がる傾向がありうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、その全体的な球形形状をより高い信頼性で維持することができる一方で、使用者の選択的な操作によってその長さ及び径を変えることができる、膨張式バルーンを有するバルーン又はカテーテルが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、例えば心房、口部、及び肺静脈などの心臓の各領域で使用されるように適合された、灌流された膨張式バルーンを有するカテーテルに関するものである。バルーンはそのメンブレン上に接触電極を有しており、使用者は、カテーテルの長さに沿ってバルーンの内部を通じて延びる、その遠位端がバルーンの遠位端に連結された細長い拡張要素を操作することにより、バルーンの形態を変化させることができる。拡張要素は、カテーテル内部の空間を節約するために灌流管腔に通すことができる。更に、拡張要素自体を、バルーンと制御ハンドルとの間にケーブル又はリード線などの構成要素を通すことができる管腔を与えるために中空とすることもできる。拡張要素の1以上の部分が、その長さに沿った可撓性を高めるための屈曲スリットを有してもよい。バルーンの遠位端は、位置センサなどの構成要素のハウジングを有している。このようなハウジングにもかかわらず、バルーンの遠位端及びバルーンメンブレンのハウジングへの取り付けられ方によって、心房内の組織と直接正面から接触するのに適した、概ね平坦な非外傷性表面が与えられる。
【0012】
組織との接触の際にバルーンの形状を支持し、バルーンをカテーテルシャフトに対して軸上に維持するため、バルーンは、バルーンの近位端からバルーンの遠位端に向かって長手方向に延在する支持脊柱部材を有している。各脊柱部材はバルーンの周囲に等間隔に配することができ、各脊柱部材の長さは、必要に応じて、又は所望に応じてバルーンの全長又はその一部にわたることができる。
【0013】
各脊柱部材は、バルーンメンブレンに接着された保護カバー又はスリーブによって与えられる通路を通じて延びることができる。この通路は、バルーンの外側表面に沿って延びる他の構成要素を受容して保護することもできる。
【0014】
特定の実施形態では、電気生理カテーテルは、第1の管腔を有する細長いカテーテルシャフトと、接触電極を支持したメンブレンを有するバルーンとを有する。カテーテルは更に灌流管及び細長い拡張要素を有し、灌流管はカテーテルシャフトを通じて延び、拡張要素は灌流管の管腔を通じて延びる。灌流管がバルーンの近位端で終端するのに対し、拡張要素はバルーン内に延びてその遠位端においてバルーンの遠位端と連結される。有利な点として、拡張要素は、バルーンの遠位端を動かしてバルーンの形態を変化させるためにカテーテルシャフトに対して長手方向に可動である。
【0015】
特定の実施形態では、電気生理カテーテルは、バルーンのメンブレンの外側表面に沿って長手方向に延びる複数の支持脊柱部材を有する。一部の脊柱部材は、バルーンの近位端からバルーンの遠位端にまで延びてよく、かつ/又は一部の脊柱部材が、バルーンの近位端から、バルーンの遠位端の近位側の位置まで延びてもよい。特定の詳細な実施形態では、1以上の支持脊柱部材がバルーンの遠位端から、バルーンの近位端の遠位側の位置まで延びる。バルーンは、脊柱部材の保護カバーを有してもよい。カバーは、バルーンメンブレンに、又は接触電極を与えるフレックス回路電極アセンブリの近位尾部に接着されたストリップ又はスリーブの形態であってよい。
【0016】
特定の詳細な実施形態では、バルーンの遠位端は、平坦な遠位面と、バルーンメンブレンの内側に曲げられた遠位端部分が接着される径方向外側表面とを有するハウジングを有することで、バルーンの遠位端に非外傷性の形状を与える。
【0017】
特定の詳細な実施形態では、拡張要素は中空であり、例えばケーブル及び/又はリード線などの構成要素を受容するように構成された管腔を有する。特定の実施形態では、拡張要素は、可撓性を高めるための1以上の間欠的な切り込み又は螺旋状スリットを有する部分を有する。
【0018】
他の実施形態では、電気生理カテーテルは、第1の管腔を有する細長いカテーテルシャフトと、メンブレン及びフレックス回路電極アセンブリを有するバルーンとを備え、バルーンは更に、電気的導路を有する構成要素の遠位ハウジングを有する。カテーテルは更に、第1の管腔を通じてカテーテルシャフトに対して長手方向に可動である中空の細長い拡張要素を有し、この拡張要素は、電気的導路が通される第2の管腔と、バルーンの形状を変化させるために遠位ハウジングに連結された遠位端とを有する。
【0019】
特定の詳細な実施形態では、カテーテルのバルーンは、バルーンメンブレンに沿って長手方向に延びる支持脊柱部材を有する。特定の詳細な実施形態では、支持脊柱部材はバルーンの近位端からバルーンの遠位端にまで延びる。特定の詳細な実施形態では、支持脊柱部材は、バルーンの近位端からバルーンの遠位端の近位側の位置まで延びる。特定の詳細な実施形態では、支持脊柱部材は、バルーンの遠位端からバルーンの近位端の遠位側の位置まで延びる。
【0020】
特定の詳細な実施形態では、バルーンは非外傷性の遠位端を有する。特定の詳細な実施形態では、バルーンの遠位端は、平坦な遠位面及び遠位端部分を有し、バルーンメンブレンが内側に曲げられてハウジングの遠位端に接着される。
【0021】
特定の実施形態では、フレックス回路電極アセンブリのリード線は、バルーンの内部の外側のメンブレンに沿って、フレックス回路電極の近位端からバルーンの近位端にまで延びる。また、フレックス回路電極アセンブリのリード線は、拡張要素の管腔を通り、バルーンの遠位端から延出し、フレックス回路電極の遠位端に接続してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示のこれらの特徴及び利点、並びに他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を添付図面と併せて考慮することによってより充分な理解がなされるであろう。選択された構造及び機構が、残りの構造及び機構を見やすくするために、特定の図面では示されていないことを理解されたい。
図1】本開示の一実施形態に基づく、侵襲性医療処置の概略図である。
図2A】本発明の一実施形態に基づく、膨張状態にある本開示のバルーンカテーテルの平面図である。
図2B】A-A線に沿った、図2Aのカテーテルの中間部分の端面断面図である。
図3】本開示の一実施形態に基づく、バルーンカテーテルのバルーンの正面斜視図である。
図4】肺静脈及び肺静脈口の領域に展開されたバルーンの側面図である。
図5】本発明の一実施形態に基づく、多層フレックス回路電極アセンブリの平面図である。
図6A図3のバルーンの背面斜視図である。
図6B図6Aの代替的な一実施形態である。
図7】バルーンから部分的に持ち上げられた、本開示の一実施形態に基づくフレックス回路電極アセンブリである。
図8】本発明の別の実施形態に基づく、フレックス回路電極アセンブリの平面図である。
図9】B-B線に沿った、バルーンの近位端を含む、図2Aのカテーテルの側面断面図である。
図10】本発明の一実施形態に基づく、バルーンの遠位端の側面断面図である。
図11】本開示の一実施形態に基づく、部分的に切り欠いて示された熱収縮スリーブを有する、屈曲スリットを備えた拡張要素の側面図である。
図12図9の近位端の端面断面図である。
図13】本発明の一実施形態に基づく、近位尾部及びカバーを備えた支持脊柱部材の端面断面図である。
図14】本開示の別の実施形態に基づく、バルーンカテーテルのバルーンの正面斜視図である。
図15図14のバルーンの背面斜視図である。
図16図15のバルーンの近位端の端面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
概要
機能不全の心臓を治療するための心組織のアブレーション(焼灼)は、かかる治療を行ううえで周知の処置である。一般的に、支障なく焼灼を行うには、心筋の異なる位置で心臓の電位を測定する必要がある。更に、アブレーションの間の温度を測定することにより、アブレーションの効果を測定することを可能にするデータが得られる。一般的に、アブレーション処置では、実際のアブレーションの前、その間、及びその後に電位及び温度を測定する。
【0024】
2以上の別々の指示(例えば、電位及び温度測定に1つ、アブレーションに別の1つ)を使用する従来技術のシステムと異なり、本発明の実施形態は、2つの測定を容易とし、更に、高周波電磁エネルギーを使用し、単一のバルーンカテーテルを使用したアブレーションを可能とするものである。カテーテルは管腔を有しており、カテーテルの管腔を通じて膨張式バルーンが展開される(バルーンは、折り畳まれ、萎んだ形態で管腔を通って移動し、管腔から出た時点でバルーンは膨らまされる)。バルーンは外壁又はメンブレンを有し、管腔が延びる長手方向軸を規定する遠位端及び近位端を有する。
【0025】
カテーテルは、バルーンを伸長するか又は圧縮してその形状を変化させるためにカテーテルシャフトに対して長手方向に可動である細長い拡張要素を有している。拡張要素は、制御ハンドルから、カテーテルシャフトを通り、バルーンの近位端を通り、バルーンの内部に入り、バルーンの遠位端にまで延びる長さを有している。バルーンの遠位端は拡張要素の遠位端に連結され、拡張要素の長手方向の運動がバルーンの遠位端を遠位方向に伸ばすか又は近位方向に引くことによってバルーンを伸長又は圧縮する。拡張要素は、バルーンに灌流液を供給する灌流管の管腔に通すことができるため、拡張要素と灌流液とはカテーテル内部の空間の効率的な利用として共通の管腔を共有することになる。
【0026】
バルーンは、バルーンの周囲に放射状に拡がったバルーンメンブレン上に配置された支持脊柱部材を更に有している。選択された支持脊柱部材が、バルーンの近位端から遠位端にまで(例えばバルーンの赤道領域にまで)長手方向に部分的に延びてよい。選択された脊柱部材に加えるか又はこれに代えて、他の支持脊柱部材がバルーンの近位端から遠位端にまで長手方向に延びてもよい。また、支持脊柱部材は、バルーンの遠位端から近位端にまで部分的に延びてもよい(例えばバルーンの近位端の遠位側の、バルーンの赤道領域にまで)。場合により、支持脊柱部材は中空であってもよく、その管腔を利用して電極のリード線をバルーンの近位部分から電極にまで通すことができる。
【0027】
多層のフレキシブル電極アセンブリが、バルーンの外壁又はメンブレンに取り付けられている。この構造は、長手方向軸を中心として周方向に配列された複数の電極群を含み、各電極群は、長手方向に配列された複数の接触電極及び配線電極を含む。1以上の電極群は更に、その群内の電極から物理的かつ電気的に絶縁された少なくとも1つの微小電極を含んでもよい。各電極群は更に、少なくとも1つの熱電対を含むことができる。
【0028】
単一のバルーンカテーテルを使用して、アブレーション、電位測定、及び温度測定を行うことができるという少なくとも3つの機能により、心臓のアブレーション処置を簡素化することができる。
【0029】
システムの説明
以下の説明において、図面中の同様の要素は、同様の数字により識別され、同様の要素は、必要に応じて識別用の数字に文字を添えることにより区別される。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に基づく、器具12を用いた侵襲性医療処置の概略図である。処置は、医療専門家14によって行われるが、一例として、本明細書の以下の説明における処置では、ヒト患者18の心臓の心筋16の一部のアブレーションを行うものと仮定する。しかしながら、本開示の実施形態は、この特定の処置のみに当てはまるわけではなく、生体組織又は非生体材料に対する実質的にいかなる処置も包含しうることを理解されたい。
【0031】
アブレーションを行うには、医療専門家14は、患者の管腔内に予め配置されたシース21内にプローブ20を挿入する。シース21は、プローブ20の遠位端22が患者の心臓に入るように配置されている。図2Aを参照して下記にて詳細に述べられるバルーンカテーテル24は、プローブ20の管腔23を通って展開され、プローブ20の遠位端から延出する。
【0032】
図1に示されるように、装置12は、装置の操作用コンソール15内に配置されたシステムプロセッサ46によって制御される。コンソール15は制御装置49を含み、専門家14はこの制御装置49を使用してプロセッサと通信する。処置の間、プロセッサ46は、通常、当該技術分野では周知の任意の方法を使用してプローブ20の遠位端22の位置及び向きを追跡する。例えば、プロセッサ46は磁気的追跡方法を用いることが可能であり、患者18の体外に置かれた磁気トランスミッタ25x、25y、及び25zが、プローブ20の遠位端に配置されたコイル内に信号を発生する。バイオセンス・ウェブスター社(Biosense Webster,Inc.)(カリフォルニア州ダイヤモンドバー)より販売されるCARTO(登録商標)は、このような追跡方法を用いたものである。
【0033】
プロセッサ46用のソフトウェアは、例えばネットワークを介して電子的な形態でプロセッサにダウンロードすることができる。これに代えるか又はこれに加えて、ソフトウェアは、例えば、光学的、磁気的、又は電子的記憶媒体のような非一時的有形媒体上で提供されてもよい。遠位端22の追跡結果は、一般的には、画面62上で患者18の心臓の3次元表示60上に表示される。
【0034】
装置12を操作するため、プロセッサ46は、装置を操作するためにプロセッサによって使用される多くのモジュールを有するメモリ50と通信する。すなわち、メモリ50は、温度モジュール52、アブレーションモジュール54、及び心電図法(ECG)モジュール56を含んでおり、これらのモジュールの機能を以下で説明する。メモリ50は、遠位端22に作用する力を測定する力モジュール、プロセッサ46によって使用される追跡方法を操作する追跡モジュール、及び遠位端22に与えられる灌流をプロセッサが制御することを可能とする灌流モジュールなどの他のモジュールを一般的に含んでいる。簡潔化のために、これらの他のモジュールは、図1には示されていない。モジュールは、ハードウェア要素及びソフトウェア要素を含むことができる。
【0035】
図3は、本開示の一実施形態に基づく、膨張形態にあるカテーテル24のバルーン80の概略斜視図である。バルーン80を使用して図4に示される肺静脈13のような管腔の口部11を焼灼する、開示される一実施形態では、バルーン80はカテーテル24の遠位端から延びている。図2Aに示されるように、カテーテル24は、細長いカテーテル本体17、偏向可能な中間部分19、及び管状コネクタシャフト70を含むことができる細長いカテーテルシャフトを有している。特定の実施形態では、カテーテル本体17は中央管腔を有し、中間部分19は複数の管腔65、66、67、68及び69を有し(図2Bを参照)、シャフト70は中央管腔74(図6A)を有する。
【0036】
図3に示されるように、膨張式バルーン80は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン、又はPEBAX(登録商標)などのプラスチックで形成された生体適合性材料の外壁又はメンブレン26を有している。シャフト70とバルーン80の遠位端80Dとは長手方向軸を規定している。バルーン80は、プローブ20の管腔23を介して、折り畳まれた非膨張形態で展開され、遠位端22から出た後で膨張させることができる。バルーン80は、カテーテルシャフトを通じた生理食塩水などの流体の注入及び圧出によって膨張及び収縮させることができる。バルーン80のメンブレン26には、灌流孔又は灌流口27(図7を参照)が形成されており、これを通じて流体がバルーン80の内部からバルーンの外部に流出することで組織の焼灼部位を冷却することができる。図4は、噴流としてバルーン80から流出している流体を示しているが、流体は、流体が灌流口27から滲出する場合の速度を含む任意の所望の流速及び/又は圧力でバルーンから流出しうる点を理解されたい。
【0037】
メンブレン26は、多層フレキシブル回路電極アセンブリ84として構成された複合電極/温度検知部材を支持及び担持している。「フレックス回路電極アセンブリ」84は多くの様々な幾何学的形態を有することができる。図の実施形態では、図5に最も分かりやすく示されるように、フレックス回路電極アセンブリ84は、複数の放射状リーフ又はストリップ30を有している。各リーフ30は、バルーン80の遠位端80Dの周囲に均一に分配されている。各リーフは、より幅狭の遠位部分に向かって徐々にテーパしたより幅広の近位部分を有している。
【0038】
図3及び図6Aを更に参照すると、各リーフ30は近位尾部31を有しており、その遠位端において、バルーン80の遠位端80Dと同心状の中心開口部39を有するハブ32と連結されている。近位尾部31は、シャフト70に取り付けられた近位リング28によってカテーテル24の下に押し込まれ、カテーテル24に固定されている。各リーフ上の1以上の接触電極33は、アブレーション処置の間、口部11と電気的に接触し、その間、図4に示されるように、接触電極33から口部11に電流が流れる。
【0039】
図7に示されるように、フレックス回路電極アセンブリ84は、例えばポリイミドなどの適当な生体適合性材料で構成された、可撓性かつ弾性を有するシート基板34を有している。各リーフ30において、基板34の外側表面36は、口部の組織と接触するように適合された接触電極33を支持及び担持している。接触電極33は、アブレーションの間に口部へRFエネルギーを供給し、かつ/又は口部の温度/電位を検知するための熱電対接合部に接続されている。図の実施形態では、接触電極33は、長手方向の細長部分40と、細長部分40の各側面からほぼ垂直に延び、互いに等間隔で設けられた複数の細い横断方向の直線状部分すなわち指状部41とを有している。接触電極33内には、それぞれがバルーンメンブレン26に形成された対応する灌流口27と連通する、基板34に形成された灌注口35を囲んだ、1以上の排除領域47が形成されている。接触電極33には1以上の導電性ブラインドビア48も形成されているが、このブラインドビア48は、基板34の貫通穴(図に示されていない)を通じて延在する導電性又は金属性の形成物又は物質であり、接触電極33と、基板34とバルーンメンブレンとの間に挟まれた配線電極38とを接続する電気的導路として構成されている。本明細書では、「導電性」とはすべての関連する場合において、「金属性」と互換可能に使用される点を理解されたい。
【0040】
配線電極38は、接触電極33の細長部分40と同様の形状及びサイズの細長い本体として概ね構成されている。配線電極38は「脊柱」と概ね似ており、電極アセンブリ84の各リーフ30に所定の長手方向の剛性を与える点では脊柱として機能することもできる。配線電極38は、ブラインドビア48のそれぞれが接触電極33及び配線電極38の両方と導電接触するように配置されている。図の実施形態では、2つの電極33及び38は互いと長手方向に整列しており、すべてのブラインドビア48が電極33及び38の両方と導電接触している。
【0041】
配線電極38には、基板34の灌流口35の周囲に排除ゾーン59も形成されている。配線電極38には更に、少なくとも1つの活性はんだパッド部分61も形成されている。活性はんだパッド部分61には、例えばはんだ溶接部63によって、対線、例えば、コンスタンタン線51及び銅線53が取り付けられている。銅線53は配線電極33にリード線を与え、銅線53及びコンスタンタン線51は、接合部がはんだ溶接部63に位置する熱電対を与える。図に示されるように、対線51/53は、メンブレン26と基板34との間に延び、更にメンブレン26と近位尾部31との間に延びて、図3及び図6Aに示されるように、管状シャフト側壁の近位リング28の近くに形成された1以上の通孔72を介して管状シャフト70に入る。
【0042】
図8に示されるような特定の実施形態では、フレックス回路電極アセンブリ84は、部分的又は完全に周囲を囲んだ、「分離型」接触電極133A及び133Bからそれぞれ物理的及び電気的に隔離された分離型「島状」接触微小電極101A及び101Bを含むことができる。対応する分離型「島状」配線微小電極103A及び103Bは、やはり「分離型」配線電極(図に示されていない)である部分的又は完全に周囲を囲んだ下層の配線電極38(図7を参照)から物理的及び電気的に隔離されている。位置合わせされた接触微小電極101A、101Bと配線微小電極103A、103Bの各ペアは、それぞれのブラインドビア448A、448Bによって互いに導電接続されている。微小電極101A、101B及び103A、103Bは、電極133A、133B及び38とは独立してインピーダンス、電気信号、及び/又は温度の検知を行うように構成されている。図8の開示される一実施形態では、分離型配線電極のそれぞれはそれ自身の対線51A/53A及び51B/53Bを有しており、各配線微小電極はそれ自身の配線(例えば銅線)153A及び153Bを有している。
【0043】
本開示の他の実施形態では、バルーンは、例えば導電性インクによりバルーンメンブレン上に塗工された接触電極を有する。特定の実施形態では、接触電極を形成する導電性材料は、当業者によれば理解されるようなマイクロペン又は正変位分注システムによって塗布される。マイクロペンは、1回毎に調節可能な量のペーストを分注することが可能であり、これにより、印刷体積、ペースト濃度、及び筆記速度を変えることによって厚みを調節することが可能である。かかるシステムは、発明の名称が「Apparatus and Methods for the Measurement of Cardiac Output」である米国特許第9,289,141号に開示されている。正変位分注技術並びにエアゾール噴射及び自動注射器を含む直接筆記堆積器具は、いずれもニューヨーク州ハニーオアイフォールズ所在のマイクロペン・テクノロジーズ社(MicroPen Technologies)及びオームクラフト社(Ohmcraft,Inc.)よりMICROPENの商品名で販売されている。接触電極33は、任意の様々なパターンとすることができる点は理解されよう。
【0044】
図2Aを参照すると、バルーン80の長手方向及び径方向の寸法は、シャフト70に対する拡張要素90の長手方向の運動によって変化させることができる。バルーン80は、(1)拡張部材90がシャフト70に対する近位位置へと近位方向に引かれた圧縮形態C(破線)、(2)拡張要素90がシャフト70に対して遠位位置へと遠位方向に伸ばされた細長形態E(破線)、及び、(3)拡張要素90がその遠位位置と近位位置との間にあるより中立的な形態N(実線)を含む、異なる形態をとることができる。図9及び図10に示されるような特定の実施形態では、拡張要素90は、管腔93を有する細長の中空管又はロッドとして構成される。拡張要素90はバルーンの遠位端80Dに遠位端90Dを有しており、バルーンの長さにわたる遠位部分90A、及びバルーン80の近位端80Pと制御ハンドル16との間にわたる近位部分90Bを少なくとも有するものとして述べることができる。
【0045】
近位部分90Bは、制御ハンドルからカテーテル本体17の中央管腔(図に示されていない)、中間部分19の軸上管腔67(図2B参照)、及びコネクタシャフト70の管腔74(図9参照)を通って延びている。拡張要素90の部分90S(例えば、少なくとも中間部分19の管腔67を通って延びる部分)は、可撓性を高めるために1以上の屈曲スリットを有している。図11に示される実施形態では、部分90Sは、その側壁に部分90Sの長さに沿って巻いた螺旋状スリット94を有している。少なくとも1以上の屈曲スリットを有する部分90Sに沿って拡張要素90をシールするため、熱収縮スリーブ95が拡張要素を包囲している。
【0046】
カテーテルシャフトの長さ全体にわたり、拡張要素90の近位部分90Aは、バルーンの近位端80Pと制御ハンドル16との間で拡張要素と長手方向に同一範囲に延在する灌流管44の管腔45(図2B及び図9参照)を通っている。灌流管44の直径は、拡張要素90を収容する管腔45を与えるようなサイズに構成され、灌流液が灌流管44を通ってバルーン80の近位端80Pにおいてバルーンの内部へと通過することを可能とする。バルーン内に供給された灌流液は、バルーンメンブレン26に形成された灌流口27及びフレックス回路基板34に形成された灌流口35を通ってバルーンから流出して周囲組織を冷却することができる(図4参照)。
【0047】
図9及び12に示される実施形態では、バルーンの近位端80Pは、灌流管44の遠位端44Dを周方向に包囲した外側近位リング28を有している。リング28と遠位端44Dとの間には下記に更に述べるようなバルーン80のいくつかの構成要素が挟まれており、例えばエポキシなどの接着剤105によってリング28内に固定されている。バルーンの近位端80Pは、管腔74内のシャフト70と灌流管44との間の隙間を塞ぐ環状プラグ106を有している。バルーンメンブレン26の内側表面とシャフト70の外側表面との間に接着剤(図に示されていない)を塗布することによって近位端80Pに液密シールを形成することができる。プラグ106とシャフト70の内側表面及び/又は灌流管44の外側表面との間にも接着剤(図に示されていない)を塗布することで近位端80Pに液密シールを形成することができる。
【0048】
灌流管44の遠位端はバルーン80の近位端80Pで終端しているため、バルーン80の内部を通じて延びる拡張要素の遠位部分90Aは灌流管44を有していない。図10に示される実施形態では、バルーンの遠位端80Dは、拡張要素90の遠位端90Dを受容する通路86を有する中空の円筒体を有するセンサハウジング85を有している。例えばレーザ溶接部79によって遠位端90Dとハウジング85との取り付け及び連結を確実に行うことができる。ハウジング85の内部87には電磁位置センサ88が収容されており、電磁位置センサ88のケーブル89が拡張要素90の管腔93を通り、カテーテルシャフトの長さに沿って制御ハンドル16内へと近位方向に延びている。ハウジング85の遠位端は、平坦な遠位面96Dを有する遠位部材96を有しており、遠位部材96は液漏れに対して内部87をやはり封止する接着剤98Aによって固定されている。特定の実施形態では、遠位部材96は遠位先端電極として構成され、そのリード線(図に示されていない)はやはり、遠位通路86を経由して拡張要素90の管腔93を通って制御ハンドルへと近位方向に通過することができる。場合により、異なる電極のリード線を、管腔93を通ってハウジング85の遠位端でハウジング85の外部に出て各電極と接触するように経路付けることができる。ハウジング85は、例えばステンレス鋼、編組シャフトなどをはじめとする任意の適当な材料で構成することができる。
【0049】
開示される実施形態では、ハウジング85は、ハウジング本体を周方向に囲む例えば短い管として構成されたカバー97を有している。ハウジング本体の外側表面は、カバー97をハウジング85に接着する接着剤98Bをより効果的に保持するための不均一な表面を有するテクスチャ85Tを有してもよい。ハウジング85のカバー97の径方向外側表面には、内側に曲げられたバルーンメンブレン26の遠位端部分26Dが接着剤98Cによって接着されており、これによりメンブレン26の外側表面26Aがカバー97の径方向外側表面に接着されている。したがって、バルーンメンブレン26Dの内側への曲がりと遠位部材96の平坦な遠位面96Dとによって、バルーンの遠位端80Dに図3に示されるような、組織を損傷することなく組織と正面から接触することができる非外傷性の遠位形状が効果的に与えられる。バルーンメンブレンの遠位端26Dがハウジング85に接着され、ハウジング85が拡張要素の遠位端90Dに接着されていることにより、使用者が拡張要素90の近位端を長手方向に動かす(制御ハンドル16内、又は制御ハンドルの近位において)ことで、図2Aに示されるようにバルーンの長手方向の形状を細長く引き伸ばすか又は圧縮することによってバルーンの形態を変化させることができる。更に、格納された位置センサ88は遠位端80Dの位置を示す電気信号を発生するように構成されている。
【0050】
図6A及び6Bを参照すると、バルーン80は、バルーン80の近位又は遠位端から、バルーンメンブレン26の外側表面上の、遠位端の近位側又は近位端の遠位側の位置まで径方向に延びる複数の細長い長手方向支持部材すなわち「脊柱部材」81を有している。つまり、各脊柱部材の端部はバルーンの赤道部分の近くに位置している。支持脊柱部材81は、例えばニチノールのような形状記憶性を有する適当な材料で形成される。各脊柱部材は、例えば長方形又は円形などの任意の適当な断面形状を有してよく、中空であってもよく、バルーン80がシャフト70の遠位端から展開される際、特に灌流液によって膨張させられる際にほぼ球形の形態を確実にとるような曲率を有するように予め成形されている。特定の実施形態では、各脊柱部材81は、バルーンメンブレン26の外側表面に接着されて脊柱部材81が通る内部通路を与える例えばストリップ又はスリーブとして構成されたカバー82によって覆われている。通路の遠位端は例えばポリウレタンのプラグ83によって封止されている。各スリーブ82の近位部分は、それぞれの脊柱部材81の近位部分とともに近位リング28によってバルーン80の下に押し込まれてバルーン80に固定されている。
【0051】
スリーブ82及び各脊柱部材81の長さは、適宜、又は必要に応じて、異なる実施形態で異なりうる点は理解されよう。同様に、バルーン80上のスリーブ及び脊柱部材の配置も適宜、又は必要に応じて、異なる実施形態で異なりうる。図3及び図6Aに示される実施形態では、各スリーブ82及び各脊柱部材81は尾部31の長さにほぼ等しい長さを有している。更に、各スリーブ82は、対応する尾部31の外側表面に接着されているため、各脊柱部材81は、図13に示されるように、フレックス回路電極アセンブリからのリード線51、53を覆う対応する尾部31と概ね同じ範囲に延びている。リード線51、53は、非導電性カバーによって覆われることでリード線リボン102を形成することができる。脊柱部材及びスリーブは、必要に応じて、又は所望に応じて、脊柱部材81及びスリーブ82に加えるか又はそれに代えてバルーンメンブレンの折り目76に沿って配置することもできる。これにより、これらの脊柱部材がバルーン80の近位側の半球を強化することから、バルーン80は口部と接触する際にシャフト70に対して軸上により効果的に留まることができる。
【0052】
図14及び図15に示される別の実施形態では、バルーン80は、バルーン80の近位側及び遠位側の半球の両方に概ねわたって遠位端80Dと近位端80Pとの間でバルーンの長さにわたって延びる脊柱部材91を有している。各脊柱部材は、バルーンメンブレン26の外側表面に接着されて脊柱部材92が通る内部通路を与える例えばストリップ又はスリーブのようなカバー92と通じて延びている。通路の遠位端は例えばポリウレタンのプラグ83によって封止されている。各脊柱部材91はそれらのカバー92内で、リーフ30と脊柱部材81との間に延びている(例えば折り目76上に位置する)。これらの脊柱部材91は、バルーンの形状を支持するために、適宜、又は必要に応じて脊柱部材81に加えるか又は脊柱部材81に代えることができる。
【0053】
カバー82及び92の内部は、リード線又はケーブルなどの更なる構成部品を収容するような形状及びサイズとすることもでき、これらの構成部品は患者の体液又はバルーンの内部に流入及び内部から流出する灌流液への曝露から保護及び/又は絶縁される。
【0054】
特定の実施形態では、カテーテルは、カテーテル本体17の中央管腔及び中間部分19の管腔68(後者は図2Bに示される)を通じて延びる偏向プルワイア43を有している。プルワイアの近位端(図に示されていない)は制御ハンドル内に固定されており、Tバー43Tで終端する遠位端は多管腔中間部分19の遠位端又はその近傍において管腔68の側壁に固定されている(図12を参照)。当該技術分野では理解されるように、圧縮コイル(図に示されていない)が偏向プルワイアの、カテーテル本体17を通じて延びる部分を包囲しており、概ねカテーテル本体17と中間部分19との接合部で終端する遠位端を有している。制御ハンドルは、プルワイアに作用してプルワイアを近位方向に引っぱることでカテーテルを偏向させる偏向機構(図に示されていない)を有している。
【0055】
図9に示されるように、フレックス回路リーフ30から延びるリード線51及び53は、コネクタシャフト70の周囲の異なる径方向位置に配置された1以上の通孔72からコネクタシャフト70の管腔74内に入る。例えば、複数のリーフ30、複数の接触電極33及び配線電極38、微小電極101及び103などの因子に応じて、複数の通孔72は、必要に応じて、又は適宜、複数のリード線51及び53を収容するように異なりうる。いずれの場合も、リード線51及び53は、図2Bに示されるような中間部分19の管腔65及び/又は管腔66内を通り、カテーテル本体19の中央管腔(図に示されていない)内へと更に近位方向に通される。孔72並びに配線51及び53は、例えばエポキシなどの適当な接着剤によって保護及び封止することができる。更に、近位リング28(図9に破線で示される)は、孔及び配線を覆うようなサイズとし、適当な接着剤で封止することができる。
【0056】
上記の説明は、現時点における本開示の好ましい実施形態に関連して示したものである。本開示が関連する分野及び技術の当業者であれば、本発明の原理、趣旨、及び範囲を大きく逸脱することなく、記載される構造に改変及び変更を実施しうる点は認識されるであろう。1つの実施形態に開示される任意の特徴又は構造は、必要に応じて又は適宜、他の任意の実施形態の他の特徴に代えて、又はそれに加えて組み込むことができる。当業者には理解されるように、図面及び相対的な図示される寸法は必ずしも縮尺どおりではない。したがって、上記の説明文は、添付図面に記載及び例示される正確な構成のみに関連したものとして読まれるべきではなく、むしろ以下の最も完全で公正な範囲を有するものとされる特許請求の範囲と一致し、かつこれを支持するものとして読まれるべきである。
【0057】
〔実施の態様〕
(1) 第1の管腔を有する細長いカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの遠位に位置するバルーンであって、長手方向軸を規定する遠位端と近位端を有し、メンブレン及び前記メンブレンの外側表面上に支持された接触電極を含み、前記メンブレンがバルーンの内部を画定する、バルーンと、
前記カテーテルシャフトの前記第1の管腔を通じて延びる灌流管であって、第2の管腔を有し、前記バルーンの前記近位端で概ね終端する遠位端を有する、灌流管と、
前記灌流管の前記第2の管腔を通じて延びる第1の部分と、前記バルーンの前記近位端を通じて前記バルーンの前記内部へ延びる第2の部分を有する細長い拡張要素であって、前記バルーンの前記遠位端と連結された遠位端を有し、前記カテーテルシャフトに対して長手方向に可動であることで前記バルーンの前記遠位端を動かして前記バルーンの形態を変化させる、拡張要素と、を有する、電気生理カテーテル。
(2) 前記バルーンが、前記バルーンの前記メンブレンの前記外側表面に沿って長手方向に延びる複数の支持脊柱部材を更に有する、実施態様1に記載の電気生理カテーテル。
(3) 少なくとも1つの支持脊柱部材が、前記バルーンの前記近位端と前記遠位端との間に延びている、実施態様2に記載の電気生理カテーテル。
(4) 少なくとも1つの支持脊柱部材が、前記近位端から、前記メンブレンの前記外側表面上の、前記バルーンの前記遠位端の近位側の位置まで延びている、実施態様2に記載の電気生理カテーテル。
(5) 少なくとも1つの支持脊柱部材が、前記遠位端から、前記メンブレンの前記外側表面上の、前記バルーンの前記近位端の遠位側の位置まで延びている、実施態様2に記載の電気生理カテーテル。
【0058】
(6) 前記バルーンは、前記バルーンメンブレンに接着された複数のカバーを更に有し、少なくとも1つのカバーが前記少なくとも1つの支持脊柱部材を覆っている、実施態様2に記載の電気生理カテーテル。
(7) 前記バルーンの前記遠位端は平坦な遠位面を有する、実施態様1に記載の電気生理カテーテル。
(8) 前記遠位端は、前記平坦な遠位面及び径方向外側表面を有するハウジングを有し、前記バルーンメンブレンの遠位端部分が内側に曲げられて前記径方向外側表面に接着されている、実施態様7に記載の電気生理カテーテル。
(9) 前記拡張要素は、屈曲スリットを有する部分を有する、実施態様1に記載の電気生理カテーテル。
(10) 前記屈曲スリットは、螺旋状スリットを含む、実施態様9に記載の電気生理カテーテル。
【0059】
(11) 前記ハウジング内に収容された位置センサを更に有する、実施態様8に記載の電気生理カテーテル。
(12) 前記拡張要素は第3の管腔を有し、前記位置センサは、前記第3の管腔を通じて延びるケーブルを有する、実施態様11に記載の電気生理カテーテル。
(13) 前記ハウジングは、前記平坦な遠位面を有する遠位電極を有する、実施態様8に記載の電気生理カテーテル。
(14) 前記接触電極は、塗工された導電性インクを含む、実施態様1に記載の電気生理カテーテル。
(15) 第1の管腔を有する細長いカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの遠位に位置するバルーンであって、長手方向軸を規定する遠位端と近位端を有し、前記バルーンは、メンブレン及び前記メンブレンの外側表面上に支持されたフレックス回路電極アセンブリを含み、前記メンブレンは前記バルーンの内部を画定し、前記遠位端は電気的導路を有する構成要素を含む、バルーンと、
前記第1の管腔を通じて前記カテーテルシャフトに対して長手方向に可動である中空の細長い拡張要素であって、前記拡張要素は第2の管腔及び遠位端を有し、前記電気的導路は前記第2の管腔を通り、前記拡張要素及び前記バルーンの前記遠位端が互いに連結されている、拡張要素と、を有する、電気生理カテーテル。
【0060】
(16) 前記バルーンは、前記バルーンメンブレンに沿って長手方向に延びる支持脊柱部材を更に有する、実施態様15に記載の電気生理カテーテル。
(17) 前記支持脊柱部材は、前記バルーンの前記近位端から前記バルーンの前記遠位端まで延びている、実施態様16に記載の電気生理カテーテル。
(18) 前記支持脊柱部材は、前記バルーンの前記近位端から前記バルーンの前記遠位端の近位側の位置まで延びている、実施態様16に記載の電気生理カテーテル。
(19) 前記支持脊柱部材は、前記バルーンの前記遠位端から前記バルーンの前記近位端の遠位側の位置まで延びている、実施態様16に記載の電気生理カテーテル。
(20) 前記バルーンは、非外傷性の遠位端を有する、実施態様15に記載の電気生理カテーテル。
【0061】
(21) 前記バルーンの前記遠位端は、平坦な遠位面及び遠位端部分を有し、前記バルーンメンブレンが内側に曲げられて前記拡張要素の前記遠位端に接着されている、実施態様15に記載の電気生理カテーテル。
(22) 前記フレックス回路電極アセンブリのリード線は、前記バルーンの前記内部の外側の前記メンブレンに沿って、前記フレックス回路電極の近位端から前記バルーンの前記近位端まで延びている、実施態様15に記載の電気生理カテーテル。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16